【文献】
四方 絢子,商品属性の重視度を把握することによる嗜好推定及び商品推薦手法の開発,情報処理学会研究報告 2012 April [DVD−ROM],一般社団法人情報処理学会,2012年 4月15日,p.1−8
【文献】
沓名 拓郎,選択型ハイブリッドコンジョイント分析手法と信頼性指標の提案,マーケティング・サイエンス,日本マーケティング・サイエンス学会,2010年 4月19日,第17巻、第1・2号,p.31−50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の入力部は、前記複数の仮想商品のうち一部の仮想商品に対する序列を決めるためのユーザ入力を複数回受け付けることにより、前記複数の仮想商品全体の序列をつける、
請求項1又は請求項2記載の情報処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の説明及び参照する図面の記載において、同一又は類似の構成には、それぞれ同一又は類似の符号が付されている。
【0014】
(実施形態)
図1乃至
図12は、実施形態を説明するための図である。以下、これらの図を参照しながら、以下の流れに沿って実施形態を説明する。まず「1」で実施形態に係る情報処理サーバを含むシステム全体の機能構成を説明する。その上で、「2」で情報処理サーバの処理の流れの概要を説明した上で、「3」で、それぞれの処理の詳細を、具体例を交えながら説明する。「4」では、情報処理サーバを実装可能なハードウェア構成の具体例を示す。最後に、「5」以降で、本実施形態に係る効果等を説明する。
【0015】
(1 システムの機能構成)
(1.1 システム概要)
図1は、情報処理システムの実施形態である情報処理サーバ100を含むシステム1の概略構成を示す図である。システム1は、
図1に示すように、情報処理サーバ100と、物件の売却希望者の端末S1乃至Sn(以下、総称して端末Sとも呼ぶ。)と、購入希望者の端末B1乃至Bm(以下、総称して端末Bとも呼ぶ。)とを含む。情報処理サーバ100、端末S、及び端末Bは、それぞれネットワークNを介して相互に通信可能である。なお、ネットワークNの具体例としては、インターネットや、情報処理サーバ100等を管理する不動産業者の社内ネットワーク等を挙げることができる。
【0016】
システム1は、売却希望者が登録した不動産物件の情報を、それぞれの購入希望者の嗜好に合わせて提供する。より具体的には、売却希望者は、端末Sを操作することにより、売却したい物件の物件情報を、情報処理サーバ100の管理する物件情報データベース(DB)110に登録する。購入希望者は、端末Bを操作することにより、各購入希望者の嗜好に併せた物件情報の取得を可能とするための、パラメータの設定や仮想物件への評価(パラメータ設定や仮想物件への評価の詳細は後述する。)を、情報処理サーバ100に対して行う。情報処理サーバ100は、当該購入希望者からのパラメータ設定や物件評価に基づいて、購入希望者の嗜好に併せた好適な物件情報を、端末Bに対して送信する。
【0017】
ここで、端末SやBを操作するのは、物件の売却希望者や購入希望者自身である必要は必ずしもない。例えば、例えば売約希望者や購入希望者から依頼を受けた不動産仲介業者や、不動産業者自身等であることも考えられる。以下では、端末SやBを操作するのは、物件の売却希望者や購入希望者であるものとして説明する。
【0018】
なお、本実施形態では、不動産物件、特に売買物件を対象に処理を行う場合を例に説明するが、これに限られるものではない。例えば、不動産物件であっても賃貸物件を扱うようにしても良いし、不動産以外の物品情報や、その他、求人情報(これらを纏めて「物件情報」と呼ぶことができる。)を処理対象とすることも考えられる。また、本実施形態では、システム1が新築物件と中古物件との双方を対象とする場合を例に説明するが、これに限られるものではなく、どちらか一方の物件のみを対象として扱うようにすることも考えられる。
【0019】
情報処理サーバ100は、前述の通り、売却希望者の端末Sから売却対象の物件情報の登録を受けると共に、購入希望者の端末Bから購入者の嗜好を示すパラメータ設定や仮想物件の評価を行うための操作情報を受信する。また情報処理サーバ100は、購入希望者の端末Bに対して、推薦する物件の情報を送信する。情報処理サーバ100の構成の詳細は、「1.2」で後述する。
【0020】
端末Sは売却希望者が、端末Bは購入希望者が、それぞれ操作する1台以上の情報処理端末である。端末S及びBは、パーソナルコンピュータや携帯電話(いわゆるフィーチャーフォンであるかスマートフォンであるかは問わない)、タブレット端末等の各種情報処理装置として実現可能である。なお、1台の情報処理端末が、売却希望者の端末S及び購入希望者の端末Bとして動作することも考えられる。更には、端末S及び端末Bの少なくとも一方を、情報処理サーバ100と併せた1つの情報処理装置として実現することも考えられる。
