【文献】
PANDEY,P. et al,Imine-linked microporous polymer organic frameworks,Chemistry of Materials,2010年 8月 3日,Vol.22, No.17,p.4974-4979
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載の式(Ia)で表される芳香族ポリアルデヒド化合物が、下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)から選択された少なくとも一種の化合物である請求項2記載の組成物。
(a1)環A1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環、又は縮合二乃至七環式窒素原子含有芳香族複素環であり、nが0であり、k1が2又は3であり、pが1である化合物、
(a2)環A1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環であり、nが0であり、k1が1又は2であり、pが2である化合物、
(a3)環A1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環であり、リンカーLが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基、2〜4価の芳香族炭化水素環又は複素環基であり、nが1であり、k1が1又は2であり、pが2〜4である化合物、
(a4)環A1がポルフィリン又はフタロシアニン環であり、nが0であり、k1が2〜4であり、pが1である化合物
芳香族複素環式化合物が、単環式化合物、縮合環式化合物、及び環集合化合物から選択された少なくとも一種であり、かつ複素環のヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及びテルル原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5〜8員芳香族複素環を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
芳香族複素環式化合物が、複素環のヘテロ原子として、硫黄原子、酸素原子、窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5員芳香族複素環を含む請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族ポリアミン又は芳香族複素環式化合物との割合が、反応部位の当量比換算で、前者/後者=70/30〜30/70である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
有機溶媒を、芳香族ポリアルデヒド化合物、及び芳香族ポリアミン又は芳香族複素環式化合物の合計1重量部に対して、0.1〜200重量部の割合で含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
イミダゾール環、炭素−炭素単結合、及び炭素−炭素二重結合から選択された少なくとも一種の単位を介して、芳香族ポリアルデヒド化合物由来の単位と芳香族ポリアミン又は芳香族複素環式化合物由来の単位とが連結した構造を有する請求項10又は11記載の有機半導体。
無機半導体の少なくとも一方の面に請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を塗布した後、熱処理して有機半導体を形成し、請求項14又は15記載の有機無機複合半導体を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[架橋性組成物(又はコーティング組成物)]
本発明の組成物(架橋性又は重合性組成物)は、反応によりπ電子共役系結合[例えば、炭素−窒素二重結合(−C=N−)、炭素−炭素一重結合(−C−C−)、炭素−炭素二重結合(−C=C−)、炭素−炭素三重結合(−C≡C−)、アミド結合(−NHCO−)、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など]を生成可能な官能基(反応部位)を有する重合成分(又は反応成分)を含んでいる。この重合成分(又は反応成分)は、π電子共役系結合を生成可能な2以上(例えば2〜8、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4程度)の官能基(反応部位)を有しており、特に、少なくとも一つの重合成分(又は反応成分)は3以上(例えば3〜8、好ましくは3〜6、さらに好ましくは3〜4程度)の官能基(反応部位)を有している。そのため、重合反応により、3次元網目構造(架橋構造)を形成可能である。また、この重合成分自体もπ電子共役系構造(通常、芳香環)を有するため、重合体は三次元的に全体に亘り電気的に導通可能である。
【0047】
本発明の組成物は、反応部位としてのカルボニル基を有する芳香族ポリカルボニル化合物と、芳香族ポリアミン及び芳香族複素環式化合物から選択された少なくとも1つの芳香族反応成分とを含んでおり、芳香族ポリアミンは反応部位としてのアミノ基を有し、芳香族複素環式化合物は複素環のヘテロ原子に隣接し、かつ反応部位としての未修飾(又は未置換)のα−炭素位を有する。また、芳香族反応成分が芳香族複素環式化合物であるとき、芳香族ポリカルボニル化合物として芳香族ポリアルデヒド化合物が使用される。すなわち、本発明は、(1)芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミンとを含む態様、(2)芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族複素環式化合物とを含む態様、及び(3)芳香族ポリアルデヒド化合物と、芳香族ポリアミンと、芳香族複素環式化合物とを含む態様を包含する。
【0048】
本発明の前記態様(1)の組成物は、反応の容易さなどの点から、炭素−窒素二重結合(−C=N−)、アミド結合(−NHCO−)、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環を生成する組合せ、すなわち、複数のカルボニル基を含有するπ電子共役系化合物(芳香族ポリカルボニル化合物など)と複数のアミノ基を含有するπ電子共役系化合物(芳香族ポリアミンなど)との組合せで構成されている。また、これらの化合物のうち、少なくとも一方の化合物は、官能基として、分子中に3以上の反応部位[アミノ基又はカルボニル基(カルボニル基含有基、アミノ基と反応する反応性カルボニル基)]を有する。
【0049】
本発明の前記態様(2)の組成物は、炭素−炭素一重結合(−C−C−)、炭素−炭素二重結合(−C=C−)を生成する組合せ、すなわち、複数のホルミル基を含有するπ電子共役系化合物(芳香族ポリアルデヒド化合物)と複数の反応部位を含有するπ電子共役系複素環化合物(芳香族複素環化合物)との組合せで構成されている。この組成物では、芳香族ポリカルボニル化合物及び芳香族複素環式化合物のうち、少なくとも1つの成分は、1分子中に3以上の反応部位(ホルミル基(アルデヒド基)又は未修飾のα−炭素位)を有する。この組成物は、安定性が高く、低温での熱処理により有機半導体を形成できる。
【0050】
本発明の前記態様(3)の組成物は、前記態様(1)と態様(2)とを組み合わせた組成物に相当する。そのため、態様(3)の組成物では、芳香族ポリカルボニル化合物、芳香族ポリアミン、および芳香族複素環式化合物から選択された少なくとも1つの成分が、1分子中に3以上の反応部位[ホルミル基(アルデヒド基)、アミノ基及び/又は未修飾のα−炭素位]を有している。
【0051】
このような態様(1)〜(3)の組成物は、有機半導体(高分子型有機半導体)を形成するために適している。本発明では、前記態様(1)又は(2)の組成物であっても、高い性能を有する有機半導体を形成できる。
【0052】
(芳香族ポリカルボニル化合物)
芳香族ポリカルボニル化合物としては、複数のカルボニル基(カルボニル基含有基)を有する芳香族化合物である限り、特に限定されず、通常、下記式(I)で表される。
【0053】
【化8】
(式中、Aは芳香族性環を示し、R
1はカルボニル基含有基を示し、kは2以上の整数である)
前記式(I)において、Aで表される芳香族性環(以下、単に芳香環という場合がある)としては、芳香環であってもよく、芳香環の環集合体であってもよい。芳香環としては、芳香族炭化水素環[例えば、単環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環など)、縮合多環式芳香族炭化水素環(インデン環、ナフタレン環などの縮合二環式炭化水素環;アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式炭化水素環;ピレン環、ナフタセン環などの縮合四環式炭化水素環;ペンタセン環、ピセン環などの縮合五環式炭化水素環;ヘキサフェン環、ヘキサセン環などの縮合六環式炭化水素環;コロネン環などの縮合七環式炭化水素環など)]、芳香族複素環[例えば、単環式複素環(チオフェン環などの硫黄原子を含む5員複素環;ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環などの窒素原子を含む5員複素環;フラン環などの酸素原子を含む5員複素環;オキサゾール環、オキサジアゾール環などの窒素原子及び酸素原子を含む5員複素環;チアゾール環、チアジアゾール環などの窒素原子及び硫黄原子を含む5員複素環など)、多環式複素環(キノリン環などの縮合二環式複素環;キサンテン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環などの縮合三環式複素環;ポルフィリン;フタロシアニンなど)]、又はこれらの誘導体(アントラキノンなどの炭化水素環式ケトン、ピラゾロンなどの複素環式ケトンなど)などが例示できる。なお、これらの芳香環は置換基(後述の非反応性基R
2など)を有していてもよい。
【0054】
環集合体を構成する芳香環は、前記例示の芳香環単独で構成してもよく、二種以上組み合わせて構成してもよい。
【0055】
芳香環の環集合体としては、例えば、直接結合により複数の芳香環が互いに連結した環集合体[例えば、ビフェニルなどの二環系集合体、ターフェニル(p−ターフェニルなど)などの三環系集合体、1,3,5−トリフェニルベンゼンなどの四環系集合体など]、リンカー(又はユニット又は連結基)を介して複数の芳香環が互いに連結した環集合体{例えば、二環系集合体[例えば、酸素原子をリンカーとする環集合体(フェノキシベンゼンなどのジアリールエーテルなど)、硫黄原子をリンカーとする環集合体(フェニルチオベンゼンなどのジアリールチオエーテルなど)、ビニレン基をリンカーとする環集合体(スチルベンなどの1,2−ジアリールエテンなど)、アゾ基をリンカーとする環集合体(アゾベンゼンなどのアゾアレーン(1,2−ジアリールジアゼン)など)など]、三環系集合体[例えば、窒素原子をリンカーとする環集合体(トリフェニルアミンなどのトリアリールアミンなど)など]など}が例示できる。
【0056】
R
1で表されるカルボニル基含有基としては、ホルミル基(アルデヒド基);基−(CH=CH)
m−CHO(mは0以上の整数で、例えば0〜10、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜2)(例えば、2−ホルミルビニル基)などのホルミル基含有基;アシル基(アセチル基などのC
2−5アシル基など)などのケトン基含有基;カルボキシル基;低級アルコキシカルボニル基(C
1−2アルコキシ−カルボニル基);ハロカルボニル基(クロロカルボニル基など)などが例示できる。なお、各々のR
1は互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
【0057】
R
1の置換数kは、2以上であればよく、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6(特に2〜4)程度であってもよい。
【0058】
具体的には、前記式(I)で表される化合物として、下記式(Ia)で表される化合物(例えば、芳香族ポリアルデヒド化合物、芳香族ポリカルボン酸など)が挙げられる。
【0059】
【化9】
(式中、Lはリンカーを示し、A
1は芳香族性環を示し、R
1は前記に同じ。nは0又は1、k1は1以上の整数、pは1以上の整数である。但し、k1×pは2以上の整数である。)
なお、前記式(Ia)において、「k1×pが2以上の整数である」とは、分子中に含まれるR
1の総数が2以上であることを示す。
【0060】
前記式(Ia)において、A
1で表される芳香族性環(又は芳香環)としては、前記環Aと同様の芳香族性環が例示できる。これらの芳香族性環のうち、単環又は縮合2乃至20環式芳香環(例えば、縮合2乃至10環式芳香環)が好ましい。特に、単環又は縮合二乃至七環式アレーン環(ベンゼン環、ナフタレン環などの単環又は縮合二乃至四環式アレーン環など)、縮合二乃至七環式窒素原子含有複素環(カルバゾール環などの縮合二乃至四環式窒素原子含有複素環など)が好ましく、特にベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環(例えば、C
6−14アレーン環、特にC
6−10アレーン環)が好ましい。なお、pが2以上の整数である場合、各々の環A
1の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
【0061】
Lで表されるリンカー(又はユニット又は連結基)としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ホウ素原子、リン原子などのヘテロ原子;複数のヘテロ原子で構成されたリンカー(アゾ基、ジスルフィド基など);エチレンに対応するリンカー(ビニレン基など);アセチレンに対応するリンカー(エチニレン基);芳香環に対応するリンカー(又は2以上の多価基);これらの組合せで構成されたリンカー[例えば、下記式(Ib)で表される基など]が挙げられる。なお、芳香環に対応するリンカーにおいて、芳香環は環Aと同様の芳香環が例示できる。これらの芳香環のうち、単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環などの単環又は縮合二乃至四環式アレーン環など)、酸素原子及び窒素原子を含有する複素環(オキサゾール環、オキサジアゾール環などの5員複素環など)、及びポルフィリン環から選択された一種が好ましい。
