特許第5809379号(P5809379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5809379-新規徐放剤形 図000007
  • 特許5809379-新規徐放剤形 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809379
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】新規徐放剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20151021BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20151021BHJP
   C08B 11/08 20060101ALN20151021BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K9/20
   !C08B11/08
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-503687(P2015-503687)
(86)(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公表番号】特表2015-512421(P2015-512421A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】US2013035589
(87)【国際公開番号】WO2013154977
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/622,751
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】マインオルフ・ブラックハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・アデン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ペーターマン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・ザムラー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・イー・ウォリック
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−165337(JP,A)
【文献】 特開昭62−149632(JP,A)
【文献】 特表2002−541270(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/051035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/38
A61K 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスと混和された少なくとも1つの活性成分を含む徐放組成物であって、ここで、該ポリマーマトリックスの少なくとも一部は、少なくとも40℃の溶解開始温度を有し、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、少なくとも1つのセルロースエーテルが0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有するように置換基としてメチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基を有する、少なくとも1つのセルロースエーテルによって形成され、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有し、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルの量は、該組成物の総重量に基づいて少なくとも10パーセントであり、
前記セルロースエーテルは、ヒドロキシ−C1-3−アルキルメチルセルロースである、徐放組成物
【請求項2】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、少なくとも45℃の溶解開始温度を有する、請求項1記載の徐放組成物
【請求項3】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項記載の徐放組成物
【請求項4】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.2〜2.2のDS(メチル)を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の徐放組成物
【請求項5】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.60〜2.05のDS(メチル)を有する、請求項記載の徐放組成物
【請求項6】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、0.20〜0.40のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の徐放組成物
【請求項7】
前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、20℃および2.55s-1の剪断速度においてHaakeレオメーターで1.5重量%の水溶液として測定されたとき、少なくとも50mPa・sの粘度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の徐放組成物
【請求項8】
徐放組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
