(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2の背骨の前記反転螺旋形状が、前記第1および第2の背骨の少なくとも一方に少なくとも沿って延びるサブパターンの波形を含む、請求項1に記載のステント。
各近位端と遠位端を形成する複数のレール部材をさらに有し、前記複数のレール部材の各々の前記近位端は前記第1の背骨に結合され、前記複数のレール部材の各々の前記遠位端は前記第1の背骨から周方向に延び、前記レール部材は前記第2の背骨内の複数の穴の1つと交差し、かつこれを通過するように構成されている、請求項1に記載のステント。
前記第1および第2の背骨が反転螺旋背骨であり、該反転螺旋背骨は、その頂点と谷の間を前記背骨に沿って延びる、概ね曲線状のサブ形態を形成している、請求項1に記載のステント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半径方向に拡張可能で、スライド可能に係合する、これらの周知のステントは、植え込み可能な装置と装置構成部品として使用される有望な候補であるが、本出願の発明者が扱おうとする機械的および血管力学上の制限を有している。これらの制限は、展開と関連した制限、血管力学的能力と関連した制限とに、特徴付けることができる。
【0006】
従来技術のステントの、展開と関連した制限をここに記載する。血管内空間、特に、血管インプラントを必要としている患者の血管内空間は一般に一貫性がなく、湾曲、プラークの蓄積、および他の内腔の閉塞に関し個々に応じて変わる。さらに、ステントの形状と構造は、ステントの別個の複数の領域が展開、たとえば拡張する速度と順序に影響を与えることがある。たとえば、ステントの一部分はステントの第2の部分よりも前に拡張することがある。一貫性のない、一様でない、の少なくとも一方のそのような展開は、従来技術のステントの展開と配置を、より困難で、より予測できないものにする。
【0007】
ステント植え込みの前に、プラークの減少を助ける、バルーン血管形成のような処置が医者に利用可能である。しかしながら、そのような処置の後でも、血管特性は患者を表したままであり、大いに一貫性がない。内腔の閉塞による干渉のような、血管の特性の不一致は、柔軟性、材料強度の分布、植え込まれる装置の血管適応性を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示された複数の実施態様の少なくとも1つにしたがって、ステントのような血管インプラントの構成が、該インプラントの展開特性に影響することが理解される。たとえば、ステントの形状と構造は、ステントの別個の領域が展開、たとえば拡張する速度と順序に影響を与えることがある。たとえば、少なくとも一部において、ステントの特性に基づき、ステントの一部分は、ステントの第2の部分よりも前に拡張することがある。いくつかの実施態様では、ステントが有利なことに、ステントの長手方向の長さに沿ってほぼ一様に展開するような特性でステントが設計されてよい。したがって、ここに開示された様々な実施態様は、動かなくなることなしに、概ね一様に展開、すなわち拡張することができるステントを提供する。
【0009】
さらに、ここに開示された少なくともいくつかの実施態様にしたがって、螺旋ステントが、該螺旋ステントの一方の端または両端から生ずるに違いない、螺旋ステントが、螺旋構成が巻き戻すときに動かなくなることまたは展開の問題にしばしば直面する、との認識がある。その結果、螺旋ステントの中心の拡張は、螺旋がその両端から「解かれる」まで遅れる。これらの拡張特性は、それらが、一様でない展開および構造特性を有するので満足できるものではない。したがって、これらの欠点に対処するために、本出願の発明者は、非常に改善された展開および構造特性を有利なことにもたらす反転螺旋背骨を有する反転螺旋ステントの様々な実施態様を開発した。そのような実施態様の詳細はここに記載され、かつ参照によって全体がここに含まれる、2009年10月9日に出願され、発明の名称が「拡張可能なスライドロックステント」である係属中の米国特許出願公開第12/577,018号明細書に開示されているような、様々な特徴、構造、材料構成、および他の特性を含むことができる。
【0010】
さらに、いくつかの実施態様にしたがって、ステントの形状と構造が、展開中にステントがステントの長手軸のまわりの捩れおよび回転を受けるかどうかに影響することがあることが理解される。ある例では、拡張の間、ステントの捩れを減らし、または最小にすること、たとえば、ステントの構成部品同士の間と、ステントと血管系の間の少なくとも一方の間の摩擦を減らすことによってステントの拡張を容易にすることが有利である。たとえば、ステントは、ステントの外周のまわりを少なくとも部分的に(たとえば、螺旋状に)延びてよい、長手方向に延びる構造(たとえば、背骨または背骨部材)を含むことができる。いくつかの場合では、そのような構成は展開を促し、捩れの柔軟性をもたらし、ステントのゆがみを減らす。ここに開示されているように、そのような構成が展開中に持ち運びの柔軟性をもたらすのみならず、ステントが動かなくなることを少なくすることを可能にする実施態様がここに開示されている。
【0011】
いくつかの実施態様にしたがって、ステントは、少なくとも1つのレール部材に連結された少なくとも1つの背骨を有してよい。背骨は概ねステントの長手軸に沿って延びていてよい。レール部材は概ね、ステントの周方向に延びていてよい。したがって、レール部材は管状部材の周の一部を形成することができる。一般に、レール部材は、管状部材が、折り畳まれた状態から拡張された状態へ拡張するのを許すように、背骨の、レール部材に対する一方向のスライド運動を許すように構成されることができる。
【0012】
背骨は管状部材のまわりを螺旋状に延びてよい。いくつかの実施態様では、背骨は、反転螺旋形状または反転螺旋構成を有してよい。「反転螺旋」形状は、軸方向に延びるにつれて周方向を変化させる形状と定義できる。いくつかの実施態様では、反転螺旋背骨の経路は、第1の軸方向と第1の周方向に管状部材のまわりに螺旋状に延びてよく、第2の周方向へのその経路を変えてもよい。たとえば、第1の周方向から第2の周方向へコースを変えることは、時計回りの周方向から反時計まわりの周方向に変えることを含んでよい。しかしながら、これらは圧縮方向であり、時計回りの周方向または反時計まわりの周方向のいずれかにおいてのみ変えることができる。
【0013】
いくつかの実施態様では、反転螺旋背骨は、背骨の方向または経路が変わる1つ以上の肘または点を形成できる。さらに、背骨の形状は、少なくとも1つの頂点、すなわち高い点と少なくとも1つの谷、すなわち低い点をも形成できる。たとえば、背骨は、横から見たとき、頂点、すなわち最上点に達するまで全体として正の傾きを有する概ね上方向に延びていてよい。同様に、背骨は、谷、すなわち最下点に達するまで全体として負の傾きを有する概ね下方向に延びていてよい。いくつかの実施態様では、背骨の形状は複数の頂点と複数の谷を有してよい。このように、反転螺旋形状は、起伏の形状、ジグザク形状、波形、正弦形状、などの少なくとも1つを含むと特徴付けることができる。驚くべきことに、そのような形状は、ステントの展開を促すことができる。さらに、そのような形状は、ステントの特性を、特定の用途の要件、たとえばステントの拡張速度、ステントを拡張する力、などに対して修正、選択の少なくとも一方を行うことを可能にする。
【0014】
さらに、いくつかの実施態様では、ステントの背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくともいくつかは尖り、すなわち鋭く曲がり、たとえば、のこぎり歯、三角形、などであってよい。いくつかの実施態様では、ステントの背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくともいくつかは湾曲し、滑らかで、丸く、面取りされ、などであってよい。さらに、いくつかの実施態様では、背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくともいくつかは尖り、他は丸くなっていてよい。いくつかの実施態様では、頂点または谷における概ね丸い、すなわち滑らかな曲線はステントの全体として丸い形状を促すことができる。さらに、概ね尖った頂点または谷は所望の強度、柔軟性または剛性の特性を増すことができる。このようにして、ステントのいくつかの実施態様は、ここでさらに述べるように、背骨の頂点と谷の形状と角度方向を操作することによって、局部的な剛性、強度、柔軟性、開通性、丸み、他の特性の少なくとも1つを生じるように構成されてよい。たとえば、丸い頂点は、頂点がステントの内腔内に突出しようとする傾向を減らすことがある。したがって、そのような特徴は内腔の開通性を維持するのを補助することができる。
【0015】
いくつかの実施態様にしたがって、反転螺旋背骨は曲線であってよい。たとえば、反転螺旋背骨は、1つ以上の連続した曲線、1つ以上の滑らかな曲線、連続的に変化する曲率、などの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの例では、反転螺旋背骨は、起伏する反転螺旋形状に形成されてよい。たとえば、反転螺旋形状は概ね、波パターン、のこぎり歯パターン、三角形パターン、長方形パターン、ジグザグパターン、など、の少なくとも1つで延びていてよい。さらに、背骨は、規則正しいパターン、繰り返しパターン、対称なパターンの、少なくとも1つのパターンで延びていてよい。しかしながら、ステントの他の実施態様では、背骨は、不規則なパターン、非繰り返しのパターン、非対称のパターン、の少なくとも1つのパターンで延びていてよい。
【0016】
したがって、背骨の反転螺旋形状は、ほぼどのような波形を含んでよい。たとえば、反転螺旋形状はほぼ一定の振幅を有していてよい。振幅は、背骨の長手軸に垂直に測った、隣接する頂点と谷の間の距離である。他の実施態様では、反転螺旋形状はほぼ非一定で、変化する振幅を有していてよい。
【0017】
さらに、いくつかの実施態様では、反転螺旋形状はほぼ一定の周期を有してよい。周期は、背骨の長手軸に平行に測った、隣接する頂点同士または隣接する谷同士の間の距離つまり間隔である。他の実施態様では、背骨の反転螺旋形状はほぼ非一定で、変化する周期を有していてよい。いくつかの例では、周期は1つの頂点と1つの谷を含んでよい。いくつかの実施態様では、周期は2つの頂点と1つの谷を含んでよい。いくつかの実施態様では、周期は2つの谷と1つの頂点を含んでよい。いくつかの例では、周期はステントの全長にわたることがある。
【0018】
ここに開示された少なくともいくつかの実施態様にしたがって、長手方向に延びる背骨構造の角度方向はステントの特性に影響することがあることが理解されている。たとえば、(ステントの長手軸に対して)緩い角度はステントの展開を容易にすることができる。逆に、(ステントの長手軸に対して)急な角度はステントの長手方向の柔軟性とステントの半径方向の強度の少なくとも一方を高めることができる。ここでさらに述べるように、ステントの柔軟性と展開の特性に関する驚くべき、かつ有利な結果は、ここに開示されたステントの構成を実施することによって、本願の発明者によって達成された。特に、滑らかな、曲線状の複数の頂点および複数の谷と、連続した複数の頂点と複数の谷の間の背骨の長さに沿った一連の短い位相の角度偏差を有する反転螺旋背骨を有するステント構成を実施することによって極めて優れた結果が得られた。
【0019】
さらに、いくつかの実施態様では、反転螺旋構成は、複数の短い位相すなわち脚要素を有するものと定義することができる。たとえば、正弦曲線の反転螺旋構成を有する背骨では、正弦曲線の、谷から頂点へ向かう各部分は短い位相すなわち脚要素であり、正弦曲線の、頂点から谷へ向かう各部分は短い位相、すなわち脚要素である。一般に、隣接する脚要素は、互いに対向する傾きを有し、たとえば、正の傾きを有する脚要素は通常、負の傾きを有する脚要素に続き、逆もまた同様である。
【0020】
いくつかの実施態様では、1つ以上の短い位相、すなわち脚要素は概ね真っ直ぐか概ね曲線であってよく、またはサブパターンまたは可変形状の構成を形成してよい。たとえば、いくつかの実施態様では、1つ以上の脚要素自体、波パターン、のこぎり歯パターン、三角形パターン、長方形パターン、ジグザグパターン、などの少なくとも1つを含んでよい。このようにして、いくつかの場合、背骨は反転螺旋形状を有してよく、1つ以上の脚要素は、概ね真っ直ぐな長さから逸れるパターンを有してよい。特に、ステントのいくつかの実施態様は、正弦曲線の反転螺旋背骨の複数の頂点と複数の谷の間を延びる波形サブパターンを有する正弦曲線の反転螺旋背骨を提供することができる。
【0021】
いくつかの実施態様では、脚要素のサブパターン、すなわち可変形状の振幅は反転螺旋背骨の振幅よりも小さい。驚くべきことに、反転螺旋背骨上でのサブパターンの使用は、有利なことに、ステントの一様な展開を促すことがわかった。たとえば、そのようなパターンオンパターンの形状は、ステントのゆがみを減らすことと、ステントの展開を促すことの、の少なくとも一方を可能にすることがわかった。さらに、そのような形状は、特定の用途の要件、たとえば、ステントの拡張速度、ステントを拡張させる力、など、のために、ステントの特性が修正と選択の少なくとも一方がされるのを可能にする利点も示すことができる。たとえば、ステントの局所化された特性は所与の結果のために設計することができ、このことはステントに対してかなりの利点とカスタマイズ能力をもたらす。
【0022】
さらに、本発明者は、ここに開示された反転螺旋ステントの実施態様が有利なことに、従来技術のあるステントでは可能ではなかったより長いステントの実現も可能にすることも見出した。従来技術のそのようなステントは、その長さが、ステントの拡張力の要件と、カテーテルバルーンの拡張力の限度のために制限されるので、「臨界長」を示している。ある大きさを越えると、いくつかのバルーンは、そのようなステントを正しく展開するのに十分には丈夫ではなかった。特に、螺旋ステントは、上記で述べた、動かなくなることの問題のために、ステントの中心に向けてバルーンに及ぼす過度の応力を生ずるおそれがある。しかしながら、ここで述べた反転螺旋ステントの実施態様は、ステントを展開するのに必要な拡張力を均一にし、ステントを拡張する局所化された結合(と、そのときに必要な追加の力)を避けることができる。このようにして、ここに開示された反転螺旋ステントの実施態様は、他の螺旋ステントと同じ臨界長さの制限を有していない。
【0023】
ここで述べた構造的特徴の多くは、ステントの周方向の向きに関して示し、記載したが、反転螺旋構成によってもたらされる特徴と利点のいくつかは、ステントの幅寸法において(たとえば、ステントの半径方向に沿って)実現することができる。いくつかの例では、反転螺旋構成は、背骨の厚さ寸法において(たとえば、ステントの半径寸法において)存在することができる。いくつかの実施態様は、背骨の幅および厚さの寸法において反転螺旋構成を有してもよい。
【0024】
ここに開示された実施態様は、拡張の間、ステントのゆがみを減らし、または最小にすることができる。ゆがみを減らし、または最小にすることは、たとえば、ステントの構成部品同士間と、ステントと血管系の間、の少なくとも一方の間の摩擦を減らすことができる。いくつかの例では、反転螺旋構成は、たとえば、拡張の間のステントの種々の構成部品の相対運動を減らすことによって、展開の間、ステントが動かなくなることを減らすことができる。たとえば、反転螺旋構成は、拡張の間、ステントの一端がステントの第2の端の位置から回転するのを減らすことができる。
【0025】
ここに開示された実施態様の少なくとも1つにしたがって、さらなる理解は、ステントの構成が、ステントの展開された形状に影響を与えることあることである。いくつかの実施態様では、展開されたステントがほぼ丸い、たとえば、横断面が円形であることが望ましいかもしれない。ほぼ丸いステントは、たとえば、ステントの強度の改良と、ステントの、血管系における配置を容易にすることができる。ここに開示された実施態様の少なくとも1つでは、ステントは、展開された状態においてほぼ丸い形状を容易にする機能を含む。ステントは、ステントの丸さを促す、長手方向に延びる構造(たとえば、背骨)のような、1つ以上の構成部品を含んでよい。たとえば、背骨は、ほぼ正弦曲線のように形作られてよい。特に、正弦曲線の背骨の少なくとも1つの頂点は湾曲し、たとえば、尖った頂点または鋭い角度を有するものとして形成されていない。そのような丸い頂点はステントの丸い全体形状、すなわち丸さを促すことができる。たとえば、丸い頂点は、該頂点がステントの内腔内に突出する傾向を減らすことができる。
【0026】
いくつかの実施態様では、驚くべき結果として、複数のレール部材が反対の周方向に選択的に向けられる構成を実施することによって、丸さをさらに促すことが見出された。たとえば、いくつかの実施態様では、第1のレール部材は第1の方向に周方向に延び、第2のレール部材は第2の方向に周方向に延びてよい。いくつかの構成では、第1および第2のレール部材が延びる方向は、レール部材と長手方向に延びる構造がなす角度に関連し、または該角度に依存していてよい。たとえば、いくつかの場合では、第1および第2のレール部材は、レール部材と長手方向に延びる背骨または構造がなす角度が鋭角になるように、所与の周方向に延びている。したがって、他の特徴、たとえば、非反転構造を有するステントと比較して、反転螺旋背骨はステントの丸さを促すことができることがわかった。
【0027】
いくつかの実施態様では、背骨は1つ以上の係合要素を含んでよい。係合要素は、穴、窪み、通路、開口部、突起部、そして他のそのような構造、の少なくとも1つを有してよい。ここに例示された多くの実施態様では、係合要素は、ステントの長手軸に沿って延びる、対応するレール部材を受け入れるように構成されてよい穴を有している。いくつかの場合では、複数の穴と複数のレール部材の少なくとも一方は、レール部材の、穴に対する一方向のスライド運動のみを許すように構成されたロック機構を有している。いくつかの場合では、ロック機構は、1つ以上の歯、尾根、へら、戻り止め、ラチェット、斜面、フック、止め具、など、の少なくとも1つを有してよい。
【0028】
いくつかの実施態様では、穴は、ステントの長手軸に対して傾いていてよく、これはステントの特性に有利に影響することがある。たとえば、(ステントの長手軸に対して)よりゆるい角度は、ステントを展開するのに必要な力を減らすことができ、したがってステントの展開を容易にすることがある。(ステントの長手軸に対して)より急な角度は、ステントの長手方向の柔軟性とステントの半径方向の強度の少なくとも一方を増すことができ、したがって、丈夫で、しかしより柔軟なステントをもたらす。
【0029】
いくつかの場合では、穴角度は、背骨と脚要素の少なくとも一方の上記の反転螺旋構成に沿った穴の位置によって少なくとも一部が求められる。たとえば、穴を、反転螺旋構成のより急に傾いた部分に配置することにより一般に、より急な穴角度を生ずる。逆に、穴を、反転螺旋構成のよりゆるく傾いた部分に配置することにより一般に、よりゆるい穴角度を生ずる。
【0030】
穴は、脚要素全体の(ステントの長手軸に対する)角度とは異なる角度で配置されてよい。たとえば、いくつかの場合では、脚要素は、ステントの長手軸から約10°から約45°傾き、穴はステントの長手軸から約5°から約60°傾いている。いくつかの実施態様では、穴角度の絶対値は、少なくとも約0°と約60°以下の間にあってよい。穴角度の絶対値は、少なくとも約10°と約50°以下の間にあってもよい。さらに、穴角度の絶対値は、少なくとも約20°と約40°以下の間にあってもよい。穴角度は、少なくとも約30°と約35°以下の間で変えてもよい。最後に、図示のように、穴角度の絶対値は、約10度、33度、40度であってよい。さらに、穴角度は、一方で拡張を、他方でステントの柔軟性を容易にするように構成された種々の所望の角度またはこれら所望の角度の組み合わせであってよいことが考えられる。
【0031】
複数の穴を有する実施態様では、各穴は、隣接する穴の角度とは異なった角度で配置されてよい。たとえば、3つの穴を有する実施態様では、第1の穴は第1の角度で傾けられよく、第2の穴は第2の角度で傾けられてよく、第3の穴は第3の角度で傾けられてよく、第1、第2、第3の角度は等しくない。
【0032】
一般に、各穴角度は選択することができる。有利には、ステントの構成部品の様々な角度がステントの特性に影響を与えることがあるという、上記で述べた理解を踏まえて、選択可能な穴角度を使用することは、ステントが特定の用途に対してカスタマイズされることを可能にする。たとえば、半径方向の強度と長手方向の柔軟性の少なくとも一方が望まれる用途では、より急な穴角度が使用されてよく、拡張の容易さが望まれる用途では、よりゆるい穴角度が使用されてよい。有益なことに、急な穴角度とゆるい穴角度の組み合わせを有するステントは、半径方向強度と、長手方向の柔軟性と、拡張の容易さのバランスをもたらすことができる。
【0033】
