(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5809337
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】射出ノズルにおける樹脂の温度制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20151021BHJP
B29C 45/20 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/20
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-164148(P2014-164148)
(22)【出願日】2014年8月12日
【審査請求日】2014年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】車地 克典
【審査官】
井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−020042(JP,A)
【文献】
特開平05−077301(JP,A)
【文献】
特開平07−214613(JP,A)
【文献】
特開平10−109342(JP,A)
【文献】
特開2006−218870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータが巻かれた加熱シリンダと該加熱シリンダ内に設けられているスクリュとからなる射出成形機において、前記加熱シリンダの前方の射出ノズル内における樹脂の温度を制御する制御方法であって、
前記制御方法は準備段階と実運転段階とから構成され、
前記準備段階は、準備段階用射出ノズルを前記加熱シリンダに設け、該準備段階用射出ノズルは、その金属部分に埋め込まれた第1の温度センサによって該金属部分の温度である第1の温度が、そして樹脂流路に露出するように設けられている第2の温度センサによって樹脂の温度である第2の温度が、それぞれ測定されるようになっており、前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で樹脂を射出して射出時における前記第1、2の温度の相関を得、
前記実運転段階は、金属部分に埋め込まれた第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、この成形サイクルの射出工程においては前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第2の目標温度から第1の温度の目標温度である第1の目標温度を求め、該第1の目標温度によって前記第1の温度を制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法。
【請求項2】
ヒータが巻かれた加熱シリンダと該加熱シリンダ内に設けられているスクリュとからなる射出成形機において、前記加熱シリンダの前方の射出ノズル内における樹脂の温度を制御する制御方法であって、
前記制御方法は準備段階と実運転段階とから構成され、
前記準備段階は、準備段階用射出ノズルを前記加熱シリンダに設け、該準備段階用射出ノズルは、その金属部分に埋め込まれた第1の温度センサによって該金属部分の温度である第1の温度が、そして樹脂流路に露出するように設けられている第2の温度センサによって樹脂の温度である第2の温度が、それぞれ測定されるようになっており、前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で樹脂を射出して射出時における前記第1、2の温度の相関を得、
前記実運転段階は、金属部分に埋め込まれた第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、この成形サイクルの射出工程においては前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第1の温度から第2の温度の推定値である第2の推定温度を求め、該第2の推定温度が前記第2の目標温度になるように制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制御方法において、前記準備段階は前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で成形サイクルを実施して、該成形サイクルを構成する工程毎に前記第1、2の温度の相関を得、前記実運転段階は前記射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、成形サイクルの各工程においては、各工程に対応する前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第2の目標温度から第1の温度の目標温度である第1の目標温度を求め、該第1の目標温度によって前記第1の温度を制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の制御方法において、前記準備段階は前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で成形サイクルを実施して、該成形サイクルを構