(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧側減衰バルブ及び伸側減衰バルブと、圧側減衰力アジャスタ及び伸側減衰力アジャスタと、それらのアジャスタにより操作される圧側減衰力調整弁及び伸側減衰力調整弁とを備えてなる減衰力発生装置が、単一のバルブユニットに小組された状態で、ダンパシリンダが備える車体側取付部材に設けた単一のバルブ収容孔に内蔵され、
前記バルブユニットは、圧側減衰力アジャスタと伸側減衰力アジャスタのそれぞれが単一のバルブホルダに設けられ、かつ該バルブホルダの平面視で互いに離隔して並置されることにより、該単一のバルブホルダを含んで小組された状態で前記単一のバルブ収容孔に外方の一方向から挿入可能にされ、
前記バルブユニットは、前記単一のバルブ収容孔に外方の上記一方向から挿入され、前記バルブホルダに外方から嵌合されて軸方向に係合するキャップが該バルブ収容孔の外方に臨む開口ねじ部に固定化される油圧緩衝器であって、
前記バルブユニットは、
圧側行程でピストン側油室から流出する油を通し、圧側減衰力アジャスタによって操作される圧側減衰力調整弁によってその開口面積が調整される圧側バイパス流路と、
伸側行程でロッド側油室から流出する油を通し、伸側減衰力アジャスタにより操作される伸側減衰力調整弁によってその開口面積が調整される伸側バイパス流路とを、別個に形成してなる油圧緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(参考例)(
図1〜
図4)
油圧緩衝器10は、
図1、
図2に示す如く、車体側に取付けられるダンパシリンダ11の油室27に、車軸側に取付けられる中空ピストンロッド12を摺動自在に挿入し、シリンダ11とピストンロッド12の外側部に懸架スプリング13を介装している。
【0022】
シリンダ11は車体側取付部材14を備え、ピストンロッド12に車軸側取付部材15を備える。シリンダ11の外周部には、ばね荷重調整用液圧ジャッキ16が設置され、液圧ジャッキ16にばね受17を備えるとともに、車軸側取付部材15の外側部にはばね受18を備える。ばね受17とばね受18の間に懸架スプリング13を介装し、液圧ジャッキ16の昇降操作により懸架スプリング13の設定長さ(ばね荷重)を調整する。懸架スプリング13のばね力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0023】
シリンダ11は、
図3に示す如く、ピストンロッド12が貫通するロッドガイド21をその開口部に備える。ロッドガイド21は、シリンダ11に液密に挿着され、オイルシール22、ブッシュ23、ダストシール24を備える内径部に、ピストンロッド12を液密に摺動自在にしている。
【0024】
油圧緩衝器10は、シリンダ11を外筒11Aと内筒11Bからなる2重管とし、外筒11Aの上端外周を車体側取付部材14に螺着し、外筒11Aの下端内周にロッドガイド21の大外径部を螺着し、ロッドガイド21の小外径部に内筒11Bの下端内周を嵌合させて備える。そして、ピストンロッド12の先端部に挿着したピストン25をナット26で固定し、内筒11Bの内周に摺動可能に挿入されたピストン25により、シリンダ11の油室27をピストン側油室27Aとロッド側油室27Bに区画する。28はリバウンドスプリング、29はバンプラバーである。
【0025】
油圧緩衝器10は、車体側取付部材14にサブタンク30を固定し、キャップ30Aにより封着されるサブタンク30内に設けたエア室31と油溜室32をブラダ33により分離する。キャップ30Aに設けたエアバルブ34を介して高圧化されるエア室31の圧力によって加圧される油溜室32をシリンダ11の油室27に連通するように設け、この油溜室32によりシリンダ11の油室27に進退するピストンロッド12の容積(油の温度膨張分の容積を含む)を補償する。
【0026】
油圧緩衝器10は、シリンダ11のピストン側油室27Aと、ロッド側油室27Bの間に減衰力発生装置40を設ける。
【0027】
減衰力発生装置40は、シリンダ11の内部の車体側取付部材14寄りに内蔵されており、シリンダ11に同軸配置される上バルブホルダ41Aの段差状外周部を外筒11A及び内筒11Bの上端内周に納め、この上バルブホルダ41Aの外縁部を内筒11Bの上端面と車体側取付部材14の内面との間に挟み込み固定する。減衰力発生装置40は、内筒11Bの内周に上バルブホルダ41Aの側から順に装填される圧側シート42A、中間バルブホルダ41B、伸側シート42B、下バルブホルダ41Cを、該下バルブホルダ41Cの中心孔に係合して上バルブホルダ41Aの中心ねじ部に螺合するボルト状のバルブピース43により上バルブホルダ41Aの中心軸上に挟圧保持する。
【0028】