上記で述べたように、管状部材は、背骨にスライド可能に連結され、管状部材の周の一部分を形成する1つ以上のレール部材を含んでよい。「レール部材」という用語は、ステントの少なくとも1つの背骨と相互接続する、周方向に延びる細長い1つ以上のレールを指してよい。いくつかの実施態様におけるレール部材は、半径方向の要素を形成するために、隣接するレール部材と連結され、または該レール部材で形成されていてよい。たとえば、半径方向の要素は、そこから一対のレール部材が延びている概ねU字形状であってよい。いくつかの実施態様は、1つ以上の各背骨と相互接続する複数の隣接したレール部材またはレール要素を含んでよい。さらに、レール部材とレール要素の少なくとも一方の複数のグループは、周方向のバンドまたは半径方向のモジュールを形成するために、周方向に関連付けられてよい。いくつかの構成では、半径方向のモジュール内の各半径方向要素は異なった背骨に連結されてよい。たとえば、第1および第2の半径方向要素を有する半径方向モジュールを備えた実施態様では、第1の半径方向要素は第1の背骨に連結され、第2の半径方向要素は第2の背骨に連結されてよい。
【0034】
いくつかの構成では、半径方向モジュール内の各半径方向要素は、異なった背骨の係合要素に滑って係合されてよい。いくつかの実施態様では、係合要素は、穴、通路、流路、背骨を貫通してまたは背骨に沿って延びる開口部の少なくとも1つを含んでよい。たとえば、第1および第2の半径方向要素を有する半径方向モジュールを備えた実施態様では、第1の半径方向要素は、第2の背骨にある係合要素に滑って入れられ、第2の半径方向要素は、第1の背骨にある係合要素に滑って入れられてよい。勿論、他の部材、半径方向要素と背骨の組み合わせが考えられ、たとえば、1つ、3つ、4つ、など。前に述べたように、半径方向要素と穴の少なくとも一方は、半径方向要素の、係合要素に対する一方向のスライド運動をもたらすように構成されてよい。
【0035】
ここに開示された実施態様の少なくとも1つにしたがって、さらなる理解は、モジュラーステントが有利なことに、所与のステント構造が複数のステント長さをもたらすのを可能にすることである。そのような構造では、ステントの全体長さは、モジュールを追加し、または間引くことによって長くしたり、短くしたりできる。同様に前に触れたように、複数のモジュールは、周方向および対応する軸方向長さをステントに与えることがある。さらに、モジュールの軸方向長さは、反転螺旋構成を有しようとまたは通常の螺旋構成を有しようと、背骨の周期性に対応することできる。このように、モジュール構造は、ステントの全体長さを作り上げるために使用されてよい1つ以上のモジュールまたは部分の使用を指すことができる。モジュール構造は一般に、所望の大きさを得るために、複数のモジュールまたは複数の部分の追加と間引きも可能にする。さらに、背骨と、対応するレール部材またはレール要素を含む、長手方向のモジュールまたは部分は、ステントの最大および最小の直径を修正するために、ステント構造に追加され、またはステント構造から取り除かれてもよい。このようにして、モジュール構造を備えたステントは、たとえば、所望の拡張直径または拡張長さを得るために、(長手方向または周方向の部分またはモジュールを追加または間引くことによって)有利なことに修正することができる。たとえば、増大した拡張直径を得るために追加の背骨をステントに追加してもよい。さらに、追加の半径方向のモジュールまたは部分を、(背骨の長さを長くし、背骨に対応する追加のレール部材またはレール要素を設けることが必要となるであろう)より長いステントを得るために追加されてよい。
【0036】
いくつかの実施態様では、ステントが、周と長手軸を有する管状部材を有する拡張可能なスライドロックステントが提供される。ステントは、第1の背骨と第2の背骨と少なくとも1つのレール部材を有する。第1および第2の背骨は各々反転螺旋形状を有してよい。第1および第2の背骨は、周の少なくとも一部に沿って、および長手軸に沿って延びてよい。いくつかの実施態様では、第1および第2の背骨は、反転螺旋背骨の頂点と谷の間の背骨に沿って延びる概ね曲線状のサブ形態を形成する反転螺旋背骨であってよい。
【0037】
いくつかの実施態様では、第1および第2の背骨の少なくとも一方は、1つ以上の別個の部分を形成してよい。これら別個の部分は、背骨の係合要素同士の間を延びる、背骨の部分を有してよい。さらに、別個の部分は、複数の係合要素が配置されている背骨の部分を有してもよい。さらに、背骨は、2つ以上の部分に、そしていくつかの実施態様では、4つ以上の部分に分割されてよい。別個の部分の数は、背骨の全体経路が所望の角度方向、柔軟性のプロファイル、強度特性を達成する限り、偶数または奇数であってよい。
【0038】
別個の部分は別個の螺旋角度を定める。別個の螺旋角度は、別個の部分の、ステントの長手軸に対する角度方向の概略の測定値であってよい。いくつかの実施態様では、背骨の1つ以上の別個の部分は、他の別個の部分の別個の螺旋角度と同じかまたはこれとは異なる別個の螺旋角度を定めてよい。さらに、いくつかの実施態様では、別個の螺旋角度は、係合要素または背骨の穴のところで測った穴角度と称することができる。
【0039】
さらに、いくつかの実施態様は、1つ以上の別個の部分が概ね曲線であるように構成されてよい。曲線の形状は、増加する正の傾き、減少する正の傾き、増加する負の傾き、または減少する負の傾きを有する。したがって、背骨の真っ直ぐな部分または尖った部分とは逆に、曲線の別個の部分はステントの改善された柔軟性、曲げ強度、及び丸さをもたらすことができる。
【0040】
レール部材は近位端と遠位端を定めることができる。レール部材の近位端は第1の背骨に連結されてよい。レール部材の遠位端は周方向に第1の背骨から延びてよい。レール部材は第2の背骨内の係合要素に係合するように構成されてよい。さらに、レール部材は、管状部材が、折り畳まれた状態の直径と拡張された状態の直径の間で拡張できるように、第2の背骨の、第1の背骨から遠ざかる一方向の運動をもたらすように構成されてよい。
【0041】
背骨の反転螺旋形状は反転起伏形状を含んでよい。反転螺旋形状は、正の傾きを有する部分と、負の傾きを有する部分を有してよい。正の傾きを有する部分と、負の傾きを有する部分の少なくとも1つは、複数の波形をさらに有してよい。複数の波形は複数の連続した曲線を含んでよい。さらに、レール部材と第2の背骨の交差は斜角をなしていてよい。
【0042】
ステントは、近位端と遠位端を形成する複数のレール部材をさらに有してよい。複数のレール部材の各々の近位端は第1の背骨に連結されていてよい。複数のレール部材の各々の遠位端は、第1の背骨から周方向に延び、第2の背骨内の複数の穴の1つと交差し、これを通過するように構成されていてよい。
【0043】
さらに、背骨内の1つ以上の穴は、ステントの長手軸に対して斜めに延びる穴角度を定めてよい。たとえば、背骨内の穴のこれらの穴角度は、ここでさらに述べるように、互いに異なっていてよい。たとえば、いくつかの実施態様では、複数の穴角度の各々は、隣接する穴角度と比較して長手軸に対して異なった角度で配置されてよい。さらに、複数の穴角度は互いに概ね等しくてもよい。
【0044】
いくつかの実施態様では、レール部材は、ステントの一方向の拡張をもたらすために穴と係合する1つ以上の歯を有してよい。したがって、いくつかの実施態様では、穴は、中央の通路と、レール部材の歯と係合する少なくとも1つの内部窪みを有してよい。
【0045】
他の実施態様にしたがって、ステントとステントの構成部品を製造する方法が提供される。たとえば、ここに開示された実施態様のいずれも、反転螺旋背骨、別個の複数の部分(それらの構成に依存する)、など、のような、開示された構造を最初に形成することによって作ることができる。たとえば、中央通路を第1の貫通穴として、背骨内にステントの周方向に形成することと、少なくとも1つの内部窪みを第2の貫通穴として、背骨内に、第1および第2の貫通穴が部分的に重なるように、中央通路の周方向に対して横方向に形成すること、を有する、ステントを形成する方法が提供されてよい。
【0046】
次に、いくつかの実施態様にしたがって、管状部材を構成するために相互接続された複数の半径方向構成部品を有してよい拡張可能なステントが提供される。ステントは、複数の穴を有する少なくとも1つの反転螺旋背骨を有し、複数のレール部材をさらに有してよい。反転螺旋背骨は、その頂点と谷の間の背骨に沿って延びる概ね曲線状のサブ構造を形成してもよい。さらに、レール部材は、ステントの一方向の拡張を容易にするために、螺旋支持部材の穴の中に入れられてよい。拡張可能なステントは生体吸収可能なポリマーから作られてよい。さらに、これらのステントは、金属のステントと同等の構造特性を示すように構成することができる。
【0047】
さらに、起伏のある螺旋背骨と複数の細長いリブ要素を有する、拡張可能なスライドロックポリマーステントを形成する半径方向の構造、モジュール、または要素が設けられてよい。起伏のある螺旋背骨は複数の係合穴と複数の接続穴を有してよい。少なくとも1つの係合穴が背骨に沿って、連続した接続穴同士の間に間隔をおいてよい。複数の細長いリブ要素は近位部分と遠位部分を有してよい。近位部分は、連続して穴が形成された背骨の1つ以上の接続穴に接続可能であってよい。各リブ要素は、長手軸の周りに概ね周方向に配置可能で、螺旋背骨に対して垂直でない角度で固定した係合を有してよい。
【0048】
複数の細長いリブ要素は、拡張可能な管状の骨格を形成するように、他の半径方向要素の少なくとも1つの他の起伏のある螺旋背骨と相互接続するように配置されてよい。細長いリブ要素は、他の半径方向要素の螺旋背骨の複数の係合穴の一方向の、スライド可能な係合をしてよい。管状の骨格は、リブ要素のスライド可能な係合が螺旋背骨に対して周方向に動くと、折り畳まれた状態の直径と、拡張された状態の直径の間を半径方向に拡張するように構成されてよい。さらに、スライド可能な係合は、管状の骨格が、拡張された状態の直径から折り畳まれた状態の直径へ向かって折り畳まれるのを抑える機構を含んでよい。
【0049】
いくつかの実施態様では、起伏のある螺旋背骨は、細長いリブ要素の、厚さの薄い部分に対する少なくとも部分的な入れ子を可能にする厚さの薄い部分を有してよい。さらに、一対の細長いリブ要素は、クロスバーによってそれらの遠位部分において相互接続されてよい。クロスバーは、複数の半径方向要素を用いて形成されたステントの一時的な外形を減らすために、隣接する半径方向要素の細長いリブを少なくとも部分的に受け入れるように構成されたオフセット部分を含んでよい。次に、起伏のある螺旋背骨は、概ね一定の半径と長手軸に対して螺旋角度とで螺旋状に延びてよい。係合穴は、半径方向要素の長手軸に垂直な平面内を、概ね周方向に延びる中心軸を定める貫通穴を有してよく、係合穴の中心軸は螺旋背骨に対して、垂直でない角度で延びてよい。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、ここに開示された実施形態の上記および他の特徴を、実施形態の図面を参照して説明する。示された実施形態は例証を意図しているが、実施形態を限定することは意図していない。
【0052】
ここで述べるように、上記で要約され、列挙された特許請求の範囲によって規定されたステントの実施形態は、添付の図面と一緒に読まれるべき以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解される。以下に、当業者が1つの特定の具体化を構築し、使用することを可能にすることを意図した、実施形態のこの詳細な説明は、列挙された請求項を限定するのではなく、その特定の例として働くことを意図したものである。説明は様々な実施形態を特に詳しく述べるが、該説明は一例に過ぎず、説明を限定するものと決して解釈されてはならない。さらに、当業者に起こりうる、実施形態の様々な応用、実施形態に対する修正が、ここに記載された一般概念に含まれる。
【0053】
[概説]
ここで述べるように、ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、血管インプラントは、引渡しに関係するいくつかの機械的制限に直面することがあるという認識がある。たとえば、血管系のいくつかの部分は湾曲し、またはほぼ非円筒形である。血管系のこれらの部分は、ステント装置を展開するのが困難であることがわかっている。ときどき、血管の湾曲によって、展開されたステント、特に構造上、柔軟性が不十分なステントが折れ曲がることがある。湾曲した血管は、以下に詳しく説明するヒンジングとデンティングの可能性をさらに増大させる。
【0054】
血管インプラントは、展開後にいくらかの反力を受けることもある。これらの反力のいくつかは、血管系の、結果として生ずる運動、狭窄、ねじれ、である血管力学とここでは呼ばれるものの結果である。これらの反力の中の1つが、血管の拡張後の弾性反力によって引き起こされる破砕力である。
【0055】
さらに、いくつかのステントは、閉塞に起因する押し込み力、つまり内腔の閉塞の、ステント装置への直接の衝撃からに起因する点力を経験する。そのような内腔の閉塞はプラークまたは血栓であってよい。拡張とねじれのような他の反力を以下で詳しく述べる。
【0056】
少なくともいくつかの実施形態の態様にしたがって、半径方向に拡張可能で、スライド可能に係合する、既知のステントは、本出願の発明者がここで「ヒンジング」と呼ぶものを経験することがある、という認識である。スライド可能に係合する、拡張可能な多くのステントは、係合体が概ね長手方向に整列し、それによって複数の破壊点の配列が本質的に生ずる共通の制限を有している。破壊点は、ステントの構造上の弱点、通常、2つの部品が、スライド可能に係合したレール部材とゴア半径方向モジュールと間の係合のような、永久的でない方法で一緒に結合させられる点である。ある大きさの半径方向圧力が、拡張さえられたステントにかけられると、ステントは破壊点において座屈し、または折れ曲がる傾向がある。長手方向に整列した一続きの破壊点は材料内で目打ちとして働き、かなりの弱さとヒンジングの傾向を引き起こす。
【0057】
プラークに関連する他の問題をここでは「デンティング」と称す。デンティングは、血管の閉塞が少なくとも1つのステントモジュールの一部を内腔空間に押しやり、それによって血管の閉塞の作用をかなり高める、装置パターンの固有の脆弱性によって引き起こされる。そのような閉塞またはへこみは、問題があり、狭窄を増大させる可能性のある、血栓の集積、すなわち流れの歪につながる可能性がある。
【0058】
血管プラークは通常、一様ではなく、しばしば大きな閉塞に形成され、このような閉塞は、点力によってステントに追加の応力を加え、ヒンジングまたはデンティングの危険を増大させることがある。
【0059】
本出願の発明者は、デンティングは血管力学を著しく弱め、またはこれを著しく妨げる可能性があり、したがって狭窄の増大を引き起こすことがあることを認識した。さらに、ポリマーのステントが、時間の経過と共に、増大した延性に適合するデンティングは、移植を行っている医師に直ちにはっきりと見えるものではないかもしれない。
【0060】
ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、ステントのような血管インプラントの構成は、インプラントの展開特性をもたらすことがあるという認識である。たとえば、ステントの形状と構造は、ステントの別個の複数の領域が展開、たとえば拡張する速度と順序に影響を及ぼすことがある。たとえば、ステントの特性に少なくとも一部基づいて、ステントの一部分は、ステントの第2の部分よりも前に拡張することがある。いくつかの実施形態では、ステントは、ステントが有利にはステントの長手方向の長さに沿ってほぼ均一に展開するような特性で設計されてよい。したがって、ここに開示された様々な実施形態は、動かなくなるこなしに概ね一様に展開、すなわち拡張できるステントを提供する。
【0061】
ここに開示されたいくつかの実施形態にしたがって、ステントはスライド可能に拡張可能であってよい。ステントの形状は一般に管状部材として記載してよい。管状部材は、折り畳まれた状態と、拡張された状態を有してよい。
【0062】
多くの装置は、水吸収平衡点まで時間の進行とともに実質的にかなり延性と柔軟性がある生体分解性のポリマーから製作される。水が吸収されるにつれて、ポリマー材料は曲げられるようになり、または延性が生じる。異なったポリマー組成は、様々な吸湿速度を有することになる。本出願の発明者は、微小な裂け目を生じる傾向が小さくなるような、ポリマー材料への制御された水の吸収の利点がわかった。さらに、本出願の発明者は、設計パターンが、支持されていない隣接する構成部品をもたらすデンティングの傾向のような不利益がわかった。デンティング発生の可能性は、構造物の背骨の支持がないステントパターンの場合に、特に、脆弱な性質を有する安全でない隅または他の点が存在するときに増大する。デンティングが発生する程度は、展開の作業の後、数時間までは定められず、したがってデンティングの可能性を小さくすることが重要であり、目標装置の設計パターンを改善する。
【0063】
ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、本出願の発明者は、機械的に改善されたステント構造は、上で述べた制限の1つ以上を克服し、さらに血管系の力学に対する適応性を増大しようとすることがわかった。
【0064】
従来技術の多くのステントの実施形態は、破砕力に対して設計され、内腔空間の開通性を維持している。内腔の開通性は主要な関心事であるが、血管のうまくいった治療と治癒に向かうのではなく、機能性以上のことをするために対処されなければならない他の要素が存在する。
【0065】
血管系は動的システムである。定量化するのは難しいが、血管系は、時間の所与の瞬間にいくつかの動的な運動を経験することがある。これらのうちの1つが波状の膨張であり、これは、血管の所与の位置における内部直径にばらつきを呈する。膨張は、血圧の変化または循環内の他の変化から起こりうる。さらに、血管系の部分は、膨張に加えて、ねじれまたはねじれ状の運動を経験することがある。プラークまたは内腔閉塞がある場合、血管系は、これらの自然の運動に対する抵抗を経験することがある。そのような抵抗は、隣接する組織が、細胞の分割または、新生内膜の成長として知られている血管内細胞成長のような細胞応答を受けるようにする。新生内膜成長は、細胞の遊走および増殖によって特に、人工器官上またはアテローム性動脈硬化症において形成された、動脈内膜の新しい、または厚い層である。
【0066】
臨床データは一般に、ステントのインプラントが、移植の直後に、血管内の新生内膜成長を活性化することを示している。新生内膜成長は、血圧がかなり上昇した点または内腔が閉塞され、血液がもはや効率的に通過することができない点まで容認できる。
【0067】
特に、血管力学系に対する抵抗は、植え込まれた血管装置を取り囲む狭窄を劇的に増大させる可能性があると考えられる。したがって、血管系の力学を理化し、周期的な膨張とねじれのような、脈管力学系に関連する運動を促進しつつ、内腔の開通性を維持することができるステントを設計することが重要である。血管系の力学を含むように設計されたステントは、血管をより良好に治療し、最終的に治癒させる働きをすることができる。
【0068】
一般に、新内膜成長は、植え込まれたステントを取り囲み、ステントをほぼ、新たな血管壁内に存在させる。この状態では、ステントの機構が、さらなる狭窄を最小にするうえで重要である。
【0069】
ステントは、一般的に生体適合性のあるどのような材料からも作ることができるが、生体分解性があり、生体吸収性のあるポリマーから作られたステントを使用する動きがある。生体分解性は、バルク腐食、表面腐食、またはこれらの組み合わせとしてしばしば発生する、ポリマーの構造的分解である。生体吸収性は、分解されたポリマーの細胞代謝を含む。本出願の発明者は、血管の治癒と治療を高めるために、ポリマーの分解と吸収の性質を利用することができるステントの設計に乗り出した。
【0070】
いくつかの実施形態では、破壊点の一様な分布を有するステントが提供される。この一様な分布は、ヒンジングとデンティングの可能性を除去できなくても最小にすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、血管力学系の運動に合わせることができ、したがって血管の狭窄を最小にする、回転する柔軟な背骨を有するステントが提供される。
【0071】
いくつかの実施形態では、ステント材料の最初の分解が、ステントを、新しい血管壁内の回転する柔軟で、脈管に適合した支持体に変換するように、新内膜成長で効率的に封入されることができるステント構造が提供される。
【0072】
要約すれば、半径方向に拡張可能で、滑って係合する、改良された内腔支持構造、すなわち、ヒンジングを防ぐように破壊点をステント装置の周りに一様に分布させる構造、デンティングを防ぐように、構成部品に適切な支持体を与える構造、血管系に有効なステント植え込みを与えつつ、微小な裂け目を防ぐように、水吸収の効果を含む構造、新生内膜に閉じ込められたとき、治療された血管に血管運動を回復させることができる構造、小さい断面で引渡しできること、バルク材の厚さが薄いこと、高精細な調整、砂時計の形状のような、形状のカスタム化、のような、半径方向に拡張可能で、スライド可能に係合する支持構造の周知の特性を含む構造、に対する必要性が依然として存在する。
【0073】
