(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809262
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】電池式電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20151021BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
B25F5/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-518312(P2013-518312)
(86)(22)【出願日】2010年7月2日
(65)【公表番号】特表2013-535343(P2013-535343A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】SE2010050765
(87)【国際公開番号】WO2012002860
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2013年6月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511234781
【氏名又は名称】フスクバルナ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ペール マルティンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ビイェルンリンゲル
(72)【発明者】
【氏名】オスカル ベルグクイスト
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−281880(JP,A)
【文献】
特開2003−266334(JP,A)
【文献】
特表2011−526217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 − 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(10)及び電池パック(20)を具備する、長手方向(Z)に延びる電池式電動工具(1)であって、前記電池パックは、前記工具本体に配置されて、前記電動工具に電力を供給するようにされた、電池式電動工具(1)において、
前記工具本体(10)は、該工具本体が前記電池パック(20)を少なくとも部分的に取り囲むように、前記電池パック(20)を受容するようにされた貫通開口(12)を備えており、
前記貫通開口(12)は、工具の長手延長方向(Z)に垂直な方向(X)に延びており、
前記工具本体(10)は、前記貫通開口(12)内にコネクタ(13)を備え、前記コネクタは、前記電池パック(20)が前記貫通開口(12)の延長方向(X)に沿って挿入されて前記貫通開口(12)に搭載されたとき、前記電池パック(20)の対応するコネクタ(22)と接続するようにされている、電池式電動工具(1)。
【請求項2】
前記電池パック(20)の長さは、貫通開口(12)と略同じ長さである、請求項1記載の電池式電動工具。
【請求項3】
前記電池パック(20)が前記貫通開口(12)に搭載されたとき、電池パック(20)の少なくとも一端(21)が、工具本体(10)の外側に突き出る、請求項1記載の電池式電動工具。
【請求項4】
前記貫通開口(12)に搭載されたとき、前記電池パック(20)の両端が前記貫通開口(12)の延長方向(X)に沿った両方向で、前記工具本体(10)の外側に突き出る、請求項1記載の電池式電動工具。
【請求項5】
前記電池パック(20)の両端(21)は、前記両方向に略等量突き出るようにされる、請求項4記載の電池式電動工具。
【請求項6】
前記電池パック(20)は、前記貫通開口(12)に搭載されたとき、外側から視認可能である、請求項1〜5のいずれか1項記載の電池式電動工具。
【請求項7】
該電池式電動工具(1)は、前記電池パック(20)が前記貫通開口(12)に正しく装填されているか否かを表示するようにされたインジケータを備える、請求項1〜6のいずれか1項記載の電池式電動工具。
【請求項8】
前記電池パック(20)は、該電池パックを前記工具本体(10)に固定するようにされた固定装置(23)を具備する、請求項1〜7のいずれか1項記載の電池式電動工具。
【請求項9】
該電池式電動工具(1)は、手持ち式庭用工具である、請求項1〜8のいずれか1項記載の電池式電動工具。
【請求項10】
