(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変速レバー検出手段が非走行位置を検出した状態で、前記ブレーキ検出手段が入状態から切状態になり、かつ前記植付許可手段が植付作業を許容しない状態にある場合、前記モータ停止手段による前記電動モータの停止を解除して、前記変速レバーの操作により前記電動モータを操作可能にするモータ停止解除手段を備えてなる、
請求項1記載の田植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載のものは、走行速度を変速レバーによって設定し、ブレーキペダルを踏むことによって制動する構成であって、ブレーキによって走行機体を制動した後ブレーキを解除する際、電動モータからの動力伝達が急に伝わり、急発進してしまうという問題があった。これにより、オペレータがケガをする虞があると共に、苗の植付姿勢の乱れや施肥にムラを生じる虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、ブレーキを解除した際に急発進しないようにモータ出力を制御して、もって上述の課題を解決した田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行車輪(11,12)に支持される走行機体(13)と、前記走行車輪(11,12)を駆動させる電動モータ(37)と、前記走行機体(13)に昇降自在に支持される植付作業機(17)と、を備えた田植機(10)において、
変速レバー(30)のレバー位置を検出する変速レバー検出手段(55)と、
ブレーキ(65)の入切を検出するブレーキ検出手段(66)と、
前記植付作業機(17)による植付作業を許容する植付許可手段(75)と、
前記変速レバー検出手段(55)の検出位置に拘らず、前記ブレーキ検出手段(66)が入状態の際に、前記電動モータ(37)を停止させるモータ停止手段(71)と、
前記変速レバー検出手段(55)が走行位置を検出した状態で、前記ブレーキ検出手段(66)が入状態から切状態になり、かつ植付許可手段(75)が植付作業を許容する状態にある場合、前記電動モータ(37)の出力を前記変速レバー検出手段(55)が検出した所定走行速度まで徐々に増速させる自動増速手段(72)と、を備えてなる、
ことを特徴とする。
【0007】
なお、植付作業を許容する状態とは、例えば、作業機準備スイッチ(69)が入状態、かつ副変速検出スイッチ(70)が、副変速レバー(31)が作業速側(入状態とする)にあることを検出した状態であって、植付作業状態並びに植付作業を行いうる状態を意味し、上記作業機準備スイッチ(69)又は上記副変速検出スイッチ(70)の少なくとも一方が入状態にある状態や、別途設けた植付作業を許可する状態の入切操作を行う切替操作具を入状態にした状態であっても良い。
【0008】
例えば
図3,
図5を参照して、前記変速レバー検出手段(55)が非走行位置(N)を検出した状態で、前記ブレーキ検出手段(66)が入状態から切状態になり、かつ前記植付許可手段(75)が植付作業を許容しない状態にある場合、前記モータ停止手段(71)による前記電動モータ(37)の停止を解除して、前記変速レバー(30)の操作により前記電動モータ(37)を操作可能にするモータ停止解除手段(73)を備えてなる。
【0009】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、自動増速手段は、変速レバー検出手段が走行位置を検出した状態で、ブレーキ検出手段が入状態から切状態になり、かつ植付許可手段が植付作業を許容する状態にある場合、電動モータの出力を変速レバー検出手段が検出した所定走行速度まで徐々に増速させるので、ブレーキが入状態から切状態に操作された際に、走行車輪に急に電動モータのトルクが伝わらず、走行機体が急発進することを防止すると共に、苗の植付けや施肥に作業ムラが出来るのを防止することが出来る。また、走行中に変速レバーを操作する必要が無いので、田植機の運転操作に不慣れなオペレータであっても、植付作業や枕地における旋回に専念することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、モータ停止解除手段は、変速レバー検出手段が非走行位置を検出した状態で、ブレーキ検出手段が入状態から切状態になり、かつ植付許可手段が植付作業を許容しない状態にある場合、電動モータの停止制御を解除するので、モータ停止手段による電動モータの停止制御がなされた後に加速するためには、一度変速レバーを非走行位置に設定してから変速しなければならず、特に路上走行においてブレーキが入状態から切状態に操作される際に、変速レバーが高速となる位置に設定されたままで急発進することを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る田植機を示す側面図。
