特許第5809273号(P5809273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5809273-塗工白板紙およびその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809273
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】塗工白板紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20151021BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   D21H19/38
   D21H27/00 E
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-525600(P2013-525600)
(86)(22)【出願日】2012年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2012057032
(87)【国際公開番号】WO2013014971
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-162836(P2011-162836)
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】石塚 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小塚 治
(72)【発明者】
【氏名】外岡 遼
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】吉松 丈博
(72)【発明者】
【氏名】宮地 絢香
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−026756(JP,A)
【文献】 特開2005−298998(JP,A)
【文献】 特開2007−254914(JP,A)
【文献】 特開2010−053481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00〜27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプが配合された多層抄き原紙上に、青色ないし紫色の色材を含有する顔料塗工液を塗工し、JIS P 8150の方法によって測定される紙のb値を、紫外線を含む測定において−10以上−0.5未満にすることを含む、塗工白板紙の製造方法であって、
前記多層抄き原紙が、その表層の白色度よりもその内側層の白色度の方が10ポイント以上低いものである、上記方法。
【請求項2】
前記塗工白板紙のa値が、−1以上7未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
顔料塗工液を塗工した後、スーパーカレンダーを用いて平滑化処理することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多層抄き原紙に、全パルプ中50重量%以上の古紙パルプが配合されている、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記多層抄き原紙が、150g/m以上の坪量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記多層抄き原紙の白色度が75%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記多層抄き原紙の白色度が70%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
2種類以上の顔料塗工液を塗工することを含み、青色ないし紫色の色材が1種類以上の顔料塗工液に含有されている、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
最外層の塗工液に青色ないし紫色の顔料を配合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顔料塗工層を、ブレード塗工方式により塗工する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
古紙パルプが配合された多層抄き原紙上に、青色ないし紫色の色材を含有する顔料塗工層を備えた塗工白板紙であって、
JIS P 8150の方法によって測定される塗工白板紙のb値が、紫外線を含む測定において−10以上−0.5未満であり、多層抄き原紙が、その表層の白色度よりもその内側層の白色度の方が10ポイント以上低いものである、上記塗工白板紙。
【請求項12】
前記塗工白板紙のa値が、−1以上7未満である、請求項11に記載の塗工白板紙。
【請求項13】
前記多層抄き原紙に、全パルプ中50重量%以上の古紙パルプが配合されている、請求項11または12に記載の塗工白板紙。
【請求項14】
前記多層抄き原紙が、150g/m以上の坪量を有する、請求項11〜13のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項15】
前記多層抄き原紙の白色度が75%以下である、請求項11〜14のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項16】
