【実施例】
【0044】
以下の実施例は、単に例証目的であって、本発明の範囲を限定すると意図されていない。すべてのパーセンテージは、別段特定されない限り、重量基準である。実施例1〜4および比較実施例A〜Cの徐放組成物中のセルロースエーテルの特性は、以下のとおり測定される:
【0045】
粘度
均一な(homogenous)溶液を得るために、3gのセルロースエーテル粉末(セルロースエーテルの含水量を考慮して)を、吊り下げ式の研究室用撹拌機を用いて700rpmで10分間、70℃の197gの水に懸濁する。次いで、これらの溶液を5時間にわたって2℃の温度に冷却して、溶解プロセスを完了させる。これらの5時間の間、溶液を500〜1000rpmで撹拌し、蒸発に起因して損失した水を戻す。次いで、これらの溶液を、冷蔵庫内で一晩保管する。解析の前に、この冷たい溶液を100rpmで15分間撹拌する。
【0046】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度は、コーン・プレートジオメトリー(CP−60/2°)を備えたHaake RS600レオメーターにおいて、20℃および2.55s
−1の剪断速度において、20℃の1.5重量%水溶液として測定される。
【0047】
%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルの測定
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおける%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルの測定は、米国薬局方(USP32)に従って行われる。得られる値は、%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルである。これらは、引き続いて、メチル置換基への置換の程度(DS)およびヒドロキシプロピル置換基へのモル置換度(MS)に変換される。この変換では、塩の残留量が考慮されている。
【0048】
s23/s26の測定
セルロースエーテルにおけるエーテル置換基の測定は、広く知られており、例えば、Bengt Lindberg、Ulf LindquistおよびOlle StenbergによるCarbohydrate Research,176(1988)137−144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O−ETHYL−O−(2−HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載されている。
【0049】
具体的には、s23/s26の測定は、以下のとおり行われる:
10〜12mgのセルロースエーテルを、4.0mLの分析グレードの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck,Darmstadt,Germany,0.3nmモレキュラーシーブビーズの上に保管されている)に約90℃において撹拌しながら溶解し、次いで、再度、室温まで冷却する。その溶液を、室温において一晩撹拌したまま放置することにより、完全な可溶化を確実にする。セルロースエーテルの可溶化を含む全反応を、4mLのスクリューキャップバイアル内で乾燥窒素雰囲気を使用して行う。可溶化の後、溶解されたセルロースエーテルを、22mLのスクリューキャップバイアルに移す。無水グルコース単位のヒドロキシル基1つあたり30倍モル過剰の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルで粉末状の水酸化ナトリウム(乳棒ですりつぶされたばかりの、分析グレード、Merck,Darmstadt,Germany)およびヨウ化エチル(合成用、銀で安定化されている、Merck−Schuchardt,Hohenbrunn,Germany)を加え、その溶液を窒素下、暗所において、外界温度で3日間激しく撹拌する。第1の試薬の添加と比べて3倍量の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルを加え、さらに、室温においてさらに2日間撹拌することによって、過剰エチル化(perethylation)を繰り返す。必要に応じて、その反応混合物は、その反応の経過中の良好な混合を確実にするために、最大1.5mLのDMSOで希釈され得る。その反応混合物に5mLの5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を注ぎ込み、次いで、得られた溶液を、4mLのジクロロメタンで3回抽出する。合わせた抽出物を2mLの水で3回洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウム(約1g)で乾燥させる。濾過の後、静かな窒素流中で溶媒を除去し、さらなるサンプル調製までサンプルを4℃で保管する。
【0050】
約5mgの過剰エチル化サンプルの加水分解を、1mLの90%ギ酸水溶液が入った2mLのスクリューキャップバイアル内の窒素下において、撹拌しながら100℃で1時間行う。その酸を35〜40℃の窒素流中で除去し、撹拌しながら不活性な窒素雰囲気において120℃で3時間、1mLの2Mトリフルオロ酢酸水溶液による加水分解を繰り返す。完了した後、共蒸留用の約1mLのトルエンを使用して、外界温度における窒素流中で乾燥するまで酸を除去する。
【0051】
加水分解の残渣を、室温において3時間、撹拌しながら、2Nアンモニア水溶液(調製されたばかりの)中の0.5mLの0.5M重水素化ホウ素ナトリウムで還元する。約200μLの濃酢酸を滴下することによって、過剰な試薬を消失させる。得られた溶液を、約35〜40℃の窒素流中で蒸発乾固し、続いて、室温において15分間、真空中で乾燥させる。粘稠性の残渣を、メタノール中の0.5mLの15%酢酸に溶解し、室温において蒸発乾固する。これを5回行い、純粋なメタノールを用いて4回繰り返す。最後の蒸発の後、サンプルを室温において一晩、真空中で乾燥させる。
【0052】
