特許第5809190号(P5809190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809190着座状態判別装置、シートベルト、及び着座状態判別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809190
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】着座状態判別装置、シートベルト、及び着座状態判別方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   B60R22/48 103
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-100888(P2013-100888)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221562(P2014-221562A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美香
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−287202(JP,A)
【文献】 特開昭63−265751(JP,A)
【文献】 特開2002−127871(JP,A)
【文献】 特開2002−240682(JP,A)
【文献】 米国特許第06203059(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座を検出する着座センサと、
接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられたバックルに挿入されるタングを有するシートベルトと、
前記タングが前記バックルに装着されたことを検出するシートベルト検出センサと、
前記着座センサが前記着座を検出し、前記シートベルト検出センサが前記装着を検出したときに、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離と、未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さである初期シートベルト長との比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する制御部と
を備えたことを特徴とする着座状態判別装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シートベルトの複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を前記シートベルト長として算出し、このシートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じであった場合、正常に使用していないことを検出する、
ことを特徴とする請求項1記載の着座状態判別装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じでなかった場合、前記シートベルト長が、予め測定しておいた未着座時に前記タングを前記バックルに挿入したときの前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を示す未着座時シートベルト長と略同じであった場合に、正常に使用していないことを検出する、 ことを特徴とする請求項2記載の着座状態判別装置。
【請求項4】
バックシートに背を接触していることを検出するバックシートセンサを更に設け、
前記複数のタッチセンサは、指示に基づき接触の検出を行うタッチセンサと近接の検出を行う近接センサとに切り替え可能であり、
前記制御部は、前記シートベルト長が前記未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、前記複数のタッチセンサに近接の検出を行う近接センサへ切り替える指示を出力して、前記複数のタッチセンサを複数の近接センサに切り替え、前記バックシートセンサがバックシートに背を接触していることを検出している場合、前記タングの位置から前記第二固定位置の間での前記所定の信号を出力している前記近接センサのうちの前記第二固定に最も近い前記近接センサの位置をシートベルト装着時における肩の位置とし、装着時以降に前記肩の位置を監視し、この肩の位置が装着時より所定以上増加した場合、車両からのギア信号を調べ、この信号がドライブを示す信号であった場合、前傾姿勢をしていると判定する、
ことを特徴とする請求項3記載の着座状態判別装置。
【請求項5】
前記複数のタッチセンサは、静電容量の増加度を検出する静電容量センサであり、検出した静電容量の増加度が設定された閾値を超えた場合に前記所定の信号を出力し、前記タッチセンサをタッチセンサとして使用するために前記閾値を所定の第一閾値にして設定し、前記タッチセンサを前記近接センサとして使用するために前記閾値を前記第一閾値より小さな所定の第二閾値にして設定する、ことを特徴とする請求項4記載の着座状態判別装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記シートベルトが、一方の端部を前記第一固定部に固定し他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれた状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から最も近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離をシートベルト未使用時の前記初期シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする請求項2記載の着座状態判別装置。
【請求項7】
前記制御部は、座席未使用の場合に前記タングが前記バックルに挿入された状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサの位置のうち、前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を未着座時のシートベルト長を示す前記未着座時シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする請求項3記載の着座状態判別装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の着座状態判別装置に用いられるシートベルトであって、
一方の端部を前記第一固定部に固定し、他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれて収納される帯状のベルトと、
前記帯状のベルト内にこのベルトの長尺方向に並べられ、指示に基づき接触の検出と近接の検出とを切り替え、検出に際し前記所定の信号を出力する前記複数のセンサと、
前記帯状のベルトの一方の端部と他方の端部の間に設定され、前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入する前記タングと、
を備えたことを特徴とするシートベルト。
