特許第5809346号(P5809346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809346
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】促進剤溶液を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/40 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   C08F4/40
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-500357(P2014-500357)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公表番号】特表2014-508842(P2014-508842A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012054933
(87)【国際公開番号】WO2012126919
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年11月12日
(31)【優先権主張番号】11159564.1
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/467,569
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】レイジンダーズ,ヨハネス マルチネス ゲラルド マリア
(72)【発明者】
【氏名】コーズ,フレデリック ウィレム カレル
(72)【発明者】
【氏名】タルマ,オウク ジェラルドゥス
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523752(JP,A)
【文献】 特開昭61−151198(JP,A)
【文献】 特表2005−528496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物とともにレドックス系を形成するのに適した促進剤溶液を調製するための方法であって、遷移金属塩または錯体を、ヒドロキシ官能性溶媒と窒素含有塩基とを含む液状配合物に、50〜200℃の範囲の温度において添加するステップを含み、
前記液状配合物が、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物を含み、窒素含有塩基の導入前に前記アルカリまたはアルカリ土類金属化合物が前記ヒドロキシ官能性溶媒に溶解される、方法。
【請求項2】
遷移金属が、Cu、Mn、Fe、およびVからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化物とともにレドックス系を形成するのに適した促進剤溶液を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックス系は、樹脂の硬化のために適用することができる。従来のレドックス系は、酸化剤(例えば、過酸化物)と、促進剤としての可溶性遷移金属イオンとを含む。促進剤は、より低い温度で酸化剤の活性を高め、結果的に、硬化速度を速める役割を果たす。
【0003】
促進剤系は、異なる方法で、硬化されることになる樹脂に添加することができる。1つの方法は、過酸化物を添加する前に、樹脂への個々の促進剤成分の添加を含む。この添加は、過酸化物の添加の直前、またはその数日もしくは数週間前に行うことができる。後者の場合では、本発明者らは、樹脂と促進剤成分とを含み、過酸化物とともにさらに使用および硬化されるまで保存できる、予備促進化樹脂組成物に言及する。別の方法は、促進剤成分を含有する促進剤溶液の予備調製を含み、その溶液は、さらに使用され樹脂に添加されるまで、保存することができる。予備促進化樹脂は、促進剤系の個々の成分を樹脂に添加することにより、または、促進剤溶液の形態で、混合状態のこれらの成分を添加することにより調製することができる。
【0004】
促進剤溶液の働きは、その調製法に影響を受けることが今や判明した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、過酸化物とともにレドックス系を形成するのに適した促進剤溶液を調製するための方法であって、遷移金属塩または錯体を、ヒドロキシ官能性溶媒と窒素含有塩基とを含む液状配合物に、50〜200℃の範囲の温度において添加するステップを含む方法に関する。
【0006】
この方法は、保存安定性のある、すなわち、周囲温度で6か月間保存したときに沈殿が見られない促進剤溶液の調製を可能にする。さらに、この方法は、Cuの溶解が速いので、該溶液の製造時間の短縮をもたらす。
【0007】
本発明はまた、上記の方法により得ることができる促進剤溶液を硬化性樹脂に混合することによって、硬化性樹脂を予備促進化する(pre-accelerating)ための方法に関する。
【0008】
本発明の方法によれば、ヒドロキシ官能性溶媒と窒素含有塩基とを含んだ液状配合物は、50〜200℃、好ましくは80〜110℃の範囲の温度に加熱される。あるいは、窒素含有塩基が、その範囲の温度をすでに有するヒドロキシ官能性溶媒含有溶液に添加される。またはその逆である。
【0009】
この温度において、遷移金属塩または錯体が、混合物に添加され、溶解する。
【0010】
該方法の間、配合物は、好ましくは撹拌される。次いで、得られた透明な溶液は、室温に冷却される。該方法は、約1〜8時間かかる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による方法で使用するのに好ましい遷移金属は、Co以外の遷移金属である。より好ましくは、遷移金属は、Mn、Fe、Cu、およびVからなる群から選択される。2種以上の遷移金属を使用することも可能である。好ましくは、遷移金属の少なくとも1種は、Mn、Fe、およびCuから選択される。
【0012】