前記多層抄き原紙の白色度が70%以下である、請求項11〜15のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項17】
2種類以上の顔料塗工層を備え、青色ないし紫色の色材が1種類以上の顔料塗工層に含有されている、請求項11〜16のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項18】
最外層の塗工層に青色ないし紫色の顔料が配合されている、請求項17に記載の塗工白板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙を配合した原紙に顔料塗工層を設ける塗工白板紙に関し、白色ムラが少なく、白紙および印刷光沢度が高い塗工白板紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗工白板紙の原紙は、通常、多層抄きによって製造され、表層には白色度が高く高価な晒化学パルプが多く使用され、表下層および中層には晒し化学パルプに比べ白色度が低く安価な脱墨および未脱墨の古紙パルプが多く使用される。表層に晒化学パルプを使用するのは、塗工白板紙の表面における白色ムラを良好に保ち、古紙パルプに含まれるチリ等の異物を表面から見えにくくするためである。また、表下層および中層に古紙パルプを使用するのは環境面およびコストダウンの観点からである。
【0003】
近年、環境に対する取り組みおよびコストダウンに対する要求が高まっていることから、古紙パルプの使用率が増加する傾向にある。これに伴い、塗工白板紙の表面において白色ムラや、チリ等の異物が目立ちやすくなるという問題が増加している。チリ等の異物を除去するためには、脱墨や除塵処理を強化する必要があるが、処理を強化するほど歩留りが悪化する。また塗工液による改善方法として、塗工量を多くする方法があるが、塗工量を多くしすぎると塗工時の乾燥性が悪くなるなど操業性が低下し、またバインダーマイグレーションにより印刷ムラの原因になるという問題が新たに発生する。
【0004】
例えば、特許文献1,2には、塗工液に隠蔽性の高い顔料を使用することによる白板紙の製造方法が開示されている。しかし、隠蔽性の高い顔料は高価であり、古紙パルプの使用率を高くしてコストダウンした利点が失われる。
【0005】
また、特許文献3には、紙層構造の観点から、表層と表下層の白色度差を一定以下にすることにより白色ムラを改善する方法が開示されている。しかし、この方法では白色度差の規定により古紙パルプの使用率を一定以上高くすることができない。
【0006】
ところで、特許文献4には、青色ないし紫色の色材を使用して印刷用紙の見た目の白さを向上させることが提案されている。しかし、板紙に関する検討はされておらず、また、白色ムラに関する言及は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−166991号公報
【特許文献2】特開2003−306892号公報
【特許文献3】特開2005−298998号公報
【特許文献4】特開2011−026754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すでに述べたように、環境に対する取り組みおよびコストダウンに対する要求が高まっていることから、白板紙の原紙においても古紙パルプの使用率が増加する傾向にあり、これに伴い、塗工白板紙において白色ムラの発生や白色度の低下が問題になっている。
【0009】
また、塗工白板紙の原紙として多層抄きの原紙を使用する場合、表下層や裏層などの内側層に比較的白色度の低いパルプを用い、表層に比較的白色度の高いパルプを用いることがあるが、内側層に起因する白色ムラの発生や白色度の低下を、表層だけでカバーすることが難しいことがあり、塗工白板紙の白色ムラや白色度低下の問題を解決することが望まれている。
【0010】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、良好な白色ムラと白色度を有する塗工白板紙を、良好な操業性で製造する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、白色顔料、と接着剤を含有する顔料塗工液に青色ないし紫色の色材を添加し、この塗工液を板紙原紙上に塗工することによって、JIS P 8150の方法によって測定される紙のb値を、紫外線を含む測定において−10以上−0.5未満に調整することで、塗工白板紙の白色ムラを効果的に抑制し、白色度の高い塗工白板紙を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の発明を含む。
(1) 古紙パルプが配合された多層抄きの原紙上に、青色ないし紫色の色材を含有する顔料塗工液を塗工し、JIS P 8150の方法によって測定される紙のb値を、紫外線を含む測定において−10以上−0.5未満にすることを含む、塗工白板紙の製造方法。
(2) 前記多層抄きの原紙について、表層の白色度よりもその内側層の白色度の方が低い、(1)に記載の方法。
(3) 前記多層抄きの原紙について、表層の白色度とその内側層の白色度の差が10ポイント以上である、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 前記多層抄きの原紙が、70g/m以上の坪量を有する、(1)〜3)のいずれかに記載の方法。
