(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
係止腕部の被規制部は、上記配列方向に見て上記弾性腕部の下縁と上記係止部の前縁とが交わる屈曲部を含む領域に設けられていることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る平型導体用電気コネクタ1(以下「コネクタ1」という)を平型導体Cとともに示した斜視図であり、該平型導体Cの挿入前の状態を、図中にて前方を挿入方向Pとして示している。
図1のコネクタ1は、第一端子20そして第二端子30の二種の端子を混在させて保持するハウジング10が、閉位置と開位置との間で回動可能な可動部材40を支持しており、
図1は可動部材40が閉位置にあるときの平型導体挿入前の状態における斜視図であり、
図2(A)は
図1のコネクタの平面図であり、
図2(B)は、
図2(A)のコネクタの可動部材のみを示す平面図である。
図3は、
図1のコネクタについてハウジング10から可動部材40を外した状態で示す斜視図であり、
図4は
図3のコネクタについて、ハウジングそして可動部材の一端部(右端部)を除去し、挿入前の平型導体とともに示す斜視図である。また、
図5は、挿入された平型導体を抜出に備え、可動部材40が開位置にある状態でのコネクタの斜視図である。
図1のコネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に配され、平型導体Cが接続されることにより、上記回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。ここで、「回路基板」とは、コネクタの端子に接続される回路部が形成された基板を意味し、この「基板」には、剛性が高い板状の部材だけでなく、剛性が低い柔軟なシート状の部材も含まれる。
【0021】
平型導体Cは、前後方向に延びる帯状をなし、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)が幅方向(前後方向に対して直角な方向)に配列され形成されている。該回路部は、平型導体Cの絶縁層内で埋設されて前後方向に延びており、平型導体Cの前端位置まで達している。また、上記回路部は、その前端側部分だけが平型導体Cの上面に露呈しており、後述するコネクタ1の第一端子20そして第二端子30と接触可能となっている。また、平型導体Cは、上記前端側部分の両側縁に切欠部C1が形成されており、該切欠部C1の前方に位置する耳部C2の後端縁は、後述するコネクタ1の係止部44Aと係止する被係止部C2Aとして機能する。
【0022】
コネクタ1は、電気絶縁材製のハウジング10と、該ハウジング10に配列保持される金属製の複数の第一端子20そして第二端子30(
図3(A),
図3(B)をも参照)と、後述する閉位置と開位置との間で回動可能にハウジング10で支持される電気絶縁材製の可動部材40と、ハウジング10に保持される金属製の固定金具50とを備えており、
図1にて、平型導体Cが後方から矢印方向に挿入接続されるようになっている。
【0023】
コネクタ1の詳細な構成の説明に先立って、まず、コネクタ1に対する平型導体Cの挿入および抜出の動作の概要について説明しておく。コネクタ1への平型導体Cの挿入前においては、
図1に示されているように、コネクタ1の可動部材40は、回路基板の実装面
(図示せず)に対して平行な姿勢をなす閉位置で、平型導体Cの挿入を許容する。平型導体は、その前端縁で第一端子20と当接してその第一端子20の当接部分を弾性変位せしめて、所定位置までの挿入を可能とする。また、平型導体Cが挿入接続された後においても、コネクタ1の使用状態では、可動部材40は閉位置に維持されており、後述するように、可動部材40の係止部44Aと平型導体Cの被係止部C2Aとが係止可能に位置することにより、さらには、可動部材の被規制部がハウジングの規制部と当接可能位置にあって、平型導体に過大な抜出力が作用してしまい、平型導体が可動部材をも後方へ移動させたときには、可動部材の被規制部がハウジングの規制部へ当接して、移動が阻止される。また、コネクタ1の不使用時となる平型導体Cの抜出時には、
図5に示されるように、可動部材40が起立方向に回動して回路基板の実装面に対して角度をもった姿勢をなす開位置にもたらされることにより、平型導体Cの被係止部C2Aに対する可動部材40の係止部44Aの係止状態が解除されて、また可動部材40の被規制部がハウジングの規制部との係止状態が解除されて、平型導体Cの後方への抜出が許容される。
