【文献】
岡田 正之,スーパーストアにおける生鮮システム,技報 UNISYS TECHNOLOGY REVIEW Vol.15 No.2,日本ユニシス株式会社,1995年 8月31日,第15巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定部は、前記調理品及び未調理若しくは調理済みの前記食材が組み合わされた食料製品の数量、該食料製品を配送先若しくは食料製品毎に仕分けた仕分数量又は仕分けられた該食料製品を配送便に積載した積載数量に基づいて、決定した前記食材の出庫数量を補正するようにしてある
ことを特徴とする請求項5に記載の管理装置。
反復製造される食料製品に組み合わされる調理品とされる一又は複数種の食材を保管庫から出庫する出庫数量を管理する処理を、記憶部を有するコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記調理品の目標数量を記憶する前記記憶部に記憶された該調理品の目標数量と、前記食材から調理された調理品の調理数量との差分を算出し、
前記食材の出庫数量と、算出した調理品の差分とに基づいて、次回の調理で用いられる前記食材の出庫数量を決定し、
決定した前記食材の出庫数量を、暦又は前記食料製品を配送する配送便、該食料製品若しくは前記食材を調理品に調理する調理工程の属性に基づいて補正する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の一実施例における食品システムを、実施の形態を示す図面に基づいて説明する。本願に係る食品システムは、コンビニエンスストア(以下、コンビニと呼ぶ)、スーパーマーケット、百貨店等で販売される生鮮食品の製造及び配送を管理する情報システムである。以下では、コンビニで販売される弁当、寿司等を例に挙げて、本願に係る食品システムを説明する。
【0012】
実施の形態1
図1は、食品システム1の構成例を示すブロック図である。食品システム1は、店舗POS(point of sale system)装置2、受注管理システム3、食品製造システム4、仕分システム5及び配送便システム6を含む。店舗POS装置2と受注管理システム3とは、例えば専用回線で接続されている。また、受注管理システム3と食品製造システム4とも、例えば専用回線で接続されている。食品製造システム4、仕分システム5及び配送便システム6は、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、電話回線、衛星回線等により接続されている。
【0013】
店舗POS装置2は、コンビニのPOSに係るコンピュータである。
図1では、店舗POS装置2は、例えば3台である。しかし、店舗POS装置2は、少なくともコンビニ店舗の数だけ存在する。店舗POS装置2は、客に販売するための食料製品の発注情報を受注管理システム3に送信する。
【0014】
受注管理システム3は、店舗POS装置2からの発注情報、すなわち受注情報を管理するシステムである。受注管理システム3は、コンビニに配送される食料製品に係る製品情報も管理している。製品情報は、食料製品に含まれる調理品のアイテム及び数量、当該調理品を製造するために必要な食材のアイテム及び数量、商品名、賞味期限、販売価格等が含まれる。ここで、調理品は、ご飯、麺、パン等の主食物と、惣菜、汁、スープ等の副食物と、フルーツ、ケーキ、饅頭等のデザートとを含む。受注管理システム3は、店舗POS装置2から受信した受注情報を食品製造システム4に送信する。
【0015】
食品製造システム4は、コンビニに配送する食料製品を製造する製造作業及び製造装置を管理するシステムである。食品製造システム4は、受注管理システム3から食料製品の受注情報及び製品情報を受信する。
仕分システム5は、食品製造システム4が管理した食料製品を配送先の店舗毎又は食料製品毎に仕分ける仕分作業又は仕分装置を管理するシステムである。
配送便システム6は、店舗毎に仕分けられた食料製品を配送するトラック便を管理するシステムである。
食品製造システム4、仕分システム5及び配送便システム6は、互いに情報の送受信を行い、連携して店舗に配送する食料製品を管理している。
【0016】
食品製造システム4は、管理装置10、保管庫端末20、調理端末30及び完成システム40を含む。管理装置10、保管庫端末20、調理端末30及び完成システム40は、有線又は無線により互いに接続されている。
管理装置10は、メインフレーム、ワークステーション等のコンピュータである。管理装置10は、食料製品の製造工程全体を管理する。
【0017】
ここで、食料製品の製造工程について説明する。製造工程は、出庫工程、調理工程及び完成工程を含む。
出庫工程は、食品製造システム4の管理装置10が受信した受注情報に基づいて、食材を保管する保管庫から、食料製品の製造に必要な種類及び数量の食材を出庫する工程である。
調理工程は、出庫工程により出庫された食材を、例えば弁当に組み込まれる調理品に調理する工程である。調理工程は、更に細かく複数の工程に分割される場合が多い。
【0018】
完成工程は、調理工程により調理された調理品を組み合わせて、食料製品を完成させる工程である。完成工程は、加工工程と呼ばれることもある。完成工程は、食料製品を配送する店舗毎に又は食料製品毎に仕分ける仕分工程の直前までの工程を含み、例えばトッピング工程、検査工程、ラッピング工程及び下取り工程に細分される。
【0019】
トッピング工程は、調理工程により調理された調理品を弁当容器に盛り付ける工程である。なお、弁当容器に盛り付けられる調理品の中には、カット済み野菜、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、ピクルス等のように未調理の食材又は調理済みの食材、調理品も含まれる。そのため、調理工程を経由せずに、出庫工程から直接完成工程に移行する食材及び調理品等がある。
【0020】
検査工程は、盛り付けられた食料製品に異物が混入していないか、例えば金属探知機で検査する工程である。
ラッピング工程は、完成した食料製品を包装する工程である。ラッピング工程には、弁当の賞味期限を示すシールを包装材に貼付する作業が含まれる。
【0021】
下取り工程は、検査が終了した食料製品を番重に入れる工程である。番重は、食材、調理品、食料製品等を入れる小コンテナである。なお、本実施の形態では、各工程における食材、調理品、食料製品のカウント単位は、番重単位で行われる。ただし、カウント単位は、番重に限られず、個数、重量、体積等を単位にカウントされてもよい。
【0022】
食品製造に係る各工程のスケジューリングは、トッピング工程が始まる時点から過去に向かって逆算することにより、行なわれる。より長い調理時間を要する調理品の調理ラインほど、より早期に調理が開始される。各調理品が揃った時点で、トッピング工程、検査工程、ラッピング工程及び下取り工程が実行される。
【0023】
製造工程により製造された食料製品は、仕分工程、配送工程を経て、コンビニ等の店舗へ配送される。製造工場から各店舗までの距離は店舗毎に異なるので、配送地域に分けて配送コース、配送スケジュールが作成されている。生鮮食品には賞味期限があるため、製造工場からより遠い店舗又は配送地域に配送される食料製品ほどより早期に製造、仕分及び配送が開始されるように、優先順を付けて製造工程、仕分工程及び配送工程が組まれる。