【請求項9】
前記複数のセンサは、静電容量の増加度を検出する静電容量センサであり、前記検出した静電容量の増加度が設定された閾値を超えた場合に前記所定の信号を出力する、ことを特徴とする請求項8記載のシートベルト。
【請求項10】
着座を検出し、
タングがバックルに装着されたことを検出したときに、
接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入される前記タングを有するシートベルトに配置された前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と、前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離とを求め、
この求めた前記距離と未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さとの比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する、
ことを特徴とする着座状態判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座状態判別装置、シートベルト装置、及び着座状態判別方法に関し、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出する着座状態判別装置、シートベルト装置、及び着座状態判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に乗車するときには、シートベルトを使用することが義務付けられている。しかし、シートベルトを使用しないで乗車することも可能であるので、不注意でシートベルトを使用せずに乗車し続けることも有りうる。
【0003】
シートベルトの使用を検出できる技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示のシートベルト巻取装置は、乗員がシートベルトを引き出して装着し、タングをバックルに係合させると、シートベルトを巻き取る。シートベルトは、装着時に乗員に接触する可能性のある部分にフレキシブル電極が設けられている。そして、このフレキシブル電極と車体との間の静電容量により、シートベルトと乗員の密着の度合いを測定する。そして、測定された静電容量が予め定められた範囲に入ったときに巻取を停止する。このように、特許文献1に開示のシートベルト巻取装置は、測定したフレキシブル電極と車体との間の静電容量(密着の度合)が予め定められた範囲に入ったときに巻取を停止するようにしている。このことから、座席に居る乗員がシートベルトを自身に密着して使用していることが検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−127871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示のシートベルト巻取装置は、シートベルトに設けられたフレキシブル電極と車体との間の静電容量(密着の度合)を測定するのみである。このため、シートベルトを使用していることは検出できるものの、シートベルトを正常に使用しているか否かは検出できない。シートベルトを正常に使用していないとは、シートベルトに設定されているタングが座席の近辺にあるバックルに入っていない。タングがバックルに入っているものの、乗員がシートベルトの上等に乗っている等、乗員がシートベルトをたすき掛けしていない。また、たすき掛けしているものの、乗員が前傾姿勢を採っていて座席のバックシートに背をつけていない等である。
【0006】
シートベルトを正常に使用していない状態で車両等を運転し、他車両等との衝突事故等が発生した場合には、乗員が、車外に飛び出したり車両のフロントガラス等に頭をぶつける等、危険である。また、シートベルトを正常に使用していない状態での運転は、交通違反になるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出できる着座状態判別装置、シートベルト装置、及び着座状態判別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の着座状態判別装置は、着座を検出する着座センサと、接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられたバックルに挿入されるタングを有するシートベルトと、前記タングが前記バックルに装着されたことを検出するシートベルト検出センサと、前記着座センサが前記着座を検出し、前記シートベルト検出センサが前記装着を検出したときに、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離と、未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さとの比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する制御部と、を備えている。
【0009】
本発明のシートベルトは、本発明の着座状態判別装置に用いられるシートベルトであって、一方の端部を前記第一固定部に固定し、他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれて収納される帯状のベルトと、前記帯状のベルト内にこのベルトの長尺方向に並べられ、指示に基づき接触の検出と近接の検出とを切り替え、検出に際し前記所定の信号を出力する前記複数のセンサと、前記帯状のベルトの一方の端部と他方の端部の間に設定され、前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入する前記タングと、を備えている。
【0010】
本発明の着座状態判別方法は、着座を検出し、タングがバックルに装着されたことを検出したときに、接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入される前記タングを有するシートベルトに配置された前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と、前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離とを求め、この求めた前記距離と未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さとの比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する、ようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出できる着座状態判別装置、シートベルト装置、及び着座状態判別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態及び本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置に使用するシートベルトの使用状況を示す図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置に使用するシートベルトに設定された複数の静電容量センサの配置状態を示す図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置の動作のうちの初期シートベルト長及び未着座時シートベルト長を測定する動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る着座状態判別装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図である。