I.)1つ以上のセルロースエーテル、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤を混和する工程、および
II.)該混和物を組成物に圧縮する工程
を含み、ここで、少なくとも1つのセルロースエーテルは、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、
セルロースエーテルは、0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有し、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルの量は、該組成物の総重量に基づいて少なくとも10パーセントであり、
前記セルロースエーテルは、ヒドロキシ−C1-3−アルキルメチルセルロースである、プロセス。
【請求項9】
請求項2〜のいずれか一項に記載の1つ以上のセルロースエーテル、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤と混和される、請求項記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定のセルロースエーテルを含む新規徐放剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放剤形は、種々の技術分野(例えば、パーソナルケアまたは農業用途、水処理、および特に薬学的用途)において幅広い使用法が見出されている。徐放剤形は、長時間にわたって有限量の活性成分を水性環境に放出するようにデザインされている。徐放薬学的剤形は、1回の適用で過剰投与にならずに持続的に用量を送達する方法を提供するので、望ましい。公知の徐放薬学的剤形は、その放出速度がポリマーマトリックスによって制御される医薬またはビタミンを含む。水溶性セルロースエーテルは、ポリマーマトリックスとして有用であると知られている。水溶性セルロースエーテルは、錠剤の外皮上で水和して、ゲル層を形成する。ゲル層の迅速な形成は、内部が湿って錠剤コアが崩壊するのを妨げるのに重要である。いったんゲル層が形成されると、そのゲル層は、錠剤の中にさらに水が浸透するのを制御する。外側のゲル層が、完全に水和し、溶解したら、内側の層が、それに取って代わらなければならず、また、水の流入を遅延させ、薬物の拡散を制御するように十分に凝集性かつ連続的でなければならない。
【0003】
米国特許第4,734,285号明細書は、固形錠剤において微粒子サイズのヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル組成物を賦形剤として使用することによって、その固形錠剤からの活性成分の放出が延長され得ることを開示している。
【0004】
制御された様式または持続性の様式で固形錠剤から活性成分を放出することができる剤形が薬学的に非常に重要であることに照らして、薬学的剤形からの活性成分の放出を持続させるさらなる方法を見つけることが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、ポリマーマトリックスとしてセルロースエーテルを含む新規徐放剤形を提供することである。本発明の好ましい目的は、セルロースエーテルの粒径を小さくすることなく固形錠剤からの活性成分の放出を増加させることができる、ポリマーマトリックスとしてセルロースエーテルを含む新規徐放剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚いたことに、ポリマーマトリックスの少なくとも一部がセルロースエーテルによって形成されている場合(ここで、そのエーテル置換基は、特定の分布パターンを有する)、剤形から水性環境への活性成分の放出が延長され得ることが見出されている。
【0007】
したがって、本発明の1つの態様は、ポリマーマトリックスと混和された少なくとも1つの活性成分を含む徐放剤形であり、ここで、そのポリマーマトリックスの少なくとも一部は、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、少なくとも1つのセルロースエーテルが0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有するように置換基としてメチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基を有する、少なくとも1つのセルロースエーテルによって形成され、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有する。
【0008】
本発明の別の態様は、徐放剤形を調製するためのプロセスであり、そのプロセスは、
I.)1つ以上のセルロースエーテル、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤を混和する工程、および
II.)その混和物を剤形に圧縮する工程
を含み、ここで、少なくとも1つのセルロースエーテルは、上で定義されたようなセルロースエーテルである。
【0009】
本発明のなおも別の態様は、徐放剤形を調製するための、上で定義されたようなセルロースエーテルの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、セルロースエーテルの溶解開始温度を決定する方法のグラフ表示である。