還元の残渣を、90℃で3時間、600μLの無水酢酸および150μLのピリジンでアセチル化する。冷却した後、そのサンプルバイアルをトルエンで満たし、室温の窒素流中で蒸発乾固する。その残渣を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLの水に注ぎ込み、2mLのジクロロメタンで抽出する。この抽出を3回繰り返す。合わせた抽出物を4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。続いて、乾燥したジクロロメタン抽出物をGC解析にかける。そのGCシステムの感度に応じて、抽出物のさらなる希釈が必要であり得る。
【0053】
ガス液体(GLC)クロマトグラフィー解析を、1.5バールのヘリウムキャリアガスを用いて運転される、J&WキャピラリーカラムDB5,30m,0.25mm ID,0.25μm相層厚(phase layer thickness)を備えたHewlett Packard 5890Aおよび5890A Series IIタイプのガスクロマトグラフを用いて行う。このガスクロマトグラフは、60℃で1分間一定に保持し、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、4℃/分の速度で250℃までさらに加熱し、20℃/分の速度で310℃までさらに加熱し、その温度でさらに10分間一定に保持する温度プロファイルでプログラムされている。インジェクターの温度を、280℃に設定し、水素炎イオン化検出器(FID)の温度を、300℃に設定する。1μLのサンプルを、0.5分のバルブタイム(valve time)において、スプリットレスモードで注入する。LabSystems Atlasワークステーションを用いて、データを取得し、処理する。
【0054】
定量的なモノマー組成データを、FID検出によるGLCによって測定されたピーク面積から得る。モノマーのモルレスポンス(Molar responses)は、有効炭素数(ECN)の概念に従って計算されるが、下記の表に記載されるように改変される。有効炭素数(ECN)の概念は、Ackman(R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,2(1964)173−179およびR.F.Addison,R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,6(1968)135−138)によって説明されており、Sweetら(D.P.Sweet,R.H.Shapiro,P.Albersheim,Carbohyd.Res.,40(1975)217−225)によって、部分的にアルキル化されたアルジトールアセテートの定量的解析に適用されている。
【0055】
ECN計算のために使用されたECN増分:
[表]
異なるモノマーのモルレスポンスに対して補正するために、ピーク面積を、2,3,6−Meモノマーに対するレスポンスとして定義されるモルレスポンスファクター(molar response factors)MRFモノマーに乗算する。その2,3,6−Meモノマーは、s23/s26の決定において解析されるすべてのサンプル中に存在するので、基準として選択されている。
MRFモノマー=ECN2,3,6−Me/ECNモノマー
【0056】
それらのモノマーモル分率は、以下の式に従って、補正されたピーク面積を、補正された全ピーク面積で除算することによって計算され、
s23=[(23−Me+23−Me−6−HAMe+23−Me−6−HA+23−Me−6−HAHAMe+23−Me−6−HAHA];および
s26=[(26−Me+26−Me−3−HAMe+26−Me−3−HA+26−Me−3−HAHAMe+26−Me−3−HAHA]、式中、
s23は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の合計である:
a)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されているが、6位は置換されていない(=23−Me);
b)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、6位は、メチル化されたヒドロキシアルキルで置換されている(=23−Me−6−HAMe)か、または2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(=23−Me−6−HAHAMe);および
c)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、6位は、ヒドロキシアルキルで置換されている(=23−Me−6−HA)かまたは2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=23−Me−6−HAHA)。
s26は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の合計である:
a)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されているが、3位は置換されていない(=26−Me);
b)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、3位は、メチル化されたヒドロキシアルキルで置換されている(=26−Me−3−HAMe)かまたは2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(=26−Me−3−HAHAMe);および
c)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、3位は、ヒドロキシアルキルで置換されている(=26−Me−3−HA)か、または2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=26−Me−3−HAHA)。
【0057】
HAMCにおける置換基の測定の結果を、下記の表1
