特許第5809181号(P5809181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809181
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20151021BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   C08J7/04 ZCFD
   B32B27/36
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-61173(P2013-61173)
(22)【出願日】2013年3月23日
(65)【公開番号】特開2014-185246(P2014-185246A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2013年12月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】開 俊啓
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰史
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039823(JP,A)
【文献】 特開2003−055489(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0189832(US,A1)
【文献】 特開平05−131537(JP,A)
【文献】 米国特許第05370930(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層に色剤を含有する3層構成のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、不揮発成分に対して60重量%以上の架橋剤を含有する塗布液から形成された、最終的な乾燥後の厚さが0.005〜0.3μmの塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色剤を含有する積層ポリエステルフィルムに関するものであり、フィルムから色剤がブリードアウトするのを防止する性能を有し、例えば、自動車窓貼り用、X線青み付け用、ディスプレイ用等で用いられる、色剤が用いられる用途において好適に利用することのできる積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性などに優れ、従来種々の工業用途に利用されているが、その用途はますます拡大、多様化しており、透明性を有するポリエステル原料に色剤を入れ、着色ポリエステルフィルムとする用途にも用いられてきている。
【0003】
例えば、自動車窓貼り用フィルム、X線青味付けフィルム、ディスプレイ用途等、色剤を含有するフィルムの用途において、色の調合、耐熱性および分散性等の良好な色剤を選択しても、過酷な加熱条件下にて、色剤を含有するフィルムから色剤のブリードアウトが生じ、各種の製造工程の汚染やヘーズアップが発生してしまうため、改良を求められている。
【0004】
上記課題の解決のために、特許文献1および2には、色剤のブリードアウトを防ぐために中間層に色剤を含む、3層以上からなる共押出積層フィルムが提案されている。しかしながら、上記特許文献に記載されているフィルムは、過酷な加熱条件下においては、依然として色剤のブリードアウト防止性能が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−157040号公報
【特許文献2】特開2002−52675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、過酷な加熱条件下においても優れた色剤のブリードアウト防止性能を有するポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、中間層に色剤を含有する3層構成のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、不揮発成分に対して60重量%以上の架橋剤を含有する塗布液から形成された、最終的な乾燥後の厚さが0.005〜0.3μmの塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステルフィルムによれば、色剤のブリードアウト防止性能に優れたフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、表層原料に高機能化されたポリエステルフィルムを用いて、効果的に各種の特性の向上を図る目的で、表層と中間層の原料を変えて、3層構成にすることも可能である。なお、本発明のポリエステルフィルムおいて、表層とは露出する2つの面を構成する層であり、それ以外の層は中間層と呼ぶ。
【0011】
本発明において好ましい形態の1つとして、フィルムを3層構成とし、中間層のみに色材を含有させ、その表層には色剤を含まないポリエステル層とすることで、色剤のブリードアウト防止を図る方法が挙げられる。
【0012】
表層と中間層とを構成するポリエステル組成物の極限粘度は、通常0.3〜0.9dl/g、好ましくは0.4〜0.8dl/g、さらに好ましくは0.5〜0.8dl/gである。極限粘度が0.3dl/g未満では、フィルムとした際の耐熱性、機械的強度等が劣るようになる傾向がある。また極限粘度が0.90dl/gを超えるとポリエステルフィルム製造時の押出工程で負荷が大きくなりすぎ、その結果、生産性が低下することがある。
【0013】
本発明においてフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムは色剤を含有するものである。本発明においては、色剤のブリードアウトを低減させる観点から多層フィルムの中間層に色剤を含有している構成が好ましい。
【0015】
本発明のフィルムのポリエステル層に配合する色剤としては、ポリエステル製造時の耐熱性、ポリエステル中での分散性の点を考慮することが好ましく、化学構造的には、アントラキノン系、フタロシアニン系、ぺリノン系、イソキノリン系等の色剤が好ましく用いられる。これらの色剤は、適宜数種を選択し混合して使用されるのが一般的であり、各層を構成する原料ポリエステル中の含有量としては、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。含有量が、0.01重量%未満の場合は含有している色剤の効果が十分に発揮されない場合があり、10重量%を超える場合は表面に色剤がブリードアウトし、工程汚染やフィルムの透明性の悪化の懸念がある。
【0016】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することも可能である。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、酸化チタン、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、セライト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリン、タルク、カーボンブラック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、架橋高分子微粉体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0018】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜3μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルム表面の平面性が損なわれたり、透明性が損なわれたりする場合がある。
