(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
有機材料を利用する光電子デバイスは、多くの理由のためにますます望ましいものとなってきている。かかるデバイスを作るために用いられる材料の多くは、比較的安価であり、そのため有機光電子デバイスは、無機デバイスに対してコスト面で有利である可能性を有する。加えて、有機材料の固有の特性、例えばその可撓性は、有機材料を、可撓性基板上における作製などの特定の応用によく適したものにし得る。有機光電子デバイスの例として、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、および有機光検出器が挙げられる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料よりも性能的利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を発する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0005】
OLEDは、デバイスを横切って電圧を印加したときに光を発する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、およびバックライトなどの応用での使用のためにますます興味深い技術となってきている。いくつかのOLED材料および構成は、米国特許第5,844,363号、同第6,303,238号、および同第5,707,745号に記載されており、これらは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
リン光発光分子に関する1つの応用は、フルカラーディスプレイである。かかるディスプレイに関する業界標準は、画素が「飽和」色と称される特定の色を発するように適合されることを要求する。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色、および青色の画素を要求する。色は、CIE座標を用いて測定されてよく、該座標は当該分野に周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)
3と表されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムであり、以下の構造を有する:
【化1】
【0008】
ここにおいて、およびこれより後の図において、本発明者らは、窒素から金属(ここではIr)までの供与結合を直線で示す。
【0009】
本明細書において用いられるとき、用語「有機」は、有機光電子デバイスを作製するのに用いられ得るポリマー材料および小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーではないあらゆる有機材料を称し、「小分子」は、実際にはかなり大きくてよい。小分子は、いくつかの状況において繰り返し単位を含んでよい。例えば、長鎖アルキル基を置換基として用いることは、分子を「小分子」分類から除去しない。小分子はまた、ポリマー内に、例えば、ペンダント基としてポリマー骨格上に、またはポリマー骨格の一部として組み込まれていてもよい。小分子は、デンドリマーのコア部分として機能することもでき、これは、コア部分に構築された一連の化学シェルからなる。デンドリマーのコア部分は、蛍光またはリン光小分子発光体であってよい。デンドリマーは、「小分子」であってよく、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーが小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書において用いられるとき、「トップ(top)」は、基板から最も離れていることを意味し、一方で、「ボトム(bottom)」は基板に最も近いことを意味する。第1層が第2層の「上に配置される」として記載されている場合、第1層は基板からより離れて配置される。第1層が第2層と「接触している」と特定されていない限り、第1層と第2層との間に他の層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に種々の有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載され得る。
【0011】
本明細書において用いられるとき、「溶液処理可能」とは、溶液または懸濁液形態のいずれかで、液体媒体中に溶解、分散、または輸送でき、および/または液体媒体から堆積され得ることを意味する。
【0012】
配位子は、それが発光材料の光活性特性に直接寄与すると考えられるとき、「光活性」と称され得る。配位子は、それが発光材料の光活性特性に寄与しないと考えられるとき、「補助」と称され得るが、補助配位子は光活性配位子の特性を変更し得る。
【0013】
本明細書において用いられるとき、および当業者により一般的に理解されているように、第1「最高被占分子軌道」(HOMO)または「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第1エネルギー準位が真空エネルギー準位により近いとき、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位よりも「大きい」か、または「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対する負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値を有するIP(より負の程度が小さいIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値を有する電子親和力(EA)(より負の程度が小さいEA)に相当する。真空準位がトップにある従来のエネルギー準位ダイアグラムでは、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりよりも高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位よりも、かかるダイアグラムのトップ近くに現れる。
【0014】