【
図2】本発明の実施の形態に係る田植機の駆動系等の概略を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施の形態に係る田植機の変速レバーを示す側面図。
【
図4】本発明の実施の形態に係る田植機のブレーキを示す側面図。
【
図5】本発明の実施の形態に係る田植機の制御部のブロック図。
【
図6】本発明の実施の形態に係る田植機の制御部のフロー図。
【
図7】本発明の実施の形態に係る電動モータの出力推移の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。田植機10は、
図1に示すように、それぞれ左右一対の前輪11及び後輪12に支持された走行機体13と、該走行機体13の後方に、油圧シリンダ15及びリンク機構16を介して昇降自在に連結される植付作業機17と、を有している。
【0014】
上記植付作業機17は、上記走行機体13の進行方向である前後方向の軸回りに回動自在(ローリング自在)に上記リンク機構16に支持された左右方向の横フレーム19と、該横フレーム19から上方に突設された上下方向の左右一対の縦フレーム20等によってフレーム部を構成している。上記植付作業機17は、不図示の水平制御モータ及び傾斜センサによって、左右傾斜がある圃場においても、水平姿勢を保持することが可能となっている。
【0015】
上記縦フレーム20は、前高後低状の傾斜姿勢で左右往復動可能に苗載台21を支持しており、該苗載台21には、その載置面21aに載置されるマット苗を下方搬送する縦送り機構22が設置されている。上記横フレーム19の後方には、植付部23が一体的に延設されており、該植付部23の移植杆25が回転することで、上記載置面21aに載置されて下端に搬送されたマット苗から一株分の苗を掻きとって、圃場に連続的に移植できるようになっている。
【0016】
上記走行機体13は、前部に駆動源である電動モータ等が格納されたボンネット26を有し、後部にオペレータが着座する運転席27,該運転席27の前方に配置されて走行操作を行うステアリングハンドル29,該ステアリングハンドル29の左右両側にそれぞれ配置される主変速レバー30及び副変速レバー31,及び床面を構成するステップ32の前方に配置されるブレーキペダル33等からなる運転操作部35を備えている。上記運転席27の後方には、電力源となるバッテリー36を備えている。
【0017】
上記ボンネット26の内部には、
図2に示すように、走行車輪(前輪11,後輪12)及び上記植付作業機17を駆動する主動力モータ(電動モータ)37と、該主動力モータ37より外形が小さく、上記油圧シリンダ15に圧油を供給する油圧ポンプ駆動用モータ39と、を有しており、それぞれ制御ユニット40,41によってコントロールされている。上記主動力モータ37,油圧ポンプ駆動用モータ39,制御ユニット40,41,及びDCコンバーター42や電源スイッチ43等の各装置は、支持ブラケット45によって支持・固定されて、上記ボンネット26内に収まるようにユニット化されている。
【0018】
上記ボンネット26内の各装置は、上記バッテリー36からワイヤーハーネス46で繋がれて電源供給され、上記主動力モータ37の動力は、上記主動力モータ37の出力軸37aの先端に取付けられるモータプーリ47と、上記ステアリングハンドル29の下方に配置されるミッションケース49のミッションプーリ50と、に巻き掛けられるVベルト51によって、上記ミッションケース49内の変速機構において走行伝動系と植付伝動系に分岐される。上記走行伝動系にて上記走行車輪(前輪11,後輪12)が駆動され、上記植付伝動系にて上記植付作業機17が駆動される。上記油圧ポンプ駆動用モータ39も同様にして、Vベルト52で上記ミッションケース49と連結されて、上記油圧ポンプ駆動用モータ39の動力は、不図示の油圧ポンプに伝達される。上記主動力モータ37及び上記油圧ポンプ駆動用モータ39は、これらモータ自体の信号や電圧等により回転数を算出し制御する構成としており、回転センサ等を使用しないため安価に構成することができる。
【0019】
上記運転操作部35の上記主変速レバー30は、
図3に示すように、レバーガイド53に挿通して設けられると共に、その基端部に上記主変速レバー30の前進側〜後進側のレバー位置を検出するための変速レバーポテンショ(変速レバー検出手段)55が設置されている。上記主変速レバー30は、上記レバーガイド53に形成したガイド溝に沿って前後及び左右に揺動操作できるようになっており、前後方向に揺動することで無段に変速することが出来る。
【0020】