成する工程毎に前記第1、2の温度の相関を得、前記実運転段階は前記射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、成形サイクルの各工程においては、各工程に対応する前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第1の温度から第2の温度の推定値である第2の推定温度を求め、該第2の推定温度が前記第2の目標温度になるように制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部に射出ノズルが設けられている加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、あるいは軸方向に駆動可能に設けられているプランジャと、からなる射出成形機において、射出ノズルにおける樹脂の温度を制御する温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、一対の金型、これらの金型を型締する型締装置、樹脂材料を溶融して金型内に射出する射出装置等から構成され、射出装置は加熱シリンダ、この加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ等から構成されている。そして外周部に巻かれたバンドヒータによって加熱シリンダを加熱してスクリュを回転し、樹脂材料を加熱シリンダに供給すると、樹脂材料は溶融して加熱シリンダの先端部に計量される。計量後、スクリュを軸方向に駆動すると、溶融した樹脂は加熱シリンダの先端の射出ノズルから射出されて型締めされた金型のキャビティに射出・充填される。冷却固化を待って金型を開くと成形品が得られる。このような射出成形においては、樹脂の温度、特に射出ノズルから射出される樹脂の温度の制御が重要である。樹脂は、温度が高くなると粘性が低下して転写性が向上する一方で、温度が高すぎると樹脂が劣化して焼けが発生したり樹脂が加熱分解してシルバーストリーク等の不具合が生じる。つまり成形には最適な温度がある。さらに樹脂は、射出時に射出ノズルの絞り作用によって射出圧力が損失して加熱するので、加熱シリンダ内における温度よりも射出ノズルにおける温度が上昇する。従って、射出ノズルにおける樹脂の温度を適切に制御することが重要になる。多くの射出成形機においては、射出ノズル内に温度センサが埋め込まれており、この温度センサによって樹脂の温度を測定することができ、これによって温度を制御することはできる。しかしながらこのような温度センサは、射出ノズルの樹脂流路内に露出してはおらず射出ノズルの金属部分に埋め込まれている。従って、樹脂の温度は直接にではなく、射出ノズルを介して間接的に測定されていることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−233892号公報
【特許文献2】特開2012−153012号公報
【特許文献3】特開平6−246807号公報
【0004】
温度センサが射出ノズルの樹脂流路に設けられて、樹脂温度を直接測定できる射出成形機も周知である。このような射出成形機として、例えば特許文献1に記載の射出成形機をあげることができる。この射出成形機においては、射出ノズルの樹脂流路内に、樹脂流路と直交するように温度センサが設けられているので、樹脂の温度を正確に測定することができる。
【0005】
特許文献2には、樹脂の温度を推定する方法が記載されている。温度を推定している対象となる樹脂は、射出ノズル内の樹脂ではなく、正確には射出ノズルから射出された直後の樹脂であるが、この方法においては加熱シリンダ内の樹脂の温度から、射出ノズルからの射出直後の樹脂の温度を計算するようにしている。具体的には、射出ノズルを金型のスプルから離間した状態で射出して、金型内の流動抵抗がない状態で射出圧力を測定する。そして、この測定された射出圧力が、射出ノズルをスプルに当接して金型内に射出するときに損失する圧力損失に相当するものと仮定し、この圧力損失分に相当するエネルギが樹脂の温度上昇に寄与するものとして温度上昇分を計算する。加熱シリンダ内の樹脂の温度にこの温度上昇分を加算すると、射出ノズルから射出直後の樹脂の温度が計算できる。
【0006】
特許文献3にも、特許文献2と同様に樹脂の温度を推定する方法が記載されている。この方法では、射出ノズル内の樹脂の温度を推定しているが、射出時の樹脂の流動による温度上昇分を所定の計算式で計算し、加熱シリンダ内で測定される樹脂の温度に温度上昇分を加算して射出ノズル内の樹脂の温度を推定している。なお温度上昇分は、樹脂の流量、粘性係数、樹脂の定圧比熱、ノズルの流動長さ等の関数で与えられるものとして提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の、射出ノズルの金属部分に埋め込まれている温度センサによっても、射出ノズル内の樹脂の温度を間接的に測定できるので、所望の温度になるように制御することはできる。また、特許文献1に記載の射出成形機のように、射出ノズルの樹脂流路内に温度センサが設けられていれば、樹脂の温度を直接測定できるので正確な温度が得られ、所望の温度の制御することは容易である。さらには、特許文献2、3に記載の方法のように、樹脂の温度上昇を計算することによって、射出ノズル内における樹脂の温度を推定することができるので、所望の温度になるように制御することができる。