(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン伝導膜が、前記第1および第2の電極触媒層上の前記電気分解活性領域(ELE1iおよびELE2i)のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別の領域と、前記第1および第2の電極触媒層上の前記エネルギー生成活性領域(EG1iおよびEG2i)のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別の領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の組立体。
前記イオン伝導膜に接触しない前記第1の電極触媒層の表面に接触する第1のガス拡散層(GDL1)と、前記イオン伝導膜に接触しない前記第2の電極触媒層の表面に接触する第2のガス拡散層(GDL2)とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組立体。
前記第1のガス拡散層(GDL1)が、前記第1の電極触媒層上の前記少なくとも1つの電気分解活性領域のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別の電気分解活性領域(GDL1ELEi)と、前記第1の電極触媒層上の前記少なくとも1つのエネルギー生成活性領域のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域(GDL1EGi)とを含むことを特徴とする請求項3に記載の組立体。
前記第2のガス拡散層(GDL2)が、前記第2の電極触媒層上の前記少なくとも1つの電気分解活性領域のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別の電気分解活性領域(GDL2ELEi)と、前記第2の電極触媒層上の前記少なくとも1つのエネルギー生成活性領域のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域(GDL2EGi)とを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の組立体。
前記第1および/または第2のガス拡散層上の前記少なくとも1つの個別の電気分解活性領域が親水性であり、前記第1および/または第2のガス拡散層上の前記少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域が疎水性であることを特徴とする請求項4または5に記載の組立体。
前記第1および第2のバイポーラプレートのそれぞれが、前記第1および第2のガス拡散層上の前記少なくとも1つの電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域のそれぞれと対応して位置合わせされる少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域および少なくとも1つの個別の電気分解活性領域を含むことを特徴とする請求項7に記載の組立体。
前記第1および第2の電極触媒層上、および/または前記イオン伝導膜上、および/または前記第1および第2のガス拡散層上、および/または前記第1および第2のバイポーラプレート上の、それぞれの個別のエネルギー生成活性領域とそれぞれの個別の電気分解活性領域との間に少なくとも1つの境界領域を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組立体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の目的は、可逆式燃料電池用の膜−電極組立体である。2つの電極触媒層の間に配置されたイオン伝導膜を含む組立体であって、2つの電極触媒層のそれぞれは、所望の電気化学反応を促進するための適切な触媒をそれぞれ含み、イオン伝導膜に隣接して配置される組立体を意味するために、「膜電極組立体」という表現が本明細書において使用される。
【0014】
図1を参照すると、本発明の組立体(1)は、第1および第2の表面を有するイオン伝導膜ICMを含む。第1の電極触媒層E1は膜の第1の表面と接触し、第2の電極触媒層E2は膜の第2の表面と接触する。
【0015】
第1の電極触媒層E1は、少なくとも1つの個別の電気分解活性領域(ELE1
