(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1開口部の底部では、前記一方の側とは反対側の他方の側において、前記ソース電極および前記ドレイン電極の何れも介在せずに、前記絶縁層と前記有機半導体層とが直に接する箇所が存在する
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ素子。
前記第1開口部の底部において、前記ソース電極および前記ドレイン電極の何れも介在せずに、前記絶縁層と前記有機半導体層とが直に接する箇所は、前記一方の側にも存在し、
前記第1開口部の底部を平面視する場合において、前記絶縁層と前記有機半導体層とが直に接する箇所の面積は、前記第1開口部の底部における中心位置を基準として、前記一方の側よりも前記他方の側の方が大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタ素子。
前記第1開口部の底部を平面視する場合において、前記ソース電極および前記ドレイン電極の一方は、その表面積の中心位置が、前記第1開口部の底部における中心位置よりも、前記一方の側に離れており、他方は、その表面積の中心位置が、前記第1開口部の底部における中心位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ素子。
前記隔壁の表面における撥液性は、前記絶縁層の前記有機半導体層との接触面よりも高く、且つ、前記絶縁層の前記有機半導体層との接触面の撥液性は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の各表面よりも高い
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の薄膜トランジスタ素子。
前記第2開口部の底部には、前記ソース電極または前記ドレイン電極の一方が延設され、もしくは前記ソース電極または前記ドレイン電極と電気的に接続する配線が形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の薄膜トランジスタ素子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[本発明の態様の概要]
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と、絶縁層と、隔壁と、有機半導体層と、を備える。
【0022】
ソース電極およびドレイン電極は、ゲート電極の上方に積層形成され、積層方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけて並設されている。
【0023】
絶縁層は、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に介挿されている。
【0024】
隔壁は、ソース電極およびドレイン電極の各々の少なくとも一部を囲繞するように設けられ、且つ、表面が撥液性を有する。
【0025】
有機半導体層は、上記のように隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部において、ソース電極とドレイン電極との間の間隙、およびソース電極およびドレイン電極の上に形成され、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する。
【0026】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第1開口部の底部を平面視する場合において、ソース電極とドレイン電極との表面積の和の中心位置が、第1開口部の底部における面積の中心位置から一方の側に離れている。
【0027】
これを換言すると、通常、濡れ性の高いソース電極およびドレイン電極が、上記一方の側にオフセットされて配されていることになる。
【0028】
なお、上記において、「ソース電極とドレイン電極との表面積の和の中心位置」とは、ソース電極の面積をA
S、任意の一点からのソース電極の面積中心までの距離をxとし、ドレイン電極の面積をA
D、前記任意の一点からのドレイン電極の面積中心までの距離をyとするとき、上記「ソース電極とドレイン電極との表面積の和の中心位置」zは、次のように表される。
【0029】
[数1] z=(A
S×x+A
D×y)/(A
S+A
D)
上記構成により、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、その製造過程において、有機半導体層を形成するための有機半導体インクを第1開口部の内部に塗布した際、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを有することになる。これより、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、その製造時において、有機半導体インクが不所望の箇所に溢れ出すことを抑制することができる。よって、本発明の薄膜トランジスタ素子は、所望の箇所にだけ有機半導体層を形成することができ、また、インクの溢れ出しを抑制することにより、有機半導体層の層厚も高精度に制御することができる。
【0030】
従って、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、有機半導体層の形成に際して、不所望の領域への有機半導体層の形成を抑制し、高い品質を備える。
【0031】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、上記構成において、第1開口部の底部で、上記一方の側とは反対側の他方の側において、ソース電極およびドレイン電極の何れも介在せずに、絶縁層と前記有機半導体層とが直に接する箇所が存在する、ことを特徴とする。これにより、有機半導体インクを塗布した際の、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを、より確実に実現することができる。
【0032】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第1開口部の底部において、間にソース電極およびドレイン電極の何れも介在せずに、絶縁層と有機半導体層とが直に接する箇所が、上記一方の側にも存在し、第1開口部の底部を平面視する場合において、絶縁層と有機半導体層とが直に接する箇所の面積が、第1開口部の底部における中心位置を基準として、上記一方の側よりも上記他方の側の方が大きいことを特徴とする。
【0033】
このように、上記一方の側と上記他方の側との双方において絶縁層と有機半導体層とが直に接しており、その接触面積が、上記一方の側よりも上記他方の側の方が大きいという構成により、有機半導体層の形成におけるインク塗布時において、上記他方の側へのインクの溢れ出しを効果的に抑制することができ、高性能な薄膜トランジスタ素子とすることができる。即ち、第1開口部の内部に塗布されたインクは、ソース電極およびドレイン電極のオフセット配置により、上記一方の側へと偏るとともに、インクの塗布の際に露出している絶縁層の表面積が上記他方の側の方が上記一方の側よりも大きいので、これによってもインクが上記一方の側へと偏る。
【0034】
従って、上記構成によれば、有機半導体層の形成に際して、より確実に上記他方の側へのインクの溢れ出しを抑制することができ、高品質な薄膜トランジスタ素子とすることができる。
【0035】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、隔壁において、上記第1開口部に対して間隔をあけた状態で第2開口部があけられており、第1開口部の内部が有機半導体層の形成を以ってチャネル部として機能する部分であり、第2開口部の内部が、有機半導体層は形成されずチャネル部として機能する部分ではなく、第1開口部における上記一方の側が、第2開口部側に対し、上記仮想軸の反対側であることを特徴とする。このように、第2開口部の内部には有機半導体層を形成したくない構成の場合には、上記のような構成を採用することにより、効果的に第2開口部へのインクの溢れ出しを抑制することができる。
【0036】
従って、このような構成を採用する場合には、高品質な薄膜トランジスタ素子とすることができる。
【0037】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第1開口部の底部を平面視する場合において、ソース電極およびドレイン電極の一方における表面積の中心位置が、第1開口部の底部における中心位置よりも、上記一方の側に離れており、他方は、その表面積の中心位置が、第1開口部の底部における中心位置にあることを特徴とする。
【0038】
このように、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第1開口部の内部において、必ずしもソース電極とドレイン電極との両方をオフセット配置する必要はなく、ソース電極またはドレイン電極の一方をオフセット配置することで上記効果を得ることができる。
【0039】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第1開口部の底部において、ソース電極とドレイン電極の少なくとも一方が、第1開口部を臨む側面部に対し、上記他方の側の部分で離間し、且つ、上記一方の側で接していることを特徴とする。このようなソース電極とドレイン電極の具体的配置によっても、上記効果を得ることができる。