しかしながら、これらの温度センサや方法には、改善すべき点も見受けられる。まず、射出ノズルの金属部分に埋め込まれている温度センサによって間接的に樹脂の温度を測定する従来の射出成形機については、樹脂の温度を正確に測定できないという問題がある。例えば、射出工程においては樹脂が流動することによって樹脂の温度が短時間で上昇するが、熱伝導の遅れの分だけ温度センサで検出される温度は遅れて上昇することになる。つまり樹脂の温度を正確に測定できないという問題がある。特許文献1に記載の射出成形機においては、温度センサが樹脂流路に設けられているので正確に樹脂の温度を測定することはできるが、温度センサの近傍で樹脂が滞留すると樹脂焼け等の他の問題が生じる。これを防止するためには樹脂の滞留が発生しないように精度高く射出ノズルを製造する必要があるが、コスト高になってしまう。また射出時の樹脂圧力は高いので、この温度センサには強度も必要になり、射出ノズル全体が肉厚になって大型化してしまう。つまり射出成形機のコストが高くなる問題がある。またこのような温度センサを設ける場合には、射出ノズルの先端部近傍に配線をする必要があり、そうすると金型等の他の部材に接触して断線する恐れもある。特許文献2、3のそれぞれに記載の方法についても、一長一短がある。すなわち、これらの方法は樹脂の温度上昇を計算して射出ノズルにおける樹脂の温度を推定することができるので、応用範囲が広く、汎用的に利用でき優れていると言えるが、この温度は実際に測定された温度では無い。つまり必ずしも正確な温度であるとは言えない。そうするとこのような温度を制御対象とすることは難しい。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した溶融樹脂の温度の制御方法を提供することを目的としており、具体的には射出ノズルにおける樹脂の温度を、精度よく所望の温度になるように制御する、樹脂の温度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、準備段階と実運転段階とからなる、射出ノズル内の樹脂温度の制御方法として構成する。まず準備段階は、第1、2の温度センサを備えた準備段階用射出ノズルを加熱シリンダに設ける。第1の温度センサは金属部分に埋め込まれており、金属部分の温度である第1の温度が測定される。第2の温度センサは樹脂流路に露出しており、樹脂の温度である第2の温度が測定される。この状態で射出動作を実施して射出工程における第1、2の温度の相関を得る。実運転段階は、第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを加熱シリンダに設けて射出成形する。そして実運転段階ではセンサが存在しない第2の温度に対する目標温度つまり第2の目標温度を与えて射出工程における樹脂温度を制御するようにする。この制御を実施するには2種類の方法があり、どちらを実施しても良い。一方の種類の制御方法は、第1、2の温度の相関に基づいて第2の目標温度から第1の温度に対する第1の目標温度を求める。この第1の目標温度によって第1の温度を制御するようにすると、結果的に樹脂の温度が第2の目標温度になるように制御することができる。これに対して他方の種類の制御方法は、第1、2の温度の相関に基づいて第1の温度から第2の温度の推定温度である第2の推定温度を推定する。この第2の推定温度が第2の目標温度になるように制御する。これによって樹脂の温度が第2の目標温度になるように制御される。
【0010】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、ヒータが巻かれた加熱シリンダと該加熱シリンダ内に設けられているスクリュとからなる射出成形機において、前記加熱シリンダの前方の射出ノズル内における樹脂の温度を制御する制御方法であって、前記制御方法は準備段階と実運転段階とから構成され、前記準備段階は、準備段階用射出ノズルを前記加熱シリンダに設け、該準備段階用射出ノズルは、その金属部分に埋め込まれた第1の温度センサによって該金属部分の温度である第1の温度が、そして樹脂流路に露出するように設けられている第2の温度センサによって樹脂の温度である第2の温度が、それぞれ測定されるようになっており、前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で樹脂を射出して射出時における前記第1、2の温度の相関を得、前記実運転段階は、金属部分に埋め込まれた第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、この成形サイクルの射出工程においては前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第2の目標温度から第1の温度の目標温度である第1の目標温度を求め、該第1の目標温度によって前記第1の温度を制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、ヒータが巻かれた加熱シリンダと該加熱シリンダ内に設けられているスクリュとからなる射出成形機において、前記加熱シリンダの前方の射出ノズル内における樹脂の温度を制御する制御方法であって、
前記制御方法は準備段階と実運転段階とから構成され、