【0024】
図1に戻り、説明を続ける。
保管庫端末20は、出庫工程に係るコンピュータであり、例えばデスクトップ型PC(パーソナルコンピュータ)、ノートブック型PC、タブレット型PC、スマートフォンである。保管庫端末20は、管理装置10から食材のアイテム及び出庫数量を受け付ける。また、保管庫端末20は、保管庫から出庫された食材のアイテム及び出庫数量に係る実績情報を管理装置10に送信する。
なお、保管庫端末20は、保管庫における食材の在庫管理全般に係る情報を処理する情報処理装置であり、保管庫に入庫される食材のアイテム及び入庫数量に係る実績情報を管理装置10に送信してもよい。
【0025】
調理端末30は、調理工程に係るコンピュータであり、例えばデスクトップ型PC、ノートブック型PC、タブレット型PC、スマートフォンである。
図1では、調理端末30は、例えば3台である。しかし、調理端末30は、少なくとも調理ラインの数だけ存在する。調理端末30は、管理装置10から調理すべき調理品のアイテム及び調理数量を受け付ける。また、調理端末30は、調理が完了した調理品のアイテム及び調理数量に係る実績情報を管理装置10に送信する。
【0026】
なお、調理工程に複数の素工程が含まれる場合、調理端末30は、各素工程における作業が完了する度に又は一定時間間隔で、管理装置10に上述の実績情報を送信する。ここで、素工程は、例えば解凍、洗浄、切断、水切り、焼き、揚げ、蒸し、煮込み、炊飯、冷却、外装殺菌、和えである。
【0027】
調理端末30は、調理が完了した調理品のアイテム及び調理数量を入力するためのスキャナを接続することができる。調理品のアイテム及び調理数量は、当該スキャナにより調理端末30に入力されてもよいし、キーボード、マウス、タッチパネル等により調理端末30に入力されてもよい。あるいは、スマートフォンを除く調理端末30にマイクを接続することにより、調理品のアイテム及び調理数量は調理端末30に音声入力されてもよい。更には、調理端末30にカメラを接続することにより、調理品のアイテム及び調理数量は調理端末30にジェスチャー入力されてもよい。
【0028】
調理品のアイテム及び調理数量は、機械により自動的に調理端末30に入力されてもよい。例えば、調理品の調理数量は、調理品の調理数量を計量するはかり、調理品の調理数量を光で検知する計量装置等で計量され、当該はかり、計量装置から調理端末30に入力されてもよい。
【0029】
完成システム40は、完成工程(トッピング工程、ラッピング工程、検査工程及び下取り工程)に係るシステムである。完成システム40は、管理装置10から調理が終了した調理品のアイテム及び製造数量を受け付ける。また、完成システム40は、加工が完了した食料製品のアイテム及び完成数量に係る実績情報を管理装置10に送信する。ここでの完成数量とは、完成工程において作業が完了した食料製品の処理実績数量である。完成システム40が管理装置10に送信する完成数量は、仕分工程に移行させることができる例えば弁当が入れられた番重の数量である。
【0030】
図2は、管理装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)(算出部、決定部、変更部)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)(記憶部)13及びハードディスク(記憶部)14を含む。また、管理装置10は、ディスクドライブ15、通信部(受付部、調理受付部)16、タイマ17、表示部18及び操作部19を含む。管理装置10の各構成部は、バス10bを介して接続されている。
【0031】
CPU11は、管理装置10の各構成部を制御するプロセッサである。CPU11は、ハードディスク14に記憶されたプログラム10PをRAM13に読み出し、当該プログラム10Pを実行する。
【0032】
ROM12は、不揮発性の半導体メモリ又は半導体メモリ以外の読み出し専用記憶媒体である。ROM12は、管理装置10の起動時にCPU11が実行するBIOS(Basic Input/Output System)、ファームウェア等を記憶している。
【0033】
RAM13は、主記憶装置である。RAM13は、CPU11による処理の過程で必要な作業変数、データ等を一時的に記憶する。なお、RAM13は、フラッシュメモリ、メモリカード等により代替されてもよい。
【0034】
ハードディスク14は、補助記憶装置である。ハードディスク14は、CPU11が実行するプログラム10Pを記憶している。ハードディスク14は、管理装置10の内部に取り付けられるものであっても、管理装置10の外部に置かれるものであってもよい。なお、ハードディスク14は、大容量の情報の記憶が可能なフラッシュメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc、登録商標)等の光ディスク10dで代替されてもよい。
【0035】
ディスクドライブ15は、外部の記憶媒体である光ディスク10dから情報を読み出し、読み出した情報を光ディスク10dに記録する記録装置である。
通信部16は、モデム又はLAN(Local Area Network)カード等である。通信部16は、受注管理システム3、食品製造システム4内の各構成部、仕分システム5及び配送便システム6と情報の送受信をする。管理装置10は、通信部16を介してインターネットにも接続されている。
【0036】
タイマ17は、計時の結果を信号としてCPU11に送信する。
表示部18は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の画面を有し、CPU11からの指示に従って、プログラム10Pに係る様々な画面を表示する。
【0037】
操作部19は、ユーザが各種の入力を行うキーボード、マウス、表示部18の画面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスである。操作部19は、ユーザによる操作に基づいて入力信号を生成する。生成された入力信号は、バス10bを介してCPU11に出力される。
【0038】
なお、CPU11は、ディスクドライブ15を介して、プログラム10Pを光ディスク10dから読み込んでもよい。CPU11は、通信部16を介して、プログラム10Pを外部の情報処理装置又は記憶装置から読み込んでもよい。さらに、プログラム10Pを記憶したフラッシュメモリ等の半導体メモリ10mが、管理装置10内に実装されていてもよい。
【0039】
次に、管理装置10の動作について説明する。
図3は、管理装置10の機能構成例を示す機能ブロック図である。管理装置10の各機能部は、ハードディスク14に記憶されたプログラム10Pと、CPU11、RAM13等のハードウェア資源とが協働して動作することにより実現される。
【0040】
管理装置10は、出庫数量受付部(受付部)101、出庫数量記憶部102、調理数量受付部(調理受付部)103及び調理数量記憶部104を含む。出庫数量受付部101は、保管庫から出庫された食材のアイテム及び出庫数量を保管庫端末20から受け付ける機能部である。出庫数量受付部101が受け付ける出庫数量は、調理中又は調理後の調理品にロス(損失)が発生した場合を見込んだ食材の数量である。以下、食材、調理品及び食料製品の見込みロス数量を安全数量という。
