特許第5809154号(P5809154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809154流体の赤外線解析のための測定セル、そのような測定セルを備える測定システム及びそのような測定セルを製造する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809154
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】流体の赤外線解析のための測定セル、そのような測定セルを備える測定システム及びそのような測定セルを製造する製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/05 20060101AFI20151021BHJP
   G01N 21/3577 20140101ALI20151021BHJP
【FI】
   G01N21/05
   G01N21/3577
【請求項の数】28
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-535643(P2012-535643)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-508733(P2013-508733A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010005629
(87)【国際公開番号】WO2011054412
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年7月1日
(31)【優先権主張番号】102009051853.3
(32)【優先日】2009年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500331909
【氏名又は名称】ハイダック エレクトロニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ジュリアン ガメル
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガンク クルト ブローデ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト マネバハ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヘロルト
(72)【発明者】
【氏名】インディラ ケップリンガー
【審査官】 波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−130855(JP,A)
【文献】 特開平11−012099(JP,A)
【文献】 BEMBNOWICZ P et al.,INTEGRATION OF TRANSPARENT GLASS WINDOW WITH LTCC TECHNOLOGY FOR μTAS APPLICATION,JOURNAL OF THE EUROPEAN CERAMIC SOCIETY,英国,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS,2009年10月 4日,Vol.30, No.3,pp.743-749,Available online
【文献】 FISCHER M et al.,SILICON ON CERAMICS-A NEW CONCEPT FOR MICRO-NANO-INTEGRATION ON WAFER LEVEL,NANOTECHNOLOGY 2008:TECHNICAL PROCEEDINGS OF THE 2008 NSTI NANOTECHNOLOGY CONFERENCE AND TRADE SHOW,米国,CRC PRESS,2008年 6月 1日,Vol.3,pp.157-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2メガパスカル(20バール)よりも大きい可能動作圧力を有する、流体の赤外解析のための測定セル(1)であって、赤外放射に対して少なくとも部分的に透過性を有する第1の透過要素と第2の透過要素(2,4)との間に形成される流れチャネル(10)を流体のために備えており、赤外放射は前記第1の透過要素(2)を通って前記流れチャネル(10)内に照射され得るとともに、前記第2の透過要素(4)を通って前記流れチャネル(10)から排出され得るものであり、前記第1の透過要素と前記第2の透過要素(2,4)は、前記第1の透過要素と前記第2の透過要素の間に配置されていてガラス含有材料からなる接続層(6)によって互いに流体密に接続され、
前記接続層(6)がセラミックフィルムとして形成されており、このようにして前記流れチャネル(10)が該流れチャネル(10)の形状に形成され、