本発明の実施形態にしたがう、拡張可能なステントが開示される。ステントは、内腔の開通性、柔軟で、血管に適合した背骨構造、そしてスライド可能な係合体の一様な周方向分布を維持する半径方向支持体を提供することができる。
【0074】
半径方向の拡張と、身体の内腔の開通性を維持できることは別として、本開示は、ヒンジング、デンティング、そして血管力学運動の制限の上記の問題に対する解決策を提供する。
【0075】
ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、ヒンジングの傾向が、ステントの長手軸とほぼ平行な係合手段の配列を有するステント構造では増大すると言う認識がある。さらに、ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、デンティングの可能性が、支持背骨を含め、これらの部材または内腔、ここでは細長い部材の開通性を維持することに関連する機構の先端および角を固定することによって最小化される、と言う認識がある。
【0076】
さらに、ここに開示された実施形態の少なくとも1つにしたがって、内腔の開通性を維持しつつ、血管力学の自然な運動を促し、かつこれに合わせるに十分な柔軟性を有するステントを提供することが重要である、との認識がある。さらに、波状の膨張運動とねじれ運動のような、血管力学の運動に合わせるようにステントの柔軟性を改善することによって狭窄を最小にすることができる。
【0077】
「ステント」という用語はここでは、(1)冠状血管、神経血管、そしてたとえば、腎臓、腸骨、大腿骨、膝窩、鎖骨下動脈、及び頸動脈の末梢血管のような血管組織内腔(すなわち、動脈と静脈の少なくとも一方)、(2)現在扱われているような、非血管組織内腔、すなわち、消化器内腔(たとえば、胃腸、十二指腸、食道、胆管)、呼吸器内腔(たとえば、気管、気管支)、そして泌尿器内腔(たとえば、尿道)、において配置のための実施形態を指すのに用いられ、(3)さらに、そのような実施形態は、生殖、内分泌線、造血と外皮の少なくとも一方、筋骨格/整形外科系、そして神経系(聴覚と眼科の応用を含む)のような他の体組織の内腔において有用である、(4)最後に、ステントの実施形態は、閉塞された内腔を拡張し、閉塞を引き起こすのに有用である(たとえば、動脈瘤の場合のように)。
【0078】
さらに、「ステント」という用語はここでは、身体内腔の開通性を維持する支持構造、血栓フィルターと心臓弁を固定する支持構造、ならびに治療薬と他の装置の分配と引渡しのための支持構造、のような実施形態を指すのに使用される。
【0079】
実施形態の以下の説明では、「ステント」という用語は、「人工器官」という用語の代わりに用いることができ、身体通路の一部を支持するように構成された様々な装置を含むように広く解釈されるべきである。
【0080】
さらに、「身体通路」という用語は、ここに記載されたもののような、身体内の内腔または導管を含むものと理解されるべきである。
【0081】
なお、さらに、「形状記憶材料」という用語は、ニッケル−チタン合金のような種々の周知の形状記憶合金と、かなりの塑性変形を受けた後に、予め定められた形状に戻る他の材料を含む広義の用語であると解釈されるべきである。
【0082】
ここで使用される「半径方向強度」という用語は、ステントが、臨床的に著しい損傷を受けることなく、耐えることができる外圧を表す。バルーンを拡張可能なステントは一般に、その大きい半径方向強度のために、血管の開通性を保証するように冠状動脈内で使用される。身体内腔内での展開の間、バルーンの膨張は、ステントを特定の所望の直径に拡張するために調整することができる。したがって、バルーンを拡張可能なステントは、正確な配置と大きさを決めることが重要な用途に使用することができる。バルーンを拡張可能なステントは、ステントの展開の前に血管を事前に膨張させることがない直接ステント植え込み用途、または、事前膨張処理に続く補綴用途(たとえば、バルーン血管形成術)に用いることができる。直接ステント植え込みの間、膨らませることができるバルーンの拡張は血管を広げ、同時にステントを拡張させる。
【0083】
[ステントの全体形状]
ここに開示された原理にしたがって、ステントの形状を管状部材として一般的に説明する。管状部材は、折り畳まれた状態から拡張された状態に拡張することができる。
【0084】
これらの様々な特徴にしたがって、スライド可能に係合する、拡張可能なステントは、少なくとも1つのレール部材、細長い部材、または半径方向要素と結合された少なくとも1つの背骨または背骨部材を含んでよい。ここで述べたように、2つまたは3つ以上のような、(細長い部材またはレールとも呼ばれる)複数のレール部材は、半径方向要素を形成するように一緒に結合されてよい。背骨、レール部材、そして半径方向要素の少なくともいずれかは管状部材の外周を形成してよい。一般に、レール部材は、管状部材が、折り畳まれた状態から拡張された状態に拡張するのを可能にするように、少なくとも1つの背骨が(レール部材に対して)一方向のスライド運動を可能にするように構成されている。
【0085】
いくつかの実施形態では、ステントは1つ以上の反転螺旋背骨を有してよい。ここに記載された実施形態の反転螺旋背骨の多くは、圧縮された構成と展開された構成の両方において、長手方向の柔軟性と半径方向の強度とが組み合わされた、長手方向の高い構造的完全性をもたらす。1つ以上の細長い部材、細長いレール、あるいは半径方向要素は、背骨から延び、かつ長手方向の柔軟性または回転柔軟性を必要以上に妨げることなく粉砕力と半径方向の剛性をもたらす、織りあわされた周方向表面を形成するように1つ以上の他の背骨と連結してよい。いくつかの実施形態では、複数の半径方向要素を概ね周方向に配置することによって、細長い部材が「フープ強度」をもたらす構成において互いに、そして背骨と係合することができ、したがって長手方向の全体の「梁」剛性をかなり増大させる。いくつかの実施形態では、複数の半径方向要素を概ね周方向に配置することによって、複数の細長い部材を、「フープ強度」と、長手方向の全体の「梁」剛性のかなりの増大とをもたらす構成において、直接、連結することなく、互いに、そして背骨と係合することができる。いくつかの実施形態では、ステント構造は、複数の反転螺旋「背骨」を、周方向に配置された複数のレールまたは複数の「リブ」要素によって、可動に、系統的に相互接続することによって定まる、拡張可能な管状「骨格」組み立て体として、記載されてよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、背骨は、1つ以上の係合要素を有する。係合要素は、穴、窪み、通路、開口、突起、そして他のそのような構造の少なくとも1つを含んでよい。ここに示された多くの実施形態では、係合要素は少なくとも1つの穴を含む。言い換えると、背骨の実施形態は、背骨組み立て体の、1つ以上のレール部材または半径方向要素との相互接続を容易にするために、背骨に沿って形成された1つまたは一連の穴を有するように構成することができる。これは、穴が連続して形成された背骨と呼ばれることがある。背骨の複数の穴は、ステントのヒンジング、ねじれ、そして座屈の傾向を減らすことによって有利となる。実際、いくつかの場合には、背骨の穴は、剛性が低下した、柔軟性が増した、の少なくとも一方の局所領域をもたらすことがある。さらに、ここに開示された実施形態の、独特な反転螺旋背骨構造と拡張可能なスライドロック機構とともに、穴付きの背骨はステントの優れた屈曲および破壊強度にも貢献することができる。
【0087】
一般に、背骨は、交互する正の傾きと負の傾きを有する形状のような反転螺旋形状を有する。たとえば、反転螺旋形状は、ジグザグ、起伏、波形、などであってよい。いくつかの場合に、反転螺旋形状は、曲線または一連の連続した曲線、滑らかな曲線、連続した変化する曲率、などである。いくつかの構成では、反転螺旋形状は、ステントの長手軸に沿って対称である。たとえば、いくつかの実施形態では、背骨は正弦形状を有する。
【0088】
上で述べたように、「反転螺旋」形状は、軸方向に延びるにつれて周方向が変わる形状と定義することができる。いくつかの実施形態では、反転螺旋背骨の経路は、管状部材のまわりに第1の軸方向および第1の周方向に螺旋状に延び、第2の周方向にその経路を変えてよい。たとえば、進路を第1の周方向から第2の周方向に変えることは、時計周り周方向から反時計周り周方向に変えることを含んでよい。しかしながら、これらは圧縮方向であり、時計周り周方向または反時計周り周方向にのみ変えることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、反転螺旋背骨は、背骨の向きまたは経路が変わる1つ以上の肘または点を形成してよい。さらに、背骨の形状は、少なくとも1つの頂点、すなわち高い点と少なくとも1つの谷、すなわち低い点も形成してよい。たとえば、側部から見たとき、背骨は、全体として正の傾きを有する概ね上方向に、頂点、すなわち最も高い点に達するまで延びてよい。同様に、背骨は、全体として負の傾きを有する概ね下方向に、谷、すなわち最も低い点に達するまで頂点から延びてよい。いくつかの実施形態では、背骨の形状は複数の頂点と複数の谷を含んでよい。このようにして、反転螺旋形状は、起伏のある形状、ジグザグ形状、波形、正弦曲線形状、などの少なくとも1つを有するものとして特徴づけられてよい。驚くべきことに、そのような形状はステントの展開を促すことができる。さらに、そのような形状は、特定の用途の要件、たとえば、ステントの拡張速度、ステントを拡張する力、など、のために、ステントの特徴を修正と選択の少なくとも一方をすることを可能にする。
【0090】
さらに、いくつかの実施形態では、ステントの背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくとも一方の少なくともいくつかは、尖り、または鋭く曲がり、たとえば、のこぎり歯、三角形、などであってよい。いくつかの実施形態では、ステントの背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくとも一方の少なくともいくつかは、湾曲し、滑らかで、丸く、面取りされ、などであってよい。さらに、いくつかの実施形態では、背骨の複数の頂点と複数の谷の少なくともいくつかは尖り、他は丸くてよい。いくつかの実施形態では、頂点または谷における概ね丸いまたは滑らかな曲線はステントの全体として丸い形状を促すことができる。さらに、概ね尖った頂点または谷は、強度、柔軟性、または剛性の所望の特性を促すことがある。このようにして、ステントのいくつかの実施形態は、ここでさらに述べるように、背骨の頂点と谷の形状及び角度方向を操作することによって、局所的な剛性、強度、柔軟性、開通性、丸さ、そして他の特性の少なくとも1つを生ずるように構成することができる。たとえば、丸い頂点は、頂点がステントの内腔内に突出する傾向を減らすことがある。したがって、そのような特徴は内腔の開通性を維持するのを補助することができる。
【0091】
いくつかの実施形態にしたがって、反転螺旋背骨は曲線であってよい。たとえば、反転螺旋背骨は1つ以上の連続した曲線、1つ以上の滑らかな曲線、連続的に可変の曲率、など、の少なくとも1つを有してよい。いくつかの例では、反転螺旋背骨は、起伏のある反転螺旋形状に形成されてよい。たとえば、反転螺旋形状は、概ね、波形に、のこぎり歯パターンに、三角パターンに、矩形パターンに、ジグザグパターンに、など、の少なくとも1つに延びてよい。さらに、背骨は、規則的なパターン、反復パターン、対称パターン、の少なくとも1つで延びてよい。しかしながら、ステントの他の実施形態では、背骨は、不規則的なパターン、非反復パターン、非対称パターン、の少なくとも1つで延びてよい。
【0092】
したがって、背骨の反転螺旋形状は、殆どどのような波形を有してよい。たとえば、反転螺旋形状は、ほぼ一定の振幅を有してよい。振幅は、背骨の長手軸に垂直に測った、隣接する頂点と谷の間の距離である。他の実施形態では、反転螺旋形状は、ほぼ一定ではなく、または変化する振幅を有してよい。
【0093】
さらに、いくつかの実施形態では、反転螺旋形状はほぼ一定の周期を有してよい。周期は、背骨の長手軸に平行に測った、隣接する頂点同士または隣接する谷同士の間の距離つまり間隔である。他の実施形態では、背骨の反転螺旋形状はほぼ非一定で、変化する周期を有していてよい。いくつかの例では、周期は1つの頂点と1つの谷を含んでよい。いくつかの実施形態では、周期は2つの頂点と1つの谷を含んでよい。いくつかの実施形態では、周期は2つの谷と1つの頂点を含んでよい。いくつかの例では、周期はステントの全長にわたることがある。
【0094】
ここに開示された少なくともいくつかの実施形態にしたがって、長手方向に延びる背骨構造の角度方向はステントの特性に影響することがあることの認識がある。たとえば、(ステントの長手軸に対して)ゆるい角度はステントの展開を容易にすることができる。逆に、(ステントの長手軸に対して)急な角度はステントの長手方向の柔軟性とステントの半径方向の強度の少なくとも一方を高めることができる。ここでさらに述べるように、ステントの柔軟性と展開の特性に関する驚くべき、かつ有利な結果は、ここに開示されたステントの構成を実施することによって、本願の発明者によって達成された。特に、滑らかで、曲線の複数の頂点および複数の谷と、連続した複数の頂点と複数の谷の間の背骨の長さに沿った一連の短い位相の角度偏差を有する反転螺旋背骨を有するステント構成を実施することによって極めて優れた結果が得られた。
【0095】
さらに、いくつかの実施形態では、反転螺旋構成は、複数の短い位相すなわち脚要素を有するものと定義することができる。たとえば、正弦曲線の反転螺旋構成を有する背骨では、正弦曲線の、谷から頂点へ向かう各部分は短い位相、すなわち脚要素であり、正弦曲線の、頂点から谷へ向かう各部分は短い位相すなわち脚要素である。一般に、隣接する脚要素は、互いに反対の傾きを有し、たとえば、正の傾きを有する脚要素は通常、負の傾きを有する脚要素に続き、逆もまた同様である。
【0096】
いくつかの実施形態では、1つ以上の短い位相、すなわち脚要素は概ね真っ直ぐまたは概ね曲線であってよく、あるいはサブパターンまたは可変形状の構成を定めてよい。たとえば、いくつかの実施形態では、1つ以上の脚要素自体、波パターン、のこぎり歯パターン、三角形パターン、長方形パターン、ジグザグパターン、などの少なくとも1つを含んでよい。このようにして、いくつかの場合、背骨は反転螺旋形状を有してよく、1つ以上の脚要素は、概ね真っ直ぐな長さから逸れるパターンを有してよい。特に、ステントのいくつかの実施形態は、正弦曲線の反転螺旋背骨の複数の頂点と複数の谷の間を延びる波形サブパターンを有する正弦曲線の反転螺旋背骨を提供することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、脚要素のサブパターン、すなわち可変形状の振幅は反転螺旋背骨の振幅よりも小さい。驚くべきことに、反転螺旋背骨上でのサブパターンの使用は、有利なことに、ステントの一様な展開を促すことがわかった。たとえば、このようなパターンオンパターンの形状は、ステントの捩れを減らすことと、ステントの展開を促すことの、の少なくとも一方を可能にすることがわかった。さらに、そのような形状は、特定の用途の要件、たとえば、ステントの拡張速度、ステントを拡張させる力、など、のために、ステントの特性が修正と選択の少なくとも一方がされるのを可能にする利点も示すことができる。たとえば、ステントの局所化された特性は所与の結果のために設計することができ、このことはステントに対してかなりの利点とカスタマイズ能力をもたらす。
【0098】
ここに記載された様々な実施形態は、金属のステントのものに匹敵する有利な構造特性を示すポリマーステントを提供する。たとえば、複数の半径方向要素のスライドロック相互接続と組み合わされた螺旋背骨構造が、(金属のステントのものと同様の)生体吸収性と優れた構造剛性および強度の利点が実現できるように、ポリマーのステントで使用できることを研究が示している。ステントの技術のこの著しい進歩は、ステントの必要な構造特性をも得られることを保証しつつ、好ましい材料特性を得るために、金属だけではない他の好ましい材料がステントで用いられるのを可能にしている。
【0099】
スライド可能に係合される半径方向要素は、管状部材の半径方向の拡張を許すように一方向のスライド運動をするように構成されてよい。実施形態では、ステントは第1の折り畳まれた状態の直径と、第2の拡張された状態の直径を定めることができる。スライド可能に係合される拡張可能なステントは、少なくとも第1の折り畳まれた状態の直径と、少なくとも第2の拡張された状態の直径の間で拡張可能になっている。
【0100】
いくつかの実施形態では、スライド可能に係合される拡張可能なステントは、2つの半径方向モジュールを有するように構成され、各半径方向モジュールは、一方向の拡張運動を行うように、スライド可能に係合され、構成されている。各半径方向モジュールは、背骨、第1の細長い部材、第2の細長い部材を含む。いくつかの実施形態では、細長い材は環状の細長い部材であり、いくつかの実施形態では、該細長い部材は、背骨から引き伸ばされた環状の部材である。細長い部材は穴とスライド可能に係合でき、一方向のスライド可能な運動を行うように構成されてよい。
【0101】
いくつかの実施形態における、スライド可能に係合される拡張可能なステントは、第1の半径方向要素と第2の半径方向要素を含む複数の半径方向要素を有している。これらの半径方向要素は、背骨に対してほぼ共通の向きに向いていてよい。第2の半径方向要素は、第1の半径方向要素に対して軸方向または周方向にずれていてよい。
【0102】
複数のレール部材と複数の半径方向要素の少なくとも一方を軸方向または周方向にずらすことによって、スライド可能な複数の係合体を分布させることができる。スライド可能な複数の係合体をそのように分布させることは、スライド可能な係合体が通常、構造において最も弱い機械的な点であるので、ステントを、機械的破壊点について一様にすると言われている。スライド可能な係合体は、ここでは、2つのスライド可能に係合する半径方向モジュールの同士の間の係合手段と定義される。いくつかの実施形態では、スライド可能な係合体は、複数の穴の連動によって形成され、スライド可能に係合する半径方向要素のレール部材に含まれる。
【0103】
複数の穴はロック部材をさらに有してよい。ロック部材は、たとえば、歯、変位可能な歯、止め具、突起、へら、戻り止め、ラチェット、斜面、フック、などであってよい。いくつかの実施形態では、穴は、穴の表面または空洞の内側にいくつかの止め具を含んでいる。他の実施形態では、穴は穴の入口側に隣接した少なくとも1つの歯を有している。
【0104】
穴は、ステントの長手軸に対して斜めになっていてよく、これはステントにさらなる利点をもたらす。たとえば、(ステントの長手軸に対して)よりゆるい角度は、ステントを拡張するのに必要な力を小さくし、したがってステントの展開を容易にすることができることがわかった。(ステントの長手軸に対して)急な角度は、ステントの長手方向の柔軟性とステントの半径方向の強度の少なくとも一方を増大させることができ、したがって、より頑丈で、それでいてより柔軟なステントをもたらすことができる。このようにして、ステントの所望の特性を増進させるために適切な穴角度が選択されてよい。
【0105】
さらに、細長い部材は、対をなす、少なくとも1つのロック部材を有するように構成されてよい。対をなすロック部材は本質的に、ロック部材と係合するように設計された部品である。いくつかの実施形態では、対をなすロック部材は、ロック部材と嵌るようになっている。一実施形態では、対をなすロック部材は、歯、変位可能な歯、止め具のうちの1つである。ロック部材と、対をなすロック部材は、複数の半径方向要素、複数のレール部材、複数の半径方向モジュールの少なくともいずれかが、スライド可能に係合させられる係合手段を形成している。対をなす例示的なロック部材が、全体が参照によってここに含まれる、2009年10月9日に出願され、発明の名称が「拡張可能なスライドロックステント」である係属中の米国特許出願公開第12/577,018号明細書に記載されている。
【0106】
背骨は、ばねリンクのような柔軟リンクを含んでよい。あるいは、柔軟性のある背骨は血管動力学運動への適合を促すのに十分なエラストマのポリマー材料で作られてよい。エラストマのポリマーは当該技術において定められているが、例示を目的として、ポリカプロラクトン、ポリジオクサノン、ポリヘクサメチルカーボネートを例として含む。
【0107】
ここに開示されたステントの様々な実施形態は、参照によって全体がここに含まれる、米国特許出願公開第11/016,269号明細書、第11/455,986号明細書、第11/196,800号明細書、第12/193,673号明細書、第11/399,136号明細書、第11/627,898号明細書、第11/897,235号明細書、第11/950,351号明細書、第11/580,645号明細書、第11/680,532号明細書、と米国特許第6,951,053号、のような、本出願人の特許および係属中の特許出願の様々な特徴、構造、材料構成、および他の特質を含んでよい。
【0108】
[実施例]
図1から