減衰力発生装置40は、バルブピース43を上述の如くにより、シリンダ11のピストン側油室27A内の一端側でシリンダ11の中心軸上に固定化する。減衰力発生装置40は、バルブピース43の外周の軸方向に沿う中央に、該バルブピース43の外周に環状間隔を介するセンタープレート44を設け、センタープレート44の周囲(中間バルブホルダ41Bに囲まれている)に圧側流路45と伸側流路46を設ける(本参考例では、圧側流路45と伸側流路46は同一をなし、互いに共用流路を構成している)。センタープレート44は一端面側の周方向複数位置と、他端面側の周方向複数位置のそれぞれに、径方向に貫通する溝孔44A、44Bを穿設されて備える。
【0029】
減衰力発生装置40は、バルブピース43の外周のセンタープレート44を挟む軸方向の一方側に、センタープレート44から遠い側から順にチェックバルブスプリング46C、伸側チェックバルブ46B、圧側減衰バルブ45A、ワッシャ45D、付勢部材(皿ばね)45Eを設け、他方側に、センタープレート44から遠い側から順にチェックバルブスプリング45C、圧側チェックバルブ45B、伸側減衰バルブ46A、ワッシャ46D、付勢部材(皿ばね)46Eを設ける。そして、チェックバルブスプリング46C、伸側チェックバルブ46B、圧側減衰バルブ45A、ワッシャ45D、付勢部材46Eの組と、チェックバルブスプリング45C、圧側チェックバルブ45B、伸側減衰バルブ46A、ワッシャ46D、付勢部材46Eの組とを、センタープレート44を挟んで線対称配置している。圧側チェックバルブ45Bは環状をなし、上バルブホルダ41Aによりバックアップされているチェックバルブスプリング45Cにより圧側シート42Aの側に押圧され、その外周部を圧側シート42Aに着座し、その内周部に伸側減衰バルブ46Aの外縁部を着座させている。伸側チェックバルブ46Bは環状をなし、下バルブホルダ41Cによりバックアップされているチェックバルブスプリング46Cにより伸側シート42Bの側に押圧され、その外周部を伸側シート42Bに着座し、その内周部に圧側減衰バルブ45Aの外縁部を着座させている。
【0030】
減衰力発生装置40は、上バルブホルダ41Aと下バルブホルダ41Cに穿設した伸圧共用流路47、48と、センタープレート44の周囲の圧側流路45、伸側流路46と、シリンダ11の外筒11Aと内筒11Bの環状間隙に設けたシリンダ11の外側流路11Cを介して、シリンダ11のピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する(ピストン25はピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する流路を備えない)。
【0031】
減衰力発生装置40は、センタープレート44の周囲の圧側流路45、伸側流路46を、センタープレート44に穿設した溝孔44A、44B、バルブピース43の径方向及び中心軸上の軸方向に穿設した連通路43A、車体側取付部材14に穿設した連通路14A等を介して、サブタンク30の油溜室32に連通している。
【0032】
従って、油圧緩衝器10にあっては、圧側行程で、シリンダ11のピストン側油室27Aの油を、シリンダ11の外側流路11Cからロッド側油室27Bに向けて流す圧側流路45が減衰力発生装置40に設けられ、この圧側流路45の上流側に圧側減衰バルブ45Aを、下流側に圧側チェックバルブ45Bを設け、この圧側流路45における圧側減衰バルブ45Aと圧側チェックバルブ45Bの中間部を、連通路43A等を介して油溜室32に連通するものになる。
【0033】
また、伸側行程で、シリンダ11のロッド側油室27Bの油を、シリンダ11の外側流路11Cからピストン側油室27Aに向けて流す伸側流路46が減衰力発生装置40に設けられ、この伸側流路46の上流側に伸側減衰バルブ46Aを、下流側に伸側チェックバルブ46Bを設け、この伸側流路46における伸側減衰バルブ46Aと伸側チェックバルブ46Eの中間部を、連通路43A等を介して油溜室32に連通するものになる。
【0034】
尚、減衰力発生装置40は、所望により、
図4に示す如く、バルブピース43の前述の連通路43Aを含む中心軸上に設けた中空部に、圧側減衰バルブ45Aと伸側減衰バルブ46Aを迂回して、シリンダ11のピストン側油室27Aをロッド側油室27Bと油溜室32に連通するバイパス流路52を設けても良い。車体側取付部材14に設けられるアジャスタ50により外部から操作される圧側減衰力調整弁51により、このバイパス流路52の開口面積を調整することで圧側減衰力を調整できる。
【0035】
また、油圧緩衝器10は、所望により、