i)および少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域(EG1
i)を含む。第2の電極触媒層は、少なくとも1つの個別の電気分解活性領域(ELE2
i)および少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域(EG2
i)を含む。第1の電極触媒層E1上のそれぞれ1つの個別の電気分解活性領域ELE1
iは、第2の電極触媒層E2上のそれぞれ1つの個別の電気分解活性領域ELE2
iと対応して位置合わせされる。第1の電極触媒層E1上のそれぞれ1つの個別のエネルギー生成活性領域EG1
iは、第2の電極触媒層E2上のそれぞれ1つの個別のエネルギー生成活性領域EG2
iと対応して位置合わせされる。
【0016】
本発明の組立体の任意の要素上の個別の領域に言及する場合の「対応して位置合わせされる」という表現は、その領域が同じ大きさおよび形状を有し、イオン伝導膜表面上の対応する領域、またはイオン伝導膜の反対側の同等の要素の表面上の対応する領域と位置合わせされることを示すために本明細書において使用される。
【0017】
図2は、イオン伝導膜(ICM)と、第1および第2の電極触媒層E1およびE2とを含む本発明の組立体(1)の一実施形態を示している。
図2に示される実施形態において、それぞれの電極触媒層が、1つの個別の電気分解活性領域(ELE1およびELE2)および1つのエネルギー生成活性領域(EG1およびEG2)を含む。
【0018】
各電極触媒層(E1およびE2)は、2つ以上の電気分解活性領域ELE
iおよび2つ以上のエネルギー生成活性領域EG
iを含んでもよい。
【0019】
第1の電極触媒層ELE1
i上のそれぞれの電気分解活性領域は、第2の電極触媒層E2上のそれぞれの電気分解活性領域ELE2
iと対応して位置合わせされ、それぞれのエネルギー生成活性領域EG1
iはそれぞれのエネルギー生成活性領域EG2
iと対応して位置合わせされる。
【0020】
E1上の全電気分解活性領域(ΣELE1
i)は、E2上の全電気分解活性領域(ΣELE2
i)と等しく、E1上の全エネルギー生成活性領域(ΣEG1
i)はE2上の全エネルギー生成活性領域(ΣEG2
i)と等しい。したがって、ΣELE1
i=ΣELE2
iおよびΣEG1
i=ΣEG2
iである。
【0021】
個別の1つずつ異なる領域を形成するのであれば、本発明の組立体中のEG
iおよびELE
iのそれぞれの種類の領域の数、大きさ、および形状の制限は存在しない。一般に各領域の大きさは、組立体の大きさに依存するが、典型的には、領域EG
iおよびELE
iは、少なくとも0.01mm
2、さらには少なくとも0.1mm
2、場合により0.5mm
2を超える表面を有する。
【0022】
各種類の領域の数iは、典型的には1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜20の範囲である。領域は任意の形状であってよいが、規則的な形状が好ましい場合がある。
【0023】
電気分解活性領域ELE1(ここでi=1である)の拡張に対応する、すべての個別の電気分解活性領域の合計ΣELE1
i(またはΣELE2
i)は、それぞれの電極触媒層の上のすべての個別のエネルギー生成活性領域の合計ΣEG1
i(またはΣEG2
i)と同じであっても、異なってもよい。
【0024】
水素/酸素燃料電池中に使用するための組立体の場合、典型的にはΣEG1
iはΣELE1
iよりも大きく、したがってΣEG2
iがΣELE2
iよりも大きい。好ましくはΣEG
i/ΣELE
iの比は、1.5:1〜5:1、より好ましくは2:1〜4.5:1、さらにより好ましくは2.5:1〜4:1の範囲である。さらにより好ましい比は2.8:1〜3.5:1であってよい。
【0025】
別の種類の可逆式燃料電池において、各電極触媒層上のエネルギー生成活性領域と電気分解活性領域との比は、異なっていてもよく、通常は、セルの2つの運転モードにおける反応によって発生させる電圧に依存する。
【0026】
それぞれの個別の電気分解活性領域ELE
iはそれぞれのエネルギー生成活性領域EG
iから少なくとも1つの境界領域BR
jによって分離される。境界領域の数jは、エネルギー生成活性領域および電気分解活性領域の数、ならびに電極触媒層上のそれらの配置に依存する。境界領域は、電気分解活性領域と隣接するエネルギー生成活性領域との間の組成または形態の変化から得られる、電極触媒層中の単なる不連続部分であってよい。