前記電池式電動工具(1)は、手持ち式林業用工具である、請求項1〜8のいずれか1項記載の電池式電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関し、より詳細には電池式電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、電池式電動工具の重さの相当な部分を構成する。大きな工具では、使用者に使い易い人間工学を提供するように、電池パックが工具の適切な場所に配置されることは重要である。さらに、次のものに限定されるわけではないが、チェーンソー、生垣用トリマー又は、植物用トリマーのような電池式電動工具は、苛酷な環境で使われるため、工具の堅固な設計のための特別な要求を必要とする。手持ち式電動工具の一般的な設計では、工具本体の下部に、全体が露出されて引っ掛けることによって、電池パックは、工具本体に取り付けられる。このため、電池パックは、苛酷な環境での使用の間、起こり得る衝撃にさらされる。そのような衝撃は、電池パックに損傷を生じさせ、又は、電池パックが、工具の接続部から外れる原因となる。さらに、この問題の解決方法は、工具本体内部に電池を取り付けることであろう。しかし、そのような解決方法は、使用者の観点から工具の取り出しに多くの手間を必要とするアクセスしにくい電池パックを提供することになる。
【0003】
さらに、トリマーまたはチェーンソーのような手持ち式電動工具のために、使用者にとって使い易い人間工学が提供されるように、工具の重心が配置されることが重要である。もし手持ち式電動工具が異なる大きさの電池パックを受容可能ならば、ある場合にそれは役に立つ。現在の解決方法では、より大きな電池パックへの変更は電動工具の何れかの側への超過重量の原因となり、これにより電動工具の不均衡が生じる。そのような不均衡は、使用者のための電動道具の人間工学に悪影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、容易にアクセスできるにも関わらず、衝撃にさらされない電池パックを備えた工具、さらに、異なる電池パック大きさであっても使用者にとって使い易い人間工学を提供する工具の必要性がある。
【0005】
上記の観点から、本発明は、上述の問題を解決するか、又は少なくとも削減することが目的である。特に、目的は、電池パックを保護し、そして、使用者にとって使い易い人間工学を提供する電池式電動工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これは、工具本体と、工具本体に配置され、工具を作動するようにされた電池パックとを具備し、長手方向に延びる電池式電動工具を提供することにより達成される。電池式電動工具は、工具本体が電池パックを少なくとも部分的に取り囲むように、電池パックを受容するようにされた貫通開口が工具本体に設けられることを特徴とする。
【0007】
それによって、工具本体が電池パックを取り囲む保護構造を有する電池式電動工具が提供される。これにより、電池パックの使用中に、それが損傷を受け、又は、工具本体との接続が外れてしまうような衝撃がかかることを避けられる。保護構造は、電池パックを取り囲む堅固な構造でよい。電池パックを取り囲む工具本体は、工具本体の長手方向の後端部に、フック又は類似品のようなリフティング手段も備えてよい。リフティング手段は、工具本体の後端部で搭載された電池パックを無防備な状態とすることはない。
【0008】
一実施態様では、貫通開口は工具の長手方向に対して垂直方向に延びてよい。工具と同一長手方向で延びる貫通開口に搭載される電池パックは、苛酷な環境における工具の使用中、木又は他の障害物との衝撃によるより大きな危険性にさらされる。長手延長方向に垂直の方向の貫通開口により、異なる大きさの電池パックであっても、使用者のための人間工学が維持される。
【0009】
別の実施の形態では、電池パックの長さは、貫通開口の長さと略同じである。このため、電池パックは、工具本体の外側から視認可能であるが、工具本体により取り囲まれることにより衝撃から保護される。電池パックは、工具本体の外側に突出しないので、衝撃にさらされない。
【0010】
更なる実施の形態では、貫通開口に電池パックが搭載されたときに、電池パックの少なくとも一端が、工具本体の外側に突出する。これにより、工具用の電池パックの大きさの可変性が提供される。
【0011】
更に他の実施の形態では、電池パックが貫通開口に搭載されたときに、電池パックの両端は、延長方向に沿った両方向で、工具の外側に突出してよい。
【0012】