【0024】
コネクタ1の構成の説明に戻る。
図2(A)は
図1のコネクタの平面図で、
図2(B)は可動部材のみの平面図であり、それらの平面構成を示すとともに、以降の図における断面位置を明確に示している。
図3(A),(B)は、ハウジング10から可動部材40を分離した状態のコネクタ1を後方側から示した斜視図であるが、
図3(A)はコネクタ幅方向で全域にわたり省略なしに示し、
図3(B)は
図2におけるIIIB-IIIB断面で一部を除去して図示を省略している。
図4は、
図3のコネクタ1の可動部材40を前方かつ下面側から示した斜視図である。
図1〜4のごとく、ハウジング10は、上方から見て、第一端子20しそして第二端子30の配列方向(「端子配列方向」という)を長手方向とする四角枠状をなしており、互いに平行をなし端子配列方向に延びる前方枠部10Aおよび後方枠部10Bと、端子配列方向で対称に位置し前方枠部10Aおよび後方枠部10Bの端部同士を連結する一対の側方枠部10Cとを有している。
【0025】
前方枠部10Aは、
図3(A)そして
図3(B)に見られるように、下部をなす前方端子保持部11と、該前方端子保持部11から上方へ突出するとともに上記端子配列範囲にわたって形成されている前壁12とを有している。前方端子保持部11は、後述の第二端子30を一体モールド成形により配列保持している。前壁12の上端面は、閉位置にある可動部材40の下面が当接可能に対向しており(例えば、
図6(A),
図7(A),
図8(A)参照)、可動部材40の下方への過剰な変位を規制するようになっている。
【0026】
後方枠部10Bは、端子配列方向で端子配列範囲にわたって延びて後述の第一端子20を配列保持する後方端子保持部13として機能する。該後方端子保持部13は、第一端子20を一体モールド成形により配列保持している。
【0027】
側方枠部10Cは、前方端子保持部11および後方端子保持部13の端部同士を連結する板状の側方基部14と、端子配列方向での該側方基部14の外側端部に位置し該側方基部14から起立している側壁15と、該側壁15よりも端子配列方向で内方(端子配列範囲側)に位置し側方基部14から上方へ向けて突出する後述の側方案内部16、側方規制部17および前方規制部18とを有している。
【0028】
また、側方基部14は、
図3(A),(B)に見られるように、後端寄り位置に、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する案内面14Bが形成されており、挿入される平型導体Cの下面を支持しながらハウジング10内へ案内するようになっている。
【0029】
側壁15は、後端寄り位置に、可動部材40の後述の軸部46の外側被支持部46Aを受け入れて回動可能に支持するための支持孔部15Aが、上部が半円状をなし下部が開放されるようにして端子配列方向に貫通して形成されている。また、側壁15は、前端寄り位置に、後述する可動部材40の
弾性被ロック
腕部45と係止するロック部15Bが、上記側壁15の前端寄り位置で該側壁15の内側面(端子配列範囲側の面)から突出して形成されている。該ロック部15Bは、被ロック部45の係止位置への案内を容易とするように、上面が傾斜面となっている。
【0030】
図3によく見られるように、側方案内部16は、側方基部14の後端寄り位置で、側壁15に連結されて形成されている。該側方案内部16は、前方へ向かうにつれて端子配列方向で内方へ向けて傾斜する案内面16Aを有しており、該案内面16Aによって、挿入される平型導体Cを端子配列方向でハウジング10内へ向けて案内する。
【0031】
図3,4に見られるように、互いに対向する一対の側方規制部17は、端子配列方向で側壁15よりも内方位置かつ上記支持孔部15Aよりも前方位置にて、端子配列方向に対して直角な板面をもつ壁部として形成されており、側壁15と近接対向している。側方規制部17は、その内側面(端子配列範囲側の板面)が、ハウジング10に挿入された平型導体Cの幅方向、すなわち端子配列方向での移動を規制するための側方規制面17Aとして形成されている。また、側方規制部17は、前後方向で側壁15の支持孔部15Aと同位置に、可動部材40の後述の軸部46の内側被支持部46Bを受け入れて回動可能に支持するための支持凹部17Bが形成されている。該支持凹部17Bは、上方に開放するとともに、下部が半円状をなしている。さらには、上記支持凹部17Bよりも前方位置に垂立前後縁を有する凹形状の規制部17Cが形成されている。