(5) 前記多層抄きの原紙が、100g/m以上の坪量を有する、(1)〜4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記多層抄き原紙の白色度が75%以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記多層抄き原紙の白色度が70%以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 2種類以上の顔料塗工液を塗工することを含み、青色ないし紫色の色材が1種類以上の顔料塗工液に含有されている、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 最外層の塗工液に青色ないし紫色の顔料を配合する、(8)に記載の方法。
(10) 顔料塗工層を、ブレード塗工方式により塗工する、(8)または(9)に記載の方法。
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載の方法により製造された塗工白板紙。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な白色ムラと白色度を有する塗工白板紙を、良好な操業性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】L色相系における色材添加後の色相の変化
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、塗工白板紙およびその製造方法に関する。本発明において、塗工白板紙とは、原紙の片面、もしくは両面に顔料塗工層を設けたものであり、青色または紫色の顔料および/または染料(以下、青紫色材ともいう)が少なくとも顔料塗工層に配合され、JIS P 8150の方法によって測定される紙のb値が、紫外線を含む測定において−10以上−0.5未満に調整される。
【0016】
原紙
本発明においては、古紙パルプが配合された多層抄きの原紙を使用して白板紙を製造する。本発明で使用する原紙の白色度は、特に限定されないが、本発明によれば原紙の白色度が低い場合であっても、白色ムラが少ない白板紙を得ることができる。例えば、原紙の白色度が75%以下、好ましくは70%以下の場合、本発明の効果を特に大きく享受することができ好適である。ここで、原紙の白色度は、塗工層が設けられる側の原紙表面の白色度をいう。
【0017】
本発明で使用される原紙は、古紙パルプを配合していれば、それ以外のパルプ配合は特に制限されず、例えば、晒化学パルプ、未晒化学パルプなどを使用できる。古紙パルプは、脱墨してもしなくてもよく、脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプなどを使用することができる。古紙パルプや化学パルプ以外にも、用途に応じて各種パルプを使用することができ、例えば、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。パルプ配合は、各種パルプを混合したものでも良いし、同一のパルプを用いたものでも良い。
【0018】
本発明の原紙において、原料パルプに占める古紙パルプの含有量は、全パルプ中50重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明においては多層抄きの原紙を使用する。各層のパルプ配合については、同じパルプ配合としてもよいし、異なるパルプ配合の層を1層以上重ねてもよい。例えば、内側層である中層に白色度の低いパルプを用いて、表層、裏層にそれより白色度の高いパルプを用いることもできるし、すべての層のパルプを同じものとして複数層重ねることもできる。多層抄きの場合、表層とその直下層の白色度の差が大きい(表層の白色度が高く、その内側層の白色度が低い)と、白色ムラが起こりやすいという技術課題があるところ、本発明によれば、そのような場合でも白色ムラを効果的に抑制することができる。特に、表層とその直下層の白色度の差が10ポイント以上であるような場合、本発明の効果をより効果を享受しやすい。ここで言うポイントとは、白色度の差を示しており、例えば、表層の白色度が80%で、その直下層の白色度が68%の時は、12ポイント低いということになる。
【0020】
本発明においては、原紙に填料を配合してもよい。填料としては公知の填料を任意に使用でき、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが不透明度向上のためにも好ましく使用される。紙中填料率は特に制限されないが、1〜40固形分重量%が好ましく、10〜35固形分重量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明においては、公知の製紙用添加剤を使用することができる。例えば、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、各種紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0022】
本発明においては、多層抄き原紙の表層の白色度よりもその内側層の白色度の方が低いような原紙を用いる場合、本発明の効果を大きく享受することができ、特に好ましい。すなわち、このような原紙を使用すると、内側層の白色ムラや低い白色度を外側層(表層)だけでカバーすることができず、白色ムラが生じやすいが、本発明によれば、このような多層抄き原紙に関する課題に効果的に対処することができる。