【0041】
出庫数量記憶部102は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。出庫数量記憶部102は、出庫数量受付部101が受け付けた食材のアイテム及び出庫数量を記憶する。調理数量受付部103は、調理が完了した調理品のアイテム及び調理数量を調理端末30から受け付ける機能部である。調理工程に複数の素工程が含まれる場合、調理数量受付部103は、素工程毎に調理品の調理数量を受け付ける。例えば、調理品がエビフライである場合、その調理工程は、冷凍エビの解凍工程、複数種の衣を解凍したエビに付ける工程、食用油で衣を付けたエビを揚げる工程等がある。
【0042】
調理数量記憶部104は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。調理数量記憶部104は、調理数量受付部103が受け付けた、調理が完了した調理品のアイテム及び調理数量を記憶する。
【0043】
管理装置10は、各種情報記憶部105、目標数量算出部106及び目標数量記憶部(記憶部)107を含む。各種情報記憶部105は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。各種情報記憶部105が記憶している内容は、食料製品に係る製品情報、調理工程のレシピ、食材、調理品、食料製品毎の安全数量、暦、各種テーブル等である。暦は、一年中の月・日・曜日、祝祭日、季節、日出・日没、月の満ち欠け、日食・月食、また主要な故事・行事などを、日を追って記載したものである。
【0044】
目標数量算出部106は、調理されるべき調理品の目標数量を算出する機能部である。目標数量算出部106は、受注管理システム3から受注情報を受信する。目標数量算出部106は、各種情報記憶部105を参照して、受信した受注情報に含まれる食料製品の受注数量から調理されるべき調理品の目標数量を算出する。その際、目標数量算出部106は、製造ロスを勘案し、食料製品の受注数量に対応する調理品の数量に調理品の安全数量を加算した値を調理品の目標数量とする。なお、目標数量算出部106は、調理工程に複数の素工程が含まれる場合、素工程毎に調理品の目標数量を算出する。
【0045】
目標数量記憶部107は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。目標数量記憶部107は、目標数量算出部106が算出した調理されるべき調理品の目標数量を記憶する。
【0046】
管理装置10は、差分算出部(算出部)108、差分履歴記憶部109、出庫数量決定部(決定部)110及び出力部111を含む。差分算出部108は、調理数量記憶部104及び目標数量記憶部107を参照し、調理品毎に調理数量と目標数量との差分、すなわち各調理品の過不足数量を算出する機能部である。差分履歴記憶部109は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。差分履歴記憶部109は、差分算出部108が算出した調理品の差分を調理品毎に記憶する。差分履歴記憶部109は、タイマ17の計時に係るタイムスタンプと共に、調理品の差分を時系列で記憶する。
【0047】
出庫数量決定部110は、次回の調理工程で使用される食材を保管庫から出庫する出庫数量を食材毎に決定する機能部である。
出庫数量決定部110は、出庫数量記憶部102及び差分履歴記憶部109を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量を下回る場合、調理品の不足数量に対応する食材の数量を求める。出庫数量決定部110は、今回の出庫工程における食材の出庫数量に、求めた食材の数量を加算した数量を、次回の出庫工程における食材の出庫数量に決定する。
出庫数量決定部110は、出庫数量記憶部102及び差分履歴記憶部109を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量を上回る場合、調理品の過剰数量に対応する食材の数量を求める。出庫数量決定部110は、今回の出庫工程における食材の出庫数量から、求めた食材の数量を減算した数量を、次回の出庫工程における食材の出庫数量に決定する。
【0048】
出力部111は、出庫数量決定部110が決定した出庫数量を食材毎に保管庫端末20に出力する機能部である。出力部111が保管庫端末20に出力した食材毎の出庫数量は、保管庫端末20の表示部に表示される。作業員又は作業ロボットは、次回の出庫工程において、保管庫端末20の表示部に表示される食材毎の出庫数量に応じて、保管庫から食材を出庫する。このようにして、保管庫から出庫される食材の出庫数量は、調理品の調理数量と調理品の目標数量との差分に基づいて、管理装置10又は食品製造システム4によりフィードバック制御される。
【0049】
なお、
図3の機能ブロック図に示した出庫数量記憶部102等の記憶部は、RAM13又はハードディスク14の他に、通信部16及び通信ネットワークを介して接続された記憶装置又は情報処理装置のハードディスク等でもよい。また、出庫数量記憶部102等の記憶部は、ディスクドライブ15を介して読み書き可能な光ディスク10dでもよい。更には、出庫数量記憶部102等の記憶部は、管理装置10に接続可能なUSBメモリ、メモリカード等でもよい。
【0050】
出庫数量決定部110は、補正部110rを含む。
図4は、補正部110rの機能を概念的に示す説明図である。
補正部110rは、出庫数量決定部110が食材毎に決定した出庫数量を、各種情報記憶部105に記憶された補正テーブル110T及び差分履歴記憶部109の内容に基づいて、補正する機能部である。出力部111は、補正部110rが補正した食材の補正済み出庫数量を食材毎に保管庫端末20に出力する。
【0051】
まず、補正テーブル110Tを用いて、補正部110rが出庫数量決定部110により食材毎に決定された出庫数量を補正する場合について説明する。その後、差分履歴記憶部109を参照して、補正部110rが出庫数量決定部110により食材毎に決定された出庫数量を補正する場合について説明する。
【0052】
図5は、補正テーブル110Tのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。補正テーブル110Tは、補正対象列及び補正係数列を含む。補正対象列は、食料製品の各調理品の属性である。補正係数列は、補正部110rが食材の出庫数量を補正するための数値である。
補正対象列の属性には大区分と小区分とがある。補正対象列の大区分は、例えば調理工程、調理ライン、米、食料製品アイテム、暦、時間帯、配送便及び天候を含む。
【0053】
調理工程に対応する小区分は、解凍、洗浄、切断等の調理内容である。調理工程で発生する食材又は調理品のロスは、調理内容によって異なる。例えば、エビフライを調理する場合、冷凍エビの解凍工程と、衣を付けたエビを揚げる工程とでは、食材又は調理品のロス発生率が異なる。そこで、補正テーブル110Tには、調理内容と補正係数とが対応付けて記憶されている。
【0054】
