特許第5809131号(P5809131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809131通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809131
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04W 88/06 20090101AFI20151021BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20151021BHJP
【FI】
   H04W88/06
   H04W88/02 131
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-503067(P2012-503067)
(86)(22)【出願日】2011年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2011053611
(87)【国際公開番号】WO2011108379
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-44014(P2010-44014)
(32)【優先日】2010年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314008976
【氏名又は名称】レノボ・イノベーションズ・リミテッド(香港)
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】材津 誠
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−180867(JP,A)
【文献】 特表2006−521714(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/002956(WO,A1)
【文献】 特表2007−503733(JP,A)
【文献】 Jari Jokela, Floyd Simpson, Artur Zaks, Jing Zhu,WPAN/WLAN/WWAN Multi-Radio Coexistence,IEEE 802.11-07/2738r1,米国,IEEE mentor,2007年11月13日,p.1-27,URL,https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/07/11-07-2738-01-0000-wpan-wlan-wwan-multi-radio-coexistence.ppt
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信信号を送信する第1の通信手段と、前記第1の通信手段による前記第1の送信信号の送信を停止させる停止手段を含む第1の通信部と、
前記第1の送信信号による干渉を受ける通信信号を使用して通信を行う第2の通信手段と、前記第2の通信手段によって外部の通信装置へ送信される情報又は前記第2の通信手段によって前記外部の通信装置から受信された情報中に第1の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止を指示し、前記送信される情報又は前記受信された情報中に第2の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止の解除を指示する通信調停手段を含む第2の通信部を備え、
前記通信調停手段は、前記外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止又は前記停止の解除を指示する通信装置であって、
DTIMビーコンが送信される基準タイミングから、第2の通信部としてのBluetooth通信部による通信を停止させ、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信したタイミングで、前記Bluetooth通信部の通信停止を解除することを特徴とする通信装置
【請求項2】
前記通信調停手段は、前記送信される情報中に第1の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止を指示し、前記受信された情報中に第2の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止の解除を指示することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記第2の通信手段と前記外部の通信装置との間で開始される所定の情報交換の最初に前記第2の通信手段によって送信される情報であり、
前記第2の情報は、前記情報交換の最後に前記第2の通信手段によって受信される情報であることを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信調停手段は、前記基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止を指示し、前記停止の指示後、前記受信された情報中に前記第2の情報を検出したとき前記停止の解除を指示することを特徴とする請求項記載の通信装置。
【請求項5】
前記基準タイミング以降の所定の期間に、前記第2の通信手段と前記外部の通信装置との間で所定の情報交換が行われることを特徴とする請求項記載の通信装置。
【請求項6】
前記情報交換は、前記外部の通信装置への所定の処理の要求の送信、及び前記外部の通信装置からの前記要求への応答の受信を含むことを特徴とする請求項3又は記載の通信装置。
【請求項7】
前記情報交換は、同報パケットの送受信を含むことを特徴とする請求項3、又は記載の通信装置。
【請求項8】
前記外部の通信装置は、DHCPサーバーであり、
前記情報交換は、前記DHCPサーバーへのIPアドレスの取得のための情報交換であることを特徴とする請求項3、又は乃至のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記第2の通信部は、前記第2の通信手段による第2の送信信号の送信を停止させる第2の停止手段を含み、
前記通信調停手段は、前記第1の送信信号の送信を停止させるとき、前記第2の送信信号の送信の停止を解除し、前記第1の送信信号の停止を解除するとき、前記第2の送信信号の送信を停止させることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信調停手段は、前記第1の送信信号の送信を停止させるとき、前記第1の通信手段による通信動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信調停手段は、前記第2の送信信号の送信を停止させるとき、前記第2の通信手段による通信動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の通信装置。