前記準備段階は、準備段階用射出ノズルを前記加熱シリンダに設け、該準備段階用射出ノズルは、その金属部分に埋め込まれた第1の温度センサによって該金属部分の温度である第1の温度が、そして樹脂流路に露出するように設けられている第2の温度センサによって樹脂の温度である第2の温度が、それぞれ測定されるようになっており、前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で樹脂を射出して射出時における前記第1、2の温度の相関を得、
前記実運転段階は、金属部分に埋め込まれた第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、この成形サイクルの射出工程においては前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第1の温度から第2の温度の推定値である第2の推定温度を求め、該第2の推定温度が前記第2の目標温度になるように制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の制御方法において、前記準備段階は前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で成形サイクルを実施して、該成形サイクルを構成する工程毎に前記第1、2の温度の相関を得、前記実運転段階は前記射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、成形サイクルの各工程においては、各工程に対応する前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第2の目標温度から第1の温度の目標温度である第1の目標温度を求め、該第1の目標温度によって前記第1の温度を制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の制御方法において、前記準備段階は前記準備段階用射出ノズルを取付けた状態で成形サイクルを実施して、該成形サイクルを構成する工程毎に前記第1、2の温度の相関を得、前記実運転段階は前記射出ノズルを前記加熱シリンダに取付けると共に前記第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにし、成形サイクルの各工程においては、各工程に対応する前記第1、2の温度の前記相関に基づいて前記第1の温度から第2の温度の推定値である第2の推定温度を求め、該第2の推定温度が前記第2の目標温度になるように制御することを特徴とする射出ノズル内の樹脂の温度制御方法として構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項1に記載の発明は、射出ノズル内における樹脂の温度を制御する制御方法であって、制御方法は準備段階と実運転段階とから構成する。そして準備段階では、準備段階用射出ノズルを加熱シリンダに設け、該準備段階用射出ノズルは、その金属部分に埋め込まれた第1の温度センサによって該金属部分の温度である第1の温度が、そして樹脂流路に露出するように設けられている第2の温度センサによって樹脂の温度である第2の温度が、それぞれ測定されるようになっており、準備段階用射出ノズルを取付けた状態で樹脂を射出して射出時における第1、2の温度の相関を得る。つまり射出ノズルの金属部分と、射出ノズル内の樹脂の温度を同時に測定して、それらの温度の相関を得るようにしている。そして実運転段階は、金属部分に埋め込まれた第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを加熱シリンダに取付けて成形サイクルを実施するようになっている。つまり、実運転段階では、樹脂温度を直接測定できる第2の温度センサがなく、金属部分の温度を測定する第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを取付けて成形サイクルを実施するようにしている。そうすると温度センサの近傍で樹脂が滞留して樹脂焼けが発生する等の問題は発生しないし、温度センサの配線が射出ノズルの先端部分近傍に配置されないので、金型等の部材によって断線する恐れもない。本発明において実運転段階は、第2の温度の目標温度である第2の目標温度を設定して成形サイクルを実施するようにしているが、この成形サイクルの射出工程においては第1、2の温度の相関に基づいて第2の目標温度から第1の温度の目標温度である第1の目標温度を求め、該第1の目標温度によって第1の温度を制御するようになっている。そうすると、射出ノズルの金属部分の温度が第1の目標温度になるように制御することになるが、結果的に射出ノズル内の樹脂の温度を、第2の目標温度になるように制御していることになる。つまり樹脂の温度を正確に制御できることになる。これによって射出ノズルにおける樹脂の温度を、理想的な温度に制御して射出できる。これによって、樹脂の粘性を可及的に小さくして転写性を向上させることができると共に、焼け、シルバーストリーク、ブラックストリーク等の成形不良を防止することができる。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明と一致している点もあるが相違点がある。