別の実施の形態において、電池パックは両方向に略等しい長さで突出するようにされる。電池パックを工具本体の外側の両方向に略等しい長さ突出させることにより、工具の均衡が、異なる大きさの電池パックであっても、良好な程度に保たれる。よって、より大きな電池パックが両方向のいずれかの超過重量の原因となることもなく、その代わりに、それは中央に配置されて保たれる。さもなければ、このような超過重量は、工具の長手延長方向周りで、好ましくない回転運動の原因となる。
【0013】
一実施の形態によると、工具本体は、貫通開口内にコネクタを備えてよい。そして、コネクタは、電池パックが貫通開口に搭載されたとき、電池パックに対応するコネクタと接続するようにされる。コネクタは、電池パックから工具本体に電力を供給するようにされる。工具本体は、電池パックにより電力で作動されるようにされた電気モータを具備する。さらに、コネクタは、貫通開口に電池パックを維持する機能、又は、固定する機能を備えてよい。これにより、コネクタは、電池パック自体が貫通開口から抜け落ちないように電池パックを固定するために設計されてよい。電池パックは、使用者によって固定が解除される。
【0014】
更なる実施の形態では、電池パックが貫通開口に搭載されたとき、電池パックが外側から視認可能である。それにより、電池パックは、工具本体により取り囲まれているが、工具本体の両側から視認不可能な態様ではない。電池パックは貫通開口に搭載されているため、工具本体の両側から視認可能である。外側から視認可能なことによって、たとえ電池パックが工具本体によって取り囲まれていたとしても、電池パックは容易にアクセス可能となる。電池パックの取り外しは、使用者にとって過度の労力がいらない。電池パックは、更に、インジケータを備えてよく、インジケータは、電池パックの電力状態に関する情報を提供してよい。インジケータは、電池パックの直接外側から視認可能である。
【0015】
更なる実施の形態では、電池式電動工具は、電池パックが貫通開口に正しく装填されているか否かを表示するインジケータを備える。オペレーターが、貫通開口に電池パックが正しく装填されているか否かの表示を見ることができるように、そのようなインジケータは、外側から視認可能である。それによって、電池パックが貫通開口に誤って装填されて、そのことが電池パックまたは工具本体に損傷を与えること回避しうる。インジケータは、一実施の形態では、電池パックの正位置又は誤位置を表示するような色採標示であってよい。
【0016】
一実施態様では、電池パックは、電池パックを工具に固定するようにされた固定装置を具備してよい。これにより、電池パックが貫通開口の搭載位置から意図せずに外れることを回避する。
【0017】
別の実施の形態では、工具は、手持ち式庭用工具又は手持ち式林業用工具であってよい。そのような手持ち式庭用工具又は林業用工具は、次のものに限定されるわけではないが、垣根用トリマー、トリマー、チェーンソー、最上部握りのチェーンソー又はその類似品であってよい。
本発明は、添付の図面を参照して、更に詳細に以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施の態様による、電池式電動工具の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施の態様による、搭載された電池パックを有する電池式電動工具の後部斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施の態様による、搭載された電池パックを有する電池式電動工具の後部斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施の態様による、電池式電動工具の後部斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施の態様による、電池パックの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、本発明の好ましい実施の形態が示される添付の図面を参照して、以下に、より詳細に説明されるであろう。しかし、この発明は、多くの異なる形に実施されてよく、ここに述べられる実施の形態に限定されるように解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施の形態は、この説明が詳細且つ完全であり、及び当業者に本発明の範囲を十分に詳細に伝えるように提供される。図において、参照符号により構成要素を参照する。
【0020】