【0021】
(1.2 情報処理サーバの構成)
以下、情報処理サーバ100の機能構成を説明する。情報処理サーバ100は、
図1に示すように、物件情報DB110、GUI(Graphical User Interface)提供部120、コンジョイント分析部130、及び物件評価部140を含む。
【0022】
物件情報DB110は、売却希望者が端末Sを操作して登録する物件情報を管理するデータベースであり、例えば図示しないHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等に格納される。
【0023】
図2に、物件情報DB110に登録される物件情報の具体例を示す。
図2に示すように物件情報は、基本情報、立地、建物、住居、管理、画像といったセグメント毎に、様々な属性情報を含んでいる。例えば、セグメント「基本情報」には建物名や部屋番号、所在住所といった属性に対し、それぞれ「○×○×○×」、「201」、「東京都○×区○× △−□」といった属性値が、セグメント「立地」には、沿線及び駅名、徒歩分数、及び用途地域等の属性に対し、それぞれ「○×線」、「○×駅」、「5分」、「第2種中高層住居専用地域」といった属性値が設定されている。また、セグメント「建物」には、それぞれ新築区分、築年月、及び売主ブランド評価といった各属性に対し、「中古」、「2000年1月」、「A」といった各属性値が設定されている。セグメント「住居」に対しては、所在階、所在位置、専有面積、日当たり評価、室内空間の広がり評価、室外眺望の解放感評価といった各属性に対し、「2階」、「角」、「**m
2」、「A」、「B」、「C」
の各属性値が設定されている。この他、セグメント「管理」には、管理組合や駐車場、駐輪場に関する情報が、セグメント「画像」には、図示しない建物内外の写真等がそれぞれ含まれる。
【0024】
なお、物件情報には
図2に例示する以外の属性情報を含めてもよく、また、
図2に例示した属性情報の一部を省略するようにしても良い。
【0025】
GUI提供部120は、端末S及びBとの間で情報を送受信するためのユーザインタフェースを提供する。本実施形態において、GUI提供部120は
図1に示すように、物件登録部121、パラメータ設定部123、コンジョイント調査部125、及び物件提示部127を含む。
物件登録部121は、
図2に具体例を示した物件情報の登録を売却希望者の端末S1から受け付けるためのユーザインタフェースを提供する。
【0026】
パラメータ設定部123は、後述する
図4乃至
図6に具体例を示す画面において、購入希望者であるユーザから、ユーザの嗜好を示すパラメータ(嗜好情報)の設定を受け取るためのGUIを生成して端末Bへ送信すると共に、端末Bから当該パラメータを受信する。このときユーザは、例えば、それぞれの物件情報に紐付けられエリアや街並み、駅からの距離等の各種項目(属性)に対して、理想的とする範囲(例えば「A」とする。)、許容しうる範囲(例えば「B」とする。)、許容できない(NGの範囲)等を設定することが可能である。このうち、理想的とする範囲、及び許容しうる範囲に収まる物件については、後述のコンジョイント分析の対象とする。また、許容できない範囲のパラメータを1つでも有する物件情報に関しては、スクリーニングすることによりユーザへの推薦対象外(評価対象外)とする。
【0027】
コンジョイント調査部125は、後述する
図7や
図8に具体例を示す画面において、購入者であるユーザから、当該ユーザの嗜好を調査するための仮想物件情報を提示するとともに、当該仮想物件情報の序列をつけるための操作入力を受ける。
【0028】
ここで、それぞれの仮想物件情報は、パラメータ設定部123でのパラメータ設定により「理想的とする範囲」や「許容しうる範囲」として設定されたパラメータが、それぞれ属性値として設定された仮想的な物件の情報である。仮想物件情報は、物件情報DB110に登録された実在する物件の物件情報である必要はなく、ユーザの嗜好を把握するために仮想的に作ることができる。それぞれの仮想物件情報は、一部の属性情報の値(属性値)が少なくとも互いに異なる。このような属性情報が異なる仮想物件情報同士に対してユーザが序列をつけることで、そのユーザにとって、どの属性が他の属性よりも大きな意味を持っているかが、コンジョイント分析部130が行うコンジョイント分析によりわかる。
【0029】
なお、コンジョイント調査部125が、全ての属性情報の組合せについて仮想物件情報を作成することも考えられるが、そのように実装すると仮想物件情報の数が膨大となってしまうためにユーザが適切に序列をつけられなくなる可能性が高くなる。そこで本実施形態では、全概念法(フルプロファイル法)の直交表を用いる手法により、ユーザが序列を付ける仮想物件の数を減らすものとする。
【0030】