【0062】
【化10】
(式中、Yは酸素原子、硫黄原子、又はアゾ基を示し、Zは芳香族性環を示し、q1、q2、及びq3は、それぞれ0又は1であり、q4は1以上の整数である。但し、q1+q2+q3は1以上の整数、(q1+q2+q3)×q4は2以上の整数である。)
なお、式中、下記化学結合
【0063】
【化11】
は、二重結合又は三重結合であることを示す。
【0064】
前記式(Ib)において、環Zで表される芳香族性環としては、前記環Aと同様の芳香族性環が例示できる。環Zは、ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環(例えば、C
6−10アレーン環)が好ましい。なお、環Zは置換基(後述の非反応性基R
2など)を有していてもよい。また、q4が2以上の整数である場合、各々のZ(若しくはY)の種類、又はq1(又はq2若しくはq3)の数は、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0065】
前記式(Ia)において、リンカーLはフラーレン(又はフラーレン単位)であってもよく、リンカーL及び/又は芳香族性環A
1には、フラーレン(又はフラーレン単位)が置換していてもよい。
【0066】
Y、Z、及びビニレン基(又はエチニレン基)から選択された少なくとも1種以上で構成された単位の繰り返しの数q4は、1以上であれば特に限定されず、例えば、1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜5程度であってもよい。前記単位におけるq1、q2、及びq3の合計(q1+q2+q3)は、1以上であれば特に限定されず、1〜3、好ましくは1〜2程度であってもよい。
【0067】
前記式(Ib)におけるq1、q2、及びq3の合計[(q1+q2+q3)×q4]は、2以上であれば特に限定されず、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6(例えば3〜5)程度であってもよい。
【0068】
具体的には、前記式(Ib)で表される基としては、アリーレン基の両末端にアゾ基が結合したアレーンジアゾ基[下記式(Ib-1)など]、ビニレン基の両末端にアリーレン基を介してアゾ基が結合したジアリールエテンジアゾ基[下記式(Ib-2)など]、アリールアレーン−ジイル基の両末端に酸素原子が結合したアリールアレーンジオキシ基[下記式(Ib-3)など]、アレーン環に複数のエチニレン基が結合した基[下記式(Ib-4)などのアレーンジエチニレン基など]などが挙げられる。
【0069】
【化12】
これらのリンカーのうち、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ジスルフィド基、ビニレン基、2〜4価の芳香族炭化水素環又は複素環基[2価の炭化水素環基(例えば、フェニレン基、9,9−フルオレン−ジイル基など)、2価の複素環基(例えば、2,5−オキサゾール−ジイル基などのオキサゾール−ジイル基、2,5−オキサジアゾール−ジイル基などのオキサジアゾール−ジイル基など)、3価の炭化水素環基(例えば、1,3,5−ベンゼン−トリイル基などのC
6−24アレーン−トリイル基など)、4価の複素環基(5,10,15,20−ポルフィリン−テトライル基などのポルフィリン−テトライル基など)など]、アリーレン基(フェニレン基などのC
6−24アリーレン基)の両末端にアゾ基が結合した基、ビニレン基の両末端にアリーレン基(フェニレン基などのC
6−24アリーレン基)を介してアゾ基が結合した基、又はアリールアレーン−ジイル基(ビフェニル−ジイル基などのビC
6−24アリール−ジイル基など)の両末端に酸素原子が結合した基が好ましい。
【0070】
係数p(リンカーLの価数に対応する数)は、リンカーLの種類に応じて適宜選択され、1以上[例えば、1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6(例えば1〜4、特に1〜3)程度]であってもよい。なお、「n=0かつp=1」とは、前記式(Ia)が複数のカルボニル基含有基を有する環A
1であることを意味し、「n=0かつp=2」とは、直接結合により、2個の環A
1が互いに連結していることを意味する。
【0071】
R
1で表されるカルボニル基含有基としては、ホルミル基、2−ホルミルビニル基などのホルミル基含有基、カルボキシル基(特にホルミル基)が好ましい。基R
1の種類は、k1が2以上の整数である場合、互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0072】
基R
1の置換数k1は、1以上であり、かつ分子中の基R
1の合計(k1×p)が2以上となる整数であれば、特に限定されない。例えば、p=1の場合、k1は2以上であればよく、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6(例えば2〜4、特に3)程度であってもよい。pが2以上の整数である場合、k1は1以上であればよく、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3(例えば1〜2、特に1)程度であってもよい。なお、pが2以上の整数である場合、各々のk1は互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0073】
k1×pは、2以上であれば特に限定されず、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6(例えば2〜4、特に3又は4)程度であってもよい。
【0074】
基R
1の置換位置は、特に限定されず、1つの芳香環A
1に置換する複数の基R
1は、互いに非オルト位で置換しているのが好ましい。
【0075】
前記芳香環A
1は置換基(非反応性基など)を有していてもよく、前記式(Ia)で表される化合物は、下記式(Ic)で表される化合物であってもよい。
【0076】
【化13】
(式中、R
2は非反応性基を示し、k2は0以上の整数であり、L、A
1、R
1、n、k1、pは前記に同じ。)
基R
2で表される「非反応性基」とは、アミノ基とカルボニル基含有基との反応に対して非反応性(又は不活性)の基を意味する。非反応性基としては、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、N,N−二置換アミノ基、スルホ基、スルホナート基(スルホン酸ナトリウム基など)などが挙げられる。
【0077】
前記炭化水素基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基などのC
2−6アルケニル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC
5−8シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(モノ又はジメチルフェニル基(トリル基、2−メチルフェニル基、キシリル基など)などのC
1−4アルキルフェニル基)、ナフチル基などのC
6−10アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)などが例示できる。
【0078】
前記ハロゲン化炭化水素基としては、前記炭化水素基の水素原子がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)に置換された基(例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基などのハロC
1−6アルキル基(フッ素化メチル基など)など)が例示できる。
【0079】
前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基(好ましくはC
1−6アルコキシ基)などが例示でき、前記シクロアルコキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などのC
5−8シクロアルキルオキシ基などが例示できる。さらに、前記アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基などが例示でき、前記アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基などが例示できる。
【0080】
前記アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基としては、それぞれ上記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基に対応する基などが例示できる。
【0081】
前記N,N−二置換アミノ基としては、N,N−ジアルキルアミノ基(N,N−ジメチルアミノ基などのN,N−ジC
1−6アルキルアミノ基)などが挙げられる。
【0082】
なお、基R
2の置換位置は特に限定されない。分子中に含まれるR
2の総数(k2×p)が2以上の整数である場合、各々の基R
2の種類は互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0083】
係数k2は、0以上であれば特に限定されず、例えば、0〜5、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2(例えば0又は1、特に0)程度であってもよい。なお、pが2以上の整数である場合、各々のk2は互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0084】
k2×pは、0以上であれば特に限定されず、例えば、0〜10、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4(特に0〜2)程度であってもよい。
【0085】
これらの化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記式(Ia)で表される化合物のうち、例えば、下記化合物(a1)〜(a4)が好ましい。
【0086】
(a1)環A
1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などのC
6−24アレーン環など)、又は縮合二乃至七環式芳香族複素環(カルバゾール環などの窒素原子含有複素環など)であり、nが0であり、k1が2〜4(例えば、2又は3)であり、pが1である化合物。
【0087】
このような化合物としては、例えば、ジ乃至テトラホルミルアレーン類、及びこの化合物においてホルミル基の代わりにカルボキシル基を有する化合物などが例示でき、ジ乃至テトラホルミルアレーン類としては、例えば、ジホルミルアントラセンなどのジホルミルアレーン(例えば、ジホルミルC
6−20アレーンなど)、1,3,5−トリホルミルベンゼンなどのトリホルミルアレーン(例えば、トリホルミルC
6−20アレーンなど)、テトラホルミルピレンなどのテトラホルミルアレーン(例えば、テトラホルミルC
6−20アレーンなど)、9−(2−エチルヘキシル)カルバゾール−3,6−ジカルバルデヒドなどの置換基(C
1−12アルキル基などのアルキル基など)を有していてもよい複素環式ジアルデヒド(5又は6員複素環式ジアルデヒド又は5又は6員複素環とベンゼン環との縮合複素環式ジアルデヒドなど)などが例示できる。
【0088】
(a2)環A
1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環など)であり、nが0であり、k1が1又は2であり、pが2又は3である化合物(環集合化合物)。
【0089】
このような化合物としては、2〜10(好ましくは2〜5)程度の複数のアレーン環が結合した環集合化合物、例えば、2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’−ジホルミルビフェニルなどのジホルミルビアリール(両末端にホルミル基を有するアレーン環が位置するジホルミルビC
6−12アリール)、4,4”−ジホルミルターフェニルなどの両末端にホルミル基を有するアレーン環が位置するジホルミルターC
6−12アリール、2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジカルバルデヒドなどのジホルミルビチオフェン、2,2’:5’,2”−ターチオフェン−5,5”−ジカルバルデヒドなどのジホルミルターチオフェンなど;これらの化合物においてホルミル基の代わりにカルボキシル基を有する化合物などが例示できる。
【0090】
(a3)環A
1が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環など)であり、リンカーLが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基、2〜4価の芳香族炭化水素環又は複素環基[例えば、アリーレン基(フェニレン基などのC
6−24アリーレン基など)、アレーン−トリイル基(ベンゼン−トリイル基などのC
6−24アレーン−トリイル基など)、ポルフィリン−テトライル基などのアレーン環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環)及びポルフィリン環から選択された一種の芳香環に対応する2〜4価基]であり、nが1であり、k1が1又は2であり、pが2〜4である化合物。
【0091】
このような化合物としては、例えば、ビス(2−ホルミルフェニル)エーテルなどのビス(ホルミルアリール)エーテル(ビス(ホルミルC
6−12アリール)エーテルなど);4,4’−ジホルミルスチルベンなどの1,2−ジ(ホルミルアリール)エテン(1,2−ビス(ホルミルC
6−12アリール)エテンなど);トリス(4−ホルミルフェニル)アミンなどのトリ(ホルミルアリール)アミン(トリス(ホルミルC
6−12アリール)アミンなど);1,3,5−トリス(4−ホルミルフェニル)ベンゼンなどのトリ(ホルミルアリール)アレーン(トリス(ホルミルC
6−12アリール)C
6−12アレーンなど)、5,10,15,20−テトラキス(4−ホルミルフェニル)ポルフィリンなどのテトラ(ホルミルアリール)ポルフィリン(テトラキス(ホルミルC
6−12アリール)ポルフィリンなど);これらの化合物においてホルミル基の代わりにカルボキシル基を有する化合物などが例示できる。
【0092】
(a4)環A
1がポルフィリン又はフタロシアニン環であり、nが0であり、k1が2〜4であり、pが1である化合物[例えば、2,9,16,23−テトラホルミルフタロシアニン、3,10,17,24−テトラホルミルフタロシアニンなど]。