図2図2は、本発明の徐放剤形および比較の剤形からの薬物放出のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本徐放剤形のポリマーマトリックスの少なくとも一部は、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、置換基として、メチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基を有する、少なくとも1つのセルロースエーテルによって形成される。それらのヒドロキシアルキル基は、互いに同じであり得るかまたは異なり得る。好ましくは、そのセルロースエーテルは、1種類または2種類のヒドロキシアルキル基、より好ましくは、1種類以上のヒドロキシ−C1−3−アルキル基(例えば、ヒドロキシプロピルおよび/またはヒドロキシエチル)を含む。有用な随意のアルキル基は、例えば、エチルまたはプロピルであり、エチルが好ましい。好ましい三元(ternary)セルロースエーテルは、エチルヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好ましいセルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特に、ヒドロキシ−C1−3−アルキルメチルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース)である。
【0012】
上記セルロースエーテルの必須の特徴は、[s23/s26−0.2MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下または0.30以下または0.27以下または0.25以下または0.23以下または0.21以下であるような、無水グルコース単位におけるメチル基の独特の分布である。典型的には、[s23/s26−0.2MS(ヒドロキシアルキル)]は、0.07以上、より典型的には、0.10以上、最も典型的には、0.13以上である。本明細書中で使用されるとき、符号「」は、乗算演算子を表す。
【0013】
比s23/s26において、s23は、無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、s26は、無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率である。s23を決定する場合、用語「無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率」は、6位がメチルで置換されていないことを意味し;例えば、6位は、非置換ヒドロキシル基であり得るか、またはヒドロキシアルキル基、メチル化されたヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、もしくはアルキル化されたヒドロキシアルキル基で置換され得る。s26を決定する場合、用語「無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている、無水グルコース単位のモル分率」は、3位がメチルで置換されていないことを意味し;例えば、3位は、非置換ヒドロキシル基であり得るか、またはヒドロキシアルキル基、メチル化されたヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、もしくはアルキル化されたヒドロキシアルキル基で置換され得る。
【0014】
本明細書中で使用される用語「メチル基で置換されたヒドロキシル基」または「ヒドロキシアルキル基で置換されたヒドロキシル基」は、ヒドロキシル基の水素原子が、メチル基またはヒドロキシアルキル基によって置き換えられていることを意味する。
【0015】
下記の式Iは、無水グルコース単位におけるヒドロキシル基のナンバリングを図示している。式Iは、単に例証目的で使用されるものであって、本発明のセルロースエーテルを表していない;ヒドロキシアルキル基による置換は、式Iに示されていない。
【化1】
【0016】
上記セルロースエーテルは、好ましくは、1.2〜2.2、より好ましくは、1.25〜2.10、最も好ましくは、1.40〜2.05、特に、1.60〜2.05のDS(メチル)を有する。セルロースエーテルのメチル置換の程度であるDS(メチル)は、無水グルコース単位1つあたりの、メチル基で置換されているOH基の平均数である。DS(メチル)を決定する場合、用語「メチル基で置換されているOH基」は、セルロース骨格の炭素原子に直接結合されたメチル化されたOH基を含むだけでなく、ヒドロキシアルキル化の後に形成されたメチル化されたOH基も含む。
【0017】
上記セルロースエーテルは、0.05〜1.00、好ましくは、0.08〜0.80、より好ましくは、0.12〜0.70、最も好ましくは、0.15〜0.60、特に、0.20〜0.40のMS(ヒドロキシアルキル)を有する。ヒドロキシアルキル置換の程度は、MS(モル置換度)によって記載される。MS(ヒドロキシアルキル)は、無水グルコース単位1モルあたりの、エーテル結合によって結合されているヒドロキシアルキル基の平均数である。ヒドロキシアルキル化中に、複数の置換によって、側鎖が生じ得る。
【0018】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおける%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルの測定は、米国薬局方(USP32)に従って行われる。得られる値は、%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルである。これらは、引き続いて、メチル置換基への置換の程度(DS)およびヒドロキシプロピル置換基へのモル置換度(MS)に変換される。この変換では、塩の残留量が考慮されている。ヒドロキシエチルメチルセルロースにおけるDS(メチル)およびMS(ヒドロキシエチル)は、ヨウ化水素によるZeisel切断の後のガスクロマトグラフィーによって行われる(G.Bartelmus and R.Ketterer,Z.Anal.Chem.286(1977)161−190)。
【0019】