物件提示部127は、物件情報DB110に登録された各物件情報を、購買希望者であるユーザの嗜好に応じて物件評価部140が評価した結果に基づいて、端末Bに出力(送信)する。これにより、ユーザは自身の嗜好に応じた順に、好適に物件情報を得ることが可能となる。物件提示部127による物件の提示方法の具体例は、
図11を参照しながら後述する。
【0031】
コンジョイント分析部130は、コンジョイント調査部125が行った、仮想物件に対して序列をつけるためのコンジョイント調査の結果に基づいて、ユーザの嗜好を分析するコンジョイント分析を行う。コンジョイント分析では、各物件情報が有する属性に対する相対的な重要度を求めることができる。このコンジョイント分析の手法としては、最小二乗分析(重回帰分析)、単調回帰分析、ロジットモデル、プロビットモデル等種々考えられるが、ここでは最小二乗分析を用いる場合を例に説明する。コンジョイント分析部130が行うコンジョイント分析の詳細は、
図9を参照しながら後述する。
【0032】
物件評価部140は、各物件情報が有する属性の属性値を、コンジョイント分析部130で行った属性間の相対的な重要度に応じて評価することで、各物件情報に対するユーザの選好の度合いを算出する。物件評価部140による物件の評価方法の具体例については、
図11を参照しながら後述する。
【0033】
(2 処理の流れ)
以下、
図3を参照しながら、情報処理サーバ100の処理の流れを説明する。
図3は、情報処理サーバ100における物件提示に至る処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図3のフローチャートにおいて、物件登録に係る処理は省略している。
【0034】
ここで、後述の各処理ステップは、処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して若しくは並列に実行することができ、また、各処理ステップ間に他のステップを追加しても良い。更に、便宜上1つのステップとして記載されているステップは複数のステップに分けて実行することもでき、便宜上複数に分けて記載されているステップを1ステップとして実行することもできる。
【0035】
まず、情報処理サーバ100は、購入希望者であるユーザの端末Bからの要求に応じて、パラメータ設定のためのユーザインタフェースを端末Bに提供することにより、端末Bからパラメータ(属性値)の入力を受ける(S301)。ここで受け取るパラメータ(属性値)は、前述の通り、例えば、物件情報に紐付けられエリアや街並み、駅からの距離等の各種項目(属性)に対して、理想的とする範囲(例えば「A」とする。)、許容しうる範囲(例えば「B」とする。)、許容できない(NGの範囲)を設定するためのものである。ユーザから設定可能なパラメータの具体例の詳細については、
図4乃至
図6を参照しながら説明する。
【0036】
コンジョイント調査部125は、S301でユーザから入力を受けたパラメータを元に、ユーザに対するコンジョイント調査を、2段階(基本コンジョイント調査(S303及びS305)とプレミアムコンジョイント調査(S307及びS309)と呼ぶ。)に分けて行う。基本コンジョイント調査とプレミアムコンジョイント調査とは、ユーザに対して嗜好調査を行う属性群がそれぞれ異なる。本実施形態では、基本コンジョイント調査では、エリア、街並み、駅距離(駅からの徒歩分数)、築年数(または新築か中古かの情報も含む)、広さ、日当たり、位置関係(例えばマンション内の位置等であり、角部屋かどうか、最上階かどうか、2階以上かどうか、等の情報が含まれる。)、及び価格の情報が調査の対象としている。一方、プレミアムコンジョイント調査では、広さ、売主ブランド(ブランド評価)、眺望、空間の広がり(空間を広く感じるかどうか)、グレード感、及び価格が調査対象としている。
【0037】
このように、コンジョイント調査を2段階の調査としているのは、それぞれの調査において、ユーザの比較回数を少なくするためである。調査対象の属性数が増えると、その分、ユーザが序列を付けるべき仮想物件の数も指数的に増加する。しかしながら前述の通り、仮想物件の数が多くなってしまうとユーザが混乱を来すために、適切に序列をつけられなくなる可能性が高まる。そこで本実施形態では、属性を2つのグループに分けることで、コンジョイント調査に必要となる仮想物件の数を減らし、結果としてユーザの序列づけを容易としている。
【0038】
なお、基本コンジョイント調査とプレミアムコンジョイント調査とでそれぞれ調査対象とする属性の中で、広さ及び価格は、共通に調査対象項目となっている。これは、基本コンジョイント調査とプレミアムコンジョイント調査とで共通するパラメータを持たせることで、両属性の関係性を明確化し、両調査結果を統合するためである。この、調査結果の統合については、
図10及び
図11を参照しながら後述する。
【0039】
コンジョイント調査部125によるユーザへのコンジョイント調査の完了後、コンジョイント分析部130は、当該ユーザにおける属性間の相対的な重要度を評価するためのコンジョイント分析を行う(S311)。コンジョイント分析では、各物件情報が持ちうる各属性がどの属性値を取った時に、当該ユーザがどの程度評価するかの尺度(評価値に相当し、後述の「Utility」に当たる。)が算出される。