【0014】
本実施の形態に係る着座状態判別装置1は、着座センサ2と、シートベルト3と、シートベルト検出センサ4と、制御部5とにより構成される。着座状態判別装置1は、例えば自動車等の車両に設定される。
【0015】
着座センサ2は、乗員の着座を検出するセンサである。シートベルト3は、接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置されている。そして、一方の端部が座席の第一固定部(不図示)に固定され、他方の端部から第二固定部(不図示)の位置で収納部(不図示)に引き込まれる。そして、一方の端部と他方の端部の間にシートベルト3の長尺方向にスライド可能に配置され座席の他端側に設けられたバックルに挿入されるタングを有する。シートベルト検出センサ4は、タングがバックルに装着されたことを検出することにより、シートベルト3が使用されていることを検出するセンサである。
【0016】
制御部5は、着座センサ2が着座を検出し、シートベルト検出センサ4が装着を検出したときに、所定の信号を出力したタッチセンサのうち第一固定部の位置から二番目に近いもののシートベルト内の位置を求める。所定の信号とは、接触を検出したことを示す、例えばONの出力信号である。また、第一固定部の位置との間のシートベルト上の距離(シートベルト長)とを求める。シートベルト長は、収納部(不図示)から車内に出ている部分を示す。そして、この求めたシートベルト長と予め測定しておいたシートベルト3未使用時のシートベルト長(初期シートベルト長)とを比較する。初期シートベルト長は、シートベルト3未使用時のシートベルト3の収納部から出ている部分の長さである。そして、この比較結果によりシートベルト3の正常使用を判定する。
【0017】
このように、本実施の形態によれば、着座センサ2が着座を検出し、シートベルト検出センサ4がシートベルト3が使用されていることを検出したときに、複数のタッチセンサの出力信号を調べる。そして、ONの出力信号を出力したタッチセンサのシートベルト3内の位置と第一固定部の位置とに基づいて、使用しているシートベルト3の長さを算出する。そして、このシートベルト長と、シートベルト3未使用時の初期シートベルト長とを比較することにより、シートベルト3の正常使用を判定する。
【0018】
このように、本実施の形態によれば、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出できる。
(第2の実施の形態)
図1は、本発明の第2の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図であり、本発明の第1の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図と同じである。本実施の形態は、第1の実施の形態の動作を具体化したものである。
【0019】
本実施の形態に係る着座状態判別装置1は、着座センサ2と、シートベルト3と、シートベルト検出センサ4と、制御部5とにより構成される。着座状態判別装置1は、例えば自動車等の車両に設定される。
【0020】
着座センサ2は例えば圧力センサであり車両の座席の腰掛部分にシート状に設定される。そして、乗員が着座しているときにONの出力信号を出力する。
【0021】
シートベルト3は、車両の座席に着座した乗員の体の前面で乗員の体を支えるように設定する帯状のベルトである。シートベルト3には、複数のセンサが帯状のシートベルト3の長尺方向にシートベルト3の端部から並べてある。複数のセンサのうちのONの出力信号を出力したセンサまでのシートベルト3の端部からの距離は、シートベルト3内に並べられたセンサの位置、すなわち、センサの番号(例えばn(1からの整数)番)に基づいて求められる。すなわち、センサの幅、センサ間の間隔は予め定められており、センサの番号に基づいて、シートベルト3の端部からの長さが求められる。シートベルト3は、帯状のベルトの一方の端部を座席の一端側の第一固定部(不図示)に固定し、他方の端部側から車両内に設定される第二固定部(不図示)の位置で収納部(不図示)に引き込まれる。そして、一方の端部と他方の端部の間に設定され座席の他端側に設けられたバックルに挿入するタングを有する。
【0022】
複数のセンサは、例えば静電容量センサである。以後、センサを静電容量センサと記載する。この複数の静電容量センサは、静電容量の増加度を検出しこの増加度が、制御部5により設定された閾値を超えた場合にONの出力信号を出力する。
【0023】
シートベルト検出センサ4は、シートベルト3の使用状況を検出し、シートベルト3が使用されているときにONの出力信号を出力する。すなわち、シートベルト検出センサ4は、例えば、座席の一端に設定されたバックル内に配置され、タングがバックルに装着されているときにONの出力信号を出力する。
【0024】
制御部5は、着座センサ2が着座を検出し、シートベルト検出センサ4がシートベルト3が使用されていることを検出したときに、複数の静電容量センサをタッチセンサとして使用するための所定の第一閾値をシートベルト3に設定する。そして、シートベルト3の備えた複数の静電容量センサの出力信号を調べる。
そして、第二固定部(不図示)の位置を示す、ONの出力信号を出力した静電容量センサのうちの第一固定部(不図示)の位置から二番目に近い位置の静電容量センサのシートベルト3内の位置と、第一固定部の位置とに基づいてシートベルト長(Lall)を算出する。
シートベルト長(Lall)は、収納部(不図示)から車内に出ている部分を示す。そして、この算出したシートベルト長(Lall)と、予め測定しておいたシートベルト未使用時のシートベルト長(初期シートベルト長(Lall1))とを比較することにより、シートベルト3を正常に使用しているか否かを検出する。
【0025】
ここで、静電容量センサについて説明する。静電容量センサは、予めコンデンサ等の静電容量を備えている。そして、静電容量をもった物質(人体、金属等)が静電容量センサに近づくと、この備えた静電容量が変化する。静電容量センサはこの静電容量の変化の度合いを検出して、静電容量をもった物質の接近度を検出するものである。静電容量センサでは、内部回路に設けたコンデンサ等の充放電の時間の変化で静電容量の変化を検出する方式がよく知られている。この方式の静電容量センサは、静電容量をもった物質が静電容量センサに近づくと充放電時間が増加するため、この増加の度合いが所定の閾値を超えた場合にONの出力信号を出力する。例えば、静電容量センサをタッチセンサとして使用する場合は、タングや第二固定部が完全に静電容量センサと接することから、タングや第二固定部と接する静電容量センサの充放電時間が大幅に増加すると予想される。このため、例えば、第一閾値を50%とし、静電容量センサの有する静電容量が、物質が静電容量センサに影響を与えていない状態のときの静電容量より50%増加した場合にONの出力信号を出力するようにする。但し、静電容量センサの充放電時間は、静電容量センサの外部回路、静電容量センサへの設定値、環境温度、湿度、シートベルト状況等の、静電容量センサの使用環境により最適な値が異なるので、第一閾値の値(50%)は静電容量センサの使用環境により適宜変更して良い。また、上記では、一例として静電容量の増加の度合いを充放電時間の増加の度合いとして検出する例を示したが、静電容量の増加の度合いを電圧の増加や電流の増加等で検出する等、静電容量の増加の度合いが検出できるのであればどのような方式でも良い。