図20Dは、ここに開示された実施形態の態様を有するステントの実施形態の例を示している。ステントの構造を明らかにするために、これらの図のいくつかは、平らな(例えば、巻かれていない)状態の種々のステントの実施形態を示している。しかしながら、血管構造でのそのような引渡しと移植の少なくとも一方のために、そのような実施形態は管状部材を構成するように巻くことができると理解されるべきである。わかりやすくするために、ステントの一部がをステントの対向する両側にある(たとえば、
図9Aの要素732aと735を参照)と示されているが、巻かれた状態では、そのような複数の要素は滑って係合させられることができる(たとえば、
図9Cを参照)。さまざまな図は、ステントが管状の部材に構成された場合、ステントの長手軸640の表示を含んでいる。長手軸640は、ここに開示されたステントの構成部品の相対角度と向きを測定する際の基準のフレームをもたらすことができる。しかしながら、長手軸640はすべての図においてステントの中心軸を表わさなくてもよく、その代わり、ステントの中心軸に平行に延びる軸を表してよい。
【0109】
[交差レールパターン対別個のレールモジュール]
図1と
図2は、ステントまたはステント組み立て体の実施形態の(管状の状態における)周方向面を平面で表したものを示している。
図1と
図2の例は、ステント組み立て体を完全なものにするように概ね周方向に延びる、ステントの細長い部材、すなわちレール部材の、2つの異なった相互接続構造を示している。図示された実施形態は、概ねU字形のレール要素と3つの背骨を有している。他の実施形態は3つよりも多いか少ない背骨を有している。他の実施形態では、レール部材はたとえばU字形である必要はなく、「W字形」部材などのような他の形状を用いるのが有利である。
【0110】
図1は、3つの背骨652a-652cを有するステント組み立て体650を示している。複数のレール部材、すなわちレール要素654が、それぞれの隣接する背骨に接着された三重パターンに配置されている。この構成では、切断線AA、BB、CCが、他のレール部材と交差することなく、3つすべての背骨と交わるのがわかる。この意味において、レール部材は、別個の半径方向モジュールに配置されていると記載されている。レールモジュールは、3つよりも多いか少ないレール部材を含んでよい。
【0111】
さらに、いくつかの実施形態では、周方向に延びる半径方向モジュールの複数のレール部材、すなわち半径方向要素は、周方向に延びる他の半径方向モジュールの複数のレール部材、すなわち複数の半径方向要素と隣接するか、またはこれらと少なくとも部分的に重なって配置されてよい。隣接する複数の半径方向モジュールを、間隔をおいてまたは重なって配置することによってステントの剛性と柔軟性を増すことができる。
【0112】
たとえば、
図1に示された組み立てられた管状のステントでは、別個の半径方向のモジュール同士を分離することによって、これらの接合部(切断線AA、BB、CCの領域)における柔軟性の相対的な程度を増すことができる。
【0113】
さらに、
図2は、複数の背骨662a-662cを有する組み立て体660を示している。複数のレール部材664は、隣接するレール部材に対して、交差する全体パターンで配置されている。この構成では、切断線A’A’、B’B’は、背骨の列を横切る際に1つ以上のレール部材を必ず横切ることがわかる。この意味において、レール部材は、別個の、すなわち分離された半径方向モジュールなしに、横切るまたは部分的に重なる構成にまとめられたものとして記載されている。上で述べたように、組み立てられた管状のステントでは、そのような横切る構成は、半径方向の強度とステントの軸線に沿った連続性を増すことができる。
【0114】
この開示の他の実施形態の場合と同じように、
図1と
図2に示された考え方は組み合わせて用いてもよい。たとえば、ステントの長さの一部または複数の部分が交差パターン(たとえば、半径方向に支持された障害またはプラークに隣接した頑丈な中心部分)を有し、他の部分が別個のモジュール(たとえば、血管輪郭に合わせて曲がるのに適した、遠位および近位の末端モジュール)として配置されてもよい。
【0115】
[螺旋状または斜めの背骨に垂直なレールパターン]
ここに記載された例の多くは、ステントの長手軸640に対して概ね垂直な方向を向いた(そして、背骨の螺旋状または斜めの部分に対して概ね斜めの方向を向いた)、レール部材のパターンを有しているが、ここに記載された独自かつ新規な態様から外れることなく他の構成を用いてもよい。
【0116】
たとえば、
図3は、互いに概ね平行に配置され、かつステントの長手軸640に対してある角度に設定された3つの背骨672a-672cを有する組み立て体670を示している。しかしながら、複数のレール要素674は、背骨672a-672cに対して垂直に概ね整列している。矢印677でわかるように、レール部材674の歯付き部分の、背骨を貫通する穴に対するスライドの方向はステントの軸に対して斜めである。
【0117】
図3において、そして
図1で始まる図のいくつかにおいて、ステント組み立て体の要素は、レール部材の部分676aが背骨の接着穴を超えて外側に延びている、整えられていない、すなわち未仕上げの構成で示されているのに注目されたい。これらの部分は、組み立て中と、レールの細長い部分を背骨構造に接着と付着の少なくとも一方をする間、製造上の便宜のために設けられている。延びた部分は、組み立ての最終工程の間、周知の方法(刃による切断、レーザによる切断、など)によって最終の形状676bに仕上げられてよい。同様に、図の多くに、製造手続きとして最終の所望長さに仕上げられてよい、背骨の延ばされた近位部分と遠位部分が示されている。
【0118】
[背骨の傾いていない部分]
ステントを、内腔内にその軸線に沿って同様の形で展開しまたは拡張することが好ましいことが多い。他の場合では、ステントのある部分を、他の部分の前か後に展開させることが望まれることもある。バルーンをベースにした展開システムが、ステントの軸線に沿ったある点に大きな力または圧力をかけ、あるいは長手方向の異なった点においてそのうちに膨張しようとする傾向がある。ステント構造は、所望の展開シーケンスを行うように作られてよい。
【0119】
少なくともいくつかの展開シナリオでは、ステントの背骨の長手方向のある部分では、レール部材の拡張に対する機械的抵抗を複数の貫通係合要素によって、他の長手方向部分よりも小さくすることが有利であるかも知れない。たとえば、バルーンカテーテル展開システムが端末終端においてよりも中心においてより速やかに膨張しようとする場合、ステントの両端末部分(または一端)の拡張に対する抵抗を中心部分においてよりも小さくすることによって、これを補償するのは有利かも知れない。したがって、いくつかの構成では、ステントは、バルーンカテーテルの非一様な拡張を減らすように有利に構成することができ、たとえば、ステントはほぼ一様に拡張するように構成することができるが、バルーンカテーテルは非一様に拡張する。
【0120】
図4Aと4Bは、局所的に斜めまたは螺旋の向きに概ね互いに平行に配置された3つの背骨682a‐682cを有するステント組み立て体680を示している。
図4Bは、
図4Aの左上の隅の詳細を示している。複数のレール部材684が背骨に接着され、隣接した背骨の穴を貫通して配置されている。しかしながら、1つ以上の背骨(たとえば、図示の例では3つ全部)が、ステントの軸線にやや斜めか概ね平行である部分685を有してもよい。ステントの軸線にやや斜めか概ね平行である部分685は、斜めでない部分686aで背骨に対して概ね平行で、斜めの部分686bで背骨に対して概ね斜めである貫通穴を通るレールの細長い要素684の運動を容易にする。
【0121】
ある場合には、概ね螺旋状に整列し、または傾いた複数の背骨の組み立て体において、ステントの軸に平行で、ステントの端末端部にある背骨の短い部分は、特に、端末端部が、左側の部分682aのような、アレイの連続における最後のレールによって支持されている場合、ステントの半径方向の剛性を高めることができる。このようにして、背骨部分の傾いていない端末を、ステント組み立て体、たとえばステント組み立て体680の背骨の1つ以上の背骨に含めるのが有利かもしれない。
【0122】
図5は、概ね傾いた、または螺旋状の向きに概ね互いに平行に配置された3つの背骨692a‐692cを有するステント組み立て体690を示している。
図4Aと
図4Bに示された例と同様に、1つ以上の背骨692a‐692cは、局所的に傾いていないか、またはあまり傾いていない(たとえば、ステントの長手軸640に概ね平行)複数の部分を含むことができる。
図5において、これらの部分のいくつかは円で印を付けられている。たとえば、ある実施形態では、背骨692a‐692cの少なくとも1つの、左端、右端、中央部分の少なくとも1つがそのような、傾いていないか、またはあまり傾いていない部分を含むことができる。
図5に示された特定の例では、各背骨は、間隔をおいて位置する、3つの傾いていない部分を有している。図示のように、レール貫通穴部分696aは、背骨部分が傾いていない、背骨とレール部材の垂直な配置を備えることができる。このようにして、組み立て体の展開特性は、傾いたまたは螺旋状の背骨の全体パターンを維持しつつ、ステントの長手軸に沿って調整することができる。
【0123】
[背骨の双方向、多方向、または可変方向の配置]
記載された例の多くは、ステントの長手軸に対して、概ね一定の角度で、概ね螺旋状を向いた背骨のパターンを有するが、他の構成を、ここに開示された独自で、新規な態様から外れることなく、使用してもよい。
【0124】
図6に示された例の組み立て体700では、各背骨702a‐702cは、該組み立て体の中央部分において反転する傾き角を有している。図示のように、いくつかの実施形態は傾いていない中央部分をさらに含んでいる。上記したように、本発明者たちは、「反転していない」螺旋状ステントが、いずれかの端から中心へ巻き戻そうとする傾向があり、これは、動かなくなることと、ステントの中心における拡張に対する増大した抵抗をもたらすことに気付いた。驚くべきことに、本発明者たちは、反転する螺旋状の背骨を有するステントを作り、反転する螺旋状の背骨の頂点、すなわち先端をステントの中間点のあたりに位置決めすることによって、ステントが拡張中に動かなくなる傾向を減らせることを見出した。
【0125】
しかしながら、
図6に示された反転螺旋を実現することによって、本発明者たちは、ステントの展開がより一様になりうること、動かなくなることがステントの中心では少なくなることを驚くべきことに見出した。この問題を解決するにあたって、本発明者たちは、螺旋の構成に起因する、動かなくなる量の減少が、ステントのおよそ4分の1と4分の3のマークで、すなわち、両端と螺旋が反転する中心点との間の点で発生することも気づいた。したがって、ここでさらに述べるように、本発明者たちは、局部的に動かなくなることが増すこれらおよび他の領域においてステントが動かなくなることを減らすか除去するかの少なくとも一方のための、新規で、独自の解決策を発明した。
【0126】
図7に示された一例の組み立て体710では、各背骨712a‐712cは曲線部分を含み、近位端から遠位端へ連続的に可変である傾斜角、すなわち(ステントの長手軸に対して)傾きを有している。背骨の各頂点と各谷との間を延びる、この連続的に可変の曲線は、ここで論じたように、優れた柔軟性と優れた展開特性をもたらす。
図7の図示された実施形態では、傾きは、背骨の谷または組み立て体の中点において(図において左から右に見て)負から正に変化し、この図において全体が余弦波の外観を背骨に与えている。余弦波の丸い頂点は、ステントが巻かれた構成のときに頂点が内腔内に突き出るのを防ぐことができる。そのような突き出しを避けることは、少なくとも、そのような突き出しが、内腔の一部を通る流れを阻止する可能性がある、と言う理由から有利である。さらに、頂点が内腔内に突き出ることを阻止することは、上で述べたように、ステントの丸い全体形状を容易にすることができる。さらに、(脈管構造またはカテーテルバルーンにからまったり、またはこれらに穴をあけたりすることすらある)鋭く曲がった頂点を有するステントと比べて、余弦波の丸い頂点は一般に脈管構造またはカテーテルバルーンに対して滑ることができ、したがってステント組み立て体の引渡しと展開を容易にする。
【0127】
図7の例と同様に、
図8に示された例の組み立て体720では、各背骨722a‐722cは曲線部分を含み、近位端から遠位端へ連続的に可変である傾斜角、すなわち(ステントの長手軸に対して)傾きを有している。図示の実施形態では、傾きは、背骨の頂点または組み立て体の中点において(図において左から右に見て)正から負に変化し、この図において正弦波の全体の外観を背骨に与えている。上で述べたように、波形の丸い頂点は、頂点がステントの内腔内に突き出るのを防ぐことができ、ステントのより丸い全体形状を増大することができ、そして引渡しと展開の間のもつれを避けることができる。さらに、図示のように、ある場合には、三叉の、すなわちW字形のレール部材714bまたは724bを正弦また余弦の形状の頂点に設けることができ、背骨の頂点または谷におけるステントの柔軟性と強度を高める。
【0128】
図7と
図8の例では、背骨の配置は、傾きが最小の部分と、著しく傾いた部分の間の滑らかな遷移をもたらす。添付の図に図示された他の実施形態の多くは同様の利点を有する。
【0129】
ステントの実施形態の背骨の全体螺旋角(背骨がステントの長手軸640に対して延びる角度)の絶対値は少なくとも約15度と約60度未満かそれに等しい角度の範囲であってよい。背骨の全体螺旋角の絶対値は少なくとも約20度と約50度未満かそれに等しい角度の範囲であってよい。さらに、背骨の全体螺旋角の絶対値は少なくとも約22度と約30度未満かそれに等しい角度の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、背骨の全体螺旋角の絶対値は約25度であってよい。
【0130】
[レール部材の双方向または多方向の配置]
記載された例の多くは、配列の近位端から遠位端へと一定の方向を向いた複数のレール部材、すなわち複数のレール要素のパターンを有しているが、他の構成を、ここに開示された独自、かつ新規な態様から外れることなく用いてもよい。
【0131】
図9Aから
図9Dは、ステントの改良された展開形状をもたらす実施形態を示している。いくつかの実施形態では、展開されたステントがほぼ丸い、たとえば横断面が円形であるのが望ましい。図示された実施形態は、長手方向に延びる構造(たとえば、背骨)と、ステントの丸みを増大する独特のレール部材構造のような1つ以上の構成部品を含んでいる。いくつかの実施形態では、ステントの丸みさらに増大する優れた結果が、複数のレール部材が互いに反対の周方向に選択的に向けられる構成を実施することによって見出された。
【0132】
たとえば、いくつかの実施形態では、第1のレール部材が第1の方向で周方向に延びることができ、第2のレール部材が第2の方向に周方向に延びることができる。
図9Aから
図9Dに示された例の組み立て体730では、レール部材、すなわち半径方向要素の配列の向きの方向が、背骨の頂点またはステント組み立て体の中点において反転している。この特定の例では、背骨732a‐732cは
図7と
図8の例と同様に配列され、たとえば、各背骨732a‐732cは概ね曲線状で、中央部分において傾きの方向が変わる、傾斜角、すなわちステントの軸に対して傾きを有している。このように、背骨は、滑らかな、または湾曲した複数の頂点および複数の谷を有する反転螺旋背骨と記載することができる。
【0133】
レール部材734は、U字形またW字形のレール部材のクロス部材735が(図面において)「下に」に延び、したがって隣接する背骨湾曲732aの「外側」に延びるように、(
図9Aの拡張された位置に、そして
図9Bの折り畳まれた位置に示された)背骨の配置の頂点、すなわち中央部分に対して、向きが定められている。レール部材734は、レール部材734のクロス部材735が(図において)「下に」延び、したがって隣接する背骨湾曲732cの「外側」にも延びるように、背骨の配置の左端部分と右端部分に対して、向きが定められている。
【0134】
図1と
図2の実施形態におけるように、図示の実施形態では、レール部材の配置の中央部分は、端部分とは異なった半径方向モジュールである。言い換えると、
図9Aに示された実施形態は、互いに間隔をおき、かつ管状部材において、独立した複数の周方向モジュールである3つの半径方向モジュールを示している。しかしながら、中央部分内では、レール部材は交差構造を構成している。したがって、先に述べたように、そのような実施形態では、中央部分は、ステントの軸に沿って、増大された半径方向強度と連続性を有することができるのに対し、端部分は、血管の輪郭に合わせて曲がる、改善された柔軟性を有することができる。
【0135】
いくつかの構成では、第1および第2のレール部材が延びる方向は、レール部材と長手方向に延びる構造とがなす角度に関連し、またはこれに依存してよい。たとえば、ある場合では、第1および第2のレール部材は、レール部材と、長手方向に延びる背骨すなわち構造とがなす角度が鋭角であるように、所与の周方向に延びている。したがって、他の特徴、たとえば非反転構造を有するステントと比べて、反転螺旋背骨はステントの丸みを増すことができることがわかった。
【0136】
図示のように、背骨はほぼ正弦曲線として形作ることができる。特に、正弦曲線の背骨の少なくとも1つのピークを、たとえば先の尖ったピークまたは鋭角を有するものとして形成するのではなく、曲線にすることができる。そのような丸いピークはステントの丸みのある全体形状または丸さを増すことができる。たとえば、丸みのあるピークは、ピークがステントの内腔内に突き出す傾向を減らすことができる。
【0137】
[歯の向上したたわみと弾力性]
図10Aから
図10Fは、貫通穴内のまたはこれに隣接する背骨と係合する、ここに示された様々な実施形態の細長い要素またはレール上に設けられた歯、すなわちロック部材の他の実施形態を示している。
図10Aから
図10Fの各々は、複数の歯772を含むレール774の一部を示している。いくつかの実施形態では、歯は各細長い要素の複数の縁上に配置されている。他の実施形態では、歯は、
図10Aから
図10Fに示されているような単一の縁上に配置されている。
【0138】
図10Aから
図10Fに示された実施形態の各々は、レール部材内に配置された1つ以上の逃がし開口776を有し、逃がし開口776は、ステントが拡張する間、歯772が穴を通過するときにゆがむので応力集中を減らすことができる。いくつかの場合には、逃がし開口776は、歯772をゆがませるのに必要な力を減らすことがある。有利なことに、逃がし開口776は、歯の、反対方向の剛性も増すことができ、したがってステントの一方向ラチェット構造を高めることができる。さらに、そのような逃がし開口776は歯のよりゆるい構成を採用することを可能にし、したがって製造可能性を増し、歯772を形成するために除去されるよりも材料の量を減らす。
【0139】
そのような逃がし開口776は、レール744の材料(開いた穴)を貫通して延び、または部分的に一方または両側の材料(窪み)を貫通して延びるだけでもよい。逃がし開口776は、塑性変形を防ぎまたは減らし、そして歯772が背骨の貫通穴を通過する際の歯の有効な跳ね返りを増すように、展開の間、たとえば、歯772の応力を防止し、または減らすことがある。
【0140】
歯772は、必ずしも歯状の外観を有している必要はなく、
図10Eと
図10Fに示されるように、他の外形を用いてもよいことに注意されたい。これらの実施形態では、ロック部分が丸くなって、展開の力のもとで内側に押される。
【0141】
図11Aから
図11Dは、細長い要素、すなわちレール部材のレール上に設けられ、ここに記載されたステントの実施形態の背骨にある穴に係合するように構成された係合歯、すなわちロック部材の動作を示している。図示された例は、以下に述べる、
図12Aから
図14Bの実施形態に描かれたロック機構といくつかの点で、特に類似している。
図11Aから
図11Dの例では、レール部材770は一対の細長いレール773aと773b(3つ以上あってもよく、たとえば、
図8の部材724bを参照されたい)を含む。
【0142】
レール部材770の基準フレームが、それが、組み立てられたステント内で固定して取り付けられ、結合され、または接着される背骨に対して定められてよい。この基準フレームでは、部材770のレール773a、773bの各々は、支持背骨(たとえば、
図12Aの782a)に固定して取り付けられ、または接着されるように構成された近位端772a、772bを有している。この基準フレームでは、レール要素773a、773bは、組み立てられると、遠く延びて、隣接する背骨(たとえば、
図12Aの782b)のスライド穴787と係合する。レール773a、773bの各々は、ロック機構776a、776bを支持する中間部分774a、774bを含んでいる。図示された実施形態では、ロック機構776はレール773の一方の側にのみ配置されている。他の実施形態では、ロック機構776の少なくともいくつかはレール773aと773bの少なくとも一方の両側に配置されている。レール773aと773bはそれらの遠位端においてクロス部材775によって連結されている。部材770が3つ以上のレールを有する他の実施形態では、クロス部材775は3つ以上のレールを結合してもよい。
【0143】