【0040】
物件登録部121は、コンジョイント分析部130によるコンジョイント調査の結果得られる尺度に従って、物件情報DB110に登録された各物件情報に対する評価を行う(S313)。より具体的には、まず、S301のパラメータ設定において、ユーザが許容できない(NG)として設定した範囲の属性値を有する物件を全てスクリーニング(除外)する。次に、残った物件情報に対して、それぞれが有する属性値に対して、コンジョイント分析で得られた尺度に従って評価することで、それぞれの物件情報に対する評価値(推定されるユーザの選好度)を算出する。本実施形態では、物件評価部140が算出する物件の評価値は、各物件情報に設定された属性値に係る評価値の合計に相当する。
【0041】
物件情報DB110に登録された物件情報に対する全ての処理が完了すれば、物件提示部127は、これらの物件情報を、選好度の順に並べてユーザの操作する端末Bへと送信(出力)する(S315)。これによりユーザは、自身の嗜好に併せた好適な物件情報のリストを得ることが可能となる。
【0042】
この後、もしユーザからパラメータの変更が入力されれば(S317のYes)、GUI提供部120は、当該パラメータの変更が、ユーザの嗜好の大きな変化を伴うものか否かを判別した上で(S319)、もしパラメータの変更が大きければ(S319のYes)S303から、パラメータの変更が小さければ(S319のNo)S313から処理をやり直す。パラメータの変更が大きい場合とは、例えば、ユーザの設定するパラメータの変更幅が閾値を超える場合や、複数のパラメータの数値を変更した場合等が考えられる。
【0043】
原則としては、パラメータの変更があった場合には、コンジョイント調査を再度やり直す方が精度が高くなると考えられるが、コンジョイント調査はユーザに対して負荷を強いるものであるため、本実施形態のように変更の小さい場合にはコンジョイント調査を省略することで、ユーザ負荷を軽減することが可能となる。
【0044】
(3 処理の具体例)
以下、
図3乃至
図11を参照しながら、情報処理サーバ100の処理の具体例を説明する。
【0045】
(3.1 パラメータの設定)
まず、
図4乃至
図6を参照しながら、ユーザからパラメータ設定を受ける方法の具体例を説明する。
図4乃至
図6は、ユーザからパラメータ設定を受ける際に、パラメータ設定部123が端末Bに対して提供するユーザインタフェースの具体例を示す図である。以下、順番に説明する。
【0046】
(3.1.1 エリアの設定)
図4は、ユーザが、対象物件に係るエリアを設定するための画面の具体例を示す図である。
図4の画面において、線41及び線43(描画線41、43ともいう。)は、それぞれユーザがマウス等を使用して入力するものであり、それぞれ、ユーザが探したい物件の理想的なエリア(図中「A」)を線41で、許容しうるエリア(図中「B」)を線43で、ユーザから入力を受ける。
【0047】
なお、エリアの設定方法はこれに限られるものではなく、種々考えられる。例えば路線を指定した上で当該路線の駅から徒歩分数を指定したり、学区を指定したり、地盤の強さで指定したり、といった指定方法を取ることも考えられる。
【0048】
(3.1.2 街並みの設定)
図5は、ユーザが、対象物件に係る街並みを設定するための画面の具体例を示す図である。
図5の例では、都市計画法で規定された用途地域毎にユーザが理想とするか(図中「A」)、許容しうるか(図中「B」)、許容できないか(図中「NG」)を設定する設定領域51と、各用途地域を説明するための説明領域53とから構成される。
【0049】
設定領域51では、前述の通り、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域等といった用途地域ごとに、理想とする領域(A)、許容しうる領域(B)、許容できない領域(NG)のいずれかに、ユーザが「○」を入力することで、ユーザの嗜好情報を登録できるようになっている。
【0050】
説明領域53では、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域等といった都市計画法上の用途地域毎に、それぞれの代表的な街並みの画像と共に、説明文が記載されている。ユーザは、当該説明を参照しながら、設定領域51でユーザの嗜好情報を登録することができる。
【0051】
(3.1.3 その他パラメータの設定)
図6は、ユーザがその他のパラメータを設定するための画面の具体例を示す図である。
図6の画面の例では、駅からの距離、新築、又は築年数、広さ、建物内の位置、日当たり、及び価格を設定することができる。
【0052】