本明細書において用いられるとき、および当業者により一般的に理解されているように、第1仕事関数は、第1仕事関数がより高い絶対値を有するとき、第2仕事関数よりも「大きい」か、または「高い」。仕事関数は、真空準位に対する負の数として一般には測定されるため、これにより、「より高い」仕事関数はより負の程度が大きいことを意味する。真空準位がトップにある従来のエネルギー準位ダイアグラムでは、「より高い」仕事関数は、真空レベルから下の方向に、より離れて図示される。したがって、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる規則に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細および上記の定義は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号に見出され得る。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され、これらと電気的に接続された少なくとも1の有機層を含む。電流が印加されたとき、アノードは正孔を有機層に注入し、カソードは電子を有機層に注入する。注入された正孔および電子は、それぞれ、逆に帯電した電極に向かって移動する。電子および正孔が同じ分子に局在するとき、励起されたエネルギー状態を有する局在した電子−正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が光電子放出メカニズムを介して緩和するときに発せられる。いくつかの場合において、励起子は、エキシマーまたはエキシプレックスに局在していてよい。熱緩和などの非放射メカニズムが生じてもよいが、一般には望ましくないと考えられる。
【0045】
一重項状態から光(蛍光)を放出する発光分子を用いた初期のOLEDは、例えば、米国特許第4,769,292号に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。蛍光発光は、10ナノ秒未満の時間枠で一般に生じる。
【0046】
より最近では、三重項状態から光(燐光)を放出する発光材料を有するOLEDが実証されている。Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature,vol.395,151−154,1998;(「Baldo−I」)およびBaldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electro phosphorescence」、Appl.Phys.Lett.,vol.75,No.3,4−6(1999)(「Baldo−II」)(これらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる)。リン光については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号の第5〜6段落にさらに詳細に記載されている。
【0047】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は、必ずしも原寸に比例して描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含んでいてよい。カソード160は、第1導電層162および第2導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順に堆積することにより作製されてよい。これらの種々の層の特性および機能、ならびに例示的な材料は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号の第6〜10段落に、さらに詳細に記載されている。
【0048】
これらの各層に対するさらなる例が利用可能である。例えば、可撓性かつ透明な基板−アノードの組み合わせは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,844,363号に開示されている。p−ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比でF
4−TCNQがドープされたm−MTDATAであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号に開示されている。発光材料およびホスト材料の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Thompsonらの米国特許第6,303,238号に開示されている。n−ドープ電子輸送層は、1:1のモル比でLiがドープされたBPhenであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号に開示されている。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,703,436号および同第5,707,745号は、上部の、透明かつ電気伝導性の、スパッタ−堆積したITO層と共に、Mg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論および使用は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,097,147号および米国特許出願公開第2003/0230980号に、より詳細に記載されている。注入層の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号に開示されている。保護層の記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号に見出され得る。
【0049】
図2は、反転OLED200を示す。該デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は、記載した層を順に堆積することにより作製されてよい。最も一般的なOLED構成は、アノードの上に配置されたカソードを有するが、デバイス200はアノード230の下にカソード215を有するため、デバイス200が「反転」OLEDと称され得る。デバイス100に関して記載したものと同様の材料が、デバイス200の対応する層に用いられてよい。
図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層が省略され得るかの一例を提供する。
【0050】