【0027】
あるいは、境界領域BR
jは、隣接する領域ELE
iおよびEG
iのいずれかの組成とは異なる組成を特徴とする個別の領域であってよい。境界領域BR
jは、有利には、隣接する領域ELE
iおよびEG
iのそれぞれとは異なる組成を有することができる。境界領域は、隣接する領域とは異なる導電性、たとえば導電性がないまたは無視できる程度であること特徴とすることができる。
【0028】
可逆式燃料電池中に使用できる系の中では、水素/酸素/水系が最も環境的に魅力的である。この系では、エネルギー生成モード(または燃料電池モード)で運転するときに、水を生成する水素および酸素の電気化学反応が使用される。セルを電気分解モードで運転するときに、水の電気分解によって水素および酸素を再生することができる。
【0029】
水素/酸素燃料電池は、水素イオン伝導膜を使用する酸性環境中、およびヒドロキシルイオン伝導膜を使用するアルカリ性環境の両方で運転することができる。
【0030】
本発明の組立体の構成要素を、水素/酸素燃料電池に関連して詳細に説明するが、本発明の組立体が、水素/酸素系可逆式燃料電池における使用に限定されることを意味するものでは決してないことを十分理解されたい。
【0031】
第1の電極触媒層E1
第1の電極触媒層E1は、イオン伝導膜ICMの第1の表面と接触する。第1の電極触媒層E1は、個別の電気分解活性領域ELE1
iおよび個別のエネルギー生成活性領域EG1
iを含む。それぞれの個別の電気分解活性領域ELE1
iは、それぞれのエネルギー生成活性領域EG1
iから少なくとも1つの境界領域BR1
jによって分離される。
【0032】
以下の選択に限定されるものではなく、かつ説明を目的として、以降では、第1の電極触媒層を水素/酸素燃料電池中の酸素電極として説明する。セルを燃料電池モードで運転するときは、酸素がエネルギー生成活性領域EG1
iで還元されて水を生成する。セルを電気分解モードで運転する時は、水が電気分解活性領域ELE1
iで酸化されて酸素を生成する。
【0033】
一般に、酸素の還元に高い活性を有する周知の触媒は、水の酸化および酸素の発生に関しては不十分な触媒となる。したがって、エネルギー生成活性領域EG1
i中に使用される触媒は、通常、酸素電極の電気分解活性領域ELE1
i中に使用される触媒とは異なる。触媒の選択は、セルの運転環境が酸性であるかアルカリ性であるかによっても異なる。
【0034】
セルが酸性環境で運転される場合、エネルギー生成活性領域EG1
iに好適な触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、およびそれらの合金などの金属から選択することができる。触媒活性の金属または金属合金は、ルテニウム、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、鉄、銅、ニッケルなどの他の元素を含有することもできる。金属は、担持されなくても、好適な導電性粒子に担持されてもよい。有利にはカーボンブラック、黒鉛、または活性炭を担体として使用することができる。エネルギー生成活性領域EG1
iに好ましい触媒の1つは、カーボンブラックに担持された白金である。
【0035】
電気分解活性領域ELE1
iに好適な触媒は、カーボンブラックまたは前述の他の任意の好適な担体に任意選択で担持された、たとえばルテニウムおよびイリジウムの酸化物、あるいはイリジウムおよびチタンの酸化物を含む混合金属または混合金属酸化物である。
【0036】
セルがアルカリ性環境で運転される場合、エネルギー生成活性領域EG1
iに好適な触媒は、たとえば担持された銀および担持されていない銀の両方である。電気分解活性領域ELE1
iに好適な触媒は、担持されたまたはされていないニッケルから選択される。好適な担体については前述のとおりである。
【0037】
通常、電極触媒層は、触媒に加えてバインダーを含む。バインダーは、過フッ素化イオン伝導性ポリマーから選択することができ、これはイオン伝導膜の作製にも適している。
【0038】
本発明の組立体の一実施形態において、第1の電極触媒層E1上の領域EG1
iおよびELE1
iは、水親和性もさらに異なっていてよい。水が酸化されて酸素を生成する電気分解活性領域ELE1
iの表面での水の存在を高めるため、親水性表面が好ましい場合がある。他方、電極触媒層で酸素が還元されて生成される水の除去を促進するため、エネルギー生成活性領域EG1