駅からの距離に関しては、理想とする範囲(A)、許容しうる範囲(B)、それ以外(許容できない範囲。NG)を、それらの範囲を区切る閾値を入力することで設定できるようになっている。築年数や広さに関しても、築年数に関しては理想的な築年数の範囲(A)、許容できる築年数の範囲(B)、それ以外(許容できない範囲)が、広さに関しては理想的な専有面積の範囲(A)、許容しうる専有面積の範囲(B)、それ以外(許容できない範囲)が、それらの範囲を区切る閾値を入力することで設定できるようになっている。
【0053】
建物内の位置に関しては、「角部屋」(少なくとも2方向が他の部屋と隣接していない部屋)、「中部屋」(角部屋以外)のそれぞれに対して、「4階以上の最上階」、「4階以上の中階層」、「2〜3階」、「1階」が、購入者にとって理想的であるか(A)、許容しうるか(B)、許容できないか(NG)を、「○」を入力することにより設定できるようになっている。このとき、間口の情報を含めて評価するようにしても良い。
【0054】
日当たりに関しては、理想的な日当たり(
図6の例では「概ね南向きで、日照を遮るものがほとんどない。」)、許容しうる日当たり(
図6の例では「東や西を向いている、または南向きだが日照が少々遮られるが十分に明るい」)、許容できない日当たり(
図6の例では「あまり日が当たらない」)の条件を、それぞれユーザが設定できるようになっている。
【0055】
価格に関しては、予算とする金額の範囲、少し安くて嬉しい価格の範囲、限界的上限価格の範囲、それ以外(許容できない範囲)を、それぞれの閾値を入力することで設定できるようになっている。
【0056】
なお、ユーザが設定可能なパラメータ(属性)や、後述のコンジョイント調査及びコンジョイント分析の対象とする項目(属性)は本実施形態のものに限られるものではない。例えば、間取りなどの他の属性を調査項目とすることも考えられる。
【0057】
(3.2 コンジョイント調査)
続いて、
図7及び
図8を参照しながら、コンジョイント調査に係る画面の具体例を説明する。
図7及び
図8は、コンジョイント調査の際に、コンジョイント調査部125が端末Bに対して提供するユーザインタフェースの具体例を示す図である。以下、順番に説明する。なお、コンジョイント調査の手法としては、本実施形態で用いている全概念法(プロファイル法)の順位法の他、二因子一覧法や一対比較法等、多数の手法がある。ユーザの各属性に対する嗜好の度合いが最終的にわかる調査方法であれば、どのような手法を用いても良い。
【0058】
(3.2.1 基本コンジョイント調査)
図7は、ユーザに対して基本コンジョイント調査を行う際の画面の具体例を示す図である。
図7の例では、基本コンジョイント調査に係る属性であるエリア、街並み、駅からの距離、築年数、広さ、日当たり、建物内の位置、価格についての属性値が設定された仮想物件に係る情報が、カード1及びカード2として示されている。
【0059】
ここで、各カードに設定された属性値は、上記「3.1」で入力されたパラメータに基づくものであり、また、前述のとおり、コンジョイント調査に用いる各仮想物件情報は、それぞれ属性値の少なくとも一部が異なる。
図7の例では、築年数(カード1は築5年、カード2は築20年)、日当たりの具合(カード1は日当たりが少ない、カード2は日当たりがとても良い)、街並み(カード1はとても良い街並み、カード2は問題ない街並み)がそれぞれ異なり、他の属性値は同一である。
【0060】
ユーザは、カード1とカード2であれば、どちらの物件をより好むかを選ぶ。このような、2つの仮想物件に対する序列づけを何度も繰り返すことにより、コンジョイント調査部125が基本コンジョイント調査用に作成した、全ての仮想物件に係る情報のユーザの序列を、コンジョイント調査部125が得ることが可能となる。
【0061】
(3.2.2 プレミアムコンジョイント調査)
図8は、ユーザに対してプレミアムコンジョイント調査を行う際の画面の具体例を示す図である。
図8の例では、プレミアムコンジョイント調査に係る属性である広さ、売り主ブランド、眺望、空間の広がり、グレード感、及び価格に係る情報が、カード1及びカード2として示されている。
【0062】
基本コンジョイント調査の場合と同様に、各カードに示された各仮想物件情報は、それぞれ属性値の少なくとも一部が異なる。
図8の例では、広さ、眺望、空間の広がりに係る情報がそれぞれ異なり、他の属性値は同一である。
【0063】
ユーザが、2枚のカードに係る比較を繰り返すことで、コンジョイント調査部125がプレミアムコンジョイント調査用に作成したすべての仮想物件に係るユーザの序列を把握する点については、基本コンジョイント調査と同様である。
【0064】
(3.3 コンジョイント分析)
以下、
図9を参照しながら、コンジョイント分析の具体例を説明する。なお、ここでは、コンジョイント分析の手法として最小二乗分析を用いる場合を例に説明するがこれに限られるものではない。ユーザの各属性に対する嗜好の度合いがわかる分析方法であれば、どのような手法を用いても良い。