図11Bの詳細図では、ロック機構776が、この例では歯状として示されている、連続した複数のロック要素777を有していることがわかる。複数のロック要素777はへこんだ接続領域778によって互いに分離されてよい。いくつかの場合には、少なくとも1つの応力管理、すなわち逃がし開口779が接続領域778に隣接して配置されている。逃がし開口779は、開口779の形状、位置、そして大きさの少なくとも1つを選択することによってロック要素777の特性(たとえば、柔軟性、跳ね返り、など)の調整を容易にすることができる。
【0144】
図11Cの図と
図11Dの写真は、背骨782の穴787bを通過するように配置された中央部分774を有するステントロック組立て体771を示している。展開時のステントの半径方向の拡張の間、1つ以上のロック要素、すなわち歯777aは穴787bの近位開口に入ることができ、穴との係合によって内側に歪むようになる。この歪みは、破線として、重ねられた、歪んでいない形状とともに見ることができる、歪んだ歯777bによって示されている。隣接する歯777bが歪むにつれて、逃がし開口779も、歪みの応力下で、破線として示された歪んだ形状779’に歪むことがあることがわかる。
【0145】
歯777cが穴787bを遠位端で通過するにつれて、歯777bは、半径方向の収縮(レール部分774の近位運動)を防ぐように、概ね、歪んでいない歯777aの形状へと跳ね返る。逃がし開口779は、歪んだ歯777bの跳ね返りを改善するように、ロック要素777が、穴との係合の間、歪むにつれてロック機構776の塑性変形を減らしまたは除くように構成されてよい。跳ね返り時の歯777aの形状は、ステントの収縮を防ぐように、歯777aが穴787bの遠位開口に入るのを妨げるように構成されている。この工程では、歯777cは、ロック組立て体771の前向きの性質を増大させるように外向きに歪められることがある。逃がし開口779は、ロック応力下で変形して異なった形状779’’を形成してもよい。
【0146】
[延びたレール配置を有するステント組み立て体]
図12Aと
図12Bは、レール部材の追加の複数のモジュールが含まれる、ステントの他の実施形態780を示している。
図9Aから9Dの実施形態と同様に、実施形態780は、ステントの軸に対して概ね垂直な(たとえば、
図12Aと
図12Bの図示において下向きの)方向を向いた、レール部材の少なくとも第1のモジュール784と、レール部材の第1のモジュール784に対して概ね反対で、ステントの軸に対して概ね垂直な(たとえば、
図12Aと
図12Bの図示において上向きの)方向を向いた、レール部材の少なくとも第2のモジュール785を有している。
【0147】
図12Aと
図12Bに示された例では、モジュール784と785の各々は、3つの重なったレール部材784a‐784c、785a‐785cのグループを有している。各レール部材は、少なくとも1つの背骨(3つの背骨782a‐782cが図示されている)に取り付け点786において連結または取り付けられている。各レール部材784は、遠位のクロス部材784’’’によって接続することができる、間隔をおき、概ね平行な複数のレール784’、784’’を有することができる。レール部材785は同様に構成することができる。
【0148】
個別のレール、すなわちレール部材784a‐784c、785a‐785cの各々は、少なくとも1つの背骨に近位に取り付けられているのに加えて、隣接する背骨の穴787に係合し、これを滑って通過することができる。上で述べたように、
図12Aと
図12Bは組立て体780を平面形状として概略的に示しているが、これらの図は概ね管状のステント組立て体780を表している。矢印788aで示されるように、背骨782cに取り付けられたレール部材784cを、隣接する背骨782aの穴を滑って通過するように構成することができ、同様に矢印788bは、背骨782aに取り付けられたレール部材785aを、背骨782cの穴を滑って通過するように構成することができることを示している。
【0149】
図12Aは、レール部材784a‐784c、785a‐785cの各々のレールの歯付き部分789が、対応する係合穴787(787aとして示されている)に対して遠くに配置されている、ステント組立て体780の圧縮された形態を示している。いくつかの実施形態では、背骨782a‐782cは、互いに隣接して密に配置されるか、入れ子に配置されている。いくつかの実施形態では、圧縮された構成において、ステント780は、折り畳まれたバルーンカテーテル上に取り付けるように構成されている。
【0150】
図12Bは、レール部材784a‐784c、785a‐785cの各々のレールの歯付き部分789が対応する係合穴787(787bとして示されている)内に少なくとも部分的に配置されている、ステント組立て体780の半径方向に拡張された形態を示している。いくつかの実施形態では、ステント780の半径方向に拡張された状態において、背骨782a‐782cは、処理された血管または他の身体の内腔を支持する大きな管直径において展開されるように通常構成されるように、互いにかなり離れて配置されている。この構成において、歯付き部分789はステント780の半径方向の収縮を妨げることができる。
【0151】
図示された実施形態において、各背骨782a‐782cは(ステントの軸に対して)全体的な傾き角度、すなわち傾斜θを有し、管状のステント本体内に概ね螺旋状の部分として配置できる。いくつかの実施形態では、全体的な傾き角度θは、全体的にジグザグの形状を形成するように、各レールモジュール784、785に隣接して反転している(
図12Aにおいて+θと‐θとして示されている)。図示の例では、各背骨はかなりのピッチの3つの異なった螺旋部分を含み、ステント組立て体780は4つのレールモジュールを有し、各モジュールは、その各隣接するレールモジュールに対して逆向きに整列している。
図12Aと
図12Bに示された例では、各部分の傾き角度θは約25度であるが、これよりも大きくても小さくてもよい。
【0152】
図13Aと
図13Bは、それぞれ圧縮されたステントの構成と拡張されたステントの構成におけるステント780の(開いた内腔を見下ろした)末端図である。これらの図において、ステント780を、右側から図面の軸線において見る
図14Aの斜視図をあたかも見るように見ている。この図は、要するに、レール部材784aを通るステントの断面である。これらの図は、(ステントがその巻かれた形状にあるとき)図の平面の左側から
図12Aと
図12Bにおける組立て体780を見たものにも対応している。
【0153】
図13Aの圧縮された構成に見られるように、レール部材784aはその近位端において背骨782aに取り付けられている。レール部材784aは図において時計回りに延び、隣接する背骨782bの穴787を通り過ぎている。図示のように、ロック機構776aは通常、ステント780がその圧縮された構成にあるとき、穴787を越えて配置されている。背骨とレール部材の他の組立て体782b−784b、782c−784cは同様に時計周りに配置され、かつ構成され、各レール部材784b、784cも隣接する背骨の穴787を通過している。しぼんだバルーンカテーテル800が、圧縮されたステント組立て体780によって定まる周囲の内部に想像線によって表されている。いくつかの実施形態では、引き込み可能/取り外し可能なシース802が、ステントが内腔内で治療部位にあるまで圧縮されたステント組立て体780を取り囲んでいる。
【0154】
図13Bと14Aの半径方向に拡張した構成に見られるように、カテーテル組立て体のバルーン800が、拡張された直径800’へと膨張させられ、ステント組立て体780の周囲を半径方向外側に拡張している。そのような拡張の間、各背骨782a‐782cは一般に、各隣接する背骨から、圧縮された状態にあったときよりも周方向にさらに遠くに移動する。その結果、各レール部材784は、拡張の後、係合穴787がレール部材784のより遠くの部分に位置するように、その各係合穴787に対して動く。そのような動きは最終的には、ロック機構776が少なくとも部分的に穴に係合する結果となり、ロック要素777の少なくとも1つが、たとえば、
図11Cと
図11Dに示すようにして、レール要素784が半径方向に収縮するのを妨げる。各レール部材のクロス部材775は、隣接するレール部材によって定まる周囲の外側にあり、これらの隣接するレール部材を超えて延びることに留意されたい。そのような構成は有利なことに、バルーンカテーテル800の引き込みと除去に続いて、展開されたレール部材784の遠位端を血管内腔の外側に確実に維持することができる。
【0155】
図14Bは、曲がった血管内腔に展開された、ステント組立て体780の曲げられた構成を示している。いくつかの実施形態では、複数の背骨782a‐782cのばね状の構成と長手方向の連続性は、管状の組み立て体が、曲がった内腔に倣って滑らかに曲がるのを可能にする。さらに、いくつかの実施形態では周方向に整列した複数のレール部材784a‐784c、785a‐785cを有する通常のリブ状の構造は、内腔の壁に対して半径方向の強度と支持を与えることができる。
【0156】
図15Aと
図15Bは、複数の背骨(たとえば、782aと782b)のレール部材784に対する関係を概略的に示している。
図15Aは、背骨の窪み786内に(たとえば、接着剤または溶剤結合786bによって)取り付けられた1つのレール部材の近位端772a、772bを示し、背骨の穴787aを通過する隣接するレール部材の上で隣接した細長いレール部材773a、773bを示す、背骨782aの一部の横断面図である。
図15Bは窪み786において背骨782aに取り付けられた近位部分773を有し、隣接する背骨782bの穴787aを通過する単一のレール部材784を横断面で示している。
【0157】
[背骨の全体および局所的な傾き]
図16は、
図12Aに示された圧縮されたステント組立て体780の中央部分の詳細図であり、要素には
図12Aと同じに符号が付けられている。図示のように、背骨782bは、図示された背骨部分に対する全体螺旋角度(θ
oa)を含むことができる。一般に、より急な全体螺旋角度は、長手方向のより大きな柔軟性とより大きな半径方向の強度を有する展開されたステントに貢献する。これに対し、よりゆるい全体螺旋角度は通常、バルーンの展開の間、拡張させられ、拡張するにつれて捩れる傾向は少なくなり、それにより、より滑らかで、より一様な展開を促進する組立て体に貢献する。全体螺旋角度は、所望のステント特性が得られるように選択されてよい。たとえば、いくつかの場合には、全体螺旋角度は、上記の複数の一般特性の間を平衡させるように選択される。
【0158】
いくつかの構成では、全体螺旋角度θ
oaは一方向(たとえば正)にあるが、ステント組立て体780の一部は、反対の傾斜(たとえば負)を有する1つ以上の領域を含んでよい。たとえば、全体螺旋角度θ
oaは負であるが、ステント組み立て体の一部は、反転し、再び下を向く前に正であってよい。さらに、
図17に示すように、背骨は複数の別個の部分を含むことができる。別個の部分は、背骨の係合要素同士の間を延びる背骨の一部であってよい。さらに、別個の部分は、背骨の複数の係合要素に対応する背骨の1つまたは複数の部分を有してよい。いくつかの実施形態では、これらの別個の部分の各々は別個の螺旋角度または穴角度を有してよい。別個の部分が(穴のような)係合要素である場合のような、いくつかの実施形態では、別個の螺旋角度は穴角度と呼ばれることがある。全体螺旋角度と別個の螺旋角度、すなわち穴角度の考察を続ける。
【0159】
通常、背骨の反転螺旋形状は、正を向く少なくとも1つの部分と、負を向く少なくとも1つの部分を有してよい。正の向きは、個々の、すなわち別個の部分の別個の螺旋角度にかかわらず、正の全体螺旋角度を有する部分、すなわち背骨である。負の向きは、個々の、すなわち別個の部分の別個の螺旋角度にかかわらず、負の全体螺旋角度を有する部分、すなわち背骨である。いくつかの場合には、正および負に向かう部分の一方または両方内に、該向きに対して逆に傾斜した1つ以上の部分が存在してよい。たとえば、負に向かう部分は、正に傾斜した部分を含んでよい。同様に、正に向かう部分は、負に傾斜した部分を含んでよい。一般に、逆に傾斜した部分は、正または負に向かう部分に比べて小さい。たとえば、いくつかの実施形態では、逆に傾斜した部分は向かう部分の長さの約25%未満である。いくつかの実施形態では、逆に傾斜した部分は、正または負に向かう部分の振幅の約30%よりも小さい振幅を有している。
【0160】
驚くべきことに、
図12Aと
図12Bに示されているような、反転(たとえば、ジグザグの)螺旋角度を有する背骨は、展開時に捩れる傾向が少ないことと組み合わせて、高められた長手方向の柔軟性と高められた半径方向の強度をもたらすように、これらの一般的な特性同士間の有利な平衡を促すことができる。これに対して、ほぼ連続した全体傾斜(
図1から
図3の実施形態におけるような)は同じ利点を有しない。
【0161】
角度θ
oaによって示される背骨部分の概ね全体的螺旋配置に加えて、各螺旋部分(たとえば、ジグザグの各脚)が局部的な反転螺旋形状、たとえば、小さいピッチの凹凸、すなわち波形を有することがわかる。
図12Aから
図12Dの背骨782a−782cの小さいピッチの起伏、すなわち波形を、
図9Aに示された背骨の配置と対比されたい。この局所的な非均一性は、全体の傾斜よりも徐々に異なっている、中心線の特徴的な傾斜を有する穴787の全てまたはいくつかから生じ、差をdθ
1、dθ
2、dθ
3、dθ
4、...dθ
nと表す。
【0162】
図16に示された例では、各穴部分787aは、全体螺旋角度θ
oaに対しておおよそdθの同じ値を有しているが、これはそうである必要はない。dθの値は各々、隣接する穴とは異なり、正の変動また負の変動を有してもよい。たとえば、
図17(a)から(c)は、(
図12Aと
図12Bに示された)背骨782aと概ね類似し、かつ異なったdθ値を有する背骨の例792の平面図、正面図、部分的に焦点を当てた図である。この例では、3つの傾斜部分(ジグザグの3つの脚)の各々の全体螺旋角度は約25度または‐25度である。上で詳しく述べたように、背骨の全体螺旋角度の絶対値は、少なくとも約15度と、約60度以下の間であってよい。背骨の全体螺旋角度の絶対値は、少なくとも約20度と、約50度以下の間であってもよい。さらに、背骨の全体螺旋角度の絶対値は、少なくとも約22度と、約30度以下の間であってもよい。いくつかの実施形態では、背骨の全体螺旋角度の絶対値は約25度であってよい。図示のように、複数の穴797は、
図12Aと
図12Bにおける部材784、785のような複数のレール部材の配列にスライドし係合するように、通常、背骨792に沿って長手方向に分散させられる。
【0163】
各穴797の中線のおおよその角度が示されている。図示のように、この実施形態は、約10度の比較的小さい穴角度、約33度の中間の穴角度、約40度のより急な穴角度を含んでいる。勿論、この実施形態は一例に過ぎず、様々な他の穴角度値および構成が考えられる。いくつかの実施形態では、穴角度の絶対値は、少なくとも約0度と、約60度以下の間であってよい。穴角度の絶対値は、少なくとも約10度と、約50度以下の間であってもよい。さらに、穴角度の絶対値は、少なくとも約20度と、約40度以下の間であってよい。穴角度は、少なくとも約30度と、約35度以下の間で変化してもよい。最後に、図示のように、穴角度の絶対値は、約10度、約33度、約40度であってよい。さらに、穴角度はどのような、一方で拡張の容易さを、他方でステントの柔軟性を促すように構成された種々の所望の角度またはそれらの組み合わせであってもよいことが考えられる。
【0164】
たとえば、いくつかの実施形態では、複数の穴角度値の2つが等しい。いくつかの実施形態では、真ん中の穴は最大の穴角度値を有している。いくつかの実施形態では、穴角度値の少なくとも1つは全体螺旋角度θ
oaに等しい。いくつかの実施形態では、穴角度値の平均値または中央値は全体螺旋角度θ
oaに等しい。
【0165】
一般に、より急な穴角度はステントの長手方向の柔軟性と半径方向の強度を増し、したがって、より強く、かつより柔軟性があるステントを促す。これに対して、よりなだらかな穴角度は一般に、ステントの展開の拡張を高め、ステントが、それが拡張するときに捩れる傾向を減らし、したがって、より滑らかで、より一様な展開を促す。
【0166】
図17(b)に示された、背骨の調整された起伏、すなわち波形によってもたらされる穴797の個々の穴角度は、展開特性をさらに改善したものにすることができる。驚くべきことに、穴787aの領域の傾斜角度は、ステントが、選択された血管治療部位においてバルーンカテーテルによって半径方向に拡張させられるときに、ステントのより一様で、予測可能な展開を促すように選択されてもよいことがわかった。上で述べたように、強度と柔軟性、または、極めて一様な展開挙動を促すように角度が選択されてもよい。いくつかの実施形態では、角度は、長手方向に、たとえば、バルーンの膨張特性に合致するように構成された順次の開口を促すように選択される。
【0167】
図17Dと
図17Eに示すように、各穴の穴角度dθは少なくとも2つの位置で測定されてよい。
図17Dに示すように、いくつかの実施形態では、穴角度dθは、穴797の側壁798aの中点と側壁798bの中点を接続する線と、ステントの長手軸に平行な線とがなす角度である。他の実施形態では、穴角度dθは、
図17Eに示すように、穴797の下縁799の中点の接線と、ステントの長手軸に平行な線とがなす角度と測定できる。
【0168】
さらに、上記の考察は背骨を、角度方向が背骨の穴において得られた複数の別個の部品に分割されると特徴付けているが、背骨の別個の部品の角度方向も、背骨の穴同士の間を延びる背骨のこれらの部分について同様に得ることができる。
図17(b)に示されているように、背骨の穴同士の間を延びる別個の部分は概ね曲線状で、(背骨の脚に沿った頂点の直ぐ左側に示されている)大きくなるまたは小さくなる正の傾斜と(背骨の脚に沿った頂点の直ぐ右側に示されている)大きくなるまたは小さくなる正の傾斜の少なくとも一方を形成することができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、これらの別個の部分は概ね曲線状で、背骨の螺旋状延長部分の「上昇」または「下降」成分をもたらすことができ、一方穴はステントの長手軸に対し概ね平行に延びている。言い換えると、いくつかの実施形態では、穴同士の間を延びている別個の複数の部分だけが螺旋方向に延びるであろう。しかしながら、ここで広範囲にわたって述べたように、いくつかの実施形態において、湾曲した、すなわち曲線状の複数の部分を含めることでステントの柔軟性と強度を上げることができる。他の実施形態では、背骨の別個の複数の部分と背骨の複数の穴はすべて曲線状か概ね直線で、長手軸に概ね平行な方向か、長手軸のまわりにおおむね螺旋状に延びてよい。
【0170】
[ステント装置の製造、処理、および組み立て]
ステント装置の全体の製造工程は、次のサブ工程のいくつかまたは全てを何らかの効率的な作業順序で含んでよい。
ポリマーの合成、組み合わせ、混合の少なくとも1つ。
生体内分解性の合金または非生体内分解性の合金のような、生体適合性のある金属材料のような非ポリマー材料。全てのまたはいくつかの部品は金属性であってよく、以下の複数の金属シート処理工程は、以下のポリマー指向の複数の工程と機能的に等化であってよい。
たとえば、強化材料、薬物担体粒子、などの、オプションとしての複合材料。
ポリマーフィルムのプレス、成形、熱処理の少なくとも1つ。
多層フィルム。
ポリマーフィルムの薬剤塗布。
ポリマーフィルムからの複数の部品の切断、たとえばレーザ切断。いくつかの実施形態では、ステントの異なった部品が異なったフィルム組成またはフィルム構造を有してもよい。
工業精密部品製造方法、射出成形、3次元印刷、紫外線立体成形、など。
製造された部品、たとえば、噴霧、浸し、などによる、ポリマー/溶剤担体において用いられた再狭窄防止複合物の薬剤塗布。
部品、たとえば、予成形された背骨とレール部材(たとえば、
図18、
図19A、
図19Bを参照)の予備形成と予備成形の少なくとも一方。
半圧縮された構成のステント組み立て体、たとえば
複数の部品を保持し、操作する工具と、
背骨組み立て体を保持する穴付きマンドレルと、
レール部材の、スライド穴を貫通する挿入と、
レール部材の、接着窪みまたは接着穴内への接着(接着、溶剤結合、加熱またはエネルギー接着、など)と、
余分な材料と余分な組み立てタブの少なくとも一方の、部品からの取り除きと、
任意である、組み立て体後処理、被覆、研磨の少なくとも1つと、
の少なくとも1つ。
組み立てられたステントの検査と品質管理。
最後に、ステントの圧縮と、バルーンカテーテルへの取り付け(たとえば、虹彩状の一様圧縮装置、バルーンへ加えられる熱、圧力、流体、真空、圧力の少なくとも1つ、など)。
ステント/カテーテル製品の包装と殺菌(たとえば、Eビーム照射、化学殺菌、など)。
【0171】
ステントは多くの種類の生体適合性材料から作ることができる。たとえば、ここに記載されたステントの実施形態を作るのに適したポリマー組成が、「医療用の相分離した生体適合性ポリマー組成」という発明の名称の、Brandomらの米国特許出願公開2010−0228,343号明細書に記載されている。I