【0032】
図3,4に見られるように、前方規制部18は、端子配列方向で側方規制部17よりも内方位置かつ側方基部14の前端寄り位置にて、側方規制部17および前壁12に連結されて形成されている。前方規制部18は、
図3に見られるように、前後方向に対して直角な後面が、ハウジング10に挿入された平型導体Cの前端部に当接して、該平型導体Cのそれ以上の挿入を規制して位置決めとして機能する前方規制面18Aとして形成されている。
【0033】
図3および
図6(A),(B)によく見られるように、ハウジング10には、次の受入部19A、収容部19Bおよび弾性変位許容部19Cをもつ空間19が形成されている。すなわち、
図6(A),(B)を参照すると判るように、上記空間19は、平型導体Cを後方から受け入れるための受入部19Aと、該受入部19Aの上方に位置し閉位置にある可動部材40を収容するための収容部19Bと、受入部19Aの下方に位置し第一端子20の下腕部22の下方への弾性変位を許容する弾性変位許容部19Cとを有している。
【0034】
受入部19Aは、上下方向では、後方端子保持部13よりも上方かつ閉位置の可動部材40よりも下方に位置し、端子配列方向では、二つの側方規制部17同士間にわたって形成されている。該受入部19Aは、後方へ向けて開放されていて、平型導体Cを受入可能となっている。
【0035】
収容部19Bは、受入部19Aの上方に位置し該受入部19Aと連通し、上記配列方向で二つの側壁15同士間に形成されている。収容部19Bは、上方へ向けて開放されていて、閉位置にもたらされた可動部材40を収容可能となっている。
図3(A),(B)に見られるように、収容部19Bは、端子配列方向で側方規制部17に対して内外の両側に及んでおり、該側方規制部17同士間に位置する内側の空間は、可動部材40の後述の本体部41および係止腕部44を収容するための本体収容部19B−1として形成されている。また、収容部19Bのうち、端子配列方向で側壁15と側方規制部17との間に位置する外側の空間は、可動部材40の後述の端腕部42を収容するための端腕収容部19B−2として形成されている。また、上記収容部19Bは、前後方向では、後述する第一端子20そして第二端子30の上腕部21,31の後端部の位置からハウジング10の前端部までにわたって形成されている。本実施形態では、収容部19Bが受入部19Aの上方に位置することとしたが、この「上方に位置する」とは、収容部19Bが受入部19Aと上下方向で一部重複して形成されている状態をも含む。
【0036】
また、弾性変位許容部19Cは、ハウジング10の四角枠状部分(前方枠部10A、後方枠部10Bおよび側方枠部10Cから成る部分)で囲まれるとともに上下方向に貫通した空間で形成されている。該弾性変位許容部19Cは、後述する第一端子20の下腕部22を収容するとともに、該下腕部22の下方への弾性変位を許容する。
【0037】
本実施形態では、端子は互いに形状が異なる二種の第一端子20および第二端子30とから成っている。該第一端子20および第二端子30は、
図6〜9に見られるような断面形状を有していて、交互に配列されている。
【0038】
第一端子20は、端子配列方向を幅方向とする帯状の金属板を板厚方向に屈曲して作られており、前後方向(
図6〜9での左右方向)に延び上下方向に弾性変位可能な上腕部21および下腕部22と、上腕部21と下腕部22の前端同士を連結する連結部23と、下腕部22から後方へ向けて延びる接続部24とを有している。第一端子20は、上述のような上腕部21、下腕部22および連結部23を有することで後方へ向けて開口した横U字状部分を形成しており、後述するように、該横U字状部分が左方から平型導体Cの受入れを可能としているとともに、受入時に弾性変位することにより上腕部21と下腕部22とで平型導体Cを挟圧可能としている。上記下腕部22の後端寄り部分は、ハウジング10の後方端子保持部13によって一体モールド成形で保持される被保持部22Bとして形成されている。
【0039】
第一端子20の接続部24は、第一端子20がハウジング10の後方端子保持部13で保持された状態にて、該後方端子保持部13から後方へ向けてクランク状に延出している。該接続部24は、その下面が上記後方端子保持部13の下面よりも下方に位置しており、回路基板の回路部と半田接続されるようになっている。