【0023】
本発明で使用する原紙の坪量は特に制限されないが、塗工白板紙として用いることから70g/m以上の坪量とすることが好ましく、100g/m以上がより好ましく、150g/m以上がさらに好ましく、200g/m以上がよりさらに好ましい。原紙の坪量の上限は特にないが、500g/m以下とすることが好ましく、400g/m以下であってもよい。
【0024】
本発明における原紙の抄紙方法は特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマ、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン等を用いて行うことができる。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよいが、中性またはアルカリ性が好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0025】
また、本発明においては、原紙の平滑性を改善する手段として、顔料塗工前に、澱粉を主成分としたクリア塗料または顔料を含んだ塗料を原紙に塗工することができる。このプレ塗工された原紙は、乾燥工程を経ないまま、すなわち原紙上の塗料が濡れた状態で、顔料塗工に供してもよい。このように、顔料塗工に供される前のプレ塗工後の原紙の状態は制限されない。
【0026】
本発明においてクリア塗工とは、例えば、サイズプレス、ゲートロールコーター、プレメタリングサイズプレス、カーテンコーター、スプレーコーターなどのコーター(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉などの各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。本発明においては、クリア塗工層に紫色顔料および/または青色顔料を含有させることができ、その場合、クリア塗工の塗工液中に紫色顔料および/または青色顔料を配合し、それを原紙上に塗工すればよい。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1〜1.0g/mが好ましく、0.2〜0.8g/mがより好ましい。
【0027】
また、原紙をオンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより、塗工工程の前に、予め平滑化しておいてもよい。
【0028】
顔料塗工
本発明においては、白色顔料と接着剤を含む塗工液の少なくとも1つに、青色ないし紫色の色材を配合する。最外層の顔料塗工層に色材を含むことがより好ましい。青色・紫色の色材を配合することによって、塗工紙の白色度、不透明度、白色ムラ、見た目の白さなどを効果的に改善することができる。白色顔料および接着剤としては、公知のものを適宜使用することができる。また、複数の塗工層に青色・紫色の色材を配合すると、白色ムラの改善効果が単層に配合した場合に比べて高くなる。
【0029】
また、顔料塗工層以外に、サイズプレス液や原紙に色材を含有させてもよい。
【0030】
本発明においては、紫色顔料、紫色染料、青色顔料、および青色染料からなる群より選択される1種以上の色材を用いる。色材とは、白色以外の有色の顔料または染料を意味する。また、顔料とは、水や油や有機溶剤などに不溶または難溶性または分散状態で存在する白色あるいは有色の粉体であり、無機顔料と有機顔料がある。本発明においては、前記色材として、無機顔料、有機顔料のいずれを用いてもよい。染料とは、可視光線を選択吸収または反射して固有の色を持つ有機色素のうち、適当な染色法により繊維や顔料等に染着する有機色素をいう。染料は溶媒(水や有機溶剤など)に可溶である。本発明においては、染料を併用してもよいが、耐光性に優れ、紙の経時による変色・着色を防止するという観点から、紫色および/または青色の顔料を使用することが好ましい。本発明において、「青色・紫色の色材を使用する」とは、青色色材と紫色色材の双方を使用する場合、そのいずれか一方を使用する場合が包含される。また、本発明において「青色・紫色の色材」とは、「青色および/または紫色の色材」という意味である。
【0031】
市販されている青色顔料としては、例えば、EMT−ブルーDS−18 東洋インキ製造(株)社製などが挙げられ、市販されている紫色顔料としては、例えば、SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製などが挙げられる。青色顔料を単独で、または紫色顔料を単独で使用してもよいが、両者を併用してもよい。不透明度を向上させるには、紫色顔料を使用することが好ましい。また、本発明においては、必要に応じて、黒、赤、黄などの、青、紫以外の色材を添加してもよい。
【0032】
青紫顔料としては、前述のとおり無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。青色顔料の具体例としては、例えば、ウルトラマリン、アズライト、プロシアブルー(紺青)、群青、スマルト、コバルトブルー(アルミン酸コバルト)、セルリアンブルー(錫酸コバルト)、コバルトクロムブルー、コバルト・アルミ・珪素酸化物、コバルト・亜鉛・珪素酸化物、マンガンブルー、フタロシアニンが挙げられる。また、紫色顔料の具体例としては、例えば、コバルトバイオレット(砒酸コバルト、燐酸コバルト、コバルト・リチウム・燐酸化物、含水燐酸アンモニウムコバルト、ホウ酸コバルトなど)、紫群青、酸化鉄紫、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの無機顔料、インジゴイド系、キナクリドン系、オキサジン系、アントラキノン系、カルボニウム系、キサンテン系の有機顔料が挙げられる。