【0093】
これらの芳香族化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。芳香族ポリカルボニル化合物(特に、芳香族ポリアルデヒド化合物)としては、1分子中に複数(例えば、2〜4個、特に3〜4個)の反応部位(ホルミル基など)を有するのが好ましい。特に、アミノ基及びα−炭素位との反応性の点から、上記化合物(a1)〜(a4)において、基R
1がホルミル基である化合物(例えば、表1〜3に示す化合物)が好ましい。
【0096】
【表3】
(芳香族ポリアミン)
芳香族ポリアミンは、複数のアミノ基(第1級アミノ基)を有する芳香族化合物である限り、特に限定されず、通常、下記式(II)で表される化合物である。
【0097】
【化14】
(式中、R
3はアミノ基を示し、A及びkは前記に同じ。)
具体的には、前記式(II)で表される化合物として、下記式(IIa)で表される化合物が挙げられる。
【0098】
【化15】
(式中、A
2は芳香族性環を示し、R
3はアミノ基を示し、R
4は水素原子、アミノ基、メルカプト基、又はヒドロキシル基を示し、k3は1以上の整数であり、L、n、及びpは前記に同じ。但し、k3×pは2以上の整数である。)
なお、前記式(IIa)において、「k3が2以上の整数である場合」とは、互いにオルト位で接するR
3とR
4との一対の基が、環A
2に2対以上置換していることを示す。また、「k3×pが2以上の整数である」とは、分子中に含まれるR
3とR
4との一対の基の総数が2以上であることを示す。
【0099】
前記式(IIa)において、A
2で表される芳香族性環(又は芳香環)は、前記環A
1と同様の芳香族性環が例示できる。これらの芳香族性環のうち、単環又は縮合2乃至20環式芳香環(例えば、縮合2乃至10環式芳香環)が好ましい。特に、単環又は縮合二乃至七環式炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピレン環、アントラキノン環などの単環又は縮合二乃至四環式炭化水素環)、縮合二乃至七環式窒素含有複素環(カルバゾール環、フェナントリジン環などの縮合二乃至四環式窒素含有複素環)が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環(例えば、C
6−14アレーン環、特にC
6−10アレーン環)が特に好ましい。リンカーLも前記式(Ia)と同様のリンカーが例示できる。
【0100】
前記式(IIa)において、リンカーLはフラーレン(又はフラーレン単位)であってもよく、リンカーL及び/又は芳香族性環A
2には、フラーレン(又はフラーレン単位)が置換していてもよい。
【0101】
互いにオルト位で接するR
3とR
4との一対の基の置換数k3は、1以上であり、かつ分子中に含まれるR
3とR
4との一対の基の総数(k3×p)が2以上となる整数であれば、特に限定されない。例えば、p=1の場合、k3は2以上であればよく、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6(例えば2〜4、特に2)程度であってもよい。pが2以上の整数である場合、k3は1以上であればよく、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3(例えば1〜2、特に1)程度であってもよい。なお、pが2以上の整数である場合、各々のk3は互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0102】
基R
4は、k3×pが2以上の整数である場合、互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
【0103】
基R
3及び基R
4は、オルト位の位置関係で環A
2に置換している。基R
3の置換位置は特に限定されず、1つの芳香環A
2に置換する複数の基R
3は、互いに非オルト位で置換しているのが好ましい。
【0104】
芳香環A
2は置換基(非反応性基など)を有していてもよく、前記式(IIa)で表される化合物は、下記式(IIb)で表される化合物であってもよい。
【0105】
【化16】
(式中、A
2、L、R
2、R
3、R
4、n、k2、k3、及びpは前記に同じ。)
これらの化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記式(IIa)で表される化合物のうち、例えば、下記化合物(b1)〜(b4)が好ましい。
【0106】
(b1)環A
2が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピレン環、アントラキノン環、コロネン環など)、又は縮合二乃至七環式芳香族複素環(カルバゾール環、フェナントリジン環などの窒素原子含有複素環など)であり、nが0であり、k3が2〜4(例えば、2又は3)であり、pが1である化合物。
【0107】
このような化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、ジアミノフルオレン、ジアミノピレン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、ジアミノカルバゾール、ジアミノアントラキノン、ジアミノ−6−フェニルフェナントリジンなどの置換基を有していてもよいジ乃至トリアミノアレーン(ジ乃至トリアミノC
6−20アレーンなど)などが例示でき、上記置換基としては、C
1−10アルキル基、C
6−10アリール基、ヒドロキシル基、C
1−10アルコキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボニル基などが例示できる。
【0108】
(b2)環A
2が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環など)であり、nが0であり、k3が1又は2であり、pが2である化合物。
【0109】
このような化合物としては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ジアミノベンジジン、3,5’−ジヒドロキシベンジジン、3,5’−ジメルカプトベンジジンなどの置換基を有していてもよいベンジジン類;3,3’−ジメチルナフチジンなどの置換基を有していてもよいナフチジン類などが例示でき、上記置換基としては、C
1−10アルキル基、ハロC
1−10アルキル基、ヒドロキシル基、C
1−10アルコキシ基、ハロC
1−10アルコキシ基、メルカプト基、C
1−10アルキルチオ基、ハロC
1−10アルキルチオ基、アミノ基などが例示できる。
【0110】
(b3)環A
2が単環又は縮合二乃至七環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環)であり、リンカーLが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ジスルフィド基、ビニレン基、2〜4価の芳香族炭化水素環又は複素環基[例えば、アリーレン基(フェニレン基、9,9−フルオレン−ジイル基など)、アレーン−トリイル基(ベンゼン−トリイル基など)、オキサゾール−ジイル基、オキサジアゾール−ジイル基、ポルフィリン−テトライル基などのアレーン環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−24アレーン環)、酸素原子及び窒素原子を含有する複素環(例えば、5員複素環などの単環式複素環)、及びポルフィリン環から選択された一種の芳香環に対応する2〜4価基]、アリーレン基の両末端にアゾ基が結合した基、ビニレン基の両末端にアリーレン基を介してアゾ基が結合した基、又はアリールアレーン−ジイル基の両末端に酸素原子が結合した基であり、nが1であり、k3が1又は2であり、pが2〜4である化合物。
【0111】
このような化合物としては、例えば、トリス(4−アミノフェニル)アミンなどのトリ(アミノアリール)アミン[トリ(アミノC
6−10アリール)アミンなど];ビス(2−アミノフェニル)スルフィドなどのビス(アミノアリール)スルフィド[ビス(アミノC
6−10アリール)スルフィドなど];ジ(2−アミノフェニル)ジスルフィドなどのジ(アミノアリール)ジスルフィド[ジ(アミノC
6−10アリール)ジスルフィドなど];4,4’−ジアミノスチルベンなどの1,2−ジ(アミノアリール)エテン[ジ(アミノC
6−10アリール)エテンなど];4,4’−ジアミノビフェニルなどのジアミノビアリール[ジアミノビC
6−10アリールなど];4,4”−ジアミノ−p−ターフェニルなどのジアミノターアリール[ジアミノターC
6−10アリールなど];9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アミノアリール)フルオレン[9,9−ビス(アミノC
6−10アリール)フルオレンなど];2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのジ(アミノアリール)オキサジアゾール[ジ(アミノC
6−10アリール)オキサジアゾールなど];1,3−ビス(3,5−ジアミノ−フェニルアゾ)ベンゼンなどのビス(モノ乃至ジアミノアリールアゾ)アレーン[ビス(モノ乃至ジアミノC
6−10アリールアゾ)C
6−10アレーンなど];4,4’−ビス(4−アミノ−1−ナフチルアゾ)−スチルベン、4,4’−ビス(4−アミノ−1−ナフチルアゾ)スチルベン−2,2’−ジスルホン酸などの置換基(C
1−10アルキル基、ヒドロキシル基、C
1−10アルコキシ基、メルカプト基、C
1−10アルキルチオ基、スルホニル基、スルフィニル基など)を有していてもよいビス(アミノアリールアゾ)スチルベン[ビス(アミノC
6−10アリールアゾ)スチルベンなど];4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどのビス(アミノアリールオキシ)ビアリール[ビス(アミノC
6−10アリールオキシ)ビC
6−10アリールなど];5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリンなどのテトラ(アミノアリール)ポルフィリン[テトラ(アミノC
6−10アリール)ポルフィリンなど]などが例示できる。
【0112】
(b4)環A
2がポルフィリン又はフタロシアニン環であり、nが0であり、k3が2〜4であり、pが1である化合物。
【0113】
このような化合物としては、例えば、2,9,16,23−テトラアミノフタロシアニン、3,10,17,24−テトラアミノフタロシアニンなどが例示できる。
【0114】
これらの芳香族アミンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。芳香族ポリアミンは、1分子中に複数(例えば、2〜4個、好ましくは2〜3個)の反応部位(アミノ基)を有するのが好ましい。このような芳香族アミンは、通常、1分子中に複数(例えば、2〜4個、特に3〜4個)の反応部位(ホルミル基など)を有する芳香族ポリカルボニル化合物(特に、芳香族アルデヒド化合物)と組み合わせて使用される。特に、前記式(IIa)で表される化合物のうち、取扱性の点から、毒性の少ない(又は毒性のない)化合物(例えば、表4〜11に示す化合物など)が好ましい。
【0122】
【表11】
なお、これらの化合物のうち、基R
4が水素原子である化合物は、芳香族ポリカルボニル化合物との反応において、基R
3で表されるアミノ基が、カルボニル基含有基と反応して、炭素−窒素二重結合(−C=N−)、アミド結合(−NHCO−)を生成する。一方、基R
4がアミノ基、ヒドロキシル基、又はメルカプト基である化合物(環生成型ポリアミン)は、芳香族ポリカルボニル化合物(特に、芳香族ポリアルデヒド化合物)との反応において、隣接する基R
3及び基R
4とカルボニル基含有基とが反応に関与して、環を形成する場合が多い。例えば、基R
4が、(i)アミノ基であるとイミダゾール環を形成し、(ii)ヒドロキシル基であるとオキサゾール環を形成し、(iii)メルカプト基であるとチアゾール環を形成する。
【0123】
芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミンとの割合は、カルボニル基とアミノ基[詳細には、カルボニル基との反応性基(例えば、前記式(IIa)において、基R
4がアミノ基、ヒドロキシル基、又はメルカプト基である場合、基R
3及び基R
4を一つの反応性基とみなす)]との当量比換算で、例えば、前者/後者=70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60、さらに好ましくは55/45〜45/55程度であってもよい。
【0124】
(芳香族複素環化合物)
芳香族複素環式化合物は、芳香族ポリアルデヒド化合物との複数の反応部位(複素環のヘテロ原子に隣接するα−炭素部位)を有していればよく、芳香族複素環式化合物は、単環式化合物、縮合環式化合物、環集合化合物のいずれであってもよい。複素環化合物の複素環は、5〜8員環、好ましくは5〜7員環、さらに好ましくは5又は6員環である。複素環は、通常、芳香族5員環を含む場合が多い。さらに、複素環は、通常、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有している。複素環のヘテロ原子はイミノ基を形成してもよい。これらの複素環化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0125】
芳香族複素環式化合物は、下記式(III)により表すことができる。
【0126】
【化17】
(式中、環Hetは芳香族複素環を示し、Xはヘテロ原子を示し、R
5は非反応性基を示し、rは0〜3の整数を示し、L、n及びpは前記に同じ)
複素環のヘテロ原子Xとしては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子などが例示でき、ヘテロ原子Xが窒素原子であるとき、Xはイミノ基(NH基)を形成してもよく、複素環化合物の複素環は、単一のヘテロ原子を含んでいてもよく、同一又は異なる種類の複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。複素環のヘテロ原子は、通常、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、特に硫黄原子である場合が多い。複素環のXはイミノ基であってもよい。
【0127】