調理ラインに対応する小区分は、細分化された調理ラインの識別情報(例えば、調理ラインの名称、記号等)である。調理ラインで作業する一又は複数人の作業員の作業特性は、調理ライン毎に異なる。また、調理に使用される機械の特性も調理ライン毎に異なる。そのため、食材又は調理品のロス発生率は、調理ラインに応じて異なる。そこで、補正テーブル110Tには、調理ラインと補正係数とが対応付けて記憶されている。
【0055】
米に対応する小区分は、新米及び古米である。新米と古米とは水分含有量が異なる。そのため、新米と古米との炊きあがり時の重量は異なる。また、炊飯前に米を水に浸す時間、炊飯に用いられる水の量、加熱時間、蒸し時間等も、新米と古米とでは異なる場合がある。そのため、米又はご飯のロス発生率は、新米と古米とでは異なる。そこで、補正テーブル110Tには、米の種別と補正係数とが対応付けて記憶されている。
【0056】
なお、米は新米、古米の区別の他に、産地、品種等の食材としての重要な属性を有しているので、補正テーブル110Tは新米及び古米以外の米の属性と補正係数とを対応付けて記憶してもよい。また、ここでの米は、主食の一例を挙げている。そのため、地域によって主食が異なることを考慮して、小麦粉、パン、ジャガイモ、麺等の属性が補正テーブルの補正対象列に追加されてよい。
【0057】
食料製品アイテムに対応する小区分は、具体的な商品名である。商品毎に、商品に含まれる調理品が異なる。例えば同じおにぎりでも、通常のおにぎりと、特上おにぎりとでは、使用される食材及び調理内容の詳細が異なる。そのため、例えばおにぎりに組み込まれる食材又は調理品のロス発生率は、商品毎に異なる。そこで、補正テーブル110Tには、商品名と補正係数とが対応付けて記憶されている。
【0058】
暦に対応する小区分は、様々な時間単位である。コンビニで販売される生鮮食品の種類と売上量とは、暦によって異なる場合がある。例えば、ビジネス街に位置するコンビニでは、1日当たりの売上は平日に多く、土日祝日は少ない。そのため、ビジネス街に位置するコンビニを配送先の大半とする配送便のための生鮮食品は、平日により多く製造される。調理数量の大小により食材、調理品又は食料製品のロス発生率は異なることから、平日か否かでこれらのロス発生率は異なる。そこで、補正テーブル110Tには、暦に対応する様々な時間単位と補正係数とが対応付けて記憶されている。なお、
図5では、暦の一例を挙げている。例えば、平日は更に曜日毎に区分されてもよいし、季節は月毎に区分されてもよい。
【0059】
時間帯に対応する小区分は、1日の例えば午前及び午後である。作業員が午前と午後とにまたがって作業を継続する場合、作業員の疲労度は1日の時間帯で異なる。そのため、食材、調理品又は食料製品のロス発生率は、1日の時間帯に応じて異なる。そこで、補正テーブル110Tには、時間帯と補正係数とが対応付けて記憶されている。なお、1日の時間帯の区分け方法は、午前及び午後に限られるものではなく、時刻で2つ乃至3つ以上に区切られてもよい。
【0060】
配送便に対応する小区分は、トラック便の配送時間帯及びドライバーである。例えば日本のコンビニには1日の間に食料製品が3回配送され、夫々の配送に対応するトラック便を、1便、2便及び3便と呼んでいる。
図5の例では、便数とトラックのドライバーとをハイフンで結合している。便数によって、配送される食料製品の種類と数量とは異なる。このことに起因して、調理品がどの便で配送される食料製品に組み合わされるかということから、便に対応する食材、調理品又は食料製品毎にロス発生率が異なる。また、ドライバー毎に、作業特性の違いから配送中に生じる食料製品のロス発生率が異なる。そこで、補正テーブル110Tには、便数及びドライバーと補正係数とが対応付けて記憶されている。勿論、便数及びドライバーは、別々に補正係数と対応付けて補正テーブル110Tに記憶されてもよい。
【0061】
天候に対応する小区分は、具体的な天候名である。例えば日本列島の太平洋岸では降雪が珍しいため、大雪時に物流、交通機関等が停止又は停滞する傾向がある。かかる場合、食材の入荷数量、食材の品質、製造工場へ出勤する作業員の人数、配送便の運行状況等に変動が生じ、延いては食材、調理品及び食料製品のロス発生率が変化する。そこで、補正テーブル110Tには、天候名と補正係数とが対応付けて記憶されている。なお、天候に類似する突発的な現象が、ロス発生率を変化させる要因となり得る場合、当該現象及びそれに対応する補正係数も補正テーブル110Tに追加されてよい。当該現象は、例えば地震、火山噴火、社会運動等である。
【0062】
補正部110rは、処理対象の食材、調理品又は食料製品に対応する補正テーブル110Tの小区分毎に、小区分に対応する補正係数を出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量に、例えば乗算する。その際、補正部110rは、補正テーブル110Tの内容の全てを利用してもよいし、1レコードだけを利用してもよい。
【0063】
あるいは、補正部110rは、補正テーブル110Tの複数レコードを組み合わせて利用してもよい。例えば、日本のコンビニでは、節分の日に限り恵方巻という食料製品が大量に販売される。そのため、製造工場では恵方巻製造のために特別な製造シフト体制が導入される場合があり、その結果として恵方巻の食材、調理品又は恵方巻自体のロス発生率が変化する。そこで、補正部110rは、補正テーブル110Tにおける食料製品アイテムの恵方巻に対応する補正係数と、暦の節分に対応する補正係数とをリンクして、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量を補正してもよい。
同様に、例えば時間帯の補正係数と配送便の補正係数とは、組み合わせて利用されてよい。
【0064】
次に、補正部110rが差分履歴記憶部109を参照して、出庫数量決定部110により食材毎に決定された出庫数量を補正する場合について説明する。
図6は、調理数量の時間変化を示す説明図である。
図6において、横軸は時間を、縦軸は調理品の調理数量を示している。
図6における受注数量は、食料製品の受注数量に対応する調理品の数量である。換言すると、
図6における受注数量は、受注した数量の例えば弁当に含まれる調理品の数量である。
例えば、1便に積載される、ある弁当のある調理品を調理した場合、調理数量受付部103はその調理品の調理数量を受け付け、受け付けた調理品の調理数量を調理数量記憶部104に記憶する(
図3参照)。
【0065】
差分算出部108は、調理数量記憶部104から読み出した調理品の調理数量と、目標数量記憶部107から読み出した調理品の目標数量とを比較し、調理品の差分を算出する。差分算出部108が算出した調理品の差分は、差分履歴記憶部109に記憶される。出庫数量決定部110は、差分算出部108が算出した調理品の差分に基づいて、次の2便に積載される同じ弁当の同じ調理品に関する食材の出庫数量を決定する。出力部111は、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量を保管庫端末20に出力する。作業員又は作業ロボットは、保管庫端末20に出力された出庫数量の食材を保管庫から出庫する。こうして、調理工程で取得された情報が出庫工程へフィードバックされる。
【0066】