図1および2に示されている簡単な層状構造は、非限定的な例として提供されており、本発明の実施形態は、広範な他の構造と関連して用いられ得ると理解される。記載されている特定の材料および構造は、本質的に例示なものであり、他の材料および構造が用いられてよい。機能的なOLEDは、設計、性能、およびコスト要因に基づいて、様々な様式で、記載の種々の層を組み合わせることにより達成され得、あるいは層が完全に省略され得る。具体的に記載していない他の層が含まれていてもよい。具体的に記載した材料以外の材料が用いられてよい。本明細書において提供される例の多くは、単一の材料を含むものとして種々の層を記載しているが、ホストおよびドーパントの混合物などの材料の組み合わせ、またはより一般には混合物が用いられてよい。また、層は、種々の副層を有してよい。本明細書における種々の層に付与されている名称は、正確には限定的であることを意図していない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は、正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入して、正孔輸送層または正孔注入層と記載され得る。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有すると記載され得る。この有機層は、単一の層を含んでいてもよく、または例えば
図1および2に関連して記載されているような異なる有機材料の複数の層をさらに含んでもよい。
【0051】
例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Friendらの米国特許第5,247,190号に開示されている、ポリマー材料(PLED)で構成されるOLEDなどの、具体的に記載されていない構造および材料が用いられてもよい。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDが用いられてよい。OLEDは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号に記載されているように、積み重ねられていてよい。OLED構造は、
図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱してよい。例えば、基板は、アウトカップリングを改善するために、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるForrestらの米国特許第6,091,195号に記載されているメサ構造、および/または、その全体が参照により本明細書に組み込まれるBulovicらの米国特許第5,834,893号に記載されているピット構造などの角度のついた反射面を含んでいてよい。
【0052】
特に断らない限り、種々の実施形態の層のいずれもが、任意の好適な方法により堆積されてよい。有機層については、好ましい方法として、熱蒸発、インクジェット(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,013,982号および第6,087,196号に記載されている)、有機気相成長(OVPD)(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号に記載されている)、および有機蒸気ジェット印刷(OVJP)による堆積(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/233,470号に記載されている)が挙げられる。他の好適な堆積方法として、スピンコーティングおよび他の溶液系の方法が挙げられる。溶液系の方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で行われる。他の層については、好ましい方法として熱蒸発が挙げられる。好ましいパターン化方法として、マスクを通しての堆積、冷間圧接(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,294,398号および第6,468,819号に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかと関連させたパターン化が挙げられる。他の方法が用いられてもよい。堆積される材料は、該材料が特定の堆積方法と適合可能となるように改変されてよい。例えば、分岐した、または分岐していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基は、溶液処理を経る能力を向上させるために小分子において用いられてよい。20個以上の炭素を有する置換基が用いられてよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液処理性を有し得る、なぜなら、非対称材料が、より低い再結晶化傾向を有し得るからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液処理を受ける能力を向上させるために用いられてよい。
【0053】
本発明の実施形態に従って作製されるデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニタ、テレビ、広告板、室内または屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、可撓性ディスプレイ、レーザプリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、乗物、大面積壁面、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識を含めた広範な消費者製品に組み込まれ得る。パッシブマトリックスおよびアクティブマトリックスを含めた、本発明により作製されたデバイスを制御するために、種々の制御メカニズムが用いられ得る。デバイスの多くは、18℃〜30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの人にとって快適な温度範囲での使用が意図されている。
【0054】
本明細書に記載されている材料および構造は、OLED以外のデバイスにも応用を有し得る。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などの他の光電子デバイスは、これらの材料および構造を使用することができる。より一般には、有機トランジスタなどの有機デバイスが、これらの材料および構造を使用することができる。
【0055】