2DTE(di‐iodo‐desaminotyrosyl チロシンエチルエステル)と、ポリ(85%I
2DTE‐co‐8%PCL10K‐co‐7%PCL1.25K炭酸塩)のような、異なった分子量のPCL(ポリカプロラクトン)の共重合体の調製と試験を教示している、たとえば、上記刊行物の表2、表3と、関連する記載を参照されたい。
【0172】
他の生体適合性材料を用いてよい。同様に、複合材料と、層状の材料の少なくとも一方の材料を用いてよい。レール部材と背骨のような異なった部品が、異なったポリマー組成と異なった材料特性(たとえば、異なった層構造、熱処理または焼きなまし履歴、混合物内容、など)の少なくとも一方を持っていてよい。代わりの実施形態では、ポリマー材料と金属材料の組み合わせが用いられてよい。合金と被覆された金属のような生体内分解性の金属材料が、ここに開示された独特で、新規な態様から離れることなくステント構造用に用いられてよい。生体内分解性の金属材料は、マグネシウム、鉄合金、亜鉛、マンガン、などからなってよい。
【0173】
図18、
図19A、そして
図19Bは、平らなシートポリマー(たとえば、
図11、
図17(a)、(b)を参照)から切断された、同じ部品同士の間に予備成形された形状を有する、背骨とレール部材の予備成形された部品を示しており、該形状は、(
図13Aから
図14Bのような)完全なステント構造に最終的に組み立てられるときの形状である。たとえば、これらの部品は、圧力、熱、任意に湿気、など、またはこれらの組み合わせを用いることによって型や他の工具で形成されてもよい。背骨782とレール部材784のような部品のそのような予備成形または予備形成は有利なことに、ステントの組み立ておよび取り付けの工程の間、塑性変形、残留応力、または材料特性に対する他の変更を減らし、または無くすことがある。部品の予備成形または予備形成は組み立て工程における利便性を簡単化して促し、接着などのための複数の部品の配置における正確さを増す。
【0174】
図18は、管状のステント組み立て体の湾曲した表面に近似する全体曲率を有するように予備成形され、かつ近位のレール端部分772aと772bに、圧縮されたステント組み立て体(たとえば、
図13Aを参照)におけるこれらの部分の曲率に近似するより大きな曲率(より小さい半径)が与えられている、代表的なレール部材784を示している。
【0175】
図19Aと
図19Bは、組み立てられたステントの形状に近似する、予備成形された形状が与えられている代表的な背骨852と854を示している。
図19Aの背骨852は反転螺旋形状(
図14Aと
図14Bを参照)を有し、その結果、(組み立てられたステント内腔の中心の方を向く)内側面856だけが図面の平面内にはっきりと見える。これに対して、
図19Bの背骨854は、内側面856と(組み立てられたステント内腔から外側を向いた)外側面857の両方が図面の平面内にはっきりと見える連続した螺旋形状を有している。
【0176】
図20Aから
図20Dは、レール部材(たとえば、
図12Aと
図12Bの784から785)を、組み立て中に取り付ける組み立て工程の詳細を示しており、この工程は、ここに開示された様々な代わりの実施形態の、中心に接着された組み立て体(たとえば、レール部材が背骨に接着されている実施形態)に適用できる。そのような組み立て体では、代表的なシーケンスは、レール部材をそれが支持する背骨に固定的に取り付ける前に、レール部材を、隣接する背骨のスライド穴を通過させることである。いくつかの場合には、ステント構造の組み立て中に背骨を固定するために、溝付きのまたは一致する形状の複数のマンドレルが用いられる。
【0177】
図20Aと
図20Bは、レール部材の近位端722を、隣接する背骨782bの穴787に、矢印で示す方向に挿入する予備工程を示している。
図20Cと
図20Dは、レール部材の近位端722を、支持する背骨782aに固定的に取り付ける、その後の工程を示している。この例では、結合剤860を用いて接着接合がレール端772と窪み786の表面の間に形成されている。結合剤860のある量、すなわち一部が窪み786内に堆積させられ、続いてレール端772が窪み786内に押し付けられる。この取り付け工程における便宜と一貫性のために、位置決めまたはクランピングの特殊な細工が備えられてよい。一例では、結合剤860は、背骨782の材料がレール端772の材料に付着するのを可能にする溶剤を含んでもよい。たとえば、塩化メチレンまたは類似の溶剤を含む物質が、I
2DTEとPCLの共重合体を含むポリマー部品を接着するために用いられてよい。他の例では、結合剤860は、架橋結合または紫外線硬化接着剤を含んでよい。さらに他の例では、局部的に加えられた熱または超音波のようなエネルギーが、レール772を背骨782に接合するために用いられてよい。なおさらに他の例では、接続金具または留め金具が用いられてよい。
【0178】
[ステントの実施形態の、従来技術のステントと比較した試験データ]
ここで述べたように、螺旋状のスライドロックステントの実施形態は、従来のポリマーのステントと比べて、優れた柔軟性と剛性を有することができる。この点について、様々な試験が、ここに開示された実施形態の剛性が、従来技術のポリマーのステントの剛性よりも大きいことを示している。実際、ここに開示された実施形態の剛性のような構造特性は、金属のステントの構造特性に非常によく似ている。
【0179】
したがって、ここに開示されたステントの実施形態は、ポリマーと複合材料の少なくとも一方を、金属のステントの構造特性に近づくことと、再現すること、の少なくとも一方をすることができる構造特性を有する構成に使用できるようにする、ステント技術における著しい進歩を表している。金属のステントは、ポリマーのステントのように生体吸収性があるものではないという欠点を有しているが、金属のステントは、剛性と破壊強度のような、深刻な障害に必要な優れた構造特性を長い間、もたらしてきた。これに対して、従来のポリマーのステントは、金属のステントでは得られない吸収可能性と他の利点をもたらすことができたが、従来のポリマーのステントは、金属のポリマーと同様の、剛性があり丈夫ではない。本出願のステントの実施形態によってなされた解決策と進歩の1つは、金属のステントに類似した優れた構造特性を示しながら、ポリマーの生体吸収可能性と他の利点を達成する方法を備えることである。実際、ここに開示された螺旋状のスライドロックポリマーステントの独特の特徴と構成は、当業者がポリマーのステントと金属のステントの利点を得ることを可能にする。さらに、本開示は、様々な材料の利点を含むことができる複合材料構造を有する種々のステントも提供する。
【0180】
[積層製造工程の実施形態]
実施形態によるステントは、非常に様々な製造方法、製造技術、および製造手順を用いて製造または作り出すことができる。これらは、特に、レーザ処理、フライス加工、スタンピング、形成、鋳造、成形、ボンディング、溶接、接着による固定、などを含むが、これらに限定されない。
【0181】
いくつかの実施形態では、ステントの機能と機構は、概ね二次元の形状で作ることができ、そして、たとえば、ただし、限定されない、ボンディング、積層、など、によって、三次元の構造および特徴へとさらに処理を利用することができる。他の実施形態では、ステントの機能と機構は、たとえば、ただし、限定されない、射出成形などのような処理を利用することによって、直接、三次元の形状へと作ることができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、ステントは、射出成形工程、射出成形技術または方法を用いることによって製作することができる。たとえば、特に、射出成形工程などは、ステントの列を一体のユニットとして形成するために用いることができる。そして軸方向に延びる複数の列は接続されて、折り畳み状態で管状の形へと巻くことができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、積層スタックを、一実施形態にしたがう積層工程によって、ステントの列を製作するために使用することができる。そして、軸方向に延びる複数の列は接続されて、折り畳み状態で管状の形へと巻くことができる。
【0184】
積層スタックは、いくつかの実施形態では、たとえば、レーザ切断、エッチング、などによって、所望の機能を上に形成することができる3つのシートまたはパレットを一般に有してよい。複数のパレットは、ユニットを形成するために、たとえば、ボンディング、溶接、など、によって、整列し、連結することができる。余分の材料(たとえば、横と端のレール)は、ステントの複数の列を形成するために除去してよい。パレットは、折り畳まれた状態と完全に展開された状態において直径を規制し、抑えるために、雄と雌の関節構造とラチェット構造の少なくとも一方のような、周方向に入れ子の様々な機能を有することができる。
【0185】
[ステント材料一般]
ステントは1つ以上の材料から作ることができる。これらの材料は、金属、ポリマー、複合材料、形状記憶材料を含む。他の任意の実施形態では、ステントはさらに、開示の全体が参照によってここに含まれる、係属中の米国特許出願公開第10/952,202号明細書に開示されたもののような、生体適合性のある、そして望ましくは生体吸収性のポリマーから作られた管状部材を有してよい。用いられる様々なポリマー製剤は、立体異性、合成物、充填材料、などを含んでよいホモポリマーとヘテロポリマーを含んでよいことも理解される。ホモポリマーはここでは、全て同じ種類のポリマーからなるポリマーを指すのに使用されている。ヘテロポリマーはここでは、共重合体とも呼ばれる2つ以上の異なった種類のモノマーからなるポリマーを指すのに使用されている。ヘテロポリマー、すなわち共重合は、ブロック、ランダム、交互、として知られている種類であってよい。さらに、様々なポリマー製剤の提示について、実施形態による製品は、ホモポリマーと、ヘテロポリマーと、そのようなポリマーの混合物の少なくとも1つからなってよい。
【0186】
「生体吸収性の」という用語はここでは、(水と酵素の少なくとも一方の、化学的に分解される作用によって)微生物分解を受けるポリマーを指すのに使用され、分解産物の少なくともいくつかは、人体によって除去と吸収の少なくとも一方がなされることができる。「放射線不透過性の」という用語はここでは、物体または、X線写真術、蛍光透視、他の形態の放射、MRI、電磁エネルギー、(コンピュータによる断層撮影法のような)構造イメージング、(超音波検査法のような)機能的画像化、のような、ただしこれらに限定されない方法のような、画像化のための生体内分析技術によって見える該物体を含む材料を指すのに使用される。「本質的に放射線不透過性の」という用語はここでは、ハロゲン種のポリマーとの共有結合により本質的に放射線不透過性であるポリマーを指すのに使用される。したがって、該用語は、ハロゲン化された種または、金属とその複合体のような他の放射線不透過鎮静剤と単に混合されるポリマーを実際含む。
【0187】
他の任意の変形例では、ステントは、選択された治療効果を発揮するのに十分な、ある量の治療薬(たとえば、医薬品と生物学的作用物質の少なくとも一方)をさらに含むことができる。ここで使用される「医薬品」という用語は、特定の生理的(代謝の)反応を刺激する、病気の緩和、治療、または予防を目的とした物質を含む。ここで使用される「生物学的作用物質」という用語は、臓器、組織または細胞をベースとした派生物、細胞、ウイルス、媒介物、任意のシーケンスとサイズを有する、元来は、天然で、組み換えた、そして合成であってよい核酸(動物、植物、微生物、そしてウイルスのもの)、免疫体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、相補DNA、腫瘍遺伝子、たんぱく質、ペプチド、アミノ酸、リポたんぱく質、糖たんぱく質、脂質、炭水化物、多糖類、脂質、リポソーム、または他の細胞成分または細胞小器官、たとえば、受容体と配位子を、限定なしに含む、生体系における構造と機能の少なくとも一方の活性を処理するいかなる物質も含む。さらに、ここで使用される用語「生物学的作用物質」は、ウイルス、血清、毒素、抗毒素、ワクチン、血液、血液成分または血液製剤、アレルギー製品、または類似の製品、アルスフェナミンまたは、人の病気や怪我の予防、治療、治癒に適用可能なその派生物(または三価の有機ヒ素化合物)を含むことができる(公衆衛生法(42 USC 262(a))の351(a)条による)。さらに、「生物学的作用物質」という用語は、(1)生物学的に活性なペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミン、脂質、または、免疫体、成長因子、インターロイキン、そしてインターフェロンを含む、自然に発生する、または組み換え可能な有機体、組織、または細胞系、またはそのような分子の合成類似体によって作られ、かつこれらから精製された核酸を含む、ここで使用される「生体分子」と、(2)核酸(デオキシリボ酢酸(DNA)またはリボ酢酸(RNA))、遺伝要素、遺伝子、因子、対立遺伝子、オペロン、構造遺伝子、調節遺伝子、オペレータ遺伝子、遺伝子補完物、ゲノム、遺伝子コード、コドン、アンチコドン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボゾ−ムの染色体外遺伝子要素、細胞質遺伝子、核外遺伝子、トランスポゾン、遺伝子突然変異、遺伝子配列、エクソン、イントロンを含む、ここで使用される「遺伝物質」と、(3)操作を受けた、細胞、組織、または臓器のような、ここで使用される「処理済み生物製剤」、を含むことができる。治療薬は、ビタミンまたはミネラル物質または他の天然元素も含むことができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、軸方向または周方向に外れた複数の要素の構造特徴は、展開と拡張の割合における強度、コンプライアンス、曲率半径の機能的特徴をカスタマイズするように変更できる。いくつかの実施形態では、ステントは吸収性材料を含むことができ、その仕事がなされたときに消えてなくなる。いくつかの実施形態では、ステントは治療引き渡し場として働く。
【0189】
いくつかの態様が、それぞれの開示の全体が、参照によってここに含まれる、係属中の米国特許出願公開第11/016,269号明細書、第60/601,526号明細書、第10/655,338号明細書、第10/773,756号明細書、第10/897,235号明細書にも開示されている。
【0190】
ステントの実施形態のいくつかの特徴と構成は、それぞれの開示の全体が、参照によってここに含まれる、いずれもSteinkeに発行された米国特許第6,033,436号明細書、第6,224,626号明細書、第6,623,521号明細書に開示されている。
【0191】
有利なことに、ステントの構造要素とインタロックは、展開と拡張の割合における強度、コンプライアンス、曲率半径の機能的特徴をカスタマイズするように変更できる。いくつかの実施形態では、ステントは吸収性材料を含むことができ、その仕事がなされたときに消えてなくなる。いくつかの実施形態では、ステントは、医薬品または生体物質のような治療薬の引き渡し場として働く。
【0192】
[金属のステントと製造方法]
いくつかの実施形態によるステントを製造するための考えられる材料は、コバルトクローム、316ステンレス鋼、タンタル、チタニウム、タングステン、金、白金、イリジウム、ロジウム、そしてその合金または熱分解カーボンを含む。さらに他の代わりの実施形態では、ステントは、腐食性材料、たとえば、マグネシウム合金で作ることができる。ステントの様々な実施形態を、バルーンが膨張可能な従来のステントとして記載したが、当業者は、実施形態によるステントの構造が、ステントを押し潰しから復元できるようにするために、他の種々の材料からも作ることができることを理解するであろう。たとえば、自己拡張可能なステントのような代わりの実施形態では、Nitinol and Elastinite(登録商標)のような、それを可能にする形状記憶合金を、実施形態にしたがって使用することができる。
【0193】
金属板から個別の要素を作る様々な方法は、管または平たいシート材料の、レーザ切断、レーザアブレーション、打ち抜き、化学エッチング、プラズマエッチング、スタンピング、水ジェット切断、または高精細の構成部品を製造可能な、当該技術において知られた他の方法を含むことができる。製造方法は、いくつかの実施形態では、ステントを作るのに使用される材料に依存する。化学エッチングは、高精細の構成部品を、特に、競合する製品のレーザ切断の高コストと比較して、比較的安い価格で提供する。いくつかの方法は、複数のロックアウトの係合の改善を助けるのが望ましい、結果として、面取りした縁になる、前方および後方の異なったエッチング製品を可能にする。さらに、高精細で、優れた構成備品を製造することができるプラズマエッチングまたは当該技術で知られた他の方法を使用することができる。ここに開示された実施形態は、ステントまたはステントの要素を製作することができる手段に限定されない。
【0194】
基本形状が一旦得られると、複数の要素は多くのやり方で組み立てることができる。仮付け溶接、接着剤、機械的取り付け(かみ合いと織り込みの少なくとも一方による結合)、当該技術分野において認識されている他の取り付け方法を、個別の要素を結びつけるために使用することができる。いくつかの方法は、複数のロックアウトの係合の改善を助けるのが望ましい、結果として、面取りした縁になる、前方および後方の異なったエッチング製品を可能にする。有利な製造方法では、ステントの構成部品は、様々な所望の曲率に熱設定できる。たとえば、ステントは、展開時に、最大直径にあるか、最大直径よりも大きい、収縮させられたバルーンの直径に等しい直径を有するように設定できる。さらに他の例では、複数の要素は電解研磨され、それから組み立てられ、または電解研磨され、被覆され、あついは組み立てられ、または組み立てられ、そして電解研磨されてよい。
【0195】
[ポリマーのステント]
金属のステントは、ある望ましい特性を有しているが、ステントの耐用年数は、切迫した再狭窄が安定し、回復が頭打ちになる時間である、約6−9カ月の範囲であると見積もられている。金属のステントとは対照的に、生体吸収性のステントは、血管内ではその実用性より長く存在することはできない。さらに、生物吸収性のステントはことによると、血管疾患の特定の態様または事象を治療するために、一回に大量の治療薬を投薬するのに、あるいは同じ時間にまたはその製品寿命の様々な時間に複数の治療薬を投薬するのに使用することができる。さらに、生体吸収性のステントは、血管のおおよそ同じ領域を繰り返し治療することも可能にする。したがって、一時的な(すなわち、生体吸収性と放射線不透過性の少なくとも一方の)ステントを開発する、重要で満たされていない要求が存在し、これらのステントを作るのに使用されるポリマー材料は、金属の永久ステントの使用に伴う多くの欠点や制限を回避または軽減しつつ、金属の望ましい性質(たとえば、十分な半径方向強度、放射線不透過性、など)を持つことができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、ステントは、生体吸収性の(たとえば、生体内分解性の、または生体分解可能な)生体適合性のあるポリマーから作ることができる。生体吸収性の材料は、加水分解で分解可能な生体材料と酵素的に分解可能な生体材料の少なくとも一方からなるグループから選択できるのが望ましい。適切な分解可能ポリマーの例は、ポリヒドロキシ酪酸塩/ポリヒドロキシ吉草酸塩共重合体(PHV/PHB)、ポリエステルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ラクトンベースのポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ(プロピレン・フマル酸エステル-co-エチレングリコール)共重合体(別名、フマル酸無水化物)、ポリアミド、ポリ無水物エステル、ポリ無水物、ポリ乳酸/カルシウムリン酸塩ガラス付きポリグリコール酸、ポリオルスエステル、シルクエラスチンポリマー、ポリホスファゼン、ポリ乳酸塩とポリグリコール酸とポリカプロラクトンの共重合体、脂肪族ポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリエーテル・エステル、ポリエステル、ポリデプシペプチド、多糖類、ポリヒドロキシアルカノアート、そしてその重合体、を含むが、これらに限定されない。さらなる情報については、開示が参照によってここに含まれる米国特許第4,980,449号明細書、第5,140,094号明細書、第5,264,537号明細書を参照されたい。
【0197】