芳香族複素環Hetは、1分子中に前記複数のα−炭素部位を有する化合物であればよく、代表的な単環式複素環としては、例えば、1又は2のヘテロ原子を有する5員複素環、1〜3(例えば、1又は2)のヘテロ原子を有する6員複素環などが例示できる。また、代表的な縮合環式複素環としては、例えば、同種又は異種の複素環が縮合した縮合複素環、ベンゼン環と複素環とが縮合した縮合複素環などが例示できる。複素環式化合物は、通常、複素環のヘテロ原子として、硫黄原子、酸素原子、窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5員芳香族複素環を含んでいる。
【0128】
非反応性基R
5としては、前記非反応性基R
2aと同様の非反応性基に加えて、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ−カルボニル基など)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシC
1−10アルキル基など)、シアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基などのシアノC
1−10アルキル基など)、カルボキシアルキル基(例えば、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基などのカルボキシ−C
1−6アルキル基、ジカルボキシメチル基、2,2−ジカルボキシエチル基などのジカルボキシC
1−6アルキル基など)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ−カルボニル−C
1−6アルキル基など)、ジヒドロキシボルニル基(−B(OH)
2)、複素環基(ピリジル基、オキソラン−イル基などの窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選択されたヘテロ原子を有する5又は6員複素環基など)、連結基を介して複素環化合物に結合した、置換基を有していてもよいフラーレン(又はフラーレン単位)などが例示できる。
【0129】
非反応性基R
5としては、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、シクロヘキシル基などのC
5−10シクロアルキル基、フェニル基などのC
6−10アリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ−カルボニル基、ヒドロキシC
1−4アルキル基、シアノC
1−4アルキル基、カルボキシC
1−4アルキル基、ジヒドロキシボルニル基(−B(OH)
2)、連結基を介して結合したフラーレン単位などである場合が多い。
【0130】
rは、0〜3の整数を示し、通常、0〜2(例えば、0又は1)である。
【0131】
リンカーLとしては、エチレンに対応するリンカー(ビニレン基など)、アリーレン基(例えば、フェニレン基など)などの前記と同様のリンカーが例示できる。リンカーLは、ビニレン基である場合が多い。リンカーLの係数nは0又は1である。
【0132】
前記式(III)において、リンカーLはフラーレン(又はフラーレン単位)であってもよく、リンカーL及び/又は芳香族複素環Hetには、フラーレン(又はフラーレン単位)が置換していてもよい。
芳香族複素環Hetの繰り返し係数pは、非反応性置換基R
5の有無や種類などに応じて、例えば、1〜1000、好ましくは1〜500(例えば、2〜250)、さらに好ましくは1〜200(例えば、2〜150)程度であってもよい。より具体的には、低沸点の複素環化合物(例えば、単環式複素環化合物、特に単環式5員複素環化合物)は成膜性が低下し、室温(例えば、20〜25℃)で液体の複素環化合物は、成膜後の熱処理により形成された架橋塗膜の性能が低下しやすい。そのため、フランなどの低沸点の化合物(又は単環式複素環化合物)は、前記非反応性置換基R
5を導入して沸点を高めるのが好ましく、複素環化合物は、室温で固体であり、かつ溶媒に対して溶解性の高い複素環化合物であるのが好ましい。このような観点から、単環式複素環化合物(rが「0」及びnが「0」である化合物)の沸点は、50℃以上(例えば、75〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは120〜250℃)であるのが好ましい。
【0133】
また、rが「0」である化合物又はrが「1」であっても(非反応性置換基R
5が置換していても)溶媒に対する溶解性の劣る化合物(例えば、炭素数の少ない非反応性置換基R
5、例えば、ハロゲン原子、アリール基などが置換した化合物)では、係数pは、例えば、1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4程度であってもよい。また、rが「1」であり、かつ溶媒に対する溶解性を改善するための非反応性置換基R
5(例えば、アルキル基(ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基など)、アルコキシ基(直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基など))を有する複素環化合物では、係数pは、例えば、上記のように、1〜1000程度の範囲から選択できる。なお、係数pが大きくなると、緩やかな三次元架橋構造となりやすく、有機溶媒に対する耐性も低下しやすい。このような観点から、係数pは、通常、1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6(例えば、2〜5)程度である。
【0134】
前記式(III)で表される化合物としては、例えば、下記化合物(c1)〜(c3)が例示できる。
【0135】
(c1)環Hetが5員複素環を含む単環式又は縮合環式芳香族複素環であり、Xが、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はイミノ基(NH基)であり、rが0〜2の整数(非反応性基R
5が未置換又は置換)であり、nが0であり(Lリンカーがなく)、pが1である化合物。
【0136】
このような化合物のうち、未置換の単環式化合物としては、例えば、5員複素環化合物(チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾールなど)、6員複素環化合物(トリアジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジンなど)などが例示でき、縮合環式化合物としては、例えば、チエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン、ナフチリジンなどの同種の複素環(5員又は6員複素環)が縮合した化合物、チエノ[2,3−b]フランなどの異種の複素環(5員又は6員複素環)が縮合した化合物、イソベンゾフラン、イソインドール、イソキノリン、フタラジンなどのベンゼン環と複素環とが縮合した化合物などが例示できる。
【0137】
非反応性基R
5を有する単環式化合物のうち、チオフェン誘導体としては、例えば、3−ハロチオフェン(3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェンなど)、3,4−ジハロチオフェン(3,4−ジクロロチオフェン、3,4−ジブロモチオフェンなど)、3−アルキルチオフェン(3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−(2−エチルヘキシル)チオフェン、3−デシルチオフェンなどの3−C
1−12アルキルチオフェンなど)、3,4−ジアルキルチオフェン(3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェンなどの3,4−ジC
1−10アルキルチオフェンなど)、3−ヒドロキシチオフェン、3−アルコキシチオフェン(3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェンなどの3−C
1−12アルコキシチオフェンなど)、3−アリールチオフェン(3−フェニルチオフェンなど)、3−カルボキシチオフェン、3−アルコキシカルボニルチオフェン(3−メトキシカルボニルチオフェン、3−エトキシカルボニルチオフェンなどの3−C
1−6アルコキシ−カルボニルチオフェンなど)、3−シアノチオフェン、3−シアノアルキルチオフェン(チオフェン−3−アセトニトリルなどの3−シアノC
1−6アルキルチオフェン)、3−(ヒドロキシアルキル)チオフェン(3−ヒドロキシメチルチオフェン、3−(2−ヒドロキシエチル)チオフェンなどの3−(ヒドロキシC
1−6アルキル)チオフェン)、3−チオフェンマロン酸、3−チエニルボロン酸、2−(3−チエニル)−1,3−ジオキソランなどが例示できる。
【0138】
縮合環式チオフェン誘導体としては、例えば、チエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ハロジチエノチオフェン(3,5−ジブロモジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェンなど)、アルキルジチエノチオフェン(3,5−ジC
1−10アルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェンなど)などが例示できる。
【0139】
フラン誘導体としては、例えば、ハロフラン(3−クロロフラン、3−ブロモフランなど)、3−アルキルフラン(3−メチルフランなどの3−C
1−10アルキルフランなど)、3−ヒドロキシアルキルフラン(3−フランメタノールなどの3−(ヒドロキシ−C
1−6アルキル)フランなど)、3−フリルボロン酸などが例示できる。
【0140】
ピロール誘導体としては、例えば、3−アルキルピロール(3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロールなどの3−C
1−10アルキルピロールなど)、3,4−ジアルキルピロール(3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロールなどの3,4−ジC
1−10アルキルピロールなど)、N−アルキルピロール(N−メチルピロールなどのN−C
1−10アルキルピロールなど)、3−カルボキシピロール、3−アルコキシカルボニルピロール(3−エトキシカルボニルピロールなどの3−C
1−6アルコキシ−カルボニルピロールなど)、3−ヒドロキシピロール、3−アルコキシピロール(3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロールなどの3−C
1−6アルコキシピロールなど)などが例示できる。
【0141】
フラーレン単位を有する複素環化合物としては、例えば、下記式(IIIa)で表される化合物が例示できる。
【0142】
【化18】
(式中、R
6はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R
7及び
8はそれぞれ独立してアルキレン基を示し、L
1は連結基を示し、X
4はヘテロ原子を示す)
R
6で表されるアルキル基としては、前記と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基)、シクロアルキル基としては、前記と同様のシクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC
5−10シクロアルキル基)、アリール基としては、前記と同様のアリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)が例示できる。R
7及び
8で表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC
1−10アルキレン基が例示できる。連結基L
1としては、例えば、−C(O)O−(カルボニルオキシ基)、−OC(O)−(オキシカルボニル基)、酸素原子、硫黄原子などが例示でき、連結基L
1は、直接結合であってもよい。ヘテロ原子X
4としては、前記と同様に、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はイミノ基(NH基)などが例示できる。
【0143】
フラーレン単位を有する化合物は、R
6がフェニル基、R
7及び
8がそれぞれ独立してC
2−6アルキレン基、連結基L
1が−C(O)O−(カルボニルオキシ基)、ヘテロ原子X
4が硫黄原子である化合物であってもよい。このようなフラーレン単位を有する化合物は、例えば、[6,6]−フェニル−C61酪酸(3−エチルチオフェン)エステルなどとして市販されている。
【0144】
(c2)環Hetは5員又は6員芳香族複素環を示し、Xが、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はイミノ基(NH基)であり、rは0〜2の整数(非反応性基R
5が未置換又は置換)を示し、nが0であり(Lリンカーがなく)、pが2以上の整数である化合物。
【0145】
このような化合物としては、環集合化合物、例えば、下記式(IIIb)で表される化合物が例示できる。
【0146】
【化19】
(式中、芳香族複素環Het
1〜Het
3は、独立して、5員又は6員芳香族複素環を示し、X
1〜X
3は、独立して、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はイミノ基(NH基)を示し、R
5a〜R
5cは独立して非反応性基を示し、r1〜r3はそれぞれ0〜3の整数を示し、p1は0〜250の整数を示す)
5員又は6員芳香族複素環としては、前記芳香族複素環Hetの項で例示の単環式複素環例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環などが例示できる。好ましい芳香族複素環は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、特にチオフェン環である。
【0147】
R
5a〜R
5cで表される非反応性基としては、前記非反応性基R
5と同様の置換基が例示できる。式(IIIb)で表される環集合化合物の溶解性を高めるためには、アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
4−10アルキル基など)などの非反応性基R
5a〜R
5cを有しているのが好ましい。
【0148】