用語ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、複素環式基、アリール、芳香族基、およびヘテロアリールは、当該分野に公知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号の第31〜32段落に定義されている。
【0056】
(
図3に示される)有機発光デバイスにおけるホスト材料または蛍光発光ドーパント材料として用いられ得る新規アザボリン化合物が提供される。1,4−アザボリン化合物は、化合物のコア内のホウ素および窒素のヘテロ原子のために、特に興味深いヘテロ芳香族分子である。これらの1,4−アザボリン化合物は、全ての炭素同族体と比較して共役が欠如するため、高い一重項および三重項エネルギーを表示することができ、明るい青色蛍光発光体である。
【0057】
これらの化合物を含有するアントラセン誘導体および有機デバイスは、文献において報告されているが、公知の化合物は、OLEDにおける使用を限定し得るいくつかの問題を有する。アントラセンは、高度に共役したポリ芳香族炭化水素である。9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンなどのホスト材料としてのアントラセン誘導体を含むOLEDは、長いデバイス寿命を有することができる。(Appl.Phys.Lett.、第80巻、3201頁、2002を参照)。しかし、アントラセンの三重項エネルギーは、高い共役に起因して非常に低く(680nm)、このことは、可視領域にリン光性発光体を含むOLEDのためのホスト材料として好適でないものにする。ジベンゾ−1,4−アザボリンは、アントラセンと等電子である。中心のアザボリン環は、半芳香族であるため、アントラセンと比較して、共役の程度が低減され得、三重項エネルギーがより高くなり得る。したがって、アザボリン化合物は、ホストの三重項エネルギーを上昇させるのに有利に用いられ得る。
【0058】
1,4−アザボリン化合物は、文献(米国特許出願公開第2003/0157366号を参照)に報告されている。しかし、これらの三価ホウ素化合物は、化学的に不安定であり得る、なぜなら、ホウ素原子の電子欠損によって、求核攻撃の影響を受けやすくなるからである。理論によって拘束されないが、ホウ素原子は、ジベンゾ−1,4−アザボリンにおける中心環の半芳香族特性にも関わらず、化学的な不安定度を最小にするように依然として保護される必要があることが考えられる。いくつかのジベンゾ−1,4−アザボリン化合物の、DFT(Gaussian/B3lyp/cep−31g)によって計算されるHOMO、LUMOおよび最低三重項エネルギー(T
1)を表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0059】
さらに、1,4−アザボリン化合物についての計算された三重項エネルギーは、9,10−ジフェニルアントラセン(化合物Z)について測定された値よりもはるかに高い。ジベンゾ−1,4−アザボリン化合物およびIr(ppy)
3のHOMO、LUMOおよびT
1を比較すると、本明細書に記載されているジベンゾ−1,4−アザボリン化合物は、リン光OLEDにおけるIr(ppy)
3のためのホストとして作用することができると考えられる。
【0060】
本明細書に記載されているジベンゾ−1,4−アザボリン化合物は、いくつかの理由から、公知のアザボリン化合物よりも有利に用いられ得ると考えられる。第1に、理論によって拘束されないが、ホウ素原子に結合したフェニルの2および6位の置換基は、ホウ素原子に立体的保護を付与すると考えられる。特に、化合物Yは、ホウ素に結合した非置換フェニルを有し、溶液中のPL測定の際に分解の兆候を示す一方で、化合物2は、ホウ素に結合した2,4,6−トリフェニルフェニルを有し、分解の兆候を示さない。第2に、ホウ素における置換基R
1は、1,4−アザボリン系に最小の共役を有し得る。この特徴は、共役または縮合された2個以上のアリールまたはヘテロアリール基を好ましくは有する独立した電子的および/または光物理的活性基を、電子的および/または光物理的特性を調整する1,4−アザボリン系に接続させることができる。例えば、R
1が2−キノリンであるとき、2−キノリン基は、負の電荷の電子輸送および安定化を促進し得る比較的低いLUMOを付与し得る。いくつかの基は、ホウ素原子に対する立体的保護ならびに電子的および/または光物理的調整を同時に付与することが可能であり得る。例えば、R
1がフェニルであり、その2,6位がアリールまたはヘテロアリール基によってさらに置換されているとき、ホウ素原子は立体的に保護されており、2,6−ジフェニルフェニル部分は、ビフェニル共役を付与する。R
1が1−ナフチルであるとき、ホウ素原子は、部分的に立体的に保護されており、ナフチル基は、必要以上の共役を付与する。電荷のさらなる共役および安定化に加えて、共役または縮合された2個以上のアリールまたはヘテロアリール基を好ましくは有するアリールまたはヘテロアリール置換基は、高いガラス転移温度および好適な蒸発温度を付与することができる。例えば、先に報告されている化合物Xは、ホウ素に結合した2,4,6−トリメチルフェニルを有し、化合物2と比較して、低いガラス転移温度、および真空プロセスによるデバイス作製には低すぎる蒸発温度を付与し得る、なぜなら、化合物Xの2,6−メチル置換基は、十分に高い分子量を付与しないからである。より高い分子量のアルキル基が用いられるとき、該化合物は、過度に容易に溶融し得;多すぎる非電子的に活性なアルキル基に起因して、劣った電子的特性を有し得る。したがって、本明細書に記載されているジベンゾ−1,4−アザボリン化合物は特に望ましいものであり、改善された安定性を有するデバイスを提供するのに有利に用いられ得る。
【0061】
また、提供されているアザボリン化合物は、蛍光発光材料として用いられてよい。本明細書において提供されるジベンゾ−1,4,−アザボリン化合物は、アントラセンに関して測定された蛍光と同様に、高いエネルギー発光、すなわち、400〜450nmを実証する。例えば、化合物2、化合物Xおよび化合物Yのフォトルミネセンススペクトルを
図4〜6に示す。77Kでは、低いエネルギー発光(>700nm)が化合物2および化合物Yにおいて観察されるが、化合物Xでは観察されない。低いエネルギー発光は、化合物2および化合物Yのリン光であり得るが、該値は、DFT計算から大幅に逸脱している。高いエネルギーからのリン光発光は、クエンチされることが予測されるが、Ir(ppy)
