(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス検出素子に接続されて、上記ガス検出素子のセンサ出力信号に基づき、特定ガスのガス濃度に応じたアナログのガス検出信号を信号出力ポートから外部に向けて出力する
ガスセンサ回路装置であって、
アナログの上記ガス検出信号を生成する検出信号生成回路と、
ローレベルとハイレベルのいずれかで示される状態が経時的に複数連なって現れるデータ信号を生成するデータ信号生成回路と、
上記ガス検出信号及び上記データ信号を上記信号出力ポートから出力する兼用出力回路と、
前記ガス検出信号の出力要否を判断する判断手段と、を備え、
前記兼用出力回路は、
前記ガス検出信号を前記信号出力ポートから出力する検出信号出力モードと前記データ信号を上記信号出力ポートから出力するデータ出力モードとを切り替える切り替え回路を含み、
上記切り替え回路を用いて、上記兼用出力回路の上記2つのモードの切り替えを行うモード切替手段を備え、
前記判断手段は、
前記ガス検出素子が活性状態であるか非活性状態であるかを判断する活性判断手段であり、
前記モード切替手段は、
上記ガス検出素子が非活性状態であると判断されたときには、前記兼用出力回路を前記データ出力モードとする
ガスセンサ回路装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このガスセンサ回路装置の中には、センサ出力信号に基づいて、特定ガスのガス濃度に対応するアナログのガス検出信号を生成し、このアナログのガス検出信号を外部装置に出力するアナログ出力タイプの装置がある。しかしながら、このようなアナログ出力タイプのガスセンサ回路装置において、アナログのガス検出信号に加えて、ガス検出素子の固有情報などのデータを外部に出力したい場合がある。ところが、このために外部装置との接続ハーネスの本数を増やすのは、コストアップになる上、ガスセンサ回路装置と外部装置の双方で、コネクタ形状の変更や回路の変更などの設計変更が必要となるため、好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、アナログのガス検出信号に加えて、ガス検出素子の固有情報などのデータを出力可能なガスセンサ回路装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その一態様は、ガス検出素子に接続されて、上記ガス検出素子のセンサ出力信号に基づき、特定ガスのガス濃度に応じたアナログのガス検出信号を信号出力ポートから外部に向けて出力するガスセンサ回路装置であって、アナログの上記ガス検出信号を生成する検出信号生成回路と、ローレベルとハイレベルのいずれかで示される状態が経時的に複数連なって現れるデータ信号を生成するデータ信号生成回路と、上記ガス検出信号及び上記データ信号を上記信号出力ポートから出力する兼用出力回路と、を備えるガスセンサ回路装置である。
【0007】
このガスセンサ回路装置では、1つの信号出力ポートから、ガス検出信号と上述のデータ信号の両方を外部装置(例えば、ECU)に向けて出力することができる。これにより、信号線を増やすことなく、ガス検出信号に加えて、データを外部装置に出力することができる。
【0008】
なお、データ信号は、電圧レベルがローレベルとハイレベルの2つのレベルで示される信号であり、その出力形式としては、符号化した情報を逐次的に出力するシリアル出力や、所定周期のパルスのデューティ比を変えることによって情報を出力するPWM出力などが挙げられる。また、データ信号として出力する情報としては、この回路装置に接続しているガス検出素子のゲイン特性あるいはそのランクなど、ガス検出素子に関する固有情報や、この回路装置の回路のゲイン・オフセット情報や回路の温度特性など、ガスセンサ回路装置自身に関する固有情報、あるいは、ガス検出素子やこの回路装置の回路の異常を検出した場合のアラーム情報などが挙げられる。そして、データ信号生成回路は、データ信号の出力形式に合わせて、出力すべき情報をデータ信号として生成する。
【0009】