r1〜r3はそれぞれ0〜3の範囲から選択でき、通常、0〜2、特に0又は1である場合が多い。なお、式(IIIb)で表される環集合化合物が溶解性を高める非反応性基R
5a〜R
5cを有している場合には、p1は、前記のように、広い範囲(p=1〜1000となる範囲)から選択でき、p1は、通常、0〜250、好ましくは0〜100(例えば、1〜75)、さらに好ましくは0〜50(例えば、0〜10)程度の範囲から選択できる。なお、r1〜r3はそれぞれ「0」である場合、p1は、通常、0〜3、好ましくは0〜2程度(例えば、1又は2)である。
【0149】
このような化合物としては、5員又は6員複素環の環集合化合物、例えば、ビフラン、ビチオフェン(2,2’−ビチオフェンなど)、ターチオフェン(2,2’:5’,2”−ターチオフェンなど)、クウォーターチオフェン(2,2’:5’,2”:5”,2”’−クウォーターチオフェンなど)、ビピリジン(2,2’−ビピリジンなど)、クウォーターピリジン、3,4’−ジアルキル−2,2’−ビチオフェン(3,4’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェンなどの3,4’−ジC
4−10アルキル−2,2’−ビチオフェン)、ポリ(3−アルキル−チオフェン)(X
1〜X
3が硫黄原子、芳香族複素環Het
1〜Het
3が2,5−チオフェン−ジイル基であり、R
5a〜R
5cが3−位又は4−位のC
4−10アルキルであり、r1〜r3はそれぞれ1であり、p1が1〜25程度のポリチオフェン化合物)、2,5−ジ(2−チエニル)−1H−ピロール、2−(3−チエニル)ピリジンなどが例示できる。
【0150】
さらに、環集合化合物は、複素環の間に、アリールメチレン基(又はアリールビニレン基)が介在する化合物であってもよい。このような化合物は、例えば、下記式(IIIc)又は(IIId)で表すことができる。
【0151】
【化20】
(式中、A
3及びA
4は独立して芳香族性環を示し、p2及びp3はそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、Het
1〜Het
3、X
1〜X
3、R
5a〜R
5c、r1〜r3は前記に同じ)
Het
1〜Het
3は前記と同様の芳香族複素環(チオフェン環などの5員芳香族複素環など)、X
1〜X
3は前記と同様のヘテロ原子(硫黄原子など)、R
5a〜R
5cは前記と同様の非反応性基(ヘキシル基などのC
1−10アルキル基など)、r1〜r3は前記と同様の0〜3の整数(例えば、0又は1)であり、A
3及びA
4は前記と同様の芳香族性環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC
6−10アレーン環など)が例示でき、p2は1〜5(例えば、1〜4、好ましくは1〜3)程度の整数、p3は1〜5(例えば、1〜4、好ましくは1〜3)程度の整数を示す。
【0152】
式(IIIc)で表される化合物は、前記と同様の芳香族複素環化合物と芳香族モノアルデヒド化合物(ベンズアルデヒドなどのアリールアルデヒド類、ヘテロアリールアルデヒド類など)との反応により、上記α−炭素部位において、炭素−炭素単結合(−C−C−)を生成させることにより得ることができ、式(IIId)で表される化合物は、式(IIIc)で表される化合物を脱水素反応に供して炭素−炭素二重結合(−C=C−)を生成させることにより得ることができる。
【0153】
(c3)環Hetは5員芳香族複素環を示し、Xが、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はイミノ基(NH基)であり、rは0〜2の整数(非反応性基R
5が未置換又は置換)を示し、nが1であり、リンカーLが、ビニレン基である化合物。
【0154】
このような化合物としては、例えば、1,2−ジ(2−チエニル)エチレン、フリル、フロインなどが例示できる。
【0155】
これらの芳香族複素環化合物は単独で又は組み合わせて使用できる。芳香族複素環化合物は、1分子中に2〜8個(例えば、2〜6個、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個、例えば、2個)の反応部位(未修飾のα−炭素位)を有するのが好ましい。このような芳香族複素環化合物は、通常、1分子中に複数(例えば、2〜4個、特に3〜4個)のホルミル基を有する芳香族ポリアルデヒド化合物と組み合わせて使用される。芳香族複素環化合物は、例えば、下記表12〜表16に示すことができる。
【0160】
【表16】
芳香族複素環化合物は、複素環のヘテロ原子に隣接し、かつ未修飾の複数のα−炭素位を有しており、1分子中のα−炭素位の数は、2〜5、好ましくは2〜4、特に2又は3程度である。なお、上記ヘテロ原子に隣接するα−炭素部位は、通常、単環式5員複素環では2,5−位、単環式6員複素環では2,6−位に位置する。また、5員複素環が縮合した複素環化合物(例えば、チエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェンなど)では、α−炭素部位は2−位及び/又は5−位に位置し、6員複素環が縮合した複素環化合物では、α−炭素部位は2−位及び/又は6−位に位置している。なお、1分子中に2つのα−炭素部位を有する複素環化合物は、1分子中に3以上のホルミル基を有する芳香族アルデヒド化合物と組み合わせて使用される。
【0161】
芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族複素環化合物との割合は、ホルミル基と複素環化合物の遊離(又は未置換)のα−炭素部位との当量比換算で、例えば、前者/後者=70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60、さらに好ましくは55/45〜45/55程度であってもよい。
【0162】
(芳香族ポリアミン及び芳香族複素環式化合物)
芳香族ポリアルデヒド化合物は、芳香族ポリアミン及び芳香族複素環式化合物の双方の芳香族反応成分と組み合わせて用いてもよい。芳香族ポリアミンと芳香族複素環式化合物との割合は、反応部位の当量比換算で、前者/後者=70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60、さらに好ましくは55/45〜45/55程度であってもよい。なお、芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族反応成分の割合は、前記芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族ポリアミン又は芳香族複素環式化合物との割合と同様である。
【0163】
(酸触媒)
芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族複素環式化合物とを含む組成物は、酸触媒を含むのが好ましい。なお、芳香族複素環化合物が、スルホ基、ジヒドロキシボルニル基(−B(OH)
2)などの酸性基を含む場合、酸触媒は必ずしも必要ではない。酸触媒は、プロトン酸、ルイス酸のいずれであってもよい。プロトン酸としては、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、フッ酸など)、有機酸(酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸など)が例示できる。また、ルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、塩化チタン、フッ化ホウ素、フッ化ホウ素エーテル錯塩などが例示できる。これらの酸触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0164】
酸触媒の使用量は、芳香族ポリアルデヒド化合物及び芳香族複素環式化合物の総量1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.01〜1重量部)程度の範囲から選択でき、通常、0.005〜0.3重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部、さらに好ましくは0.02〜0.1重量部程度であってもよい。
【0165】
(有機溶媒)
本発明の組成物は、さらに有機溶媒(又は溶剤)を含んでいてもよい。有機溶媒を含有させることにより塗布性を付与できるため、コーティング組成物として使用できる。有機溶媒としては、芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミン及び/又は芳香族複素環化合物とを可溶であるとともに、反応を阻害しない限り、特に限定されず、例えば、アミド類(例えば、ホルムアミド;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのN−モノ又はジC
1−4アルキルホルムアミド;N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−モノ又はジC
1−4アルキルアセトアミドなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ピロリドン類(例えば、2−ピロリドン、3−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3−ピロリドンなど)、カルビトール類(例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC
1−4アルキルカルビトール類など)などであってもよい。これらの有機溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。これらの有機溶媒のうち、アミド類、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN,N−ジC
1−4アルキルアセトアミドなどが好ましい。
【0166】
有機溶媒の割合は、芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミン及び/又は芳香族複素環化合物との合計1重量部に対して、0.1〜200重量部(例えば、1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜40重量部(例えば、1〜35重量部)、好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜10重量部程度であってもよい。
【0167】
本発明の組成物は、慣用の方法、例えば、芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミン及び/又は芳香族複素環化合物とを混合することにより調製できる。特に、有機溶媒(溶剤)を含む組成物(コーティング組成物)は、芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミン及び/又は芳香族複素環化合物とを有機溶媒(溶剤)に溶解し、必要に応じてろ過して調製してもよい。
【0168】
[有機半導体]
芳香族ポリカルボニル化合物と芳香族ポリアミンとを含む組成物から得られる本発明の有機半導体(又は有機半導体膜)の化学構造は、特に限定されず、π電子共役系単位[例えば、炭素−窒素二重結合(−C=N−)、炭素−炭素二重結合(−C=C−)、炭素−炭素三重結合(−C≡C−)、アミド結合(−NHCO−)、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など]を介して、芳香族ポリカルボニル化合物由来の単位と芳香族ポリアミン由来の単位とが連結した構造である。前記π電子共役系単位としては、炭素−窒素二重結合(−C=N−)、イミダゾール環、オキサゾール環、及びチアゾール環から選択された少なくとも一種の単位が好ましい。
【0169】
上記本発明の有機半導体は、通常、下記式(IV-1)又は(IV-2)で表される単位(繰り返し単位又は架橋単位)を含む。
【0170】
【化21】
(式中、A
5、A
6、A
7は芳香族性環又は環集合体を示し、Xは窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を示す。)
A
5で表される芳香族性環(芳香族ポリカルボニル化合物に由来する芳香族性環)、及びA
6及びA
7で表される芳香族性環(芳香族ポリアミンに由来する芳香族性環)としては、前記環Aと同様の芳香族性環が例示できる。好ましい環A
5は前記環A
1と同様の芳香環であり、好ましい環A
6又は環A
7は前記環A
2と同様の芳香環である。
【0171】
なお、式(IV-1)又は(IV-2)では、便宜上、環A
5と、環A
6及び/又は環A
7とからそれぞれ外方向に延びた1つの結合手を示しているが、環A
5及び環A
6又は環A
7から選択された少なくとも1つの環からは、複数の結合手が延びて三次元架橋構造を形成している。
【0172】
芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族複素環化合物とを含む組成物から得られる本発明の有機半導体は、通常、下記式(IV-3)又は(IV-4)で表される単位(繰り返し単位又は架橋単位)を含む。好ましい繰り返し単位又は架橋単位は、少なくとも式(IV-4)で表される単位を含む。
【0173】
【化22】
(式中、A
5、Het、X、R
5、r、p2は前記に同じ)
芳香族性環A
5(芳香族ポリカルボニル化合物に由来する芳香族性環)としては、前記環Aと同様の芳香族性環(前記環A
1と同様の芳香環)が例示でき、Hetで表される芳香族複素環としては、前記複素環Hetと同様の芳香族複素環(Xが硫黄原子、酸素原子又は窒素原子である5員環を含む単環式、縮合環式又は環集合複素環など)が例示できる。
【0174】
なお、前記(IIIc)で表される化合物と(IIId)で表される化合物との関係と同様に、式(IV-3)で表される化合物を脱水素反応に供することにより式(IV-4)で表される化合物を得ることができる。
【0175】
また、カルボニル基含有基とアミノ基との反応(熱重合)、ホルミル基と複素環化合物のα−炭素部位との反応は容易に進行するため、本発明の有機半導体は三次元網目構造で連結された1つの高分子であると推定できる。このように、有機半導体が1つの高分子で構成されていると、分子間の電子移動(ホッピング)が実質的に発生せず、極めて電子移動度が高いと考えられる。
【0176】