および2に列挙する。HPMCの場合、ヒドロキシアルキル(HA)は、ヒドロキシプロピル(HP)であり、メチル化されたヒドロキシアルキル(HAMe)は、メチル化されたヒドロキシプロピル(HPMe)である。
【0058】
溶解開始温度の測定:
溶解開始温度は、水においてセルロースエーテルのトルク増大を測定することによって、その温度に応じてセルロースエーテルの溶解を測定するためのレオロジー特性化技術である。これらの測定は、Haake RS1 Rheometer(Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe)を用いて行う。羽式(wing)撹拌機(撹拌機プレートの直径および高さは、各々30mmであり;羽のプレートは、直径5mmの穿孔を4つ有する)を備えたCup(Couette)Z−34ジオメトリー。水およびセルロースエーテルの量は、2%という最終濃度を達成するように選択される。58.8gの水を、そのカップに加え、70℃まで加熱する。この温度において1.2gのセルロースエーテルをゆっくり加える。この温度において、セルロースエーテルは、不溶性であり、懸濁液を500rpmで60秒間撹拌する。良好な懸濁液が得られたら、388rpmで撹拌しつつ、その温度を1℃/分の固定された冷却速度で低下させる。トルクを、4データポイント/分で記録して(70℃から開始し、推定される溶解開始温度より少なくとも20℃低い温度において終了する)、トルク増大曲線を温度の関数として得る。溶解開始温度のさらなる解析のために、データを以下の等式に従って正規化する:
【数1】
式中、Mは、特定の温度において測定されたトルクを表し、M
iは、最高温度(すなわち、70℃)における300rpmでのトルクの初期値を表し、M
maxは、最低温度(すなわち、2℃)における最終的なトルクを表す。溶解開始温度の解析のために、トルクの値(y軸)を、温度(x軸)に対してプロットする。複数の温度上昇(各上昇は、2.5℃をカバーする)に対して得られたトルク値に対して線形回帰を行う。上昇は、0.1℃毎に開始される。最大傾斜および十分な相関係数(少なくとも98.0%)を有する線形回帰と温度の軸との交点を、「溶解開始温度」と呼ぶ。
図1は、セルロースエーテルの溶解開始温度を決定する方法のグラフ表示である。
【0059】
薬物放出測定
マトリックス錠剤を、活性成分として50wt.%の薬物パラセタモール、30wt.%の実施例1〜4および比較実施例A〜Cのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、18%ラクトース、1%タルカム、ならびに1%ステアリン酸マグネシウムを含む混和物から作製した。マトリックス錠剤を、HPMCをパラセタモールおよびラクトースと1分間混和することによって生成した。次いで、その混和物にタルカムを加え、1分間混和した。最後に、ステアリン酸マグネシウムを、打錠する直前に加え、2分間混和した。直径10.8mmで厚さ3.9mmのサイズの錠剤を、約50kNの圧縮力で圧縮した。この打錠条件は、約80Nの錠剤硬度および約400mgの錠剤重量を達成するように選択した。
【0060】
錠剤溶解試験を、50rpmの速度で回転する標準的なUSP IIパドルを備えたUSP溶解装置(例えば、Erweka Dissolution Tester 626,Erweka GmbH)を用いて、37℃で22時間、900mLのpH5.7リン酸緩衝液中、シンカー(sinkers)を用いて行った。各サンプル時間におけるパラセタモールの吸光度を、10mm光路キュベット(例えば、Hellma Prazisions Kuvette 176.700−QS,Hellma Analytics,Mullheim,Germany)とともにUV−Vis分光光度計(例えば、Shimadzu UV−1700,Shimadzu Deutschland GmbH,Duisburg,Germany)を使用して測定した。パラセタモールの濃度を、243nmの波長における標準的な検量線(0;0.001442;0.004326;0.007210;0.014420;0.028840グラムのパラセタモール/100mL緩衝液)を使用して計算した。34.03gのKH2PO4および0.72gのNaOHをフラスコ内で計量し、5Lまで脱イオン(DI)水で満たし、十分に撹拌して、確実に塩を溶解させ、溶液を均一にすることによって、新鮮緩衝液を調製した。
【0061】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、以下の手順に従って生成した。細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。反応を2段階で行った。第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり2.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、2.5モルの塩化メチルおよび1.4モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を60分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、第1段階の反応を15分間進めた。
【0062】
無水グルコース単位1モルあたり2.8モル当量の塩化メチルの量で塩化メチルを加えることによって、反応の第2段階を開始した。塩化メチルに対する添加時間は、10分間だった。次いで、無水グルコース単位1モルあたり2.3モルの水酸化ナトリウムの量における水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を90分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.026モルの水酸化ナトリウムだった。第2段階の添加が完了したら、反応容器の内容物を80℃の温度で120分間維持した。
【0063】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、熱水が入ったタンクに移した。次いで、その粗HPMCを、ギ酸で中和し、遊離塩化物(chloride free)を熱水で洗浄し(AgNO