第1および第2の遷移金属の適切な化合物は、それらのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酸化物、またはカルボン酸塩などの、それらの塩または錯体である。適切なカルボン酸塩の例は、乳酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アセチルアセトネート、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、またはナフテン酸塩である。
【0013】
好ましいマンガン化合物は、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、乳酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マンガン、オクタン酸マンガン、ノナン酸マンガン、ヘプタン酸マンガン、ネオデカン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、および酢酸マンガン、ならびに、ピリジン、ビピリジン、およびそれらの誘導体のMn錯体、ならびに、WO2011/83309に開示されている三座、四座、五座、または六座の窒素供与配位子のMn錯体である。Mn(II)、Mn(III)、Mn(IV)およびMn(VII)化合物のいずれか1つを使用することができる。
【0014】
好ましい銅化合物は、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、乳酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、オクタン酸銅、ノナン酸銅、ヘプタン酸銅、ネオデカン酸銅、ナフテン酸銅、および酢酸銅である。Cu(I)塩およびCu(II)塩の両方を使用することができる。
【0015】
好ましい鉄化合物は、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、乳酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、オクタン酸鉄、ノナン酸鉄、ヘプタン酸鉄、ネオデカン酸鉄、ナフテン酸鉄、および酢酸鉄、ならびに、ピリジン、ビピリジン、およびそれらの誘導体の鉄錯体、ならびに、WO2011/83309の三座、四座、五座、または六座の窒素供与配位子の鉄錯体である。Fe(II)およびFe(III)の両方を使用することができる。より好ましくは、それは、WO2011/83309にさらに開示されている、五座の窒素供与配位子の鉄(II)または鉄(III)錯体である。
【0016】
MnおよびFeの両方について、WO2011/83309による好ましい窒素供与配位子は、ビスピドン配位子およびTACN−Nx配位子である。好ましいビスピドン配位子は、ジメチル−2,4−ジ−(2−ピリジル)−3−メチル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジカルボキシレート(N2py3o−Cl)である。好ましいTACN−Nx配位子は、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Me−TACN)である。
【0017】
遷移金属塩または錯体は、好ましくは、金属として決定された、少なくとも50mmol/l、より好ましくは少なくとも100mmol/lの量で、本発明による方法から生じる促進剤溶液中に存在する。それは、好ましくは、5000mmol/l未満、より好ましくは2500mmol/l未満、最も好ましくは1000mmol/l未満の量で促進剤溶液中に存在する。
【0018】
本発明の方法で使用するのに適切な窒素含有塩基は、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、またはN,N−ジメチル−p−トルジン(toludine)(DMPT)などの第三級アミン、1,2−(ジメチルアミン)エタンなどのポリアミン、ジエチルアミンなどの第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、またはモノエタノールアミンなどのエトキシル化アミン、およびビピリジンなどの芳香族アミンである。
【0019】
窒素含有塩基は、好ましくは、5〜50wt%の量で、本発明による方法から生じる促進剤溶液中に存在する。予備促進剤樹脂中では、窒素含有塩基は、好ましくは、0.5〜10g/kg樹脂の量で存在する。
【0020】
用語「ヒドロキシ官能性溶媒」は、式HO−(−CH−C(R−(CH−O−)−R(式中、各Rは独立に、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、および1〜10個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基からなる群から選択され、n=1〜10、m=0または1、およびRは、水素、または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である)の化合物を含む。最も好ましくは、各Rは独立に、H、CH、およびCHOHから選択される。適切なヒドロキシ官能性溶媒の例は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびポリエチレングリコールのようなグリコール、グリセロール、ならびにペンタエリトリトールである。ヒドロキシ官能性溶媒は、好ましくは、1〜50wt%、好ましくは5〜30wt%の量で、本発明による方法から生じる促進剤溶液中に存在する。
【0021】
本発明の方法から生じる促進剤溶液は、場合により、1種または複数の増進剤、水、還元剤、添加剤、および/またはフィラーを含有することができる。
【0022】
2つの重要な部類の増進剤、すなわち、カルボン酸金属塩、リン含有化合物、および1,3−ジケトンが存在する。
【0023】
1,3−ジケトンの例は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、およびジベンゾイルメタン、ならびに、アセトアセテート、例えば、ジエチルアセトアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、ジプロピルアセトアセトアミド、ジブチルアセトアセトアミド、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、およびブチルアセトアセテートである。