【0040】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、隔壁の表面における撥液性が、絶縁層の有機半導体層との接触面よりも高く、且つ、絶縁層の有機半導体層との接触面の撥液性が、ソース電極および前記ドレイン電極の各表面よりも高い、ことを特徴とする。これにより、有機半導体インクを塗布した際の、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを、より確実に実現することができる。
【0041】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、第2開口部の底部に、ソース電極またはドレイン電極の一方が延設され、もしくはソース電極またはドレイン電極と電気的に接続する配線が形成されていることを特徴とする。このように、第2開口部を薄膜トランジスタ素子からの信号を外部に出力するためのコンタクト領域とする場合には、接続配線の上に有機半導体層が形成されることを抑制しなければならないが、上記の構成を採用することにより、第2開口部へのインクの溢れ出しを確実に抑制することができ、コンタクト領域としての機能を確保することができる。
【0042】
従って、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、第2開口部への有機半導体層の形成を確実に抑制することができ、高品質である。また、このような構成を採用すれば、生産時における高い歩留まりを確保することもできる。
【0043】
本発明の一態様に係る有機EL表示素子では、上記本発明の何れかの態様に係る薄膜トランジスタ素子と、薄膜トランジスタ素子の上方に設けられ、コンタクトホールが形成された平坦化膜と、平坦化膜上、および平坦化膜のコンタクトホールを臨む側面上に形成され、ドレイン電極またはソース電極と電気的に接続された下部電極と、下部電極の上方に形成された上部電極と、下部電極と上部電極との間に介挿された有機発光層と、を備えることを特徴とする。
【0044】
このように、本発明の一態様に係る有機EL表示素子では、上記本発明の何れかの態様に係る薄膜トランジスタ素子を備えているので、全体としても高品質なものとすることができる。
【0045】
本発明の一態様に係る有機EL表示素子では、上記本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子と、薄膜トランジスタ素子の上方に設けられ、コンタクトホールが形成された平坦化膜と、平坦化膜上、および平坦化膜のコンタクトホールを臨む側面上に形成され、ドレイン電極またはソース電極と電気的に接続された下部電極と、下部電極の上方に形成された上部電極と、下部電極と前記上部電極との間に介挿された有機発光層と、を備え、コンタクトホールが第2開口部と連通していることを特徴とする。
【0046】
このように、第2開口部とコンタクトホールとが相互に連通する構成を採用する場合には、上述のように、第2開口部の内部における接続配線上への有機半導体層の形成を確実に抑制することで、高品質な表示素子を得ることができる。
【0047】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記本発明の何れかの態様に係る有機EL表示素子を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一態様に係る有機EL表示装置についても、高品質であって、且つ、製造時における高い歩留まりを確保することができる。
【0048】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、次の工程を備える。
【0049】
(i) 第1工程;基板上にゲート電極を形成する。
【0050】
(ii) 第2工程;ゲート電極の上方に、絶縁層を形成する。
【0051】
(iii) 第3工程;絶縁層上に、絶縁層の層厚方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけた状態で、ソース電極およびドレイン電極を並設する。
【0052】
(iv) 第4工程;絶縁層上において、ソース電極上およびドレイン電極上を覆う状態で、感光性レジスト材料を積層する。
【0053】
(v) 第5工程;積層された感光性レジスト材料をマスク露光してパターニングすることにより、ソース電極およびドレイン電極の各々の少なくとも一部を囲繞し、表面が撥液性を有する隔壁を形成する。
【0054】
(vi) 第6工程;隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部に有機半導体材料を塗布して乾燥させ、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する有機半導体層を形成する。
【0055】
そして、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、第5工程において、第1開口部の底部を平面視する場合に、ソース電極とドレイン電極との表面積の和の中心位置が、第1開口部の底部における面積の中心位置から一方の側に離れるように、隔壁を形成する、ことを特徴とする。
【0056】
上記のような製造方法では、第5工程において、第1開口部の底部で、ソース電極およびドレイン電極を上記一方の側へとオフセット配置するので、第6工程で有機半導体材料(インク)を塗布した際、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを実現することができる。これより、本発明の一態様に係る製造方法を採用すれば、その製造時において、有機半導体インクが不所望の箇所に(上記他方の側から第1開口部の外に)溢れ出すことを抑制することができる。よって、本発明の一態様に係る製造方法を用い得られる薄膜トランジスタ素子は、所望の箇所にだけ有機半導体層を形成することができ、また、インクの溢れ出しを抑制することにより、有機半導体層の層厚も高精度に制御することができる。
【0057】
従って、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、有機半導体層の形成に際して、不所望の領域への有機半導体層の形成を抑制し、高い品質を備える薄膜トランジスタ素子を確実に製造することができる。
【0058】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、第5工程の実行に際して、第1開口部の底部において、上記一方の側とは反対側の他方の側に、間にソース電極およびドレイン電極の何れも介在せずに、絶縁層と有機半導体層とが直に接する箇所が存在するように前記第1開口部を形成する、ことを特徴とする。このような方法を採用すれば、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルをより確実に実現することができる。
【0059】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、第2工程から第6工程において、隔壁の表面における撥液性を、絶縁層における有機半導体層との接触面よりも高くし、且つ、絶縁層の有機半導体層との接触面の撥液性を、ソース電極およびドレイン電極の各表面よりも高くする、ことを特徴とする。
【0060】
上記のような製造方法では、第5工程において、第1開口部の底部で、ソース電極およびドレイン電極を上記一方の側へとオフセット配置し、また、第2工程から第6工程において、隔壁の表面における撥液性を、絶縁層における有機半導体層との接触面よりも高くし、且つ、絶縁層の有機半導体層との接触面の撥液性を、ソース電極およびドレイン電極の各表面よりも高くするので、第6工程で有機半導体材料(インク)を塗布した際、上記一方の側のインク表面の高さが、他方の側のインク表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを実現することができる。これより、本発明の一態様に係る製造方法を採用すれば、その製造時において、有機半導体インクが不所望の箇所に(上記他方の側から第1開口部の外に)溢れ出すことを抑制することができる。よって、本発明の一態様に係る製造方法を用い得られる薄膜トランジスタ素子は、所望の箇所にだけ有機半導体層を形成することができ、また、インクの溢れ出しを抑制することにより、有機半導体層の層厚も高精度に制御することができる。
【0061】
従って、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、有機半導体層の形成に際して、不所望の領域への有機半導体層の形成を抑制し、高い品質を備える薄膜トランジスタ素子を確実に製造することができる。
【0062】
さらに、本発明の別の態様に係る薄膜トランジスタ素子は、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と、絶縁層と、隔壁と、有機半導体層と、を備える。ソース電極およびドレイン電極は、ゲート電極の上方に積層形成され、積層方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけて並設されている。絶縁層は、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に介挿されている。隔壁は、ソース電極およびドレイン電極の各々における少なくとも一部を囲繞するように設けられ、且つ、表面が撥液性を有する。有機半導体層は、上記のように、隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部において、ソース電極およびドレイン電極との間の間隙、およびソース電極およびドレイン電極の上に形成され、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する。そして、第1開口部を平面視する場合において、一方の側が、当該一方の側とは反対側の他方の側に比べ、有機半導体層との接触面における撥液性が低くなるように構成されている。
