特許第5809283号(P5809283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809283デジタルネットワークを介した低遅延の信号伝達
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809283
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】デジタルネットワークを介した低遅延の信号伝達
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20151021BHJP
   G01R 33/28 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
   G01N24/02 Z
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-537253(P2013-537253)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2013-544586(P2013-544586A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】IB2011054947
(87)【国際公開番号】WO2012063183
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/410,995
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン リーレ フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】ルフェン ヘンリクス ヒェラルドゥス
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/155703(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/100444(WO,A1)
【文献】 特開2007−88709(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/170667(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/238286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断スキャナにおいて如何なる安全ではない又は危険な状態も検出し、前記安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを生じさせる第1の制御器、並びに
デジタルプロトコルを用いて前記安全/緊急データから安全/緊急信号を生じさせ、前記安全/緊急信号をローカルのデジタルネットワークを介して伝達する、通信ユニット
を有する画像診断システムにおいて、
前記安全/緊急信号を生じさせる前記通信ユニットは、前記ローカルのデジタルネットワークを介して正常なパケット配信を先取り、前記安全/緊急信号を前記ローカルのデジタルネットワークに挿入する、画像診断システム。
【請求項2】
前記デジタルプロトコルは、3つのレベルのデータ転送、つまり特徴レベル、符号レベル及びパケットレベルを含むシリアル装置間におけるパケット配信のためのプロトコルを規定する、請求項1に記載の画像診断システム。
【請求項3】
前記通信ユニットは、他の未使用の符号コードを用いて、前記安全/緊急データを示すカスタム符号を挿入するために、前記デジタルプロトコルを用いて前記安全/緊急信号を生じさせる、請求項1又は2に記載の画像診断システム。
【請求項4】
前記カスタム符号は、進行中の何れかのパケット転送を先取りする、請求項3に記載の画像診断システム。
【請求項5】
前記通信ユニットは、ファームウェアを含み、前記安全/緊急信号を生じさせるために、前記画像診断システムの機能とは関係なく動作する、請求項1乃至の何れか一項に記載の画像診断システム。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載の画像診断システムにおいて、前記画像診断システムは、RF送信器及びRF受信器を持つ磁気共鳴システムを含む、並びに前記安全ではない又は危険な状態は、前記RF送信器及びRF送信受信器が同時にオンである又は接続された状態であることを含む、画像診断システム。
【請求項7】
前記ローカルのデジタルネットワークは光ファイバーネットワークを含み、前記光ファイバーネットワークを介して前記安全/緊急信号が光学的に伝達される、請求項1乃至の何れか一項に記載の画像診断システム。
【請求項8】
前記安全/緊急信号の伝達は、CRCエラーを検出する部分を含んでいる、請求項1乃至の何れか一項に記載の画像診断システム。
【請求項9】
画像診断システムにおいて安全/緊急データを伝達する方法において、
前記画像診断システムにおいて安全ではない又は危険な状態を検出するステップ、
前記安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを発生させるステップ、