【請求項12】
第1の通信手段による第1の送信信号の送信を停止させる停止手段に、前記第1の送信信号による干渉を受ける通信信号を使用して通信を行う第2の通信手段によって外部の通信装置へ送信される情報又は前記第2の通信手段によって前記外部の通信装置から受信された情報中に第1の情報を検出したとき、前記停止を指示し、
前記送信される情報又は前記受信された情報中に第2の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止の解除を指示する通信制御方法であって、
前記外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止又は前記停止の解除を指示し、
DTIMビーコンが送信される基準タイミングから、第2の通信部としてのBluetooth通信部による通信を停止させ、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信したタイミングで、前記Bluetooth通信部の通信停止を解除することを特徴とする通信制御方法
【請求項13】
前記外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止又は前記停止の解除を指示することを特徴とする請求項12記載の通信制御方法。
【請求項14】
第1の送信信号を送信する第1の通信手段と前記第1の通信手段による前記第1の送信信号の送信を停止させる停止手段を含む第1の通信部と、前記第1の送信信号による干渉を受ける通信信号を使用して通信を行う第2の通信手段と通信調停手段を含む第2の通信部を備える通信装置が内蔵するコンピュータを、
前記第2の通信手段によって外部の通信装置へ送信される情報又は前記第2の通信手段によって前記外部の通信装置から受信された情報中に第1の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止を指示する手段と、
前記送信される情報又は前記受信された情報中に第2の情報を検出したとき、前記停止手段に前記停止の解除を指示する手段と
前記外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止又は前記停止の解除を指示する手段と、
DTIMビーコンが送信される基準タイミングから、第2の通信部としてのBluetooth通信部による通信を停止させ、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信したタイミングで、前記Bluetooth通信部の通信停止を解除する手段として機能させるための通信制御プログラムを記憶する通信制御プログラム記憶媒体。
【請求項15】
前記コンピュータを、さらに、前記外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して前記停止手段に前記停止又は前記停止の解除を指示する手段として機能させる請求項14記載の通信制御プログラムを記憶する通信制御プログラム記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム記憶媒体に関し、特に、通信の干渉を防止する機能を備える通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の端末機器は、高機能化とユビキタス化に伴い、さまざまな無線通信機能を搭載することが多くなっている。このような状況の中、端末機器には、無線LAN(Local Area Network)とBluetooth(登録商標)の両機能を搭載したものが増加している。
最も普及している無線LANは、米国電気電子技術者協会(Institute of Electrical and Electronic Engineers、IEEE)802委員会が標準化したIEEE802.11シリーズ標準に準拠した無線LAN(以降、単に「無線LAN」という。)である。無線LANには、ISM(Industrial,Scientific,and Medical)バンドと呼ばれる周波数帯域(2.4GHz帯)を使用するものがある。以降、本明細書では、特に明記しない限り、ISMバンドを使用する無線LANを対象とする。
Bluetoothは、IEEE802.15.1標準に準拠している。そして、Bluetoothも、ISMバンドを使用する。
上記のように、無線LANとBluetoothは同じ周波数帯域を使う。そのため、信号の干渉を防止するための対策をとらずに両機能を同時に動作させると、相互に電波の干渉を起こし、通信品質が著しく低下してしまう可能性がある。場合によっては、ほとんど通信を行うことができない。特に、無線LAN用の通信ブロック(以降、機能としての無線LANを実現するブロックを「無線LAN通信部」という)と、Bluetooth用の通信ブロック(以降、機能としてのBluetoothを実現するブロックを「Bluetooth通信部」という)が一つの装置に実装されている場合、2つの通信部間の距離が近いために、相互干渉の影響は大きい。
無線LANとBluetoothとの相互干渉を低減する手段として、AFH(Adaptive Frequency Hopping、適応型周波数ホッピング)技術と、PTA(Packet Traffic Arbitration、パケット・トラフィック調停)技術が考案されている。
AFH技術は、無線LANが使っている周波数をBluetoothのホッピング周波数範囲から除外し、互いに重複しない周波数を使用することによって干渉を軽減する手法である。図9にAFH技術の概念図を示す。このように、AFH技術が適用されたときには、無線LANとBluetoothは、ISMバンドの中で、それぞれ異なる周波数帯を使って通信を行う。
次に、PTA技術について説明する。図10にPTA技術を適用する端末200の構成例のブロック図を、図11にPTA技術を適用する端末の動作例を示すタイミング・チャートを示す。
図10のように、PTA技術では、無線LAN通信部211とBluetooth通信部212との間で、送受信や停止などの要求、トラフィックの優先度などの情報を交換する。そして、図11のように、無線LAN通信部211とBluetooth通信部212が、互いに時間的に重複しないように通信を行うことによって、直接的な信号の衝突が防止される。PTA技術では、時分割で交互に通信を行うために、両通信機能ともにスループットの低下は避けられない。しかし、PTA技術は、干渉によって送受信が全く行えないという最悪の状況が回避されるという面においては効果的なので、実際に市場の製品にも適用されている。
PTA技術について、さらに詳細に説明する。図12に、PTA技術を適用する端末において干渉が発生するときの動作例のタイミング・チャートを示す。図12に示すとおり、自端末の無線LAN通信部211とBluetooth通信部212間では、PTA技術を適用した時分割制御による通信を行う。しかし、無線LANの対向機器が任意のタイミングでパケットを送信してきたときには、Bluetooth通信部212による通信との間に干渉が発生する。この干渉を防止するために、無線LAN通信部211とBluetooth通信部212が同時に動作する場合は、PTA技術とともに、IEEE802.11にて標準化されている「パワー・セーブ・モード」を組み合わせて端末200を動作させることがある。