本発明の有機半導体の物理構造は、通常、三次元網目構造(架橋構造)である。なお、三次元網目構造を有しているか否かは、有機溶媒に対する溶解性やバンドギャップにより判別できる。すなわち、本発明の有機半導体は、有機溶媒(例えば、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN,N−ジC
1−4アルキルアセトアミド)に不溶又は難溶であり、バンドギャップが重合成分(又は反応成分)のバンドギャップよりも小さい場合が多いため、三次元網目構造を有していると推定できる。
【0177】
この三次元網目構造の詳細は定かではないが、グラファイト様構造であってもよく、熱に伴うモノマー単位の分子振動などによるπ電子共役系の広がり方の変化により、迅速でかつ安定した電子移動が可能であると考えられる。
【0178】
有機半導体の厚みは、用途に応じて適宜選択され、例えば、1〜5000nm、好ましくは30〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nm程度であってもよい。
【0179】
本発明の有機半導体はn型半導体、p型半導体であってもよく、真性半導体であってもよい。なお、真性半導体であるか否かは、有機半導体をp型半導体及びn型半導体のいずれに形成しても整流特性が得られることにより判別できる。
【0180】
有機半導体は、前記組成物の硬化物(架橋物)で構成してもよく、例えば、前記組成物を重合することにより製造することができる。具体的には、有機半導体は、基材(ガラス板、シリコンウエハー、耐熱プラスチックフィルムなど)に前記組成物を積層又は塗布する工程と、この組成物を熱処理して重合する工程とを経て製造してもよい。なお、必要に応じて、基材から有機半導体を剥離してもよい。
【0181】
前記組成物を積層又は塗布する方法としては、例えば、化学的気相法(CVD法など)などの蒸着方法、塗布方法などが挙げられる。これらの積層方法のうち、重合成分(又は反応成分)の種類や割合を精度よく調整し、有機半導体の特性を容易に制御できる点から、塗布方法が好ましい。
【0182】
塗布方法としては、慣用の塗布方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、インクジェット印刷法などが例示できる。塗布した後、通常、乾燥して塗膜から溶媒が除去される。
【0183】
重合工程は、不活性ガス(窒素など)雰囲気下で行ってもよい。また、熱処理温度は、例えば、50〜500℃(例えば、150〜500℃)、好ましくは100〜400℃(例えば、200〜400℃)、さらに好ましくは150〜300℃や250〜350℃程度であってもよい。また、熱処理時間は、例えば、0.1〜2.5時間、好ましくは0.2〜2.0時間、さらに好ましくは0.3〜1.5時間程度であってもよい。
【0184】
なお、芳香族ポリアルデヒド化合物と芳香族複素環式化合物との反応では、前記のように、式(IV-3)で表される単位(又は架橋単位)が生成し、この式(IV-3)で表される単位は、脱水素反応により、式(IV-4)で表される単位(又は架橋単位)に変換できる。脱水素反応としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプなどの活性光線を照射する光脱水素法などを利用してもよいが、加熱脱水素法、例えば、上記熱処理温度で処理する方法を利用する場合が多い。なお、前記酸触媒を含む組成物を用いると、容易に脱水素反応を行うことができる。
【0185】
有機半導体は、耐熱性、耐溶剤性、耐久性に優れている。すなわち、外部からエネルギーが付与されても、膜質の変化(結晶化)を抑制して、デバイス寿命の低下を防止できる。また、外部から透過する水分を加熱により蒸発させることにより、半導体の性能を回復することができる。さらに、この有機半導体に対して、有機溶媒を含むコーティング液を直接塗布でき、積層構造を容易に形成できる。
【0186】
[有機無機複合半導体]
本発明では、無機半導体の表面の少なくとも一部(例えば、シート状の場合、無機半導体の少なくとも一方の面)に、前記有機半導体を積層することにより有機無機複合半導体を形成してもよい。本発明の有機半導体は、全体として擬似的なバンド構造を形成しており無機半導体と同様に扱えるため、無機半導体との複合化が容易である。また、このような複合半導体では、無機半導体の高いキャリア移動を利用することにより、例えば、光吸収により発生した電子及びホールの移動度を高め、光電変換率を向上できるため、光電変換デバイス(太陽電池など)の用途に適する。
【0187】
無機半導体材料としては、特に限定されず公知の材料[例えば、周期表2B(亜鉛など)、3B(アルミニウム、インジウムなど)、及び4B族元素(珪素、錫など)から選択された少なくとも一種の金属又はこの金属の酸化物]が適用される。
【0188】
無機半導体の厚みは、作製法及び用途に応じて適宜選択されるが、例えば、1nm〜1mm程度であってもよい。
【0189】
有機無機複合半導体は、積層構造に応じて積層順序も特に限定されず、無機半導体の少なくとも一方の面に、前記コーティング組成物を塗布した後、熱処理することにより製造してもよい。なお、無機半導体は、慣用の方法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相(PVD)法、プラズマCVD法などの化学的気相(CVD)法など)で、構成材料を基材に蒸着させることにより製造してもよい。
【0190】
[デバイス]
本発明のデバイスは、前記半導体(有機半導体、有機無機複合半導体など)を含むデバイス(電子デバイス)である。このようなデバイスとしては、整流素子(ダイオード)、トランジスタ[トップゲート型、ボトムゲート型(トップコンタクト型、ボトムコンタクト型)など]、光電変換素子(太陽電池素子、有機EL素子など)であってもよい。
【0191】
代表的なデバイスとして、太陽電池は、pn接合型半導体に表面電極が積層された構造を有している。例えば、p型シリコン半導体に有機半導体膜を積層して、この有機半導体膜に透明電極(ITO電極など)を積層することにより、太陽電池を形成できる。このような太陽電池では、高い開放電圧及び短絡電流を得ることができる。
【0192】
また、有機EL素子は、透明電極(ITO電極など)に、正孔輸送層と電子輸送層(アルミニウム−キノリノール錯体膜、ベリリウム−ベンゾキノリノール錯体膜など)とが順次積層され、この電子輸送層に金属電極が積層された構造を有している。例えば、透明電極に、有機半導体膜と電子輸送層と金属電極とを順次積層することにより、有機EL素子を形成できる。この場合、有機半導体膜は正孔輸送層として機能する。
【0193】
さらに、有機薄膜トランジスタは、ゲート電極層と、ゲート絶縁層と、ソース/ドレイン電極層と、有機半導体層とで構成されている。これらの層の積層構造によって、有機薄膜トランジスタは、トップゲート型、ボトムゲート型(トップコンタクト型、ボトムコンタクト型)に分類できる。例えば、ゲート電極(酸化膜が形成されたp型シリコンウエハーなど)に有機半導体膜を形成して、この有機半導体膜上にソース・ドレイン電極(金電極)を形成することにより、トップコンタクト型電界効果トランジスタを製造できる。
【実施例】
【0194】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0195】
実施例1
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)16.2mgとトリス(4−アミノフェニル)アミン29.0mgを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド860mgに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−TAPAという)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶媒に対する溶解性
基材としてシリコンウエハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−TAPA膜を作製した。この膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−TAPA膜を作製した。BTA−TAPA膜のUV−Visスペクトル測定(日立ハイテクノロジー(株)製、「分光光度計U−3900H」)を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンとトリス(4−アミノフェニル)アミンのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−TAPA膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−TAPA膜は架橋反応により共役系が広がった構造であることを確認した。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により、白金板をBTA−TAPA膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「ALS600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.2eVであった。得られた値からバンドギャップの値を引くことでLUMO値を算出したところ、2.5eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型及びn型シリコンウエハーを用いて、上記(2)の方法により、BTA−TAPA膜を作製した後、各々のBTA−TAPA膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図1に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−TAPA膜はp型n型の両特性を併せ持つ、真性半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
基材としてp型及びn型シリコンウエハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−TAPA膜を作製した。このBTA−TAPA膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図2に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、p型シリコンとの組合せで0.3V及び100μA/cm
2、n型シリコンとの組合せで0.05V及び0.1μA/cm
2であった。
【0196】
また無機半導体をSnO
2とした他は同様にした光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図3に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、それぞれ0.7V及び1.0μA/cm
2であった。
(6)有機EL素子
ITO膜が積層されたガラス板をアセトン中で超音波洗浄した後、オゾン照射によりITO表面を洗浄した。上記(2)の方法により、ITO膜上に厚み30nmのBTA−TAPA膜を作製した。これを真空蒸着装置((株)アルバック製、「VPC−410」)にセットし、BTA−TAPA膜上に、厚み30nmのトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、「Alq3」という場合がある)膜を蒸着形成した。さらに、厚み300nmのリチウム−アルミニウム合金(リチウム含量:0.5重量%)膜を蒸着形成して有機EL素子を作製した。この有機EL素子に通電したところ
図4のようにAlq3の緑色発光が見られ、BTA−TAPA膜がホール輸送層として機能することを確認した。
【0197】
実施例2
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)16.2mgと2,7−ジアミノフルオレン29.4mgを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド1400mgに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、実施例1と同様の方法により有機半導体膜(以下、BTA−DAFという)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶媒に対する溶解性
実施例1と同様の方法によりBTA−DAF膜を作製した。この膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
実施例1と同様の方法によりBTA−DAF膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
実施例1と同様の方法によりBTA−DAF膜の酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.4eVであった。得られた値からバンドギャップの値を引くことでLUMO値を算出したところ2.7eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−DAF膜のpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図5に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−DAF膜はp型n型の両特性を併せ持つ、真性半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−DAF膜からなる光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図6に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、p型シリコンとの組合せで0.2V及び10μA/cm
2、n型シリコンとの組合せで0.02V及び0.05μA/cm
2であった。
【0198】
実施例3
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)16.2mgと1,3−ジアミノピレン34.8mgを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド1650mgに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、実施例1と同様の方法により有機半導体膜(以下、BTA−13DAPyと言う)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶媒に対する溶解性