【0026】
次に、本実施の形態に係る着座状態判別装置の動作を図2図3図4及び図5を参照して説明する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る着座状態判別装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る着座状態判別装置に使用するシートベルト3の使用状況を示す図である。シートベルト3は、引張り強さに優れた例えばポリエステル繊維を編んだ帯状のベルトである。シートベルト3は、一方の端部を座席の一端側の第一固定部6に固定し、他方の端部側から車両(例えば、車体)に設定される第二固定部7の位置で収納部10(例えば、ピラー)にシートベルト巻取り装置等により引き込まれて収納される。尚、図3では、シートベルト3は第二固定部7の位置で収納部10(例えば、ピラー)に収納されるようにしている。しかし、シートベルト3は、第二固定部7の位置を経由して車体に取り付けられたシートベルト巻取り装置により引き込まれれば良く、収納部10は、具体的な容器等でなく車内の空間であっても良い。そして、一方の端部と他方の端部の間にタング8を備え、このタング8を座席の他端側に設けられたバックル9に挿入することにより、座席に着座した乗員の体の前面で乗員の体を支える。
【0029】
図4は、本実施の形態に係る着座状態判別装置に使用するシートベルトに設定された複数の静電容量センサの配置状態を示す図である。シートベルト3は、一方の端部を第一固定部6に固定し、第一固定部6の位置(例えば、この位置を0mmの位置とする)は予め制御部5に通知されている。静電容量センサ11(斜線で示す)は、1番目からn(nは整数)番目までのn個設定され、第一固定部6に所定の間隔(例えば、5mm)を開けて設定した第1静電容量センサ11から第n静電容量センサ11まで、所定の間隔(例えば、5mm)で設定してある。各静電容量センサ11の幅は例えば3mm。静電容量センサ11は、乗員が座席に座りシートベルト3を収納部10(例えば、ピラー)から引き出し、タング8をバックル9に挿入した状態の第一固定部6から第二固定部7までの間で必要となる。静電容量センサ11は、乗員の体格を考慮し、この第一固定部6から第二固定部7までの必要個所に加えて、例えば、第二固定部7からシートベルト巻取り装置までの個所に設定する。静電容量センサ11のシートベルト3への設定個数は、車両により適宜決定して良い。
【0030】
図5は、本実施の形態に係る着座状態判別装置の動作のうちの初期シートベルト長及び未着座時シートベルト長を測定する動作の一例を示すフローチャートである。初期シートベルト長とは、シートベルト未使用時のシートベルト3の収納部10から車内に出ている部分を示す長さである。未着座時シートベルト長とは、乗員が座席にいない状態でタング8がバックル9に挿入されてシートベルト3が収納部10内から引き出された状態のときの、シートベルト3の収納部10から車内に出ている部分を示す長さである。これらの測定動作は、例えば車の製造元等の作業員等の操作により実行される。
【0031】
図5のステップA1では、制御部5は、複数の静電容量センサ11をタッチセンサとして使用するための所定の第一閾値をシートベルト3の複数の静電容量センサに設定する。このとき、乗員が座席にいない状態で、例えば車の製造元等の作業員等の操作により、シートベルト3が一方の端部を第一固定部6に固定し他方の端部側から第二固定部7の位置で収納部10に引き込まれた状態にしておく。
【0032】
図5のステップA2では、制御部5は、シートベルト3の備えた複数の静電容量センサ11の出力信号を調べる。そして、第二固定部7の位置に対応する、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から二番目に近い位置の静電容量センサ11の位置を検出する。ちなみに、タング8の位置に対応する静電容量センサ11の位置は、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から一番目に近い位置の静電容量センサ11の位置である。すなわち、このとき、乗員が座席にいない状態で、シートベルト3の一方の端部が第一固定部6に固定され他方の端部側から第二固定部7の位置で収納部10に引き込まれている。このため、第二固定部7とタング8との二つが、シートベルト3内の静電容量センサ11にタッチすることになる。このため、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から一番目に近い位置の静電容量センサ11の位置がタング8の位置に対応する。そして、第一固定部6の位置から二番目に近い位置の静電容量センサ11の位置が第二固定部の位置に対応する。
【0033】
図5のステップA3では、制御部5は、第一固定部6の位置から第二固定部7の位置に対応する静電容量センサ11のシートベルト3内の位置までの距離をシートベルト未使用時の初期シートベルト長(Lall1)として、例えば記憶部(不図示)に格納しておく。
【0034】
次に、図5のステップA4では、制御部5は、乗員が座席にいない場合に、作業員等の操作によりタング8がバックル9に挿入されシートベルト3が収納部10内から引き出された状態で、シートベルト3の備えた複数の静電容量センサ11の出力信号を調べる。そして、複数の静電容量センサ11のうちのONの出力信号を出力した静電容量センサ11の位置のうち、第一固定部6に最も近い静電容量センサ11の位置をタング8の位置(W)と判別し、例えば記憶部(不図示)に格納しておく。
【0035】
また、図5のステップA5では、制御部5は、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から二番目に近い位置の静電容量センサ11の位置を第二固定部7の位置と判別する。
【0036】
図5のステップA6では、制御部5は、第一固定部6の位置から第二固定部7の位置までの距離を乗員の未着座時のシートベルト長を示す未着座時シートベルト長(Lall2)として、例えば記憶部(不図示)に格納しておく。
【0037】
ここで、図2のフローチャートを使用して着座状態判別装置の動作を説明する。
【0038】
図2のステップS1では、制御部5は、図5のフローチャートで示すようにして、シートベルト未使用時の初期シートベルト長(Lall1)、未着座時の未着座時シートベルト長(Lall2)、及びタング8の位置(W)を予め測定しておき、例えば記憶部(不図示)に格納しておく。この操作は、例えば車の製造元等の作業員等により予め実行しておく。
【0039】