上記ガイド溝は、上記主変速レバー30による上記田植機10の前進操作と後進操作とが連続した操作とならないように、走行位置である前進操作域と後進操作域との間を、非走行位置である中立位置(ニュートラル)Nとして左右にオフセットして設けている。上記走行位置では、上記中立位置Nに対して上記変速レバー30を傾けるほど高速となるように上記主動力モータの出力は上がり、上記中立位置Nでは、上記主動力モータ37は、停止状態となる。上記主変速レバー30の前後位置、及び上記副変速レバー31の路上速又は作業速の切替えによって上記田植機10の走行速度が決定する。
【0021】
上記運転操作部35の上記ブレーキペダル33は、
図4に示すように、ペダルアーム56の先端に取付けられて、ペダル支点軸57を中心に上下揺動自在となっている。上記ペダル支点軸57は、プレート59を介して連結ロッド60の一端と連結されており、該連結ロッド60の他端は、機体フレーム側に軸支されている軸61に連結されている。該軸61には、アーム62が設けられて、該アーム62と連結されるロッド63によってブレーキ65が操作される。上記プレート59の上記連結ロッド60と反対側には、上記ブレーキペダル33の入切を検出するブレーキペダルスイッチ(ブレーキ検出手段)66が配設されている。上記ブレーキペダル33を踏み込み操作すると、ブレーキ65が操作されて上記前輪11及び後輪12を制動すると共に、上記プレート59が上記ブレーキペダルスイッチ66を押圧して、上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態を検出する。
【0022】
上記田植機10は、
図5に示すように、CPU,ROM,RAM等からなるマイコンから構成される制御部67を備えており、該制御部67の入力側には、上記運転操作部35に配置されて、上記植付作業機17への動力を断接及び上述の上記植付作業機17の水平制御や苗切れの警報等を入切する作業機準備スイッチ69と、上記副変速レバー31の路上速又は作業速位置を検出する副変速検出スイッチ70と、上記変速レバーポテンショ55と、上記ブレーキペダルスイッチ66と、等が接続されている。上記制御部67の出力側には、上記主動力モータ37と、上記油圧ポンプ駆動用モータ39と、等が接続されている。
【0023】
上記制御部67は、それぞれ後述の条件(フロー)のもとで、上記変速レバーポテンショ55の検出位置に拘らず上記主動力モータ37を停止させるモータ停止手段71と、上記主動力モータ37を上記変速レバーで設定した所定速度まで徐々に増速させる自動増速手段72と、上記モータ停止手段71による上記主動力モータ37の停止を解除するモータ停止解除手段73と、上記植付作業機17による植付作業を許容する植付許可手段75と、を有している。該植付許可手段75は、上記作業機準備スイッチ69が入状態、かつ上記副変速検出スイッチ70が、上記副変速レバー31が作業速側(入状態とする)にあることを検出した時、上記植付作業機17による植付作業を許容する。
【0024】
なお、上記植付許可手段75は、上記作業機準備スイッチ69又は上記副変速検出スイッチ70の少なくとも一方が入状態にあれば、上記植付作業機17による植付作業を許容しても良く、別途、専用の切替操作具を設けて、該切替操作具が入状態であれば上記植付作業機17による植付作業を許容するようにしてもよい。
【0025】
次に、本実施の形態における田植機10の主動力モータ37の出力制御を、
図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の制御は、後述するステップS3,S11及びステップS12以外においては、上記変速レバー30が上記走行位置にある場合における制御である。
【0026】
まず、ステップS1では、上記変速レバーポテンショ55によって上記主変速レバー30の位置を検出して読み込む。次いで、ステップS2では、上記ブレーキペダル33が踏み込み操作されて上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態(ON)に入力されたかを判断し、入状態に入力されればステップS3へ進む。なお、上記ステップS2においては、上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態に入力操作された瞬間を判断し、上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態にあることを判断するわけではない。ステップS3では、上記モータ停止手段71によって、上記主動力モータ37の停止制御が行われると共に、モータ駆動規制フラグがセットされる。そしてステップS1に戻る(復帰)。すなわち、上記ステップS2で上記ブレーキ65が入状態となることで、上記主動力モータ37は停止する。
【0027】