デジタルプロトコルを用いて、前記安全/緊急データから安全/緊急信号を生じさせるステップ、及び
前記安全/緊急信号をローカルのデジタルネットワークを介して送信するステップ
を有する方法であり、前記安全/緊急信号の伝達は、前記ローカルのデジタルネットワークを介して正常なパケット配信を先取りする、
方法。
【請求項10】
前記デジタルプロトコルは、3つのレベルのデータ転送、つまり特徴レベル、符号レベル及びパケットレベルを含むシリアル装置間におけるパケット配信のためのプロトコルを規定する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記安全/緊急信号は、カスタム符号部分、確認/要求部分、安全/緊急データ及びエラーチェック部分を含んでいる、請求項9及び10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記デジタルプロトコルは、前記安全/緊急信号を特定するための標準的なネットワークプロトコルの符号とは異なるカスタム符号を備える前記標準的なネットワークプロトコルである、請求項9乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記画像診断システムは、RF送信器及びRF受信器を持つ磁気共鳴システムを含み、前記安全ではない又は危険な状態は、前記RF送信器及びRF受信器が同時にオンである又は接続された状態であることを含む、請求項9乃至12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
撮像するボアを規定するように構成される主磁石、
前記ボア内に及び前記ボアに沿って被験者を支持するように構成される支持体、
前記撮像するボアに磁場勾配を作るように構成される勾配コイル、
RFパルスを前記撮像するボア内に送信するように構成されるRF送信器コイル、
誘導されるRFパルスを受信するように構成されるRF受信器コイル、並びに
請求項9乃至13の何れか一項に記載の方法を行うための1つ以上の処理器
を有する磁気共鳴撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像診断技術に関する。磁気共鳴撮像(MRI)システムにおけるデジタルネットワークを介した安全及び緊急(safety and emergency)情報の伝達に特に応用され、これらを特に参照して説明される。しかしながら、他の撮像装置も応用され、上述した応用に必ずしも限定されないことを理解すべきである。
【背景技術】
【0002】
現在、磁気共鳴撮像システムは、安全及び緊急情報を伝達するために、バックプレーンバス(backplane bus)を使用している。このバックプレーンバスは、MRIシステムの様々な安全及びインターロック機構に安全及び緊急情報を伝達するための専用の信号線からなるアレイを含んでいる。安全及び緊急情報は、例えばRF送信/受信のスイッチの状態を制御するのに重要であるが、他のシステムの状態にも応用可能であり、並びに勾配増幅器及び冷却システム等を含むMRIシステムにおいて対応する装置を制御するのに重要である。
【0003】
例えば、RF送信器が活性化し、磁気共鳴(MR)撮像シーケンス中にRFパルスを送信しようとする前に、RF受信器がオフ又は切断された状態であることを確認しなければならない。RF増幅器が比較的に弱い共鳴信号を受信するように構成されるとき、比較的に高出力のパルスであるRFパルスを送信することがRF受信器を損傷することがある。MR撮像シーケンスにおいてパルスが印加される及びエコーが受信される速度のために、この情報は、RF増幅器及びRF受信器が同時にオンではない又は接続された状態ではないことを保証するために、非常に低い遅延で、及び通常のソフトウェアの装置制御機能から独立して伝達されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
専用の信号線は、様々な安全及びインターロック機構への安全及び緊急情報の独立した低遅延の伝達を与えることにより、MRIシステムの安全な動作を保証する。これら専用の信号線がこれらの安全要件を満たすための解決法を提供したとしても、増大するMRIシステムの複雑さは、安全及び緊急情報を通信するためのバックプレーンバス及び/又は信号線の実施の費用的及び物理的な難しさを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、上述した問題及びその他を克服する安全及び緊急情報を伝達するための新しい及び改善されたシステム並びに方法を提供する。
【0006】
ある態様に従って画像診断システムが提供される。第1の制御器は、診断スキャナにおいて如何なる安全ではない又は危険な状態も検出し、これら安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを生じさせる。通信ユニットは、デジタルプロトコルを用いて前記安全/緊急データから安全/緊急信号を生じさせ、ローカルのデジタルネットワークを介してこの安全/緊急信号を伝達する。
【0007】
