(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコネクタの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態で示すコネクタ1は、基板2に実装されて、FPCや、FFC等の平型導体3を基板回路に導通接続する。
【0017】
また、本明細書中では、コネクタ1の幅方向(長手方向)をX方向、前後方向(短手方向)をY方向、コネクタ1の高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。そしてコネクタ1の前後方向Yにおいて挿入口4aが設けられる側を「前側」とし、反対側を「後側」として説明する。また、高さ方向Zにおける基板2の側を「下側」とし、コネクタ1側を「上側」として説明する。しかし、これによってコネクタ1の基板2への実装方法や使用方法を限定するものではない。
【0018】
なお、左側面図は右側面図とは左右対称に表されるため、記載を省略する。また、コネクタ1が備える2つの補強部材6は互いに左右対称に形成されるため、一方の外観斜視図については記載を省略する。
【0019】
実施形態〔図1〜図14〕:
本実施形態におけるコネクタ1は、基板2に対して平置きして固定した状態で平型導体3を挿入し、基板2と平型導体3とを導通接続させるコネクタである。
【0020】
コネクタ1は基板2に実装されて、平型導体3と基板2とを導通接続させる。また、コネクタ1は
図1〜
図14で示すように、ハウジング4と、端子5と、補強部材6と、グランド端子7と、弾性ロック片8とを備える。
【0021】
まず、本実施形態におけるコネクタ1の接続対象物である平型導体3の構成について説明する。
【0022】
〔平型導体〕
平型導体3は、突片部3Aと、本体部3Bとを有する。
【0023】
突片部3Aは、絶縁被覆によって形成され、本体部3Bの先端側から幅方向Xに沿って突出し、後述する係止縁部3c1と平型導体3の先端部3Cとの間に設けられる。また、後述する絶縁層3bから露出する導電線3aに対して、幅方向Xにおける両端側に配置される。
【0024】
本体部3Bは、導電線3aと、絶縁層3bと、係止凹部3cと、グランド接続部3dとを有する。
【0025】
導電線3aは、
図10で示すように、絶縁層3bによって表裏両面を覆われており、ハウジング4への挿入端側(先端側)では絶縁層3bから外部に露出する。この露出部分でコネクタ1の端子5と導通接触する。
【0026】
絶縁層3bは、絶縁被覆でなり、上述のように導電線3aの表裏両面に積層されて形成される。
【0027】
係止凹部3cは、
図7で示すように、平型導体3の挿入方向に沿う両側の側縁部3e,3eにおける先端部3C側に1つずつ設けられている。係止凹部3cは、平型導体3の側縁を凹状に切り欠いた切欠部として形成したものである。また、この係止凹部3cは係止縁部3c1と、奥縁部3c2とを有する。
【0028】
係止縁部3c1は、平型導体3の幅方向Xに沿う板縁でなり、この係止縁部3c1に後述する弾性ロック片8の係止突起8aが係止する。
【0029】
奥縁部3c2は、平型導体3の挿入方向に沿う板縁でなり、係止凹部3cにおける奥側に設けられる。
【0030】
以下、本実施形態のコネクタ1の構成について説明する。
【0031】
〔ハウジング〕
ハウジング4は、絶縁性の樹脂でなり、
図1〜
図6で示すように略直方体状に形成される。また、ハウジング4は、平型導体3の挿入口4aと、嵌合室4bと、端子収容部4cとを有する。
【0032】
挿入口4aは、ハウジング4の前側に設けられる前側側壁4dに形成され、嵌合室4bと連通する。
【0033】
嵌合室4bは、ハウジング4の内側に設けられ、前後方向Yに沿って設けられる内壁4b1と、幅方向Xに沿って設けられる奥側の内壁(以下、単に奥壁)4b2に囲まれて形成される。また、嵌合室4bは、後側に逃げ空間部4fを有する。
【0034】
逃げ空間部4fは、嵌合状態における平型導体3の先端部3Cよりも後側に設けられる。また、逃げ空間部4fは、嵌合状態における平型導体3の突片部3Aの先端と対向して設けられる。
【0035】