iは好ましくは疎水性である。これらの異なる特性は、たとえば電極触媒層上のそれぞれ個別の領域の形成において異なるバインダーを使用することで得ることができる。
【0039】
第2の電極触媒層E2
第2の電極触媒層E2は、イオン伝導膜ICMの第2の表面と接触する。第2の電極触媒層E2は、個別の電気分解活性領域ELE2
iおよび個別のエネルギー生成活性領域EG2
iを含む。それぞれの個別の電気分解活性領域ELE2
iは、それぞれのエネルギー生成活性領域EG2
iから少なくとも1つの境界領域BR2
jによって分離される。
【0040】
以降、第2の電極触媒層を、水素/酸素燃料電池の水素電極として説明する。したがって、セルが燃料電池モードで運転される場合、水素はエネルギー生成活性領域EG2
iで酸化されて水素イオンを生成する。セルが電気分解モードで運転される場合は、水素イオンは電気分解活性領域ELE2
iで還元されて水素を生成する。
【0041】
酸性環境で運転される水素/酸素燃料電池中のエネルギー生成活性領域EG2
iに好適な触媒は、たとえば白金、あるいはロジウムおよびルテニウムの酸化物の等モル混合物である。前記触媒は、担持されていなくても、前述のように担持されていてもよい。さらに、水素がエネルギー生成活性領域EG2
iに到達しやすくするために、前記領域のガス透過性を高くすることができる。電気分解活性領域ELE2
iに好適な触媒は、カーボンブラックに担持された白金である。
【0042】
水素/酸素燃料電池がアルカリ性環境で運転される場合、エネルギー生成活性領域EG2
iおよび電気分解活性領域ELE2
iの両方に好適な触媒は、担持されていない、または前述のように担持されたニッケルである。
【0043】
第2の電極触媒層E2上の領域EG2
iおよびELE2
iは、前述のような水親和性またはガス透過性などの別の性質もさらに異なっていてよい。これらの異なる性質は、たとえば電極触媒層の異なる領域の形成に異なるバインダーまたは添加剤を使用することで得ることができる。
【0044】
イオン伝導膜
電気化学セル中の電解質の役割は、有利には、活性種が直接反応することなく、セルのそれぞれの側で中性のバランスを維持するために、セルの一方の側から他方の側へイオンを通過させることである。電解質、または好ましくはイオン伝導膜は、事実上カチオン性またはアニオン性のいずれであってもよい。
【0045】
酸性環境で運転される水素/酸素燃料電池の第1の設計において、イオン伝導膜は、水素イオンを透過させることができるが、同時にセルの一方の側から他方の側への水素および酸素の透過に対しては障壁となる必要がある。したがって、このようなセルにおいて、電解質は事実上アニオン性である。
【0046】
アルカリ性環境で運転される水素/酸素燃料電池の第2の設計において、イオン伝導膜は、ヒドロキシルイオンは透過できるが、同時に反応物質に対しては障壁となる必要がある。したがって、このようなセルにおいて、電解質は事実上カチオン性である。
【0047】
典型的にはイオン伝導膜は、イオン伝導性ポリマー材料を含むが、液体またはゲルでできたイオン伝導膜を本発明の組立体中に使用することもできる。
【0048】
任意の好適なイオン伝導性ポリマー材料を本発明の組立体中に使用することができる。一般に、好ましくはイオン性基を含む過フッ素化ポリマーが、耐薬品性および耐熱性であるため、燃料電池中のイオン伝導性材料として使用される。
【0049】
アニオン性ポリマー材料は、一般に、テトラフルオロエチレンと、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン交換基を含む1種類以上のフッ素化モノマーとのコポリマーから選択される。より一般的にはアニオン性ポリマー材料は、テトラフルオロエチレンと、F
2C=CF−O−CF
2−CF
2−SO
2F、F
2C=CF−O−[CF
2−CXF−O]
n−CF
2−CF
2−SO
2F(ここでX=Cl、FまたはCF
3であり、n=1〜10である)、F
2C=CF−O−CF
2−CF
2−CF
2−SO
2F、F
2C=CF−O−CF
2−CF
2−CF
2−CF
2−SO
2F、F
2C=CF−Ar−SO
2F(ここでArはアリール環である)などのスルホン酸の前駆体基を含む1種類以上のフッ素化モノマーとのコポリマーから選択することができる。好適な材料は、たとえばE.I.DuPontよりNafion(登録商標)の商品名で販売される材料、Solvay SolexisよりAquivion(登録商標)の商品名、または旭硝子株式会社よりフレミオン(登録商標)の商品名で販売される材料である。スルホン化ポリエーテルケトン類またはアリールケトン類、あるいは酸ドープされたポリベンゾイミダゾール類などのフッ素を含有しないイオン伝導性ポリマー材料を使用することもできる。