また、兼用出力回路は、ガス検出信号とデータ信号とを信号出力ポートから兼用して出力する回路である。具体的には、例えば、検出信号生成回路のアナログの出力に電流制限用の抵抗を直列に接続した上で、この抵抗を通した出力を、2つのスイッチを介して電源及びGNDにそれぞれ接続したものが挙げられる。この回路では、これら2つのスイッチのいずれかをオンすることにより、ガス検出信号の出力の大きさに拘わらず、強制的にハイレベルまたはローレベルに変更することが可能である。また、2つのスイッチを共にオフすれば、アナログのガス検出信号をそのまま出力できる。なお、電流制限抵抗を直列に接続した分、ガス検出信号の出力インピーダンスが高くなるので、この影響を無くすべく、オペアンプなどによるバッファ回路を出力の最終段に設けても良い。
【0010】
その他、兼用出力回路としては、オペアンプの加算回路等を用いることにより、アナログのガス検出信号にデータ信号を重畳して出力する回路も挙げられる。この回路では、ガス検出信号とデータ信号を同時に出力することが可能である。
【0012】
このガスセンサ回路装置では、モード切替手段で、切り替え回路を用いて、兼用出力回路の検出信号出力モードとデータ出力モードの2つのモードの切り替えを行う。これにより、ガス検出信号とデータ信号とを時間的に分離して、別々に出力することができる。
【0016】
さらに、このガスセンサ回路装置では、活性判断手段により、ガス検出素子が非活性状態であると判断されたときには、兼用出力回路をデータ出力モードとする。固体電解質体からなるガス検出素子は、低温の非活性状態であるときには、酸素イオン伝導性を呈さないため、この状態の間に得られるセンサ出力信号及びガス検出信号は、ガス濃度を適切に示したものではなく、出力を要しない。そこで、ガス検出素子が非活性状態であると判断したときには、データ信号を出力するようにすれば、ガス検出信号の出力を要する活性状態のときに影響することなく、データ信号を外部に出力することができる。なお、ガス検出素子が活性状態であるか非活性状態であるかについては、例えば、ガス検出素子の素子抵抗の値を測定することによって判断することができる。
また、ガス検出信号の出力を要しないと判断されたときに、兼用出力回路をデータ出力モードとすることもできる。これにより、センサ外部でのガス検出信号の利用に影響することなく、データ信号を出力することができる。なお、ガス検出信号の出力を要しない場合としては、上述のガス検出素子が活性状態となる前の非活性状態である場合のほか、フューエルカット状態である場合やアイドリングストップ状態である場合などが挙げられる。但し、フューエルカット状態やアイドリングストップ状態について、判断手段で判断するにあたって、センサ外部(例えば、ECUや燃料噴射装置、他のセンサ(クランク角センサなど))からこれらに関する情報を受け取って判断するのが好ましい。
【0017】
さらに、上述のガスセンサ回路装置であって、前記ガス検出素子または当該ガスセンサ回路装置自身に関する固有情報を記録した記録部を備え、前記データ信号生成回路は、上記固有情報を前記データ信号として出力する固有情報出力手段を含むガスセンサ回路装置とすると良い。
【0018】
このガスセンサ回路装置は、固有情報出力手段を含み、記録された固有情報をデータ信号として出力する。
ガスセンサのガス検出素子は、製造上のばらつきに起因して、特定ガスのガス濃度とセンサ出力の関係を表すゲイン特性が、素子毎に異なる。そこで、このガス検出素子のゲイン特性の相違を補正する目的で、ガス検出素子に接続したケーブルのコネクタの端子に、ゲイン特性のランクに応じた抵抗値を有するラベル抵抗を接続することが行われている(例えば、特開平11−281617号公報を参照)。このガスセンサ回路装置では、例えば、このラベル抵抗の抵抗値のように、記録されたガス検出素子の固有情報を外部装置に出力することができる。かくして、このような固有情報をガスセンサ回路装置から出力することで、外部装置において、ゲイン特性の補正処理を行う等、固有情報の利用が可能となる。