また、逃げ空間部4fは嵌合室4bの前後方向Yに沿う内壁4b1を延長して設けられる第1の側壁部4f1と、第1の側壁部4f1に対向する第2の側壁部4f2との間に形成される。逃げ空間部4fの高さ方向Zに沿う長さは平型導体3の板厚方向の長さと略同じである。こうして嵌合状態にある平型導体3と内壁4b1との間に余分な空間を設けないことで、コネクタ1を全体として低背とすることができる。
【0036】
端子収容部4cは、嵌合室4bと連通して、嵌合室4bの下側にハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。端子5は端子収容部4cに1つずつ収容される。
【0037】
〔端子〕
端子5は導電性の金属板を曲げ加工することで形成され、端子収容部4cに1つずつ収容されることで、ハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。また、端子5は
図10で示すように基板接続部5aと、固定部5bと、弾性片部5cと、接触部5dとを有する。
【0038】
基板接続部5aは、端子5の一端側に設けられており、基板2に対して半田付けされる。
【0039】
固定部5bは、縦片部5b1と横片部5b2とを有する。
【0040】
縦片部5b1は後側側壁4eに沿わせて設けられ、下端で基板接続部5aに連結する。また、横片部5b2はハウジング4の後側側壁4eを貫通しており、ここで端子5がハウジング4に対して固定されている。なお、本実施形態において、端子5とハウジング4はインサート一体成形によって形成される。
【0041】
弾性片部5cは、固定部5bの横片部5b2の先端からハウジング4の挿入口4a側に向けて、前後方向Yに沿って片持ち梁状に伸長する。また、弾性片部5cの先端側には接触部5dが弾性支持されている。弾性片部5cは、嵌合室4bの中で、横片部5b2との連結部を支点として、コネクタ1の高さ方向Zに沿って弾性変形する。
【0042】
接触部5dは、平型導体3との接触方向に向けて山型状に屈曲し、その略中央には平型導体3と導通接続する接点部5d1が形成される。接点部5d1は、嵌合室4bの内部で平型導体3と導通接触する。
【0043】
〔補強部材〕
補強部材6は導電性の金属板で形成され、
図8で示すようにハウジング4の下側、かつ前後方向Yにおける前側であって、ハウジング4の幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられる。一対の補強部材6,6は、互いに左右対称に形成され、嵌合室4bを形成する壁体4gを補強する。
【0044】
補強部材6はハウジング4に対する固定部6aと、接地接続部6bと、補強板6cと、段部6dとを有する。
【0045】
固定部6aは、高さ方向Zに沿う板面を有しており、ハウジング4の底面側に設けられる圧入孔(図示略)に圧入される。この固定部6aによって、補強部材6はハウジング4に対して固定されている。
【0046】
接地接続部6bはハウジング4の底面に平行な板面を有する。また、接地接続部6bはハウジング4の下側でハウジング4から外部に露出して、基板2が備える接地接続用のパッド(図示略)に半田付けされる。
【0047】
補強板6cはハウジング4の底面に平行な板面を有する。また、補強板6は、ハウジング4の底壁を形成する壁体4gの板厚内に差し込まれ、ハウジング4から底面側には露出していない。
【0048】
段部6dは、接地接続部6bと補強板6cの間に形成される。上記のように接地接続部6bはコネクタ1の下側に位置して底面から露出するが、補強板6cは接地接続部6bよりも上側に設けられて、ハウジング4の内部に収容されている。こうした高さの異なる2つの部位を段部6dが連結している。
【0049】
〔グランド端子〕
グランド端子7は、導電性の金属片にて形成されており、補強部材6と一体として設けられる。また、
図8で示すようにハウジング4の幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられる。
【0050】