すなわち、準備段階において第1、2の温度の相関を得る点、および実運転段階において第1の温度センサのみを備えた射出ノズルを設けて第2の目標温度を与えて制御する点は一致している。しかしながら、請求項2に記載の発明は、実運転段階では第1、2の温度の相関に基づいて第1の温度から第2の温度の推定値である第2の推定温度を求め、該第2の推定温度が第2の目標温度になるように制御するように構成されている。この発明においても、樹脂温度が第2の目標温度になるように制御することができるので、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られる。請求項3に記載の発明、および請求項4に記載の発明は、いずれも射出工程以外の他の工程においても同様に樹脂の温度の制御が実施できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る樹脂の温度制御方法を模式的に示す図で、本実施の形態に係る射出成形機の一部を示す断面図と、樹脂の温度制御方法を示す制御ブロック図とからなる図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る樹脂の温度制御方法を模式的に示す図で、本実施の形態に係る射出成形機の一部を示す断面図と、樹脂の温度制御方法を示す制御ブロック図とからなる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る樹脂の温度制御方法を説明する。本実施の形態に係る制御方法を実施する射出成形機1は、
図1にその一部が示されているように、従来の射出成形機と同様に構成されている。すなわちバンドヒータ2が巻かれている加熱シリンダ3と、この加熱シリンダ3内で回転方向と軸方向とに駆動可能に入れられているスクリュ4とから構成されている。加熱シリンダ3の先端には、射出ノズル6が設けられている。詳しく説明すると射出ノズル6は、射出ノズル本体6aと、この射出ノズル本体6aの先端に設けられているノズルチップ6bとから構成されている。ノズルチップ6bは、後で説明することになる準備段階において使用される準備段階用ノズルチップ6bと、同様に後で説明する実運転段階において使用される実運転用ノズルチップ6b’の2種類がある。射出ノズル本体6aには雌ねじが、そしてそれぞれのノズルチップ6b、6b’には雌ねじに螺合する雄ねじが形成されており、射出ノズル本体6aに対して準備段階用ノズルチップ6bと実運転用ノズルチップ6b’とを選択的に取付けることができるようになっている。
【0014】
射出ノズル本体6aには、その外周面から中心方向に向かう有底のセンサ格納孔が明けられており、このセンサ格納孔に熱電対からなる第1の温度センサ8が入れられている。つまり第1の温度センサ8は射出ノズル6を構成している円筒部の金属部分に埋め込まれている。溶融した樹脂は射出ノズル6の樹脂流路9を流れが、第1の温度センサ8によって測定される第1の温度は、樹脂の温度ではなく、センサ8が埋め込まれている金属部分の温度になる。図には示されていないが、第1の温度センサ8は、これに接続されているセンサ入力回路によって微弱な熱起電力が検出され、これがA/D回路によってデジタル信号に変換され、フィルタ回路によってフィルタリングされて第1の温度のデータに変換される。射出成形機1には図示されていないコントローラが設けられており、このような一連の処理はコントローラ内で処理されている。射出ノズル本体6aには、その外周面にノズルヒータ10が巻かれ、射出ノズル6および樹脂流路9の樹脂を加熱できるようになっている。
【0015】
準備段階用ノズルチップ6bは、熱電対からなる第2の温度センサ12を備えている。詳しく説明すると準備段階用ノズルチップ6bには、その先端部近傍の外周部から、内部の樹脂流路9に貫通するセンサ孔が明けられており、第2の温度センサ12はこのセンサ孔から挿入され、樹脂流路9内の樹脂の温度、つまり第2の温度を測定できるようになっている。なお、第2の温度センサ12は熱電対が樹脂流路9内に露出していてもよいが、熱電対が所定の保護管に入れられた状態で樹脂流路9内に設けられていてもよく、樹脂の温度を直接測定できるようになっていればよい。第2の温度センサ12も、これが接続されているセンサ入力回路、A/D回路、フィルタ回路によって第2の温度のデータが得られるようになっている。この準備段階用ノズルチップ6bを射出ノズル本体6aに設けると、準備段階において使用される準備段階用射出ノズルが構成されることになる。つまり準備段階用射出ノズルは、第1、2の温度センサを備えた射出ノズルということになる。
【0016】
実運転用ノズルチップ6b’は、準備段階用ノズルチップ6bとその形状は同じであるが、温度センサは設けられていない。実運転用ノズルチップ6b’を射出ノズル本体6aに組み込んで得られる射出ノズルは、温度センサが第1の温度センサ8のみからなる射出ノズルになる。この射出ノズルは実運転段階において使用される。
【0017】