【0033】
本発明においては、白板紙に前記色材を一定量含有させて色相を一定の範囲とすることにより、白板紙の表面色を青白くし、見た目の白さを増強すると共に、白色ムラを防止することができる。
【0034】
本発明において色材を添加すると、図1に示す方向へ紙の色相を変化させることができる。図1は、L表色系をもとに、本発明の色材を含有しない紙と、含有させた後の紙の色相の変化を示す。色相を、a値の(+)方向を0°、(−)方向を180°b値(+)方向を90°、(−)方向を270°として表記した場合、添加前の紙を原点ゼロの位置とすると、青色の色材を添加すると、「青味」と図1に示してある210°以上280°未満の部分に添加後の紙の色相が変化し、紫色の色材を添加すると、「紫味」と図1に示してある280°以上335°未満の部分に添加後の紙の色相が変化するということを表している。
【0035】
本発明で用いる色材は、白板紙1mあたり0.4〜3.5mgであることが好ましく、0.9mg〜3.0mgであることがより好ましい。その他の好ましい態様として、白板紙1mあたり0.7〜3.0mgの色材を用いる態様、白板紙1mあたり0.7mg〜2.0mgの色材を用いる態様も挙げられる。一般に、前記量が0.4mgより少ないと、色材による光の吸収が少ないため、不透明度に寄与する隠蔽性が不足するので好ましくない。また、一般に、前記量が3.5mgより多いと、色材による光の吸収量が多く、不透明度向上に大きく寄与するものの、色相が0点から大きく外れ、白色とは感じられなくなるため、好ましくない。色材の合計含有量は、原料あるいは原紙などの白色度により適宜調節できる。
【0036】
本発明においては、塗工層の塗工方式は特に限定されないが、通常用いられるコーターであればいずれを用いても良い。オンマシンコーターでもオフマシンコーターでも良く、オンマシンコーターであれば、サイズプレスコーター、ゲートロースコーターなどのロールコーター、ビルブレイドコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーターなどのコーターを使用できる。本発明においては特にブレードコーターを用いることが好ましく、白色ムラが生じやすい原紙を用いた場合であっても白色ムラを効果的に抑制することができ、また、白色度を高くすることができる。また、カーテン塗工によって塗工層を設けることもでき、カーテン塗工では嵩高く均一な塗工層によって原紙を効果的に被覆できるため、塗工紙の見た目の白さおよび不透明度をより一層向上させることができる。
【0037】
本発明の好ましい態様においては、顔料を含む塗工層を2層以上設けることができる。ブレードコーターを用いて塗工する場合は、塗工層を3層以上とすることが好ましい。
【0038】
本明細書においては、最外塗工層を上塗り層、当該上塗り塗工層を形成する塗工液を上塗り塗工液ということがある。また、上記最外層に隣接し、より原紙に近い層を下塗り塗工層、当該下塗り塗工層を形成する塗工液を下塗り塗工液という。下塗り層は、複数層となることがある。塗工層が複数存在する場合、青紫色材はいずれの塗工層に含まれていてもよい。この場合、青紫色材の色材量は各層の色材含有量を合計した値である。
【0039】
本発明では、水と必要な成分とを混合して塗工液を調整する。塗工液の調製においては、ミキサー等の通常の混合手段を用いてよい。各成分等については以下に説明する。
【0040】
下塗り塗工液
本発明において下塗り塗工液は、顔料と接着剤(バインダー)を含んでなる。接着剤は特に制限されないが、例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、およびアクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。本発明においては、ポリビニルアルコールや澱粉類が好適である。また、本発明においては合成系接着剤と澱粉類を併用することが好ましい。好ましい態様において、これらの接着剤は合計で、顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは8〜30重量部、より好ましくは、8〜15重量部程度の範囲で使用される。
【0041】
下塗り塗工液の顔料としては特に制限されないが、例えば、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、焼成クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを必要に応じて単独または二種類以上混合して使用することができる。顔料の種類としては、バインダー要求量が少なく少量の接着剤で表面強度を向上できることから、重質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウムが好ましい。また、白板紙の白色度や白色ムラの観点から、平均粒子径が比較的大きい顔料を使用することが好ましい。例えば、平均粒子径(D50)は1.0〜3.0μmであり、好ましくは、1.5〜2.5μmである。その使用量は特に制限されないが、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上の量で使用するとその効果が顕著となる。