3タイプの化合物のリン光は、薄膜PL実験を用いるとき、化合物2によってクエンチされない。デバイスにおいて、Ir(ppy)
3タイプの化合物である化合物Aをドーパントとして含む、ホストとして化合物Bを用いたデバイスの効率は、CBPをホストとして用いた標準的なデバイスに匹敵する。
【0062】
さらに、提供されるアザボリン化合物は、強い深青色蛍光(約410nm)を示す。特に、化合物2の薄膜は、64%のPLQYを示す。したがって、提供される化合物は、OLEDにおける蛍光発光体としての使用に望ましくあり得る。
【0063】
アザボリン化合物が提供され、化合物は、式:
【化11】
を含む。
【0064】
R
1は、2個以上のアリールまたはヘテロアリール基を含有する基であり、アリールまたはヘテロアリール基は、共役または縮合されている。R
3およびR
4は、1、2、3、4、または5置換を表してよい。R
2、R
3およびR
4は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。好ましくは、R
2は、アリールまたはヘテロアリールを含む。
【0065】
一態様において、化合物は式:
【化12】
を含む。
【0066】
R’
3、R’
4、R’
5、およびR’
6は、1、2、3、4、または5置換を表してよい。R’
1、R’
2、R’
3、R’
4、R’
5およびR’
6は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。R’
1およびR’
2の少なくとも一方は、アリールまたはヘテロアリール、アリールまたはヘテロアリール基は、共役または縮合されている。
【0067】
一態様において、R’
3、R’
4、R’
5、およびR’
6は、独立して、アリールまたはヘテロアリールである。
【0068】
別の態様において、R’
4は、窒素原子に接続されたアリールまたはヘテロアリール基中の炭素原子に対してオルトに位置するアリールまたはヘテロアリール置換を含む。
【0069】
アザボリン化合物の具体例が提供され、以下:
【0074】
【化17】
からなる群から選択される化合物を含む。
【0075】
別の態様において、アザボリン化合物の例が提供され、以下:
【0077】
【化19】
からなる群から選択される化合物を含む。
【0078】
さらに、有機発光デバイスを含む第1デバイスが提供される。有機発光デバイスは、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された有機層とを含み、有機層は、式:
【化20】
を含む化合物をさらに含む。
【0079】
R
1は、2個以上のアリールまたはヘテロアリール基を含有する基であり、アリールまたはヘテロアリール基は、共役または縮合されている。R
3およびR
4は、1、2、3、4、または5置換を表してよい。R
2、R
3およびR
4は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。好ましくは、R
2は、アリールまたはヘテロアリールを含む。
【0080】
一態様において、化合物は、式:
【化21】
を含む。
【0081】
R’
3、R’
4、R’
5、およびR’
6は、1、2、3、4、または5置換を表してよい。R’
1、R’
2、R’
3、R’
4、R’
5およびR’
6は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。R’
1およびR’
2の少なくとも一方は、アリールまたはヘテロアリールであり、アリールまたはヘテロアリール基は、共役または縮合されている。
【0082】
一態様において、R’
3、R’
4、R’
5、およびR’
6は、独立して、アリールまたはヘテロアリールである。
【0083】
別の態様において、R’
4は、窒素原子に接続されたアリールまたはヘテロアリール基中の炭素原子に対してオルトに位置するアリールまたはヘテロアリール置換を含む。
【0084】
デバイスにおいて用いられ得るアザボリン化合物の具体例が提供され、以下:
【0089】
【化26】
からなる群から選択される化合物を含む。
【0090】
別の態様において、デバイスにおいて用いられ得るアザボリン化合物の具体例が提供され、以下:
【0092】
【化28】
からなる群から選択される化合物を含む。
【0093】
一態様において、有機層はブロッキング層であり、式Iを有する化合物はブロッキング材料である。
【0094】
別の態様において、有機層は発光層であり、式Iを含む化合物はホストである。有機層は、発光ドーパントをさらに含んでよい。なお別の態様において、有機層は発光層であり、式Iを含む化合物は蛍光発光体である。
【0095】
一態様において、第1デバイスは消費者製品である。別の態様において、第1デバイスは有機発光デバイスである。
【0096】
有機発光デバイスにおける特定の層に有用であるとして本明細書に記載されている材料は、デバイスに存在する広範な他の材料と組み合わせて用いられてよい。例えば、本明細書に開示されている発光ドーパントは、広範なホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および存在し得る他の層と併せて用いられてよい。以下に記載または称される材料は、本明細書に開示されている化合物と組み合わせて有用であり得る材料の非限定例であり、当業者は、文献を容易に閲覧して、組み合わせて有用であり得る他の材料を特定することができる。
HIL/HTL:
【0097】
本発明において用いられる正孔注入/輸送材料は、特に限定されず、化合物が正孔注入/輸送材料として典型的に用いられる限りにおいていずれの化合物が用いられてもよい。材料の例として、限定されないが:フタロシアニンまたはポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フッ化炭化水素を含有するポリマー;導電ドーパントを有するポリマー;導電性ポリマー、例えばPEDOT/PSS;ホスホン酸およびシラン誘導体などの化合物から誘導される自己集合モノマー;金属酸化物誘導体、例えばMoO
x;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体、ならびに架橋性化合物が挙げられる。
【0098】
HILまたはHTLにおいて用いられる芳香族アミン誘導体の例として、限定されないが以下の一般構造:
【化29】
が挙げられる。
【0099】
Ar
1〜Ar