図1には、射出成形機のコントローラにおいて実施される処理であって、本実施の形態に係る樹脂の温度制御方法を実施するための各処理が、ブロック図で示されている。これらについて説明する。まず、フィードバック制御によって温度制御をするフィードバック制御部21について説明する。フィードバック制御部21は、目標温度が設定される温度設定器22と、測定された温度が入力される温度検出器23と、PID制御により制御する温度調節器24と、ノズルヒータ10のON/OFFを操作するノズルヒータ出力操作器25とから構成されている。後で説明するように温度設定器22には、準備段階では射出ノズル6の金属部分の温度である第1の温度に対する第1の目標温度が、実運転段階では樹脂流路9の樹脂の温度である第2の温度に対する第2の目標温度が、それぞれ入力されるようになっている。同様に後で説明するように、温度検出器23にも、それぞれの段階に応じて、第1の温度または第2の温度が入力されるようになっている。温度設定器22に入力された目標温度と、温度検出器23において入力される温度は、偏差が取られて温度調節器24に入力され、PID制御によって操作量が計算される。この操作量に基づいてノズルヒータ出力操作器25は、ノズルヒータ10への電力の供給をON/OFFする。より詳しく説明すると、図には示されていないが、ノズルヒータ出力操作器25はD/A回路、出力回路を介してソリッドステートリレーに接続されている。AC電源とノズルヒータ10もソリッドステートリレーに接続されており、ノズルヒータ出力操作器25がON/OFFを出力すると、ノズルヒータ10への電力の供給がON/OFFされることになる。なお、ソリッドステートリレーの代わりに電磁接触器によってスイッチングするようにしてもよい。このようなフィードバック制御部21によって、温度設定器22に設定された目標温度になるように、温度が制御されることになる。
【0018】
本実施に係る温度制御方法においては、第1の温度検出器27に、第1の温度センサ8で測定される第1の温度が入力され、第2の温度検出器28に、第2の温度センサ12で測定される第2の温度が入力される。なお、後で説明する実運転段階においては、実運転用ノズルチップ6bが取付けられるので第2の温度センサ12は無く、この場合には第2の温度検出器28は処理を行わない。第1の温度検出器27に入力される第1の温度と、第2の温度検出器28に入力される第2の温度は、温度選択スイッチ30によって選択的に切替えられてフィードバック制御部21の温度検出器23に入力されるようになっている。また第1、2の温度検出器27、28において検出される第1、2の温度は次に説明する温度テーブル33に記録されるようになっている。
【0019】
本実施の形態に係る射出成形機1のコントローラ内には、準備段階において第1、2の温度が記録される温度テーブル33が設けられている。温度テーブル33は、同一のタイミングで測定される第1、2の温度がペアで記録されるテーブルであり、複数のタイミングで測定された複数のペアの第1、2の温度が記録されるようになっている。この記録に基づいて、第1、2の温度の相関が得られることになる。ところで第1、2の温度の相関は、工程が相違していると、若干相違する。例えば、射出工程においては樹脂が射出ノズル6内の樹脂流路9を流れるときに温度が上昇する。そうすると瞬間的に第2の温度が第1の温度より所定の温度差だけ高くなる。これに対して樹脂流路9内を樹脂が流動しない保圧工程等においては、第1、2の温度の差は小さい。つまり第1、2の温度の相関は、成形サイクルの工程によって相違する。従って、本実施の形態においては、温度テーブル33は工程に応じて用意され、工程毎に記録されるようになっている。すなわち本実施の形態において温度テーブル33は、成形サイクルのうち射出工程における温度が記録される射出工程温度テーブル34と、成形サイクルのうち射出工程以外の工程における温度が記録される他工程温度テーブル35と、成形サイクルを中断した成形サイクル停止中における温度が記録される停止中温度テーブル36とに分けられている。このようにテーブルが分けられているので、射出工程中の第1、2の温度の相関、射出工程以外の他の成形サイクルにおける第1、2の温度の相関、そして成形サイクル停止中の第1、2の温度の相関がそれぞれ得られることになる。
【0020】
本実施の形態に係る温度制御方法においては、オペレータは射出ノズル6内の樹脂の温度つまり第2の温度について、その目標温度である第2の目標温度を樹脂温度設定器37に設定できるようになっている。実際には樹脂温度設定器37は、成形中樹脂温度設定器38と停止中樹脂温度設定器39とからなるが、成形サイクル中における目標温度は前者に、成形サイクル停止中における目標温度は後者に設定するようになっている。本実施の形態に係る温度制御方法においては、目標温度演算器41が設けられている。詳しくは後で説明するが、目標温度演算器41は、温度テーブル33に記録されている第1、2の温度から得られる第1、2の温度の相関に基づいて、樹脂温度設定器37に設定されている第2の目標温度を、第1の温度に対する目標温度である第1の目標温度に変換するようになっている。これによって、フィードバック制御部21において第1の温度センサ8によって温度制御ができるようにする。樹脂温度設定器37から出力される第1の目標温度と、目標温度演算器41から出力される第2の目標温度は、目標温度切替スイッチ42によって選択的に切替えられてフィードバック制御部21の温度設定器22に入力されるようになっている。
【0021】