3フロキュレーション試験によって評価)、室温に冷却し、エアスウェプト式ドライヤーにおいて55℃で乾燥させた。次いで、その材料を、0.5mm篩を使用するAlpine UPZミルを用いて粉砕した。粉砕されたHPMCの粒径を、ふるい分け(sieving)によって測定した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:56%<63μm、80%<100μm、97%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0064】
実施例2
細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。この反応を2段階で行った。第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり2.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、2.0モルの塩化メチルおよび0.8モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を60分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、第1段階の反応を25分間進めた。
【0065】
次いで、その反応物を20分以内に60℃に冷却した。塩化メチルを、無水グルコース単位1モルあたり2.00モル当量の塩化メチルの量で加えることによって、反応の第2段階を開始した。塩化メチルに対する添加時間は、10分間だった。次いで、無水グルコース単位1モルあたり2.00モルの水酸化ナトリウムの量における水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を60分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.033モルの水酸化ナトリウムだった。第2段階の添加が完了したら、反応容器の内容物を20分以内に80℃まで加熱し、次いで、80℃の温度で120分間維持した。
【0066】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、実施例1に記載されたようにさらに処理した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:81.4%<63μm、98.4%<100μm、99.6%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0067】
実施例3
実施例3のHPMCは、第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり3.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧したことを除いては、実施例2のHPMCのように生成した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、5.0モルの塩化メチルおよび1.7モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。反応の第2段階では、塩化メチルを加えなかったが、無水グルコース単位1モルあたり1.00モルの水酸化ナトリウムを60分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.017モルの水酸化ナトリウムだった。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:66.3%<63μm、96.5%<100μm、99.9%<200μm、100%<315μmだった。
【0068】
実施例4
実施例4のHPMCは、反応混合物に加えられたプロピレンオキシドの量が、無水グルコース単位1モルあたり1.6モルのプロピレンオキシドだったことを除いては、実施例3のHPMCのように生成した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:68.8%<63μm、96.3%<100μm、99.8%<200μm、100%<315μmだった。
【0069】
比較実施例A
比較実施例AのHPMCは、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。その材料の粒径を、ふるい分けによって測定した。所与のメッシュサイズを通過する粒子のパーセンテージは:69.5%<63μm、99.6<150μm、100.0<420μmである。
【0070】
比較実施例B
細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。反応を1段階で行った。水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり4.5モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり2.35モルのジメチルエーテル、5.00モルの塩化メチルおよび2.05モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を80分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、その反応を60分間進めた。
【0071】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、実施例1に記載されたようにさらに処理した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:52.3%<63μm、83.6%<100μm、99.8%<200μm、100%<315μmだった。
【0072】
比較実施例C