ステップS2で上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態に入力されなかった場合には、ステップS4へ進む。ステップS4では、上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態(ON)から切状態(OFF)に入力されたかを判断し、上記ブレーキペダルスイッチ66が入状態から切状態に入力されればステップS5に進む。なお、ステップS5に進んだ場合、上記ブレーキペダルスイッチ66は必ず一度入状態となるので、ステップS1,ステップS2,ステップS3の順路を通ってきたことを意味する。ステップS5では、上記植付許可手段75が、上記植付作業機17による植付作業を許容する状態(植付作業モードとする)にあるか否かを判断し、植付作業モードでなければ、ステップS1へ戻る。また、ステップS5において植付作業モードであればステップS6へと進み、ステップS6では、自動増速フラグがセットされると共に、上記自動増速手段72によって、上記主動力モータ37の出力が徐々に上昇して上記田植機10の走行速度が漸増する自動増速制御が開始される。そしてステップS1へと戻る。
【0028】
ステップS4において上記ブレーキペダルスイッチ66を入状態から切状態に入力しない場合には、ステップS7へと進む。ステップS7では、自動増速フラグがセットされているか否かを判断し、自動増速フラグがセットされている場合には、ステップS8へと進む。上記ステップS8では、上述したように上記主動力モータ37の信号や電圧から該主動力モータ37の現在の回転数・走行速度を算出し、該走行速度がステップS1において読み込んだ主変速レバー30の位置で設定された所定走行速度に達したか否かを判断する。上記所定走行速度に達した場合にはステップS9へと進む。上記所定走行速度に達しない場合には、ステップS8からステップS1へ戻り、上記自動増速制御によって徐々に上がっていく速度が、設定した速度に達するまで、ステップS1,ステップS2,ステップS4,ステップS7,ステップS8,そしてステップS1という経路を繰り返す。ステップS8で現在の走行速度が上記主変速レバー30で設定した所定走行速度に達すると、ステップS9に進み、ステップS9で自動増速制御が終了すると共に、自動増速フラグがリセットされる。そしてステップS1へ戻る。
【0029】
すなわち、上記植付作業モードの場合には、一度上記ブレーキペダル33を踏み込んで(S1、S2、S3)、その後上記ブレーキペダル33を解除する(S1、S2、S4、S5)と、主動力モータ37の出力を徐々に増速していく自動増速制御(S6)となる。該自動増速制御は、上記主変速レバー30及び副変速レバー31で予め設定した所定走行速度になるまで続き(S1、S2、S4、S7、S8、S1、…)、該所定走行速度になる(S1、S2、S4、S7、S8、S9)と、上記自動増速制御が解除される。このように制御された主動力モータ37の出力は、
図7で模式的に示され、上記変速レバー30を操作せずに上記主変速レバー30で設定した所定走行速度まで自動増速制御を行うので、急発進を防止すると共に、オペレータは植付作業に専念することができ、植付作業中の圃場走行に好適である。
【0030】
ステップS5で上記植付作業モードではなく、ステップS6を通過せずにステップS7まで進むと、自動増速フラグがセットされてないため、ステップS7からステップS10へと進む。ステップS10では、ステップS3におけるモータ駆動規制フラグがセットされているか否かが判断され、セットされている場合にはステップS11へと進む。ステップS11では、上記主変速レバー30の位置が中立位置Nにあるか否かが判断され、中立位置Nにある場合には、ステップS12へ進み、上記モータ停止解除手段73によってモータ駆動規制フラグがリセットされ、ステップS1へ戻る。ステップS11において主変速レバー30が中立位置Nにない場合には、ステップS1へと戻る。
【0031】
ステップS12からステップS1へ戻るルートへ進んだ場合には、モータ駆動規制フラグがリセットされたため、ステップS10からステップS13へと進み、上記主変速レバー30の位置に合わせて上記主動力モータ37を出力制御する。
【0032】
すなわち、上記植付作業モードではない場合には、一度上記ブレーキペダル33を踏み込むと(S1、S2、S3)、上記主変速レバー30を中立位置に設定しない(S1、S2、S4、S7、S10、S11、S1、…)限り、上記モータ停止解除手段73によって上記主動力モータ37の停止を解除して(S12)、再度、上記変速レバー30の操作により上記主動力モータ37を操作可能にして加速する(S1、S2、S4、S7、S10、S11、S12)ことはできない。このようなモータ駆動制御は、上記植付作業モード以外の、特に路上走行において好適である。
【0033】
なお、上記植付作業モード以外の場合には、上述したモータ停止解除手段73による制御に限らず、どのような制御を行なっても良い。
【0034】
また、本発明は、上記実施の形態の田植機以外に、野菜移植機やイ草移植機等の様々な移植機に適用できる。