ここで、IEEE802.11標準に規定されている、「パワー・マネジメント」について簡単に説明する。「パワー・マネジメント」とは、無線LANの省電力化のための機能で、端末の動作状態について、「アクティブ・モード」と「パワー・セーブ・モード(PSモード)」が定義されている。PSモードでは、端末は、送受信が可能なアウェイク(Awake)状態と休止状態であるドーズ(Doze)状態の2種類の動作状態を、規則的に繰り返す。アクティブ・モードでは、端末は、常にアウェイク状態にある。アウェイク状態では、無線LAN通信部211の各回路ブロックに電力が供給される。ドーズ状態では、無線LAN通信部211の各回路ブロックへの電力供給が停止されることによって、無線LAN通信部211が低消費電力状態に設定される。
ドーズ状態の期間中は、対向機器がパケットを送信してきても、端末機器はそのパケットを受信することができない。そのため、端末機器は、事前にPSモードに遷移することを対向機器に通知することによって、端末機器宛のパケットを対向機器内でバッファリングさせる。バッファリングされているパケットを受信するときは、端末機器は、ポーリング・パケット(PS−Poll、Power Save−Poll)を対向機器に送信して自身宛のパケットを送信させるか、あるいはPSモードからアクティブ・モードに復帰する。
上記のPSモードを用いることによって、無線LANの対向機器からのパケット送信を制限することができる。そこで、PTA技術にPSモードを組み合わせることによって、無線LANとBluetoothの干渉をさらに低減することができる。すなわち、PTA技術による時分割通信によって相互の干渉を抑止し、さらに無線LANの対向機器にPSモードへの遷移を通知することによって非同期のパケット送信を停止させる。
図13に、PTA技術とPSモードを併用する端末の動作例のタイミング・チャートを示す。図13に示すように、PSモードへの遷移を通知された無線LAN通信部211の対向機器は、無線LAN通信部211へのデータの送信を保留し、そのデータをバッファリングする。従って、無線LAN通信部211の対向機器の送信による、Bluetooth通信部212による通信に対する干渉を抑止することができる。
以上のように、PTA技術とPSモードを組み合わせることによって、通常の場合は、無線LANとBluetoothが同時に動作するときの相互干渉を抑止することができる。
なお、PTA技術に関しては、IEEE802.15.2標準に、実装形態の一例が公開されている。PTA技術の主目的は、異なる無線通信部同士が相互に情報交換して時分割で通信を行うことによって干渉を回避することにある。
他にも、無線LANとBluetoothとの信号の干渉を防止するための技術が考案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、無線LANとBluetoothの両方に対応する無線通信装置が、外部に無線LANのアクセスポイントを発見したとき、Bluetoothの動作を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−005195号公報(第11−12頁、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の各公知技術には、それぞれ課題がある。
まず、上記のように、AFH技術やPTA技術を適用することによって、干渉を軽減することは可能である。しかし、AFH技術やPTA技術だけでは干渉対策として十分とは言えない。以下にその理由を説明する。
AFH技術には、無線LAN通信部211とBluetooth通信部212とが同一機器に搭載される場合に課題がある。無線LAN通信部211とBluetooth通信部212とが同一機器に搭載される場合、それぞれの通信部に使用されるアンテナの位置は近い。あるいは、1本のアンテナが両方の通信部に共有されることもある。そのため、たとえ重複しない周波数を使用することによって直接的な衝突を避けたとしても、それぞれが使用する周波数は隣接している。そのため、十分なS/N(Signal to Noise ratio、信号雑音比)が得られない可能性がある。すなわち、無線LAN通信部211とBluetooth通信部212とが同一機器に搭載されている場合には、AFH技術によっては、干渉を完全に回避することはできない。このことはAFH技術の限界として、自明である。
一方、PTA技術には、まず、Bluetoothにデータの再送が発生した場合などに課題がある。無線LANの通信期間であっても、実用面を考えると、通常は、Bluetoothの再送を禁止することはできない。そのため、無線LANの通信期間に切り替わってもBluetooth側の通信が継続してしまうことがある。従って、無線LANがBluetoothによる干渉を受けるという事態が発生し得る。無線LANは、送信先の機器が受信を成功したことを示す肯定応答パケットを受信できなかったときに再送を行う仕組みを持っている。そのため、短時間の干渉に対しては通信を維持することができる。しかし、再送が頻発するような場合には、肯定応答パケットの受信が遅れ、通信が切断される可能性がある。
図14に、PTA技術とPSモードを併用する端末において干渉が発生するときの動作例のタイミング・チャートを示す。このように、無線LANの通信期間になり、無線LAN通信部211の対向機器がバッファリングしていたデータを送信したときに、Bluetooth通信部212によるデータの再送が発生すると、信号の干渉が発生する。
また、PTA技術とPSモードを組み合わせた動作には、マルチキャスト又はブロードキャストが行われるときに課題がある。すなわち、マルチキャスト又はブロードキャストのあて先アドレスを持つ同報パケットについては、相互干渉の抑止が機能しない。なぜならば、同報パケットは、不特定の端末機器に対して一斉に送信されるものであるからである。従って、特定の端末機器がPSモードであったとしても、その端末機器に対してのみ、特別な対応がとられることはない。つまり、前述のような、PSモードにおけるデータ授受の手続き、すなわち、アクティブ・モードへの復帰を待つか、あるいはポーリング・パケットが来るのを待って送信するという対応がとられることはない。
上記の問題についてさらに詳細に説明する。マルチキャスト又はブロードキャストのあて先アドレスを持つ同報パケットは、任意のタイミングで送信される。この動作は、IEEE802.11標準にて規定された動作である。PTA技術とPSモードを併用する端末において同報パケットが送信されるときの、具体的な動作例のタイミング・チャートを図15に示す。このように、無線LAN通信部211の対向機器は、ビーコンを送信し、その直後にマルチキャスト・フレーム又はブロードキャスト・フレームを送信する。ビーコンには、端末200向けのデータがバッファリングされていることを示すDTIM(Delivery Traffic Indication Message)という情報がセットされている。無線LANが単独で動作している通常の状態であれば、DTIM情報がセットされているビーコンを受信し、続くマルチキャスト又はブロードキャストの同報パケットを受信することが可能である。