本発明の徐放剤形において使用されるセルロースエーテルの粘度は、コーン・プレートジオメトリー(CP−60/2°)を備えたHaake RS600レオメーターにおいて、20℃および2.55s−1の剪断速度で1.5重量%の水溶液として測定されたとき、好ましくは、通常、少なくとも50mPa・s、好ましくは、50〜200,000mPa・s、より好ましくは、500〜100,000mPa・s、最も好ましくは、1000〜80,000、特に、1000〜60,000である。
【0020】
水において2重量パーセントの濃度で測定されたときの、本発明の徐放組成物において使用されるセルロースエーテルの溶解開始温度は、少なくとも40℃、好ましくは、少なくとも42℃、より好ましくは、少なくとも44℃、最も好ましくは、少なくとも45℃である。本発明の徐放剤形において使用されるセルロースエーテルの溶解開始温度は、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、好ましくは、最大70℃、より好ましくは、最大65℃、最も好ましくは、最大60℃である。溶解開始温度は、その温度に応じてセルロースエーテルの溶解を判定するためのレオロジー特性化技術である。溶解開始温度は、実施例に記載されるように測定される。
【0021】
上に記載されたセルロースエーテルを生成する方法は、実施例に詳細に記載される。セルロースエーテルを生成するためのプロセスのいくつかの態様は、より一般的な用語で下記に記載される。
【0022】
上に記載されたセルロースエーテルは、多段階のエーテル化プロセスによって得ることができ、そのプロセスは、
i.第1の量のアルカリ化剤でセルロースパルプを処理する工程、および
ii.そのセルロースパルプに少なくとも1つのメチル化剤を加え、
続いて、その反応混合物を70℃以上の反応温度に加熱する工程
を含む第1段階、その後、
iii.1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.04モル当量未満のアルカリ化剤という速度でその反応混合物にさらなる量のアルカリ化剤を加える工程、および必要に応じて、各個別のさらなる段階に対して、
iv.反応混合物にさらなる量の少なくとも1つのメチル化剤を加える工程
を含む少なくともさらなる1段階
を含み、ここで、第1段階におけるアルカリ化剤の添加前、添加後または添加と同時に、少なくとも1つのヒドロキシアルキル化剤、および必要に応じて、メチル化剤とは異なる少なくとも1つのアルキル化剤が、セルロースパルプに加えられるか、または、セルロースパルプのエーテル化が進んでいるときは、部分的に反応したセルロースパルプに加えられる。
【0023】
本セルロースエーテルを調製するためのセルロース原材料は、典型的には、綿または木材、好ましくは、木材パルプから得られるセルロースパルプである。それは、典型的には、粉末またはチップの形態で提供される。
【0024】
上述のプロセスにおいて、セルロースパルプ、またはセルロースパルプからヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応が進んでいるときは、部分的に反応したセルロースパルプは、アルカリ化剤を含む1つ以上の反応容器において、2つ以上の段階、好ましくは、2段階または3段階でアルキル化される。そのアルカリ化剤は、水溶液として使用される、任意の強塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物、好ましくは、水酸化ナトリウム、苛性ソーダもしくは生石灰またはそのような強塩基の2種以上の混合物であり得る。通常、アルカリ金属水酸化物の水溶液の総重量に基づいて、好ましくは、30〜70パーセント、より好ましくは、35〜60パーセント、最も好ましくは、48〜52パーセントのアルカリ金属水酸化物含有率を有するアルカリ金属水酸化物の水溶液が使用される。
【0025】
1つの実施形態において、ジメチルエーテルなどの有機溶媒が、希釈剤および冷却剤として反応容器に加えられる。同様に、反応容器のヘッドスペースには、セルロースエーテル生成物の、酸素によって触媒される脱重合を制御するために、必要に応じて不活性ガス(例えば、窒素)がパージされる。
【0026】
プロセスの第1段階では、セルロースパルプが、第1の量のアルカリ化剤、典型的には、そのセルロースにおける無水グルコース単位1モルあたり1.2〜3.5モル当量のアルカリ化剤で処理される。その処理は、当該分野で公知の任意の手段(例えば、浴もしくは撹拌槽内で浸漬すること、または噴霧すること)によって行われ得る。パルプにおけるアルカリ化剤の均一な膨潤および分布は、混合および撹拌によって達成され得る。第1段階では、セルロースパルプにアルカリ化剤の水溶液を添加する速度は、重大ではない。アルカリ化剤は、数回、例えば、2〜4回に分けて、または連続的に加えられ得る。通常15〜60分間続く第1段階のアルキル化では、その温度は、典型的には、45℃以下で維持される。
【0027】
さらに、塩化メチルまたは硫酸ジメチルなどのメチル化剤が、プロセスの第1段階の間に、第1の量のアルカリ化剤の前に、後に、またはそれと同時に、好ましくは、アルカリ化剤の添加の後に、セルロースパルプに加えられる。メチル化剤は、セルロースに、またはセルロースパルプからヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応が進んでいるときは、部分的に反応したセルロースパルプに、1段階で加えられ得るが、好ましくは、2段階以上、より好ましくは、2段階または3段階で、最も好ましくは、2段階で、加えられる。
【0028】
メチル化剤が、1段階で加えられる場合、そのメチル化剤は、通常、無水グルコース単位1モルあたり3.5〜6モルのメチル化剤の量で加えられるが、いずれにしても、反応混合物を加熱する前の第1段階において加えられるアルカリ化剤と比べて少なくとも等モル量で加えられる。メチル化剤が、1段階で加えられる場合、そのメチル化剤は、好ましくは、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.25〜1.0モル当量のメチル化剤という速度で加えられる。第1段階において使用されるメチル化剤は、任意の従来の懸濁化剤と予め混合されていてもよい。この場合、その懸濁化剤および少なくとも1つのメチル化剤の総重量に基づいて20〜50%、より好ましくは、30〜50%の懸濁化剤を含む混合物が、好ましくは使用される。