グランド端子7は、補強部材6から前後方向Yにおける前側に向けて片持ち梁状に伸長し、上側に向けて屈曲してから前後方向Yにおける後側に向けて折り返す、略U字状に形成される。その先端側は嵌合室4b内に入り込んでおり、先端側には嵌合状態における平型導体3との接触方向に向けて山形状に屈曲し、平型導体3のグランド接地部3dと接触する屈曲部7aが形成されている。
【0051】
こうしてグランド端子7を補強部材6と一体として形成することで、一つの操作でグランド端子7と補強部材6とをハウジング4に取り付けることが可能になる。よって、組立ての作業効率を高めることができ、別部材とするよりも部品点数も減らすことができる。
【0052】
〔弾性ロック片〕
弾性ロック片8は、
図9で示すように固定部8eと、湾曲部8dと、弾性腕8cと、「ロック部」としての係止突起8aと、伸長部8fと、操作部8bとを有する。
【0053】
固定部8eは、前後方向Yに沿って前側に向けて伸長して設けられる。固定部8eの上側には突部が設けられており、ハウジング4の嵌合室4bに設けられる固定溝(図示略)に圧入されて固定される。
【0054】
湾曲部8dは、固定部8eに連続して設けられ、前後方向Yにおける前側に突き出す略U字状に形成される。また、湾曲部8dは、固定部8eよりも幅方向Xにおける中央側に設けられており、固定部8eがハウジング4の壁体4gの内部に固定されているのに対して湾曲部8dは嵌合室4bの内部に収容されている。
【0055】
弾性腕8cは、板状片でなり、湾曲部8dから前後方向Yに沿って後側に向けて設けられる。
【0056】
係止突起8aは、弾性腕8cの前後方向Yにおける略中央に、上側に突出する山型状に形成される。また、係止突起8aは、高さ方向Zに沿う当接縁8a1を有する。係止突起8aの板幅は、係止縁部3c1において平型導体3の板幅方向に沿う長さの略半分程度に相当する長さになるように設けられている。このように前記係止縁部3c1の長さを、係止突起8aの板幅よりも、長く形成することで、係止突起8aを係止縁部3c1にしっかりと係止させ、抜け止め効果を高めることができる。
【0057】
後述の操作部8bを下側に向けて押圧操作することで湾曲部8dが弾性変形し、各弾性腕8c,8cもまた、高さ方向Zで弾性変形する。その際、係止突起8aは弾性腕8cの弾性変形に追従して高さ方向Zで弾性変位する。
【0058】
伸長部8fは、弾性腕8cの後側端部に繋がり、幅方向Xに沿って伸長する略矩形の平板状に形成される。また、伸長部8fは、ハウジング4の後側で外部に露出し、後側側壁4eに沿って配置される。
【0059】
操作部8bは、伸長部8fに繋がり、幅方向Xに沿って伸長する略矩形の平板状に形成される。また、操作部8bは、ハウジング4の上側に設けられる天面部4hの上面に沿って設けられ、天面部4hに形成される凹部4h1の上側に設けられる。
【0060】
〔コネクタの小型化〕
弾性ロック片8は、弾性腕8c、係止突起8a、湾曲部8d、固定部8eがすべてハウジング4の内部に収まる構造となっている。よってハウジング4の外部への露出を少なくすることで、コネクタ1全体のコンパクト化に寄与している。
【0061】
補強部材6の接地接続部6bは基板2の板面方向でハウジング4から外側には突出しておらず、ハウジング4の底面の面内に設けられる。よって、コネクタ1をよりコンパクトにして基板2の専有面積を小さく実装することができる。
【0062】
接地接続部6bは、底面側が基板2に対する半田付け部として機能し、ここでコネクタ1を基板2に固定される。固定部6aはハウジング4の底面側に位置しており、ハウジング4から外部には突出していない。よって、こうした点においてもよりコンパクトなコネクタ1とすることができる。
【0063】
また、操作部8bは天面部4hの凹部4h1の上側に配置されている。平型導体3をコネクタ1から抜去する際には、操作部8bをハウジング4の側に、下側に向けて押圧するが、その際、操作部8bはハウジング4の凹部4h1に入り込むように変位する。よってハウジング4と干渉せずに十分に操作部8bをハウジング4側に押圧することができる。また、このように操作部8bを凹部4h1の上側に配置することで、操作部8bを高さ方向Zでの変位量分だけハウジング4の天面部4hから上側に突出させる必要が無いため、コネクタ1の低背化が可能である。