例えばPID(Proportional Integral Derivative)制御のようなフィードバック制御により入力値が変更された場合、出力値は目標値に近づいていく。同様に、管理装置10又は食品製造システム4によるフィードバック制御により、調理品の調理数量は調理品の目標数量に近づいていく。
図6は、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収束していく様子を概念的に描いた図である。出庫数量決定部110が調理品の差分に基づいて食材の出庫数量を決定することにより、調理品の調理数量は調理品の目標数量に対してオーバーシュートとアンダーシュートとを繰り返し、調理品の目標数量に近づいていく。
図6における2本のドット線は調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂していく様子を表している。
【0067】
しかし、調理品の調理数量は必ず調理品の目標数量に収斂するとは限らない。生鮮食品の場合、他の工業製品と異なり、例えば補正テーブル110Tの補正対象列に挙げた様々な要因が複雑に関係し合い、ロスの発生を制御することが困難だからである。例えば、次便のための調理工程における調理品の調理数量が
図6において×印で示した数量であった場合、調理品の調理数量は収束から発散に転じてしまう。
【0068】
そこで、補正部110rは、差分履歴記憶部109を参照し、個々の調理品毎に調理数量の振幅幅の時間変動を算出する。この時間変動は、
図6における2本のドット線の縦幅変化に対応する。補正部110rは、算出した調理品の調理数量の振幅幅の時間変動を未来に外挿し、次回の調理工程における調理品の調理数量の範囲を予測する。補正部110rは、調理が行なわれ、実績値としての調理品の調理数量が予測した調理品の調理数量の範囲内にある場合、何もしない。他方、補正部110rは、次回の調理工程における調理品の調理数量が予測した調理品の調理数量の範囲外にある場合、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量を補正する。具体的には、補正部110rは以下の処理を実行する。
【0069】
調理品の調理数量が予測調理数量範囲を逸脱して調理品の目標数量を下回った場合、出庫数量決定部110は、食材の出庫数量に調理品の不足数量に対応する食材の数量を加算した数量を、次回の出庫工程における食材の出庫数量に決定する。その後、補正部110rは、決定された食材の出庫数量に補正値を加算又は乗算して、決定された食材の出庫数量をより大きな数量に変換し、変換した食材の出庫数量を出力部111に出力する。ここでの補正値は、予め決められた一定値でもよいし、例えば予測調理数量範囲の大きさに応じた値でもよい。
【0070】
調理品の調理数量が予測調理数量範囲を逸脱して調理品の目標数量を上回った場合、出庫数量決定部110は、食材の出庫数量から調理品の過剰数量に対応する食材の数量を減算した数量を、次回の出庫工程における食材の出庫数量に決定する。その後、補正部110rは、決定された食材の出庫数量に補正値を減算又は除算して、決定された食材の出庫数量をより小さな数量に変換し、変換した食材の出庫数量を出力部111に出力する。ここでの補正値は、上記の補正値と同じである。
【0071】
このように、補正部110rは、調理品の調理数量がより早期に予測調理数量範囲内に戻るように、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量を補正する。
【0072】
図7は、出庫数量に係るフィードバック制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
CPU11は、食材の出庫数量を受け付ける(ステップS11)。CPU11は、調理品の目標数量をハードディスク14から読み出す(ステップS12)。CPU11は、調理された調理品の調理数量を受け付ける(ステップS13)。CPU11は、読み出した調理品の目標数量と、受け付けた調理品の調理数量との差分を算出する(ステップS14)。
【0073】
CPU11は、調理品の目標数量に対して調理品の調理数量が不足しているか否かを判定する(ステップS15)。CPU11は、調理品の目標数量に対して調理品の調理数量が不足していると判定した場合(ステップS15:YES)、不足する調理品の調理数量に対応する食材の数量を、受け付けた食材の出庫数量に加算し、加算した出庫数量を食材の出庫数量に決定する(ステップS16)。CPU11は、調理品の目標数量に対して調理品の調理数量が不足していないと判定した場合(ステップS15:NO)、過剰な調理品の調理数量に対応する食材の数量を、受け付けた食材の出庫数量から減算し、減算した出庫数量を食材の出庫数量に決定する(ステップS17)。
【0074】
CPU11は、ハードディスク14に記憶された補正テーブル110T又は差分履歴に基づいて、決定した食材の出庫数量を補正する補正処理を実行する(ステップS18)。CPU11は、補正した食材の出庫数量を保管庫端末20に出力し(ステップS19)、処理を終了する。
なお、CPU11は、補正処理(ステップS18)を実行してから、食材の出庫数量を決定する処理(ステップS15〜ステップS17)をしてもよい。
【0075】
図8は、補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
CPU11は、処理している調理品が、タイマ17の計時、食材(例えば米)、調理品、調理工程、調理ライン、食料製品、当該食料製品を配送する配送便、天候等について、補正テーブル110Tのレコードに対応する調理品か否かを判定する(ステップS21)。CPU11は、補正テーブル110Tのレコードに対応する調理品でないと判定した場合(ステップS21:NO)、ステップS23に処理を移す。CPU11は、補正テーブル110Tのレコードに対応する調理品であると判定した場合(ステップS21:YES)、決定した食材の出庫数量に、処理している調理品が補正テーブル110Tのレコードに対応する補正係数を例えば乗算する(ステップS22)。
【0076】
CPU11は、ハードディスク14から処理対象の調理品に係る差分履歴を読み出す(ステップS23)。CPU11は、調理品の調理数量について、差分履歴から振幅幅の時間変動を算出する(ステップS24)。CPU11は、算出した振幅幅の時間変動を未来に外挿し、次回の調理工程における調理品の調理数量の範囲を算出する(ステップS25)。CPU11は、算出した次回の調理工程における調理品の調理数量の範囲をハードディスク14に記憶し(ステップS26)、処理を終了する。
なお、CPU11は、ステップS21〜ステップS22の処理と、ステップS23〜ステップS26の処理との両方を実行してもよいし、一方のみを実行してもよい。
【0077】
図9は、ステップS26以降の補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図9は、ステップS23〜ステップS26が実行された場合、CPU11がステップS26でハードディスク14に記憶した調理品の調理数量の範囲を利用して、次回の調理工程で補正処理を実行する場合の処理の手順の一例である。
【0078】