【0050】
カチオン性ポリマー材料は、一般に、アミノイオン交換基またはアクリル酸イオン交換基を含むポリマー、好ましくはフッ素化ポリマーから選択される。
【0051】
イオン伝導性ポリマー材料は、典型的には1700g/eq以下、より典型的には1500g/eq以下、より典型的には1200g/eq以下、最も典型的には1000g/eq以下の当量を有する。イオン伝導性ポリマー材料は、典型的には少なくとも380g/eq、好ましくは少なくとも500g/eq、より好ましくは少なくとも600g/eqの当量を有する。
【0052】
欧州特許出願公開第A−1323744号明細書、欧州特許出願公開第A−1179548号明細書、欧州特許出願公開第A−1167400号明細書、欧州特許出願公開第A−1589062号明細書、欧州特許出願公開第A−1702670号明細書、欧州特許出願公開第A−1702688号明細書には、本発明の組立体中での使用に好適なイオン伝導性ポリマー材料およびイオン伝導膜が開示されている。
【0053】
イオン伝導膜は、ポリマー電解質からなってもよく、好適な多孔質担体に含浸またはコーティングしたポリマー電解質を含んでもよい。たとえば、米国特許第5635041号明細書には、発泡ポリテトラフルオロエチレン支持体を含む含浸膜が記載されている。含浸膜は米国特許第4849311号明細書にも記載されている。
【0054】
本発明の組立体の第1の実施形態において、イオン伝導膜は、全体的に同じ組成を有する。
【0055】
第2の実施形態において、イオン伝導膜は、典型的には、イオン伝導膜の第1および第2の表面上の電極触媒層E1およびE2上のそれぞれの電気分解活性領域の組(ELE1
iおよびELE2
i)およびそれぞれのエネルギー生成活性領域の組(EG1
iおよびEG2
i)と対応して位置合わせされた個別の領域に分割される。これらの領域は、同じ組成を有することも異なる組成を有することもできる。
【0056】
図3を参照すると、電極触媒層E1およびE2上の電気分解活性領域に接触するイオン伝導膜の領域がICM
ELEと示されており、一方、電極触媒層E1およびE2上のエネルギー生成活性領域に接触するイオン伝導膜の領域がICM
EGと示されている。イオン伝導膜上の領域ICM
ELEおよびICM
EGの数は、電極触媒層E1およびE2中の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域の数に対応しているものと理解されたい。
【0057】
たとえば、異なる当量のイオン伝導性ポリマー材料を、イオン伝導膜の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域ICM
ELEiおよびICM
EGi中に使用することができる。
【0058】
さらなる一実施形態において、それぞれの電気分解活性領域ICM
ELEiは、それぞれのエネルギー生成活性領域ICM
EGiから境界領域ICM
BRjによって分離され、この境界領域は、典型的には電極触媒層上のそれぞれの電気分解活性領域およびそれぞれのエネルギー生成活性領域の間の境界領域(それぞれBR1
jおよびBR2
j)に対応している。
【0059】
境界領域ICM
BRjは、電気分解活性領域と隣接する生成活性領域との間の組成または形態の変化によって得られる、イオン伝導膜の単なる不連続部分であってよい。あるいは、境界領域ICM
BRjは、隣接する領域ICM
ELEiおよびICM
EGiのいずれかの組成と異なる組成を特徴とする個別の領域であってよい。
【0060】
境界領域ICM
BRjは、有利には、領域ICM
ELEiおよびICM
EGiのそれぞれとは異なる組成を有することができる。境界領域は、隣接する領域とは異なるイオン導電性、たとえばイオン導電性がないまたは無視できるほどであることを特徴とすることができる。あるいは、境界領域は、隣接する領域とは異なる水親和性を有することができる。さらにあるいは、境界領域は、異なるガス透過性を有することができる。たとえば、境界領域ICM
BRjは、隣接する領域ICM
ELEiおよびICM
EGiのそれぞれよりも低いイオン伝導性および低い水吸着性を特徴とすることができる。