図2のステップS2では、制御部5は、着座センサ2がONの出力信号を出力するまで待つ。乗員が着座すると、着座センサ2が乗員の着座を検出しONの出力信号を出力し、ステップS3へ進む。
【0040】
図2のステップS3では、制御部5は、シートベルト検出センサ4の出力を調べる。シートベルト検出センサ4がONの出力信号を出力して場合には、タング8がバックル9に装着され、シートベルト3が使用されていると判定し、ステップS5へ進む。シートベルト検出センサ4がONの出力信号を出力していない場合には、シートベルト3が使用されていないと判定し、ステップS4へ進む。
【0041】
図2のステップS4では、制御部5は、警報部(不図示)にシートベルト3の着用を促す警報の出力を指示して、警報部にシートベルト3の着用を促す警報を出力させる。そして、図2のステップS3へ戻る。
【0042】
図2のステップS5では、制御部5は、複数の静電容量センサ11をタッチセンサとして使用するための所定の第一閾値をシートベルト3の複数の静電容量センサ11に設定する。
【0043】
図2のステップS6では、制御部5は、シートベルト3の備えた複数の静電容量センサ11の出力信号を調べる。そして、第二固定部7の位置に対応する、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から二番目に近い位置の静電容量センサ11の位置を検出する。そして、この静電容量センサ11のシートベルト3内の位置と第一固定部6の位置とから第二固定部7の位置を求める。ちなみに、タング8の位置に対応する静電容量センサ11に位置は、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のうちの第一固定部6の位置から一番目に近い位置の静電容量センサ11に位置である。
【0044】
図2のステップS7では、制御部5は、第一固定部6の位置から第二固定部7の位置までの距離を求めシートベルト長(Lall)とする。
【0045】
図2のステップS8では、制御部5は、このシートベルト長(Lall)と、ステップS1で予め測定し記憶部(不図示)に格納しておいたシートベルト未使用時の初期シートベルト長(Lall1)とを比較する。そして、シートベルト長(Lall)と初期シートベルト長(Lall1)とが略同じでなかった場合、シートベルト3を正常に使用していると判定し、図2のステップS10へ進む。また、略同じであった場合、シートベルト3を正常に使用していないと判定し、図2のステップS9へ進む。ここで略同じとは、例えば、静電センサ2個分((幅3mm+間隔5mm)×2)以内のシートベルト3の長さである。この長さにこだわることなく、実験等により適宜変更して良い。
【0046】
図2のステップS9では、制御部5は、異物がバックル9に装着されたと判定し警報部(不図示)に異物がバックル9に装着されたことを示す警報の出力を指示する。そして、警報部に異物がバックル9に装着されたことを示す警報を出力させる。そして、図2のステップS6へ戻る。
【0047】
ここで、制御部5が、異物がバックル9に装着されたと判定した理由を説明する。
すなわち、制御部5は、図2のステップS3でシートベルト検出センサ4がONであるので、タング8がバックル9に挿入されていると判定している。
そして、図2のステップS7で、制御部5は、第一固定部6の位置から第二固定部7の位置までの距離を示すシートベルト長を求めた。このシートベルト長は、タング8がバックル9に挿入されているのであれば、初期シートベルト長(シートベルト未使用時(タング8がバックル9に挿入されていないとき)のシートベルト長)より長い(略同じでない)はずである。しかし、制御部5は、図2のステップS8で、シートベルト長は、初期シートベルト長と略同じと判定した。すなわち、シートベルト長が初期シートベルト長と略同じであるので、タング8はバックル9に挿入されていない。しかし、シートベルト検出センサ4はONであった。このため、バックル9内に異物が入り込み、タング8がバックル9に挿入されていないにもかかわらず、シートベルト検出センサ4がONになったと予想し、異物がバックル9に装着されたと判定している。
【0048】
図2のステップS10では、制御部5は、シートベルト長と、ステップS1で予め測定し記憶部(不図示)に格納しておいた未着座時シートベルト長とを比較する。そして、シートベルト長と未着座時シートベルト長とが略同じであった場合に、正常に使用していないと判定し、図2のステップS11へ進む。シートベルト長と未着座時シートベルト長とが略同じであった場合には、例えば、乗員が座席の着座する個所のシートベルト3の上に、また、座席のバックシート(背もたれの個所)のシートベルト3の前に座っている等と判断する。シートベルト長と未着座時シートベルト長とが略同じでなかった場合には、正常に使用していると判定し、終了する。
【0049】
図2のステップS11では、制御部5は、警報部(不図示)に不正使用を示す警報の出力を指示し、警報部に不正使用を示す警報を出力させる。そして、図2のステップS6へ戻る。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、着座センサ2が着座を検出し、シートベルト検出センサ4がシートベルト3が使用されていることを検出したときに、複数の静電容量センサ11をタッチセンサとして使用する。そして、複数の静電容量センサ11の出力信号を調べる。そして、ONの出力信号を出力した静電容量センサ11のシートベルト3内の位置と第一固定部の位置とに基づいて、収納部から車内に出ている部分を示すシートベルト長、すなわち、使用しているシートベルト3の長さを算出する。そして、この算出したシートベルト長と、予め測定しておいたシートベルト未使用時のシートベルト長(初期シートベルト長)とを比較することにより、シートベルト3を正常に使用しているか否かを検出する。
【0051】
また、本実施の形態によれば、シートベルト長が初期シートベルト長と略同じでなかった場合、正常にタング8がバックル9に挿入され、シートベルト3が引き出されていると判断する。そして、シートベルト長と予め測定しておいた未着座時シートベルト長とを比較しシートベルト長と未着座時シートベルト長とが略同じであった場合に、シートベルト3を正常に使用していないことを検出する。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出できる。
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る着座状態判別装置の一例を示す図である。
【0053】
本第3の実施の形態は、第2の実施の形態にバックシートセンサ12を追加したものである。そして、第2の実施の形態の動作に他の動作(乗員が前傾姿勢をしているか否かを判定する動作)を追加したものである。本実施の形態の動作は、第2の実施の形態でシートベルト長と未着座時シートベルト長とを比較した結果、シートベルト長が未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合の動作である。ここでは、第2の実施の形態の動作に追加した他の動作について説明し、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した内容は省いている。
【0054】
