(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809257
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】心血管装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/10 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
A61M1/10 510
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-513795(P2013-513795)
(86)(22)【出願日】2011年6月7日
(65)【公表番号】特表2013-528446(P2013-528446A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】IB2011052470
(87)【国際公開番号】WO2011154892
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】MO2010A000166
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512316688
【氏名又は名称】パッラヴィチーニ,ロベルト
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(72)【発明者】
【氏名】パッラヴィチーニ,ロベルト
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−512855(JP,A)
【文献】
米国特許第05139517(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0105978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(8)によって境を限られ、より大きな縦寸法(D1)及びより小さな横寸法(D2)を有し、血液が流れる体積を有する心室腔(2)内に適合される心血管装置(11)であって、該心血管装置(11)が、前記体積を減少する為に、実質的により大きな縦寸法(D1)を横断して心室腔(2)内部に適合することができる隔膜装置(16)を有し、前記隔膜装置(16)が、前記壁(8)と密封して係合することができる周辺へり(15)を有し、そして、該隔膜装置(16)が、血液を押圧する能動的移動と受動的戻り移動とを交互に駆動され、そして、前記周辺へり(15)を含んでいる前記隔膜装置(16)が、前記壁(8)の収縮に応じて少なくとも部分的に変形可能であることを特徴とする心血管装置。
【請求項2】
当該能動的移動及び受動的移動のそれぞれが、心臓(1)の収縮期及び拡張期と実質的にそれぞれ同期されることを特徴とする請求項1に記載の心血管装置。
【請求項3】
当該隔膜装置(16)が、要部において、作動装置(18、19)により移動可能に作動されることを特徴とする請求項1に記載の心血管装置。
【請求項4】
当該隔膜装置(16)が、少なくとも主に、心臓の当該収縮期及び拡張期の間の当該壁の圧力により移動可能に駆動されることを特徴とする請求項1に記載の心血管装置。
【請求項5】
当該隔膜装置が、
−押圧位置及び戻り位置の間を交互に移動可能であり、当該周辺へり(15)を有する平坦な要素(16)と、
−前記平坦な要素(16)と一緒に前記押圧位置及び戻り位置の間を移動可能である、前記平坦な要素(16)の支持枠(13、22)と、
から成ることを特徴とする請求項3に記載の心血管装置。
【請求項6】
当該支持枠(13、22)が、調節可能な長さを有する実質的に直線状のガイド要素(17)を有し、該ガイド要素(17)が、当該平坦な要素(16)に面している第1の端部と、当該心室腔(2)の盲端(10)に面しており、当該心室腔(2)の盲端(10)と結合可能な第2の反対端部と、を規定していることを特徴とする請求項5に記載の心血管装置。
【請求項7】
当該作動装置が、一組の磁性体から成り、第1の磁性体(19)が当該支持枠(13、22)に取り付けられ、第2の磁性体(18)が当該ガイド要素(17)の当該第1の端部に取り付けられ、電気回路(20)により電流を供給され、そして、前記一組の磁性体が交互に互いに引き付け合いそして反発し合うように設計され、それにより、当該能動的移動及び受動的移動が実施されることを特徴とする請求項6に記載の心血管装置。
【請求項8】
当該平坦な要素が、生体適合性材料から形成される薄板状の柔軟な隔膜(16)から成ることを特徴とする請求項5に記載の心血管装置。
【請求項9】
当該支持枠が、複数の放射状アーム(13)を有する傘のような形状の網状要素から成り、そして、該網状要素が、共通の中心ハブ(14)にヒンジ結合される中心に向かって収束している複数の端部と、当該周辺へり(15)に固定される複数の反対端部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の心血管装置。
【請求項10】
当該アーム(13)が、柔軟な形状記憶材料から形成され、それにより、記憶している原形を保持し、又は、弾性変形を強いられた後に原形を取り戻すことができることを特徴とする請求項9に記載の心血管装置。
【請求項11】
当該ガイド要素が、伸縮自在の軸(17)から成り、該伸縮自在の軸(17)が、当該平坦な要素(16)に対して該伸縮自在の軸(17)の長さを調節することができるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の心血管装置。
