【実施例】
【0067】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
1.樹脂皮膜付き銅含有基材の作製
後述する実施例および比較例に示すように、種々の表面処理剤を用いて以下の処理を被処理材に施し、樹脂皮膜付き銅含有基材を得た。
【0069】
〔被処理基材(銅合金および銅合金部材)〕
試験に使用した被処理基材の略号と内訳を以下に示す。
a.無酸素銅板(C1020)50×30mm 厚み1mm
b.タフピッチ銅板(C1100)50×30mm 厚み0.2mm
c.リン脱酸銅(C1220)50×30mm 厚み1mm
d.黄銅(C2600)50×30mm 厚み0.2mm
e.りん青銅(C5191)50×30mm 厚み1mm
f.ビスマス青銅 50×20mm 厚み2mm
g.無電解銅めっきポリイミド樹脂フィルム 50×20mm 厚み0.2mm
h.銅ペースト塗布アルミナ板 30×20mm 厚み1mm
a1.無酸素銅線コイル(材質:C1020)φ1mm
a2.ガラス銅張積層板(材質:電解銅箔貼付けガラス−エポキシ樹脂複合材)
c1.熱交換機用銅管(材質:C1220)
d1.ブラスめっき線(材質:真鍮めっきスチールコード)
f1.水道用メーター(材質:ビスマス青銅)
g1.焼結銅合金軸受(材質:Cu−Sn系合金)
【0070】
〔被処理基材の前処理工程〕
被処理基材の前処理工程としては、以下の工程(1)〜(4)を順に行った。
(1)脱脂(60℃、10分、浸せき法、日本パーカライジング(株)製のファインクリーナー315を用いて調製された5質量%水溶液を使用した。)
(2)水洗(常温、30秒、浸せき法)
(3)酸洗(常温、30秒、浸せき法、市販の硫酸を用いて調製された10%水溶液を使用)
(4)水洗(常温、30秒、浸せき法)
【0071】
(実施例1)
ポリマーとしてポリ塩化ビニリデン分散液(旭化成ケミカル(株)製 サランラテックスL232A:アニオン性基含有、固形分濃度48%)を固形分換算で20質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、銅錯化剤としてチオ尿素を3質量部、ORP調整剤として亜硫酸ソーダを0.2質量部と、脱イオン水を95質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH2.8であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−420mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0072】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金fおよび銅合金部材f1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金fおよび銅合金部材f1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金fおよび銅合金部材f1を40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金fおよび銅合金部材f1上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0073】
(実施例2)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で8質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、銅錯化剤としてチオアセトアミドを0.1質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH4.0であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−80mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0074】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよび銅合金部材a2を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよび銅合金部材a2を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよび銅合金部材a2を40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金cおよび銅合金部材a2上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0075】
(実施例3)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で25質量部と、銅錯化剤としてチオ尿素を0.5質量部と、フッ化水素酸にCuOを溶解させて調製したフッ化第二銅溶液をCuF
2換算で0.1質量部と、水を60質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.0であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−70mVであった。
【0076】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材d1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材d1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材d1を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金bおよび銅合金部材d1上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0077】
(実施例4)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で15質量部と、銅錯化剤としてエチルチオ尿素を0.5質量部と、フッ化第二鉄を2質量部と、フッ化水素酸にCuOを溶解させて調製したフッ化第二銅溶液をCuF
2換算で0.1質量部と、2−プロパノールを5質量部と、水を60質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.0であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+30mVであった。
【0078】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金eおよび銅合金部材a2を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金eおよび銅合金部材a2を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金eおよび銅合金部材a2を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金eおよび銅合金部材a2上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0079】
(実施例5)
ポリマーとして特許公開2009−293101号公報の実施例に示されたフェノール樹脂を合成して使用した。
具体的には、ジメチルアミノベンゼンをアルカリ触媒に用い、フェノール(試薬:F)60gと37質量%ホルムアルデヒド(試薬:P)135gとを70℃で混合攪拌し、F/P比が2.6で固形分が55質量%の水溶性レゾール樹脂を得た。この水溶性レゾール樹脂200gに、40gの2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム塩(試薬)、35gのカテコ−ル(試薬)、および50gの水を添加したものを90℃に加熱し3時間攪拌した。攪拌後に210gのレソルシノール(試薬)および85質量%リン酸(試薬)5gを添加した水200gを添加し、温度を90℃に保ったまま1時間攪拌した。攪拌後、70gの37質量%ホルムアルデヒド(試薬)を少量ずつ加え、合成物の粘度が上昇することを目視で確認し、F/P比が0.84で固形分濃度53%のアニオン性ノボラック型フェノール樹脂を得た。