本実施の形態に係る着座状態判別装置1は、着座センサ2と、シートベルト3と、シートベルト検出センサ4と、制御部5と、バックシートセンサ12とにより構成される。
【0055】
バックシートセンサ12は、例えば圧力センサであり座席のバックシート(背もたれ)部分にシート状に設定される。そして、乗員が、バックシートに背を接触させもたれかかっているときにONの出力信号を出力する。
【0056】
制御部5は、第2の実施の形態でシートベルト長(Lall)と未着座時シートベルト長(Lall2)とを比較した結果、シートベルト長が未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、シートベルト3が正常に使用されていると判断する。そして、シートベルト3の有する複数の静電容量センサ11を近接センサとして使用するために所定の第二閾値をシートベルト3に設定する。この場合、静電容量センサ11が乗員の身体へ近接した場合、ONの出力信号を出力するように設定する。
【0057】
ここで、静電容量センサ11へ設定する第二閾値について説明する。静電容量センサ11を近接センサとして使用して乗員の身体を検出する場合、シートベルト3の素材と乗員の衣類とが静電容量センサ11と身体との間に入るため、静電容量センサ11の感度は大幅に悪くなると考えられる。特に冬場のコートを着用している場合なども考慮すると、静電容量センサ11は、身体との間との距離が1.5cm〜2cm程度であっても身体を検出することが求められる。この距離(1.5cm〜2cm程度)に近づいた場合の、静電容量センサ11の静電容量の増加の度合いは、第1の実施の形態で説明した静電容量センサ11をタッチセンサとして使用する場合と比較して少なくなることが予想される。このため、第二閾値を10%とし、静電容量センサ11の有する静電容量が10%増加した場合にONの出力信号を出力するようにする。但し、第1の実施の形態で説明したように、静電容量センサ11の静電容量の変化の度合いは、静電容量センサ11の使用環境により最適な値が異なるので、第二閾値の値(10%)はシステムより適宜変更して良い。
【0058】
そして、制御部5は、バックシートセンサ12が、乗員がバックシートに背を接触させもたれ掛かっていることを検出している場合、タング8の位置(W)から第二固定部7の位置(S)の間でのONの出力信号を出力している静電容量センサ11を調べる。そして、ONの出力信号を出力している静電容量センサ11のうちの第二固定部7に最も近い静電容量センサ11の位置を乗員のシートベルト3装着時における肩の位置(SH)とする。そして、装着時以後に肩の位置(SH)を監視し、この肩の位置(SH)が装着時より所定量以上増加した場合、車両からのギア信号を調べ、この信号がドライブを示す信号であった場合、乗員が前傾姿勢をしていると判定する。そして、装着時以後に肩の位置(SH)(すなわち、肩の位置(SH)に対応する静電容量センサ11の位置)を監視し、この監視した肩の位置(SH)が装着時の肩の位置(SH)より所定量以上増加した場合、車両からのギア信号を調べる。そして、この調べた信号がドライブを示す信号であった場合、車両が前進し運転者は正面を向いているにも関わらず肩の位置が増加するので、乗員が前傾姿勢をしていると判定する。ここで“肩の位置(SH)が増加する“とは、肩の位置(SH)に対応する静電容量センサ11の位置(すなわち、図4で示す静電容量センサ11の番号)が増加することを示す。
【0059】
次に、本実施の形態に係る着座状態判別装置の動作を図7を参照して説明する。
【0060】
図7は、本実施の形態に係る着座状態判別装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0061】
図7のステップS1では、制御部5は、第2の実施の形態でシートベルト長と未着座時シートベルト長とを比較した結果、シートベルト長が未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、シートベルト3が正常に使用されていると判断する。そして、複数の静電容量センサ11を近接センサとして使用するための所定の第二閾値をシートベルト3に設定する。このとき、静電容量センサ11は近接センサとして動作するので、タング8、第二固定部7、及び身体の部分でONの出力信号を出力する。
【0062】
図7のステップS2では、制御部5は、バックシートセンサ12がONの出力信号を出力するまで待つ。乗員がバックシートに背を接触させると、バックシートセンサ12がONの出力信号を出力し、ステップS3へ進む。
【0063】
図7のステップS3では、制御部5は、図2のステップS1で記憶部(不図示)に格納しておいたシートベルト3上のタング8の位置(W)から第二固定部7の方向のONの出力信号を連続して出力している静電容量センサ11を調べる。そして、ONの出力信号を連続して出力している静電容量センサ11のうちの、シートベルト3内での静電容量センサ11の位置の連続性が途絶えた位置の静電容量センサ11の位置を乗員のシートベルト3装着時における肩の位置(SH)とする。これは、身体を検出する静電容量センサ11の位置は連続していることを利用したものである。この装着時の肩の位置(SH)は、肩の位置(SH)を連続して測定し、この測定結果が安定した後のもの等を採用しても良い。この装着時の肩の位置(SH)を、乗員の正しい姿勢での肩の位置(SH)とする。
【0064】
図7のステップS4では、制御部5は、装着時の肩の位置(SH)の決定後、肩の位置(SHt)を監視する。すなわち、ステップS3での動作と同様に、ONの出力信号を連続して出力している静電容量センサ11のうちの、シートベルト3内での静電容量センサ11の位置の連続性が途絶えた位置の静電容量センサ11の位置を肩の位置(SHt)として監視する。そして、監視した肩の位置(SHt)が装着時の肩の位置(SH)より所定量(例えば、静電容量センサ11の数で10)以上増加したか否かを調べる。所定量を示す静電容量センサ11の数(10)は、この数にこだわることなく適宜変更して良い。そして、調べた結果が所定量以上増加したことを示す場合は、ステップS5へ進む。
【0065】
図7のステップS5では、制御部5は、車両からギア信号を受け、この信号がドライブを示す信号であるか否かを調べる。調べた結果が、ドライブを示す信号を示さない場合は、ステップS4へ戻る。調べた結果が、ドライブを示す信号を示す場合は、乗員が前傾姿勢をしていると判定し、ステップS6へ進む。
【0066】
図7のステップS6では、制御部5は、警報部(不図示)に乗員が前傾姿勢をしていることを示す警報の出力を指示し、警報部に乗員が前傾姿勢をしていることを示す警報を出力させ、ステップS4へ戻る。
【0067】
尚、図7のステップS5で、ギア信号がドライブを示す信号の場合に、乗員が前傾姿勢をしていると判定し警報の出力を指示した。しかし、このとき、制御部5は、更に、車両から車速信号(走行速度)を受け、この車速信号が時速10km/h以下を示すときには、例えば乗員が駐車する際の周辺確認等をしていることを想定し、警報の出力を指示しないようにしても良い。また、制御部5が前傾姿勢を検出し、ギア信号がドライブを示す信号であり、車速信号が時速10km/h以下を示す場合が、頻繁(例えば、5分間隔)に起こるような場合を想定する。このような場合には、乗員がカーナビ等を操作していると想定し、周辺機器への操作を控え運転に集中するような警報の出力を指示しても良い。