【0019】
さらにポリエステル層中の粒子含有量については、粒子を含有するポリエステル層に対し、通常5重量%以下、好ましくは0.0005〜3重量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、易滑性が不十分となりフィルムの巻き特性が劣る場合があるため、塗布層中に粒子を入れることにより、易滑性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。一方、粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0020】
また、本発明においてポリエステルに粒子や色剤を含有させる方法は、特に限定されるものではないが、重合工程に添加する方法、押出機を用いて粒子や色剤を練込みマスターバッチとする方法等が挙げられる。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0022】
次に、本発明におけるポリエステルフィルムの形成例について説明する。本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよいが、本発明において好ましい形態の1つがフィルムを3層構成とし、中間層のみに色剤を含有させ、その表層には色剤を含まない層構造であるため、下記にこの構成のポリエステルフィルムの形成について記載するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0023】
色剤を所定量含有した中間層に用いるポリエステルと必要に応じ粒子を所定量含有した表層に用いるポリエステルとを、各々別の溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーを押出口金内において層流状で接合積層させてスリット状のダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0024】
本発明における延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜120℃で2〜6倍に延伸し、一軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160度で2〜6倍延伸を行い二軸延伸フィルムとし、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行う。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に15%以下で弛緩する方法が挙げられる。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0025】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、前述のポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
【0026】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層上に形成され得る各種の機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
【0027】
本発明では、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、不揮発成分に対する割合において40重量%以上の架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0028】
本発明で使用する架橋剤としては、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン化合物、シランカップリング化合物、有機金属錯体などの公知の架橋剤が挙げられ、これらのうち少なくとも1種以上用いることが可能であるが、色剤のブリードアウト防止性の観点から、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物の使用が好ましく、メラミン化合物の使用は更に好ましい。
【0029】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0030】
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜9mmol/g、より好ましくは3〜8mmol/g、さらに好ましくは4〜6mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、塗布層の塗膜強度向上には好ましい。
【0031】
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0032】
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0033】
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0034】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0035】
カルボジイミド系化合物は、分子内にカルボジイミド、あるいはカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0036】
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
本発明における、塗布液中の不揮発成分に対する架橋剤の割合は、色剤のブリードアウト防止性の観点から40重量%以上が必須要件であり、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。架橋剤の割合が40重量%未満の場合は、色剤のブリードアウト防止性が悪化する場合がある。
【0038】
色剤を含有する積層ポリエステルフィルムは、使用用途により、ハードコート層への接着性を要求される場合がある。そのため、色剤のブリードアウト防止性とハードコート層への接着性を両立させる必要がある場合は、前述の架橋剤を2種以上使用する形態がより好ましく、架橋剤の組み合わせとしては、メラミン化合物とオキサゾリン化合物、メラミン化合物とエポキシ化合物、メラミン化合物とオキサゾリン化合物とエポキシ化合物の組み合わせが好ましい。
【0039】
架橋剤を組み合わせて使用する場合、各架橋剤の割合はそれぞれ次のようにすることが好ましい。すなわち、オキサゾリン化合物は、塗布液中のメラミン化合物の不揮発成分100重量%に対して通常100重量%以下、好ましくは55重量%以下、さらに好ましくは10〜40重量%である。エポキシ化合物は塗布液中のメラミン化合物の不揮発成分100重量%に対して通常100重量%以下、好ましくは55重量%以下、さらに好ましくは10〜30重量%である。
【0040】