【0024】
リン含有化合物の例は、式P(R)および式P(R)=O(式中、各Rは独立に、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、および1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される)を有するリン化合物である。好ましくは、少なくとも2つのR基は、アルキル基またはアルコキシ基のいずれかから選択される。適切なリン含有化合物の具体的な例は、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、ジブチルホスファイト、およびトリエチルホスフェートである。
【0025】
適切なカルボン酸金属塩の例は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の、2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、およびナフテン酸塩である。好ましいアルカリ金属は、Kである。それらの塩は、該方法においてそのまま添加することもできるし、in situで形成することもできる。例えば、2−エチルヘキサン酸アルカリ金属塩は、アルカリ金属水酸化物および2−エチルヘキサン酸を溶液に添加することにより、in situで調製することができる。この調製物は、発熱性であり、その反応熱を、本発明の方法において、溶液を加熱するために使用することができる。したがって、より好ましい実施形態では、本発明の方法の第1のステップは、窒素含有塩基または他の増進剤の添加前に、ヒドロキシ官能性溶媒中で2−エチルヘキサン酸アルカリ金属塩を調製することを含む。次いで、窒素含有塩基が、得られた温かい2−エチルヘキサン酸アルカリ金属塩溶液に添加され、その後、遷移金属塩が添加される。
【0026】
アセトアセテートが、特に好ましい増進剤である。特に好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドである。さらに好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドと2−エチルヘキサン酸カリウムとの組み合わせである。また、ジエチルアセトアセトアミドとジブチルホスフェートとの組み合わせも好ましい。
【0027】
1種または複数の増進剤が、本発明による方法から生じる促進剤溶液中に存在する場合、それらの量は、すべて促進剤溶液の総重量に対して、好ましくは少なくとも0.01wt%、より好ましくは少なくとも0.1wt%、さらに好ましくは少なくとも1wt%、より好ましくは少なくとも10wt%、最も好ましくは少なくとも20wt%;好ましくは90wt%以下、より好ましくは80wt%以下、最も好ましくは70wt%以下である。
【0028】
1,3−ジケトンおよびリン酸含有化合物などの他の増進剤が、任意のカルボン酸金属塩の溶解後、しかし、錯体の遷移金属塩の添加前に、液状配合物に好ましくは添加される。
【0029】
液状配合物は、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、および、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アルコール、リン酸、またはカルボン酸基を有する溶媒などの、追加の有機化合物をさらに含むことができる。適切な溶媒の例は、ホワイトスピリットおよび無臭ミネラルスピリット(OMS)などの脂肪族炭化水素溶媒、ナフテンおよびナフテンとパラフィンとの混合物などの芳香族炭化水素溶媒、イソブタノール;ペンタノール;1,2−ジオキシム、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TxIB);ジブチルマレエート、ジブチルスクシネート、エチルアセテート、ブチルアセテート、ケトグルタル酸のモノおよびジエステル、ピルベート、および、例えば、アスコルビン酸パルミテートなどのアスコルビン酸のエステルなどのエステル;アルデヒド;モノおよびジエステル、より特定的には、ジエチルマロネートおよびスクシネート;1,2−ジケトン、特にジアセチルおよびグリオキサール;ベンジルアルコール、ならびに脂肪族アルコールである。
【0030】
液状配合物は、還元剤をさらに含有することができる。還元剤の例は、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)、還元糖、例えば、グルコースおよびフルクトース、シュウ酸、ホスフィン、亜リン酸塩、有機または無機亜硝酸塩、有機または無機亜硫酸塩、有機または無機硫化物、メルカプタン、およびアルデヒド、ならびにそれらの混合物である。アスコルビン酸(本明細書におけるこの用語は、L−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸を含む)が、好ましい還元剤である。
【0031】
還元剤は、本発明の方法から生じる促進剤溶液中に存在する場合、0.1wt%超、好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも5%の量で好ましくは存在する。それは、好ましくは、すべて促進剤溶液の総重量に対して、30wt%未満、より好ましくは20wt%未満の量で存在する。
【0032】
液状配合物は、場合により、水を含むことができる。存在する場合、本発明による促進剤溶液の含水量は、好ましくは少なくとも0.01wt%、より好ましくは少なくとも0.1wt%である。含水量は、すべて促進剤溶液の総重量に対して、好ましくは50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、より好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは10wt%以下、最も好ましくは5wt%以下である。