本実施の形態に係る樹脂の温度制御方法について説明する。制御方法は準備段階と実運転段階とからなる。準備段階は次のようにする。準備段階用ノズルチップ6bを備えた射出ノズル6、つまり準備段階用射出ノズルを加熱シリンダ3に取付ける。温度選択スイッチ30を切替えて、第2の温度検出器28で検出される第2の温度が温度検出器23に入力されるようにする。また目標温度切替スイッチ42を切替えて、樹脂温度設定器37に設定されている第2の目標温度が温度設定器22に入力されるようにする。つまりこの準備段階では、第2の温度センサ12を利用して、第2の温度が第2の目標温度になるように制御することになる。この状態で成形サイクルを複数回実施する。成形サイクルを実施すると、温度設定器22には成形中樹脂温度設定器38に設定されている第2の目標温度が入力され、これに基づいて温度を制御することになる。所定の周期で検出される第1、2の温度をペアにして温度テーブル33に記録する。なお射出工程中に検出される第1、2の温度は射出工程温度テーブル34に記録し、それ以外の工程において検出される第1、2の温度は他工程温度テーブル35に記録する。成形サイクルを中断して成形サイクル停止中にする。成形サイクル停止中には、停止中樹脂温度設定器39に設定されている第2の目標温度が温度設定器22に入力され、これに基づいて温度を制御することになる。所定の周期で検出される第1、2の温度をペアにして停止中温度テーブル36に記録する。ある程度記録が得られたら、準備段階を終了する。
【0022】
実運転段階は次のようにする。準備段階用ノズルチップ6bを取り外して実運転用ノズルチップ6b’を取付ける。これによって射出ノズル6は温度センサが第1の温度センサ8のみになる。温度選択スイッチ30を切替えて、第1の温度検出器27で検出される第1の温度が温度検出器23に入力されるようにする。目標温度切替スイッチ42を切替えて、目標温度演算器41で計算される第1の目標温度が温度設定器22に入力されるようにする。つまり実運転段階では、第1の温度センサ8を利用して、第1の温度が第1の目標温度になるように制御することになる。ただしこのような制御をすると、結果的に樹脂流路9の樹脂の温度が、樹脂温度設定器37において設定されている第2の目標温度になるように制御されることになる。これは目標温度演算器41が、このようになるように第1の目標温度を計算するからである。
【0023】
目標温度演算器41の処理は次のようになっている。まず、目標温度演算器41は、温度テーブル33に記録されている第1、2の温度から第1、2の温度の相関を得る。例えば重回帰分析を行って、以下のような関係を得る。
T1=a・T2+b (1式)
ただし、T1:第1の温度、T2:第2の温度、a、b:定数。
このような相関は、テーブル毎に、つまり射出工程温度テーブル34、他工程温度テーブル35、停止中温度テーブル36のそれぞれに対して得る。得られた相関に基づいて樹脂温度設定器37に設定されている第2の目標温度を第1の目標温度に変換する。つまり、得られる相関が1式のようになっていれば、第2の目標温度を右辺のT2に代入する。そうすると得られる左辺のT1が第1の目標温度になる。なお、実際には第1の目標温度は工程によって相違している。つまり、射出工程中の第1の目標温度は成形中樹脂温度設定器38と射出工程温度テーブル34とから、成形サイクルの他の工程における第1の目標温度は成形中樹脂温度設定器38と他工程温度テーブル35とから、そして成形サイクル停止中の第1の目標温度は停止中樹脂温度設定器39と停止中温度テーブル36とから前記したような相関を得て演算によって計算することになるが、それぞれ値が相違することになる。
【0024】
実運転段階において成形サイクルを実施する。そうすると、射出工程時には射出工程における第1の目標温度によって温度が制御され、他の工程においては他の工程における第1の目標温度によって温度が制御される。そうすると結果的に、樹脂流路9内の樹脂の温度つまり第2の温度が、成形中樹脂温度設定器38に設定されている第2の目標温度になるように制御されることになる。同様に実運転段階において成形サイクルを中断して停止中にする。そうすると結果的に、第2の温度が、停止中樹脂温度設定器39で設定されている第2の目標温度になるように制御されることになる。
【0025】
次に第2の実際の形態に係る樹脂の温度制御方法について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る温度制御方法も、準備段階と実運転段階とから構成されている。そして前実施の形態に係る射出成形機1を使用する。つまり準備段階用ノズルチップ6b、実運転用ノズルチップ6b’が交換可能な射出ノズル6を備えた射出成形機1によって実施する。しかしながら、第2の実施の形態においてはコントローラにおける処理が相違している。以下
図2によって第2の実施の形態に係る樹脂の温度制御方法を説明するが、
図2において、前実施の形態に係る射出成形機1および前実施の形態に係る温度制御方法と同じ作用を奏する部材、同じ作用を奏する機能ブロックには同じ符号を付す。そして同じ作用を奏する部材、同じ作用を奏する機能ブロックについては説明を省略する。
【0026】