比較実施例Cのヒドロキシプロピルメチルセルロースは、反応混合物に加えられたプロピレンオキシドの量が無水グルコース単位1モルあたり1.15モルのプロピレンオキシドだったことを除いては、実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースのように生成した。比較実施例Cは、従来技術ではない。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:55%<63μm、78%<100μm、97%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0073】
実施例1〜4および比較実施例A〜Cのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性を、下記の表1に列挙する。s23/s26測定についての詳細を、下記の表2に列挙する。本発明の徐放剤形(実施例1〜4)および比較剤形(比較実施例A〜C)からの薬物放出を
図2に図示する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1および
図2に示されている薬物放出の結果は、ポリマーマトリックスが、上でさらに記載されたようなセルロースエーテルによって形成されているとき、制御放出が達成されることを説明しており、ここで、[s23/s26−0.2
*MS(ヒドロキシアルキル)]は、0.31以下であり、そのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき少なくとも40℃の溶解開始温度を有する。比較実施例AおよびBにおけるように0.32以上の[s23/s26−0.2
*MS(ヒドロキシアルキル)]を有するかまたは40℃未満の溶解開始温度を有する比較可能なセルロースエーテルを使用したとき、薬物の制御放出は、達成されなかった。実施例3および4は、比較実施例Aと非常によく似た粒子サイズ分布を有すること、および実施例1は、比較実施例BおよびCと非常によく似た粒子サイズ分布を有することに注意されたい。
本開示は以下も包含する。
[1] ポリマーマトリックスと混和された少なくとも1つの活性成分を含む徐放剤形であって、ここで、該ポリマーマトリックスの少なくとも一部は、少なくとも40℃の溶解開始温度を有し、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、少なくとも1つのセルロースエーテルが0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有するように置換基としてメチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基を有する、少なくとも1つのセルロースエーテルによって形成され、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有する、徐放剤形。
[2] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、少なくとも45℃の溶解開始温度を有する、上記態様1記載の徐放剤形。
[3] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、ヒドロキシアルキルメチルセルロースである、上記態様1または2に記載の徐放剤形。
[4] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記態様3記載の徐放剤形。
[5] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.2〜2.2のDS(メチル)を有する、上記態様1〜4のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[6] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.60〜2.05のDS(メチル)を有する、上記態様5記載の徐放剤形。
[7] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、0.20〜0.40のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、上記態様1〜6のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[8] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、20℃および2.55s-1の剪断速度においてHaakeレオメーターで1.5重量%の水溶液として測定されたとき、少なくとも50mPa・sの粘度を有する、上記態様1〜7のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[9] 徐放剤形を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
I.)1つ以上のセルロースエーテル、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤を混和する工程、および
II.)該混和物を剤形に圧縮する工程
を含み、ここで、少なくとも1つのセルロースエーテルは、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、
エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基であり、
該セルロースエーテルは、0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有する、
プロセス。
[10] 上記態様2〜7のいずれか一項に記載の1つ以上のセルロースエーテルセルロースエーテルが、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤と混和される、上記態様9記載のプロセス。
[11] 徐放剤形を調製するための、上記態様1〜8のいずれか一項に記載のセルロースエーテルの使用。