【0065】
ここでは、コンジョイント分析の手法について、抽象化して説明する。
図9の例では、コンジョイント調査用のカードが8枚作成され、それぞれのカードには、項目A乃至項目Eのそれぞれの属性に対する属性値が設定されている。たとえば項目Aに関しては、
図9(a)左側の表に示したように、カード1、2、3及び7には属性値「a」が、カード5及び6には属性値「b」が、カード4及び8には属性値「c」がそれぞれ設定されている。
【0066】
また、コンジョイント調査の結果、ユーザは、各カードに対して、カード7、1、8、5、2、6、3、4の順で序列をつけたものとする。当該序列に従い、これらのカードには8点から1点までのポイント(点数)が与えられる。
【0067】
(3.3.1 Utility)
以下、
図9(a)を参照しながら、項目Aの各値(属性値)に対する、ユーザにとっての相対的な評価値(Utility)を求める方法について説明する。
【0068】
コンジョイント分析部130は、項目Aの取りうる属性値a、b、及びcのそれぞれを持つカードに設定されたユーザのポイントの平均値を求める。たとえば属性値aに関して言えば、カード1、2、3及び7に対して属性値aが設定されており、それぞれのポイントは7、4、2、8点であるので、平均値は5.25点となる。属性値b及びcについても同様に平均値を算出すると、それぞれ4点、3.5点となる。
【0069】
これを、平均値が0となるように調整してやることで、属性値aに対するUtility1、属性値bに対するUtility−0.25、属性値cに対するUtility−0.75を得ることができる。
このUtilityは、カードの序列に対して、各項目(属性)のそれぞれの属性値がどの程度影響を与えているかを示す指標に相当する。つまり、Utilityをすべての項目(属性)の属性値に対して算出することで、各属性の相対的重要性を考慮した、各属性値の重要性を求めることが可能となる。
【0070】
(3.3.2 Importance)
続いて、各属性の重要性を示すImportanceの求め方を、
図9(b)を参照しながら説明する。
【0071】
Importanceの算出には、各属性(
図9の例では項目A乃至項目E)のUtilityの最大値(max)と最小値(min)との差分をまず算出する。
図9の例では、項目Aに係るUtiliyの最大値と最小値の差分は1.75、項目Bについては1.5、項目Cについては3、項目Dについては1、項目Eについては2.5である。それぞれの属性(項目)のImportanceは、これらの値の合計に占める比重として算出することができる。各項目に係る最大値と最小値の差分の合計値は9.75であるので、項目Aの比重(Importance)は、1.75を9.75で除算した上で、小数点以下4桁で四捨五入した17.949となる。他の項目(属性)についても、同様の手法にImportanceを算出することができる。
【0072】
(3.3.3 コンジョイント分析の結果)
上記「3.5.1」及び「3.5.2」で述べたよう手法によりコンジョイント分析を行った結果を、
図10を参照しながら説明する。
図10は、コンジョイント分析の結果得られるUtility及びImportanceの具体例を示す図である。
【0073】
図10を見ればわかるように、基本コンジョイント分析、及びプレミアムコンジョイント分析、それぞれについて、対象の属性ごとにImportanceが、属性値毎にUtilityが算出される。
【0074】
例えば、基本コンジョイントの「エリア」属性を例に取ると、「エリア」属性のImportanceは17.76、属性値A(
図4でインタフェースを示した線41で囲まれた領域に相当する)のUtility(属性値Aに対するユーザの相対的な重要度)は2.375、属性値Bに対するUtility(属性値Bに対するユーザの相対的な重要度)は−2.375であることがわかる。
【0075】
また、属性「広さ」及び「価格」については、前述の通り、基本コンジョイント分析及びプレミアムコンジョイント分析の双方に含まれる。そこで、これらの属性のうち少なくとも一方を基準としてUtilityをスケーリングすることで、基本コンジョイント分析の結果得られたUtilityとプレミアムコンジョイント分析の結果得られたUtilityとを相対化することが可能となる。
【0076】
より具体的には、例えば、「広さ」を基準にスケールングする際には、プレミアムコンジョイントの各Utilityの値を、1.5で除算すると共に0.875で乗算することにより、基本コンジョイントの各Utilityと尺度を合わせることが可能となる。
【0077】
(3.4 物件情報の評価及び出力)
最後に、
図11を参照しながら、物件評価及び物件情報の提示方法について説明する。
図11は、物件評価部140が評価した結果に基づき、物件提示部127が購入希望者であるユーザの端末B上に表示させる物件情報のリストの具体例を示す図である。
【0078】