画像診断システムにおいて安全/緊急データを伝達する方法が提供される。安全ではない又は危険な状態は、前記画像診断システムにおいて検出される。これら安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データが生じる。安全/緊急信号は、デジタルプロトコルを用いて前記安全/緊急データから生じる。この安全/緊急信号はローカルのデジタルネットワーク33を介して送信される。
【0008】
1つの利点は、安全及び緊急情報の低遅延の送信にある。
【0009】
もう1つの利点は、安全及び緊急情報の独立した伝達にある。
【0010】
もう1つの利点は、安全及び緊急情報を伝達することの費用及び複雑さを減少することにある。
【0011】
本発明のさらに他の利点は、以下の詳細な説明を読み、理解すると、当業者に明らかとなるだろう。
【0012】
本発明は、様々な構成要素及びこれら構成要素の配列、並びに様々なステップ及びこれらステップの配列の形をとってもよい。図面は好ましい実施例を説明することだけを目的とし、本発明を限定するとは考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による撮像システムの概略図。
図2】本発明による安全/緊急信号の概略図。
図3】本発明による安全/緊急信号のエラーの無い送信のためのロジックの概略図。
図4】本発明による安全/緊急信号を送信する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、磁気共鳴撮像(MRI)システム10は、検査領域14を通る空間及び時間的に一様な磁場Bを生じさせる主磁石12を含む。この主磁石12は、環状若しくはボア型の磁石、C形状の開放型磁石又は他の形式の開放型磁石等とすることもできる。
【0015】
主磁石12に隣接して置かれる勾配磁場コイル16は、磁気共鳴信号を空間符号化する又は磁化を駄目にする磁場勾配をもたらす等のために、磁場Bに対して選択した軸に沿って磁場勾配を生じさせるのに役立つ。勾配磁場コイル16は、3つの直交方向、一般に長手方向又はz方向、横方向又はx方向及び垂直方向又はy方向に磁場勾配を生成するように構成されるコイルセグメントを含んでもよい。勾配制御器20により制御される勾配増幅ユニット18は、前記3つの直交方向に磁場勾配を生じさせるための複数の増幅器を含んでいる。各々の勾配増幅器が対応する勾配磁場コイル16を励起し、磁場勾配を生成する。冷却ユニット制御器24により制御される冷却ユニット22は、一連の冷却ダクト、冷却機、水冷式冷凍凝縮器及び液体冷却回路等によって前記勾配増幅器及び勾配磁場コイルを冷却する。
【0016】
前記システム10は、検査領域14に又はこの領域に隣接して置かれる無線周波数(RF)コイル組立体26を含む。患者を取り囲んでいることが図示されていたとしても、頭部コイル、柔軟及び硬質の表面コイル、並びに患者の上面及び側面に取り付けられる、並びに胴体又は肢部の周りに巻かれる等の他のコイルも考えられる。説明を明瞭にするために全身RFコイル組立体26だけが図示されていたとしても、送信用の全身コイル及び複数の受信用RFコイル組立体が考えられる。前記コイル組立体26は、動作中に1つ以上の核種、例えばH、13C、31P、23Na又は19F等に磁気共鳴を励起するためのRF場を単独で若しくは集合的に生じさせる多重のコイル要素を含む。RFコイル組立体26は単独で若しくは集合的に、すなわち1つ若しくはそれ以上の受信コイル(図示せず)で、撮像領域から放射する磁気共鳴信号を検出するのに役立つ。
【0017】
被験者28の磁気共鳴データを取得するために、被験者は患者支持体により検査領域14の内側に位置決められ、関心領域は好ましくは主磁場の医療中心(isocenter)に又はその近くにある。走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介して勾配制御器20を制御し、選択した磁気共鳴撮像又は分光シーケンスに適切であるように、
勾配増幅器18から選択した勾配磁場のパルスを発生させ、勾配磁場コイル16を介して撮像領域を横切る前記選択した勾配磁場のパルスを印加する。走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介して前記冷却ユニット制御器24も制御して、勾配増幅器及び勾配磁場コイル16を冷却する。走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介して、RF制御器34により1つ以上のRF送信器32も制御し、磁気共鳴励起及び操作Bパルスを発生させるための固有のRF信号を発生させる。
【0018】