図3に示す如く、ピストンロッド12の中空部に、シリンダ11のロッド側油室27Bをピストン側油室27Aに連通する減衰力調整用流路62を設けても良い。車軸側取付部材15に設けられるアジャスタ60により外部から操作される伸側減衰力調整弁61により、この流路62の開口面積を調整することで伸側減衰力を調整できる。ピストンロッド12の中空部にピストン側油室27Aの側から孔あき管63を螺着し、この孔あき管63に支持したスプリング64により加圧されるチェックバルブ65を、流路62の開口にピストン側油室27Aの側から着座可能に設け、圧側行程で昇圧されるピストン側油室27Aの油が流路62に流入することを阻止している。
【0036】
従って、油圧緩衝器10は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧側行程)(
図1、
図2の実線矢印の流れ)
ピストン側油室27Aの油が昇圧し、減衰力発生装置40の圧側流路45の圧側減衰バルブ45Aを押し開いて圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ45Aから流出する油は圧側流路45において2分し、一方の油は圧側チェックバルブ45Bからシリンダ11の外側流路11Cを通ってロッド側油室27Bに流出し、他方の油はセンタープレート44の溝孔44A、44B、バルブピース43の連通路43A、車体側取付部材14の連通路14A等を経て油溜室32に排出される。この油溜室32に排出される他方の油は、ピストンロッド12の進入容積分の油を補償する。
【0037】
(伸側行程)(
図1、
図2の一点鎖線矢印の流れ)
ロッド側油室27Bの油が昇圧し、シリンダ11の外側流路11Cを通って減衰力発生装置40の伸側流路46の伸側減衰バルブ46Aを押し開いて伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ46Aから流出する油は、車体側取付部材14の連通路14A、バルブピース43の連通路43A、センタープレート44の溝孔44A、44B等を経て補給される油と合流した後、伸側チェックバルブ46Bを通ってピストン側油室27Aに流出する。油溜室32から補給される油はピストンロッド12の退出容積分の油を補償する。
【0038】
従って、本参考例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)油圧緩衝器10において、シリンダ11のピストン側油室27Aと、ロッド側油室27Bの間に減衰力発生装置40を設け、圧側行程で、シリンダ11のピストン側油室27Aの油をシリンダ11の外側流路11Cからロッド側油室27Bに向けて流す圧側流路45が減衰力発生装置40に設けられ、この圧側流路45の上流側に圧側減衰バルブ45Aを、下流側に圧側チェックバルブ45Bを設け、この圧側流路45における圧側減衰バルブ45Aと圧側チェックバルブ45Bの中間部を油溜室32に連通し、伸側行程で、シリンダ11のロッド側油室27Bの油をシリンダ11の外側流路11Cからピストン側油室27Aに向けて流す伸側流路46が減衰力発生装置40に設けられ、この伸側流路46の上流側に伸側減衰バルブ46Aを、下流側に伸側チェックバルブ46Bを設け、この伸側流路46における伸側減衰バルブ46Aと伸側チェックバルブ46Bの中間部を油溜室32に連通させた。
【0039】
圧側行程では、ピストン側油室27Aの昇圧した油が減衰力発生装置40の圧側流路45の上流側の圧側減衰バルブ45Aを通って圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ45Aから流出する油のうちの一方の油の流れが圧側チェックバルブ45Bからシリンダ11の外側流路11Cを通ってロッド側油室27Bに流入する。また、この圧側減衰バルブ45Aから流出する油のうちの他方の油の流れである、ピストンロッド12の進入容積分の油の流れが油溜室32に流入する。このとき、ロッド側油室27Bの圧力は(圧側減衰バルブ45Aの下流側の圧側チェックバルブ45B〜シリンダ11の外側流路11Cの流路抵抗が小さいので)油溜室32を加圧するエア室31の圧力だけにほぼ依存し、圧側減衰バルブ45Aの流路抵抗の設定によって変動しない。従って、伸側反転時の減衰力のさぼりを回避できる。
【0040】
伸側行程では、ロッド側油室27Bの昇圧した油がシリンダ11の外側流路11Cから減衰力発生装置40の伸側流路46の上流側の伸側減衰バルブ46Aを通って伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ46Aから流出する油は、油溜室32から補給されるピストンロッド12の退出容積分の油と合流した後、伸側チェックバルブ46Bを通ってピストン側油室27Aに流入する。
【0041】
尚、油溜室32を加圧するエア室31の圧力を高圧に設定することにより、圧側行程ではロッド側油室27Bの圧力を大きく正圧にして伸側反転時の減衰応答性を向上できる。
【0042】