(3.4.1 物件評価)
まず、物件の評価方法の具体例について説明する。
図11の例において、1番目の物件(物件名称「○×コート」)は、それぞれ、「エリア」属性の属性値として「A」、「街並み」属性の属性値として「A」、駅からの距離の属性の属性値として「A」、築年数の属性として「新築」等の属性をそれぞれ有する。
【0079】
このとき、
図10に示したコンジョイント分析の結果において、「エリア」属性の属性値「A」のUtilityは2.375であるので、当該物件は、エリア属性に対する評価値として、この値を用いることができる。
【0080】
しかしながら、実際には
図11の例において、エリア属性に対する評価値として2.61が与えられている。これは、通常の不動産に係る調査においては、経験上、価格の評価値をユーザが過大に評価していることが多いため、価格の属性以外に係るUtilityの値を、10%大きくすることによりこれを補正しているためである。
【0081】
つまり、1番目の物件に係る「エリア」属性の属性値「A」に対するUtility(評価値)である2.61は、コンジョイント分析の結果得られたUtility2.375に1.1を乗算して四捨五入することにより得られる。物件の「街並み」や「位置」、「日当り」に対するユーザの評価値(Utility)についても、同様に算出することができる。
なお、このような補正は必ずしも必要なものではなく、補正しないことも考えられる。また、補正する場合であっても、数値や補正対象の属性は適宜変更することができる。
【0082】
築年数や駅からの距離、広さ、価格といった属性は、数値で連続的に表現可能なパラメータであるので、コンジョイント分析の結果得られた値を、物件に設定されたパラメータ(属性値)で線形にスケーリングしている。これにより、好適な物件評価が可能となる。
【0083】
なおここで、物件情報に設定されるべき属性値のうち、いくつかの属性の属性値については、売却希望者側から登録されていない等の理由により、得られない場合も考えられる。そのような場合には、当該属性に係るUtilityの値を0として、当該物件の評価値を算出する等の方法が考えられる。
【0084】
また、コンジョイント分析の結果、属性値「A」と「B」とに対するそれぞれのUtilityの値が逆転している場合(すなわち、属性値「A」に対するUtilityの値が「B」に対するUtilityよりも低くなった場合)には、調査上の誤差だと考えられるため、このような数値は排除することも考えられる。
【0085】
次に、「売主」や「眺望」といったプレミアムコンジョイント分析に係る属性に係る評価値の算出方法を説明する。1番目の物件は、例えばプレミアムコンジョイント分析に係る「売主」属性に対しては属性値「B」、「眺望」属性に対しては属性値「C」等をそれぞれ持っている。前述の通り、「売主」属性の属性値「B」については、
図10に示したコンジョイント分析の結果(属性「売主ブランド」の属性値「標準的」)において、−0.25となっている。これに対し、プレミアムコンジョイント分析の尺度と基本コンジョイント分析の尺度とを合わせるべく、1.5で除算すると共に0.875で乗算した上で、属性「価格」との評価尺度の補正(1.1倍する)ことにより、「売主」属性の属性値「B」に対するユーザの評価尺度−0.16を得ることができる。プレミアムコンジョイント分析に係る他の属性についても、同様に評価値を算出することができる。
【0086】
このようにして各物件情報に設定されたパラメータ(属性)に対する、購入希望者であるユーザの評価値を個別に算出した上で、その値を全て加算することにより、その物件情報に対するユーザの評価値を得ることが可能となる。
図11の1番目の物件である「○×コート」であれば、評価値3.41を得ることができる。
【0087】
(3.4.2 物件情報の出力)
次に、物件情報の出力方法について説明する。「3.6.1」で説明した手法により、評価対象となる全ての物件情報に対して物件評価部140が評価を行うと、物件提示部127は、
図11に具体例を示すように、当該評価結果に基づいて評価値の高い順に物件情報を並べたリストを、購入希望者であるユーザの端末B上に表示させる。
【0088】
図11の例では、各物件情報に関して、所在地、物件名称、価格等の情報とともに、各物件情報に設定されたパラメータ(属性値)と、それに対する評価値がリストに含まれている。
【0089】
(4 ハードウェア構成)
以下、
図12を参照しながら、上述してきた情報処理サーバ100をコンピュータにより実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、情報処理サーバ100の機能は、複数の装置に分けて実現することも可能である。
【0090】
図12に示すように、情報処理サーバ100は、プロセッサ1201、メモリ1203、記憶装置1205、入力インタフェース(I/F)1207、データI/F1209、通信I/F1211、及び表示装置1213を含む。