図1は、作動部2が工具1の一方の端に配置される電池式電動工具1、この場合、方向Zに沿った長手延長方向を有する電池式電動垣根トリマーを示す。工具1は、更に、工具本体10を含む。作動部2を保持する端と反対の工具端に、工具本体10は、電池パック20を受容するための貫通開口を具備する。電池パックは、工具1の電気モーター3に電力を供給するようにされている。電気モーターは、工具1の作動中、作動部2を駆動する。貫通開口は、工具1の長手延長方向Zに対して垂直であるX,Y方向で、工具本体10の中を通って延びる。この貫通開口の延長方向は、好ましくは方向Xで工具本体10の両側面を通る。貫通開口は、方向Yに沿って工具本体の頂部及び底部も通ってよい。電池パック20は、貫通開口を通って延びて、固定手段23により貫通開口に固定される。電池パック20が貫通開口に搭載されたとき、電池パック20は、工具本体10の取り囲み部分11により包囲される。取り囲み部分11は、堅固で、電池パック20が貫通開口に搭載されたときに、電池パック20を保護する。取り囲み部分11が、長手方向Zに沿った工具本体10の最外部で電池パック20を取り囲むので、工具本体10は、その最外部の取り囲み部分11に、フック又は同様な締結手段を備える。そのようなフックは、安全機能として使用されるロープを結び付けるのに使われる。木の上で工具を使用するとき、そのような安全機能は役立つ。
【0021】
図2は、工具本体10の貫通開口12に搭載された標準的な大きさの電池パック20を示す。電池パック20は外側から視認可能であるが、電池パック20の部分は工具本体10の外側に拡張しない。方向Xに沿った電池パック20の長さは、工具本体10の貫通開口12の方向Xに沿った延長長さと同様である。従って、電池パック20は、工具本体10及び取り囲み部分11によって完全に保護されて、工具本体10の外側に突き出る電池パック20の部分は無い。電池パック20は、貫通開口の延長長さよりも短い長さを有してもよい。
【0022】
図3は、工具本体10の貫通開口12に搭載された、標準的な大きさの電池パックより大きな電力容量の、より大きな電池パック20を示す。電池パック20の2つの拡張部分21は、方向Xに沿って、貫通開口12の各側で工具本体10の外側に突き出る。好ましくは、2つの拡張部分21は、電池パック20が工具本体10の各側で略等しい量で工具本体20の外側に突き出るように、等しい長さを有する。従って、より大きな電池パック20が貫通開口12に搭載されるときも、軸線Z周りの荷重分布は、依然として等しく分布される。もし必要ならば、貫通開口12の外側に突き出る電池パック20は、さらに工具本体の一方の側に拡張し、そして他方の側に拡張可能である。同一の電池パック20は、異なる電力消費を有するいくつかの異なる電動工具のために使用されうる。異なる電池パックを備えた全ての異なる電動工具のために均衡が保たれるように、異なる電動工具は全て、異なる大きさの同じ電池パックを受容するように設計及び配置される。
【0023】
図4は、空の貫通開口12の工具本体10を示す。貫通開口12は、雌コネクタ13を具備する。雌コネクタ13が、コネクタ13を介して電池パック20から電気モーター3までの電力供給のために使用される。
【0024】
図5は、工具1のモーター3への電力供給用の貫通開口12の雌コネクタ13と接続するようされた対応する雄コネクタ22を備えた電池パック20を示す。貫通開口12における雌コネクタ13は、電池パックの雄コネクタ22の等しい数の開口と接続するようにされた若干数の差込凸部を備える。差込凸部は、電池パック20から工具まで電気を伝導するようにされた金属である。これとは反対に、差込凸部付の雄コネクタが電池パック20に配置されて、雌コネクタが貫通開口12に配置されるように、雌コネクタ13及び雄コネクタ22が配置されてよい。
【0025】
コネクタ13、22により、電池パック20は、特定方向から貫通開口12の中に挿入される必要がある。電池パック20が貫通開口12に搭載されたときに、コネクタ13、22の位置は、電池パック20がどのように延長するかも決定する。貫通開口12のコネクタ13は、好ましくは、貫通開口12の方向Xに沿った長さの中央、又は中央近傍に配置される。それに対応して、電池パック20のコネクタ22は、好ましくは、電池パック20の方向Xに沿った長さの中央、又は、中央近傍に配置される。よって、電池パック20は、方向Xに沿った両方向で、等しい量だけ工具本体10の外側に突き出る。
【0026】
電池パック20は、更に固定装置23を具備する。電池パック20が貫通開口12に搭載されたときに、固定装置23は、工具本体10に電池パック20を固定するようにされる。固定装置23は、工具1の使用中、貫通開口12の中に確実に電池パック20を保持する必要がある。更に、固定装置23は、工具本体10から電池パック20を容易に取り外すことを可能にするために容易に固定解除される必要がある。