架橋剤としては、乾燥窒素雰囲気下で、174gのトルエンジイソシアネート(コロネートT80:日本ポリウレタン工業(株)製)に87gの2−ブタノンオキシムを、反応温度が40℃を超えないように外部から冷却しながら加えた。40℃で1時間保持した後に、反応容器を70℃に加温した。そこに、ビスフェノールA(試薬)113g、さらにジブチル錫ラウレート(STANN BL:三共有機合成(株)製)0.02gを加え120℃で2時間保持した後、エチレングリコールモノブチルエーテル(試薬)で固形分濃度が30質量%となるように希釈したものを使用した。
【0080】
上記ノボラック樹脂を固形分換算で2質量部、上記架橋剤を固形分換算で3質量部を測り採り、水を主体とする溶媒が約80質量部となるよう脱イオン水で希釈、分散した。さらに、銅錯化剤として1−アリル−2−チオ尿素を0.3質量部と、フッ化第二鉄を3質量部とを添加し、自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.0であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+110mVであった。
【0081】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材a2を40℃で60秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材a2を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材a2を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金bおよび銅合金部材a2上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0082】
(実施例6)
特許3089195号を参考に、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物を64.44g、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを42.72g、バレロラクトンを3g、ピリジンを4.8gに、N−メチルピロリドンを400g、トルエンを90gを加えて、室温で30分間攪拌した。その後、反応溶液を昇温して180゜で1時間(200rpm)撹拌しながら反応させて、ポリイミド樹脂原料を調製した。反応後、トルエン−水留出分30mlを除き、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物を32.22g、3,5−ジアミノ安息香酸を15.22g、2,6−ジアミノピリジンを11.01g、N−メチルピロリドンを222g、トルエンを45g添加し、室温で1時間撹拌後、昇温して180℃で1時間加熱撹拌した。その後、トルエン−水留出分15mlを除き、以後は留出分を系外に除きながら、180℃で3時間加熱、撹拌して20質量%カルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂を固形分換算で35質量部と、NMP:テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド混合溶液を50質量部と、ベンジルアルコールを30質量部と、銅錯化剤として1−アリル−2−チオ尿素を1質量部と、エチレンジアミンを0.5質量部と、水を25質量部とを撹拌して、自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH4.5であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+150mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0083】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよび銅合金部材a1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよび銅合金部材a1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよび銅合金部材a1を40℃で10分間脱水乾燥して、180℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金aおよび銅合金部材a1上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0084】
(実施例7)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で10質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.1質量部と、銅錯化剤として2,2’−ビピリジルを0.2質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH4.2であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−120mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0085】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよび銅合金部材a2を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよび銅合金部材a2を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよび銅合金部材a2を40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金cおよび銅合金部材a2上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0086】
(実施例8)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で15質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、銅錯化剤としてジフェニルカルバジドを0.5質量部と、脱イオン水を98質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.5であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−160mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0087】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよび銅合金部材a1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよび銅合金部材a1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよび銅合金部材a1を40℃で10分間脱水乾燥して、150℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金cおよび銅合金部材a1上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0088】
(実施例9)
ポリマーとして下記のポリアニリン分散液(濃度5%)を固形分換算で20質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、銅錯化剤としてチオ尿素を2質量部と、脱イオン水を95質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH2.4であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:60mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0089】
ポリアニリン分散液の調製