【0068】
尚、以上の説明では、例えば、図3で収納部10を車体に設けたが、収納部10を座席に設けても良い。このときには、座席の例えば上部の端部に第二固定部を設けこの第二固定部の位置からシートベルト3を座席内部に設けた収納部10に収納する。この場合、収納部10は座席内部の空間でも良い。
【0069】
このように、本実施の形態によれば、シートベルト長が未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、シートベルト3が正常に使用されていると判断する。そして、複数の静電容量センサ11を近接センサとして使用して複数の静電容量センサ11の出力信号を調べる。そして、バックシートセンサ12がONの場合に、シートベルト3装着時における肩の位置を検出する。そして、装着時以降に肩の位置を監視し、この肩の位置が装着時より所定量以上増加した場合、車両からギア信号を受け、この信号がドライブを示す信号であった場合、乗員が前傾姿勢をしていると判定し、シートベルト3を正常に使用していないことを検出する。
【0070】
このように、本実施の形態によれば、シートベルトを正常に使用しているか否かを検出できる。
【0071】
尚、上記の説明では、自動車等の座席について説明したが、本発明は、自動車等の座席にこだわることなく、シートベルトを有していればどのような座席であっても適用可能である。
【0072】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
着座を検出する着座センサと、
接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられたバックルに挿入されるタングを有するシートベルトと、
前記タングが前記バックルに装着されたことを検出するシートベルト検出センサと、
前記着座センサが前記着座を検出し、前記シートベルト検出センサが前記装着を検出したときに、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離と、未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さとの比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する制御部と
を備えたことを特徴とする着座状態判別装置。
(付記2)
前記制御部は、前記シートベルトの複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を前記シートベルト長として算出し、このシートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じであった場合、正常に使用していないことを検出する、
ことを特徴とする付記1記載の着座状態判別装置。
(付記3)
前記制御部は、前記シートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じでなかった場合、前記シートベルト長が、予め測定しておいた未着座時に前記タングを前記バックルに挿入したときの前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を示す未着座時シートベルト長と略同じであった場合に、正常に使用していないことを検出する、 ことを特徴とする付記2記載の着座状態判別装置。
(付記4)
バックシートに背を接触していることを検出するバックシートセンサを更に設け、
前記複数のタッチセンサは、指示に基づき接触の検出を行うタッチセンサと近接の検出を行う近接センサとに切り替え可能であり、
前記制御部は、前記シートベルト長が前記未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、前記複数のタッチセンサに近接の検出を行う近接センサへ切り替える指示を出力して、前記複数のタッチセンサを複数の近接センサに切り替え、前記バックシートセンサがバックシートに背を接触していることを検出している場合、前記タングの位置から前記第二固定位置の間での前記所定の信号を出力している前記近接センサのうちの前記第二固定に最も近い前記近接センサの位置をシートベルト装着時における肩の位置とし、装着時以降に前記肩の位置を監視し、この肩の位置が装着時より所定以上増加した場合、車両からのギア信号を調べ、この信号がドライブを示す信号であった場合、前傾姿勢をしていると判定する、
ことを特徴とする付記3記載の着座状態判別装置。
(付記5)
前記複数のタッチセンサは、静電容量の増加度を検出する静電容量センサであり、検出した静電容量の増加度が設定された閾値を超えた場合に前記所定の信号を出力し、前記タッチセンサをタッチセンサとして使用するために前記閾値を所定の第一閾値にして設定し、前記タッチセンサを前記近接センサとして使用するために前記閾値を前記第一閾値より小さな所定の第二閾値にして設定する、ことを特徴とする付記4記載の着座状態判別装置。
(付記6)
前記制御部は、前記シートベルトが、一方の端部を前記第一固定部に固定し他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれた状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から最も近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離をシートベルト未使用時の前記初期シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする付記2記載の着座状態判別装置。
(付記7)
前記制御部は座席未使用の場合に前記タングが前記バックルに挿入された状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサの位置のうち、前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を未着座時のシートベルト長を示す前記未着座時シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする付記3記載の着座状態判別装置。
(付記8)
指示に基づき警報を出力する警報部を更に備え、
前記制御部は、前記着座センサにより着座を検出し、前記シートベルト検出センサにより前記シートベルトが使用されていないことを検出した場合、シートベルトの着用を促す警報の出力を前記警報部に指示する、
ことを特徴とする付記1記載の着座状態判別装置。
(付記9)
指示に基づき警報を出力する警報部を更に備え、
前記制御部は、前記シートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じであった場合、異物がバックルに装着されたことを示す警報の出力を前記警報部に指示する、
ことを特徴とする付記2記載の着座状態判別装置。
(付記10)
指示に基づき警報を出力する警報部を更に備え、
前記制御部は、前記シートベルト長が前記未着座時シートベルト長と略同じであった場合、不正使用を示す警報の出力を前記警報部に指示する、
ことを特徴とする付記3記載の着座状態判別装置。
(付記11)