【0040】
第二端子30は、上記端子配列方向を幅方向とする帯状の金属板を板厚方向に屈曲して作られており、全体として略クランク状をなしている。第二端子30は、前後方向に延び上下方向に弾性変位可能な上腕部31と、該上腕部31よりも前方に延びる下腕部32と、上腕部31の前端と下腕部32の後端とを連結する連結部33と、下腕部32から前方へ向けて延びる接続部34とを有し、上記略クランク状をなしている。
【0041】
第二端子30の上腕部31は、下腕部32よりも幅狭となっており、その幅方向寸法は第一端子20の上腕部21の後半部(自由端側)の幅方向寸法とほぼ同じである。上腕部31は、前後方向での中間位置にて下方へ向けて突出するように屈曲形成された接触突部31Aを有しており、平型導体Cが挿入されたときには、弾性変位のもとで、該接触突部31Aで平型導体Cの回路部と接触可能となっている。一方、第二端子30の下腕部32の前端寄り部分は、ハウジング10の前方端子保持部11によって一体モールド成形で保持される被保持部が形成されている。
【0042】
第二端子30の連結部33は、下腕部32と同幅に形成されており、第一端子20の連結部23よりも前方に位置している。第二端子30の接続部34は、第二端子30がハウジング10の前方端子保持部11に保持された状態で、該前方端子保持部11から前方へ向けてクランク状に延出している。該接続部24は、その下面がハウジング10の前方端子保持部11の下面よりも下方に位置しており、回路基板の回路部と半田接続されるようになっている。
【0043】
上述の第一端子20と第二端子30の二種の端子自体は、本発明の主眼とするところではないので、これ以上の説明は省略する。
【0044】
可動部材40は、
図2,4,5に見られるように、端子配列方向に延びた略板状をなす本体部41と、
図2,5で該本体部41の両側外方位置で下方(閉位置での後方)へ向けて延びる端腕部42と、本体部41と端腕部42の上端同士を結合する結合部43と、該結合部43から延びU字形状をなして端子配列方向(コネクタ幅方向)に弾性を有する弾性被ロック腕
部45と、本体部41と端腕部42との間で結合部43から下方へ向けて片持ち梁状に延びる係止腕部44と、本体部41の両側端面の下部から端子配列方向外方へ延出するとともに端腕部42の下端に連結される軸部46とを有している。上記弾性被ロック腕45は端子配列方向で外方に向け被ロック突部45Aが設けられている。
【0045】
図1に見られるように、本体部41は、可動部材40が閉位置にあるとき、端子配列方向では、端子配列範囲全域にわたり、前後方向では、第一端子20そして第二端子30の上腕部21,31の後端部から接続部24,34の中間位置にまでわたるような寸法で形成されている(
図6をも参照)。
【0046】
本体部41は、
図4に見られるように、下端側部分(
図6(A)に見られる閉位置での後端側部分)が前方(閉位置での下方)へ向けて突出しているとともに、端子配列方向で各第一端子20そして第二端子30に対応する位置に、該第一端子20そして第二端子30の上腕部21,31の自由端部を収容するための収容溝部41Aが形成されている(
図6(A)参照)。このように、上記上腕部21,31の自由端部21B,31Bが収容溝部41A内に収容されることにより、収容溝部41Aの対向内壁面(上記配列方向に対して直角な面)によって、上記配列方向での上腕部21,31の自由端部21B,31Bひいては上腕部21,31の不用意な変位が規制される。本実施形態では、端子配列方向に見たときに、収容溝部41Aが後述する軸部46の領域内の近傍に設けられているので、可動部材40が閉位置から開位置にわたる移動範囲でのいずれの位置においても、上記上腕部21,31の自由端部21B,31Bの少なくとも一部が収容溝部41Aに収容されるようになっており、上記領域が軸部46(回転中心)近傍であって、可動部材40の開閉動作によってもあまり移動しないので、常に上記自由端部を含む位置にあり、上記自由端部21B,31Bの端子配列方向での変位を常に規制できる。また、収容溝部41Aは、可動部材40に形成されているので、この規制のために可動部材以外の別部材を設ける必要がなく、したがって、コネクタ1が上下方向で大型化することはない。
【0047】
図4に見られるように、本体部41は、上端側部分(