9のそれぞれは、芳香族炭化水素環式化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレンからなる群;芳香族複素環式化合物、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、およびセレノフェノジピリジンからなる群;ならびに芳香族炭化水素環式基および芳香族複素環式基から選択される同じタイプまたは異なるタイプの基であって、直接、または酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位および脂肪族環式基のうちの少なくとも1つを介して互いに結合している2〜10個の環式構造単位からなる群から選択される。ここで、各Arは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される置換基によってさらに置換されている。
【0100】
一態様において、Ar
1〜Ar
9は、以下:
【化30】
からなる群から独立して選択される。
【0101】
kは、1〜20の整数であり;X
1〜X
8は、CHまたはNであり;Ar
1は、上記と同じ基である。
【0102】
HILまたはHTLにおいて用いられる金属錯体の例として、限定されないが以下の一般式:
【化31】
が挙げられる。
【0103】
Mは、40より大きい原子量を有する金属であり;(Y
1−Y
2)は、二座配位子であり、Y1およびY
2は、C、N、O、P、およびSから独立して選択され;Lは、補助配位子であり;mは、1から、金属に結合され得る配位子の最大数までの整数値であり;m+nは、金属に結合され得る配位子の最大数である。
【0104】
一態様において、(Y
1−Y
2)は、2−フェニルピリジン誘導体である。
【0105】
別の態様において、(Y
1−Y
2)は、カルベン配位子である。
【0106】
別の態様において、Mは、Ir、Pt、Os、およびZnから選択される。
【0107】
さらなる態様において、金属錯体は、溶液対.Fc
+/Fc対において約0.6V未満の最小の酸化電位を有する。
ホスト:
【0108】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光材料として少なくとも金属錯体を好ましくは含有し、ドーパント材料として金属錯体を用いたホスト材料を含有してよい。ホスト材料の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントの三重項エネルギーよりも大きい限りにおいて、いずれの金属錯体または有機化合物が用いられてもよい。
【0109】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、好ましくは以下の一般式:
【化32】
を有する。
【0110】
Mは金属であり;(Y
3−Y
4)は二座配位子であり、Y
3およびY
4は、C、N、O、P、およびSから独立して選択され;Lは補助配位子であり;mは、1から、金属に結合され得る配位子の最大数までの整数値であり;m+nは、金属に結合され得る配位子の最大数である。
【0111】
一態様において、金属錯体は:
【化33】
である。
【0112】
(O−N)は、原子OおよびNに配位された金属を有する二座配位子である。
【0113】
別の態様において、Mは、IrおよびPtから選択される。
【0114】
さらなる態様において、(Y
3−Y
4)は、カルベン配位子である。
【0115】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、芳香族炭化水素環式化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレンからなる群;芳香族複素環式化合物、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、およびセレノフェノジピリジンからなる群;ならびに芳香族炭化水素環式基および芳香族複素環式基から選択される同じタイプまたは異なるタイプの基であって、直接、または酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位および脂肪族環式基のうちの少なくとも1つを介して互いに結合している2〜10個の環式構造単位からなる群から選択される。ここで、各基は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される置換基によってさらに置換されている。
【0116】
一態様において、ホスト化合物は、分子内に以下の基:
【化34】
のうちの少なくとも1つを含有する。
【0117】
R
1〜R
7は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、アリールまたはヘテロアリールであるとき、先に言及したArと同様の定義を有する。
【0119】
X
1〜X
8は、CHまたはNから選択される。
HBL:
【0120】
正孔ブロッキング層(HBL)は、発光層を離れる正孔および/または励起子の数を低減するのに用いられ得る。デバイスにかかるブロッキング層が存在することで、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して実質的により高い効率をもたらし得る。また、ブロッキング層は、発光をOLEDの所望の領域に制限するのに用いられ得る。
【0121】
一態様において、HBLにおいて用いられる化合物は、上記のホストとして用いられるものと同じ分子を含有する。
【0122】
別の態様において、HBLにおいて用いられる化合物は、分子内に以下の基:
【化35】
のうちの少なくとも1つを含有する。
【0123】
kは、0〜20の整数であり;Lは補助配位子であり、mは1〜3の整数である。
ETL:
【0124】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含んでいてよい。電子輸送層は、固有のもの(非ドープ)であっても、ドープされていてもよい。ドーピングは、導電率を向上させるのに用いられ得る。ETL材料の例は特に限定されず、電子を輸送するのに典型的に用いられる限りにおいて、いずれの金属錯体または有機化合物が用いられてもよい。
【0125】
一態様において、ETLにおいて用いられる化合物は、分子内に以下の基:
【化36】
のうちの少なくとも1つを含有する。
【0126】
R
1は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、アリールまたはヘテロアリールであるとき、先に言及したArと同様の定義を有する。