実施例1と同様の方法によりBTA−13DAPy膜を作製した。この膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
実施例1と同様の方法によりBTA−13DAPy膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
実施例1と同様の方法によりBTA−13DAPy膜の酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.6eVであった。得られた値からバンドギャップの値を引くことでLUMO値を算出したところ3.3eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−13DAPy膜のpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図7に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−13DAPy膜はp型n型の両特性を併せ持つ、真性半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−13DAPy膜からなる光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図8に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、p型シリコンとの組合せで0.2V及び10μA/cm
2、n型シリコンとの組合せで0.1V及び0.05μA/cm
2であった。
【0199】
また無機半導体をSnO
2とした他は同様にした光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図9に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、それぞれ0.67V及び0.6μA/cm
2であった。
【0200】
実施例4
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)16.2mgと3,6−ジアミノカルバゾール29.6mgを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド1480mgに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、実施例1と同様の方法により有機半導体膜(以下、BTA−DACと言う)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶媒に対する溶解性
実施例1と同様の方法によりBTA−DAC膜を作製した。この膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
実施例1と同様の方法によりBTA−DAC膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
実施例1と同様の方法によりBTA−DAC膜の酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.7eVであった。得られた値からバンドギャップの値を引くことでLUMO値を算出したところ3.1eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−DAC膜のpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図10に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−DAC膜はp型n型の両特性を併せ持つ、真性半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
実施例1と同様の方法によりシリコン/BTA−DAC膜からなる光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図11に示す。このときの開放電圧及び短絡電流を測定したところ、p型シリコンとの組合せで0.2V及び100μA/cm
2、n型シリコンとの組合せで0.08V及び0.1μA/cm
2であった。
【0201】
実施例1〜4における有機半導体のHOMO,LUMO値一覧を
図12にまとまる。同様に導電特性を
図13にまとめる。なお、
図13には、比較対象としてペンタセンの導電特性を示す。
図12及び
図13より組成物の分子構造を変えることで、半導体特性を任意に制御できることを確認した。
【0202】
実施例5
(1)有機半導体の作製
1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)とトリス(4−アミノフェニル)アミンを減圧加熱(キャリアガス:窒素、圧力:100Pa、1,3,5−トリホルミルベンゼン加熱温度:100℃、トリス(4−アミノフェニル)アミン加熱温度:200℃)により気化させ、混合ガスとした後、流速5sccmで250℃に加熱することで反応させ、その反応物を基材上に積層させた。次に、窒素雰囲気下300℃で20分熱処理することにより、BTA−TAPA膜を得た。
(2)有機半導体膜の構造
(2−1)有機溶媒に対する溶解性
基材としてシリコンウエハー(又はガラス板)を用いて、(1)の方法により、BTA−TAPA膜を作製した。得られた膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(2−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、(1)の方法により、BTA−TAPA膜を作製した。得られた膜のバンドギャップを、実施例1(3−2)と同様の方法で求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンとトリス(4−アミノフェニル)アミンのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−TAPA膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−TAPA膜は架橋反応によりπ電子共役系が広がった構造であることを確認した。
(3)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型及びn型シリコンウエハーを用いて、(1)の方法により、シリコン/BTA−TAPA膜のpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図14に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−TAPA膜はp型n型の両特性を併せ持つ、真性半導体であることを確認した。
(4)有機EL素子
ITO膜が積層されたガラス板をアセトン中で超音波洗浄した後、オゾン照射によりITO表面を洗浄した。(1)の方法により、ITO膜上に厚み30nmのBTA−TAPA膜を作製した。これを真空蒸着装置((株)アルバック製、「VPC−410」)にセットし、有機半導体膜上に、厚み30nmのAlq3膜を蒸着形成した。さらに、厚み300nmのリチウム−アルミニウム合金(リチウム含量:0.5重量%)膜を蒸着形成して有機EL素子を作製した。この有機EL素子に通電したところ
図15のようにAlq3の緑色発光が見られ、有機半導体膜がホール輸送層として機能することを確認した。
【0203】
比較例1
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
30mlナスフラスコにアダマンタントリアルデヒド((株)ナード研究所製)55.3mgと3,3’−ジアミノベンジジン42.9mgを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド884mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜を得た。
(3)有機半導体膜の構造(有機溶媒に対する溶解性)
基材としてシリコンウエハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法により有機半導体膜を作製した。この有機半導体膜は、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型及びn型シリコンウエハーを用いて、上記(2)の方法により、有機半導体膜を作製した。得られた有機半導体膜の電気特性を、実施例1(4)と同様の手法で測定したところ、
図16のように通電は確認されず絶縁膜であった。
【0204】
実施例6
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)8.1mgと2,2’:5’,2’’ターチオフェン37.3mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、シクロヘキサノン900mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で30分熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−3Tという)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−3T膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−3T膜を作製した。BTA−3T膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンと2,2’:5’,2’’−ターチオフェンのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−3T膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−3T膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をBTA−3T膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、6.3eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、3.5eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりBTA−3T膜を作製した後、各々のBTA−3T膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図17に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−3T膜は有機半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−3T膜を作製した。このBTA−3T膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図18に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.5V及び0.47μA/cm
2であった。
【0205】
実施例7
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)4.9mgとtrans-1,2-ジ(2-チエニル)エチレン17.3mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、シクロヘキサノン740mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で30分熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−DTEという)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−DTE膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
【0206】
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−DTE膜を作製した。BTA−DTE膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンとtrans-1,2-ジ(2-チエニル)エチレンのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−DTE膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−DTE膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
【0207】
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をBTA−DTE膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.1eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、2.3eVであった。
【0208】
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりBTA−DTE膜を作製した後、各々のBTA−DTE膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図19に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−DTE膜は有機半導体であることを確認した。
【0209】
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−DTE膜を作製した。このBTA−DTE膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図20に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.1V及び0.38μA/cm
2であった。
【0210】
実施例8