図6(A)に見られる閉位置での前端側部分)に、前方(閉位置での下方)へ向けて突出するとともに、端子配列方向で端子配列範囲にわたって延びる壁部41Bを有している。該壁部41Bは、その上面の前半部(閉位置での前面の下半部)が端子配列方向でのほぼ全域にわたって没入部41B−1が形成されていることにより、後半部、すなわち没していない部分が操作部41B−2として形成されている。そして、可動部材40が閉位置にあるときに、該操作部41B−2に指を引っ掛けることにより、可動部材40が開位置へ向けて回動されるようになっている。
【0048】
端腕部42は、
図3,
図4に見られるように、本体部41の両側外方位置で、下方(
図1にて後方)へ向けて延びているとともに、その下端に軸部46が連結されている。また、端腕部42は、端子配列方向に見て、クランク状に屈曲しており、閉位置での可動部材を示す
図3にて、前半部が後半部よりも上方に位置している。
【0049】
係止腕部44は、
図4に見られるように、自由端たる下端部に、前方(閉位置での下方)へ向けて突出する係止部44Aが形成されている。該係止部44Aは、
図6(C)に示されているように、可動部材40が閉位置にあるとき、ハウジング10の受入部19A内へ上方から突入しているとともに、側方基部14の上面に当接するか、近接している。また、
図6(B)に見られるように、係止部44Aの後端面には、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面44A−1が形成されており、挿入過程の平型導体Cの耳部C2の前端部が上記傾斜面44A−1に当接すると、その当接力を受けて係止腕部44が上方へ向けて容易に弾性変位する弾性腕部として形成されている。また、係止部44Aの前端面は、前後方向に対して直角な係止面44A−2として形成されており、該係止面44A−2が平型導体Cの被係止部C2Aに対して確実に係止して、該平型導体Cの不用意な抜出を防止するようになっている。
【0050】
上記係止腕部44には、自由端たる下端部に、端子配列方向で係止部44Aの側面から外方に突出する被規制部47も設けられている。該被規制部47は、端子配列方向に見たときに、上記係止部44Aの範囲の一部と重複する範囲をもって形成されている。図示の例では、被規制部47は、
図4にて弾性腕部の下面(
図4にて下面)と上記係止部44Aの上面(前縁)とが交わる屈曲部を含む領域に設けられている。こうすることで、係止部44Aが係止腕部44から突出する基点となる上記屈曲部と、上記被規制部47が係止腕部44そして係止部44Aとの境界となる段状角部とで、係止腕部44、係止部44Aそして被規制部47が一体的に設けられて互いに補強し合い、強度が向上する。該被規制部47は、可動部材40が閉位置にあるときに、ハウジングの側方規制部17に形成された凹状の規制部17C内に進入していて、規制部17Cの垂立側縁17C−1と前後方向で対面し、この方向で規制部17Cから規制を受ける位置関係にある。
【0051】
上記被規制部47は、該被規制部47よりもコネクタ幅方向一端側で外側部分を除去して示す断面斜視図である
図3(B)そして
図6(C)に見られるように、凹部形状をなす上記規制部17C内に収まる大きさそして位置に設けられていて、前後縁で上下方向に延び互いに平行をなし、前後方向で規制部17Cの垂立側縁17C−1と隙間をもって対面して規制を受けることのできる位置にある二つの被規制縁47A,47Bを有する多角形断面形状をなしている。被規制縁47A,47Bに隣接する斜縁47C、47Dは規制部17Cに対する入出を円滑に行うために斜縁として形成されている。
【0052】
さらに、可動部材40は、結合部43から延びる既出の弾性被ロック腕部45が設けられているが、該弾性被ロック腕部45は、開位置の可動部材40を示す
図5に見られるように、
図5にて前方にU字底部をそして後方にU字開放部を有するU字状をなしていて、コネクタ幅方向に弾性を有しており、後端側には被ロック突部45Aが形成されている。上記弾性被ロック腕部45の上面は、結合部43の上面と同一レベル面にある。被ロック突部45Aは、可動部材40が閉位置あるとき、ハウジング10のロック部15Bの下方で該ロック部15Bに対して係止可能に位置することにより、可動部材40が不用意に開位置へ回動することを防止している。本実施形態では、被ロック突部45Aは、可動部材40のコネクタ幅方向での両側端に設けられることとしたが、被ロック突部の位置はこれに限られず、ハウジング10のロック部15Bと相俟って対応していれば、どこにあってもよい。