なお、固有情報としては、この他に、回路のゲイン・オフセット情報など、ガスセンサ回路装置自身の固有情報も挙げられる。また、これらの固有情報の記録手法としては、前述のラベル抵抗によるほか、固有情報を不揮発性メモリなどに記録しておくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るガスセンサ回路装置1の概略構成を示す図である。ガスセンサ回路装置1は、マイクロプロセッサ70、センサ素子部制御回路40、ヒータ部制御回路50、ラベル抵抗読取回路60及び兼用出力回路30を備える。また、このガスセンサ回路装置1は、ガスセンサ2及びECU100(外部装置)に接続されている。
なお、ガスセンサ2は、図示しない車両の内燃機関の排気管に装着され、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)をリニアに検出して、内燃機関における空燃比フィードバック制御に用いる空燃比センサ(全領域酸素センサ)である。このガスセンサ2は、酸素濃度を検出するセンサ素子部3、及びセンサ素子部3を加熱するヒータ部4を有する。
【0021】
ガスセンサ2のセンサ素子部3は、ポンプセル14と起電力セル24とを、排気ガスを導入可能な中空の測定室(図示しない)を構成するスペーサを介して積層した構成を有し、起電力セル24のうち測定室に面する側とは逆側に位置する電極を遮蔽層(図示しない)により閉塞した公知の構成を有するものである。ポンプセル14及び起電力セル24は、それぞれ、板状でジルコニアを主体とした酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を基体とし、その両面には多孔質の白金により電極12,16及び電極22,28が形成されている。ポンプセル14の一端の電極16と、起電力セル24の一端の電極22とは、互いに導通すると共に、センサ素子部3の端子COMに接続している。また、ポンプセル14の他端の電極12は、センサ素子部3の端子Ip+に接続し、起電力セル24の他端の電極28は、センサ素子部3の端子Vs+に接続している。
【0022】
また、センサ素子部3は、端子Vs+,Ip+,COMにそれぞれ接続された3本のリード線41,42,43を介して、ガスセンサ回路装置1のセンサ素子部制御回路40に接続されている。センサ素子部制御回路40は、ASICを中心に構成され、センサ素子部3の起電力セル24に微小電流Icpを流しつつ、起電力セル24の両端に発生する起電力セル電圧Vsが450mVになるように、ポンプセル14に流すポンプセル電流Ipを制御して、測定室に導入された排気ガス中の酸素の汲み入れ汲み出しを行う。なお、ポンプセル14に流れるポンプセル電流Ipの電流値及び電流の方向は、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)に応じて変化することから、このポンプセル電流Ipに基づいて排気ガス中の酸素濃度を算出することが可能である。
【0023】
このセンサ素子部制御回路40では、ポンプセル電流Ipの大きさは、アナログの電圧信号に変換されたガス検出信号Vipとして検出され、ガス検出信号出力端子44から出力される。また、このガス検出信号出力端子44は、後述する兼用出力回路30を介して、信号出力ポートVoutに接続されており、ガス検出信号Vipが、ガスセンサ回路装置1の外部に向けて出力される。さらに、信号出力ポートVoutには、ハーネス102が接続されており、ガス検出信号Vipは、ハーネス102を介してECU100のA/D入力ポート101に入力される。これにより、ECU100は、排気ガス中の酸素濃度を検出して、空燃比の制御を行う。
【0024】
また、センサ素子部制御回路40は、ガス検出信号Vipの検出の他に、センサ素子部3の起電力セル24の素子抵抗Rpvsに応じて変化する電圧変化量ΔVsを検出する機能を有する。マイクロプロセッサ70のシリアル送信ポート72は、センサ素子部制御回路40のコマンド受信ポート46と接続されており、センサ素子部制御回路40は、マイクロプロセッサ70からの指示により、起電力セル24に一時的に定電流を流して、電圧変化量ΔVsを検出する。なお、電圧変化量ΔVsは、定電流を流した際に起電力セル24の素子抵抗Rpvsに生じる電圧降下に対応した電圧を、サンプルホールドしたものである。
【0025】