【0033】
本発明の方法から生じる促進剤溶液は、硬化性樹脂に混合することができ、それにより、予備促進化樹脂が生じる。
【0034】
適切な硬化性樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい樹脂は、(メタ)アクリレート樹脂、UP樹脂、およびビニルエステル樹脂である。本出願の文脈において、用語「不飽和ポリエステル樹脂」および「UP樹脂」は、不飽和ポリエステル樹脂とエチレン性不飽和モノマー化合物との組み合わせを指す。用語「(メタ)アクリレート樹脂」は、アクリレートまたはメタクリレート樹脂と、エチレン性不飽和モノマー化合物との組み合わせを指す。上に定義したUP樹脂およびアクリレート樹脂は、一般的なものであり、商業的に入手可能である。硬化は、一般に、本発明による促進剤溶液、および開始剤(過酸化物)を樹脂に添加することにより、または、過酸化物を予備促進化樹脂に添加することにより始められる。
【0035】
本発明のプロセスにより硬化される適切なUP樹脂は、いわゆるオルト樹脂、イソ樹脂、イソnpg樹脂、およびジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂である。そのような樹脂の例は、マレイン酸系、フマル酸系、アリル系、ビニル系、およびエポキシ系樹脂、ビスフェノールA樹脂、テレフタル酸系樹脂、およびハイブリッド樹脂である。
【0036】
ビニルエステル樹脂には、例えば、メタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、およびそれらのオリゴマーをベースにしたアクリル樹脂がある。
【0037】
アクリル樹脂には、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、ジアクリレート樹脂、およびジメタクリレート樹脂、ならびにそれらのオリゴマーがある。
【0038】
エチレン性不飽和モノマー化合物の例としては、スチレン、およびα−メチルスチレンのようなスチレン誘導体、ビニルトルエン、インデン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン、ビニルシロキサン、ビニルカプロラクタム、スチルベン、さらに、ジアリルフタレート、ジベンジリデンアセトン、アリルベンゼン、メチルメタクリレート、メタクリレート、(メタ)アクリル酸、ジアクリレート、ジメタクリレート、アクリルアミド;ビニルアセテート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、光学用途に使用されるアリル化合物(例えば、(ジ)エチレングリコールジアリルカーボネート)、クロロスチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリレート反応性希釈剤の適切な例は、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびそれの異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(ビス)マレイミド、(ビス)シトラコンイミド、(ビス)イタコンイミド、ならびにそれらの混合物である。
【0039】
予備促進化樹脂におけるエチレン性不飽和モノマーの量は、樹脂の重量に対して、好ましくは少なくとも0.1wt%、より好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも5wt%である。エチレン性不飽和モノマーの量は、好ましくは50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、最も好ましくは35wt%以下である。
【0040】
本発明による方法から生じる促進剤溶液が、樹脂を硬化させるために、または予備促進化樹脂を調製するために使用される場合、促進剤溶液は、一般に、樹脂の重量に対して、少なくとも0.01wt%、好ましくは少なくとも0.1wt%、好ましくは5wt%以下、より好ましくは3wt%以下の促進剤溶液の量で用いられる。
【0041】
樹脂を硬化させるのに適し、かつ、二成分組成物の第2の成分中に存在するのに適した過酸化物としては、従来から使用されているケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアリールペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、およびペルオキシジカーボネート、さらに、ペルオキシカーボネート、ペルオキシケタール、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、および過酸化水素などの、無機過酸化物および有機過酸化物が挙げられる。好ましい過酸化物は、有機ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、およびペルオキシカーボネートである。さらに好ましいのは、ヒドロペルオキシドおよびケトンペルオキシドである。好ましいヒドロペルオキシドとしては、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、およびピネンヒドロペルオキシドが挙げられる。好ましいケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、およびアセチルアセトンペルオキシドが挙げられる。
【0042】
もちろん、2種以上の過酸化物の混合物、例えば、ヒドロペルオキシドまたはケトンペルオキシドと、ペルオキシエステルとの組み合わせも使用することができる。
【0043】
特に好ましい過酸化物は、メチルエチルケトンペルオキシドである。当業者は、これらの過酸化物を、従来の添加剤、例えば、フィラー、ピメント(piment)および鈍感剤(phlegmatizer)と組み合わせることができることを理解するであろう。鈍感剤の例は、親水性エステルおよび炭化水素溶媒である。樹脂を硬化させるのに使用される過酸化物の量は、好ましくは少なくとも0.1phr(per hundred resin)、より好ましくは少なくとも0.5phr、最も好ましくは少なくとも1phrである。過酸化物の量は、好ましくは8phr以下、より好ましくは5phr以下、最も好ましくは2phr以下である。