しかし、無線LANがBluetoothと競合して動作している場合には、Bluetoothからの干渉を受けて受信できない可能性がある。さらに、ここで問題になるのは、マルチキャスト又はブロードキャストの同報パケットの場合は、再送という仕組みが適用されないことである。そのため、一度、干渉によって同報パケットの受信に失敗してしまうと、永久にそのパケットを受信することができない。
同報パケットの受信の失敗の影響の大きさについて、具体例をあげる。インターネット通信で主に使われているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)において必要となるIPアドレスは、一般的にDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)という手続きによってネットワークから自動的に取得される。このとき、DHCPサーバーからの応答がブロードキャストになっている場合がある。そのため、端末200において無線LAN通信部211とBluetooth通信部212が競合して動作していると、上述のように干渉によって、DHCPサーバーからの応答パケットが受信できない可能性がある。この場合、IPアドレスを取得することはできない。IPアドレスはTCP/IP通信を行う上で必要不可欠な情報である。従って、IPアドレスが取得できないということは、すなわちインターネット通信を行うことができないということを意味する。このように、干渉によって通信ができない事態が発生すれば、端末機器にとって致命的な問題であることは言うまでも無い。
特許文献1の技術では、アクセスポイントの存在を発見したとき、Bluetoothの動作を停止させる。すなわち、アクセスポイントが存在するだけで、実際に無線LANによる通信が行われるか否かには関係なく、Bluetoothの動作が停止される。従って、Bluetoothによる通信が可能な期間であっても、不必要に動作を制限してしまうという課題がある。
(発明の目的)
本発明は上記のような技術的課題に鑑みて行われたもので、複数の通信手段のうちの一つの通信手段が通信を行う際の、他の通信手段による干渉を防止することができる通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の通信装置は、第1の送信信号を送信する第1の通信手段と、第1の通信手段による第1の送信信号の送信を停止させる停止手段を含む第1の通信部と、第1の送信信号による干渉を受ける通信信号を使用して通信を行う第2の通信手段と、第2の通信手段によって外部の通信装置へ送信される情報又は第2の通信手段によって外部の通信装置から受信された情報中に第1の情報を検出したとき、停止手段に停止を指示し、送信される情報又は受信された情報中に第2の情報を検出したとき、停止手段に停止の解除を指示する通信調停手段を含む第2の通信部を備え、通信調停手段は、外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して停止手段に停止又は停止の解除を指示する通信装置であって、DTIMビーコンが送信される基準タイミングから、第2の通信部としてのBluetooth通信部による通信を停止させ、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信したタイミングで、Bluetooth通信部の通信停止を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の通信装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム記憶媒体は、複数の通信手段のうちの一つの通信手段が通信を行う際に、他の通信手段からの信号の送信を停止する。従って、一つの通信手段が通信を行う際の、他の通信手段による干渉を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態の端末の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態の端末の動作を示すシーケンス・チャートである。
図3】本発明の第1の実施形態の通信システムの動作を示すタイミング・チャートである。
図4】本発明の第2の実施形態の端末の動作を示すシーケンス・チャートである。
図5】本発明の第2の実施形態の通信システムの動作を示すタイミング・チャートである。
図6】本発明の第4の実施形態の端末の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第4の実施形態の端末の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第5の実施形態の端末の動作を示すフローチャートである。
図9】AFH技術の概念図である。
図10】PTA技術を適用する端末の構成の例を示すブロック図である。
図11】PTA技術を適用する端末の動作の例を示すタイミング・チャートである。
図12】PTA技術を適用する端末において干渉が発生するときの動作の例を示すタイミング・チャートである。
図13】PTA技術とPSモードを併用する端末の動作の例を示すタイミング・チャートである。
図14】PTA技術とPSモードを併用する端末において干渉が発生するときの動作の例を示すタイミング・チャートである。
図15】PTA技術とPSモードを併用する端末において同報パケットが送信されるときの動作の例を示すタイミング・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の端末の構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態の端末の動作を示すシーケンス・チャートである。図3は、第1の実施形態の端末を含む通信システムの動作を示すタイミング・チャートである。
図1を用いて、第1の実施形態の端末の構成について説明する。端末100は、通信制御部110、無線LAN通信部120、Bluetooth通信部130、PTA制御部140を備える。
通信制御部110は、一般的な端末機器と同様に、演算装置(Central Processing Unit、CPU)、記憶装置、入出力部、表示部、タイマーなどを備える。通信制御部110の内部の構成は、本発明の趣旨に直接関係しないため、詳細については省略する。通信制御部110では、オペレーティング・システム(Operating System、OS)や、通信制御や画像処理などを司るミドルウェア、アプリケーション・プログラムなどのプログラムが動作する。