この電圧変化量ΔVsは、センサ素子部制御回路40の電圧変化量出力端子45から出力され、マイクロプロセッサ70のA/D入力ポート71に入力される。マイクロプロセッサ70は、電圧変化量ΔVsから、起電力セル24の素子抵抗Rpvsを算出すると共に、算出した素子抵抗Rpvsに基づいて、次述するヒータ部制御回路50により、ガスセンサ2のヒータ部4の通電制御を行う。また、ガスセンサ2のセンサ素子部3が活性状態となる前の非活性状態においては、素子抵抗Rpvsは絶縁状態に近く、大きな値を示す。このため、素子抵抗Rpvsの値から、センサ素子部3が活性状態であるか非活性状態であるかを判断することもできる。なお、ガス検出信号Vip及び電圧変化量ΔVsを検出するためのセンサ素子部制御回路40内部の回路構成は、公知のものであるため、詳細については説明を省略する。
【0026】
ヒータ部制御回路50は、2本のリード線51,52を介して、ガスセンサ2のヒータ部4に接続されると共に、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート73に接続され、ヒータ部4への通電のオンオフをPWM制御する。ヒータ部4は、ガスセンサ2のセンサ素子部3に一体化されており、ヒータ部4による加熱で、センサ素子部3のポンプセル14及び起電力セル24を活性化させることで、酸素濃度の検出が可能となる。
【0027】
また、ガスセンサ2に繋がるケーブルのコネクタの端子には、ラベル抵抗5が接続されている。このラベル抵抗5は、センサ素子部3が検出する酸素濃度と、センサ出力となるポンプセル電流Ipの関係を表すゲイン特性のランクに応じた抵抗値を有する。ラベル抵抗5の両端は、ガスセンサ回路装置1のラベル抵抗読取回路60に接続されており、ラベル抵抗読取回路60内の分圧回路(不図示)により、ラベル抵抗5の抵抗値に相当する電圧が、マイクロプロセッサ70のA/D入力ポート74に入力される。これにより、マイクロプロセッサ70は、ラベル抵抗5の抵抗値、従ってセンサ素子部3のゲイン特性のランクを取得することができる。
【0028】
次いで、兼用出力回路30について説明する。この兼用出力回路30は、スイッチング素子であるFET32及びFET33からなる切り替え回路31、オペアンプ34、抵抗器35、及びコンデンサ36を有する。切り替え回路31のFET32は、PチャネルのMOSFETであり、ゲート32Gは、マイクロプロセッサ70のI/O出力ポート75に接続され、ソース32Sは、マイクロプロセッサ70の電源と共通の電源電圧Vccに接続されている。また、FET33は、NチャネルのMOSFETであり、ゲート33Gは、マイクロプロセッサ70のI/O出力ポート76に接続され、ソース33Sは、GNDに接続されている。そして、FET32のドレイン32DとFET33のドレイン33Dとが、Q点で接続されている。
【0029】
抵抗器35は、センサ素子部制御回路40のガス検出信号出力端子44に直列に接続されると共に、ガス検出信号出力端子44とは反対側の一端がQ点及びコンデンサ36の一端に接続されている。また、コンデンサ36の他端はGNDに接続されており、抵抗器35とコンデンサ36とで、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成している。なお、抵抗器35は、切り替え回路31のFET32あるいはFET33がオンしたときのための電流制限抵抗を兼ねている。また、Q点は、バッファアンプを構成するオペアンプ34の非反転入力端子+に入力され、オペアンプ34の出力端子は、反転入力端子−に負帰還接続されると共に、信号出力ポートVoutに接続されている。
【0030】
ここで、
図1に加えて、
図2のタイミングチャートを参照しつつ、兼用出力回路30の動作について、さらに詳しく説明する。マイクロプロセッサ70のI/O出力ポート75をハイレベル、I/O出力ポート76をローレベルとすると(
図2の期間E)、切り替え回路31のFET32及びFET33が共にオフとなり、ガス検出信号出力端子44から出力されるガス検出信号Vipは、抵抗器35及びオペアンプ34を介して、そのままの電圧で信号出力ポートVoutから出力される。なお、オペアンプ34により構成されるバッファアンプは、抵抗器35により、ガス検出信号Vipの出力インピーダンスが高くなるので、この影響を無くすべく、信号出力ポートVoutの出力の最終段に設けられている。