【0053】
軸部46は、配列方向に延びる一つの軸線上に位置して、端腕部42から外方そして内方に延びる円柱体形状で、外側被支持部46Aそして内側被支持部46Bとしてそれぞれ形成されている。外側被支持部46Aは、基部から先端に向け一部が斜面46A−1となるように切り落とされていて先端面は半円となっている。内側被支持部46Bは円柱体形状のままである。
【0054】
既述のように、上記端腕部42は、側壁15と側方規制部17との間に位置する空間として形成された端腕収容部19B−2に収められるので、外側被支持部46Aは側壁15の支持孔部15Aに収められ、該支持孔部15Aにより回動可能に支持される。一方内側被支持部46Bは側方規制部17の支持凹部17Bに収まり、該支持凹部17Bによって回動可能に支持される。
【0055】
このような構成の可動部材40は、以下の要領で取り付けられる。まず、ハウジング10の二つの側壁15同士間に可動部材40を上方から進入させる。このとき、
図5のような姿勢で、可動部材40の軸部46の外側被支持部46Aに形成されて斜面46A−1が下側に位置していてこの斜面46A−1でハウジング10の二つの側壁15同士を軸線方向に押し広げる。そして、支点部10C−1を支点として、ハウジング10の側方枠部10Cの外側部分を端子配列方向での外方へ向けて弾性変位させながら、軸部46の外側被支持部46Aをハウジング10の側壁15の支持孔部15Aへ内側から進入させるとともに、軸部46の内側被支持部46Bをハウジング10の側方規制部17の支持凹部17Bへ上方から進入させる。そして、上記外側部分が自由状態に戻ることにより、可動部材40がハウジング10に取り付けられる。
【0056】
図1そして
図2(A)に見られるように、可動部材40が閉位置にあるとき、該可動部材40の本体部41および係止腕部44がハウジング10の本体収容部19B(
図3(A),(B)参照)内に収容されるとともに、可動部材40の端腕部42がハウジング10の端腕収容部19B−2(
図3(A),(B)参照)内に収容される。
図1に見られるように、可動部材40は、上記閉位置にて、上下方向でのほぼ全体が上記収容部19Bに収容されており、その分、コネクタ1の上下方向寸法を小さくすることができる(
図6(A)、
図7(A)、
図8(A)をも参照)。また、閉位置では、可動部材40が端子配列範囲を覆うので、これによって、第一端子20そして第二端子30に埃や塵が付着することが防止される。本実施形態では、可動部材40の上下方向でのほぼ全体が収容部19Bに収容されることとしたが、これに代えて、可動部材の上下方向での一部が収容部に収容されることとしても、収容されている寸法分だけコネクタ1の上下方向寸法を小さくすることができる。
【0057】
固定金具50は、端子配列方向でのハウジング10の両端寄り位置、かつ前後方向での後端側で該ハウジング10の側方基部14によって保持される。固定金具50は、端子配列方向を幅方向とする帯状の金属板を板厚方向に屈曲して作られており、ハウジング10に保持される被保持部(図示せず)と、回路基板の対応部に半田接続される固定部51とを有している。上記被保持部は、ハウジング10の側方基部14との一体モールド成形されて、該側方基部14に保持される。固定金具50は、後方へ向けて延出しており、その下面が上記側方基部14の下面よりも下方に位置しており、回路基板の対応部と半田接続されるようになっている。この半田接続が回路基板へのコネクタ1の固定に寄与する。
【0058】
次に、コネクタ1と平型導体Cとの接続動作を
図6〜9に基づいて説明する。
図6〜9は、上記配列方向に対して直角な面でのコネクタ1の断面図であり、それぞれ、平型導体Cの挿入前の状態、平型導体Cの挿入後の状態、挿入後に平型導体が抜出方向に引かれた状態、平型導体Cの抜出直前の状態を示している。また、
図6〜9の各図において、(A)は第一端子20の位置、(B)は可動部材の係止腕部44の位置、(C)は可動部材40の係止腕部44から延出する被規制部47の位置での断面を示している。
【0059】
まず、コネクタ1の第一端子20そして第二端子30の接続部24,34を回路基板の対応回路部に半田接続するとともに、固定金具の固定部51を回路基板の対応部に半田接続する。この固定部51の半田接続により、ハウジング10の側方枠部10Cの外側部分が回路基板に固定されるので、支点部10C−1を支点とする上記外側部分の弾性変位が規制される。この結果、ハウジング10から可動部材40が外れることが防止される。