(b)上述(a)の減衰力発生装置40が、シリンダ11に固定化されるバルブピース43を有し、バルブピース43の外周の軸方向に沿う中央にセンタープレート44を設け、バルブピース43の外周のセンタープレート44を挟む軸方向の一方側に、圧側減衰バルブ45Aと伸側チェックバルブ46Bを設け、他方側に伸側減衰バルブ46Aと圧側チェックバルブ45Bを設け、圧側減衰バルブ45Aと伸側チェックバルブ46Bの組と、伸側減衰バルブ46Aと圧側チェックバルブ45Bの組とをセンタープレート44を挟んで線対称配置する。これにより、圧側行程で、ピストン側油室27Aから減衰力発生装置40を通ってロッド側油室27Bと油溜室32を流出する上述(a)の油の流路と、伸側行程で、ロッド側油室27Bと油溜室32から減衰力発生装置40を通ってピストン側油室27Aへ流出する上述(a)の油の流路を、ともに短い流路長、小さい流路抵抗にし、それらの油の流れをスムースにすることができる。
【0043】
(c)上述(b)の減衰力発生装置40が、バルブピース43をシリンダ11のピストン側油室27A内の一端側で、シリンダ11の中心軸上に固定化し、センタープレート44の周囲に圧側流路45と伸側流路46を設け、この圧側流路45と伸側流路46を、センタープレート44に穿設した溝孔44A、44B、バルブピース43に穿設した連通路43Aを介して油溜室32に連通する。これにより、減衰力発生装置40の圧側流路45と伸側流路46の中間部を油溜室32に連通する経路をコンパクトにし、この経路における油の流れをスムースにすることができる。
【0044】
(d)上述(b)又は(c)の減衰力発生装置40が、バルブピース43の中心軸上に設けた中空部に、圧側減衰バルブ45Aと伸側減衰バルブ46Aを迂回してシリンダ11のピストン側油室27Aをロッド側油室27B及び油溜室32に連通するバイパス流路52を設け、外部から操作される減衰力調整弁51をこのバイパス流路52に設けた。これにより、減衰力発生装置40を用いて圧側減衰力の大きさを調整できる。
【0045】
(本発明例)(
図5〜
図8)
油圧緩衝器100は、
図5〜
図7に示す如く、車体側に取付けられるダンパシリンダ111の油室127に、車軸側に取付けられるピストンロッド112を摺動自在に挿入し、シリンダ111とピストンロッド112の外側部に懸架スプリング113を介装している。
【0046】
シリンダ111は車体側取付部材114を備え、ピストンロッド112に車軸側取付部材115を備える。シリンダ111の外周部には、ばね荷重調整用ナット116が設置され、ばね荷重調整用ナット116が支えるばね受117を備えるとともに、車軸側取付部材115の外側部にはばね受118を備える。ばね受117とばね受118の間に懸架スプリング113を介装し、ナット116の昇降操作により懸架スプリング113の設定長さ(ばね荷重)を調整する。懸架スプリング113のばね力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0047】
シリンダ111は、
図5に示す如く、ピストンロッド112が貫通するロッドガイド121をその開口部に備える。ロッドガイド121は、シリンダ111に液密に挿着され、オイルシール122、ブッシュ123、ダストシール124を備える内径部に、ピストンロッド112を液密に摺動自在にしている。
【0048】
油圧緩衝器100は、シリンダ111を外筒111Aと内筒111Bからなる2重管とし、外筒111Aを車体側取付部材114と一体に成形し、外筒111Aの下端内周にロッドガイド121の大外径部を固定し、ロッドガイド121の小外径部に内筒111Bの下端内周を嵌合させ、内筒111Bの上端部を外筒111Aの上端内面に突当てて備える。そして、ピストンロッド112の先端部に挿着したピストン125をナット126で固定し、内筒111Bの内周に摺動可能に挿入されたピストン125により、シリンダ111の油室127をピストン側油室127Aとロッド側油室127Bに区画する。128はリバウンドスプリング、129はバンプラバーである。
【0049】
油圧緩衝器100は、車体側取付部材114にサブタンク130を一体に成形し、キャップ130Aにより封着されるサブタンク130内に設けたエア室131と油溜室132をブラダ133により分離する。キャップ130Aに設けられる不図示のエアバルブを介して高圧化されるエア室131の圧力によって加圧される油溜室132をシリンダ111の油室127に連通するように設け、この油溜室132によりシリンダ111の油室127に進退するピストンロッド112の容積(油の温度膨張分の容積を含む)を補償する。
【0050】
油圧緩衝器100は、シリンダ111のピストン側油室127Aと、ロッド側油室127Bの間に減衰力発生装置140を設ける。
【0051】
減衰力発生装置140は、