CPU11は、ハードディスク14から処理対象の調理品に係る調理数量の範囲を読み出す(ステップS31)。CPU11は、受け付けた調理品の調理数量が、読み出した調理数量の範囲にあるか否かを判定する(ステップS32)。CPU11は、受け付けた調理品の調理数量が、読み出した調理数量の範囲にあると判定した場合(ステップS32:YES)、処理を終了する。
【0079】
CPU11は、受け付けた調理品の調理数量が、読み出した調理数量の範囲にないと判定した場合(ステップS32:NO)、食材の出庫数量が予測調理数量範囲内に入るように、決定した食材の出庫数に一定の補正値を例えば加算又は減算し(ステップS33)処理を終了する。
【0080】
次に、調理工程で調理された調理品が受注した食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回った場合、調理品を補充製造するための食材の出庫数量を、管理装置10が保管庫端末20に出力する動作について説明する。
【0081】
出庫数量決定部110は、差分履歴記憶部109を参照して、差分算出部108により調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回る負の差分が算出されたか否かを判定する。すなわち、出庫数量決定部110は、調理工程で調理された調理品が受注した食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回ったか否かを判定する。
【0082】
出庫数量決定部110は、調理工程で調理された調理品が受注した食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回ったと判定した場合、調理品の不足数量に対応する食材の数量を算出する。そして、出庫数量決定部110は、算出した食材の数量を出庫数量として、出力部111に出力する。そして、出力部111は、早急に保管庫端末20に食材のアイテム及び出庫数量を出力する。その際、出力部111は、作業員に注意を喚起させるために、アラート情報を同時に保管庫端末に出力してもよい。
【0083】
なお、出庫数量決定部110は、調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回ることが確定する前に、調理品の不足数量を推定し、推定した調理品の不足数量に対応する食材の数量を算出してもよい。
例えば、調理数量受付部103が1回の調理工程の間に複数回に分けて同一調理品の調理数量を受け付けた場合、調理数量受付部103は、複数回に分けて調理品の調理数量を調理数量記憶部104に記憶する。かかる場合、目標数量算出部106は、1回の調理工程における時間スケジュールに基づいて、複数回に分けて調理される調理品の目標数量を算出し、算出した調理品の目標数量を目標数量記憶部107に記憶する。
【0084】
差分算出部108は、1回の調理工程の間に複数回に分けて調理数量記憶部104に調理品の調理数量が記憶された場合、その都度目標数量記憶部107を参照して、調理品の差分を算出する。差分算出部108は、算出した差分を1回の調理工程の間に複数回に分けて差分履歴記憶部109に記憶する。
【0085】
出庫数量決定部110は、調理数量記憶部104又は差分履歴記憶部109を参照して、調理品の調理数量の時間的累積量変化を求める。出庫数量決定部110は、求めた調理品の調理数量の時間的累積量変化を未来に外挿し、調理工程における最終的な調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回るか否かを判定する。その際、出庫数量決定部110は、調理工程の時間スケジュールを利用して、調理工程における最終的な調理品の調理数量を推定してもよい。
【0086】
出庫数量決定部110は、調理工程における最終的な調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回ると判定した場合、調理品の不足数量と、不足分の当該調理品を調理するために必要な食材の出庫数量とを算出する。出庫数量決定部110は、算出した食材の出庫数量を調理品のアイテムと共に、出力部111へ出力する。
【0087】
なお、調理工程が複数の素工程からなる場合、管理装置10は、素工程の調理単位毎に、上述の調理品の不足数量に対応する食材の出庫数量を保管庫端末20に出力してもよい。出庫数量決定部110は、例えばエビフライを製造する調理工程において、冷凍エビの解凍数量に係る時間的累積量変化を求める。出庫数量決定部110は、求めた時間的累積量変化から冷凍エビの解凍数量がエビフライを含む食料製品の受注数量に対応する数量を下回ると判定した場合、冷凍エビの出庫数量を出力部111へ出力する。
【0088】
調理品が計画された調理スケジュール通りに製造されていない場合、食材又は調理品のロス、調理ラインでの人的又は機械的なトラブル等が予想される。1回の調理工程の途中に管理装置10から保管庫端末20へ食材の出庫数量が出力された場合、保管庫管理担当者は事態が悪化する前に早期の対応を取ることができる。
【0089】
上述では、管理装置10は、食材の出庫数量を保管庫端末20に出力した。しかし、管理装置10は、調理品の差分又は食材の出荷数量を例えば受注管理システム3、調理端末30、完成システム40、仕分システム5及び配送便システム6に出力してもよい。これにより、調理工程におけるロスの発生率又は発生頻度を食品システム1全体で共有化することができる。
【0090】
管理装置10によれば、食料製品の製造数量を柔軟に調整し、製造コストを低減することができる。
食材又は調理品のロスに起因して調理品の調理数量が一定値に安定しない場合、食料製品を過剰に製造している可能性がある。かかる場合、製造コストの上昇を招来せしめる。しかし、管理装置10は、調理した調理品の調理数量と調理品の目標数量との差分に基づいて、調理数量が目標数量と一致するように、次回の調理工程で使用される食材の出庫数量を調整する。その結果、調理品の調理数量は目標数量に近づき、ひいては調理品が組み合わされた弁当、サンドイッチ等の食料製品の数量も目標数量に近づいていく。これにより、管理装置10は、食料製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【0091】
管理装置10は、調理工程の終了段階で次回の調理工程に使用される食材の出庫数量を決定する。そのため、管理装置10は、完成工程、仕分工程及び積載工程の終了を待つことなく、スピーディーに出庫工程準備を完了させることができる。
【0092】
管理装置10は、調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回った場合、早急に不足する調理品を追加調理するための食材の出庫数量を保管庫端末20に出力する。これにより、管理装置10は、製造される食料製品の数量が受注数量を下回るというリスクを早急に回避することができる。
【0093】
管理装置10が保管庫端末20に出力する食材の出庫数量は、食材の在庫管理に利用されてもよい。保管庫のスペースには限りがあり、食材には賞味期限がある。そのため、食品製造にとって必要最小限度の食材を保管することが望ましい。管理装置10は、食材の出庫作業が始まる前に、保管庫端末20に食材の出庫数量を事前通知する。そのため、食品製造システム4の下、作業員は保管庫への食材の入庫数量を把握することが容易となる。このことは、食材の発注業務の効率化にも役立つ。