【0064】
〔平型導体の嵌合方法の説明〕
次に、コネクタ1の使用方法について説明する。
【0065】
まず、
図10で示すように、平型導体3を挿入口4aから嵌合室4bに挿入する。平型導体3の先端部3Cは、弾性ロック片8の係止突起8aに接触して、基板2の側に押し下げ、係止突起8aを乗り越える。その際、係止突起8aは倒れるように弾性変形するが、この間、弾性ロック片8には係止突起8aが天面部4hの側に戻るように復元力が働いている。そのため、平型導体3は係止突起8aによって天面部4hの側に押圧されており、この状態で平型導体3は嵌合室4bにおける天面部4hの下面に沿わせながら、コネクタ1の嵌合室4bに挿入される。
【0066】
この際、ハウジング4は係止突起8aに押圧された平型導体3から押圧されるが、ハウジング4の壁体4gの板厚内には補強板6cが挿入されているため、ハウジング4の剛性が高められている。よって、嵌合室4bに挿入される平型導体3から壁体4gが負荷を受けても、壁体4gは変形し難くなっている。
【0067】
その後、弾性ロック片8の係止突起8aを押し下げた状態で、さらに平型導体3を嵌合室4bの奥側に向けて挿入することで、平型導体3の先端部3Cは端子5の接触部5dに上側から接触し、端子5を押し下げて接点部5d1を乗り越える。この状態で平型導体3は、接点部5d1と天面部4hとによって挟持されて平型導体3と端子5とが導通接触する。
【0068】
〔平型導体の抜け止め構造〕
上記のように平型導体3を嵌合室4bの奥まで挿入すると、やがて平型導体3の係止凹部3cは弾性ロック片8の係止突起8aの真上に到達する。そして、下側に弾性変位している弾性ロック片8の係止突起8aが、復元力によって上側に変位して、係止凹部3cに下側から入り込む。この際、弾性ロック片8の係止突起8aに設けられる当接縁8a1は、高さ方向Zに沿う状態となる。そして、当接縁8a1が係止凹部3cの係止縁部3c1に当接係止することで、コネクタ1をロックする(
図11)。
【0069】
こうして弾性ロック片8が、平型導体3に対してコネクタ1から抜けないように係止し、コネクタ1と平型導体3の接続信頼性を向上させることができる。
【0070】
平型導体3がコネクタ1にロックされた状態で平型導体3に抜去方向への力が加わると、平型導体3の係止凹部3cの係止縁部3c1に弾性ロック片8の係止突起8aが当接して抜け止めされる。
【0071】
このように本実施形態のコネクタ1によれば、アクチュエータやスライダなどの別部材を設けることなく平型導体3をコネクタ1にロックすることができるため、コネクタ1を小型化することができる。また、平型導体3をアクチュエータやスライダ等のガタが生じる可能性のある可動構造の部材に沿わせるのではなく、ハウジング4自体の嵌合室4bの内壁4b1の面に沿わせて嵌合させるので、ガタの発生等の不安定要素の無い信頼性のある嵌合状態を維持することができる。さらに、平型導体3をコネクタ1に挿入するという一つの動作だけで上記のロックが可能となるため、嵌合作業が容易である。
【0072】
〔平型導体の抜去方法〕
弾性ロック片8はハウジング4の上側に設けられる操作部8bを有しており、弾性ロック片8をハウジング4の外側から操作できる。この操作によって係止突起8aを平型導体3の係止凹部3cから離間させてロック状態を解除し、平型導体3をハウジング4から抜去することが容易に可能となる。
【0073】
以下、この抜去方法について具体的に説明する。操作部8bが下側(矢示C方向)に向けて押圧されると、弾性ロック片の湾曲部8dが弾性変形し、弾性腕8cが斜めに傾斜する。これにより係止突起8aが押下げられて平型導体3の係止凹部3cから抜ける。こうして係止凹部3cの係止縁部3c1が係止突起8aの当接縁8a1から離間することで平型導体3の係止が外れてロック状態が解除されるため、平型導体3をコネクタ1から抜去することができる。
【0074】
操作部8bはハウジング4の凹部4h1に入り込むように押圧されることで、係止突起8aを十分に下側に変位させて平型導体3の係止凹部3cから抜くことができる。
【0075】