【0063】
さらに、本発明の別の態様に係る薄膜トランジスタ素子は、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と、絶縁層と、隔壁と、有機半導体層と、を備える。ソース電極およびドレイン電極は、ゲート電極の上方に積層形成され、積層方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけて並設されている。絶縁層は、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に介挿されている。隔壁は、ソース電極およびドレイン電極の各々における少なくとも一部を囲繞するように設けられ、且つ、表面が撥液性を有する。有機半導体層は、上記のように隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部において、ソース電極およびドレイン電極との間の間隙、およびソース電極およびドレイン電極の上に形成され、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接するそして、第1開口部を平面視する場合において、一方の側とは反対側の他方の側が、前記一方の側に比べ、有機半導体層との接触面における撥液性が高くなるように構成されている。
【0064】
なお、上記において「上方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に、相対的な位置関係により規定されるものである。また、「上方」との用語は、互いの間に間隔をあけた場合のみならず、互いに密着する場合にも適用するものである。
【0065】
以下では、幾つかの具体例を用い、本発明に係る態様の特徴、および作用・効果について説明する。なお、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以下の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。
【0066】
[実施の形態1]
1.有機EL表示装置1の全体構成
以下では、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置1の構成について
図1を用い説明する。
【0067】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御回路部20とを有し構成されている。
【0068】
有機EL表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0069】
なお、本実施の形態に係る有機EL表示装置1では、有機EL表示パネル10に対する駆動制御回路部20の配置については、これに限られない。
【0070】
2.有機EL表示パネル10の構成
有機EL表示パネル10の構成について、
図2の模式断面図および
図3を用い説明する。
【0071】
図2に示すように、有機EL表示パネル10は、TFT(薄膜トランジスタ)基板101を備える。TFT基板101は、基板1011の上に、ゲート電極1012a,1012bが互いに間隔をあけた状態で積層され、その上を覆うように、絶縁層1013が積層形成されている。絶縁層1013の上には、ソース電極1014a,1014bがそれぞれゲート電極1012a,1012bに対応して設けられ、また、
図3(a)に示すように、ソース電極1014a,1014bのそれぞれに対してY軸方向に間隔をあけてドレイン電極1014c,1014dが設けられている。
【0072】
また、
図2および
図3(a)に示すように、絶縁層1013上には、ソース電極1014aに対してX軸方向左側に間隔をあけて、接続配線1015が形成されている。なお、接続配線1015は、ソース電極1014aまたはドレイン電極1014cから延出形成され、あるいは、これらの一方と電気的に接続されている。
【0073】
図2および
図3(a)に示すように、絶縁層1013上には、接続配線1015、ソース電極1014aとドレイン電極1014c,ソース電極1014bとドレイン電極1014dを、それぞれ囲繞するよう隔壁1016が形成されている。換言すると、
図3(a)に示すように、隔壁1016に開けられた3つの開口部1016a,1016b,1016cのうち、接続配線1015が底部に露出するX軸方向左側の開口部1016aが、チャネル部とは異なる部分であり、アノードとのコンタクト部として機能する。一方、底部にソース電極1014aとドレイン電極1014cが露出する開口部1016b、および底部にソース電極1014bとドレイン電極1014dが露出する開口部1016cが、それぞれチャネル部として機能する部分である。
【0074】
なお、
図3(b)に示すように、開口部1016b,1016cの各底部においては、ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014d(
図3(a)を参照)が、X軸方向の全域に跨って配されているのではなく、開口部1016bでは、X軸方向左側で絶縁層1013の一部が露出し(露出部1013a)、同様に、開口部1016cでは、X軸方向右側で絶縁層1013の一部が露出している(露出部1013b)。
【0075】
図2に戻って、隔壁1016で囲繞された各領域のうち、ソース電極1012aおよびドレイン電極1012cの上に相当する領域、およびソース電極1012bおよびドレイン電極1012dの上に相当する領域には、それぞれ有機半導体層1017a,1017bが積層形成されている。有機半導体層1017aは、ソース電極1014aとドレイン電極1014cとの間の間隙、およびソース電極1014a、ドレイン電極1014cの各上を充填するように形成され、これら電極1014a,1014cと密に接している。有機半導体層1017bについても、同様に、電極1014b,1014dと密に接するよう形成されている。そして、有機半導体層1017a,1017bは、隔壁1016により互いに区画されている。
【0076】
なお、
図3(b)に示す絶縁層1013の各露出部1013a,1013bは、間にソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dが介在することなく、有機半導体層1017a,1017bが直に接することになる(
図2を参照)。
【0077】
図2に示すように、有機半導体層1017a,1017bおよび絶縁層1013の上を覆うように、パッシベーション膜1018が積層形成されている。ただし、接続配線1015の上に相当する箇所は、開口されている。
【0078】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル10のTFT基板101は、以上のような構成を有する。
【0079】
次に、
図2に示すように、TFT基板101上は、平坦化膜102で被覆されている。ただし、接続配線1015の上は、コンタクトホール102aが開けられている。コンタクトホール102aは、TFT基板101における開口部1016at連通している。
【0080】
平坦化膜102の主面上には、アノード103、透明導電膜104、およびホール注入層105が順に積層形成されている。これら、アノード103、透明導電膜104、およびホール注入層105は、平坦化膜102におけるコンタクトホール102aを臨む側面に沿っても形成されており、アノード103は、接続配線1015と接触し、電気的に接続されている。
【0081】
ホール注入層105の上には、発光部(サブピクセル)に相当する箇所を囲繞するようにバンク106が形成されている。バンク106が囲繞することで形成される開口部には、ホール輸送層107、有機発光層108、および電子輸送層109が順に積層形成されている。
【0082】
さらに、電子輸送層109の上、およびバンク106の露出面を覆うように、カソード110および封止層111が順に積層形成され、封止層111に対向するようにCF(カラーフィルタ)基板113が配され、間に接着層112が充填されて互いに接合されている。CF基板113は、基板1131のZ軸方向下側主面にカラーフィルタ1132およびブラックマトリクス1133が形成され構成されている。
【0083】
3.有機EL表示パネル10の構成材料
有機EL表示パネル10では、例えば、各部位を次のような材料を用い形成することができる。
【0084】
(i) 基板1011
基板1011は、例えば、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0085】
プラスチック基板としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0086】
(ii) ゲート電極1012a,1012b
ゲート電極1012a,1012bは、例えば、導電性を有する材料であれば特に限定されない。
【0087】