【0044】
過酸化物が、予備促進化樹脂と混合される場合、過酸化物は、樹脂と促進剤溶液とを前もって混合したものに添加されるか、前もって樹脂と混合された後に促進剤溶液に添加される。得られた混合物は、混合および分散している。硬化プロセスは、開始剤系、促進剤系、硬化速度を適合させる化合物、および硬化されることになる樹脂組成物に応じて、−15℃から250℃までの任意の温度で行うことができる。好ましくは、硬化プロセスは、化合物を注ぐことを介する、ハンドレイアップ、スプレーアップ、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、コーティング(例えば、ゲルコートおよび標準のコーティング)、ボタン製造、遠心注型、波板または平面パネル、裏装系、台所の流しなどの用途において通常使用される周囲温度で行われる。しかし、硬化プロセスはまた、SMC、BMC、引き抜き成形法などにおいて使用することもでき、それらのために、180℃までの温度、より好ましくは150℃までの温度、最も好ましくは100℃までの温度が使用される。
【0045】
本発明による硬化プロセスにおいて、フィラー、ガラス繊維、顔料、抑制剤、および増進剤などの他の任意選択的添加物を用いることができる。
【0046】
硬化樹脂は、海洋用途、化学的固定、屋根、建築、裏装、パイプおよびタンク、床、風車の羽根などを含めた様々な用途に使用される。
【実施例】
【0047】
同じ材料、すなわち、20wt%オクタン酸カリウム(K−oct)、25wt%ジエタノールアミン(DEA)、45wt%N,N−ジエチルアセトアセトアミド(DEAA)、5wt%酢酸銅(II)(CuAc)、および5wt%ジエチレングリコール(DEG)を使用して、異なる方法で促進剤溶液を調製した。オクタン酸カリウムを、前記DEG中で、2−エチルヘキサン酸および水酸化カリウム(90%)から事前に作製した。
【0048】
ステップ1において、表1に示した材料(の一部)を混合した。例1を除き、これを、20℃で行った。例1では、オクタン酸カリウムを調製していたときに発生した反応熱を使用した。
【0049】
4時間後および24時間後の、20℃での調製溶液における銅の溶解性を、目視で判断した。
【0050】
ステップ2は、異なる順序で、残りの材料を添加すること、および場合により混合物を85℃に加熱することを含んだ。溶解性を、再び目視で判断した。
【0051】
この表において、
+は、「低い」を意味し、
++は、「中程度の」を意味し、
+++は、「不完全な」を意味し、
++++は、「完全な」を意味する。
【0052】
これらの促進剤溶液、1phr(per hundred resin)溶液を、2phrメチルエチルケトンペルオキシド(Butanox(登録商標)M50、AkzoNobel製)とともに使用して、20℃で、オルトフタル酸ベースの不飽和ポリエステル樹脂(Palatal(登録商標)P6、DSM resin製)を硬化させた。
【0053】
硬化性能を、Society of Plastic Instituteの方法(SPI法F/77.1;Akzo Nobel Polymer Chemicalsより入手可能)によって分析した。この方法は、ピーク発熱、ピークまでの時間、およびゲル化時間を測定することを含む。この方法に従って、100部の樹脂と、2部の過酸化物と、1部の促進剤溶液とを含む25gの混合物を試験管に注ぎ、熱電対を、試験管の中身に通して、試験管の中心に入れた。次いで、そのガラス管を、20℃に維持された温度調節された部屋に置き、時間−温度曲線を測定した。この曲線から、以下のパラメーターを計算した:
ゲル化時間(Gt)=実験の開始と、浴の温度を5.6℃上回る間に経過した時間(分単位)。
ピークまでの時間(TTP)=実験の開始と、ピーク温度に到達する時の間に経過した時間。
ピーク発熱(PE)=到達する最高温度。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
これらの結果は、添加および加熱ステップの順序が、促進剤溶液の調製所要時間(主に、溶解速度が異なることを理由に)および働きに影響を与えることを示す。働きへの影響は、一見取るに足らないように見える可能性があるが、そうではない。ゲル化時間の2分の違いは、毎日の実施において大きい。
なお本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)過酸化物とともにレドックス系を形成するのに適した促進剤溶液を調製するための方法であって、遷移金属塩または錯体を、ヒドロキシ官能性溶媒と窒素含有塩基とを含む液状配合物に、50〜200℃の範囲の温度において添加するステップを含む方法。
(2)遷移金属が、Cu、Mn、Fe、およびVからなる群から選択される、上記(1)に記載の方法。
(3)液状配合物が、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物を含み、窒素含有塩基の導入前に前記アルカリまたはアルカリ土類金属化合物が前記ヒドロキシ官能性溶媒に溶解される、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、過酸化物とともにレドックス系を形成するのに適した促進剤溶液。
(5)上記(4)に記載の促進剤溶液を硬化性樹脂に混合するステップを含む、硬化性樹脂を予備促進化するための方法。
(6)上記(5)に記載の方法に従って得ることができる、予備促進化不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂。
(7)第1の成分と第2の成分とを含む二成分組成物であって、第1の成分が、上記(6)に記載の予備促進化樹脂組成物を含み、第2の成分が過酸化物を含む二成分組成物。
(8)過酸化物が、有機ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシカーボネート、およびペルオキシエステルからなる群から選択される、上記(7)に記載の二成分組成物。