前記流れチャネル(10)の境界部を形成する1つの表面における前記第1の透過要素(2)と前記第2の透過要素(4)の中の少なくとも一方が、反射防止層又は赤外放射のフィルタ層として作用する表面構造体(56)を有し、
前記表面構造体(56)が、1mm2当り10000針よりも大きい密度を有するマイクロ針を有し、かつ前記第1の透過要素(2)及び前記第2の透過要素(4)と前記接続層(6)とを接続するための接着促進体をも形成する、測定セル(1)。
【請求項2】
前記接続層(6)が前記第1の透過要素と前記第2の透過要素(2,4)のうちの一方に付与されて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の測定セル(1)。
【請求項3】
前記接続層(6)が、前記接続層(6)の前記ガラス含有材料の焼結処理の前の過程において前記接続層(6)から有機化合物を排出するための排出チャネルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定セル(1)。
【請求項4】
前記接続層(6)が、可塑化部を有する低温同時焼成されたセラミックから形成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項5】
摂氏0度から摂氏600度との間の温度範囲における焼結された前記接続層(6)が、8ppm/Kよりも小さい線形熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項6】
前記表面構造体(56)が、1mm2当り10000針よりも大きい密度を有するマイクロ針を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項7】
前記針が、0.3μmよりも大きくかつ30μmよりも小さい長さを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項8】
前記第1の透過要素と前記第2の透過要素(2,4)が単結晶シリコンから形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項9】
前記第1の透過要素と前記第2の透過要素(2,4)のうちの少なくとも一方が、1mmよりも大きい肉厚を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項10】
マイクロ流体構造が前記第1の透過要素と前記第2の透過要素(2,4)のうちの少なくとも一方に形成されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の測定セル(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の測定セル(1)と、赤外放射の放射器(36)と、前記赤外放射の受信器(42)と、を備える、流体の赤外解析のための測定システム(8)。
【請求項12】
当該測定システム(8)は、前記測定セル(1)が挿入される受容開口が形成された設置要素(26)を有しており、該設置要素(26)には、流体が前記測定セル(1)の前記流れチャネル(10)に進入し得るとともに、前記測定セル(1)の前記流れチャネル(10)から放出され得るようにする進入開口(32)及び出口開口(34)が形成されることを特徴とする、請求項11に記載の測定システム(8)。
【請求項13】
未焼結状態のガラスセラミック材料からなる前記接続層(6)を前記第1の透過要素(2)と前記第2の透過要素(4)の間に配置し、前記第1の透過要素(2)及び前記第2の透過要素(4)及び前記接続層(6)の配列体を、次いで温度及び圧力の作用によって焼結し、その際に、流体密の接続状態を形成することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の測定セル(1)を製造する製造方法。
【請求項14】
前記ガラス含有材料は、焼結されたガラスセラミック材料であることを特徴とする、請求項1に記載の測定セル(1)。
【請求項15】
前記可能動作圧力は5メガパスカル(50バール)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の測定セル(1)。
【請求項16】
前記接続層(6)は焼結されたガラスセラミック材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の測定セル(1)。
【請求項17】
前記温度範囲は摂氏0度と摂氏400度との間であることを特徴とする、請求項5に記載の測定セル(1)。
【請求項18】
前記温度範囲は摂氏0度と摂氏200度との間であることを特徴とする、請求項5に記載の測定セル(1)。
【請求項19】
前記線形熱膨張係数は5ppm/Kよりも小さいことを特徴とする、請求項5に記載の測定セル(1)。
【請求項20】
前記線形熱膨張係数は3ppm/Kよりも小さいことを特徴とする、請求項5に記載の測定セル(1)。