無線LAN通信部120は、MAC(Media Access Control)部121とPHY(Physical Layer)部122を備え、IEEE802.11標準に準拠した無線LAN方式による通信を行う。PHY部122は、ISMバンドを使用した無線通信を行う。
Bluetooth通信部130は、LM(Link Manager)部131とBB(Baseband)部132を備え、IEEE802.15.1標準に準拠したBluetoothによる通信を行う。
PTA制御部140は、無線LAN通信部120及びBluetooth通信部130からのリクエストやステータスなどの情報を取得し、無線LAN通信部120とBluetooth通信部130との間の通信の調停を行う。
通信制御部110と、無線LAN通信部120及びBluetooth通信部130とは、SDIO(Secure Digital Input/Output)やUSB(Universal Serial Bus)などのワイヤード(有線)・インタフェースで接続される。このインタフェースは本発明の趣旨に直接関係しないため、インタフェースの種類は特に限定されない。また、説明の便宜上、図1では、PTA制御部140、無線LAN通信部120、Bluetooth通信部130が、別個のブロックとして表記されているが、実現形態は図1の構成に限定されるものではない。
次に、図2のシーケンス・チャートを参照して、端末100の動作について説明する。以下の説明では、インターネット通信で一般的に使われるTCP/IPプロトコルにおいて使用される、DHCPプロトコルを一例として説明する。DHCPプロトコルとは、IPアドレスを取得する際に使われるプロトコルである。
始めに、無線LAN端末機器の通信制御部120は、TCP/IP通信を行うために必要となるIPアドレスの取得を開始する(ステップS11)。TCP/IP通信では、IPアドレスを取得するために、一般的にDHCPプロトコルが使用される。
IPアドレスを取得する際、通信制御部110の通信ミドルウェア(TCP/IPプロトコル・スタック)は、最初にDHCP Discoverをネットワークに送信する(ステップS12)。DHCP Discoverは、無線LAN通信部120によって、ネットワーク上のDHCPサーバーへ転送される(ステップS23)。すなわち、DHCP Discoverは、無線LAN通信部120と、無線LAN通信部120に対向する外部の無線LAN通信装置(図示なし、以降、「対向無線LAN装置」という)に中継され、DHCPサーバーへ転送される。従って、無線LAN通信部120は、実際には対向無線LAN装置へDHCP Discoverを送信する。
なお、無線LAN通信部120が対向無線LAN装置へDHCP Discoverを送信する前に、後述のように、無線LAN通信部120は、DHCP Discoverの受信の有無を検出する(ステップS21)。そして、無線LAN通信部120は、DHCP Discoverの受信を検出すると、Bluetooth通信部130に対して通信停止の要求を出す(ステップS22)。従って、無線LAN通信部120は、Bluetooth通信部130による通信が停止している期間に、対向無線LAN装置へDHCP Discoverを送信することができる。
DHCPサーバーは、DHCP Discoverを受信すると、DHCP Offerを用いて、候補となるIPアドレスを返信する。DHCP Offerは、対向無線LAN装置と無線LAN通信部120によって、通信制御部110へ転送される。すなわち、無線LAN通信部120は、対向無線LAN装置からDHCP Offerを受信する(ステップS24)。そして、無線LAN通信部120は、通信制御部110へDHCP Offerを送信する(ステップS25)。このとき、DHCP Offerの宛先MACアドレスがブロードキャストになっていることがある。
前述のとおり、宛先MACアドレスがブロードキャストの場合、対向無線LAN装置は、端末100がPSモードにあっても、DTIMが含まれるビーコンの直後に送信してしまう。そのため、無線LAN通信部120とBluetooth通信部130とが競合して動作している場合、Bluetooth通信部130が送受信する信号の妨害によって、無線LAN通信部120がDHCP Offerの受信に失敗する可能性がある。
DHCP Offerの受信失敗を防止するために、無線LAN通信部120は、通信制御部110からのDHCP Discoverの受信の有無を検出する(ステップS21)。そして、無線LAN通信部120は、DHCP Discoverの受信を検出すると、PTA制御部140を介して、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を要求する(ステップS22)。これにより、DHCP Offerの宛先MACアドレスがブロードキャスト・アドレスであっても、Bluetooth通信部130による通信の妨害で、DHCP Offerの受信に失敗する可能性を排除することができる。上記のように、無線LAN通信部120は、対向無線LAN装置から受信したDHCP Offerを、通信制御部110へ転送する(ステップS25)。このように、無線LAN通信部120は、Bluetooth通信部130による通信が停止している期間に、対向無線LAN装置からDHCP Offerを受信することができる。
通信制御部120は、DHCP Offerによって候補となるIPアドレスを受信する(ステップS13)。そして、通信制御部120は、受信したIPアドレスに問題がないとき、正式にそのIPアドレスを使うことを要求するために、DHCP Requestを送信する(ステップS14)。DHCP Requestは、無線LAN通信部120に受信され(ステップS26)、DHCP Discoverと同様に、無線LAN通信部120と対向無線LAN装置に中継され、DHCPサーバーへ転送される。このように、無線LAN通信部120は、Bluetooth通信部130による通信が停止している期間に、対向無線LAN装置へDHCP Requestを送信することができる。
DHCP Requestを受信したDHCPサーバーは、正式に許可を与えるためにDHCP Ackを返信する。DHCP Ackは、DHCP Offerと同様に、対向無線LAN装置と無線LAN通信部120によって、通信制御部110へ転送される(ステップS27)。このDHCP Ackも宛先MACアドレスがブロードキャスト・アドレスになっていることがある。しかし、Bluetooth通信部130による通信の停止は継続している。そのため、無線LAN通信部120は、Bluetooth通信部130による通信の妨害を受けることなく、対向無線LAN装置からDHCP Ackを受信することができる。
さらに、無線LAN通信部120は、DHCP Ackの受信を検出すると(ステップS28)、PTA部を介して、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を解除する(ステップS29)。なお、通信制御部110へのDHCP Ackの転送(ステップS27)は、ステップS29の処理の後でもよい。