第2の実施の形態においてコントローラは、次の点で前実施の形態と同様の構成になっている。すなわち、フィードバック制御部21の構成、樹脂温度設定器37において第2の目標温度が設定されている点が同様の構成になっている。しかしながらいくつかの点で相違している。まず、温度設定器22に対しては樹脂温度設定器37から第2の目標温度が常に入力されるようになっている点が相違している。次に推定温度演算器43が設けられている点が相違している。推定温度演算器43は、実運転段階において処理される機能ブロックであるが、第2の温度の推定値である第2の推定温度を推定するようになっている。具体的には、温度テーブル33から前実施の形態で説明した1式のような第1、2の温度の相関を得る。そして得られた相関に基づいて、第1の温度検出器27から得られる第1の温度から、第2の推定温度を推定する。例えば1式においては、左辺のT1に第1の温度検出器27から得られる第1の温度を入力し、T2について解く。このようなT2が第2の推定温度に対応している。第2の実施の形態においては、温度検出器23に入力される温度が常に第2の温度である点も相違している。ただし、準備段階においては第2の温度検出器28から得られる第2の温度が入力されるのに対し、実運転段階においては推定温度演算器43において推定された第2の推定温度が入力されることになる。このような入力の切換えは、入力切換スイッチ44によって実施されるようになっている。
【0027】
第2の実施の形態に係る制御方法において、準備段階については前実施の形態に係る制御方法と同様に実施する。つまり準段階用ノズルチップ6bを設けた状態で成形サイクルを実施して、温度テーブル33の各テーブル34、35、36に第1、2の温度を記録する。なお準備段階では入力切換スイッチ44は第2の温度検出器28からの温度を選択するようにする。実運転段階では、入力切換スイッチ44を推定温度演算器43からの入力に切換える。前記したように温度設定器22には第2の目標温度が入力される。そして推定温度演算器43は第2の推定温度を推定する。このように推定された第2の推定温度が温度検出器23に入力される。つまり実運転段階ではフィードバック制御部21において、第2の推定温度が第2の目標温度になるように制御することになる。これによって樹脂の温度が所望の目標温度になるように制御することができる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る樹脂の温度制御方法は色々な変形が可能である。例えば、準備段階と実運転段階において、ノズルチップを交換するように説明したが、射出ノズルを全体として交換するようにしてもよい。また、第1、2の温度の相関を表す式も変形が可能である。つまり第1、2の温度の相関は、必ずしも1式で示されているような1次関数で与えられる必要はなく、2次関数等の他の関数で与えられるようにしてもよい。さらには相関において他のデータも含めてもよく、例えば射出速度を加えてもよい。この場合、温度テーブル33には第1、2の温度だけでなく射出速度も記録できるようにする。そして準備段階において色々な射出速度で射出を繰り返して、第1、2の温度と射出速度を記録する。この場合重回帰分析を実施すると、次式のような相関が得られる。
T1=c・T2+d・V+e (2式)
ただし、T1:第1の温度、T2:第2の温度、V:射出速度、c、d、e:定数。
そして実運転段階において2式によって第1の目標温度を計算するときには、第2の目標温度だけでなく射出速度も入力すればよい。
【0029】
ところで、本実施の形態に係る制御方法の説明においては、準備段階において準備段階用ノズルチップ6bを設けて成形サイクルを実施するように説明した。しかしながら、準備段階用ノズルチップ6bは第2の温度センサ12が妨げになって金型のスプルにタッチできない可能性もある。この場合には成形サイクルは実施できない。このような場合には、準備段階において、射出ノズル6を金型にタッチさせずに樹脂を射出する射出動作だけを実施してもよい。射出動作は実質的に射出工程と同等であると見なせるので、準備段階で得られる第1、2の温度を射出工程温度テーブル34に記録する。実運転段階では、成形サイクルのうち射出工程においてのみ、前記したような温度制御を実施する。
【符号の説明】
【0030】
1 射出成形機 2 バンドヒータ
3 加熱シリンダ 4 スクリュ
6 射出ノズル 6a 射出ノズル本体
6b 準備段階用ノズルチップ 6b’ 実運転用ノズルチップ
8 第1の温度センサ 9 樹脂流路
10 ノズルヒータ 12 第2の温度センサ
21 フィードバック制御部 30 温度選択スイッチ
33 温度テーブル 37 樹脂温度設定器
42 目標温度切替スイッチ 43 推定温度演算器
【要約】
【課題】射出ノズルにおける樹脂の温度を、精度よく制御する温度制御方法を提供する。
【解決手段】準備段階において、第1、2の温度センサ(8、12)を備えた準備段階用射出ノズル(6)を加熱シリンダ(3)に設ける。第1の温度センサ(8)はノズル(6)の金属部分の温度である第1の温度を測定し、第2の温度センサ(12)は樹脂の温度である第2の温度を測定する。準備段階で成形サイクルを実施して第1、2の温度の相関を得る。実運転段階は、第1の温度センサ(8)のみを備えた射出ノズル(6)によって射出成形する。このとき第2の温度に対して与えられる第2の目標温度と、第1、2の温度の相関とに基づいて第1の温度に対する第1の目標温度を計算する。この第1の目標温度によって樹脂の温度を制御するようにする。結果的に樹脂の温度が第2の目標温度になるように制御される。
【選択図】
図1