【請求項12】
内部に当該心血管装置(11)が配置される周辺保護覆い(24)が備えられることを特徴とする請求項1から11の中のいずれか1つに記載の心血管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心血管装置に関し、即ち心不全により、即ち心拡張病により引き起こされる問題を除去するのに適している心血管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は心臓病患者を襲っている近年最も深刻な心血管病であり、例えば心筋拡張病により引き起こされる。
【0003】
この病気は心臓腔、特に心室そして特に、生物の血液回路内に血液を送り込む為に大抵は圧力を加えられている左心室の拡張により引き起こされる。
【0004】
左心室のそのような拡張は血圧低下を引き起こし、したがって、肺、脳及び腎臓等の生命維持に必要な臓器への血液供給が危険なまでに減少する。
【0005】
この病気を治療する為に従来2つの治療法が使用されてきた。第1の治療法は患者に心臓移植手術を受けさせることであり、第2の治療法は補助的な携帯用ポンプ装置に患者を接続することである。
【0006】
上記の従来技術は特定の欠点に悩まされているものである。
【0007】
移植に関する第1の欠点は、移植のための臓器を提供できる提供者を見つけることが常に簡単ではないことであり、提供者の死を常に意味していることである。
【0008】
さらに、移植手術後に、患者は、彼/彼女の有機体により移植された心臓が拒絶されることを回避する又は減少する為に長期間の治療を受ける必要がある。
【0009】
補助的なポンプ装置の使用に関するもう1つの欠点は、該装置は患者により日中持ち運ばれなければならず、その上、この補助的なポンプ装置は運転の為に電池パックを使用する必要があり、その全体がケース内に入れられ、そして該ケースから出て事前に患者の体に埋め込まれた特別な連結器に達している管により患者に接続されることである。
【0010】
したがって、両方の場合において、生活の質が非常に影響を受け、患者の日々の活動の実行がかなり限定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は先行技術を改善することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、心拡張病により引き起こされる心不全を迅速に治療することができる心血管装置を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、外科手術により手術部位に安定的に適合することができ、実質的に心臓病を治療する心血管装置を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、心臓移植を用いることなく、手術後に、補助的な装置を持ち運ぶ必要なく、患者が実質的に普通の生活をすることを可能にする心血管装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一形態において、本発明は請求項1に記載の心血管装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の心血管装置が取り付けられた心臓の左心室の概略拡大図である。
【
図6】本発明の心血管装置の一部である枠の側面図である。
【
図8】心臓収縮期の、
図3〜7に図示された可能な実施例における、本発明の心血管装置が挿入された心室の概略図である。
【
図9】本発明の心血管装置の変形実施例の概略分解図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面により非限定的に図示された、心血管装置の好ましい非限定的実施例の詳細な説明を読むことにより、さらに容易に明らかになるであろう。
【0018】
図1を参照すると、符号1は心臓を示し、符号2は心臓1の左心室、符号3は心臓1の左心房、符号4は心臓1の右心室、符号5は心臓1の右心房を示している。
【0019】
「LA」は動脈血線を示し、「LV」は静脈線を示し、符号6は肺を示し、そして符号7は抹消血管系全体の概要を示している。
【0020】
図2を参照すると、左心室2が、左心室の範囲を定める周壁8を有し、そして、大動脈弁9から心室の盲端10まで伸びており、より大きい寸法「D1」が規定される、細長い形状を有していることが示されている。
【0021】
より小さい寸法「D2」は横寸法であり、そして、本発明の心血管装置11は左心室の範囲を定める対向する壁の間に適合するように設計される。
【0022】
図3〜7を参照すると、心血管装置の第1の実施形態が、放射状に配置された複数のアーム13から成る長方形の枠12を有し、該複数のアームが、第1の中心ハブ14内に集束しており、該第1の中心ハブとヒンジ結合している端部と、心室2の壁に接して密封して係合するように設計され、時間とともに通常心室の壁と一体化する周辺へり15にヒンジ結合された反対端部と、を有することが示されている。
【0023】
心血管装置11は心室2のより大きい寸法「D1」に対して横断的に適合するような全体の横寸法を有し、それにより、心室全体の内部体積を部分的に減少している。
【0024】
柔軟性のあるシート要素16、即ち隔膜が周辺へり15から伸びており、複数のアーム13により支持され、枠12に取り付けられている。
【0025】