【請求項21】
前記密度は1mm2当り100000針よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の測定セル(1)。
【請求項22】
前記密度は1mm2当り500000針よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の測定セル(1)。
【請求項23】
前記長さは0.5μmよりも大きくかつ15μmよりも小さいことを特徴とする、請求項7に記載の測定セル(1)。
【請求項24】
前記長さは0.8μmよりも大きくかつ8μmよりも小さいことを特徴とする、請求項7に記載の測定セル(1)。
【請求項25】
前記肉厚は1.5mmよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の測定セル(1)。
【請求項26】
前記肉厚は2mmよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の測定セル(1)。
【請求項27】
前記マイクロ流体構造が前記第1の透過要素(2)と前記第2の透過要素(4)の両方に形成されることを特徴とする、請求項10に記載の測定セル(1)。
【請求項28】
前記マイクロ流体構造が前記第1の透過要素(2)と前記第2の透過要素(4)を形成する1つのシリコンウエハに形成されることを特徴とする、請求項10に記載の測定セル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の赤外線解析のための測定セル、そのような測定セルを備える測定システム及びそのような測定セルを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの測定セルは、例えば圧力の伝達、潤滑化及び冷却のうちの少なくともいずれかのために技術システムにおいて使用される油を解析するために使用され得る。動作に際して、油は経年劣化及び汚染の少なくとも一方にさらされる。システムの動作上の信頼性のために、油の品質状態を概ねリアルタイムにチェック可能であることが重要である。この目的のために、波長に応じて定まる油の透過率が測定され得るし、又は吸収帯域が特に赤外線範囲において測定され得る。それらから油の品質に関する結果を導き出せる。
【0003】
それら測定セルを備えた反射分光計は、例えば特許文献1、特許文献2又は特許文献3により公知である。透過分光計は、例えば特許文献4及び特許文献5により公知である。
特許文献6は赤外分光法のためのマイクロセルを開示している。
特許文献7はヒートシンク及びこのヒートシンクを製造する製造方法を開示している。
【0004】
特許文献8及び特許文献9はウエハを接続する接続方法を開示している。特許文献10は、温度補正作用を有する圧電性基材のためにウエハ接合を使用すること、及び表面波コンポーネントを製造する製造方法を開示している。
特許文献11は高速の化学反応を調査するための測定フローセルを開示している。
特許文献12は3次元マイクロフローセルを製造する製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10321472号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許第19731241号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0488947号明細書
【特許文献4】ドイツ国特許出願公開第102004008685号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第2341925号明細書
【特許文献6】ドイツ国特許第4137060号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0063330号明細書
【特許文献8】ドイツ国特許出願公開第10244786号明細書
【特許文献9】オーストリア国特許第500075号明細書
【特許文献10】ドイツ国特許出願公開第10329866号明細書
【特許文献11】ドイツ国特許第19909692号明細書
【特許文献12】ドイツ国特許出願公開第10104957号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、性能特性を向上させた測定セル並びに関連の測定システム及び関連の製造方法を利用可能にすることである。一実施形態において、測定セル、センサ及び放射器が高い動作圧力においても使用されるように形成され、この目的のためにそれらは高い動作信頼性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1において明確化される測定セル並びに従属項において明確化される測定システム及び従属項において明確化される製造方法によって達成される。本発明の特定の実施形態は従属項において明確化される。