図8に示すバルブユニット140Aに小組された状態で、車体側取付部材114におけるダンパシリンダ111とサブタンク130の間に設けたバルブ収容孔114Aに外方から挿入されて内蔵される。
【0052】
減衰力発生装置140のバルブユニット140Aは、バルブピース141と、バルブピース141の内端側の小径部141Aに嵌合される内側バルブホルダ142と、バルブピース141の外端側の大径部141Bに外方から嵌合されて軸方向に係合する外側バルブホルダ143と、外側バルブホルダ143に外方から液密に嵌合されて軸方向に係合するキャップ144を有する。
【0053】
減衰力発生装置140のバルブユニット140Aは、更に、バルブピース141の小径部141Aの外周の軸方向に沿う中央にセンタープレート145を設け、バルブピース141の小径部141Aの外周のセンタープレート145を挟む軸方向で、大径部141Bとの段差面の側から順に、圧側チェックバルブ152、伸側ピストン160、伸側減衰バルブ161を装填し、内側バルブホルダ142の端面の側から順に、伸側チェックバルブ162、圧側ピストン150、圧側減衰バルブ151を装填される。圧側チェックバルブ152、伸側ピストン160、伸側減衰バルブ161の組と、伸側チェックバルブ162、圧側ピストン150、圧側減衰バルブ151の組とは、センタープレート145を挟んで線対称配置されるとともに、バルブピース141における小径部141Aと大径部141Bの段差面と、内側バルブホルダ142の端面との間で、センタープレート145とともに挟圧固定化される。
【0054】
減衰力発生装置140のバルブユニット140Aは、バルブ収容孔114Aに外方から挿入され、内側バルブホルダ142の先端面をバルブ収容孔114Aの軸方向の底面に突当て、キャップ144をバルブ収容孔114Aの開口ねじ部に液密に螺着されて固定化される。このとき、減衰力発生装置140は、圧側ピストン150と伸側ピストン160の外周をバルブ収容孔114Aの内周に液密に固定し、バルブ収容孔114Aにおける圧側ピストン150の反伸側ピストン側のスペースをピストン側油室127Aに連通する伸圧共用流路146Aとし、バルブ収容孔114Aにおける伸側ピストン160の反圧側ピストン側のスペースをシリンダ111の後述する外側流路111Cを介してロッド側油室127Bに連通する伸圧共用流路146Bとし、バルブ収容孔114Aにおけるセンタープレート145の周囲で圧側ピストン150と伸側ピストン160に挟まれる環状スペースを車体側取付部材114に設けた連通路114Bを介して油溜室132に連通する伸圧共用流路146Cとする。また、減衰力発生装置140は、圧側ピストン150に圧側減衰バルブ151により開閉される圧側流路150Aと伸側チェックバルブ162により開閉される伸側流路150Bを設けるとともに、伸側ピストン160に圧側チェック弁152により開閉される圧側流路160Bと伸側減衰バルブ161により開閉される伸側流路160Aを設ける。減衰力発生装置140は、車体側取付部材114に設けた伸圧共用流路146A、146B、146Cと、圧側ピストン150に設けた圧側流路150A、伸側流路150Bと、伸側ピストン160に設けた圧側流路160B、伸側流路160Aと、シリンダ111の外筒111Aと内筒111Bの環状間隙に設けられる外側流路111Cを介して、シリンダ111のピストン側油室127Aとロッド側油室127Bを連通する(ピストン125はピストン側油室127Aとロッド側油室127Bを連通する流路を備えない)。
【0055】
従って、油圧緩衝器100にあっては、圧側行程で、シリンダ111のピストン側油室127Aの油を、シリンダ111の外側流路111Cからロッド側油室127Bに向けて流す圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)が減衰力発生装置140に設けられ、この圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)の上流側に圧側減衰バルブ151を、下流側に圧側チェックバルブ152を設け、この圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)における圧側減衰バルブ151と圧側チェックバルブ152の中間部を、伸圧共用流路146C、連通路114Bを介して油溜室132に連通するものになる。
【0056】
また、伸側行程で、シリンダ111のロッド側油室127Bの油を、シリンダ111の外側流路111Cからピストン側油室127Aに向けて流す伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)が減衰力発生装置140に設けられ、この伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)の上流側に伸側減衰バルブ161を、下流側に伸側チェックバルブ162を設け、この伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)における伸側減衰バルブ161と伸側チェックバルブ162の中間部を、伸圧共用流路146C、連通路114Bを介して油溜室132に連通するものになる。