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)16.2mgとピロール20.1mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、シクロヘキサノン1200mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で30分熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−Py)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−Py膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−Py膜を作製した。BTA−Py膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンとピロールのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−Py膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−Py膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をBTA−Py膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.4eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、3.5eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりBTA−Py膜を作製した後、BTA−Py膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図21に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−Py膜は有機半導体であることを確認した。
【0211】
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−Py膜を作製した。このBTA−Py膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図22に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.45V及び1.3μA/cm
2であった。
【0212】
実施例9
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)8.1mgと3−チオフェンボロン酸9.6mgを入れ、シクロヘキサノン740mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−TbA)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−TbA膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−TbA膜を作製した。BTA−TbA膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンと3−チオフェンボロン酸のバンドギャップを求めた。その結果、BTA−TbA膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−TbA膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をBTA−TbA膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.4eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、2.6eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりBTA−TbA膜を作製した後、各々のBTA−TbA膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図23に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−TbA膜は有機半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−TbA膜を作製した。このBTA−TbA膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図24に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.6V及び0.51μA/cm
2であった。
【0213】
実施例10
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)8.1mgと3−フランカルボン酸エチル21.0mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、シクロヘキサノン970mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−FCE)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−FCE膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりBTA−FCE膜を作製した。BTA−FCE膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、1,3,5−トリホルミルベンゼンと3−フランカルボン酸エチルのバンドギャップを求めた。その結果、BTA−FCE膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたBTA−FCE膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をBTA−FCE膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.3eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、2.6eVであった。
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりBTA−FCE膜を作製した後、各々のBTA−FCE膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図25に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したBTA−FCE膜は有機半導体であることを確認した。
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのBTA−FCE膜を作製した。このBTA−FCE膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図26に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.56V及び0.54μA/cm
2であった。
【0214】
実施例11
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶に1,3,5−トリホルミルベンゼン((株)ナード研究所製)2.0mgとポリ(3−ヘキシルチオフェン)(シグマアルドリッチ製:分子量15,000−45,000)10.0mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、ジクロロベンゼン600mgに溶解した。この液を孔径0.45μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、150℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下、BTA−P3HTという)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりBTA−P3HT膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
【0215】
実施例12
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶にトリス(4−ホルミルフェニル)アミン16.5mgと2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン16.5mgを入れ、シクロヘキサノン1350mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下TFPA−BFME)を得た。
【0216】
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりTFPA−BFME膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
【0217】
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりTFPA−BFME膜を作製した。TFPA−BFME膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、トリス(4−ホルミルフェニル)アミンと2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンのバンドギャップを求めた。その結果、TFPA−BFME膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたTFPA−BFME膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
【0218】
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をTFPA−BFME膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、6.5eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、3.8eVであった。
【0219】
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりTFPA−BFME膜を作製した後、各々のTFPA−BFME膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図27に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したTFPA−BFME膜は有機半導体であることを確認した。
【0220】
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのTFPA−BFME膜を作製した。このTFPA−BFME膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図28に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.15V及び0.04μA/cm
2であった。
【0221】
実施例13
(1)組成物(コーティング組成物)の調製
6mlサンプル瓶にテレフタルアルデヒド4.0mgとフラーレン単位を有するチオフェン化合物([6,6]−フェニル−C61酪酸(3−エチルチオフェン)エステル)60.4mg及びスチレンスルホン酸0.5mgを入れ、シクロヘキサノン3500mgに溶解した。この液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、組成物(コーティング組成物)を調製した。
(2)有機半導体膜の作製
上記工程(1)で得られた組成物を用いて、基材にスピンコートにより薄膜を作製した後、窒素雰囲気下、100℃で1時間熱処理を行うことにより、有機半導体膜(以下TFA−PCBT)を得た。
(3)有機半導体膜の構造
(3−1)有機溶剤に対する溶解性
基材としてシリコンウェハー(又はガラス板)を用いて、上記(2)の方法によりTFA−PCBT膜を作製した。この膜は、シクロヘキサノンに不溶であることから、三次元網目構造を形成していることを確認した。
(3−2)バンドギャップ
基材としてガラス板を用いて、上記(2)の方法によりTFA−PCBT膜を作製した。TFA−PCBT膜のUV−Visスペクトル測定を行い、吸収端からバンドギャップを求めた。なお、比較対象として、テレフタルアルデヒドと[6,6]−フェニル−C61酪酸(3−エチルチオフェン)エステルのバンドギャップを求めた。その結果、TFA−PCBT膜のバンドギャップがより小さくなっていることから、得られたTFA−PCBT膜は架橋構造により共役系が広がった構造であることを確認した。
【0222】
(3−3)HOMO、LUMO値の測定
上記(2)の方法により白金板をTFA−PCBT膜で被覆した。この白金板を作用極としてサイクリックボルタンメトリー(ビー・エー・エス社製、「AL600A」)による酸化還元電位(HOMO値)測定を行ったところ、5.7eVであった。得られた値からバンドギャップ値を引くことでLUMO値を算出したところ、3.5eVであった。
【0223】
(4)電気特性(ダイオード特性)評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法によりTFA−PCBT膜を作製した後、各々のTFA−PCBT膜上に直径1mm、厚み700nmのアルミニウム電極を真空蒸着形成することでpn接合型の整流素子を得た。この整流素子に電圧を印加し整流性の確認を行ったところ、
図29に見られるように明確な整流特性が得られた。このため、作製したTFA−PCBT膜は有機半導体であることを確認した。
【0224】
(5)光電変換評価
基材としてp型シリコンウェハーを用いて、上記(2)の方法により、厚み50nmのTFA−PCBT膜を作製した。このTFA−PCBT膜上にスパッタリング法によりITO膜を形成することにより光電変換素子を作製した。この素子の光応答特性を
図30に示す。このとき開放電圧及び短絡電流を測定したところ、0.55V及び0.15μA/cm
2であった。