【0008】
一実施形態において、この目的は、流体の赤外解析のための測定セル、特に2メガパスカル(20バール)よりも大きい、好ましくは5メガパスカル(50バール)よりも大きい許容動作圧力を有していて、第1の透過性要素と第2の透過性要素との間に形成される流体の流れチャネルを備える測定セルによって達成される。各透過性要素は赤外放射に対して少なくとも部分的に透過性を有しており、赤外放射は第1の要素を介して流れチャネル内に照射され得るとともに、第2の要素を介して流れチャネルから排出され得る。これら2つの要素は、ガラス含有材料、特に焼結されたガラスセラミック材料の接続層によって、機械的に高い強度を有するように互いに流体密に接続される。この接続層は2つの要素の間に配置される。
【0009】
ここで、高圧力における使用のために必要であるような比較的厚肉の要素であっても永久的に信頼性が高い状態で接続層によって互いに接続されること、特に、高圧力における使用に関連して比較的厚肉である要素の剛性にもかかわらず浸透性を有する箇所が形成されないように接続がなされることが有利である。焼結されないままの状態において、対応する圧力を付与することによって、存在し得る2つの要素の表面の形状又は波形がそれにより平準化されるように、接続層の材料が2つの要素の表面に接触され得る。このことは、複数の要素ひいては複数の測定セルが実装されるとともに、例えばコンポーネントのために使用されるパネル、すなわちボード又はウエハにおいて測定セルが製造されると、特に有利である。
【0010】
例えば、パネルにおける要素は、1mmよりも大きい、特に1.5mmよりも大きい、好ましくは2mmよりも大きい肉厚を有するシリコンウエハから形成され得る。焼結された状態の接続層は、50μmよりも大きくかつ500μmよりも小さい、特に100μmよりも大きくかつ300μmよりも小さい、好ましくは120μmよりも大きくかつ200μmよりも小さい肉厚を有する。流体の流れチャネルは、3mmよりも大きい、特に6mmよりも大きい、好ましくは9mmよりも大きい長さを有するとともに、10mmよりも小さい、特に8mmよりも小さい、好ましくは6mmよりも小さい幅を有するマイクロ流体チャネルであり得る。流れチャネルにおいて、1つまたは2つ以上のスペーサが配置され得る。これらスペーサによって、高圧力の作用を受けても流れチャネルの高さが確定可能な値に維持される。これらスペーサは、例えば流れ方向に対して長手に延びるウェブによって形成され得る。これらスペーサ及び流れチャネルの幾何学形状のうちの少なくとも一方は、要素及び接続層のうちの少なくともいずれか一方によって少なくとも部分的に形成され得る。
【0011】
一実施形態において、接続層は一方の要素に付与されて形成されるか、又は2つの要素の間に配置される。接続層を形成することによって、例えば流れチャネルを形成可能であり、特に流れチャネルを境界決めする2つの要素が根本的に構造化されていなくてもよい。代替的又は付加的に、それら2つの要素は、エッチングによって表面に作成されていて流れチャネルを形成する構造体を少なくとも部分的に有していてもよい。根本的に、接続層は公知のあらゆる方法、例えば厚肉フィルム技術によっても付与され得る。
【0012】
一実施形態において、ストリップ、テープ又は膜の形態を有する接続層は、それら要素の一方に積層されるか、又はそれら2つの要素の間に積層される。例えば、膜の形態を有する接続層が複数の測定セルの第1の要素を形成するウエハに配置され得るとともに、複数の測定セルの第2の要素を形成するウエハが接続層に配置され得る。そして、組合体は一緒に押圧されて、次いで焼結され得る。
【0013】
一実施形態において、接続層は、焼結の前に行われる処理において接続層から有機成分を排出するための排出チャネルを有する。これら排出チャネルは、接続層の格子状の構造体によって形成され得る。これら排出チャネルを形成することは、パネルにおいて測定セルを製造するのに特に有利である。なぜなら、この場合、温度処理の際に揮発性を呈する有機成分が横方向に放出され得るからである。
【0014】
一実施形態において、接続層は、好ましくは可塑化部を有していて低温同時焼成されたセラミックから形成される。可塑化部による接続層の積層化が可能である。未焼結の状態において、接続層は可撓性を有する。この状態において、接続層の構成成分はガラス、ホウ珪酸ガラス、ボロフロートガラス及び石英ガラスのうちの少なくともいずれか、セラミック、例えばAl23、並びに硬化中に揮発する有機成分であり得る。これら構成成分を混合させることによって、摂氏−50度から摂氏850度までの温度範囲における熱膨張係数が測定セルの要素の熱膨張係数、特にシリコンの熱膨張係数に適合することが保証される。
【0015】