具体的な材料として、たとえば、クロム、アルミニウム、タンタル、モリブデン、ニオブ、銅、銀、金、白金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジウムなどの金属もしくはそれらの合金、または、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの導電性金属酸化物もしくはインジウムスズ複合酸化物(以下、「ITO」と略す。)、インジウム亜鉛複合酸化物(以下、「IZO」と略す。)、アルミニウム亜鉛複合酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛複合酸化物(GZO)などの導電性金属複合酸化物、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子もしくはそれらに、塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸、六フッ化リン、五フッ化ヒ素、塩化鉄などのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを添加したもの、もしくは、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料などが挙げられる。また、金属微粒子とグラファイトのような導電性粒子を含むポリマー混合物を用いてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0088】
(iii) 絶縁層1013
絶縁層1013は、ゲート絶縁層として機能するものであって、例えば、絶縁性を有する材料であれば特に限定されず、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。
【0089】
有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂などを用い形成することができる。
【0090】
また、無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化セリウム、窒化亜鉛、窒化コバルト、窒化チタン、窒化タンタルなどの金属窒化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛などの金属複合酸化物が挙げられる。これらは、1 種または2 種以上組み合わせて用いることができる。
【0091】
さらに、表面処理剤(ODTS OTS HMDS βPTS)などでその表面を処理したものも含まれる。
【0092】
(iv) ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014d
ソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014dは、ゲート電極1012a,1012bを形成するための上記材料を用い形成することができる。
【0093】
(v) 有機半導体層1017a,1017b
有機半導体層1017a,1017bは、例えば、半導体特性を有し、溶媒に可溶であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン) (PTV ) もしくはクォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)およびオクタチオフェンなどのα−オリゴチオフェン類もしくは2,5−ビス(5'−ビフェニル−2'−チエニル)−チオフェン(BPT3)、2,5−[2,2'−(5,5'−ジフェニル)ジチエニル]−チオフェンなどのチオフェン誘導体、ポリ(パラ−フェニレンビニレン) (PPV) などのフェニレンビニレン誘導体、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン) (PFO) などのフルオレン誘導体、トリアリルアミン系ポリマー、アントラセン、テトラセン、ペンタセンおよびヘキサセン等のアセン化合物、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1) および1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)などのベンゼン誘導体、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)および鉄フタロシアニンのようなフタロシアニン誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq3)、およびファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)のような有機金属化合物、C60、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子およびフルオレン系高分子のような高分子系化合物ならびにポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン) (PFMO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール) (BT) 、フルオレン−トリアリルアミン共重合体およびポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジチオフェン) (F8T2)などのフルオレンとの共重合体などが挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
また、溶媒に可溶な無機材料も使用することが可能である。
【0095】
(vi) パッシベーション膜1018
パッシベーション膜1018は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性樹脂や、フッ素系樹脂などを用い形成することができる。
【0096】
(vii) 平坦化膜102
平坦化膜102は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
【0097】
(viii) アノード103
アノード103は、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成されている。トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0098】
(ix) 透明導電膜104
透明導電膜104は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成される。
【0099】
(x) ホール注入層105
ホール注入層105は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。なお、
図2に示す本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、金属酸化物からなるホール注入層105を構成することを想定しているが、この場合には、PEDOTなどの導電性ポリマー材料を用いる場合に比べて、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層108に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
【0100】
ここで、ホール注入層105を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WO
X)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能を有するという観点から望ましい。
【0101】
(xi) バンク106
バンク106は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク106の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク106は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク106は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0102】
なお、バンク106を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク106の表面と発光層108の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機発光層108を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク106が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0103】
さらに、バンク106の構造については、
図2に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0104】
(xii) ホール輸送層107
ホール輸送層107は、親水基を備えない高分子化合物を用い形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
【0105】
(xiii) 有機発光層108
発光層108は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層108の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0106】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0107】