【0127】
Ar
1〜Ar
3は、先に言及したArと同様の定義を有する。
【0129】
X
1〜X
8は、CHまたはNから選択される。
【0130】
別の態様において、ETLにおいて用いられる金属錯体は、限定されないが以下の一般式:
【化37】
を含有する。
【0131】
(O−N)または(N−N)は、原子O、NまたはN,Nに配位された金属を有する二座配位子であり;Lは補助配位子であり;mは、1から、金属に結合され得る配位子の最大数までの整数値である。
【0133】
化合物例
実施例1.化合物2の合成
【化38】
【0134】
2’−ブロモ−5’−フェニル−1,1’:3’,1’−ターフェニルを文献手順(Inorg.Chem.2003、42、6824)に従って調製した。2’−ブロモ−5’−フェニル−1,1’:3’,1’−ターフェニル(10g、26mmol)を10mLのTHFに溶解し、削り状マグネシウム(0.7g、28.5mmol)を用いて16時間還流した。反応混合物を10℃まで冷却し、ホウ酸トリメチルを添加して、反応物を16時間加熱還流した。冷却の際、メタノールおよび酢酸エチルを添加し、反応物を、Celiteのプラグを通して濾過した。溶媒の除去の際に、9g(92%)のジメチル(5’−フェニル−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−2’−イル)ボロン酸エステルを単離し、さらに精製することなく用いた。
【化39】
【0135】
2−ブロモ−N−(2−ブロモフェニル)−N−フェニルアニリン(1.0g、2.5mmol)を50mLのジエチルエーテルに溶解し、溶液を−78℃まで冷却した。tert−ブチルリチウム(10.9ml、1.7モルのペンタン溶液、18.6mmol)を滴加し、反応混合物を0℃まで加温させた。0℃で30分間撹拌後、次いで反応混合物を−78℃まで再冷却した。ジメチル(5’−フェニル−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−2’−イル)ボロン酸エステル(1.2g、3.2mmol)を10mLのジエチルエーテルに溶解し、反応混合物に滴加した。室温まで加温した後、反応物を一晩中還流し、冷却し、ジクロロメタンを用いてCeliteのプラグを通して濾過した。粗生成物を、7/3のヘキサン/ジクロロメタンを用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、ヘキサン/ジクロロメタンからさらに結晶化して、1.1g(79%)の化合物2を得た。
実施例2.化合物Xの合成
【化40】
【0136】
化合物Xを文献手順(Org.Lett.2006、8、2241)に従って調製した。2−ブロモ−N−(2−ブロモフェニル)−N−メチルアニリン(0.5g、1.5mmol)を50mLのジエチルエーテルに溶解し、溶液を−78℃まで冷却した。tert−ブチルリチウム(4.3mLの、1.7モルのペンタン溶液、7.3mmol)を滴加し、反応混合物を0℃まで加温させ、30分間撹拌した。ジメチルメシチル二ボロン酸エステル(0.37g、1.9mmol)を10mLのエーテルに溶解し、反応混合物に滴加した。反応混合物を室温まで加温させ、2時間還流し、冷却し、ジクロロメタンを用いてCeliteを通して濾過し、濃縮した。粗生成物を、9/1のヘキサン/酢酸エチルを用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、ヘキサンからさらに結晶化し、0.13g(55%)の化合物Xを得た。
実施例3.化合物Yの合成
【化41】
【0137】
2−ブロモ−N−(2−ブロモフェニル)−N−フェニルアニリンを文献手順(J.Org.Chem.1961、2013)に従って調製した。2−ブロモ−N−(2−ブロモフェニル)−N−フェニルアニリン(1.5g、3.7mmol)を50mLのジエチルエーテルに溶解し、溶液を−78℃まで冷却した。tert−ブチルリチウム(10.9mL、1.7モルのペンタン溶液、18.6mmol)を滴加し、反応混合物を0℃まで加温させた。0℃で30分間撹拌後、次いで反応混合物を−78℃まで再冷却した。ジクロロフェニルボラン(0.63ml、4.8mmol)を10mLのジエチルエーテルに溶解し、反応混合物に滴加した。室温まで加温した後、反応物を一晩中還流し、冷却し、ジクロロメタンを用いてCeliteのプラグを通して濾過した。粗生成物を、8/2のヘキサン/酢酸エチルを用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、ヘキサンからさらに結晶化し、0.56g(45%)の化合物Yを得た。
実施例4.化合物49の合成
【化42】
【0138】
ビス(2−ブロモフェニル)アミン(10.0g、30.6mmol)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(5.6g、39.8mmol)、および炭酸カリウム(5.49g、39.8mmol)に20mlのDMSOを添加した。反応混合物を油浴中145℃で48時間加熱した。室温まで冷却した後、100mlの水を添加し、3×50mlのCH
2Cl
2で抽出した。合わせた抽出物を2×50mlの水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、暗褐色固体を得た。粗生成物を、75:25のヘキサン/CH
2Cl
2を用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、続いて50:50のヘキサン/CH
2Cl
2によって溶出し、5.0gの生成物を黄色固体として得た。NMRおよびGC/MSによって生成物を確認した。
【化43】
【0139】
2−ブロモ−N−(2−ブロモフェニル)−N−(4−ニトロフェニル)アニリン(4.8g、10.71mmol)および塩化スズ(II)二水和物(10.2g、53.6mmol)をエタノール(50ml)およびテトラヒドロフラン(50ml)に溶解し、溶液を加熱還流した。3時間後、追加として2.0gの塩化スズ(II)を添加し、反応混合物をさらに2時間加熱還流した。冷却後、反応物を100mlの氷に注ぎ、50%水酸化ナトリウム水溶液をpH14に達するまで添加した。得られた苛性溶液を3×75mlのCH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機物を75mlの水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、橙色固体を得た。粗生成物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、50:50のヘキサン/CH