指示に基づき警報を出力する警報部を更に備え、
前記制御部は、前傾姿勢をしていることを示す警報の出力を前記警報部に指示する、
ことを特徴とする付記4記載の着座状態判別装置。
(付記12)
付記1から4のいずれか一項に記載の着座状態判別装置に用いられるシートベルトであって、
一方の端部を前記第一固定部に固定し、他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれて収納される帯状のベルトと、
前記帯状のベルト内にこのベルトの長尺方向に並べられ、指示に基づき接触の検出と近接の検出とを切り替え、検出に際し前記所定の信号を出力する前記複数のセンサと、
前記帯状のベルトの一方の端部と他方の端部の間に設定され、前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入する前記タングと、
を備えたことを特徴とするシートベルト。
(付記13)
前記複数のセンサは、静電容量の増加度を検出する静電容量センサであり、前記検出した静電容量の増加度が設定された閾値を超えた場合に前記所定の信号を出力する、ことを特徴とする付記12記載のシートベルト。
(付記14)
着座を検出し、
タングがバックルに装着されたことを検出したときに、
接触の検出に際し所定の信号を出力する複数のタッチセンサが長尺方向の所定の位置に配置され、一方の端部が座席の第一固定部に固定され、他方の端部から第二固定部の位置で収納部に引き込まれ、前記一方の端部と前記他方の端部の間に配置され前記座席の他端側に設けられた前記バックルに挿入される前記タングを有するシートベルトに配置された前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうち前記第一固定部の位置から二番目に近いものの前記シートベルト内の位置と、前記第一固定部の位置との間の前記シートベルト上の距離とを求め、
この求めた前記距離と未使用時のシートベルトの前記収納部から出ている部分の長さとの比較結果により前記シートベルトの正常使用を判定する、
ことを特徴とする着座状態判別方法。
(付記15)
前記シートベルトの複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記センサのうちの前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、
前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、
前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を前記シートベルト長として算出し、
このシートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じであった場合、正常に使用していないことを検出する、
ことを特徴とする付記14記載の着座状態判別方法。
(付記16)
前記シートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じでなかった場合、前記シートベルト長が、予め測定しておいた未着座時に前記タングを前記バックルに挿入したときの前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を示す未着座時シートベルト長と略同じであった場合に、正常に使用していないことを検出する、
ことを特徴とする付記15記載の着座状態判別方法。
(付記17)
前記シートベルト長が前記未着座時シートベルト長と略同じでなかった場合、前記複数のタッチセンサに近接の検出を行う近接センサへ切り替える指示を出力して、前記複数のタッチセンサを複数の近接センサに切り替え、
バックシートセンサがバックシートに背を接触していることを検出している場合、前記タングの位置から前記第二固定位置の間での前記所定の信号を出力している前記近接センサのうちの前記第二固定に最も近い前記近接センサの位置をシートベルト装着時における肩の位置とし、
装着時以降に前記肩の位置を監視し、この肩の位置が装着時より所定以上増加した場合、車両からのギア信号を調べ、この信号がドライブを示す信号であった場合、前傾姿勢をしていると判定する、
ことを特徴とする付記16記載の着座状態判別方法。
(付記18)
前記複数のタッチセンサは、静電容量の増加度を検出する静電容量センサであり、検出した静電容量の増加度が設定された閾値を超えた場合に前記所定の信号を出力し、前記タッチセンサをタッチセンサとして使用するために前記閾値を所定の第一閾値にして設定し、前記タッチセンサを前記近接センサとして使用するために前記閾値を前記第一閾値より小さな所定の第二閾値にして設定する、
ことを特徴とする付記17記載の着座状態判別方法。
(付記19)
前記シートベルトが、一方の端部を前記第一固定部に固定し他方の端部側から前記第二固定部の位置で前記収納部に引き込まれた状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から最も近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、
前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離をシートベルト未使用時の前記初期シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする付記15記載の着座状態判別方法。
(付記20)
座席未使用の場合に前記タングが前記バックルに挿入された状態で、複数の前記タッチセンサのうちの前記所定の信号を出力した前記タッチセンサの位置のうち、前記第一固定部に最も近いタッチセンサの位置を前記タングの位置と判別し、
前記所定の信号を出力した前記タッチセンサのうちの前記第一固定部の位置から二番目に近い位置の前記タッチセンサの位置を前記第二固定部の位置と判別し、 前記第一固定部の位置から前記第二固定部の位置までの距離を未着座時のシートベルト長を示す前記未着座時シートベルト長として予め測定しておく、
ことを特徴とする付記16記載の着座状態判別方法。
(付記21)
着座を検出し、前記シートベルトが使用されていないことを検出した場合、
シートベルトの着用を促す警報を出力する、ことを特徴とする付記14記載の着座状態判別方法。
(付記22)
前記シートベルト長が前記初期シートベルト長と略同じであった場合、異物がバックルに装着されたことを示す警報を出力する、ことを特徴とする付記15記載の着座状態判別方法。
(付記23)
前記シートベルト長が前記未着座時シートベルト長と略同じであった場合、不正使用を示す警報を出力する、ことを特徴とする付記16記載の着座状態判別方法。
(付記24)
乗車している車両からの前記ギア信号がドライブを示す信号であった場合、前傾姿勢をしていることを示す警報を出力する、ことを特徴とする付記17記載の着座状態判別方法。
【符号の説明】
【0073】
1 着座状態判別装置
2 着座センサ
3 シートベルト
4 シートベルト検出センサ
5 制御部
6 第一固定部
7 第二固定部
8 タング
9 バックル
10 収納部
11 静電容量センサ
12 バックシートセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7