【0091】
プロセッサ1201は、メモリ1203に記憶されているプログラムを実行することにより情報処理サーバ100における様々な処理を制御する。例えば、
図1で説明したGUI提供部120、コンジョイント分析部130、物件評価部140は、メモリ1203に一時記憶された上で、主にプロセッサ1201上で動作するプログラムとして実現可能である。
【0092】
メモリ1203は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。メモリ1203は、プロセッサ1201によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。例えば、メモリ1203の記憶領域には、プログラム実行時に必要となるスタック領域が確保される。
【0093】
記憶装置1205は、例えばハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置1205は、オペレーティングシステムや、GUI提供部120、コンジョイント分析部130、及び物件評価部140を実現するための各種プログラムや、物件情報DB110を実現するためのデータベース等の各種データを記憶する。記憶装置1205に記憶されているプログラムやデータや、必要に応じてメモリ1203にロードされることにより、プロセッサ1201から参照される。
【0094】
入力I/F1207は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F1207の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ等が挙げられる。入力I/F1207は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介して情報処理サーバ100に接続されてもよい。
【0095】
データI/F1209は、情報処理サーバ100の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F1209の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。データI/F1209は、情報処理サーバ100の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F1209は、例えばUSB等のインタフェースを介して情報処理サーバ100へと接続される。
【0096】
通信I/F1211は、情報処理サーバ100の外部の装置と有線又は無線によりデータ通信するためのデバイスである。例えば、端末Sや端末Bとの通信は、通信I/F1211がインターネット等であるネットワークNを介して行う。通信I/F1211は、情報処理サーバ100の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F1211は、例えばUSB等のインタフェースを介して情報処理サーバ100に接続される。
【0097】
表示装置1213は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置1213の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等が挙げられる。表示装置1213は、情報処理サーバ100の外部に設けられても良い。その場合、表示装置1213は、例えばディスプレイケーブル等を介して情報処理サーバ100に接続される。
【0098】
(5 本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理サーバ100は、それぞれのユーザの嗜好を、コンジョイント分析により分析を行った上で、当該分析結果に基づき、それぞれのユーザの嗜好に合った、好適な商品情報(物件情報)をユーザに提供することができる。このとき、序列をつけて物件情報をユーザに提示することで、ユーザは、自分に好ましい物件を順番に見ることができるため、単純に条件に合わない物件をスクリーニングする場合と比べると、ユーザが物件の比較検討に要する手間を軽減することが可能となる。
【0099】
また、
図4乃至
図6で示したように、ユーザが予めパラメータを設定することができ、当該パラメータ設定に沿ったコンジョイント分析や物件評価を行うため、このようなパラメータ設定を行えない場合よりも、ユーザの嗜好にきめ細やかに対応することが可能となっている。
【0100】
更に、通常、不動産取引では、新築物件と中古物件とでは別々に管理されていることが多いが、本実施形態の手法を用いれば、同一のシステム上で、同一の評価尺度に従ってユーザが比較することができるため、検討が容易となる。
【0101】
(6 付記事項)
尚、前述の実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。