走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介してRF制御器34によりRF受信器38も制御し、被験者から誘発される磁気共鳴信号を受信する。同じコイルが送信及び受信する実施例において、送信/受信スイッチ36は、RF送信器32からの信号の送信と、RF受信器38への信号の受信との間で導体を切り替えるのに役立つ。分離した受信コイルを用いた実施例において、走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介して前記送信/受信スイッチ36を制御し、受信モードとデチューン(detuned)モードとを切り替えるために受信コイル及び/又は受信器38の間を切り替える。RF受信器38からの受信データは、デジタルネットワーク33を介して伝達され、一時的に画像メモリ40に記憶され、磁気共鳴画像、分光器又は他の画像処理器42により処理される。磁気共鳴データ処理器は、従来知られるような様々な機能を行うことができ、これらの機能は、画像再構成(MRI)、磁気共鳴分光(MRS)及びカテーテル又は侵襲器具の位置特定等を含んでいる。再構成された磁気共鳴画像、分光器の測定値、侵襲器具の位置特定情報及び他の処理されたMRデータは、例えば医療施設の患者アーカイブのようなメモリに記憶される。GUI(graphic user interface)又は表示装置44は、医師がデジタルネットワーク33を介して走査制御器30を制御し、走査シーケンス及びプロトコルを選択する、並びにMRデータ又は再構成されたMR画像を表示する等に使用されることができるユーザ入力装置を含む。
【0019】
走査制御器30は、MRIシステムにおいて又はMR撮像シーケンス中に、安全ではない又は危険な状態を検出することに応答して、安全/緊急データを生じさせる安全/緊急ユニット46も含む。この安全/緊急ユニット46は、MRIシステム10の動作を観察及び評価して、何か安全ではない又は危険な状態が存在しているかを判断する。ある実施例において、走査制御器30は、RF制御器34、勾配制御器20、冷却ユニット制御器24若しくは他のシステムの構成要素からデジタルネットワーク33を介して受信した、動作又は安全/緊急データによりMRIシステム10の動作を観察する。走査制御器30は、デジタルネットワーク33を介して前記安全/緊急データを受信するための通信ユニット48を含む。前記安全ではない又は危険な状態は、RF送信器32及びRF受信器38が同時にオン又は接続状態である、冷却ユニット22が不調である及び勾配磁場コイルが過熱し過ぎる等を含む。安全ではない又は危険な状態を検出することに応答して、走査制御器30の安全/緊急ユニット46は、前記安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを生じさせ、この安全/緊急データを走査制御器30にある通信ユニット48に伝達する。この通信ユニット48は、安全/緊急データから安全/緊急信号を生じさせ、例えば1つ以上の光ファイバーネットワーク、イーサーネット、IEEE802.11及び他のインターネットプロトコル(IP)中央アクセスネットワーク(RapidIO、GPRS(General Packet Radio Service)、CDMA2000、ワイヤレスLAN、モバイルWiMAX)等のようなデジタルネットワーク33を介して、RF制御器34、勾配制御器20、冷却ユニット制御器24及び他のシステムの構成要素にある通信ユニット52、54、56に前記安全/緊急信号を伝達する。
【0020】
走査制御器30にある通信ユニット48、及び前記通信ユニットは、例えばRapidIOシリアルプロトコルのような業界標準のデジタルプロトコルを利用して、ローカルのデジタルネットワーク33を介して前記安全/緊急信号を送信する。好ましくは、前記標準のプロトコルは、符号の帯域外搬送に利用可能なコードを持つパケットベースのデジタルネットワークプロトコルの拡張である。一般に、このようなデジタルネットワークプロトコルは、特徴レベル、符号レベル及びパケットレベルを含む3つのレベルのデータ転送を持っている。前記通信ユニット48、50、52、54、65は、前記標準のデジタルプロトコルを使用して前記安全/緊急信号を生じさせ、安全/緊急データを示す、符号レベルの未使用部分に新しく規定した又はカスタムの符号を挿入する。これら安全/緊急信号は、安全/緊急信号を受信することに応答して、走査制御器30、RF制御器34、T/Rスイッチ36、勾配制御器20、冷却ユニット制御器24及び他の構成要素がMRIシステム10の対応する装置を制御して、前記安全ではない又は危険な状態に適切に応答するような新しく規定した符号を含む。例えば、安全/緊急信号がRF送信器及びRF受信器が同時にオン又は接続状態であることを示す場合、RF制御器又はT/Rスイッチは、自発的に又は走査制御器30の制御下で、RF送信器又はRF受信器の何れか一方を切断する。冷却ユニットが不調である又は勾配増幅器が過熱し過ぎていることを示す安全/緊急信号を受信することに応答して、前記勾配制御器は、勾配増幅器を不能にする。
【0021】
もう1つの実施例において、走査制御器30は、安全/緊急ユニット58を制御して、MRIシステム10において又はMR撮像シーケンス中に検出される安全ではない又は危険な状態を示す構成要素の状態の信号を通信ユニット50−56から受信することに応答して、安全/緊急データを生じさせる。この安全/緊急ユニット58は、MRIシステム10の動作を観察及び評価して、何か安全ではない又は危険な状態が検出されるかを判断する。安全ではない又は危険な状態を判断することに応答して、安全/緊急ユニット58は、前記安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを生じさせる。安全/緊急ユニット58は、この安全/緊急ユニット58にある通信ユニット60に前記安全/緊急データを伝達する。通信ユニット60は、受信した安全/緊急データから安全/緊急信号を生じさせ、ローカルのデジタルネットワーク33を介してこの安全/緊急信号を伝達する。