【0061】
ガス拡散層
典型的な燃料電池設計の1つにおいて、気体反応物質(たとえば酸素および水素)を電極触媒層まで送り、同時に燃料電池の残りの構成要素、たとえばバイポーラプレートと電気的に接触させるために、ガス拡散層が、それぞれの電極触媒層に接触して配置される。ガス拡散層は、気体反応物質を通るようにするため通常は多孔質であり、導電性を付与するための導電性粒子を含む。
【0062】
本発明の組立体は、イオン伝導膜とは接触していない電極触媒層E1の表面と接触する第1のガス拡散層GDL1、およびイオン伝導膜とは接触していない電極触媒層E2の表面と接触する第2のガス拡散層GDL2をさらに含むことができる。
【0063】
ガス拡散層GDL1およびGDL2は、同じ組成および構造を有しても異なってもよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、電極触媒層E1と接触するガス拡散層GDL1は、典型的には、第1の電極触媒層E1上のそれぞれの電気分解活性領域と大きさが対応し位置合わせされた個別の領域(GDL1
ELEi)、およびそれぞれのエネルギー生成活性領域と大きさが対応し位置合わせされた個別の領域(GDL1
EGi)に分割される。
【0065】
図4を参照すると、それぞれの電極触媒層上の電気分解活性領域と接触するガス拡散層の領域がGDL
ELEと示されており、その一方、それぞれの電極触媒層上のエネルギー生成活性領域と接触するガス拡散層の領域がGDL
EGと示されている。存在する場合、ガス拡散層上の領域GDL
ELEおよびGDL
EGの数は、電気活性層上の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域の数に対応することを理解されたい。
【0066】
それぞれの電気分解活性領域GDL
ELEiは、それぞれのエネルギー生成活性領域GDL
EGiから境界領域GDL
BRjによって分離され、この境界領域は、典型的には、それぞれの電気活性層上のそれぞれの電気分解活性領域とそれぞれのエネルギー生成活性領域との間の境界領域(それぞれBR1
jおよびBR2
j)に対応する。
【0067】
境界領域GDL
BRjは、電気分解活性領域と隣接する生成活性領域との間の組成または形態の変化から得られる、ガス拡散層中の単なる不連続部分であってよい。あるいは、境界領域GDL
BRjは、隣接する領域GDL
ELEiおよびGDL
EGiのいずれの組成とも異なる組成を特徴とする個別の領域であってよい。
【0068】
境界領域GDL
BRjは、有利には領域GDL
ELEiおよびGDL
EGiのそれぞれとは異なる組成を有することができる。境界領域は、隣接する領域とは異なる導電性、たとえば導電性がないまたは無視できる程度の導電率であることを特徴とすることができる。あるいは、境界領域は、隣接する領域とは異なる水親和性を有することができる。さらにあるいは、境界領域は、異なるガス透過性を有することができる。たとえば、境界領域GDL
BRjは、隣接する領域GDL
ELEiおよびGDL
EGiのそれぞれと比べて、導電性がないまたは無視できる程度の導電性であることを特徴とすることができる。
【0069】
図4に示される特定の実施形態において、ガス拡散層GDL1は、境界領域GDL1
BRによって分離された電気分解活性領域GDL1
ELEとエネルギー生成活性領域GDL1
EGとを含む。
【0070】
水の電気分解活性領域ELE1への送達を改善するため、領域GDL1
ELEは好ましくは親水性である。ガス拡散層GDL1
EG上のエネルギー生成活性領域は、有利には疎水性であってよい。
【0071】
同様に、ガス拡散層GDL2は、境界領域GDL2
BRによって分離された電気分解活性領域GDL2
ELEとエネルギー生成活性領域GDL2
EGとを含む。領域GDL2
ELEおよびGDL2
EGは、同じまたは異なる組成および/または性質を有することができる。電気分解活性領域GDL2
ELEは親水性であってよく、ガス拡散層GDL2
EG上のエネルギー生成活性領域は有利には疎水性であってよい。
【0072】
エネルギー生成活性領域EG2の表面に向かって水素が流れるようにするため、典型的にはGDL2
EGは、GDL2
ELEよりも高いガス輸送特性を有するように設けられる。
【0073】
組立体の作製
種々の従来方法によって、電極触媒層E1およびE2を、イオン伝導膜またはガス拡散層GDL1およびGDL2に取り付けることができる。
【0074】