(xiv) 電子輸送層109
電子輸送層109は、カソード110から注入された電子を発光層108へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0108】
(xv) カソード110
カソード110は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0109】
カソード110の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層の構造、あるいは、前記いずれかの層に銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0110】
(xvi) 封止層111
封止層111は、発光層108などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。また、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0111】
封止層111は、トップエミッション型である本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0112】
4.TFT基板101におけるソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの配置
TFT基板101におけるソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの配置について、
図3(a)および
図3(b)を用い説明する。
【0113】
図3(a)および
図3(b)に示すように、隔壁1016により規定される開口部1016b,1016cの各々の底部においては、ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dがX軸方向の端から端まで配されているのではなく、X軸方向の各一方の側にオフセット配置されている。具体的には、開口部1016bの底部においては、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cがX軸方向右側にオフセットした状態で配されている。
【0114】
一方、開口部1016cの底部においては、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dがX軸方向左側にオフセットした状態で配されている。
【0115】
このため、
図3(a)に示すように、開口部1016bの底部におけるX軸方向の中心線L
1に対し、ソース電極1014aとドレイン電極1014cとの表面積の和の中心線L
3が、X軸方向右側に向けて距離x
1だけ離間している。同様に、開口部1016cの底部におけるX軸方向の中心線L
2に対し、ソース電極1014bとドレイン電極1014dとの表面積(
図3(a)における各上面の表面積)の和の中心線L
4が、X軸方向左側に向けて距離x
2だけ離間している。
【0116】
なお、上記において、「ソース電極1014bとドレイン電極1014dとの表面積(
図3(a)における各上面の表面積)の和の中心」については、上記[数1]の規定に基づき求めることができる。
【0117】
また、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cの各々は、開口部1016bを臨む側面部に対し、そのX軸方向右側の部分で接しており、X軸方向左側の部分では離間している。同様に、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dの各々は、開口部1016cを臨む側面部に対し、そのX軸方向左側の部分で接しており、X軸方向右側の部分では離間している。
【0118】
また、
図3(b)に示すように、有機半導体層1017a,1017bの形成前においては、開口部1016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層1013の露出面積(露出部1013aの面積)が右側に比べて大きくなっており、同様に、開口部1016cの底部において、X軸方向右側の部分で絶縁層1013の露出面積(露出部1013bの面積)が左側に比べて大きくなっている。
【0119】
5.有機EL表示装置1の製造方法
有機EL表示装置1の製造方法、特に、有機EL表示パネル10の製造方法について、
図2と
図4を用い説明する。
【0120】
図2および
図4(a)に示すように、先ず、TFT基板101のベースとなる基板1011を準備する(ステップS1)。そして、当該基板1011にTFT(薄膜トランジスタ)素子を形成し、TFT基板101を形成する(ステップS2)。
【0121】
次に、
図2および
図4(a)に示すように、TFT基板101上に絶縁材料からなる平坦化膜102を形成する(ステップS3)。
図2に示すように、平坦化膜102では、TFT基板101における接続配線1015の上方に相当する箇所にコンタクトホール102aがあけられ、その他の部分のZ軸方向上面を略平坦化されている。
【0122】
次に、平坦化膜102上にアノード103を形成する(ステップS4)。ここで、
図2に示すように、アノード103は、発光単位(サブピクセル)で区画され形成されており、コンタクトホール102aの側壁に沿って一部がTFT基板101の接続配線1015に接続される。
【0123】
なお、アノード103は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などにより金属膜を成膜した後、サブピクセル単位にエッチングすることで形成できる。
【0124】
次に、アノード103の上面を覆うように透明導電膜104を形成する(ステップS5)。
図2に示すように、透明導電膜104は、アノード103の上面のみならず側端面も覆っており、また、コンタクトホール102a内においてもアノード103の上面を覆っている。なお、透明導電膜104は、上記同様に、スパッタリング法や真空蒸着法などを用い成膜した後、エッチングによりサブピクセル単位に区画することにより形成される。
【0125】
次に、透明導電膜104上にホール注入層105を形成する(ステップS6)。
図2に示すように、ホール注入層105は、透明導電膜104上の全面を覆うように形成されているが、サブピクセル毎に区画した状態で形成することもできる。
【0126】
金属酸化物(例えば、酸化タングステン)からホール注入層105を形成する場合には、金属酸化膜の形成は、例えば、アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、当該ガスの全圧が2.7[Pa]を超え7.0[Pa]以下であり、且つ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50[%]以上70[%]以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1[W/cm
2]以上2.8[W/cm
2]以下となる成膜条件を採用することができる。
【0127】
次に、各サブピクセルを規定するバンク106を形成する(ステップS7)。
図2に示すように、バンク106は、ホール注入層105の上に積層形成される。
【0128】
バンク106の形成は、先ず、ホール注入層105の上に、バンク106の材料層を積層形成する。この材料層は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの感光性樹脂成分とフッ素成分を含む材料を用い、スピンコート法等により形成される。なお、本実施の形態においては、感光性樹脂材料の一例として、日本ゼオン製ネガ型感光性材料(品番:ZPN1168)を用いることができる。次に、材料層をパターニングして、各サブピクセルに対応する開口部を形成する。開口部の形成には、材料層の表面にマスクを配して露光を行い、その後で現像を行うことにより形成できる。
【0129】
次に、ホール注入層105上におけるバンク106で規定された各凹部内に対し、ホール輸送層107、有機発光層108、および電子輸送層109を順に積層形成する(ステップS8〜S10)。
【0130】
ホール輸送層107は、その構成材料である有機化合物からなる膜を印刷法で成膜した後、焼成することで形成される。有機発光層108についても、同様に、印刷法で成膜した後、焼成することで形成される。
【0131】
次に、電子輸送層109上にカソード110および封止層111を順に積層する(ステップS11,S12)。
図2に示すように、カソード110および封止層111は、バンク106の頂面も被覆するように形成されており、全面に形成されている。
【0132】
次に、封止層111上に接着樹脂材を塗布し、予め準備しておいたCF(カラーフィルタ)パネルを接合する(ステップS13)。
図2に示すように、接着層112により接合されるCFパネル113は、基板1031のZ軸方向下面にカラーフィルタ1132およびブラックマトリクス1133が形成されてなる。
【0133】
以上のように、有機EL表示素子としての有機EL表示パネル10が完成する。
【0134】
なお、図示を省略しているが、有機EL表示パネル10に対して駆動制御部20を付設して有機EL表示装置1を形成した後(
図1を参照)、エージング処理を施すことにより有機EL表示装置1が完成する。エージング処理は、例えば、処理前におけるホール注入性に対して、ホールの移動度が1/10以下となるまで通電を行うことでなされ、具体的には、実際の使用時における輝度以上であって、且つ、その3倍以下の輝度となるように、予め規定された時間、通電処理を実行する。