【0060】
次に、
図6(A)〜(C)に示されるように、可動部材40を閉位置にもたらすとともに、コネクタ1の後方に平型導体Cを回路基板の面に沿って前後方向に延びるように位置させる。次に、平型導体Cを前方へ向けてコネクタ1の受入部19Aに挿入する。この挿入の際には、平型導体Cは、ハウジング10に形成された案内面14Bそして案内面16Aによって受入部19Aへ向けて案内される。また、受入部19Aへ挿入された平型導体Cは、ハウジング10の側方規制部17の側方規制面17A(
図3(A),(B)参照)によって幅方向で位置決めされる。また、平型導体Cは、ハウジング10の前方規制部18の前方規制面18Aによって、前後方向で位置決めされる。したがって、本実施形態では、受入部19Aに平型導体Cを挿入するだけで、該平型導体Cを所定の正規位置へ容易にもたらすことができる。
【0061】
受入部19Aへの平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cは、第一端子20の横U字状部分内に進入し、該横U字状部分を弾性変位させる。具体的には、平型導体Cの前端は、第一端子20の上腕部21の接触突部21Aに当接してその当接力の上下方向分力で該接触突部21Aを押し上げるとともに、第一端子20の下腕部22の支持突部22Aに当接して該支持突部22Aを押し下げることにより、上腕部21を上方へそして下腕部22を下方へ向けて弾性変位させて、上腕部21と下腕部22との間を押し拡げるようにして前進する。この結果、
図7(A)に見られるように、平型導体Cの挿入が完了した状態で、該平型導体Cは、上腕部21の接触突部21Aと下腕部22の支持突部22Aとによって上下方向で挟圧され、平型導体Cの上面に露呈した回路部(図示せず)と上腕部21の接触突部21Aとが接圧をもって接触する。
【0062】
本実施形態では、上腕部21の接触突部21Aが下腕部22の支持突部22Aよりも後方に位置しており、上腕部21の基部(連結部23に連結されている部分)から接触突部21Aまでの長さが、下腕部の基部から支持突部22Aまでの長さよりも大きくなっていて弾性撓みを生じやすい。したがって、平型導体Cが上腕部21と下腕部22との間に挿入された状態において、上腕部21は下腕部よりも弾性変位量が大きくなる。
【0063】
また、受入部19Aへの平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cの前端は、第二端子30の上腕部31の接触突部31Aに当接してその当接力の上下方向分力で該接触突部31Aを押し上げることにより、上腕部31を上方へ向けて弾性変位させる。この結果、
図7(A)に見られるように、平型導体Cの挿入が完了した状態で、平型導体Cの上面に露呈した回路部(図示せず)と上腕部31の接触突部31Aとが接圧をもって接触する。
【0064】
また、受入部19Aへの平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cの両側端寄りに位置する耳部C2が可動部材40の係止腕部44の後端に形成された係止部44Aの傾斜面44A−1に当接し、その当接力の上下方向分力で係止腕部44を上方へ向けて弾性変位させて平型導体Cの挿入を許容する位置にもたらす。さらに平型導体Cが挿入されて、耳部C2が係止部44Aの位置を通過すると、係止腕部44は弾性変位量を減ずるように下方へ向け変位して自由状態に戻り、平型導体Cの切欠部C1内に突入する。この結果、
図7(B)に見られるように、平型導体Cの挿入が完了した状態で、平型導体Cの被係止部C2Aが係止部44Aの係止面44A−2に対して係止可能に位置するので、平型導体Cの後方への抜出が阻止される。なお、係止腕部44が完全に自由状態に戻ることは必須ではない。例えば、係止腕部44が若干の弾性変位量を残した状態で、係止部44Aが平型導体Cの切欠部C1内に突入して被係止部C2Aと係止可能に位置するとともに、上記係止腕部44と側方基部14とによって平型導体Cの耳部C2を上下方向で挟み込むような構成にすることも可能である。
【0065】
次に、
図7(A)〜(C)の状態の平型導体Cを、意図する抜出前に、該平型導体が不用意な後方への過大な力を受けたときには、該平型導体Cが上記可動部材40の係止腕部44に設けられた係止部44Aを強く後方に引くために、