【0022】
勾配制御器20、冷却ユニット制御器24、走査制御器30、RF制御器34、画像処理器42及び安全/緊急ユニット58も処理器62、64、66、例えば以下にさらに詳細に述べられる動作を行うためのMRIを制御するソフトウェアを実施するように構成されるマイクロ処理器又は他のソフトウェア制御の装置を含む。一般に、MRIを制御するソフトウェアは、有形のメモリ40、68、70又は処理器により実施するためのコンピュータ読取可能媒体を用いて担持される。コンピュータ読取可能媒体の形式は、例えばハードディスクドライブ、CD−ROM及びDVD−ROM等のようなメモリを含んでいる。前記処理器の他の実施も考えられる。ディスプレイ制御器、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA及びマイクロ制御器は、前記処理器の機能を提供するために実施される他の形式の構成要素の実施例である。実施例は、処理器、ハードウェア又はそれらの何らかの組み合わせにより実施するためのソフトウェアを用いて実施されてもよい。
【0023】
上述したように、前記システムは、業界標準のデジタルプロトコル、好ましくはRapidIOを利用して、前記ローカルのデジタルネットワーク33を介してカスタムの制御符号を含む信号を送信する。好ましくは、この標準のデジタルプロトコルは、シリアル接続する光学媒体を利用し、各方向における一方向性の差動信号を用いて装置間における全二重シリアル物理層インタフェースを含む。前記標準とは、パケット及び制御符号送信を含むシリアル装置間のパケット配信、フロー制御、エラー管理確認並びに他の装置同士の通信(device to device)機能に対するプロトコルを規定する。前記シリアル装置は、前記標準のデジタルプロトコルを生じさせる及び解釈するために、物理トランスポート層の実施に関するロジックを含む。この標準のデジタルプロトコルは、低遅延及び単独での動作の安全要件を満たすように設計される一方、ローカルのデジタルネットワーク33にある他のプロトコルと共存する、故に専用ケーブルの解決法を取り除くことを可能にする。上述したように、前記プロトコルは、符号の帯域外搬送に利用可能なコードを持つパケットベースのデジタルネットワークプロトコルの拡張である。前記標準のデジタルプロトコルは一般に、3つのレベルのデータ転送、特徴、符号及びパケットを含んでいる。1つの上記プロトコルは、業界標準のRapidIOプロトコルである。特徴レベルは一般に、8−10ビットのコード化を含み、ローカルのデジタルネットワーク33により送信される"1"及び"0"を含む。符号レベルは一般に32又は40ビットを含み、プロトコル維持情報、リンクユーティリティ機能、パケット確認及びパケット描写を搬送するのに使用される。パケットレベルは、従来のデジタル情報のパケットを搬送する。
【0024】
図2を参照すると、カスタムの標準のデジタルプロトコルの符号を介して実施された安全/緊急信号が説明される。この標準のデジタルプロトコルは、多数の既定した符号コードを持っている。安全/緊急信号98は、標準のデジタルプロトコルの標準の符号コードとは異なる未使用の符号コード100を利用して、限られた数(例えば16)のバイナリ信号値102を転送する。このような符号の転送遅延は、符号の大きさ(RapidIOに対し32又は40ビット)及びネットワークのビットレートにより制限される。最小の遅延に対し、前記符号は進行中の何れかのパケット転送を先取り(pre-empt)する。これは、前記遅延が他のネットワークの使用に無関係であることを保証している。未使用の符号コード100は、MRIシステムにおいて又はMR撮像シーケンス中に検出される安全ではない又は危険な状態の表示のために規定される。新しく規定した又はカスタムの符号コード100を生じさせる及び解釈するために、MRIシステムにある様々な通信ユニット48−56及び装置の物理トランスポート層の実施にロジックが挿入される。
【0025】
前記安全/緊急信号における信号値102は、かなり低い遅延(約マイクロ秒)で送信されるデジタル情報の一連の単一ビットである。前記信号値102は、安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データを含む。この信号値102は、各々の安全ではない又は危険な状態が通信ユニットにより解釈される個別の値を与えられるように規定される。新しく規定した又はカスタムの信号値102を生じさせる及び解釈するために、MRIシステムにある様々な通信ユニット48−56及び装置の物理トランスポート層の実施にロジックが挿入される。例えば、MRIシステムにある又はMR撮像シーケンス中に安全ではない又は危険な状態を示す前記新しく規定した符号コードを通信ユニットが受信するとき、この通信ユニットは、対応する制御器にその後伝達される、どの安全ではない又は危険な状態が存在するかを判断するために、前記信号値を解釈する。一般的に割り当てられる信号のリストが以下に示される。
【表1】
【0026】