【0031】
一方、I/O出力ポート75及びI/O出力ポート76を、共にローレベルとすると(
図2の期間B及び期間D)、FET32がオン、FET33がオフとなる。すると、Q点は、ガス検出信号Vipの電圧に関係なく、電源電圧Vccと同電位となる。これにより、信号出力ポートVoutからは、データ信号SDとしてハイレベルが出力される。なお、オペアンプ34は、単電源用のオペアンプであって、その電源電圧はVccよりも高電位とされている。
また、I/O出力ポート75及びI/O出力ポート76を、共にハイレベルとすると(
図2の期間A及び期間C)、FET32がオフ、FET33がオンとなる。すると、Q点は、ガス検出信号Vipの電圧に関係なく、GND電位となる。これにより、信号出力ポートVoutからは、データ信号SDとしてローレベルが出力される。
【0032】
このように、切り替え回路31をなすFET32及びFET33を共にオフした場合(即ち、I/O出力ポート75をハイレベル、I/O出力ポート76をローレベルにした場合)には、兼用出力回路30は検出信号出力モードとなって、信号出力ポートVoutからガス検出信号Vipが出力される。一方、FET32及びFET33のいずれかをオンした場合(即ち、I/O出力ポート75及びI/O出力ポート76を、共にローレベルにした場合、あるいは、共にハイレベルにした場合)には、兼用出力回路30はデータ出力モードとなって、信号出力ポートVoutからデータ信号SDのハイレベルまたはローレベルが出力される。そして、このハイレベルとローレベルを経時的に複数連なって出力することで、シリアル出力やPWM出力によるデータ信号SDの出力が可能となる。ところで、このデータ出力モードにおいて、データ信号SDの出力のレベルは、
図2からも判るように、I/O出力ポート75及びI/O出力ポート76のレベルの反転となっている。なお、I/O出力ポート75がローレベル、I/O出力ポート76がハイレベルとなるパターンは、FET32及びFET33が共にオンとなって、電源電圧VccとGNDがショートするため、使用禁止である。また、データ出力モードにおいては、FET32及びFET33のオンオフの切り替えの際に、それぞれのオンオフの遅延時間により、FET32のオンとFET33のオンとが重なる危険性があるため、これらの遅延時間を考慮して、両者を共にオフにする期間を設けてある。
かくして、兼用出力回路30によって、信号出力ポートVoutからガス検出信号Vipに加えて、データ信号SDが出力できる。
【0033】
なお、前述したように、マイクロプロセッサ70は、電圧変化量ΔVsから、センサ素子部3の起電力セル24の素子抵抗Rpvsを算出可能であり、さらに、この素子抵抗Rpvsの値から、センサ素子部3が活性状態であるか非活性状態であるかも判断できる。本実施形態では、ガスセンサ回路装置1が起動されると、まず、マイクロプロセッサ70が、センサ素子部3及びガスセンサ回路装置1に関する固有情報IDを取得する。具体的には、ラベル抵抗読取回路60を用いて、ラベル抵抗5の抵抗値、従ってセンサ素子部3のゲイン特性のランクを取得する。また、別途、マイクロプロセッサ70が内蔵する不揮発性メモリ77に記録されたガスセンサ回路装置1自身のゲイン・オフセット情報を取得する。次に、ヒータ部制御回路50を用いて、ガスセンサ2のヒータ部4の通電を開始すると共に、センサ素子部3が非活性状態のときは、兼用出力回路30をデータ出力モードとして、信号出力ポートVoutから、固有情報ID(センサ素子部3のゲイン特性のランク、及びガスセンサ回路装置1自身のゲイン・オフセット情報)をデータ信号SDとして出力する。その後、センサ素子部3が活性状態になると、兼用出力回路30を検出信号出力モードとして(FET32及びFET33を共にオフ)、信号出力ポートVoutからガス検出信号Vipを出力する(
図2参照)。
【0034】
次いで、本実施形態に係るガスセンサ回路装置1のうち、マイクロプロセッサ70の処理動作を、