図8(A)〜(C)のように、可動部材40自体が後方へずれようとする。しかし、可動部材40には、上記係止腕部44から側方に突出した被規制部47がハウジングの凹状の規制部17C内にあって後方にずれても、
図8(C)に見られるように、上記被規制部47の後側の被規制縁47Bが上記規制部17Cの後側の垂立側縁17C−1と当接し、それ以上の移動は阻止される。したがって、可動部材40の外れや係止部44Aの破損という事態は生じない。上記ずれは、可動部材とハウジングとの間のガタの大きさが最大値となる。
【0066】
図7(A)〜(C)に示される状態、すなわちコネクタ1との接続状態にある平型導体Cをコネクタ1から意図して抜出する際には、閉位置にある可動部材40を回動させて、
図9(A)〜(C)に示される開位置へもたらす。
図9(C)に見られように、可動部材40が開位置にあるときには、回動した係止腕部44の係止部44Aは平型導体Cの切欠部C1から上方へ外れて位置し、被規制部47は規制部17Cよりも上方に外れて位置する。つまり、平型導体Cの被係止部C2Aに対する係止部44Aの係止状態そして、被規制部47に対する規制部17Cの規制状態が解除されて、平型導体Cの後方への抜出が許容される。そして、この状態で、平型導体Cを後方へ引くと、該平型導体Cを容易に抜出することができる。
【0067】
本発明において、係止腕部44に設けられる被規制部47は、可動部材40が閉位置へきたときに、ハウジングの凹状の規制部17Cへ下方へ向け進入する形式にとどまらず、下方と側方への動きをもって進入させることも可能である。
【0068】
図10のごとく、係止腕部44の係止部44Aを側内方から前方へ向け斜面として形成し、該係止部44Aの前端を被規制部47の前端と一致せしめる形状とし、平型導体Cが正規の挿入位置にあるときに上記被規制部47をハウジングの規制部17の側方に位置せしめる(
図11(A)参照)。平型導体Cの切欠部C1で形成される耳部C2の後端縁となる被係止部C2Aを上記係止部44Aに適合する斜縁としておくと、平型導体Cが正規位置では、
図11(A)のごとくの被係止部C2Aと係止部44Aの位置関係を有し、平型導体Cが強く後方に引かれると、被規制部47が平型導体Cの係止部44Aが平型導体Cの被係止部C2から後方に力を受け、その側方の成分の力で係止腕部44が側方へ撓んで被規制部47が同方向に変位するカム機能を有して、
図11(B)のように、規制部17Cへ進入する。その後の被規制部47の規制部17Cによる後方への規制は前出の例と同じである。上記係止部44Aと被係止部C2Aの関係は、両方が斜面でなくとも、少なくとも一方が他方に対して相対的に斜面でカム機能を有していれば良い。
【0069】
さらに、上記規制部17Cと被規制部47による規制力を挿入性を損なわずに高めるためには、係止部44Aに比して被規制部47の係止量を大きくすれば良く、
図11のごとく規制部17Cを凹部とせずにハウジング底部にまで貫通する孔部あるいは溝部として形成し、係止部44Aの高さ寸法を変えずに被規制部47の高さ寸法をそれだけ大きくすることも可能で、こうすることで、規制当接面高さが大きくなり、その分、規制力が高まる。
【0070】
本発明において、規制部は実施形態で示されたようにハウジングに形成されている場合に限定されず、ハウジングに取り付けられた部材、例えば、固定金具に形成されていてもよく、あるいは可動部材が閉位置にあるときに被規制部に当接可能な位置に形成することとしてもよい。また、被規制部が規制部に対する被規制位置への変位方向は下向きであってもよい。
【0071】
本発明において、可動部材に設けられている係止腕部は、図示の実施形態のように、後方に延びていることに限定せずとも、コネクタの幅方向となる側方に延びていれ
ば良い。要は、係止腕部が弾性腕部として形成されていて、可動部材が閉位置にあるときに、該係止腕部の先端に設けられた係止部が、平型導体の被係止部と係止する位置にくるようになっていれば良い。
【0072】
さらには、可動部材はハウジングの受入部を覆う板状となっていることを要しない。図示の実施形態では、ハウジングには、
図3(A)のように、端子配列域(前後そして幅方向範囲)を覆う上壁が設けられていないで、受入部が上方に全面的に開放されていたが、ハウジングにこの端子配列域を覆う上壁部を設けることとすると、可動部材はもはや受入部を覆う機能を要求されないので、可動部材を上記上壁部の両側縁そして前端縁が該上壁部を三方からかこむU字状枠体として形成することも可能である。