【0135】
次に、TFT基板101の形成方法について、
図4(b)および
図5から
図8を用い説明する。
【0136】
図5(a)に示すように、基板1011の主面上にゲート電極1012a,1012bを形成する(
図4(b)のステップS21)。ゲート電極1012a,1012bの形成に関しては、上記アノード103の形成方法と同様の方法とすることができる。
【0137】
次に、
図5(b)に示すように、ゲート電極1012a,1012bおよび基板1011の上を覆うように、絶縁層1013を積層形成する(
図4(b)のステップS22)。そして、
図5(c)に示すように、絶縁層1013の主面上に、ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014d、さらには接続配線1015を形成する(
図4(b)のステップS23)。なお、このとき、後の工程で形成する隔壁1016との関係でソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dが、それぞれ上記のようにオフセット配置となるように、絶縁層1013に対するソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの各位置が規定される。このため、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cのX軸方向左横には絶縁層1013の露出部1013aが形成され、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dのX軸方向右横には絶縁層1013の露出部1013bが形成される。
【0138】
次に、
図6(a)に示すように、ソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014d、接続配線1015、さらには絶縁層1013の露出部1013a,1013b上を覆うように、隔壁1016を形成するための感光性レジスト材料膜10160を堆積させる(
図4(b)のステップS24)。そして、
図6(b)に示すように、堆積させた感光性レジスト材料膜10160に対し、上方にマスク501を配し、マスク露光およびパターニングを施す(
図4(b)のステップS25)。ここで、マスク501には、隔壁1016を形成しようとする部分に窓部501a,501b,501c,501dがあけられている。なお、
図6(b)では、図示を省略しているが、マスク501には、窓部501a,501b,501c,501dがあけられた領域以外にも隔壁1016を形成しようとするか部分に窓部があけられている。
【0139】
上記のようにして、
図6(c)に示す隔壁1016を形成することができる(
図4(b)のステップS26)。隔壁1016は、開口部1016a,1016b,1016cを含む複数の開口部を規定する。開口部1016aでは、その底部で接続配線1016が囲繞され、開口部1016bでは、その底部でソース電極1014aおよびドレイン電極1014c(
図6(c)では、図示を省略)が囲繞され、開口部1016cでは、その底部でソース電極1014bおよびドレイン電極1014d(
図6(c)では、図示を省略)が囲繞されている。そして、開口部1016b,1016cの各々においては、ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014d(
図6(c)では、図示を省略)が、X軸方向にオフセット配置されている。
【0140】
図7に示すように、隔壁1016を形成した後、隔壁1016により規定される開口部1016b,1016cに対し、有機半導体層1017a,1017bを形成するための有機半導体インク10170,10171を塗布する(
図4(b)のステップS27)。ここで、開口部1016bの内部に塗布された有機半導体インク10170は、X軸方向に対称な表面プロファイルとなるのではなく、X軸方向右側(有機半導体インク10170の上に図示した矢印の方向)に偏った形状の表面プロファイルを有する。一方、開口部1016cの内部に塗布された有機半導体インク10171は、X軸方向左側(有機半導体インク10171の上に図示した矢印の方向)に偏った形状の表面プロファイルを有する。
【0141】
上記のように、有機半導体インク10170,10171の表面プロファイルを制御することにより、各有機半導体インク10170,10171は、開口部1016aを含む不所望の箇所へ溢れ出すことがない。この理由については、後述する。
【0142】
次に、有機半導体インク10170,10171を乾燥させることにより(
図4(b)のステップS28)、
図8(a)に示すように、開口部1016b,1016cに対して、有機半導体層1017a,1017bを各々形成することができる(
図4(b)のステップS29)。
【0143】
最後に、
図8(b)に示すように、開口部1016aを含むコンタクト領域など除く全体を覆うように、パッシベーション膜1018を形成して(
図4(b)のステップS30)、TFT基板101が完成する。
【0144】
6.奏することができる効果
本実施の形態に係るTFT基板101およびこれを備える有機EL表示パネル10、さらには、有機EL表示パネル10を構成に含む有機EL表示装置1では、次のような理由から高品質であって、且つ、その生産における歩留まりが高いという効果を有する。
【0145】
本実施の形態に係るTFT基板101では、
図7に示すように、有機半導体層1017を形成するための有機半導体インク10170,10171を開口部1016b,1016cの内部にそれぞれ塗布した際、開口部1016bと開口部1016cとの間に介在する隔壁1016の側で、有機半導体インク10170,10171の表面の高さが、各開口部1016b,1016cにおける他方の側の表面の高さに比べて高い、という表面プロファイルを有することになる。これより、本実施の形態に係るTFT基板101は、その製造時において、有機半導体インク10170,10171が不所望の箇所(チャネル部ではない開口部1016aなど)に溢れ出すことを抑制することができる。よって、本実施の形態に係るTFT基板101は、所望の箇所(チャネル部)にだけ有機半導体層1017を形成することができ、また、有機半導体インク10170,10171の溢れ出しを抑制することにより、有機半導体層1017の層厚も高精度に制御することができる。
【0146】
従って、本実施の形態に係るTFT基板101およびこれを備える有機EL表示パネル10、さらには、有機EL表示パネル10を構成に含む有機EL表示装置1は、TFT基板101における有機半導体層1017の形成に際して、不所望の領域への有機半導体層1017の形成を抑制し、高い品質を備える。
【0147】
なお、上記効果は、各開口部1016b,1016cの内部におけるソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの配置と、隔壁1016の表面、絶縁層1013の表面、およびソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dの撥液性の関係により奏される。即ち、隔壁1016の表面の撥液性をR
Wとし、絶縁層1013の表面の撥液性をR
Iとし、ソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dの表面の撥液性をR
Eとするとき、次の関係を満足する。
【0148】
[数2] R
W>R
I>R
E
なお、上記各撥液性R
W,R
I,R
Eは、有機半導体インク10170,10171に対するものである。
【0149】
上記のような隔壁1016の表面、絶縁層1013の表面、およびソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dの各特性を逆の観点、即ち、濡れ性という観点から見ると、次のような関係を満足する。
【0150】
[数3] W
W<W
I<W
E
なお、上記[数3]において、W
Wは、隔壁1016の表面の濡れ性であり、W
Iは、絶縁層1013の表面の濡れ性であり、W
Eは、ソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dの表面の濡れ性である。
【0151】
以上のように、各開口部1016b,1016cの内部におけるソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの配置と、隔壁1016の表面、絶縁層1013の表面、およびソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dの撥液性の関係を制御する本実施の形態では、TFT基板101の製造時の有機半導体インク10170,10171を塗布した際に、
図7に示すような表面プロファイルを有し、これにより、開口部1016aの内部などの不所望の箇所への有機半導体インクの溢れ出しを効果的に抑制することができる。そして、これより、不所望の箇所への有機半導体層1017a,1017bの形成を抑制し、高品質なTFT基板101、有機EL表示パネル10、および有機EL表示装置1を高い歩留まりを以って製造することができる。
【0152】
なお、
図3(a)に示すように、開口部1016b,1016cの内部におけるソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014dの配置により、