以上のように、平型導体3の係止凹部3cに係止突起8aを挿入し、係止縁部3c1が平型導体3の抜去方向で当接縁8a1に当接係止することで、平型導体3をコネクタ1から抜け止めすることができる。また、操作部8bを操作することで、弾性腕8cを高さ方向Zに沿って上下方向に弾性変位させて係止突起8aが係止凹部3cに挿入されたり、抜けたりするため、当接縁8a1を平型導体3の係止縁部3c1に対して容易に係脱できる。
【0076】
〔平型導体の破断防止構造〕
コネクタ1から平型導体3を抜去する際には、上記のように操作部8bを下側に向けて押圧し、係止突起8aの当接縁8a1を係止凹部3cの係止縁部3c1から離間させて係止突起8aを平型導体3の係止凹部3cから抜く必要がある。しかし、作業者(図示略)が操作手順を誤って、操作部8bを押し下げる作業をしないまま、または十分に押し下げないまま平型導体3を引っ張ってしまう場合がある。
【0077】
仮に上述の逃げ空間部4fを設けず、嵌合室4bの奥側で幅方向Xに沿って設けられる奥壁4b2が、嵌合状態にある平型導体3の先端部3Cにおいて、幅方向Xに沿う両端側と当接するものとする。そして、平型導体3を、係止突起8aによる平型導体3のロック状態からさらに抜去方向に向けて引っ張る。すると、平型導体3の本体部3Bは抜去方向に移動するが、係止縁部3c1が係止突起8aに引っ掛かるため、突片部3Aは平型導体3の本体部3Bに追従できずに、係止突起8aと奥壁4b2の間に取り残されることになる。
【0078】
この状態からさらに平型導体3を抜去方向に引っ張ると、突片部3Aの付け根3A1には、抜去方向への引っ張りによって係止縁部3c1が係止突起8aに接触し係止する力に対する反力が集中して作用する。上記のように嵌合室4bの奥壁4b2は嵌合状態にある平型導体3の先端部3Cと当接し、突片部3Aと奥壁4b2の間には空間が無いため、突片部3Aは係止突起8aによる係止を避けるために移動したり変形したりすることができない。よって突片部3Aは、係止突起8aと、嵌合室4bの奥壁4b2との間から出ることができないため、突片部3Aの付け根3A1には過剰な力が掛かり、破断が生じる場合がある。その結果、突片部3Aを除く平型導体3の本体部3Bだけが嵌合室4bの外部に引っ張り出されて、突片部3Aが嵌合室4b内部に取り残されるという事態が生じてしまう。この場合、平型導体3の断片によって平型導体3と端子5との導通接触が阻害され、接続信頼性が低下するおそれがあるため、そうした破断が生じないようにする必要がある。
【0079】
これに対して本実施形態では、嵌合室4bが、突片部3Aの先端との対向位置に、平型導体3を抜去方向へ引っ張ることで係止突起8aに当接し挿入方向に変形した突片部3Aが入り込む逃げ空間部4fを有する(
図13,
図14)。この場合、上記のようにロック状態で平型導体3が抜去方向に強く引っ張られると、突片部3Aが挿入方向に変形することができる。これは、嵌合室4bが、変形した突片部3Aが入り込むことができる逃げ空間部4fを有するためである。具体的には、係止縁部3c1が係止突起8aに当接することで、突片部3Aが嵌合室4bにおいて係止突起8aよりも奥側の位置に残ろうとする。その状態でさらに平型導体3の本体部分が抜去方向に引っ張られることで、係止突起8aから突片部3Aに負荷が掛かる。その結果、突片部3Aは、付け根3A1部分で本体部分と繋がった状態で、その先端が前記挿入方向に向かうように変形する。
【0080】
また本実施形態では、突片部3Aが平型導体3の幅方向Xにおいて導電線3aの両端側に設けられている。導電性金属で設けられる導電線3aよりも、絶縁性被覆でなる絶縁層3bの方が柔らかいため、突片部3Aは変形しやすくされている。そして、突片部3Aが変形することで係止縁部3c1は抜去方向に対して斜めになり、平型導体3の角部3A2が嵌合状態における平型導体3の先端部3Cよりも前側に突出する。こうして角部3A2を逃げ空間部4fに入り込ませることができる。
【0081】
係止突起8aによる負荷を受けて、突片部3Aは付け根3A1部分から回動するように、変形することができる(
図13,