【0042】
上塗り塗工液
本発明に用いる上塗り塗工液は、下塗り塗工液と同様に、顔料と接着剤を含んでなる。顔料は制限されず、塗工紙用に従来から用いられている顔料を使用できる。例えば、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料、有機・無機複合顔料等を使用することができる。中でも重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウムが好ましい。これらの顔料は単独で使用できるが、必要に応じて二種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
本発明においては、上塗り塗工液の顔料としては、平均粒子径が比較的小さい顔料を使用することが好ましい。例えば、平均粒子径(D50)が0.2〜1.0μm(0.5〜1.0μmでもよい)であり、沈降方式による粒度分布曲線の75累積質量%における粒子径(D75)と25累積質量%における粒子径(D25)の比(D75/D25)が3.0以上5.0以下(3.5以上5.0以下でもよい)である炭酸カルシウム(好ましくは重質炭酸カルシウム)を使用することにより、緻密な塗工層が形成され、白板紙のインキセット性が速くなりすぎることを抑制し、印刷光沢度が向上する傾向にある。前記炭酸カルシウムの使用料は特に制限されないが、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、このような範囲で使用するとその効果が顕著となる。
【0044】
本発明の上塗り塗工液には、接着剤(バインダー)を配合することが好ましい。接着剤は特に制限されず、塗工紙用に従来から用いられている接着剤を使用できる。接着剤の例には、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、およびアクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤が含まれる。接着剤は、1種類以上を適宜選択して使用できる。好ましい態様において、これらの接着剤は顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは8〜30重量部、より好ましくは、8〜15重量部程度の範囲で使用される。塗料の増粘が低い、合成系接着剤が好適である。他にも、低重合度(重合度1000以下、500程度であってもよい)のポリビニルアルコールは、粘度を大幅に上昇させることなく接着効果も高めることができるので好ましい。
【0045】
本発明の塗工液には、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、界面活性剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【0046】
上塗り塗工液の固形分濃度は、好ましくは40〜75重量%であり、より好ましくは50〜70重量%であり、さらに好ましくは60〜70重量%である。上塗り塗工液の固形分濃度が、40重量%未満であると、塗工乾燥時における塗工層の体積変化が大きくなり、結果として塗工後の表面平滑性が劣る。例えばブレードコーターの場合、75重量%より多いと、塗工液の流動性が悪化し、ブレードコーターのブレード刃先汚れが顕著となり、その結果、塗工面感不良となる。またカーテンコーターの場合、75重量%より多いと、塗工液の流動性が悪化し、均一なカーテン膜を形成することが難しくなる。 本発明においては、最外層である上塗り層の塗工量を2〜30g/mとすることが好ましく、4〜20g/mとすることがより好ましく、6〜20g/mとすることがさらに好ましく、6〜15g/mとすることがよりさらに好ましい。また、内側の塗工層の塗工量については、5〜30g/mとすることが好ましく、10〜25g/mとすることがより好ましい。また、本発明においては、最外側塗工層の塗工量を内側塗工層の塗工量よりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。各塗工層の塗工量を調整することによって、インキセット性に大きな影響を与える白板紙の表層部分のみを印刷に適した空隙構造にしてインキセット性を調整しつつ、白色度に大きな影響を与える内側の下塗り塗工層の大部分を維持することができる。
【0047】
本発明において顔料塗工層の塗工量は、各層の合計で、片面あたり乾燥重量で5〜50g/mが好ましい。塗工量が5g/m未満では、塗工層が薄くなり、白板紙の白色度、白色ムラの改善が十分にできない。一方、一つの層の塗工量が50g/mを越えると、塗工時の乾燥性が悪くなるなど操業性が低下したり、バインダーマイグレーションによる印刷ムラの原因になったりするので好ましくない。
【0048】
本発明の塗工速度は、特に制限されないが、一般的には100m/分〜800m/分程度である。
【0049】
本発明の塗工白板紙は、原紙上に塗工層を設けた後、通常の乾燥工程を経て製造されるが、必要に応じて表面処理工程等で平滑化処理してもよい。好ましい態様において、製造後の塗工紙水分が3〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%程度となるように調整して仕上げられる。平滑化処理には、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ、熱キャレンダ、シューキャレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。