2Cl
2で溶出し、3.8gの生成物を黄色固体として得た。NMRにより生成物を確認した。
【化44】
【0140】
フラスコにおいて、N,N−ビス(2−ブロモフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン(0.5g、1.2mmol)、ヨードベンゼン(2.44g、11.96mmol)、炭酸カリウム(0.628g、4.54mmol)および銅粉末(0.038g、0.60mmol)を合わせ、油浴中200℃で20時間加熱した。室温まで冷却した後、25mlの水を添加し、3×15mlのCH
2Cl
2で抽出した。合わせた抽出物を2×20mlの水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、暗褐色の液体を残した。粗生成物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、90:10のヘキサン/CH
2Cl
2、続いて75:25のヘキサン/CH
2Cl
2で溶出し、0.35gの生成物を白色固体として得た。NMRおよびGC/MSによって生成物を確認した。
【化45】
【0141】
N,N−ビス(2−ブロモフェニル)−N’,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン(1.5g、2.5mmol)のエーテル(50ml)溶液に−78℃でtert−ブチルリチウム(7.5ml、ペンタン中1.7M、12.7mmol)を滴加した。反応物を0℃に30分間加温した後、−78℃まで再冷却した。ジメチル(5’−フェニル−[1,1’,3’,1’’−ターフェニル]−4’−イル)ボロン酸塩(1.3g、3.4mmol)の25mlのエーテル溶液を滴加し、浴を除去し、反応混合物を室温まで加温させ、その後、一晩中加熱還流した。室温まで冷却した後、ヘキサンおよびEtOAcを添加し、混合物を、celiteを通して濾過し、濾液を蒸発させて、黄色固体を得た。粗生成物を、98:2のヘキサン/CH
2Cl
2を用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィに付し、0.5gの化合物49を得た。NMRおよびMSによって生成物を確認した。
実施例5.化合物53の合成
【化46】
【0142】
4,4,5,5−テトラメチル−2−(2−フェニルナフタレン−1−イル)[1,3,2]−ジオキサボロランをSpiveyら、J.Org.Chem.2003、68、7379の手順に従って調製した。ドライアイス/アセトン浴中で−78℃まで冷却した、N,N−ビス(2−ブロモフェニル)−N4,N4−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン(0.5g、0.88mmol)の25mlのエーテル溶液に、tert−ブチルリチウム(2.6ml、4.4mmol、ペンタン中1.7M)を滴加した。氷浴を除去し、反応混合物を0℃まで加温させて、30分間撹拌した。反応混合物を−78℃まで再冷却し、4,4,5,5−テトラメチル−2−(2−フェニルナフタレン−1−イル)[1,3,2]−ジオキサボロラン(0.38g、1.14mmol)の10mlのエーテル溶液を滴加した。−78℃で30分間撹拌した後、浴を除去し、溶液を室温まで加温させ、続いて一晩中加熱還流した。冷却後、2mlのMeOHを添加することによって反応をクエンチし、celiteを通して濾過し、CH
2Cl
2で洗浄した。固体の気化後、粗生成物を90:10のヘキサン:CH
2Cl
2、その後75:25のヘキサン:CH
2Cl
2を用いたシリカ上でのクロマトグラフィに付し、0.15gの化合物53を付与した。NMRおよびLC/MSによって生成物を確認した。
デバイス例
【0143】
全てのデバイス例を高真空(<10
−7Torr)熱蒸発によって作製した。アノード電極は、酸化インジウムスズ(ITO)である。カソードは、10ÅのLiF、その後の1,000ÅのAlからなった。窒素グローブボックス(<1ppmのH
2OおよびO
2)において、エポキシ樹脂で封止したガラス製の蓋によって全てのデバイスをカプセル化し、水分ゲッタをパッケージ内に組み込んだ。
【0144】
表2中のデバイス実施例1の有機スタックは、ITO表面、正孔注入層(HIL)としての100ÅのE1、正孔輸送層(HTL)としての300ÅのNPD、発光層(EML)としての、15重量%の化合物Aでドープした300Åの化合物2、ETL2としての50Åの化合物2およびETL1としての400ÅのBAlqから実質的になる。化合物2は、約10
−8Torrにおいて約230℃で蒸発した。
【0145】
デバイス比較例1は、EMLが10重量%のE1でドープした化合物Bであること、およびETL2が化合物Cであることを除いて、デバイス実施例1と同様である。
【0146】
本明細書において用いられるとき、以下の化合物は以下の構造:
【化47】
を有する。
【0147】
OLEDにおける使用のための特定の材料が提供される。特に、材料は、かかるデバイスの発光層中のホスト材料および/または発光ドーパントとして用いられ得る。材料はまた、非発光層、例えばブロッキング層において用いられてもよい。本明細書において提供される化合物は、デバイス寿命を改善することができる。
【表4】
【0148】
表2から、Ir(ppy)
3タイプの化合物である化合物Aをドーパントとして含む、ホストとして化合物Bを用いたデバイスの効率は、CBPをホストとして用いた標準的なデバイスに匹敵することが分かる。
【0149】
本明細書に記載されている種々の実施形態は、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないと理解される。例えば、本明細書に記載されている材料および構造の多くは、本発明の精神から逸脱することなく、他の材料および構造で置き換えられ得る。したがって、特許請求される本発明は、当業者に明らかであるように、本明細書に記載されている特定の実施例および好ましい実施形態からの変形を含んでよい。本発明がなぜ機能するかについての種々の理論は、限定的であることを意図するものではないと理解される。