一実施形態において、摂氏0度と摂氏200度との間、特に摂氏0度と摂氏400度との間、好ましくは摂氏0度と摂氏600度との間の温度範囲における接続層は、それら要素の少なくとも一方の、好ましくはそれら2つの要素の線形の熱膨張係数から8ppm/Kよりも小さく、特に5ppm/Kよりも小さく、好ましくは0.5ppm/Kよりも小さく逸脱する線形の熱膨張係数を有する。このようにして、接続層から要素までの熱膨張係数の良好な適合作用が保証され、それにより、焼結状態の測定セルにおいても熱的に誘発される応力が低下し、したがって、高い動作信頼性が保証されるようになる。
【0016】
一実施形態において、2つの要素のうちの少なくとも一方は、流れチャネルの境界を形成する1つの表面において、赤外放射の反射防止層及びフィルタ層のうちの少なくとも一方として、又は接続層の接着促進体として、或いはこれらの両方として作用する表面構造体を有する。したがって、赤外放射のための測定セルの透過能力が顕著に向上し得る。その結果として、センサ信号の評価のために高い信号レベルが生成される。さらに、このようにして、光学フィルタが測定セルに組入れられてもよい。このフィルタによって、調査されるべき流体の吸収帯域が決定され得る。また、このようにして、接続層の接着力が増大され得る。このことは高圧力動作において特に有利である。表面構造体は表面におけるナノ構造体によって形成され得る。
【0017】
一実施形態において、表面構造体は、1mm2当り10000針よりも大きい、特に1mm2当り100000針よりも大きい、好ましくは1mm2当り500000針よりも大きい密度を有する複数の針を有している。このような針形状の要素は、例えば自己マスク型ドライエッチングによって単結晶シリコンにおいて形成され得る。光学的外観に従ってこのようにして形成される表面構造体は、「ブラックシリコン」とも称される。
【0018】
一実施形態において、これら針は、0.3μmよりも大きくかつ30μmよりも小さい、特に0.5μmよりも大きくかつ15μmよりも小さい、好ましくは0.8μmよりも大きくかつ8μmよりも小さい長さを有する。研究によれば、この針の長さにおいて、赤外放射の特に好適な反射防止作用及び接続層への高い接着作用のうちの少なくとも一方が達成されることが示されている。
【0019】
一実施形態において、要素は接続層の領域においても表面構造体を有する。ここで、表面構造体は、反射防止層としての作用に対して代替的或いは付加的に、要素と接続層との接続のための接着促進体としても使用されるのが有利である。特に、これら針は接続層の構造体を貫通し得る。したがって、大面積の接続層は、それら針の表面:体積の比を高くすることによって形成される。
【0020】
例示的な一実施形態において、2つの要素は単結晶シリコンから形成される。単結晶シリコンは赤外放射の比較的高い透過係数を有するとともに、優れた機械特性をさらに有している。また、単結晶シリコンからなる要素は、化学的ドライエッチング法及び化学的ウェットエッチング法を含む半導体技術における公知の形成方法を利用して、流れチャネルを形成するために、概ね任意の態様により高精度に形成され得る。
【0021】
一実施形態において、2つの要素の少なくとも一方は、1mmよりも大きい、特に1.5mmよりも大きい、好ましくは2mmよりも大きい肉厚を有する。このような厚肉の要素によれば、特に単結晶シリコン材料と相俟って、高圧力の用途にも適した高い機械的強度を有する測定セルが形成され得る。接続層の肉厚によって形成される流れチャネルの高さは、50μmと500μmとの間、特に80μmよりも大きくかつ400μmよりも小さい、好ましくは100μmよりも大きくかつ300μmよりも小さくなり得る。
【0022】
また、本発明は、前述した測定セル並びに放射器及びセンサを備える、流体の赤外解析のための測定システムの構造体に関する。この測定システムは、赤外放射の放射器、例えば広帯域放射の放熱器及び比較的狭帯域放射の赤外発光ダイオードのうちの少なくとも一方と、赤外放射の受信器と、を備える。放射器及び受信器は測定セルの両側に配置されるのが好ましい。或るユニットにおいて、受信器は複数の検出要素を有し得る。これら検出要素によって、異なる波長範囲の放射の強度が測定され得る。この目的のために、受信器は複数の進入ウィンドウを有し得る。これら進入ウィンドウを介して放射が検出要素の1つに入射する。ウィンドウ及び検出要素のうちの少なくとも一方はフィルタリングを可能にし得る。
同様に、狭帯域放射の複数の放射器が設けられてもよい。
【0023】
一実施形態において、測定システムは測定セル用の受容開口が形成された設置要素を有している。測定セルは受容開口に挿入可能であり、特に受容開口はその輪郭に関連して、例えば多角形、特に矩形であり得る測定セルの外形に対して少なくとも部分的に調節可能である。設置要素には流体のための1つの進入開口及び1つの排出開口が形成される。流体は進入開口を通って測定セルの流れチャネルに進入し得る。流体は排出開口を通って測定セルの流れチャネルから放出され得る。
【0024】