【0094】
実施の形態2
実施の形態2は、完成工程で完成された食料製品の数量、店舗別若しくは食料製品別に仕分けた仕分済みの食料製品の数量又は仕分けた食料製品を配送便トラックに積載した積載数量に基づいて、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量を補正する形態に関する。
なお、実施の形態2において、実施の形態1と同様である構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
例えばコンビニで販売されるおにぎり、弁当等の生鮮食品のロスは、売れ残りに係るロスを除外した場合、出庫工程からはじまり、商品である食料製品がコンビニの棚に配置されるまでの間に発生する。実施の形態2に係る管理装置10は、製造工程に含まれる完成工程と、製造工程に含まれない仕分工程及び配送工程とを考慮して、食材の出庫数量を決定する。
【0096】
図10は、管理装置10の機能構成例を示す機能ブロック図である。管理装置10の各機能部は、ハードディスク14に記憶されたプログラム10Pと、CPU11、RAM13等のハードウェア資源とが協働して動作することにより実現される。
【0097】
管理装置10は、完成数量受付部112、完成数量記憶部113、仕分数量受付部114、仕分数量記憶部115、積載数量受付部116及び積載数量記憶部117を含む。完成数量受付部112は、加工が完了した食料製品のアイテム及び完成数量に係る実績情報を、完成システム40から受け付ける機能部である。完成数量記憶部113は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。完成数量記憶部113は、完成数量受付部112が受け付けた食料製品のアイテム及び完成数量に係る実績情報を記憶する。
【0098】
仕分数量受付部114は、店舗毎又は食料製品別の仕分が終了した食料製品のアイテム及び仕分数量を、仕分システム5から店舗別又は食料製品別に受け付ける機能部である。仕分数量記憶部115は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。仕分数量記憶部115は、仕分数量受付部114が受け付けた仕分済み食料製品のアイテム及び仕分数量を店舗別又は食料製品別に記憶する。
【0099】
積載数量受付部116は、食料製品を配送するトラック便に積載された店舗別の食料製品のアイテム及び積載数量を、配送便システム6から店舗別かつトラック便別に受け付ける機能部である。積載数量記憶部117は、RAM13又はハードディスク14に対応する機能部である。積載数量記憶部117は、積載数量受付部116が受け付けたトラック便に積載された店舗別の食料製品のアイテム及び積載数量を店舗別かつトラック便別に記憶する。
【0100】
各種情報記憶部105には、完成工程、仕分工程及び積載工程で夫々発生する完成食料製品のロスに対応する加工安全数量、仕分安全数量及び積載安全数量が記憶されている。目標数量算出部106は、受注管理システム3から受信した受注情報と、各種情報記憶部105に記憶された加工安全数量、仕分安全数量及び積載安全数量とに基づいて、完成工程、仕分工程及び積載工程の各終了時における食料製品の目標数量を算出する。
【0101】
なお、目標数量算出部106は、仕分工程における食料製品の目標数量を、食料製品別及び店舗別に算出する。また、目標数量算出部106は、積載工程における食料製品の目標数量を、食料製品別、店舗別及びトラック便別に算出する。
目標数量記憶部107は、目標数量算出部106が算出した完成工程、仕分工程及び積載工程の終了時における食料製品の目標数量を夫々記憶する。
【0102】
差分算出部108は、完成数量記憶部113、仕分数量記憶部115及び積載数量記憶部117と、目標数量記憶部107とを参照する。差分算出部108は、完成工程、仕分工程及び積載工程の各終了時における食料製品の処理実績数量と、食料製品の目標数量とから、食料製品に含まれる各調理品の差分、すなわち各調理品の過不足数量を夫々算出する。
【0103】
差分算出部108は、完成工程に係る各調理品の差分を差分履歴記憶部109に記憶する。差分算出部108は、仕分工程に係る食料製品別及び店舗別の上記差分を夫々差分履歴記憶部109に記憶する。差分算出部108は、積載工程に係る食料製品別、店舗別及びトラック便別の上記差分を夫々差分履歴記憶部109に記憶する。
【0104】
補正部110rは、差分履歴記憶部109を参照し、出庫数量決定部110が決定した次回の調理工程で調理される食材の出庫数量を食材毎に補正する。
補正部110rは、完成工程、仕分工程及び積載工程を通して、食料製品の処理実績数量が食料製品の目標数量を下回る場合、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量に、食料製品の不足数量に対応する食材の数量を加算する。
補正部110rは、完成工程、仕分工程及び積載工程を通して、食料製品の処理実績数量が食料製品の目標数量を上回る場合、出庫数量決定部110が決定した食材の出庫数量から、食料製品の過剰数量に対応する食材の数量を減算する。
補正部110rは、補正した各食材の出庫数量を出力部111に出力する。
【0105】
図11は、出庫数量に係る補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図11では、
図7におけるステップS11からステップS18の処理を省略している。
CPU11は、完成システム40、仕分システム5及び配送便システム6から、完成工程、仕分工程及び積載工程における各作業が完了した食料製品のアイテム及び完成数量を夫々受け付ける(ステップS41)。ここでの完成数量とは、完成工程、仕分工程及び積載工程において各作業が完了した食料製品の処理実績数量である。CPU11は、各工程終了時における食料製品の目標数量をハードディスク14から読み出す(ステップS42)。
【0106】
CPU11は、読み出した食料製品の目標数量及び製品情報と、受け付けた食料製品の完了数量とに基づいて、各工程終了時での食料製品に含まれる調理品の差分を夫々算出する(ステップS43)。CPU11は、完成工程、仕分工程及び積載工程での食料製品に含まれる調理品の各差分をこれら三工程でマージして、補正用の調理品の差分を算出する(ステップS44)。CPU11は、算出した補正用の調理品の差分を用いて、既に決定及び補正した食材の出庫数量(
図7のS15〜S18参照)を更に補正する(ステップS45)。CPU11は、補正した食材の出庫数量を保管庫端末20に出力し(ステップS46)、処理を終了する。
【0107】
上述では、CPU11は、完成工程、仕分工程及び積載工程における調理品の差分を三工程でマージして、補正用の差分を算出した。しかし、CPU11は、完成工程、仕分工程及び積載工程のうち、いずれか1つの工程又は選択された2つの工程における差分をマージして、補正用の調理品の差分を算出してもよい。すなわち、管理装置10が処理対象に入れない工程があってもよい。