【0057】
減衰力発生装置140は、所望により、
図8に示す如く、バルブピース141の小径部141A〜大径部141Bの中心軸上に設けた中空部に、圧側減衰バルブ151と伸側減衰バルブ161を迂回して、シリンダ111のピストン側油室127Aとロッド側油室127Bを油溜室132に連通する圧側バイパス流路172と伸側バイパス流路182を設けても良い。外側バルブホルダ143に設けられる圧側アジャスタ170により外部から操作される圧側減衰力調整弁171により、この圧側バイパス流路172の開口面積を調整することで圧側減衰力を調整できる。圧側バイパス流路172は伸圧共用流路146Aに開口するとともに、バルブピース141に設けた孔172A、センタープレート145に設けた孔172Bを介して伸圧共用流路146Cに開口している。外側バルブホルダ143に設けられる伸側アジャスタ180により外部から操作される伸側減衰力調整弁181により、この伸側バイパス流路182の開口面積を調整することで伸側減衰力を調整できる。伸側バイパス流路182は伸圧共用流路146Bに開口するとともに、バルブピース141に設けた孔172A、センタープレート145に設けた孔172Bを介して伸圧共用流路146Cに開口している。
【0058】
尚、圧側アジャスタ170は外部から回転操作可能に外側バルブホルダ143に液密に枢着され、圧側アジャスタ170のおねじ部にスライダ170Aを螺合しており、圧側アジャスタ170の回転によって移動するスライダ170Aが圧側減衰力調整弁171のロッド状基端部を押動し、圧側減衰力調整弁171の先端ニードル弁を圧側バイパス流路172の開口に対して進退させる。また、伸側アジャスタ180は外部から回転操作可能に外側バルブホルダ143に液密に枢着され、伸側減衰力調整弁181は圧側減衰力調整弁171のロッド周囲に遊挿されるとともに、そのフランジ部に伸側アジャスタ180のおねじ部が螺合されており、伸側アジャスタ180の回転によって移動する伸側減衰力調整弁181の先端ニードル弁を伸側バイパス流路182の開口に対して進退させる。圧側アジャスタ170のスライダ170Aには伸側アジャスタ180の中間軸部が挿通していてスライダ170Aを回り止めしている。伸側減衰力調整弁181のフランジ部には圧側アジャスタ170の先端軸部が挿通していて伸側減衰力調整弁181を回り止めしている。
【0059】
従って、油圧緩衝器100は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧側行程)(
図8の実線矢印の流れ)
ピストン側油室127Aの油が昇圧し、減衰力発生装置140の圧側ピストン150の圧側流路150Aの圧側減衰バルブ151を押し開いて圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ151から伸圧共用流路146Cに流出する油は伸圧共用流路146Cにおいて2分し、一方の油は伸側ピストン160の圧側流路160Bの圧側チェックバルブ152からシリンダ111の外側流路111Cを通ってロッド側油室127Bに流出し、他方の油は油溜室132に排出される。この油溜室132に排出される他方の油は、ピストンロッド112の進入容積分の油を補償する。
【0060】
(伸側行程)(
図8の一点鎖線矢印の流れ)
ロッド側油室127Bの油が昇圧し、シリンダ111の外側流路111Cを通って減衰力発生装置140の伸側ピストン160の伸側流路160Aの伸側減衰バルブ161を押し開いて伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ161から伸圧共用流路146Cに流出する油は、油溜室132から補給される油と合流した後、圧側ピストン150の伸側流路150Bの伸側チェックバルブ162を通ってピストン側油室127Aに流出する。油溜室132から補給される油はピストンロッド112の退出容積分の油を補償する。
【0061】