図2により良く示されているように、心血管装置11の変形実施形態においては、長さを調節することができる伸縮自在のガイド軸17が備えられ、該ガイド軸が、第1の中心ハブ14に面しており、第1の磁石要素、即ち電磁石18を支持している第1の端部を有し、そして、第2の磁石要素、即ち電磁石19が第1の中心ハブ14により支持されている。
【0026】
少なくとも電磁石18が電池パック等の発電機20に接続されており、2つの電磁石18及び19の間で交互に周期的な引力及び反発力をもたらす為に、該発電機20が電磁石18に交流電流を供給する。
【0027】
図3〜7を参照すると、心血管装置11は、ガイド軸17の無い、若干単純化された構造を有し、ガイド軸17は、血管腔2の盲端10に取り付けられるように構成されているコード21により置き換えられていることが示されている。
【0028】
複数のアーム13がそれぞれ支持要素22を有し、該支持要素が、それぞれ周辺へり15にヒンジ結合している端部と、第2のハブ23に集束してヒンジ結合された反対端部と、を有し、該第2のハブが血管腔2の盲端10と一体化するように設計されており、したがって、心血管装置11を血管腔内に安定して配置することができる。
【0029】
使用による劣化からその部品の完全性を保護する為に、心血管装置11は、
図2の点線24により輪郭を描かれている保護シース内に配置され、該保護シースは、押し運動及び戻り運動を可能にする為に、心血管装置全体を緩んだ方法で包み込んでいる。
【0030】
心血管装置11の動作は、2つの可能な実施形態を分離して下記に記載されている。
【0031】
図3〜7に示される実施例、即ちガイド軸17を有していない実施例において、心血管装置11は、血管腔のより大きな寸法「D1」に対して横に、周辺へり15が血管腔の壁8に接してわずかに押し付けて、該壁との密封をもたらすように、手術により血管腔2内に導入される。
【0032】
したがって、心血管装置11は血管腔2を、血管腔2の全体体積よりも小さな体積を有する2つの部分に分割し、該部分の1つ、即ち大動脈弁9に面している部分はその中に血液を受け入れるためだけに設計される。
【0033】
心血管装置11に安定性を加えるために、外科医は第2のハブ23の挿入の為の通路を盲端10に形成し、
図8に図示されているように、該通路をコード21も通過している。
【0034】
したがって、心血管装置は血管腔の壁8に接触する周辺へり15及び盲端10内の第2のハブ23の両方により固定されるので、心血管装置11は血管腔2内にしっかりと適合される。
【0035】
心臓収縮期に血管腔2が収縮する時、
図8の矢印「C」により概略的に図示されているように、血管腔の壁8が心血管装置の枠12を中心に向かう方向に押し、そして、アームは柔軟性のある形状記憶材料から作られているので、複数のアーム13を湾曲し、それにより、隔膜16を反対側に大動脈弁9に向って曲げて、したがって、心臓収縮期の血管腔の収縮によりもたらされる血液押圧作用に加えて、更なる血液押圧作用をもたらす。
【0036】
心臓収縮期の圧縮作用が停止するとすぐに、複数のアーム13はその通常の形態に戻る。
【0037】
図2及び9に図示されている心血管装置11の第2の実施形態においても、血管腔2内の心血管装置の位置は実質的に上述のようになることが示されている。
【0038】
心血管装置11の2つの実施形態の間の相違点は、2つの電磁石18及び19が、それらの内の少なくとも1つの極性を変化させることにより、交互に引き付け合い、又は反発し合うことを引き起こすことである。
【0039】
これらの周期的な引力及び反発力が、隔膜16が内側又は外側に曲がることを引き起こし、それにより、上述のように、心臓収縮期の血管腔2の収縮により発生するポンプ効果に加えて、更なるポンプ効果をもたらす。
【0040】
電磁石18又は19の1つの周期的な極性の反転は、電池パック等の交流発電機20を備えることにより達成することができ、該交流発電機は、ペースメーカー装置のように、心臓の外側に取り付けられ、そして、外科医が心血管装置11を配置する時に盲端10を通過させる電力ケーブルにより心血管装置11に接続される。
【0041】
しかしながら、両方の実施形態において、血管腔2が心血管装置により血管腔2の全体体積よりも小さな体積を有する2つの部分に分割され、それにより、血液押圧能力が改善されるという結果をもたらす。
【0042】
このことは、押す力をかなり増加させる、内側及び外側に曲がることができる隔膜16の効果により補完され、それにより、抹消血管系7への血液の供給が改善される。
【0043】
本発明は意図する目的を実現させることが見出されている。
【0044】
考え出された本発明は、本発明の概念の範囲内で変更及び変形することができる。
【0045】
また、全ての細部は他の技術的に均等な要素により置き換えることができる。実際には、特許請求の範囲により規定された範囲を逸脱することなく、必要に応じて、どんな材料、形状及び寸法も使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 心臓
2 左心室、血管腔、心室腔
3 左心房
4 右心室
5 右心房
6 肺
7 抹消血管系
8 2の周壁
9 大動脈弁
10 盲端
11 心血管装置
12 枠
13 アーム、支持枠
14 第1の中心ハブ
15 周辺へり
16 シート要素、隔膜、隔膜手段、平坦な要素
17 ガイド軸、ガイド要素、伸縮自在の軸
18 電磁石、作動手段、磁性体
19 電磁石、作動手段、磁性体
20 発電機、電気供給手段
21 コード
22 支持要素、支持枠
23 第2のハブ
24 保護シース、周辺保護覆い
C 中心に向かう方向
D1 2のより大きな寸法、縦寸法
D2 2のより小さな寸法、横寸法
LA 動脈血線
LV 静脈線