通信制御部120は、DHCP Ackを受信する(ステップS15)ことによって、先に受信したIPアドレスの使用が許可されたことを確認し、IPアドレスの取得処理を終了する(ステップS16)。
図3は、図2を使って説明した動作を、タイミング・チャートで示したものである。図3のように、端末100によって送信されたDHCP Discoverは、対向無線LAN装置を経由してネットワーク上のDHCPサーバーに届く。
DHCPサーバーは、候補となるIPアドレスをDHCP Offerによって通知する。このとき、宛先MACアドレスはブロードキャストであることがある。端末100がPSモードにある場合、対向無線LAN装置は、一旦、DHCP Offerパケットをバッファリングし、DTIMを含むビーコンの直後に送信する。
DHCP Offerを受信した端末100は、提示されたIPアドレスに問題がなければ、続いてDHCP Requestを送信して、提示されたIPアドレスの使用を正式に要求する。
端末100からのDHCP Requestを受けたDHCPサーバーは、その要求に対してDHCP Ackによって正式な許可を与える。
端末100は、DHCP Discoverを送信してから、DHCP Ackを受信するまで、すなわち、一連のDHCPシーケンスの開始から終了までの間、Bluetooth通信部130による通信を停止させ、Bluetoothによる無線LANへの干渉を防止して、DHCPシーケンスを成功させる。
すなわち、端末100では、DTIM情報を含むビーコンが送信されるタイミングより前に、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を要求する。そして、端末100は、マルチキャスト又はブロードキャストのパケットの受信を終了するまでの間、無線LANの通信を優先する。以上の制御によって、Bluetoothによる干渉を排除して、無線LANのマルチキャスト又はブロードキャストを受信できるようにする。
以上説明したように、本実施形態の端末は、無線LAN通信部とBluetooth通信部を備え、無線LAN通信部が所定のパケットを送受信する間は、Bluetooth通信部による通信を停止させる。そのため、Bluetoothによる無線LANへの干渉を防止することができるという効果がある。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、DHCP Discoverの送信を契機にBluetooth通信部130に対して通信の停止を要求し、DHCP Ack受信を契機に通信の停止を解除する。そのため、DHCPシーケンスの期間中は、Bluetooth通信部130による通信は完全に停止してしまう。これに対して、以下のような制御を追加することによって、Bluetooth通信部130の通信停止期間を短縮することができる。
前述のとおり、宛先MACアドレスがブロードキャストのアドレスであるパケットは、DTIMを含むビーコン(以降、「DTIMビーコン」という)を送出した直後に対向無線LAN通信装置から送信される。そこで、第2の実施形態の通信システムでは、DHCPシーケンスの開始から終了までBluetoothの通信を停止するのではなく、DTIMビーコンが送信されるタイミングから、Bluetooth通信部130による通信を停止させる。そして、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信したタイミングで、Bluetooth通信部130の通信停止を解除する。
第2の実施形態の通信システムの動作の、シーケンスを図4に、タイミング・チャートを図5に示す。なお、本実施形態の端末の構成は、図1と同じである。
図4のように、無線LAN通信部120は、DTIMビーコンが送信されるタイミングより所定時間だけ前に設定されたタイミング(Bluetooth停止要求タイミング)を検出する(ステップS31)。そして、無線LAN通信部120は、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を要求する(ステップS22)。そして、無線LAN通信部120は、DHCP Offerを通信制御部110へ送信すると(ステップS25)、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を解除する(ステップS29)。ステップS32についてはステップS31と、ステップS33についてはステップS22と同じ処理を行う。ステップS34では、無線LAN通信部120がDHCP Ackを通信制御部110へ送信(ステップS27)した後、Bluetooth通信部130に対して通信の停止を解除する。
なお、ステップS31におけるBluetooth停止要求タイミングは、実際にDTIMビーコンが送信されるタイミングより前にステップS22を実行し、Bluetooth通信部130による通信を停止させる必要があるために設定されたものである。
以上のように、本実施形態の端末は、DTIMビーコンの送信タイミングから、DHCP Offer、DHCP Ack等、所定のパケットを送信するまで、Bluetooth通信部130による通信を停止させる。従って、Bluetooth通信部130の通信停止期間を極力短くすることができるという効果がある。
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態について説明する。第1及び第2の実施形態は、無線LAN通信部120がPSモードにあることを前提とした。第3の実施形態では、DHCP Discoverの送信を契機にBluetooth通信部130に対して通信停止を要求するとともに、無線LAN通信部120自身がPSモードからアクティブ・モードに遷移する。
従って、対向無線LAN通信装置は、接続しているすべての端末がアクティブ・モードの場合、DTIMビーコンの送信タイミングを待たずして、ブロードキャスト又はマルチキャストのパケットを送信することができる。
無線LAN通信部120は、宛先がブロードキャスト・アドレスになっているDHCP Offerパケット又は、DHCP Ackパケットを受信すると、Bluetoothの通信停止を解除するとともに、端末100自身がPSモードに遷移する。
以上のように、本実施形態の端末は、Bluetoothの通信を停止させるときにアクティブ・モードに遷移し、Bluetoothの通信停止を解除するときにPSモードに遷移する。従って、端末100の消費電力を削減することができるという効果がある。
第1乃至第3の実施形態は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、DHCPプロトコル以外の場合でもマルチキャスト又はブロードキャストでパケットが送られてくる場合に適用することができる。
(第4の実施形態)