また、本発明は、前述したように測定セルを製造する製造方法に関する。ガラス含有材料、特にガラスセラミック材料からなる接続層は、例えばストリップ又は膜の形態を有していて未焼結状態の2つの要素の間に配置され得る。接続層は、ここでは圧粉体である。接続層には補正マーキング又は補正開口が形成されていてもよい。これら補正マーキング又は補正開口によって、接続層が前記要素の担体に対して補正され得る。接続層は焼結されていない箔の形態をなして存在してもよいし、又はホウ珪酸ガラス、石英ガラス及び酸化アルミニウム並びに有機溶剤の混合物から形成されてもよいし、或いはそれら両方であってもよい。
【0025】
接続層は、要素を形成する2つのウエハの間において、例えば25メガパスカル(250バール)の圧力下で300μmの肉厚を有する圧粉体として積層される。
この負荷を受ける接続層は圧粉体に導入された可塑化部を通って流れるとともに、2つの要素の間のすべての空間公差を均一化し、それにより、接続層がウエハ表面全体にわたって要素と接触するようになる。
【0026】
それら要素は、接続層に対向する表面において、例えば針の形態を有するようにナノ構造化されている。それら針は接続層の構造体を貫通する。そして圧力及び温度の作用を受けて焼結過程が行われる。摂氏約650度から開始する温度において、ガラスフリットが、セラミック圧粉体のすべての構成成分と、要素を形成するウエハの針との両方に接続される。これら針はナノ構造体において存在する。なぜなら、特にそれら針の横方向の寸法は非常に小さいからである。焼結過程において圧力を付与することによって、接続層の横方向の収縮が本質的に防止される。要素を形成するウエハの表面に対して直交する接続層の収縮は約50%であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る測定セルの例示的な一実施形態の斜視図である。
図2】流体の赤外解析のための測定システムを通る断面図である。
図3】設置要素の斜視図である。
図4】4つの異なる波長における合計5つの流体サンプルの透過作用を示す図である。
図5】4つの異なる波長における合計5つの流体サンプルの透過作用を示す図である。
図6】4つの異なる波長における合計5つの流体サンプルの透過作用を示す図である。
図7】4つの異なる波長における合計5つの流体サンプルの透過作用を示す図である。
図8】測定セルを製造する製造方法の異なる段階を示す図である。
図9】測定セルを製造する製造方法の異なる段階を示す図である。
図10】測定セルを製造する製造方法の異なる段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、従属請求項及び以下の記載から明らかになるであろう。以下の記載において、図面を参照しながら複数の例示的な実施形態が詳細に説明される。特許請求の範囲及び明細書において参照される特徴は、個別に又は任意の組合せにおいて本発明にとって重要であり得る。
【0029】
図1は、高圧力動作における流体の赤外解析のための、本発明の例示的な一実施形態に係る測定セル1の斜視図である。この例示的な実施形態における流体の流れチャネル10は、5mmの幅部12と、9.5mmの長さ部14と、0.2mmの高さ部16と、を有する。流れ方向は矢印18によって示される。流れチャネル10の幅部12における中間点において、スペーサ20が流れ方向18に延在している。該スペーサ20の長さ部22は流れチャネル10の長さ部14の約50%であり、例示的な実施形態において約4.5mmであるとともに、該スペーサ20の幅部24は流れチャネル10の幅部12の20%よりも小さく、例示的な実施形態において0.8mmである。一方、高さ部16はスペーサ20によって流れチャネル10の中間領域においても安定化されており、さらに、ウェブ形に形成されるスペーサ20は流れチャネル10における層流を向上させるのに使用されてもよい。
【0030】
流れチャネル10は、第1の要素2と第2の要素4との間に形成される。これら2つの要素は赤外放射に対して少なくとも部分的に透過性を有していて、単結晶シリコンから形成され得る。赤外放射は第1の要素2を介して流れチャネル10内に照射され得る。赤外放射は第2の要素4を介して流れチャネルから放出され得る。これら2つの要素2,4は、それらの間に配置される接続層6によって、高い機械的強度を有するように流体密に互いに接続される。接続層6は、ガラス含有材料から、特に焼結されたガラスセラミック材料から形成される。
【0031】
図2は、前述した測定セル1を備える、流体の赤外解析のための測定システム8を通る断面を示している。測定セル1は、設置要素26によってシステムハウジング28内に配列される。図3は、測定セル1を挿入可能な受容開口30が形成された設置要素26の斜視図を示している。受容開口30は、次いで本質的に矩形、又は特定の場合に正方形である測定セル1の外形に本質的に適合される。受容開口30は、測定セル1の挿入動作を補助する湾曲部を隅部に有する。設置要素26には、進入開口32及び排出開口34が形成されており、流体は、これら進入開口32及び排出開口34を通って測定セル1の流れチャネル10に進入し得るとともに、測定セル1の流れチャネルから放出され得る。設置要素26と測定セル1との間の接続状態は流体密になっている。この目的のために必要になり得る封止手段、例えばガスケットなどは、明瞭化の理由のため図2には示されていない。