1つの態様では、分解可能な材料は、ポリ(グリコリド・トリメチレン炭酸塩)、ポリ(アルキレン・シュウ酸塩)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸ポリマー、ポリ・p・ジオキサン、ポリ・ベータ・ジオキサン、非対称3,6‐置換・ポリ‐1、4−ジオキサン‐2、5‐ディオネ、ポリアルキレン‐2−シアノアクリレート、ポリデプシペプチド(グリシン‐DL‐ラクチド・共重合体)、ポリジヒドロピラン、ポリアルキレン‐2−シアノアクリレート、ポリ・ベータ・マレイン酸(PMLA)、ポリアルカノート、そしてポリ・ベータ・アルカン酸からなるグループから選択することができる。当該技術において知られている他の分解可能な材料が多く存在する(たとえば、それぞれ引用によってここに含まれるRatner, Hoffman、Schoen、Lemons著「生体材料科学:医薬における材料の手引き」(Biomaterials Science:An Introduction to Materials in Medicine)2004年7月29日と、Atala、A.、Mooney,D..著「合成生体分解性ポリマースキャフォールズ(Synthetic BiodegradablePolymer Scaffolds)」1997年、Birkhauser,Bostonを参照)。
【0198】
なおさらに、他の実施形態では、ステントは、たとえば、チロシン誘導のポリカーボネート、チロシン誘導のポリアレート、チロシン誘導のジフェノールモノマー、ヨウ素と臭素の少なくとも一方で処理されたチロシン誘導のポリカーボネート、ヨウ素と臭素の少なくとも一方で処理されたチロシン誘導のポリアレート、のようなポリカーボネート材料で作ることができる。さらなる情報については、開示が参照によってここに含まれる、RE37,795、5,658,995、6,048,521、6,120,491、6,319,492、6,475,477、5,317,077、5,216,115で再出願されたRE37,160、5,670,602で再出願された米国特許第5,099,060号明細書、第5,198,507号明細書、第5,587,507号明細書と米国特許出願公開第09/350,423号明細書を参照されたい。さらに他の実施形態では、ポリマーは、米国特許出願公開第60/852,513号明細書、第60/852,471号明細書、第60/601,526号明細書、第60/586,796号明細書、第60/866,281号明細書、第60/885,600号明細書、第10/952,202号明細書、第11/176,638号明細書、第11/335,771号明細書、第11/200,656号明細書、第11/024,355号明細書、第10/691,749号明細書、第11/418,943号明細書、第11/873,362号明細書と、米国特許26115449明細書と、米国特許第6,852,308号明細書、第7,056,493号明細書と、PCT出願:PCT/US2005/024289、PCT/US2005/028228、PCT/US07/01011、PCT/US07/81571に開示された、生体適合性のあるポリマー、生体吸収性のポリマー、放射線不透過性のポリマーのいずれであってもよい。
【0199】
天然ポリマー(バイオポリマー)はどのようなたんぱく質あるいはペプチドも含む。バイオポリマーは、アルギン酸塩、セルロースおよびエステル、キトサン、コラーゲン、デキストラン、エラスチン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒドロキシアパタイト、クモの糸、綿、他のポリペプチドおよびたんぱく質、そしてそれらの組み合わせ、からなるグループから選択することができる。
【0200】
さらに他の代わりの実施形態では、形を変えるポリマーを、実施形態にしたがって構成されたステントを製作するために使用することができる。形を変える適切なポリマーは、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリエーテル・エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリデプシドペプチド、脂肪族化合物のポリウレタン、多糖類、ポリヒドロキシアルカノアート、そしてその共重合体からなるグループから選択することができる。生体分解性の、形を変えるポリマーについてのさらなる開示については、各々の開示が参照によってここに含まれる米国特許第6,160,084号明細書と第6,284,862号明細書を参照されたい。形状記憶ポリマーについてさらなる開示については、各々の開示が参照によってここに含まれる米国特許第6,388,043号明細書と第6,720,402号明細書を参照されたい。さらに、遷移温度は、ステントが通常の人体温度にて折り畳まれた状態になることができるように、設定することができる。しかしながら、ステントの配置と引渡しの間、高温のバルーンカテーテルまたは高温液体(たとえば、生理食塩水)かん流システムによって熱を加えると、ステントは拡張して、身体の内腔にその最終直径を取る。熱記憶材料が使用されると、それは、押し潰れから回復可能な構造を有することができる。
【0201】
さらにまた、ステントは、生物学的に安定な(たとえば、非分解性で、非侵食性)生体適合性のあるポリマーから作ることができる。非分解性の、適切な材料の例は、ポリウレタン、デルリン、高濃度ポリエチレン、ポリプロピレン、そしてポリ(ジメチル・シロキサン)を含むが、これらに限定されない。
【0202】
いくつかの実施形態では、層は、特に、次のような、熱可塑性物質のいかなる例を含むことができる:フッ素化エチレンプロピレン、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリル酸)(別名、pHEMA)、ポリ(エチレン・テレフタル酸エステル)繊維(別名、Dacron(登録商標))またはフィルム(Mylar(登録商標))、ポリ(メタクリル酸メチル)(別名、PMMA)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(別名、PTFEとePTFEとGore‐Tex(登録商標))、ポリ(塩化ビニール)、ポリアクリル酸塩とポリアクニロニトリル(PAN)、ポリアミド(別名、ナイロン)、ポリカーボネートとポリカーボネート・ウレタン、ポリエチレンとポリ(エチレン‐co‐ビニールアセテート)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、Pellethane(登録商標)とEstane(登録商標)のような、ポリウレタンとポリエーテルウレタンのエラストマー、シリコーンゴム、シロキサン、ポリジメチールシロキサン(別名、PDMS)、Silastic(登録商標)、シリコンポリウレタン。
【0203】
最後に、ステントの実施形態で使用される1つ以上のポリマーは、各々の開示が参照によってここに含まれる米国特許出願第60/852,471号明細書、第60/852,513号明細書、米国特許第5,194,570号明細書、第5,242,997号明細書、第6,359,102号明細書、第6,620,356号明細書、第6,916,868号明細書において述べられているような様々な工程にしたがって製作することができる。
【0204】
[ポリマーのステントを製造および組み立てる方法]
プラスティック材料と分解性の材料の少なくとも一方が使用される場合、要素は、スクリーン、ステンシル、マスク付きレーザーアブレーションと、溶剤鋳造と、スタンピング、型押し、圧縮成形、遠心力回転成形による形成と、フリーフォーム製作技術、立体リソグラフィー、選択的レーザー焼結、などを用いて押し出し、切断、三次元急速試作品の製造、プラズマエッチングを含むエッチング技術と、フェルト上に成形すること、編むこと、または織ることを含む織物製造方法と、溶融堆積モデル化、射出成形、室温で加硫処理した成形、またはシリコンゴム成形を含む成形技術と、溶剤付き鋳造、直接殻製造鋳造、インベストメント鋳造法、ダイキャスト鋳造法、樹脂注入法、樹脂処理電鋳法、または射出成形またはRIM成形を含む鋳造技術を用いて作ることができる。開示されたポリマーを有するある実施形態は、その2つ以上の組み合わせ、などによってステントに形作ることができる。
【0205】
そのような工程は、レーザ切断、エッチング、機械的切断または他の方法による、押し出されたポリマーのシートの切断のような二次元の製造方法、結果として得られた複数の切断部分をステントに組み立てること、または固形形態から装置を三次元に製作する類似の方法をさらに含むことができる。さらなる情報については、開示が参照によってここに含まれる米国特許出願公開第10/655,338号明細書を参照されたい。
【0206】
いくつかの実施形態のステントは、ステントの全長で、または、ステントの部分長さで準備された複数の要素で作ることができ、次に、そのうちの2つ以上は次に接続され、または取り付けられる。部分長さを用いる場合、2つまたは3つ以上が、全長のステントを有するように、接続され、または取り付けられることができる。この構成では、複数の部品を、中央の開口を生成するように組み立てることができる。組み立てられた全長または部分長の複数の部品と複数のモジュールの少なくとも一方は、折り畳まれた状態から、部分的に拡張した状態へ、それらを様々な状態に内部織りすることによって組み立てることができる。
【0207】
さらに、複数の要素は、溶媒または熱接合によって、または機械的取り付けによって接続または取り付けられることができる。接合の場合、有利な接合方法は、超音波、無線周波数または他の熱的方法の使用と、溶媒または接着剤または紫外線硬化処理または光反応処理を含む。要素は、熱的形成、冷間成形、溶剤弱体形成および蒸発、または結合前の部品の予備形成によって巻くことができる。
【0208】
管状の部材を形成するために、1つ以上の一連の平らなモジュールを巻くことは、各々、ステントの要素と接触している側に詰めることができる2つのプレート同士の間で巻くことを含む、当該技術において知られている手段によって行うことができる。一方のプレートを動かないようにし、他方のプレートは一方のプレートに対して横に動くことができる。このようにして、2つのプレートの間に挟まれたステントの複数の要素は、これらプレートが互いに対して動くことによってマンドレルのまわりに巻くことができる。あるいは、当該技術において知られている3元ピンドル方法も、管状の部材を巻くために使用することができる。ある実施形態にしたがって使用することができる、他の巻く方法は、各々の開示が参照によって全体としてここに含められる、たとえば、米国特許第5,421,955号明細書、第5,441,515号明細書、第5,618,299号明細書、第5,443,500号明細書、第5,649,977号明細書、第5,643,314号明細書、第5,735,872号明細書に開示されている、「ジェリーロール」構造のための巻く方法を含む。
【0209】
これらの方法におけるスライドロックステントの構造は、従来技術に対して非常に多くの利点を有する。ロック機構の構造は主として材料に依存している。このことはステントの構造が高強度の材料を含むことを可能にし、これはロック機構を完成するために該材料の変形を必要とする構造では不可能である、これらの材料を含むことは、より厚いステントの強度特性を維持しつつ、材料の必要な厚さを減らすことを可能にする。いくつかの実施形態では、選択された周方向の要素上に存在する留め金、止め具、または歯の頻度は、ステントが、膨張の後に不必要に跳ね返るのを防ぐことができる。
【0210】
[放射線不透過性]
医療用品に放射線不透過性を加える従来の方法は、金属帯、インサート、マーカーの少なくとも1つの使用と、電気化学的蒸着(すなわち、電気めっき)または被覆を含む。ステントの追跡と位置決めを容易にする放射線不透過体(すなわち、放射線不透過性材料)の追加は、そのような要素を何らかの製造方法に追加することによって、装置の一部または全部の表面に吸収または噴霧することによって、対応できるであろう。放射線不透過性のコントラストの程度は要素の内容によって変えることができる。
【0211】
プラスティックと被覆については、放射線不透過性は、ヨウ素または他の放射線不透過性要素、すなわち、本質的に放射線不透過性の材料を有するモノマーまたはポリマーの使用によって与えることができる。一般的な放射線不透過性材料は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、二酸化ジルコニウムを含む。他の放射線不透過性要素は、カドミウム、タングステン、金、タンタル、ビスマス、白金、イリジウム、ロジウムを含む。いくつかの実施形態では、ヨウ素と臭素の少なくとも一方のようなハロゲンが、その放射線不透過性と抗菌性の性質のために用いられることができる。
【0212】
[多材料の人工血管]
さらに他の代わりの実施形態では、様々な材料(たとえば、金属、ポリマー、セラミックス、治療薬)が、ステントの実施形態を製作するために使用することができる。これら実施形態は、1)材料の積層体を作るために、(垂直軸または半径軸での積層による)異なって積層された複数の材料(材料は、たとえば、平行、交互に、など、任意の形態に積み重ねることができる)と、2)ステントの本体の長手軸と厚さの少なくとも一方に沿って変わることができる空間的に局在の複数の材料と、3)ステントの複合本体を作るために、混合または溶解される材料(たとえば、それによって、1つ以上の治療薬が、ポリマー付きのステントの本体ボディ内にある)と、4)材料をステントの本体の表面上に積層(または被覆)することができる実施形態(「機能的特性を有するステント表面被覆(Stent Surface Coatings with Functional Properties)」と「ステントによって引渡しされる治療薬(Therapeutic Agents Delivered by Stents)」を参照)と、5)少なくとも1つの部品が第2の部品、またはその組み合わせと材料的に異なることができる2つ以上の部品からなるステント、を含むことができる。
【0213】
スライドロックの多材料ステントの成形は2つ以上の材料を用いることができる。各材料の厚さは他の材料に対して変えることができる。必要とされ、または望まれるこの方法は、1)最終引張強度、降伏力、ヤング率、降伏点伸び、破断点伸び、ポアソン比、によって定まる、ステントの性能に対する機械的性質を可能にする、2)基板の厚さ、幾何学的形状(たとえば、二股の、可変表面被覆率)を可能にする、3)(治療薬の引き渡しに影響を与えることがある)分解と吸収の速度、ガラス転移温度、融解温度、分子量、のような材料性能と物理状態と関連がある、材料の化学的性質を可能にする、4)放射線不透過性または視認性と検出の他の形態を可能にする、5)放射線放出を可能にする、6)治療薬の引渡しを可能にする(「ステントによって引渡しされた治療薬(Therapeutic Agents Delivered by Stents)」を参照)、7)ステントの保持と他の機能の少なくとも一方を可能にする(「ステント表面の機能特性による被覆(Stent Surface Coatings with Functional Properties)」を参照)、を含むことができるが、これらに限定されない授権補綴機能(enabling prosthesis function)に寄与する1つまたは複数の機能を有する各々の材料で全体構造部材が作られるのを可能にする。
【0214】
いくつかの実施形態では、材料は、耐荷重特性、エラストマ特性、方向または向きに対して特定であってよい、たとえば、他の材料とステントの長手軸の少なくとも一方と平行な、または垂直な、または他の材料とステントの少なくとも一方に対して一様な強度である機械的強度、を含んでよい。材料は、次のような、ホウ素繊維または炭素繊維、熱分解カーボンのような補強材を含んでよい。さらに、ステントは、繊維、ナノ粒子、などのような少なくとも1つの補強材からなってよい。
【0215】
いくつかの実施形態の他の実施において、ステントは少なくとも一部が、分解可能なポリマー材料から作られてよい。分解可能なステントを使用する動機は、ステントの機械的支持が、数週間の間必要なだけであることである。いくつかの実施形態では、吸収率が変化する生体吸収性の材料を使用することができる。さらなる情報について、各々の開示が参照によってここに含まれる米国特許出願公開第10/952,202号明細書、第60/601,526号明細書を参照されたい。分解可能なポリマーステント材料は、薬剤を引渡しすることによって、それが再狭窄と血栓症も抑制するならば、特に有用である。分解可能なステント材料は、治療薬の引渡しに良く適している(「ステントによって引き渡しされる治療薬(Therapeutic Agents Delivered by Stents)」を参照)。
【0216】
いくつかの実施形態では、材料は、前に定義したような、いかなる種類の分解可能なポリマーも含むことができる。分解可能なポリマーは、分解と吸収の少なくとも一方の時間の変動とともに、好ましい他の性質を有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、材料は、天然ポリマー(バイオポリマー)と、加水分解作用と酵素作用の少なくとも一方によって分解する材料の少なくとも一方のどのような例も含むことができる。いくつかの実施形態では、熱的に可逆または可逆でないヒドロゲルであってよいヒドロゲルのいかなる例、または光硬化材料またはエネルギー硬化材料または磁気的に活性化可能(反応する)材料のいかなる例も含むことができる。これらの反応の各々は特定の機能をもたらすことができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、材料は、ある放射線不透過性材料、あるいはx線、蛍光透視法、超音波、MRI、またはイメトロン電子ビーム断層撮影法(EBT)によって見ることができる、臨床的に可視の材料を有してよい構成物質を含み、または該構成物質からまたは該構成物質とともに作ることができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、1つ以上の材料が所定の規定されたレベルの治療放射線を放射することができる。一実施形態では、材料は、ベータ線で帯電させることができる。他の実施形態では、材料は、ガンマ線で帯電させることができる。さらに他の実施形態では、材料は、ベータ線とガンマ線の両方で帯電させることができる。ステントの使用できるラジオアイソトープは、限定されない、103Pdと32P(リン‐32)と中性子で活性化される2つの例、65Cuと87Rb2O、(90)Sr、タングステン‐188(188)を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、1つ以上の材料は治療薬を含むことができる。治療薬は、独特な、引渡し動力学、動作モード、1回の服用量、反滅期、目的、などを有することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の材料は、たとえば、細胞外の空間、細胞膜、細胞質、細胞の核、他の細胞内器官、の少なくとも1つにおける動作モードによって、治療のための働きのモードと場所をもたらす物質を含む。さらに、組織の形成と、抗がん作用を含む、たとえばホスト生体材料の相互作用である細胞応答に影響する特定の細胞種類に対する化学誘引物質として働く物質。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料は、展開または原点の何らかの形態または状態で細胞を引渡しする。これらは、たとえば、分解可能なマイクロスフェアに包むことができ、またはポリマーまたはヒドロゲルと直接、混合でき、薬剤引き渡し用の搬送手段として働く。生きている細胞は、薬剤タイプの分子、たとえばサイトカインと成長因子を連続的に引き渡しするのに使用できるかもしれない。生きていない細胞は、限定された放出システムとして働く。薬剤引き渡しのさらなる概念については、「ステントによって引き渡される薬剤(Therapeutic Agents Delivered by Stents)」の章を参照されたい。
【0220】
[ステントによって引き渡しされる薬剤]
他の実現例において、ステントは、選択された治療効果を発揮するのに十分な(医薬品と生物学的薬剤の少なくとも一方について以前に定めた)治療薬の量をさらに含むことができる。ステント自身の少なくとも一部の材料は、少なくとも1つの治療薬を有してよく、または少なくとも1つの治療薬をステントに、次の成形法または成形工程で追加してもよい。ステントのいくつかの実施形態(たとえば、ポリマーのステントまたは多材料のステント)では、治療薬はポリマーと混合されるか、または当業者に知られている他の手段によって混ぜられるので、治療薬をステント内に含めてもよい。
【0221】
たとえば、1つ以上の治療薬を多材料の人工血管によって引渡ししてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療薬を含む複数の材料からステント全体を作ってもよい。他の実施形態では、ステントの個別の構成部品のような、ステントの一部は、1つ以上の治療薬を含む複数の材料を含んでよい。そのような実施形態では、1つ以上の治療薬を、ステント材料が分解するときに放出してもよいことが意図される。
【0222】
たとえば、治療薬を、溶液流延と熱プレスの組み合わせによってフィルムに埋め込みまたは浸透させてもよい。そのような方法では、フィルムは、ジクロロメタンに1%のラパマイシンを加えることで作ることができる、ポリマーと治療薬の混合物(20%固体ポリマー、たとえば、ポリ(90%DTE-co-10%DT)カーボネート)から作ることができる。この混合物が一旦準備されると、フィルムは、ドクターブレードを使用して成型することができる。あるいは、機械的反転ロール塗工機または他の、溶媒ベースのフィルム鋳造機を使用してフィルムを作ってもよい。フィルムが一旦鋳造されると、溶媒を、真空炉を用いて、40℃で少なくとも20時間のような、たとえば、ある期間、ポリマーと薬物に適した温度で蒸発させることができる。フィルムが一旦乾燥させられると、フィルムは、100℃の温度で油圧プレスの2つの加熱プレートの間で熱プレスされることができる。これによって、薬物の有効性が維持される。