第1乃至第3の実施形態では、通信方式の例として、無線LANとBluetoothを使用し、無線LAN通信部による通信が行われるときに、Bluetooth通信部の動作が停止されるという実施形態を示した。第1乃至第3の実施形態の説明から明らかなように、これらの実施形態では、ある通信部が通信を行うときに、他の通信部の動作を停止させることに特徴がある。従って、本発明で使用される通信方式は、無線LANとBluetoothには限定されない。また、外部の通信装置(第1乃至第3の実施形態では、対向無線LAN通信装置)との間で送受信されるパケットも、DHCPに関連したパケットに限定されない。すなわち、本発明は、独立して動作する複数の通信部を備える一般の通信装置における、一般の情報通信に適用することができる。
さらに、ある通信部による通信が行われるときには、他の通信部による干渉を防止するためには、他の通信部による通信自体を停止させる必要はなく、他の通信部による信号の送信のみを停止させれば十分である。
なお、本発明は、外部の通信装置からの信号による干渉の防止を対象としていない。ただし、他の通信部による信号の送信を停止させることによって、間接的に外部の通信装置からの信号の送信が減少し、結果的に外部の通信装置からの信号による干渉も抑制される可能性はある。
第4の実施形態は、以上の本発明の特徴点を踏まえた実施形態で、本発明を実施するために必要な最小の構成のみを備える。図6は、本発明の第4の実施形態の通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の通信装置10は、第1の通信部11と第2の通信部12を備える。
第1の通信部11は、第1の通信手段13、停止手段14を含む。第1の通信手段13は、第1の送信信号25の送信を行う。さらに、第1の通信手段13は、第1の受信信号(図示なし)の受信も行ってもよい。停止手段14は、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させる。
第2の通信部12は、第2の通信手段15、通信調停手段16を含む。
第2の通信手段15は、第1の送信信号25による干渉を受ける通信信号を使用して第2の通信方式による通信を行う。通信信号は、具体的には、第2の通信手段15によって送信される送信信号23、及び第2の通信手段15によって受信される受信信号24である。
通信信号は、例えば、第1の送信信号25が伝播する媒体と同じ媒体中を伝播する信号で、使用される周波数帯が第1の送信信号25と等しい。そのため、第1の送信信号25が送信されているときには、通信信号は第1の送信信号25によって何らかの干渉を受ける。そこで、第2の通信手段15による通信が行われるときには、第1の送信信号25の送信を停止させるというのが本実施形態の趣旨である。
通信調停手段16は、外部の通信装置(図示なし)へ送信される情報中、又は、第2の通信手段15によって外部の通信装置から受信された情報中に、所定の情報を検出したとき、停止手段14に第1の送信信号25の送信の停止又は停止の解除を指示する。外部の通信装置へ送信される情報とは、第2の送信信号23に含められて送信される情報である。外部の通信装置から受信された情報とは、第2の受信信号24に含められて送信されてきた情報である。
例えば、通信調停手段16は、送信情報21の中に第1の情報を検出すると、停止手段14へ送信制御信号22を出力し、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させる。そして、通信調停手段16は、受信信号24の中に第2の情報を検出すると、停止手段14へ送信制御信号22を出力し、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信の停止を解除する。上記のケースは、通信装置10が通信を開始させ、外部の通信装置がその通信を終了させる場合等に相当する。
あるいは、通信調停手段16は、受信信号24の中に第2の情報を検出すると第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させ、送信情報21の中に第1の情報を検出すると第1の送信信号25の送信の停止を解除してもよい。上記のケースは、通信装置10が外部の通信装置からの要求に従って通信を開始させ、通信装置10がその通信を終了させる場合等に相当する。
その他にも、通信調停手段16は、送信情報21の中に第1の情報を検出したときに第1の送信信号25の送信を停止させ、送信情報21の中に第3の情報を検出したときに停止を解除してもよい。あるいは、通信調停手段16は、受信信号23の中に第2の情報を検出したときに第1の送信信号25の送信を停止させ、受信信号23の中に第4の情報を検出したときに停止を解除してもよい。以上のように、通信装置10は、送信する情報又は受信した情報中に所定の情報を検出することを契機として、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信の停止又は停止の解除を行う。すなわち、通信装置10は、送信情報21又は受信信号23の中に所定の情報を検出すると、第1の送信信号25の送信を停止させ、第2の通信手段15のみが動作可能な状態に設定する。また、通信装置10は、送信情報21又は受信信号23の中に所定の情報を検出すると、第1の送信信号25の送信の停止を解除し、第1の通信手段13のみを動作可能な状態に設定する。
従って、送信情報21又は受信信号24の中に所定の情報を含ませるのみで、第1の送信信号25の送信を停止させ、第2の送信信号23及び第2の受信信号24への第1の送信信号25による干渉を防止することができる。そして、送信情報21又は受信信号24の中に所定の情報を含ませるのみで、第1の送信信号25の送信の停止を解除することができる。すなわち、第2の通信部12による通信において交換される情報の中に所定の情報を含ませるのみで、第1の通信部11による信号の送信を停止させたり、停止を解除したりすることができるという効果がある。
さらに、通信装置10は、送信情報21の中に第1の情報を検出すると、送信情報21を第1の送信信号23を用いて送信するときに、第1の通信手段13を停止させ、第2の通信手段15のみを動作可能にしてもよい。この場合も、送信情報12を含む第2の送信信号23は、第1の送信信号25の干渉を受けることがない。通信装置10は、第2の受信信号24中に第2の情報を検出すると、第1の通信手段13の停止を解除し、動作可能な状態に設定する。従って、第2の通信手段15が、第1の情報を送信してから第2の情報を受信するまで、第2の送信信号23及び第2の受信信号24が第1の送信信号23による干渉を受けることがない。
このように、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させるとき、第1の通信手段13の動作のすべてを停止させてもよい。この場合、第1の通信手段13による信号の送受信がすべて停止するので、第2の通信手段15への干渉は防止される。なお、第1の通信手段13による通信が停止しているときの第1の通信部11の消費電力は、第1の通信手段13による通信が可能な状態にあるときの消費電力よりも小さいことが望ましい。