従って、本発明例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)油圧緩衝器100において、シリンダ111のピストン側油室127Aと、ロッド側油室127Bの間に減衰力発生装置140を設け、圧側行程で、シリンダ111のピストン側油室127Aの油をシリンダ111の外側流路111Cからロッド側油室127Bに向けて流す圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)が減衰力発生装置140に設けられ、この圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)の上流側に圧側減衰バルブ151を、下流側に圧側チェックバルブ152を設け、この圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)における圧側減衰バルブ151と圧側チェックバルブ152の中間部を油溜室132に連通し、伸側行程で、シリンダ111のロッド側油室127Bの油をシリンダ111の外側流路111Cからピストン側油室127Aに向けて流す伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)が減衰力発生装置140に設けられ、この伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)の上流側に伸側減衰バルブ161を、下流側に伸側チェックバルブ162を設け、この伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)における伸側減衰バルブ161と伸側チェックバルブ162の中間部を油溜室132に連通させた。
【0062】
圧側行程では、ピストン側油室127Aの昇圧した油が減衰力発生装置140の圧側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、圧側流路150A、160B)の上流側の圧側減衰バルブ151を通って圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ151から流出する油のうちの一方の油の流れが圧側チェックバルブ152からシリンダ111の外側流路111Cを通ってロッド側油室127Bに流入する。また、この圧側減衰バルブ151から流出する油のうちの他方の油の流れである、ピストンロッド112の進入容積分の油の流れが油溜室132に流入する。このとき、ロッド側油室127Bの圧力は(圧側減衰バルブ151の下流側の圧側チェックバルブ152〜シリンダ111の外側流路111Cの流路抵抗が小さいので)油溜室132を加圧するエア室131の圧力だけにほぼ依存し、圧側減衰バルブ151の流路抵抗の設定によって変動しない。従って、伸側反転時の減衰力のさぼりを回避できる。
【0063】
伸側行程では、ロッド側油室127Bの昇圧した油がシリンダ111の外側流路111Cから減衰力発生装置140の伸側流路(伸圧共用流路146A、146B、146C、伸側流路150B、160A)の上流側の伸側減衰バルブ161を通って伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ161から流出する油は、油溜室132から補給されるピストンロッド112の退出容積分の油と合流した後、伸側チェックバルブ162を通ってピストン側油室127Aに流入する。
【0064】
尚、油溜室132を加圧するエア室131の圧力を高圧に設定することにより、圧側行程ではロッド側油室127Bの圧力を大きく正圧にして伸側反転時の減衰応答性を向上できる。
【0065】
(b)上述(a)の減衰力発生装置140が、シリンダ111に固定化されるバルブピース141を有し、バルブピース141の外周の軸方向に沿う中央にセンタープレート145を設け、バルブピース141の外周のセンタープレート145を挟む軸方向の一方側に、圧側減衰バルブ151と伸側チェックバルブ162を設け、他方側に伸側減衰バルブ161と圧側チェックバルブ152を設け、圧側減衰バルブ151と伸側チェックバルブ162の組と、伸側減衰バルブ161と圧側チェックバルブ152の組とをセンタープレート145を挟んで線対称配置する。これにより、圧側行程で、ピストン側油室127Aから減衰力発生装置140を通ってロッド側油室127Bと油溜室132を流出する上述(a)の油の流路と、伸側行程で、ロッド側油室127Bと油溜室132から減衰力発生装置140を通ってピストン側油室127Aへ流出する上述(a)の油の流路を、ともに短い流路長、小さい流路抵抗にし、それらの油の流れをスムースにすることができる。
【0066】
(c)上述(b)の減衰力発生装置140が、バルブピース141の中心軸上に設けた中空部に、圧側減衰バルブ151と伸側減衰バルブ161を迂回してシリンダ111のピストン側油室127Aをロッド側油室127B及び油溜室132に連通するバイパス流路172、182を設け、外部から操作される減衰力調整弁171、181をこのバイパス流路172、182に設けた。これにより、減衰力発生装置140を用いて圧側減衰力と伸側減衰力の大きさを調整できる
【0067】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。