【0223】
さらに、治療薬は、溶媒のみを用いるか、回転成形によってフィルムに埋め込みまたは浸透させてもよい。治療薬が一旦選択されると、溶媒が該治療薬と選択されたポリマーと適合するかどうか判定する必要がある。目的は、適切な噴霧可能な懸濁液を準備することである。さらに、薬の安定性を、治療薬が、フィルムから一旦、放出されると、被覆内にあり、かつ生理学的条件下で活性を維持できるように、測定することができる。これは、薬の純粋性を検出するために、薬が植え込まれたフィルムのビトロ遊離研究(Dhanikulaら「パクリタクセルの局部引き渡し用の生体分解性のキトサンフィルムの展開と特徴づけ」(Development and Characterization of Biodegradable Chitosan Films for Local Delivery of Paclitaxel),AAPSジャーナル、6(3) 27項(2004)、http://www.aapsj.org/view.asp?art=aapsj060327と、Kothwalaら「心臓血管のステントからのパクリタクセル薬剤の引き渡し」(Paclitaxel Drug Delivery from Cardiovascular Stent)、Trends in Biomaterials&Artificial Organs,Vol.19(2),88−92(2006)、http://medind.nic.in/taa/t06/i1/taat06i1p88.pdfを参照)における標準を管理する当業者によって、HPLC方法(Dhanikulaら「パクリタクセルの局部引渡きし用の生体分解性のキトサンフィルムの展開と特徴づけ」と、Kothwalaら「心臓血管のステントからのパクリタクセル薬剤の引き渡し」のような分析方法を使用することによって求めることができる。
【0224】
他の実施形態において、少なくとも1つの治療薬を、ステントとその構成部品の少なくとも一方の形成後に、ステントとその構成部品の少なくとも一方に追加してもよい。たとえば、少なくとも1つの治療薬を、被覆プロセスまたは他によって、ステントの各構成部品に追加してよい。少なくとも1つの治療薬の追加は、ステントの構成部品の切断またはレージングの前または後に存在してよい。他の例では、少なくとも1つの治療薬を、ステントの少なくとも一部に、その部分組み立てまたは全組み立ての後に、被覆プロセスまたは他によって追加してもよい。ステントのいくつかの実施形態では、治療薬はステント表面のポリマー被覆から引渡ししてもよい。ステントの他の実施形態では、治療薬は、ステント装置の特定の構造的特徴内またはその周りに集中させてよい。
【0225】
たとえば、治療薬はステント表面のポリマー被覆から引渡ししてもよい。このように、ステントは、ステントが組み立てられ、または作られる前に治療薬をステントの構成部品に塗布することによって作ってもよい。この点について、ステントの構成部品は、平たいポリマーフィルムのような、ポリマーシートから作ってよい。このようにして、少なくとも1つのステント構成部品は、治療薬がステントの構成部品とフィルムの少なくとも一方に塗布される前または塗布された後に、フィルムの残りまたは過剰部分から分離されてよい。治療薬が塗布され、ステントの構成部品がフィルムから分離された後、ステントの構成部品は組み立てられ(そしていくつかの実施形態では、他のステント構成部品と)、それからステントを作ってよい。
【0226】
いくつかの実施形態では、ステントは、次の準備方法で準備することができる。ステントは最初に、ステントの構成部品のパターンを平らなポリマーフィルムの上に生成することによって準備してもよい。フィルム上へのパターンの生成は、以下に述べるように、治療薬をフィルムに塗布する前または塗布した後に起こることがある。ステントの構成部品のパターンは、ステントの構成部品が、望むならば、フィルムから外せるように、フィルム上に生成されてよい。いくつかの実施形態では、パターンは、フィルム上にパターンをレーザ照射するレーザを用いて生成してよい。さらに、レーザ照射されたパターンは、スライドロックステント構造において用いられるような、どのような所与のステント構成部品構造であってよい。パターンがフィルム上に生成された後、フィルム全体を掃除してよい。たとえば、治療薬がフィルムに未だ塗布されていない場合、レーザが照射されたフィルム全体を、フィルムが作られる元の特定の種類のポリマーと互換性のある洗浄液に浸してもよい。掃除されたフィルムは次に、たとえば、吹かれ、オーブンで乾燥させられることによって、乾燥させられてよい。
【0227】
被覆製剤は、所望の濃縮を達成するために、計算された量の各構成部品を用いて、ポリマーと最適な1つまたは複数の治療薬と1つまたは複数の溶媒または他の互換性のある1つまたは複数の医薬品添加剤を溶解させ、または分散させることによって準備してもよい。塗料製剤は、1つまたは複数の被覆方法を用いて、レーザ照射されたポリマーフィルムに塗布されてよい。たとえば、フィルムは、噴霧、浸し塗り、または他の被覆方法によって被覆してよい。さらに、被覆を準備するために架橋試薬も用いてよい。
【0228】
噴霧による被覆方法では、レーザ照射されたポリマーフィルムは、最初に、清掃され、乾燥させられたフィルムを噴霧装置内に取り付けることによって、被覆製剤で被覆されてよい。被覆製剤は次にフィルム上に噴霧され、フィルムは、他の側が、望まれる場合に被覆されるように、180度回転させられてよい。この方法は、ステントの1つまたは複数の構成部品の片側または両側の被覆を可能にしている。この方法はまた、レーザ照射されたフィルムとステントの構成部品の少なくとも一方の側毎に異なった治療薬を塗布し、その複数の領域を選択的に被覆するのを可能にする。該方法はさらに、フィルムとステントの構成部品の少なくとも一方毎に複数の薬物を塗布するのを可能にする。代わりの被覆方法は他の同様の利点を可能にする。
【0229】
たとえば、治療薬は、次の説明におけるように、フィルムまたはステントの構造部品上に被覆されてもよい。まず、この例における治療薬は、化学天秤を用いて準備できる、テトラヒドロフラン(THF)における0.5%[25%パクリタクセル/75% ポリ(86.75%I2DTE-co-10%I2DT-co-3.25%PEG2000炭酸塩)]のような、ポリマーパクリタクセル製剤である。そうするためには、まず、パクリタクセルの0.0150gを測って、風袋の水薬瓶に入れなければならない。それから、ポリマーの0.0450gを測って他の水薬瓶に入れる。次に、THFの11.940gを測って各水薬瓶に入れる。これら水薬瓶を、ロートジニーのような実験室のシェーカーで少なくとも1時間振る。この例では、被覆は、エアブラシのようなスプレーガン装置を用いて行うことができる(Westedt、U., 「再狭窄を防止するための局所引き渡しシステムとしての、生体分解性のパクリタクセルが充填されたナノ粒子とステント被覆‐論述」(Biodegradable Paclitaxel‐loaded Nanoparticles and Stent Coatings as Local Delivery Systems for the Prevention of Restenosis‐Dissertation)、Marburg/Lahn(2004)、http://deposit.ddb.de/cgi-bin/dokserv?idn=972868100&dokvar=d1&dokext=pdf&filename=972868100.pdf; と、Berger,H.L.「薬遊離ステントを被覆する超音波スプレイノズルを用いること」(Using Ultrasonic Spray Nozzles to Coat Drug−Eluting Stents),Medical Device Technology(2006),http://www.devicelink.com/mdt/archive/06/11/004.htmlを参照)。通常、スプレーガン装置はまず、THFできれいにしなければならない。そうするためには、シリンジに少なくとも10mlのTHFを満たしてよい。それからシリンジは、スプレーガンに取り付けられたスプレーラインに取り付けることができる。10mlのTHFは、N2圧力なしに、シリンジからスプレーガン内へと徐々に押し出されることができる。これは、そのラインが確実にきれいに洗われるように、必要に応じて繰り返してよい。シリンジポンプは次に、ポリマーパクリタクセル製剤を含むシリンジを備えてよい。
【0230】
次に、レーザを照射できるかできないフィルムを、フード付きの環境におき、またはホルダー内に取り付けまたは留めてもよい。必要ならば、純粋な空気または気体の源または同等のものを用いてフィルムの表面から糸くずやほこりを除いてよい。被覆の品質を不変にするために、フィルムは、フィルムホルダー装置を運動制御システムと統合することによって、噴霧の流れに対して設定された割合(距離と速度)で移動するようにプログラムされてよい。運動制御がない手動の被覆も、被覆を行うために用いられてよい。スプレーガンは、被覆の分布を制御するために、噴霧を所与の位置にのみ向けるように設定されてもよい。
【0231】
いくつかの実施形態では、フィルムの両側を一様に被覆するために、スプレー周期は、噴霧がフィルムの底の隅にぶつかるとともに開始してよく、運動制御は、フィルムがスプレーノズルの前を前後に横切るときにフィルムを一定増分で距離を大きくして移動させなければならない。運動制御システムは次に、噴霧が底を向くように、フィルムを移動させてスタート位置に戻してよい。フィルムホルダーは180度回転させることができ、周期は第2の側を被覆するように繰り返されてよい。被覆後、フィルムホルダーはフィルムとともに除去され、フィルムは真空オーブン内で、薬とポリマーに適した温度、たとえば25°±5℃で少なくとも20時間、乾燥させてよい。
【0232】
含浸処理または被覆処理に関連する他の方法と教示は、全体が、参照によってここに含まれる以下の参照資料に見出される。すなわち、Westedt,U.,「再狭窄を防止するための局所引き渡しシステムとしての、生体分解性のパクリタクセルが充填されたナノ粒子とステント被覆‐論述(Biodegradable Paclitaxel−loaded Nanoparticles and Stent Coatings as Local Delivery Systems for the Prevention of Restenosis−Dissertation)」, Marburg/Lahn(2004), http://deposit.ddb.de/cgi-bin/dokserv?idn=972868100&dokvar=d1&dokext=pdf&filename=972868100.pdf; 、Berger,H.L.「薬遊離ステントを被覆する超音波スプレイノズルの使用」(Using Ultrasonic Spray Nozzles to Coat Drug−Eluting Stents),Medical Device Technology(2006),http://www.devicelink.com/mdt/archive/06/11/004.html、Dhanikulaら「パクリタクセルの局部引き渡し用の生体分解性のキトサンフィルムの展開と特徴づけ」(Development and Characterization of Biodegradable Chitosan Films for Local Delivery of Paclitaxel),AAPSジャーナル、6(3) 27項(2004)、http://www.aapsj.org/view.asp?art=aapsj060327、Kothwalaら「心臓血管のステントからのパクリタクセル薬剤の引渡し」(Paclitaxel Drug Delivery from Cardiovascular Stent)、Trends in Biomaterials&Artificial Organs,Vol.19(2),88−92(2006)、http://medind.nic.in/taa/t06/i1/taat06i1p88.pdf。
【0233】
フィルムは所与の被覆方法を用いて被覆された後、フィルムは、乾燥させる時間が与えられてもよい。一旦乾燥すると、レーザ照射され、被覆されたステント構成部品はフィルムの残りから分離されてよい。被覆されたステント構成部品がフィルムから分離され、一緒に組み立てられ、または編まれて、三次元の円筒状のステントを作るときに、被覆されたステントの1つまたは複数の構成部品の表面を妨げないように注意しなければならない。
【0234】
他の変形例では、治療薬は、非ポリマーの被覆によって引渡しされてよい。ステントの他の実施形態では、治療薬は、ステントの少なくとも1つの領域または1つの表面から引渡しされてよい。治療薬が、治療薬をステントの少なくとも一部分から引渡しするために使用されるポリマーまたはキャリヤーに化学的に接合されることと、治療薬が、治療薬をステントの本体の少なくとも一部分を有してよいポリマーに化学的に接合されることの少なくとも一方であってよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは被覆製剤の部品として使用されてよい。したがって、被覆は本質的に、ポリマーからなっていてよい、きれいなレーザ照射されたフィルムとステント構成部品の少なくとも一方に直接、接着されてよい。本方法のそのような実施形態は、被覆と、レーザ照射されたフィルムおよびステント構成部品の少なくとも一方の間の、継ぎ目のないインタフェースを提供することができる。さらに、他の実施形態では、2つ以上の治療薬が引渡しされてよい。
【0235】
治療薬の量は、動脈の再狭窄または血栓症を防ぎ、またはステント組織の何らかの他の状態に影響し、たとえば、不安定プラークを治し、破裂を防ぎ、またはエンドセリン化を刺激し、または他の種類の細胞が増殖し、細胞外のマトリクス分子を生成し沈着するのを抑える、の少なくとも1つを行うのに十分であるのが望ましい。1つまたは複数の治療薬は、抗増殖剤、抗炎症性で、抗マトリクスのメタロプティナーゼ、脂肪低下薬、コレステロール修飾薬、抗血栓剤、抗血小板薬からなるグループから、いくつかの実施形態にしたがって選択されてよい。血管ステントの用途の場合、血管開通を改善するいくつかの抗増殖剤は、パクリタクセル、ラパマイシン、ABT−578、バイオリムス A9、エバポリムス、デキサメタゾン、内皮機能用の酸化窒素調節分子、タクロリムス、エストラジオール、ミコフェノール酸、C6-セラミド、アンチノマイシン‐D、エポシロン、そしてそれらの派生物と類似物質を、限定なしに含む。
【0236】
いくつかの薬は、抗血小板薬、抗トロンビン薬、他の病理学的事象と血管疾患の少なくとも一方に対処する合成物、として働く。様々な治療薬は、ホスト内でのその作用場所に関して、すなわち、細胞外に、または特定の膜受容体場所でその作用を働かせる薬と、細胞質と細胞核の少なくとも一方内でプラズマ細胞膜に働く薬と、に分類することができる。
【0237】
上記に加えて、治療薬は、動脈と静脈の少なくとも一方以外の身体の内腔を扱うことを目的とした他の医薬品と生物学的作用物質を含んでよい。治療薬は、消化器内腔(たとえば、胃腸の、十二指腸の、食道の、胆管の)、呼吸器内腔(たとえば、気管の、気管支の)のような、非血管の身体の内腔を取り扱うのに特化したものであってよい。さらに、そのような実施形態は、生殖の、内分泌線の、造血の、外皮の、筋骨格系の/外科の、および神経系(聴覚および眼への応用を含む)のような他の人体システムの内腔において有用であり、そして最後に、治療薬を有するステントの実施形態は、閉塞された内腔を拡張し、障害物(たとえば、動脈瘤におけるような)を誘発させるのに有用である。
【0238】
治療の放出は、制御された放出機構、拡散、静脈注射、エアロゾイル化、または経口によって供給される他の薬との相互作用によって起こることがある。放出は、磁場、電場をかけること、または超音波の使用によっても起こることがある。
【0239】
[機能特性を有するステント表面の被覆]
治療薬を引渡し、たとえば、反発ホスホリルコリンのような生体ポリマーをステント上に引渡しできるステントに加えて、ステントは、ある臨床効果のために望まれる、身体の内腔内の生物学的反応を促すように、予め決められた、他の生体吸収可能なポリマーで被覆されてよい。さらに、被覆は、ステントの実施形態を含むように使用されるポリマーの表面特性を(一時的または永久的に)マスクするように使用されてよい。被覆は、何らかのポリ(アルキレングリコール)を含んでも含まなくてもよいハロゲン化されたまたはハロゲン化されていない、の一方または組み合わせを含んでよい、生体適合性があり、生体吸収性のある、広い種類のポリマーから選択されてよい。これらのポリマーは、例えば、ホモポリマー、ヘレロポリマー、立体異性体、そしてそのようなポリマーの混合の少なくとも1つを含む組成変異を含んでよい。これらのポリマーは、たとえば、ポリカーボネート、ポリアレート、ポリ(エステル・アミド)、ポリ(アミド・カーボネート)、トリメチレン、カーボネート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリヒドロキシ吉草塩、ポリグリコール酸、ポリラクチド、立体異性体、グリコリド/ラクチド共重合体のような、その共重合体を含んでよいが、これらに限定されない。他の実施形態では、ステントは、負に帯電された赤血球の外側細胞膜に反発し、血栓形成のリスクを減らす、負電荷を示すポリマーで被覆されてよい。他の実施形態では、ステントは、治癒を促進する細胞(たとえば、内皮細胞)に対する親和性を示すポリマーで被覆されてよい。なお、さらに他の実施形態では、ステントは、動脈の再狭窄と、マクロファージのような炎症細胞の少なくとも一方を減らすために、特定の細胞、たとえば、動脈の繊維芽細胞と滑らかな筋細胞の少なくとも一方の付着と増殖の少なくとも一方を阻止するポリマーで被覆されてよい。
【0240】
生物学的反応を支援する機能特性を得るために被覆で変更されてよい実施形態を上で述べた。そのような被覆または治療薬を有する材料の合成は、上記で触れ、記載した、ディッピング法、吹き付けコーティング、架橋結合、それらの組み合わせ、など、のような技術によってステント本体を作る工程においてステント上に形成され、または塗布されてよい。そのような被覆または材料の合成は、ステントを折り畳まれた構造に維持するために、ステントがバルーンシステム上に取り付けられた後、被覆がステント本体上に腔内にと、ステント装置全体にわたって、の少なくとも一方で配置されるとき、バルーン上でのステントの保持を高めるような、治療薬を引渡しする以外の目的も果たすことができる。他の目的は、何らかのポリマー材料を用いるとき、当業者が思いつくことができる。
【0241】
ある実施形態の態様にしたがって、ステントは、特定の機械的性質をステントに与えるような、ステントの物理的特性を変えることができる被覆が塗布されるであろう。性質は、特に、厚さ、引張り強度、ガラス転移温度、表面仕上げを含んでよい。被覆は、最終のクリンピングまたはステントのカテーテルへの適用の前に付けられるのが望ましい。次に、ステントはカテーテルに適用され、システムは熱または圧力または両者を圧縮して加えさせることができる。処理において、被覆は、カテーテルと他のステント表面の両方に壊れやすい接着を形成することができる。接着は、ステントの保持とステントの交差輪郭の保持を時間の経過とともに生成する信頼性のある方法を可能にするであろう。接着は、バルーンの展開の圧力発生時に壊れるであろう。被覆は、基材に変化が起きないように基材よりも低いTgであろう。
【0242】
内腔を拡張する新規な方法が開示されたことが上記の記述から理解されるであろう。いくつかの構成部品、技術、そして態様をある詳細度で記載したが、この開示の要旨と範囲から外れることなく、ここに上記で記載された特定の設計、構造、そしてやり方において、多くの変更がなされ得ることが明らかである。
【0243】
ここに記載され、説明された方法は、記載された複数の動作のシーケンスに限定されず、また述べた全ての動作の実行に必ずしも限定されない。複数の動作、または複数の全ての動作よりも少ない動作の他のシーケンス、または複数の動作の同時の発生を、実施形態を実行する際に利用することができる。
【0244】
いくつかの実施形態とその変形例を詳細に記載したが、他の修正および医療用途に使用する方法は当業者に明らかである。したがって、様々な用途、修正、材料、そして置換が、ここに開示された独自で、新規な、すなわち特許請求の範囲の記載から外れることなく、等化物でなされ得ることが理解されるべきである。
【0245】
[参考文献]
参照によって全体がここに含まれる、ここで引用された参考文献のいくつかを以下に記載する。
【0246】
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