1モル/L濃度の塩酸水溶液にアニリンを溶解し、5℃以下で過硫酸アンモニウム溶液を添加して緑色のポリアニリン分散液を合成した。合成したポリアニリン分散液は透析チューブに入れて24時間脱塩処理した後、固形分濃度が5%となるように希釈して実験に供した。
【0090】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよびgを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよびgを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよびgを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金aおよびg上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0091】
(実施例10)
ポリマーとして下記のポリピロール分散液(濃度5%)を固形分換算で20質量部と、硫酸(10質量%)を0.5質量部と、銅錯化剤として1−アリル−2−チオ尿素を1質量部と、脱イオン水を95質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH1.9であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−30mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0092】
ポリピロール分散液の調製
ポリスチレンスルホン酸30%水溶液(分子量約5万)50質量部、およびピロールモノマー10質量部を脱イオン水500質量部に添加して攪拌した。十分に混合した後、この溶液に、室温で、過硫酸アンモニウム15%水溶液60質量部を添加した。添加終了後、さらに2時間攪拌してポリピロール分散液を得た。合成したポリピロール分散液は透析チューブに入れて24時間脱塩処理した後、固形分濃度が5%となるように希釈して実験に供した。
【0093】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよびgを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよびgを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよび銅合金部材gを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金cおよびg上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0094】
(実施例11)
ポリマーとして下記のPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)分散液を固形分換算で10質量部と、銅錯化剤として2,2’−ビピリジルを0.2質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.1であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:80mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%硫酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0095】
PEDOT分散液の調製
ポリスチレンスルホン酸30%水溶液(分子量約5万)50質量部、および3,4−エチレンジオキシチオフェン10質量部と、硫酸第二鉄0.3質量部を脱イオン水500質量部に添加して攪拌した。十分に混合した後、この溶液に、室温で、過硫酸アンモニウム15%水溶液60質量部を添加した。添加終了後、さらに2時間攪拌してポリチオフェン分散液を得た。合成したポリチオフェン分散液は透析チューブに入れて24時間脱塩処理した後、固形分濃度が5%となるように希釈して実験に供した。
【0096】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよびhを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよびhを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよびhを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金aおよびh上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0097】
(実施例12)
ポリマーとして下記のPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)分散液を固形分換算で10質量部と、アニオン性ウレタン樹脂エマルジョン(商品名「ユープレンUX−306」:固形分濃度45%、三洋化成工業社製)を固形分換算で5質量部とを混合し、さらに銅錯化剤としてチオ尿素を0.5質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH1.8であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:150mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0098】
PEDOT分散液の調製
ポリスチレンスルホン酸30%水溶液(分子量約5万)50質量部、および3,4−エチレンジオキシチオフェン10質量部を脱イオン水500質量部に添加して攪拌した。十分に混合した後、この溶液に、室温で、過硫酸アンモニウム15%水溶液60質量部を添加した。添加終了後、さらに6時間攪拌してポリチオフェン分散液を得た。合成したポリチオフェン分散液は透析チューブに入れて24時間脱塩処理した後、固形分濃度が5%となるように希釈して実験に供した。
【0099】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよびhを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよびhを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよびhを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金cおよびh上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0100】
(実施例13)
ポリマーとして実施例12で使用したPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)分散液を固形分換算で10質量部と、エポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を固形分換算で3質量部とを混合し、さらに銅錯化剤としてチオアセトアミドを0.2質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH1.8であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:180mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0101】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよびgを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよびgを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよびgを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で5分間加熱処理を実施した。脱水乾燥後の銅合金aおよびg上に形成された皮膜は多孔質であったが、加熱硬化によって緻密でピンホールのない樹脂皮膜が得られた。
なお、上記処理後の自己析出型銅用表面処理剤は24時間後においても安定で、異常が認められなかった。
【0102】
(比較例1)