【0032】
測定システム8は、測定セル1の第1の要素2に割当てられる一方の側面において、赤外放射のための放射器36を備えている。放射器36は、例えば比較的広帯域の放熱要素であり得る。この放熱要素は、任意の場合において関連する波長、例えば2μmと6μmとの間の範囲において十分な放射強度を有する。放射器36は、中央通路開口38が形成された固着要素40によってハウジング28に取外し可能に固定されるのが好ましい。放射器36は、本質的に測定セル1の第1の要素2を主として照射する。
【0033】
測定システム8における測定セル1に対向する側において、受信器42が第2の要素4の外表面に対向しており、好ましくは第2の要素4に対して、ひいては測定セル1に対して中央に設けられる。図示される例示的な実施形態において、受信器42は合計4つの検出要素44,46を備えている。図2においては、断面図であるがゆえに、それら4つの検出要素のうちの2つの検出要素44,46のみが示されている。受信器42は、測定セル1に対向する表面において、一度に検出要素44,46の1つに割当てられる合計4つのウィンドウ48,50を有している。各ウィンドウ48,50及び各検出器44,46のうちの少なくとも一方はフィルタ層を有しており、それにより、測定セル1を通過して放射器36から照射される赤外スペクトルの場合において一度に1つの狭帯域領域のみが、検出要素44,46に放射されるようになっている。
【0034】
図4から図7は、2.58μmと3.01μmとの間の異なる波長における性質状態に関して異なる合計5つの流体サンプルの相対的な透過作用Trを示している。サンプル1は新い未使用の流体であり、時間経過とともにサンプル番号が増大する。図4及び図5が示すように、2.58μm及び2.73μmの波長において、時間経過に応じた流体の吸収は測定され得ない。逆に、図6及び図7によれば、2.87μm及び3.01μmの波長において、時間経過に応じた吸収が生じる。これら吸収帯域が生じる際の波長は、流体における時間経過に影響を受ける部分に関する決定を可能にする。或る波長において時間経過に影響を受ける吸収が測定され得ない状況(図4及び図5)であれば、例えば比較測定を行うために、これら波長を基準帯域として利用できる。
【0035】
図8から図10は、前述したような測定セル1を製造する製造方法の異なる段階を示している。より良く表されるように、寸法は縮尺のとおり示されていない。まず、ナノ構造体56、例えば複数の針からなる表面構造体が、第1の要素2及び第2の要素4を少なくとも一方の表面に形成するシリコンウエハ52,54に付与され、被覆されるか又は構造化される。この中間段階が図8に示されている。
【0036】
図9は、約300μmの肉厚を有する接続層6が如何にして2つのシリコンウエハ52,54の間に積層されるかを示しており、このことは5メガパスカル(50バール)と50メガパスカル(500バール)との間の、特に20メガパスカル(200バール)と30メガパスカル(300バール)との間の、好ましくは25メガパスカル(250バール)の圧力と、摂氏50度と摂氏100度との間、特に摂氏60度と摂氏80度との間、好ましくは摂氏70度の温度との作用によるものであるのが好ましい。接続層6はガラス含有材料、特にガラスセラミック材料、例えばいわゆるLTCCセラミックから形成され得る。接続層6は圧粉体としてテープの形態をなして積層され得る。接続層6は積層圧力を受けてテープに配置される可塑化部を通って流れ、そうしてシリコンウエハ52,54の間のすべての空間公差を均一化する。ここで、針構造体56は接続層6の表面を貫通する。
【0037】
テープ及びシリコンウエハのうちの少なくとも一方の構造化によって、付加的な媒介を通じての結合解除過程において、有機物がテープから除去されるのが保証される。特にパネルにおける製造に際しての要素2,4の平坦度不良が接続層6によって、特に焼結処理前の接続層6の特性によって緩和される。
【0038】
図10は、摂氏600度よりも高く、好ましくは摂氏750度よりも高い温度、例えば摂氏800度と摂氏900度との間において行われる焼結の後の状態を示している。ここで、接続層6のガラス成分は、セラミック含有テープのすべての構成成分及びシリコンウエハ52,54のナノ構造体56と結合する。焼結処理の間において圧力を付与することによって、ガラスセラミックの横方向の収縮が本質的に停止され、又は完全に停止されさえする。シリコンウエハ52,54の表面に対して直交する収縮は約50%であり、それにより接続層6が最終的に約150μmの肉厚部に位置するようになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10