図14)。このような変形によって、突片部3Aが係止突起8aによる係止を回避するように変形しつつ平型導体3の本体部3Bに追従して抜去方向に移動できる。以上より、突片部3Aの付け根3A1に過剰な負荷が掛かり難くなり、破断が生じることなく平型導体3をコネクタ1から抜去することができる。
【0082】
こうして、誤って弾性ロック片8によるロックを解除しないまま、または解除が十分にされないまま平型導体3をコネクタ1から抜去しても、突片部3Aが破断を生じ難くすることができる。
【0083】
第1の側壁部4f1は、嵌合室4bにおいて前後方向Yに沿う内壁4b1を延長して形成されている。これに対して第2の側壁部4f2は、弾性ロック片8の係止突起8aよりも、幅方向Xにおける中央側に設けられるとともに、嵌合状態にある平型導体3の係止凹部3cの奥縁部3c2よりもさらに幅方向Xにおける中央側に設けられる。
【0084】
これにより、第1の側壁部4f1と第2の側壁部4f2の間の距離であって、逃げ空間部4fの幅方向Xに沿う長さL1は、突片部3Aの幅方向Xに沿う長さ(突出量)L2よりも長く形成されている(
図12)。これにより、平型導体3の先端部3Cにおける突片部3A側で、奥壁4b2と接触する部分が少なくなる。したがって、突片部3Aにおいて奥壁4b2に変形を制限される部分が少なくなり、より変形しやすくすることができる。また、逃げ空間部4fをより広く設けることができるため、変形した突片部3Aを多く逃がす(収容する)ことができる。これにより、突片部3Aの付け根3A1部分の破断をより生じ難くすることができる。
【0085】
以上のように、本実施形態のコネクタ1によれば、弾性ロック片8によるロックを解除せずに平型導体3をコネクタ1から抜去しても、平型導体3の突片部3Aが破断し難くすることができる。
【0086】
変形例:
前記本実施形態では、逃げ空間部4fの高さ方向Zに沿う長さを平型導体3の板厚方向の長さと略同じにすることで、低背にできる例を示した。これに対して、逃げ空間部4fの高さ方向Zに沿う長さを平型導体3の板厚方向の長さよりも長くし、平型導体3の上側や下側に空間を設けても良い。こうすることで、突片部3Aを上下の空間を利用して上側や下側に向けて屈曲させることで、係止突起8aを避けやすくすることができる。また、変形した突片部3Aにしわが生じて、高さ方向Zに沿う凹凸が生じても、前記空間でその凹凸を許容することができる。
【0087】
前記本実施形態では、係止突起8aの板幅を、平型導体3の係止縁部3c1において平型導体3の板幅方向に沿う長さよりも短くすることで、係止突起8aを係止縁部3c1にしっかりと係止させ、抜け止め効果を高めることができる例を示した。これに対し、係止縁部3c1における前記長さを、例えば係止突起8aの板厚と略同じ長さにすることで、ロック状態で平型導体3を引っ張った際に係止突起8aが係止縁部3c1から離間しやすくなり、抜去しやすくすることができる。こうすることで、突片部3Aをより破断し難くすることができる。
【0088】
前記本実施形態では、逃げ空間部4fの幅方向Xに沿う長さL1は、突片部3Aの幅方向Xに沿う長さ(突出量)L2よりも長く形成されている例を示した。これに対し、長さL1と長さL2が同じ長さであったり、逆に長さL1が長さL2より短く設けられても良い。こうすることで、突片部3Aをより変形し難くなるよう調整し、弱い力で平型導体3を引っ張った場合には、平型導体3がコネクタ1から抜け難くすることもできる。
【解決手段】端子5と、端子5を保持し、平型導体3の挿入口と、平型導体3と端子5とが導通接触する嵌合室とを有するハウジング4と、嵌合室の内部で、平型導体3が抜去方向で係止する係止突起8aとを備えており、平型導体3は、嵌合室への挿入方向に沿う側縁部3eに設けられ、係止突起8aに抜去方向で当接係止する係止縁部3c1を有する係止凹部3cと、係止縁部3c1と平型導体3の先端部3Cとの間に位置する突片部3Aとを有するコネクタ1について、嵌合室に逃げ空間部4fを設けた。これにより、ハウジング4に突片部3Aが平型導体3の抜去時に係止突起8aに当接して挿入方向に変形し、逃げ空間部4fに入り込むことができる。よって突片部3Aに過度な負荷が加えられて損傷を受けることを抑制できる。