ポリマーとしてポリ塩化ビニリデン分散液(旭化成ケミカル(株)製 サランラテックスL232A:アニオン性基含有、固形分48%)を固形分換算で25質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.5質量部と、ORP調整剤(酸化剤)として過硫酸アンモニウムを5質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH2.8であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+320mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0103】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金fおよび銅合金部材f1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金fおよび銅合金部材f1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金fおよび銅合金部材f1を40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、析出後の皮膜は不均一で部分的に剥がれが認められた。加熱硬化後に得られた樹脂皮膜においてもピンホール等の欠陥部が認められた。
また、処理剤は数時間以内に凝集してゲル化して処理が不可能となった。
【0104】
(比較例2)
ポリマーとしてカルボキシル基およびメチロール基を有するアクリロニトリルブタジエンスチレンゴムの水分散体(固形分濃度:47%、pH:2.5)を固形分換算で30質量部と、フッ化第二鉄を2質量部と、ORP調整剤(酸化剤)として過酸化水素を1質量部と、銅錯化剤としてチオ尿素を0.001質量部と、脱イオン水を90重量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.0あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+280mVであった。
該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0105】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよび銅合金部材a2を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよび銅合金部材a2を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよび銅合金部材a2を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、樹脂の析出は不完全で不均一であった。また、加熱硬化後に得られた樹脂皮膜においてもピンホール等の欠陥部が認められた。
【0106】
(比較例3)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を35質量部と、ORP調整剤(酸化剤)として過硫酸アンモニウムを5質量部と、水を120質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH4.0あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+250mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0107】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材c1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材c1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材c1を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、析出後の皮膜は不均一で部分的に剥がれが認められた。加熱硬化後に得られた樹脂皮膜においてもピンホール等の欠陥部が認められた。
また、処理剤は24時間後に増粘する傾向があり、安定性に劣っていた。
【0108】
(比較例4)
ポリマーとしてポリ塩化ビニリデン分散液(旭化成ケミカル(株)製 サランラテックスL232A:アニオン性基含有、固形分48%)を固形分換算で20質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、銅錯化剤として二酸化チオ尿素を8質量部と、脱イオン水を90質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH7.5あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−580mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0109】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよび銅合金部材c1を40℃で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよび銅合金部材c1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよび銅合金部材c1を40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、銅合金aおよび銅合金部材c1上には樹脂の析出はほとんど認められず、析出していない部位が多かった。
【0110】
(比較例5)
ポリマーとしてエポキシ−アクリル系樹脂(アニオン性基含有、固形分濃度:47%)を25質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を1.5質量部と、ORP調整剤として亜硫酸ナトリウムを2質量部と、水を95質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH4.0あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:−520mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0111】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材c1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材c1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材c1を40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、銅合金bおよび銅合金部材c1上には樹脂はほとんど析出していなかった。
【0112】
(比較例6)
国際公開2009/066658号公報の実施例29に示される、チオ尿素0.5質量%と、エラストマーとしてアクリロニトリルブタジエンスチレンゴム30質量%と、酸化剤としてのメタバナジン酸アンモニウム(V)0.5質量%とを含有する処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH8.1あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+330mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、5%フッ化水素酸を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。
【0113】
得られた処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材c1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材c1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材c1を40℃で10分間脱水乾燥して、100℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、銅合金bおよび銅合金部材c1上には樹脂はほとんど析出していなかった。