それぞれの電気分解活性領域ELE
iおよびそれぞれのエネルギー生成活性領域EG
iに異なる組成物を使用して、標準的なコーティングまたは印刷技術によって、イオン伝導膜の第1および第2の表面に、電極触媒層E1およびE2を取り付けることができる。
【0075】
あるいは、それぞれの電極触媒層E1およびE2は、それぞれの電気分解活性領域ELE
iおよびそれぞれのエネルギー生成活性領域EG
iに異なる組成物を使用して、最初に対応するガス拡散層(GDL1またはGDL2)の表面に取り付け、次に、周知のホットプレスまたは積層技術を使用して、イオン伝導膜の第1または第2の表面に接触させて配置することができる。
【0076】
個別の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域ICM
ELEおよびICM
EGを有するイオン伝導膜の製造には、いくつかの方法を使用することができる。たとえば、多孔質支持体上に含浸されたイオン伝導性ポリマーを含む膜の場合、多孔質支持体の異なる領域に含浸させるために、異なるイオン伝導性ポリマーの溶液または分散液を使用することができる。
【0077】
あるいは、イオン伝導膜がイオン伝導性ポリマーの押出フィルムでできている場合、並列した個別の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域は、米国特許第3807918号明細書に記載されるものなどの適切な押出ダイから異なる種類のイオン伝導性ポリマーを押し出すことによって直接得ることができる。
【0078】
個別の電気分解活性領域およびエネルギー生成活性領域を含むガス拡散層は、たとえば、疎水性および親水性のガス拡散材料の交互のストリップを、電極触媒がコーティングされた膜に接着して、ストリップパターンを形成することによって得ることができる。異なる性質を有するガス拡散材料の交互の帯を、共通の基材上に堆積することができる。
【0079】
あるいは、組立体のすべてのエネルギー生成活性部分を含む部分組立体、すなわちEG1/ICM
EG/EG2または任意選択でGDL1
EG/EG1/ICM
EG/EG2/GDL2
EGと、組立体のすべての電気分解活性部分を含む部分組立体、すなわちELE1/ICM
ELE/ELE1またはGDL1
ELE/ELE1/ICM
ELE/ELE2/GDL2
ELEとを別々に製造し、次に好適な接着剤またはガスケットによって互いに組み合わせることができる。
【0080】
ガス拡散層GDL1およびGDL2の間に挟まれた膜−電極組立体(1)を含む本発明の組立体は、
図5に示されるように、それぞれの側の上に配置され、第1および第2のガス拡散層のぞれぞれと接触する、第1および第2のバイポーラプレート(BP1およびBP2)をさらに含むことができる。
【0081】
バイポーラプレートは、好適には、セル反応物質が不浸透性である導電性材料、たとえば黒鉛または金属でできた成形シートである。バイポーラプレートは、典型的には、反応物質を電極触媒層に分配するための溝および/またはチャネルが設けられる。
【0082】
第1および第2のバイポーラプレートは、それぞれ、少なくとも1つの個別の電気分解活性領域(BP
ELEi)および少なくとも1つの個別のエネルギー生成活性領域(BP
EGi)を含むことができ、これらのそれぞれは、第1および第2のガス拡散層上のそれぞれの電気分解活性領域(GDL
ELEi)およびそれぞれのエネルギー生成活性領域(GDL
EGi)と大きさが対応して、位置合わせされる。
【0083】
膜−電極組立体、ガス拡散層、およびバイポーラプレートを含む組立体は、通常、燃料電池スタックと呼ばれる。好ましくは本発明の燃料電池スタックは1つのブロックである。
【0084】
当該技術分野において従来知られているように、ガスケット、シールなどのさらなる要素が本発明の組立体またはスタックの中に存在してもよい。
【0085】
本発明の組立体は、可逆式燃料電池中での使用に適している。
【0086】
平面の組立体として図面を参照しながら本発明の組立体を説明してきたが、他の構成、特に組立体の個別のエネルギー生成活性部分および電気分解活性部分が円筒形組立体の周囲に配置される構成も可能であり、本発明の特許請求の範囲内となる。
【0087】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語が不明瞭となる程度に本出願の説明と一致しない場合は、本明細書の説明が優先されるものとする。