図3のフローチャートを参照して説明する。なお、
図3のフローチャートは、マイクロプロセッサ70が実行するプログラムのうち、データ信号の出力プログラムについてのフローを示したものであり、マイクロプロセッサ70が別途実行する電圧変化量ΔVsの検出プログラム、素子抵抗Rpvsの算出プログラム、及びヒータ部4の通電制御プログラム等の詳細については、説明を省略する。
【0035】
まず、ガスセンサ回路装置1のマイクロプロセッサ70が起動されると、ステップS1で必要な初期設定がなされる。また、データ信号の送信済みフラグが0に設定される。
【0036】
次に、ステップS2に進み、ラベル抵抗読取回路60を用いて、ラベル抵抗5の抵抗値を読み取り、センサ素子部3のゲイン特性のランクを取得する。また、この他に、不揮発性メモリ77に記録されたガスセンサ回路装置1自身のゲイン・オフセット情報も取得する。
【0037】
続くステップS3では、センサ素子部制御回路40及びヒータ部制御回路50の動作を開始し、併せて、電圧変化量ΔVsの検出プログラム、素子抵抗Rpvsの算出プログラム、及びヒータ部4の通電制御プログラム等の実行を別途開始させる。
【0038】
次に、ステップS4に進み、別途算出された素子抵抗Rpvsを用いて、センサ素子部3が非活性状態であるか否かを判断する。非活性状態であると判断された場合(Yes)には、さらにステップS5に進み、送信済みフラグが0であるか否かを判断する。ステップS5で送信済みフラグが0である場合(Yes)、即ち、まだデータ信号SDが送信されていない場合には、さらにステップS6に進む。そして、ステップS6では、切り替え回路31のFET32あるいはFET33のいずれかをオンにすることにより、兼用出力回路30をデータ出力モードとし、ステップS2で取得したセンサ素子部3のゲイン特性、及びガスセンサ回路装置1のゲイン・オフセット情報をデータ信号SDとして、信号出力ポートVoutからシリアル出力する。
【0039】
ステップS6でのデータ信号SDの出力が終了すると、続くステップS7で、送信済みフラグを1に設定する。そして、続くステップS8では、所定時間(例えば、100msec)の経過を待ち、所定時間が経過すると(Yes)、ステップS4に戻る。その後は、送信済みフラグが1であるため、ステップS5でNoとなり、ステップS4、ステップS5及びステップS8を繰り返しながら、ステップS4で、センサ素子部3が活性状態(No)となるのを待つ。
【0040】
そして、センサ素子部3が活性状態になると、ステップS4でNoと判定され、ステップS9に進む。ステップS9では、切り替え回路31のFET32及びFET33を共にオフにして、兼用出力回路30を検出信号出力モードに設定し、その後、本データ信号の出力プログラムの実行を終了する。
なお、本実施形態では、センサ素子部3が活性状態になり、ステップS4でNoと判定された後に、ステップS9を実行して、兼用出力回路30を検出信号出力モードに設定した。しかし、ステップS7の時点で、切り替え回路31のFET32及びFET33を共にオフにして、兼用出力回路30を検出信号出力モードとしておいても良い。
【0041】
かくして、センサ素子部3が非活性状態であるときに、信号出力ポートVoutからデータ信号SDがシリアル出力され、その後、センサ素子部3が活性状態になると、信号出力ポートVoutからガス検出信号Vipが出力される。
【0042】
なお、本実施形態において、ガスセンサ2のセンサ素子部3が本発明におけるガス検出素子に相当し、センサ素子部3のポンプセル14に流れるポンプセル電流Ipが本発明におけるセンサ出力信号に相当する。また、センサ素子部制御回路40が本発明における検出信号生成回路に相当し、センサ素子部制御回路40で検出されるガス検出信号Vipが本発明におけるガス検出信号に相当する。また、マイクロプロセッサ70がデータ信号SDを生成するデータ信号生成回路に相当する。