【0029】
いったん、セルロースが、第1の量のアルカリ化剤で処理され、好ましくは45℃以下の温度で行われる、第1段階のメチル化剤およびあり得るさらなる成分の添加が達成されたら、反応混合物は、典型的には、30〜80分以内に、少なくとも70℃、好ましくは、70〜90℃の範囲内、より好ましくは、70〜80℃の範囲内の反応温度に、加熱される。通常、その後、その反応は、この反応温度において10〜30分間進められる。
【0030】
続いて、そのプロセスは、さらなる量のアルカリ化剤を加える工程、および必要に応じて、各個別のさらなる段階に対して、反応混合物にさらなる量のメチル化剤を加える工程を含む少なくともさらなる1段階を含む。少なくともさらなる1段階の間に水溶液として加えられるさらなるアルカリ化剤の総量は、典型的には、無水グルコース単位1モルあたり1.0〜2.9モル当量のアルカリ化剤の範囲である。好ましくは、第1段階において加えられるアルカリ化剤の量と少なくともさらなる1段階において加えられるアルカリ化剤の合計量とのモル当量比は、0.6:1〜3.5:1である。少なくともさらなる1段階では、アルカリ化剤を反応混合物にゆっくり、すなわち、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.04モル当量未満、好ましくは、0.035モル当量未満、より好ましくは、0.03モル当量未満のアルカリ化剤という速度で加えることが重要である。第2段階のアルカリ化剤は、通常、55〜85℃、好ましくは、60〜80℃の温度で加えられる。
【0031】
典型的には、メチル化剤は、無水グルコース単位1モルあたり2〜6モルという範囲内の総量で使用される。メチル化剤が、第1段階だけでなく、その後の少なくともさらなる1段階、好ましくは、さらなる1段階においても加えられる場合、そのメチル化剤は、典型的には、第1段階では、無水グルコース単位1モルあたり2.0〜4.0モルのメチル化剤の量で、および少なくともさらなる1段階では、無水グルコース単位1モルあたり1.5〜3.4モルのメチル化剤の総量で、加えられる。いずれにしても、メチル化剤は、反応混合物中に存在するアルカリ化剤と比べて、少なくとも等モル量で加えられる。したがって、第2段階のメチル化剤(もしあれば)は、セルロース、またはセルロースパルプからヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応が進んでいるときは、部分的に反応したセルロースパルプが、アルカリ化剤と比べて少なくとも等モル当量のメチル化剤と連続的に接触するような様式で、アルカリ化剤を加える第2段階および必要に応じて第3段階の前または最中に、反応混合物に加えられる。
【0032】
メチル化剤が、2段階で加えられる場合、第1段階のメチル化剤は、好ましくは、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.25〜0.5モル当量のメチル化剤という速度で加えられる。1段階または第1段階のメチル化剤は、懸濁化剤と予め混合されていてもよい。この場合、懸濁化剤とメチル化剤との混合物は、好ましくは、メチル化剤および懸濁化剤の総重量に基づいて20〜50重量パーセント、より好ましくは、30〜50重量パーセントの懸濁化剤を含む。
【0033】
メチル化剤が、2段階で加えられる場合、第2段階のメチル化剤は、通常、反応混合物を約70〜90℃の温度に10〜30分間加熱した後の反応混合物に加えられる。第2段階のメチル化剤は、好ましくは、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.25〜0.5モル当量のメチル化剤という速度で加えられる。メチル化剤が2段階で加えられる場合、第1段階のメチル化剤と第2段階のメチル化剤とのモル比は、通常、0.68:1〜1.33:1である。少なくともさらなる1段階の各々におけるメチル化剤は、その段階において使用される場合、セルロースが、アルカリ化剤と比べて少なくとも等モル当量の少なくとも1つのメチル化剤と連続的に接触するような様式で、その段階のさらなる量のアルカリ化剤を加える前または加えている間に反応混合物に加えられるべきである。
【0034】
メチル化剤およびアルカリ化剤の各々が2段階で加えられる、上に記載された手順に対する代替物として、第2段階のメチル化剤は、第2段階のアルカリ化剤の一部が加えられた後に反応混合物に加えられ、それに続いて、アルカリ化剤が加えられ得る;すなわち、メチル化剤は、第2段階において加えられ、それに続いて、第3段階のアルカリ化剤が加えられる。そのプロセスのこの実施形態において、第2および第3の段階において加えられる無水グルコース1モルあたりのアルカリ化剤の総量は、通常、無水グルコース単位1モルあたり1.0〜2.9モルであり、好ましくは、そのうちの40〜60パーセントが、第2段階において加えられ、60〜40パーセントが、第3段階において加えられる。好ましくは、第3段階において使用されるアルカリ化剤は、ゆっくり、すなわち、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.04モル当量未満のアルカリ化剤という速度、典型的には、0.03モル当量未満のアルカリ化剤という速度で加えられる。第3段階のメチル化剤およびアルカリ化剤は、通常、55〜85℃、好ましくは、60〜80℃の温度において加えられる。
【0035】