例えば、ロスがほとんど発生しないことが経験的に判明している工程では、処理実績数量の受け付け、差分の算出がスルーされてもよい。これにより、処理がスルーされる工程では、食品製造システム4への処理実績数量の入力操作が省略されるので、その分だけ作業時間を短縮することができる。
【0108】
完成工程は、トッピング工程、検査工程、ラッピング工程及び下取り工程の素工程に分かれている。そこで、食料製品の処理実績数量と、食料製品の目標数量との差分に基づく食材の出庫数量のフィードバック処理は、完成工程の場合、素過程毎に実行されてよい。これにより、フードバック処理による食料製品の処理実績数量を食料製品の目標数量に収束させる精度の向上を図ることができる。
【0109】
仕分工程は、食料製品を最終的に配送先の店舗別に仕分ける。しかし、食料製品が最終的に店舗別に仕分けられる前段階では、完成食料製品は食料製品別に仕分けられてもよい。かかる場合、管理装置10は、食料製品別に仕分けられた段階と、店舗別に仕分けられた最終段階との各段階で夫々仕分数量を受け付ける。管理装置10は、受注情報及び各仕分段階の仕分安全数量に基づいて、各仕分段階での食料製品の目標数量を算出する。管理装置10は、仕分段階毎に受け付けた食料製品の仕分数量と、算出した食料製品の目標数量とから当該食料製品に含まれる調理品の差分を算出し、算出した差分を補正用の調理品の差分に用いる。
これにより、仕分工程の複雑化、仕分先店舗数の増大、仕分対象である食料製品のアイテム数の増大等に対して、食品製造システム4は柔軟に対応することが可能となる。
【0110】
管理装置10によれば、調理工程に加えて、完成工程、仕分工程及び積載工程で処理された食料製品数に応じて、食材の出庫数量を調整することができる。そのため、製造工場におけるトータルなロスの変動を一定数量に収斂させることができる。
出庫工程、調理工程、完成工程、仕分工程及び積載工程の各工程で食材、調理品、食料製品のロスが発生し得る。発生したロスの数は各工程の進行につれて累積されていく。管理装置10は、工程毎に調理品の差分を算出し、その結果を反映した食材の出庫数量を保管庫端末20に出力することで、各工程における食材、調理品又は食料製品の処理実績数量を各々の目標数量に収束させることができる。すなわち、各工程において食材、調理品又は食料製品の処理実績数量の時間的バラツキがなくなる。これにより、例えば前工程からの食材、調理品又は食料製品の供給が途絶えた場合に生じる作業の待ち状態がなくなる。また、各工程での食材、調理品又は食料製品の処理実績数量が一定になることで、管理装置10は各工程における作業時間の短縮、最適化を実現することができる。
【0111】
実施の形態3
実施の形態3は、調理される調理品の目標数量を変更する形態に関する。
なお、実施の形態3において、実施の形態1、2と同様である構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0112】
管理装置10は、目標数量変更部(変更部)118を含む(
図10参照)。目標数量変更部118は、目標数量記憶部107に記憶されている調理品の目標数量を変更する機能部である。目標数量変更部118は、差分履歴記憶部109を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂したか否かを判定する。目標数量変更部118は、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂したと判定した場合、次の処理を実行する。すなわち、目標数量変更部118は、各種情報記憶部105に記憶された調理品の安全数量よりも一定数量だけ小さい調理品の安全数量を用いて、目標数量記憶部107に記憶された調理品の目標数量をより小さい値に変更する。差分算出部108は、目標数量変更部118が変更した調理品の目標数量を用いて、調理品の差分を算出する。
【0113】
図12は、目標数量変更処理の手順の一例を示すフローチャートである。
CPU11は、ハードディスク14に記憶された調理品の差分履歴を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂したか否かを判定する(ステップS51)。CPU11は、ハードディスク14に記憶された調理品の差分履歴を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂していないと判定した場合(ステップS51:NO)、ステップS51に処理を戻す。
【0114】
CPU11は、ハードディスク14に記憶された調理品の差分履歴を参照し、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂したと判定した場合(ステップS51:YES)、ハードディスク14に記憶された調理品の安全数量から一定数量を減算する(ステップS52)。CPU11は、減算された調理品の安全数量を用いて、調理品の目標数量を算出する(ステップS53)。CPU11は、ハードディスク14に記憶された調理品の目標数量を、算出した目標数量で書き換え(ステップS54)、処理を終了する。
【0115】
なお、ステップS53において、CPU11は、ハードディスク14(各種情報記憶部105)に記憶された調理品の安全数量を、ステップS52で減算した調理品の安全数量で書き換えてもよい。また、CPU11は、調理品の目標数量を変更した場合、
図7のステップS12において、書き換えられた調理品の目標数量をハードディスク14(各種情報記憶部105)から読み出す。
【0116】
図13は、目標数量の変更を示す説明図である。
図13において、横軸は時間を、縦軸は調理品の調理数量を示している。調理工程、完成工程、仕分工程又は積載工程で取得された調理品の差分に基づく食材の出庫数量が出庫工程へフィードバックされる。時間の経過と共に、調理品の調理数量は目標数量に収斂する。かかる場合、CPU11は、調理品の安全数量を一定数量だけ小さい値に変更する。これにより、食材の購入経費が減少するため、管理装置10は製造コストを低減することができる。
【0117】
なお、調理品の調理数量が食料製品の受注数量に対応する調理品の数量を下回るリスクを回避するために、調理品の調理数量が当初の目標数量に収斂し、食料製品の製造サイクルが安定した場合にのみ、管理装置10は調理品の目標数量を引き下げてもよい。また、管理装置10は、調理品の調理数量が調理品の目標数量よりも低い数量に収斂した場合、調理品の目標数量を一定数量だけ引き上げてもよい。調理品の調理数量が制御すべき調理品の目標数量より低い値に収斂することは、製造コスト上好ましいが、システム上好ましくなく、食料製品の完成数が食料製品の受注数量を下回るリスクがあるからである。かかる場合、管理者は管理装置10の処理動作を解析する。
【0118】
上述では、調理品の調理数量が調理品の目標数量に収斂した場合、調理品の目標数量を変更する場合について説明した。しかし、管理装置10は、食料製品の製造数量が食料製品の目標数量に収斂したか否かを判定してもよい。かかる場合、管理装置10は、食料製品の目標数量を変更してもよい。
【0119】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0120】
また、各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。