本発明においては、色剤のブリードアウト防止性を向上させる観点から、前記架橋剤の反応を促進させる、各種の架橋触媒を併用する形態がより好ましい場合がある。
【0041】
メラミン化合物の架橋触媒としては、例えば芳香族スルホン酸化合物や燐酸化合物などの有機酸類およびそれらの塩、アミン化合物、アミン化合物の塩類、イミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、N原子を含む複素環式化合物、有機金属化合物、ステアリン酸亜鉛やミリスチン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウムやステアリン酸カルシウムなどの金属塩類等が挙げられる。
【0042】
オキサゾリン化合物の架橋触媒としては、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸などのプロトン酸、パラトルエンスルホン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、イミドジスルホン酸二アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、などのプロトン酸塩、パラトルエンスルホン酸エチル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジフェニルなどのプロトン酸エステル、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのオニウム塩等が挙げられる。
【0043】
エポキシ化合物の架橋触媒としては、例えばピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級及び2級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、エポキシ・イミダゾールアダクトなどのイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0044】
前記架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。よって、できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。そして、塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0045】
本発明では塗膜の造膜性を向上させる目的で塗布層中に、ポリマーを1種もしくは2種以上含有していてもよく、用いるポリマーの構造やイオン性に特に限定はないが、かかるポリマーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂などが挙げられる。
【0046】
また、これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により複合構造を有していてもよく、複合構造を持つポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0047】
上記のポリマーの中でも、塗布層の形成の観点から、ポリマーとしてはアクリル樹脂、ポリビニルアルコールを用いることが好適である。
【0048】
本発明においては、塗布層の滑り性改良のために塗布層中に粒子を含有していてもよい。粒子としてはシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の不活性無機粒子やポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂から得られる微粒子あるいはこれらの架橋粒子に代表される有機粒子が例示される。
【0049】
また、塗布層中には、必要に応じ消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料や顔料などの色剤等を併用していてもよい。
【0050】
さらに塗布液は、水を主たる媒体とすることが好ましく、水への分散を改良する目的あるいは造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は主たる媒体である水と混合して使用する場合、水に溶解する範囲で使用することが望ましい。
有機溶剤としては、例えばn−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明のフィルムに塗布層を設ける場合、その厚みは、最終的な乾燥後の厚さで通常0.001〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.3μm、さらに好ましくは0.01〜0.2μmである。塗布層の厚さが0.5μmを超えると、フィルムが相互にブロッキングしやすくなり、特にフィルムの高強度化を目的として塗布延伸フィルムを再延伸する場合には、工程中でロールに粘着しやすくなることがある。塗布層の厚さが0.001μm未満では、色剤のブリードアウト防止性能が悪くなる恐れがある。
【0052】
本発明の塗布層を設けるための塗布液をポリエステルフィルムに塗工する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0053】
なお、塗布液のフィルムへの塗布性および接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理などを施してもよい。また本発明のフィルムの塗布層の表面特性を改良するため、塗布層形成後に塗布層面に化学処理や放電処理などを施してもよい。
【0054】
本発明の積層ポリエステルフィルムを加工する際、本発明の積層ポリエステルフィルムが有する塗布層面の反対面に、要求特性に応じて必要な特性、例えば接着性、帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、インラインコートやオフラインコートなどの各種コートを行ってもよい。
【0055】
本発明において、積層フィルム表面への色剤のブリードアウトの評価にはΔEabを用いる。ΔEabの値は積層フィルムを加熱後、当該フィルムの塗布面をジメチルホルムアミドで抽出し、分光光度計により抽出液とリファレンスとなるジメチルホルムアミドのL値、a値、b値を求め、その差ΔL、Δa、Δbを下記数式(1)に代入して算出を行う。
【0056】
ΔEab=[(ΔL)+(Δa)+(Δb))]1/2…(1)
ΔEabは値が低いほど抽出液の透明性が高く、積層フィルム表面への色剤のブリードアウトを抑制していると言える。
【0057】
本発明においては、実用性の観点からΔEabの値が10以下であることが好ましく、さらに好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いた物性測定法を以下に示す。
【0059】
(1)極限粘度(dl/g)
ポリエステル1gに対し、フェノール/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒を100mlの比で加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0060】
(2)添加粒子の平均粒子径(μm)
株式会社島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いて、ストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