また、第2の通信手段15も、第2の送信信号24の送信を停止させる停止手段を備えてもよい。この場合、第2の通信手段15による信号の受信は可能であるが、第1の通信手段13による通信への干渉は防止される。あるいは、第2の通信手段15も、第2の通信手段15の動作のすべてを停止させる停止手段を備えてもよい。第2の通信手段15の動作が停止しているときの第2の通信部12の消費電力は、第2の通信手段15の動作が可能な状態にあるときの消費電力よりも小さいことが望ましい。
通信調停手段16の処理は、第2の通信部12に内蔵されたCPU(図示なし)によるプログラム制御によって行うことができる。図7は、本発明の第4の実施形態の端末の通信調停手段16の動作を示すフローチャートである。
始めに、通信調停手段16は、送信情報21又は受信信号24中に第1の情報が含まれるか否かを判定する(ステップS1)。第1の情報が含まれるとき(ステップS1:Yes)、通信調停手段16は、第1の送信信号25の送信を停止する(ステップS2)。
第1の情報が含まれないとき(ステップS1:No)、通信調停手段16は、送信情報21又は受信信号24中に第2の情報が含まれるか否かを判定する(ステップS3)。第2の情報が含まれるとき(ステップS3:Yes)、通信調停手段16は、第1の送信信号25の送信の停止を解除する(ステップS4)。
送信情報21又は受信信号24中に、第1の情報及び第2の情報が含まれないとき(ステップS3:No)、通信調停手段16は、処理を終了する。
(第5の実施形態)
第5の実施形態も、本発明を実施するために必要な最小の構成を備える通信装置である。本実施形態の通信装置10は、図6に示した第4の実施形態の通信装置と同じ構成を備える。ただし、第4の実施形態と第5の実施形態とは、第1の通信手段13を停止する条件及び又は停止を解除する条件が異なる。
本実施形態の通信装置10は、第1の通信部11と第2の通信部12を備える。第1の通信部11は、通信を行う第1の通信手段13と、前記第1の通信手段による通信を停止させる停止手段14を含む。第2の通信部12は、通信を行う第2の通信手段15と通信調停手段16を含む。
本実施形態の通信装置10の通信調停手段16は、外部の通信装置との間で所定のパケットを送受信する基準タイミングに同期して停止手段14に停止又は停止の解除を指示する。すなわち、通信調停手段16は、基準タイミングを検出すると、停止手段14に停止又は停止の解除を指示する。なお、上記の「同期」は、基準タイミングと一定の関係を持つことを意味し、タイミングが完全に一致することまでは要求しない。
また、通信調停手段16は、外部の通信装置へ送信される情報中、又は、第2の通信手段15によって外部の通信装置から受信された情報中に、所定の情報を検出したとき、停止手段14に停止を指示、又は停止手段14に停止の解除を指示する。
例えば、通信調停手段16は、基準タイミングを検出すると、停止手段14へ送信制御信号22を出力し、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させる。そして、通信調停手段16は、受信信号24の中に第2の情報を検出すると、停止手段14へ送信制御信号22を出力し、第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信の停止を解除する。上記のケースは、通信装置10が所定のタイミングで通信を開始させ、外部の通信装置がその通信を終了させる場合等に相当する。
以上のように、本実施形態の通信装置10は、所定のタイミングで第1の送信信号25の送信を停止させ、第2の通信手段15のみを動作可能にする。従って、所定のタイミング中は、送信信号24及び受信信号23が第1の送信信号25による干渉を受けることがないという効果がある。
なお、通信調停手段16が、受信信号24の中に第2の情報を検出すると第1の通信手段13による第1の送信信号25の送信を停止させ、基準タイミングを検出すると第1の送信信号25の送信の停止を解除してもよい。
通信調停手段16の処理は、第2の通信部12に内蔵されたCPU(図示なし)によるプログラム制御によって行うことができる。図8は、本発明の第5の実施形態の端末の通信調停手段16の動作を示すフローチャートである。
始めに、通信調停手段16は、基準タイミングを検出する(ステップS5)。基準タイミングを検出すると(ステップS5:Yes)、通信調停手段16は、第1の送信信号25の送信を停止する(ステップS2)。
第1の情報が含まれないとき(ステップS5:No)、通信調停手段16は、送信情報21又は受信信号24中に第2の情報が含まれるか否かを判定する(ステップS3)。第2の情報が含まれるとき(ステップS3:Yes)、通信調停手段16は、第1の送信信号25の送信の停止を解除する(ステップS4)。
送信情報21又は受信信号24中に、第1の情報及び第2の情報が含まれないとき(ステップS3:No)、通信調停手段16は、処理を終了する。
なお、第4及び第5の実施形態は、その手段の一部を組み合わせることができる。例えば、第1の通信手段の停止条件として第4の実施形態の条件を適用し、第1の通信手段の停止解除条件として第5の実施形態の条件を適用してもよい。あるいは、その逆でもよい。
また、第2の通信部にも、第2の通信手段の停止手段を備え、第1の通信手段の停止又は解除に対応させて、第2の通信手段を停止又は解除させてもよい。すなわち、第1の通信手段の停止させるときには第2の通信手段の停止を解除し、第1の通信手段の停止を解除するときには第2の通信手段を停止させてもよい。
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2010年3月1日に出願された日本出願特願2010−044014を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の通信装置は、実施形態で説明したような端末のみでなく、複数の通信方式に対応した通信部を搭載した各種の電子機器に適用することができる。すなわち、無線LANとBluetooth等、所定の通信方式に対応した、複数の通信部を備える各種の電子機器に適用することができる。電子機器の例としては、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistants。個人向け携帯型情報通信機器)等の端末等がある。なお、複数の通信部のそれぞれが対応する通信方式は、すべて又は一部が同じでもよい。あるいは、すべてが異なってもよい。
【符号の説明】
【0010】
10 通信装置
11 第1の通信部
12 第2の通信部
21 送信情報
22 送信制御信号
23 第2の送信信号
24 第2の受信信号
25 第1の送信信号
100、200 端末機器
110 通信制御部
120、211 無線LAN通信部
121 MAC部
122 PHY部
130、212 Bluetooth通信部
131 LM部
132 BB部
図1
図2
図3
図4
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図6
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