図3(b)に示すように、絶縁層1013の露出部1013a,1013bが生じる。そして、これより、開口部1016bの底部においては、X軸方向左側での絶縁層1013の露出面積が、X軸方向右側に比べて大きく、開口部1016cの底部においては、X軸方向右側での絶縁層1013の露出面積が、X軸方向左側に比べて大きくなる。この関係についても、上記効果を得る上で有効である。
【0153】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係るTFT基板の構成について、
図9(a)を用い説明する。なお、
図9(a)は、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1と同様であるので、図示および説明を省略する。
【0154】
図9(a)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板では、隔壁2016で規定される開口部2016bの底部にソース電極2014aおよびドレイン電極2014cが配されている。また、開口部2016aの底部には、上記実施の形態1と同様に、接続配線2015が配されている。
【0155】
開口部2016bの内部におけるソース電極2014aとドレイン電極2014cとは、ともにT字状の平面形状を有し、各X軸方向に延伸する部分同士が対向している。そして、開口部2016bの底部におけるX軸方向の中心線L
5に対し、ソース電極2014aとドレイン電極2014cとの表面積の和の中心線L
6が、X軸方向右側に向けて距離x
3だけ離間している。
【0156】
本実施の形態に係るTFT基板では、ソース電極2014aおよびドレイン電極2014cの各々が、開口部2016bを臨む側面部に対し、そのX軸方向右側およびX軸方向左側の両部分に対して離間した状態で配されている。
【0157】
また、
図9(a)に示すように、有機半導体層の形成前における開口部2016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層2013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0158】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0159】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3に係るTFT基板の構成について、
図9(b)を用い説明する。なお、
図9(b)についても、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1,2と同様であるので、図示および説明を省略する。
【0160】
図9(b)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板においても、隔壁3016で規定される開口部3016bの底部にソース電極3014aおよびドレイン電極3014cが配されている。また、開口部3016aの底部には、上記実施の形態1,2と同様に、接続配線3015が配されている。
【0161】
開口部3016bの内部におけるソース電極3014aとドレイン電極3014cとは、ともに櫛状の平面形状を有し、各櫛歯部分同士が対向している。そして、開口部3016bの底部におけるX軸方向の中心線L
7に対し、ソース電極3014aとドレイン電極3014cとの表面積の和の中心線L
8が、X軸方向右側に向けて距離x
4だけ離間している。
【0162】
ここで、本実施の形態では、ソース電極3014aおよびドレイン電極3014cの両方がX軸方向にオフセット配置されているのではなく、ドレイン電極3014cだけがX軸方向右側にオフセット配置されており、ソース電極3014aは、開口部3016bの底部の中心に対して面積中心が一致した状態で配されている。
【0163】
本実施の形態に係るTFT基板においても、ソース電極3014aおよびドレイン電極3014cの各々が、開口部3016bを臨む側面部に対し、そのX軸方向右側およびX軸方向左側の両部分に対して離間した状態で配されている。
【0164】
また、
図9(b)に示すように、有機半導体層の形成前における開口部3016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層3013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0165】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0166】
また、本実施の形態では、ソース電極3014aおよびドレイン電極3014cが共に櫛状をしており、互いの櫛歯部分が対向しているので、対向領域を大きくとることができ、トランジスタとしての特性を向上させることができる。
【0167】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係るTFT基板の構成について、
図9(c)を用い説明する。なお、
図9(c)についても、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1,2,3と同様であるので、図示および説明を省略する。
【0168】
図9(c)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板においては、隔壁4016で規定される開口部4016a,4016bの開口形状および底部形状が、ともに円形をしている。そして、開口部4016aの底部に配された接続配線4015および開口部4016bの底部に配されたソース電極4014aおよびドレイン電極4014cの外辺形状が円形または円弧状となっている。
【0169】
開口部4016bの底部に配されているソース電極4014aおよびドレイン電極4014cは、ともに開口部4016bの底部の中心線L
9に対して、X軸方向右側にオフセット配置されている。これより、開口部4016bの底部におけるX軸方向の中心線L
9に対し、ソース電極4014aとドレイン電極4014cとの表面積の和の中心線L
10が、X軸方向右側に向けて距離x
5だけ離間している。
【0170】
本実施の形態に係るTFT基板においても、ソース電極4014aおよびドレイン電極4014cの各々が、開口部4016bを臨む側面部に対し、そのX軸方向右側およびX軸方向左側の両部分に対して離間した状態で配されている。
【0171】
また、
図9(c)に示すように、有機半導体層の形成前における開口部4016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層4013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0172】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0173】
また、本実施の形態に係るTFT基板においても、
図9(c)のような形状のソース電極4014aおよびドレイン電極4014cを採用することにより、互いの対向領域をおおきくとることができ、さらに“回り込み電流”を少なくすることができる。
【0174】
[実施の形態5]
本発明の実施の形態5に係るTFT基板の構成について、
図10(a)を用い説明する。なお、
図10(a)についても、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1,2,3,4などと同様であるので、図示および説明を省略する。
【0175】
図10(a)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板においては、隔壁5016で規定される開口部5016a,5016bの開口形状および底部形状は、上記実施の形態1,2,3と同様に、四角形となっている。そして、開口部5016aの底部に配された接続配線5015および開口部5016bの底部に配されたソース電極5014aおよびドレイン電極5014cの外辺形状が略正方形または長方形なっている。
【0176】
開口部5016bの底部に配されているソース電極5014aとドレイン電極5014cとは、互いにX軸方向の長さが異なっており、ソース電極5014aは、そのX軸方向中心が開口部5016bの底部の中心線L
11に合致するように配されている。
【0177】
一方、ドレイン電極5014cは、ソース電極5014aに対して、X軸方向右側に長さが延長された形状となっており、その中心が開口部5016bの中心線L
11に対してX軸方向右側にオフセット配置されている。本実施の形態に係る開口部5016bの内部においては、開口部5016bの底部におけるX軸方向の中心線L
11に対し、ソース電極5014aとドレイン電極5014cとの表面積の和の中心線L
12が、X軸方向右側に向けて距離x
6だけ離間している。
【0178】
本実施の形態に係るTFT基板においては、ソース電極5014aは、開口部5016bを臨む側面部に対して、X軸方向左側およびX軸方向右側の両方で離間しているのに対して、ドレイン電極5014cは、開口部5016bを臨む側面部に対して、X軸方向左側で離間しており、X軸方向右側で接している。
【0179】
また、
図10(a)に示すように、有機半導体層の形成前における開口部5016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層5013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0180】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0181】