【0050】
平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。
【0051】
塗工白板紙
本発明で製造される塗工白板紙の色相は、JIS P 8150に規定される紫外線を含む測定においてb値が−6以上−0.5未満に調整することが好ましいが、b値が−4以上−1未満であることがより好ましく、b値が−3.5以上−1未満であることがさらに好ましい。このようにb値を比較的低くすることによって、塗工白板紙の見た目の白さを増強できるとともに、白色ムラを改善することができる。また、同測定におけるa値は、塗工白板紙の白色度や不透明度には大きく寄与しないため、特に限定されないが、通常は、−1以上7未満が好ましく、−1以上5未満がより好ましく、−1以上3未満がさらに好ましい。前記範囲を外れると、塗工白板紙の色が白に見えなくなってしまうことがあるため好ましくない。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されない。なお、特に断らない限り、本明細書において部および%はそれぞれ重量部および重量%を示し、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0053】
<評価方法>
・白色度:JIS P8148「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
・色相(a*、b*):JIS P8150に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
・白色ムラ:以下の基準により目視により4段階で評価した。
◎:ムラが全く目立たない。○:軽度のムラが認められる。△ムラが認められ、実用上問題となる可能性がある。×:顕著なムラが認められ、実用に適さない
・坪量:JIS P8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
・密度:JIS P8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
・見た目の白さ:印刷用塗工紙表面の白さを室内蛍光灯照明下で目視にて評価した。色の白さについては白色度が必ずしも人の目で見たときの白さと相関しているわけではないためである。目視の評価は4段階とした。◎:とても白い、○:白い、△:ややくすんで見える、あるいはやや黄ばんで見える、×:くすんで見える、あるいは黄ばんで見える。
【0054】
<実験A(塗工白板紙の製造)>
実施例A1
原紙
脱墨古紙パルプを100%の割合で配合したパルプ原料を使用して白色度68%、坪量40g/mの表層、雑誌古紙を原料とする未脱墨古紙パルプを100%の割合で配合したパルプ原料を使用して白色度55%、坪量220g/mの中層、中層と同様のパルプを使用して白色度45%、坪量40g/mの裏層をそれぞれ抄造し抄き合わせ、プレス、乾燥処理を行い、坪量300g/mの塗工白板紙原紙を得た。原紙の白色度は65%であった。抄紙速度は300m/minであった。
【0055】
下塗り塗工
デラミネーテッドカオリン(Contour1500、イメリス社製)45部、軽質炭酸カルシウム(TP-121-7C、奥多摩工業社製)55部からなる顔料100部に対し、リン酸エステル化澱粉(MS4600、日本食品加工社製)5部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(ALB1735、旭化成ケミカル社製)12部、青色顔料(EMT-ブルーDS-18、東洋インキ製造社製)0.003部、紫色顔料(SAバイオレットC12896、御国色素社製)0.002部を添加し、さらに水を添加して、固形分濃度が60%の下塗り用塗工液を調製した。20℃、60rpmにおける下塗り用塗工液のB型粘度は約1000mPa・sであった。
【0056】
この下塗り塗工液を、原紙の表層に対しバーコーターにて12g/m塗工し、乾燥した。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく300m/minであった。
【0057】
上塗り塗工
デラミネーテッドカオリン(Contour1500、イメリス社製)43部、軽質炭酸カルシウム(TP-221GS、奥多摩工業社製)50部、酸化チタン(RPS-V、デュポン社製)7部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100部に対し、リン酸エステル化澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(旭化成社ケミカル製、ALB1443)14部、滑剤(DEF-783TF、日新化学社製)0.5部、青顔料(EMT-ブルーDS-18、東洋インキ製造社製)0.003部、紫顔料(SAバイオレットC12896、御国色素社製)0.002部を添加し、さらに水を添加して60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・s、固形分濃度が63%の上塗り用塗工液を調製した。
【0058】
この上塗り塗工液を、下塗り塗工を行った後の原紙の表層に対しブレードコーターにて8g/m塗工し、乾燥した。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく300m/minであった。