【0061】
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0062】
(4)色剤のブリードアウト防止性能評価(ΔEab値評価)
実施例および比較例で作成したフィルムを、180度のオーブンで10分間加熱する。
その後、熱処理をした当該フィルムを、塗布層表面が箱の内側になるように折り、縦20cm、横12.5cm、高さ5cmの箱形の形状をつくる。次いで、上記の方法で作成した箱の底面(250cm)に接触するようにジメチルホルムアミド10mLを入れて3分間放置した後、ジメチルホルムアミドを回収し、縦12.5mm、横12.5mm、高さ45mmの石英製の液セルに入れ、液セルを光路長が12.5mmとなるように株式会社島津製作所社製分光光度計「UV−3100PC」に設置して透過度の測定を行い、2°視野、標準D65光源の時のL値、a値、b値の値を求めた。同様にして、リファレンスとなるジメチルホルムアミドのL値、a値、b値を求め、その差ΔL、Δa、Δbを前述の数式(1)に代入し、リファレンスのジメチルホルムアミドに対するΔEab値を算出し、下記の基準により評価を行った。
◎:ΔEabの値が5以下
○:ΔEabの値が6以上、10以下
△:ΔEabの値が11以上15以下
×:ΔEabの値が16以上
製品の性能を鑑みた結果、○以上を合格とした。
【0063】
(5)接着性の評価方法
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に紫外線硬化アクリル樹脂であるカヤノーバFOP−1100(日本化薬株式会社製)74重量部、メチルエチルケトン86重量部の混合塗液を乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、紫外線を60mJ/cm照射して硬化させハードコート層を形成した。得られたフィルムに対して10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:塗布層とハードコート層の間で剥離した面積が5%未満
4:塗布層とハードコート層の間で剥離した面積が5%以上20%
3:塗布層とハードコート層の間で剥離した面積が20%以上50%未満
2:塗布層とハードコート層の間で剥離した面積が未満50%以上70%未満
1:塗布層とハードコート層の間で剥離した面積が70%以上
【0064】
実施例および比較例で用いた塗布層を構成する組成成分は、以下に示すとおりである。
なお、実施例および比較例で用いている重量%とは、不揮発分での重量%を意味している。
【0065】
[塗布層を構成する組成成分]
(A)架橋剤
(A−1):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A−2):オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー (オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
(A−3):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル。
【0066】
(B)ポリマー
(B−1):アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルを共重合した、ガラス転移温度(Tg)が50℃のアクリル樹脂
(B−2):ケン化度が88%の重合度500のポリビニルアルコール
【0067】
(C)帯電防止剤
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとN−メチロールアクリルアミドとN−Nジメチルアクリルアミドを重量比率で90/5/5の比率で共重合させた、数平均分量が20000である、主鎖にカチオンを有するカチオン性基含有樹脂
【0068】
(D)メラミンの架橋触媒
2−アミノ−2−メチルプロパノールハイドロクロライド
【0069】
≪ポリエステル−Aの製造≫
テレフタル酸ジメチル100重量%とエチレングリコール60重量%とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・4水塩0.09重量%を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応を終了した。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量%、三酸化アンチモン0.04重量%、平均粒径が1.9μmのシリカ粒子0.05重量%を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルの極限粘度は0.65dl/gであった。
【0070】
≪ポリエステル−Bの製造≫
ポリエステル−Aの製造において、平均粒径が1.9μmのシリカ粒子0.05重量%を加えず、重縮合反応を3時間15分とする以外はポリエステル−Aと同様の方法でポリエステルを得て、さらにかかるポリエステルを225℃−0.3mmHgの条件下で15時間固相重合を行った。得られたポリエステルの極限粘度は0.78dl/gであった。
【0071】
≪ポリエステル−Cの製造≫
ポリエステル−B 100重量%を乾燥した後、三菱化学株式会社製ダイアレジンレッドHS(ぺリノン系) 0.4重量%、三菱化学株式会社製ダイアレジンブルーH3G(アントラキノン系) 0.8重量%、および三菱化学株式会社製ダイアレジンイエローF(イソキノリン系) 0.3重量%を押出機にて溶融混練りしポリエステル−Cを得た。
得られたポリエステルの極限粘度は0.61dl/gであった。
【0072】
実施例1:
ポリエステル−Aを表層の原料とし、ポリエステル−Cを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、30℃に設定した冷却ロール上に2種3層の構成で厚み構成比がA/C/A=3/19/3となるよう共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、表1に示す塗布液を塗布し、テンターに導き、横方向に93℃で4.3倍延伸した後、225℃で熱処理を施して、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.1μmの塗布層を有する厚さ25μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、下記表2に示すとおり、色剤のブリードアウト防止性能は良好であった。
【0073】
実施例2〜8:
実施例1において、塗布液を下記表1および2に示す塗布剤組成と塗布膜厚に変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、下記表2に示すとおり、色剤のブリードアウト防止性能は良好であった。
【0074】
比較例1〜3:
実施例1において、塗布液を下記表1および2に示す塗布剤組成と塗布膜厚に変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、下記表2に示すとおり、色剤のブリードアウト防止性能は悪かった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のフィルムは、例えば、自動車窓貼り用フィルム、X線青味付けフィルム、ディスプレイ用途等、色剤を含有するフィルムの用途において好適に利用することができる。