[実施の形態6]
本発明の実施の形態6に係るTFT基板の構成について、
図10(b)を用い説明する。なお、
図10(b)についても、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1,2,3,4,5などと同様であるので、図示および説明を省略する。
【0182】
図10(b)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板においては、隔壁6016で規定される開口部6016a,6016bの開口形状および底部形状は、上記実施の形態1,2,3,5と同様に、四角形となっている。そして、開口部6016aの底部に配された接続配線6015および開口部6016bの底部に配されたドレイン電極6014cが略正方形または長方形となっている。
【0183】
一方、開口部6016bの底部に配されたソース電極6014aは、ドレイン電極6014cの一部を取り囲むようにコの字状の平面形状を有する。
【0184】
開口部6016bの底部に配されているソース電極6014aは、その面積の中心が開口部6016bの底部の中心線L
13に対してX軸方向右側にオフセット配置されている。
【0185】
一方、ドレイン電極6014cは、その中心が開口部6016bの中心線L
13に対してX軸方向左側にオフセット配置されている。
【0186】
本実施の形態に係る開口部6016bの内部においては、開口部6016bの底部におけるX軸方向の中心線L
13に対し、ソース電極6014aとドレイン電極6014cとの表面積の和の中心線L
14が、X軸方向右側に向けて距離x
7だけ離間している。
【0187】
また、本実施の形態に係るTFT基板においては、ソース電極6014aは、開口部6016bを臨む側面部に対して、Y軸方向上下の各一部およびX軸方向右側で接しており、X軸方向左側で離間しており、ドレイン電極6014cは、開口部6016bを臨む側面部に対して、X軸方向左側で接しており、X軸方向右側で離間している。
【0188】
また、
図10(b)に示すように、本実施の形態においても、有機半導体層の形成前における開口部6016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層6013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0189】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0190】
[実施の形態7]
本発明の実施の形態7に係るTFT基板の構成について、
図10(c)を用い説明する。なお、
図10(c)についても、上記実施の形態1における
図3(a)に相当する図であり、他の構成については、上記実施の形態1,2,3,4,5,6などと同様であるので、図示および説明を省略する。
【0191】
図10(c)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板においては、隔壁7016で規定される開口部7016a,7016bの開口形状および底部形状は、上記実施の形態1,2,3,5,6と同様に、四角形となっている。そして、開口部7016aの底部に配された接続配線7015および開口部7016bの底部に配されたソース電極7014aおよびドレイン電極7014cが略正方形または長方形となっている。
【0192】
開口部7016bの底部に配されているソース電極7014aは、その面積の中心が開口部7016bの底部の中心線L
15に対してX軸方向右側にオフセット配置されている。
【0193】
一方、ソース電極7014aに対して表面積が小さいドレイン電極7014cは、その中心が開口部7016bの中心線L
15に対してX軸方向左側にオフセット配置されている。
【0194】
本実施の形態に係る開口部7016bの内部においては、開口部7016bの底部におけるX軸方向の中心線L
15に対し、ソース電極7014aとドレイン電極7014cとの表面積の和の中心線L
16が、X軸方向右側に向けて距離x
8だけ離間している。
【0195】
また、本実施の形態に係るTFT基板においては、ソース電極7014aは、開口部7016bを臨む側面部に対して、Y軸方向上下の各一部およびX軸方向右側で接しており、X軸方向左側で離間しており、ドレイン電極7014cは、開口部7016bを臨む側面部に対して、Y軸方向上下で接しており、X軸方向両側で離間している。
【0196】
また、
図10(c)に示すように、本実施の形態においても、有機半導体層の形成前における開口部7016bの底部において、X軸方向左側の部分で絶縁層7013の露出面積が右側に比べて大きくなっている。
【0197】
以上のような構成を有する本実施の形態に係るTFT基板では、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係るTFT基板を備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置においても、上記同様に、高品質であって、その製造に際しての高い歩留まりを実現することができる。
【0198】
[その他の事項]
上記実施の形態1〜7では、開口部の底部で、一方の側とは反対側の他方の側において、ソース電極およびドレイン電極の何れも介在せずに、絶縁層と有機半導体層とが直に接する箇所が存在する形態を一例として採用したが、これに限らず、開口部に内部で、ソース電極およびドレイン電極の表面積の和の中心位置が、開口部の底部における中心位置(表面積の中心位置)よりも、上記一方の側に離れて配されていれば、開口部の底部においては、一方の側とは反対側の他方の側において、絶縁層と有機半導体層との間に、ソース電極およびドレイン電極の何れもが介在する箇所が存在する形態についても適用することができる。
【0199】
上記実施の形態1〜7では、有機EL表示パネル10に用いるTFT基板を一例としたが、適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、液晶表示パネルや電界放出表示パネルなどに適用することもできる。さらに、電子ペーパなどにも適用することができる。
【0200】
また、上記実施の形態1〜7の各構成材料は、一例として示したものであって、適宜変更が可能である。
【0201】
また、
図2に示すように、上記実施の形態1に係る有機EL表示パネル10では、トップエミッション型の構成を一例としたが、ボトムエミッション型を採用することもできる。その場合には、各使用材料およびレイアウト設計について、適宜の変更が可能である。
【0202】
また、上記では、隔壁が規定する開口部の開口形状について、2つの形状を一例として示したが、これ以外にも、種々の開口形状のものを採用することができる。例えば、
図11(a)に示すように、チャネル部に相当する開口部を正方形とすることや、
図11(b)に示すように、一辺が円弧状で、残りの3辺が直線であるような形状の開口部とすることもできる。また、
図9(c)に示すように、チャネル部および非チャネル部の両方を円形にすることもできるし、
図11(c)に示すような円形の開口部を非チャネル部に適用し、その周囲の一部を取り囲む円弧状の開口部をチャネル部とすることもできる。勿論、チャネル部と非チャネル部の開口部の形状を相互に入れ替えることもできる。
【0203】
さらに、上記では、有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部として、アノードなどとのコンタクトのための開口部を一例として採用したが、これ以外にも種々の開口部を採用することができる。例えば、形成したTFTに不良が発見された場合に、不良セルにのみ、新たにTFTを形成してリペアを行うリペア用の開口部を採用することができる。
【0204】
また、TFT基板における隔壁の応力が非常に大きい場合などには、穴をあけて応力を緩和する場合が生じ得る。このような場合には、当該応力緩和用の穴には、インクを溢れ出さないようにすることが好ましい。なお、応力緩和用の穴については、有機半導体層が形成されることは特に問題とはならないが、当該穴に溢れ出した分だけ、本来、有機半導体層を形成しようとする箇所へのインク量が減少することになり、有機半導体層の層厚みの制御という観点から望ましくない。即ち、インクの溢れ出しにより、TFTの性能に影響を与えてしまう場合も考えられる。このような観点から、応力緩和用の穴にもインクが溢れ出さないようにしておくことが望ましい。
【0205】
さらに、本発明は、上記した有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部を有する形態に限らず、有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部を有しない形態にも適用することができる。具体的には、有機半導体層が形成される2以上の開口部が隣接して配置される形態において、隣接する開口部にインクを溢れ出させないように隔壁を構成することとしてもよい。この場合、各開口部ごとに有機半導体インクを分離して存在させて成膜できるので、有機半導体インクが開口部間に跨って存在した状態で成膜させる場合に比べて、各開口部ごとの有機半導体層の層厚のバラツキを低減させ易くなり、この結果、良好な半導体特性や、歩留まりの向上が見込まれる。