【0114】
(比較例7)
国際公開2009/066658号公報の実施例32に示される、チオ尿素0.1質量%と、エラストマーとしてアクリルゴム30質量%(pH8)と、酸化剤としてのメタバナジン酸アンモニウム(V)0.5質量%とを含有する処理剤を調製した。さらに希釈した硫酸を添加してpHを3.0に調整した。
処理剤の酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+380mVであった。
【0115】
得られた処理剤中に、銅合金bおよび銅合金部材c1を室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金bおよび銅合金部材c1を水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金bおよび銅合金部材c1を40℃で10分間脱水乾燥して、100℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、銅合金bおよび銅合金部材c1上への樹脂の析出は不均一であった。
また、処理後1時間以内に処理剤が黄変し、沈殿が生じてしまい、液安定性に劣っていた。
【0116】
(比較例8)
ポリマーとして実施例9で使用したポリアニリン分散液(濃度5%)を固形分換算で20質量部と、フッ化水素酸(40質量%)を0.2質量部と、過酸化水素水を2質量部と脱イオン水を95質量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH2.4であった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:360mVであった。なお、得られた処理剤の酸化還元電位は、アンモニア水を用いて処理剤のpHを3.0に調整した後、測定を行った。該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0117】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金aおよびgを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金aおよびgを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金aおよびgを40℃で10分間脱水乾燥して、120℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、析出後の皮膜は不均一で部分的に剥がれが認められた。加熱硬化後に得られた樹脂皮膜においてもピンホール等の欠陥部が認められた。また、処理剤は数十分以内に凝集してゲル化して処理が不可能となった。
【0118】
(比較例9)
ポリマーとして実施例12で使用したPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)分散液を固形分換算で30質量部と、フッ化第二鉄を2質量部と、ORP調整剤(酸化剤)として過硫酸アンモニウムを3質量部と、脱イオン水を90重量部とを混合させる事で自己析出型銅用表面処理剤を調製した。
得られた処理剤のpHを、pHメーターで測定したところ、pH3.0あった。また、得られた処理剤のpH3.0のときの酸化還元電位(ORP)をORP電極(Ag/AgCl)で測定し、SHEを基準とした電位に換算したところ、ORP:+420mVであった。該処理剤では、ORPが本発明の範囲から外れている。
【0119】
得られた自己析出型銅用表面処理剤中に、銅合金cおよびhを室温で120秒間浸漬処理した。浸漬処理後、得られた銅合金cおよびhを水中(室温)に30秒間浸漬させ、水洗した。その後、銅合金cおよびhを40℃で10分間脱水乾燥して、160℃で10分間加熱処理を実施した。顕微鏡観察の結果では、樹脂の析出は不完全で不均一であった。また、加熱硬化後に得られた樹脂皮膜においてもピンホール等の欠陥部が認められ、処理液に沈殿物が認められた。
【0120】
2.樹脂被覆処理した銅材料の評価
実施例1〜13および比較例1〜9で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材について、以下の方法により処理板の評価を行った。
【0121】
(1)銅材料表面の膜厚測定
実施例および比較例で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材について、水洗・乾燥後の処理基材、およびさらに加熱硬化後の処理基材について表面を金属顕微鏡で観察し、形成された皮膜の孔の有無を観察した。また、加熱硬化後の処理基材について、樹脂に埋め込んだ試験片を作製し、金属顕微鏡(倍率:1000倍)を用いてその皮膜断面を膜厚測定した。
【0122】
(2)耐食性
実施例および比較例で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材を、熱風オーブン中に150℃で10分間保持した後の表面の変色を目視で評価した。評価はJIS銅板腐蝕試験に準じ、変色がほとんどないものを1点、薄い変色が認められるものを2点、濃い変色があるものを3点、黒色のものを4点とした。結果を表1に示す。
【0123】
(3)密着性
実施例および比較例で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材に対して、JIS K5400に準じカッターナイフで素地に達する1mm角の碁盤目カットを入れ、粘着テープを貼り付け、引き剥がして皮膜が剥離した碁盤目の数を計測して評価した。剥離が全くないものを0/100とした。結果を表1に示す。
【0124】
(4)電気的特性1(耐電圧試験)
実施例1〜8および比較例1〜7で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材に対しては、絶縁破壊試験機を使用して絶縁破壊電圧を測定した。数値は5回の測定値の平均で比較した。
【0125】
(5)電気的特性2(導電性試験)
実施例9〜13および比較例8〜9で得られた樹脂皮膜付き銅合金および/または樹脂皮膜付き銅合金部材に対しては、低抵抗計(三菱化学(株)製ロレスタ−EP)を使用して2端子法により表面抵抗を測定した。数値は5回の測定値の平均で比較した。これらの結果を表1に示す。
【0126】
(6)浴安定性
処理を行ったのち24時間後まで処理剤を室温で保存し、液の粘度と樹脂の凝集状態の変化を観察した。
【0127】
【表1】
【0128】
なお、上記表中、「>1.0」は1.0超であることを意図する。
また、上記表中、「<0.05」は0.05未満であることを意図する。
なお、他の同様の表記も、上記と同様に解釈する。
【0129】
表1に試験結果を示した。これらの結果から、本発明の自己析出型銅用表面処理剤および樹脂皮膜付き銅含有基材の製造方法によれば、従来技術では困難であった銅(または銅合金)や銅合金部材に対しても十分な膜厚を有する皮膜を得ることが可能となり、得られた皮膜は優れた密着剤、耐食性に優れ、実施例1〜8に示す絶縁用途では優れた耐電圧性が得られ、実施例9〜13に示す導電用途では低い電気抵抗が得られることから各種用途に適用できる特性を備えることが確認された。また、自己析出型銅用表面処理剤も液の安定性に優れていた。
さらに、実施例3〜5に記載の処理剤は、Fe(III)イオンまたはCu(II)イオンが含まれており、形成された皮膜の耐食性がより優れた効果を示すことが確認された。
【0130】
一方、比較例に示すように、所定の要件を満たさない処理剤を使用した場合は、皮膜が殆ど形成されない、または、形成された皮膜の密着剤、耐食性または電気的特性(耐電圧性または電気抵抗)が劣ることが確認された。
特に、比較例6および7に記載の処理剤は、特許文献1の実施例欄に記載の処理剤であり、薄い皮膜しか形成されず、形成された皮膜自体も密着剤、耐食性および電気的特性が劣ることが確認された。
【0131】
上記実施例は、本発明の説明のために示されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。銅表面の保護だけでなく各種機能性を付与することが可能であり、その応用範囲は広く幅広い分野での実用性を有している。