さらに、ステップS4を実行しているマイクロプロセッサ70が、本発明における活性判断手段に相当する。また、ステップS6(データ出力モード)及びステップS9(検出信号出力モード)を実行しているマイクロプロセッサ70が、本発明におけるモード切替手段に相当する。また、センサ素子部3のゲイン特性のランク、及びガスセンサ回路装置1のゲイン・オフセット情報が本発明における固有情報IDに相当し、ゲイン特性のランクに応じた抵抗値を有するラベル抵抗5、及びゲイン・オフセット情報を記録した不揮発性メモリ77が本発明における記録部に相当する。また、ステップS6を実行しているマイクロプロセッサ70が、本発明における固有情報出力手段に相当する。従って、ステップS6は、モード切替手段(データ出力モード)と固有情報出力手段を兼ねている。
【0043】
以上で説明したように、本実施形態のガスセンサ回路装置1では、ガス検出信号Vipに加えて、データ信号SDとしてデータを信号出力ポートVoutからECU100に向けて出力することができる。
【0044】
さらに、本実施形態のガスセンサ回路装置1では、モード切替手段(ステップS6及びステップS9)が、切り替え回路31を用いて、兼用出力回路30の検出信号出力モードとデータ出力モードとの切り替えを行う。これにより、ガス検出信号Vipとデータ信号SDとを時間的に分離して、別々に出力することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のガスセンサ回路装置1では、ガス検出信号Vipの出力を要しないと判断したとき、具体的には、センサ素子部3が非活性状態であると判断したときには、モード切替手段(ステップS6)で、兼用出力回路30をデータ出力モードとしてデータ信号SDを出力する。これにより、ガス検出信号Vipの出力を要する活性状態における、ECU100でのガス検出信号Vipの取得に影響することなく、データ信号SDを出力することができる。
【0046】
さらに、本実施形態のガスセンサ回路装置1では、ラベル抵抗5により記録されたセンサ素子部3のゲイン特性のランク、及び不揮発性メモリ77に記録されたガスセンサ回路装置1のゲイン・オフセット情報等の固有情報IDを、データ信号SDとしてECU100(外部装置)に出力することができる。これにより、ECU100において、ゲイン特性の補正処理を行う等、固有情報IDの利用が可能となる。
【0047】
以上において、本発明のガスセンサ回路装置を、実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、本実施形態では、ガスセンサ2として、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)を検出する空燃比センサを用いたが、「ガスセンサ」は、空燃比センサに限られず、酸素濃度の濃淡(リッチ/リーン)を検出する酸素センサ、窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するNOxセンサなどであっても良い。
また、本実施形態で用いた兼用出力回路30の回路構成は、検出信号出力モードとデータ出力モードとの切り替えを実現する回路の一例であり、他の回路構成を用いて、同様の機能を実現しても良い。また、このような回路に代えて、アナログのガス検出信号にデータ信号を重畳して出力する回路として、ガス検出信号とデータ信号を同時に出力しても良い。
また、本実施形態では、データ信号SDをシリアル出力したが、データ信号の出力形式としては、シリアル出力に代えて、パルスのデューティ比を変えることによって情報を出力するPWM出力など、他の出力形式を用いても良い。
また、本実施形態では、センサ素子部3が非活性状態であるときにのみ、兼用出力回路30をデータ出力モードに切り替えてデータ信号SDを出力したが、活性状態の途中で検出信号出力モードとデータ出力モードとを適時切り替えてアナログのガス検出信号Vipのほかデータ信号を出力しても良い。具体的には、フューエルカット時やアイドリングストップ時など、ガス検出信号の出力を要しない場合に、検出信号出力モードとデータ出力モードとを切り替えてデータ信号を出力する構成としても良い。
また、本実施形態では、センサ素子部3あるいはガス回路装置1自身に関する固有情報IDをデータ信号SDとして出力したが、この他に、センサ素子部3(ガスセンサ2)やガス回路装置1の異常を検出した場合のアラーム情報などを出力するようにしても良い。