ローカルのデジタルネットワークは一般に、各々の個別のリンクにわたり、通信ユニット48、60から1つの方向に16個の信号、及び通信ユニット50−56からもう1つの方向に16個の信号を送信することができる。規定した16個の信号値102は、単一の符号コード100により同時に転送される。共通の符号コードは、緊急通信を特定するのに使用される又は複数の符号コードは、異なる形式の緊急通信を特定するのに使用されることができる。各々のリンクにわたって、16個のこれらの信号値を同時に送ることができる。信号送信は、新しく規定した符号コード100を使用して実施される。前記符号は、非同期で送信される32又は40ビット値もあり得るので、前記信号送信は、非常に低い遅延でネットワークにわたり伝搬されることができる。緊急信号の送信は、他の伝達の間又はその中間に挿入され、安全/緊急情報の低遅延の信頼できる送信を達成することができる。信号値が変化するとき、信号要求符号106は、リンクにわたり送られ、16個全ての信号値102の状態を転送する。信号要求符号が受信されると、信号確認符号106が返される。信号が確認されない限り、信号要求が(再)送信される。エラー訂正(CRC)の部分104は、確認の部分と一緒に、信頼できるエラーの無い送信を保証する。
【0027】
安全/緊急信号の送信も、物理的リンクにある送達フレームに同期される限り、正常なパケット送達を先取り、如何なる特定の時間においても注入されることができる。何らかの40ビットのフレームにおいて、パケットの送信を先取りする40ビットのコード化した符号が送られる。このような状況において、唯一の遅延の存在は、実際のリンクにある40ビットのフレームである。前記安全/緊急信号の送信が40ビットのフレーム中にパケットの送信を先取りする場合、このパケットは、コードの符号が上手く通信された後に送信を続ける。プロトコルは、通常の(一般にソフトウェアベースの)装置制御機能とは独立して動作及び認証されるファームウェア(例えばFPGAにあるVHDL又はASIC)において実施されてもよい。このような実施は、(現在)動作しているソフトウェアへの依存を取り除き、必要な信号伝達は、ソフトウェアが無くても又はソフトウェアが故障している場合でも動作することを保証する。
【0028】
図3は、安全/緊急信号98のエラーの無い信頼できる送信のためのロジックを説明している。各々の通信ユニットにある要求レジスタ200は、安全/緊急信号の符号コード及び信号値を保持する。受信する通信ユニットにある受信レジスタ202は、エラー無しで受信した前記安全/緊急信号を保持する。送信する通信ユニットにある確認レジスタ204は、前記受信レジスタ202によりエラー無しで確認された安全/緊急信号の符号コード及び信号値を保持する。信号要求でリンクが飽和するのを避けるためにタイマーが使用される。タイマーが終わらない限り、新しい信号要求は送られない。要求した安全/緊急信号が確認した安全/緊急信号と等しくない場合、この安全/緊急信号の送信においてエラーが発生している。タイマーが終了すると、通信ユニットは安全/緊急信号を再送信し、タイマーを再スタートする。安全/緊急信号がエラー無しで受信される場合、この安全/緊急信号は、確認レジスタ204に記憶され、タイマーは止まる。この確認レジスタに記憶した安全/緊急信号がCRCエラーを持って受信される場合、このエラーは無視される。
【0029】
タイマーが終了し、要求した安全/緊急信号が未だ確認されない場合、再送信要求が送られる。再送信される安全/緊急信号が受信レジスタ202においてエラー無しで受信される場合、この信号は記憶され、確認した安全/緊急信号が確認レジスタ204に送られる。確認レジスタ204において受信した確認信号がCRCエラーを持って受信される場合、このエラーは無視される。要求した安全/緊急信号が急速に変化する場合、これら安全/緊急信号が送信されるのに制限があるので、これらの変化が受信レジスタ202において反映されないことがあり得る。これは、安全/緊急信号が確認されるよりも早く、これら信号が変化するときに起こる。
【0030】
図4は、安全/緊急信号を伝達する方法を説明している。ステップ300において、安全ではない又は危険な状態がMRIスキャナにおいて検出される。ステップ302において、この安全ではない又は危険な状態を示す安全/緊急データが生じる。ステップ304において、標準的なデジタルプロトコルを用いて前記安全/緊急データから、しかし安全/緊急符号100を備える安全/緊急信号が生じる。この安全/緊急信号は、ローカルのデジタルネットワーク33を介して他の通信ユニットに送信される。適切な通信ユニットがステップ308において確認を送る。ステップ310において、送信する通信ユニットは確認を受信するか、又はステップ312において、エラーの無い通信の受領の確認を受信できないことに応答して、送信する通信ユニットは安全/緊急信号98を再送信する。
【0031】
本発明は好ましい実施例を参照して説明されている。上述した詳細な説明を読み、理解すると他の者が修正案及び代替案が思い浮かぶことがある。本発明は、このような修正案及び代替案が付随する特許請求の範囲又はそれに同等なものの範囲内にある限り、これら修正案及び代替案の全てを含んでいると考えられることを意図している。
図1
図2
図3
図4