【0059】
仕上げ処理
得られた塗工白板紙をスーパーカレンダー処理することにより、坪量320g/m、密度0.85g/cmの塗工白板紙を得た。処理速度は、オンマシンにより抄紙、塗工と一貫して行ったため、抄紙速度および塗工速度と同じく300m/minであった。
【0060】
比較例A1
実施例において、下塗り塗工液および上塗り塗工液のいずれにおいても、青顔料および紫顔料を添加しなかった以外は、実施例と同様に塗工白板紙を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に見られるように、実施例A1では表層に脱墨パルプを用いた白色度の低い原紙であっても、下塗り塗工液および上塗り塗工液中に青顔料および紫顔料を添加して色相を適切な範囲内に調整することにより、塗工層の散乱性を高め、原紙の白色ムラを目立たなくすることができる。一方、下塗り塗工液および上塗り塗工液中に青顔料および紫顔料を添加しない比較例A1では、白色ムラが顕著に発生する。
【0063】
<実験B(塗工白板紙の製造)>
実施例B1
原紙
クラフトパルプ100%の原料を使用して白色度80%、坪量25g/mの表層、雑誌古紙を原料とする脱墨古紙パルプを100%の割合で配合したパルプ原料を使用して白色度68%、坪量35g/mの表下層、雑誌古紙を原料とする未脱墨古紙パルプを100%の割合で配合したパルプ原料を使用して白色度45%、坪量65g/mの中層、中層と同様のパルプを使用して白色度45%、坪量65g/mの裏層をそれぞれ抄造し抄き合わせ、プレス、乾燥処理を行い、坪量190g/mの塗工白板紙原紙を得た。原紙の白色度は69.5%であった。抄紙速度は750m/minであった。
【0064】
下塗り塗工
重質炭酸カルシウム(Hydrocarb60,omya社製)85部、焼成クレー(Britex98、Shanxi Jinyang Calcinated Kaolin社製)15部からなる顔料100部に対し、変性澱粉(PS-266-3、広西明陽社製)4部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(DTO6128、Stylon社製)8部、さらに水を添加して、固形分濃度が66%の下塗り用塗工液を調製した。20℃、60rpmにおける下塗り用塗工液のB型粘度は約2500mPa・sであった。
【0065】
この下塗り塗工液を、原紙の表層に対しブレードコーターにて14g/m塗工し、乾燥した。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく750m/minであった。
【0066】
さらに、前記下塗り塗工液を、その上に、ブレードコーターにて12g/m塗工し、乾燥した。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく750m/minであった。
【0067】
上塗り塗工
重質炭酸カルシウム(Setacarb、omya社製)100部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100部に対し、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SPB72、Styron社製)13部、滑剤(DEF-791TF、日新化学社製)0.5部、青顔料(EMT-ブルーDS-18、東洋インキ製造社製)0.0005部、紫顔料(SAバイオレットC12896、御国色素社製)0.007部を添加し、さらに水を添加して60rpmにおけるB型粘度が1140mPa・s、固形分濃度が67%の上塗り用塗工液を調製した。
【0068】
この上塗り塗工液を、下塗り塗工を行った後の原紙の表層に対しブレードコーターにて14g/m塗工し、乾燥した。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく750m/minであった。
【0069】
仕上げ処理
得られた塗工白板紙をホットソフトニップカレンダー(40kN/m、120℃)処理することにより、坪量230g/m、密度0.87g/cmの塗工白板紙を得た。処理速度は、オンマシンにより抄紙、塗工と一貫して行ったため、抄紙速度および塗工速度と同じく750m/minであった。
【0070】
実施例B2
実施例B1において、上塗り塗工液の顔料を重質炭酸カルシウム(Hydrocarb90、omya社製)100部に変更した以外は、実施例B1と同様にして塗工白板紙を製造した。
【0071】
実施例B3
実施例B1において、青色顔料を0.0001部、紫色顔料を0.007部と変更した以外は、実施例B1と同様にして塗工白板紙を製造した。
比較例B1
実施例において、下塗り塗工液および上塗り塗工液のいずれにおいても、青顔料および紫顔料を添加しなかった以外は、実施例B1と同様に塗工白板紙を得た。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に見られるように、実施例B1では表層に脱墨パルプを用いた白色度の低い原紙であっても、下塗り塗工液および上塗り塗工液中に青顔料および紫顔料を添加して色相を適切な範囲内に調整することにより、塗工層の散乱性を高め、原紙の白色ムラを目立たなくすることができる。一方、下塗り塗工液および上塗り塗工液中に青顔料および紫顔料を添加しない比較例B1では、白色ムラが顕著に発生する。
図1