1つ以上の、好ましくは、1つまたは2つのヒドロキシアルキル化剤(例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)もまた、セルロースパルプ、またはセルロースパルプからヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応が進んでいるときは、部分的に反応したセルロースパルプに、第1段階において加えられるアルカリ化剤の前、後、またはそれと同時に、加えられる。単一のヒドロキシアルキル化剤、または2つ以上、好ましくは、ただ1つのヒドロキシアルキル化剤が、使用され得る。ヒドロキシアルキル化剤は、通常、無水グルコース単位1モルあたり0.2〜2.0モルのヒドロキシアルキル化剤の量で加えられる。ヒドロキシアルキル化剤は、反応混合物を反応温度、すなわち、20〜70℃、好ましくは、40〜60℃の温度に加熱する前に加えられることが有益である。
【0036】
メチル化剤とは異なるさらなるアルキル化剤もまた、第1段階において加えられるアルカリ化剤の前、後、またはそれと同時に、セルロースパルプに加えられ得る。非限定的な例としては、塩化エチル、臭化エチルもしくはヨウ化エチル、硫酸ジエチルおよび/または塩化プロピルが挙げられる。さらなるアルキル化剤は、通常、無水グルコース単位1モルあたり0.5〜6モルのアルキル化剤の量で加えられる。そのアルキル化剤は、反応混合物を反応温度、すなわち、20〜70℃、好ましくは、40〜60℃の温度に加熱する前に加えられることが有益である。
【0037】
上に記載された多段階のエーテル化が完了した後、得られたセルロースエーテルは、典型的には、さらに精製、乾燥および/または粉砕される。通常、そのセルロースエーテルは、塩および他の反応副産物を除去するために洗浄される。エーテル化反応の副産物として形成された塩が可溶性である任意の溶媒を使用してよいが、通常、水が使用される。セルロースエーテルは、反応容器内で洗浄され得るが、好ましくは、反応容器の下流に配置された別個の洗浄器において洗浄される。洗浄の前または後に、セルロースエーテルは、例えば、残留している揮発性有機化合物の含有量を減少させるために水蒸気に曝露することによって、揮散され得る。
【0038】
セルロースエーテルを乾燥させることにより、セルロースエーテル、水および他の揮発性化合物の重量の合計に基づいて、水分および他の揮発性化合物の含有率を好ましくは、0.5〜10.0wt.%、より好ましくは、0.8〜5.0wt.%の水および他の揮発性化合物にまで減少させることができる。乾燥は、従来の乾燥機、例えば、トレイ乾燥機、流動床乾燥機、フラッシュ乾燥機、撹拌乾燥機またはチューブ乾燥機を使用して行われ得る。水分および他の揮発性化合物の含有率が減少することにより、セルロースエーテルを粒状の形状に粉砕することが可能になる。乾燥されたセルロースエーテルは、当該分野で公知の任意の好適な手段(例えば、ボールミル、衝撃式粉砕機、ナイフグラインダーまたはエアスウェプト式インパクト(air−swept impact)ミル)によって所望のサイズの微粒子に粉砕され得る。所望であれば、乾燥および粉砕を同時に行うことができる。
【0039】
上に記載されたセルロースエーテルは、長時間にわたるその剤形からの活性成分の放出を調節する機能を有することを意味する徐放剤形に対する賦形剤として有用である。用語「徐放」は、長時間放出(prolonged release);持続放出(extended release);徐放;デポー放出;持効性放出(time release);制御放出;改変放出(modified release)または長時間作用(prolonged action)という用語に対する同意語として本明細書中で使用される。「徐放」は、生物学的に活性な化合物などの活性成分を、意図される効果を達成するようにデザインされた速度および持続時間で利用可能にするアプローチである。上に記載されたセルロースエーテルは、種々の技術分野、例えば、パーソナルケア、ランドリーケアまたは農業用途、水処理、および特に、ヒトまたは動物のヘルスケア用途、最も明確には、薬学的用途における徐放剤形用のポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成するために有用であり、ここで、生物学的に活性な成分は、ビタミン、ハーブおよびミネラルのサプリメントならびに原薬から選択される。例えば、経口制御放出薬物送達系は、所望の血漿プロファイルを達成するために、消化管への薬物の放出を調節することによって、その薬物の吸収速度を制御するデバイスまたは剤形である。これらの剤形は、剤形から全体として活性成分を放出するために、長時間、例えば、4〜30時間、好ましくは、8〜24時間の時間枠で、薬物の緩徐な連続的放出を介して、血漿中に一定またはほぼ一定の薬物レベルを小さい変動で提供するようにデザインされている。
【0040】
ポリマーマトリックスの少なくとも一部が少なくとも上に記載されたセルロースエーテルによって形成されている制御放出剤形(例えば、制御放出錠剤)は、長時間、典型的には、少なくとも4時間、より典型的には、少なくとも6時間、および至適条件下では、少なくとも8時間にわたって、実質的な崩壊なしにインタクトなままであることが見出されている。理論に拘束されることを望むものではないが、上に記載されたセルロースエーテルは、水性液体と接触すると、水和して、その剤形の外皮上に強い膨潤層を形成すると考えられている。その強い膨潤層は、その剤形の浸食によって引き起こされる活性成分の放出を最小限にする。その錠剤は、崩壊しない、すなわち、かなりの程度まで崩れないので、活性成分の放出は、上に記載されたセルロースエーテルの水和によって、その剤形の外皮上に形成された膨潤層の緩徐な溶解によって制御される。強い膨潤層は、制御放出剤形への水の浸透も減少させ、それにより、水が拡散して活性成分を溶解させる剤形のゾーン内の水の量が減少することに起因して、水性環境への活性成分、特に、水溶性活性成分の放出がさらに遅延する。徐放剤形用のポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成するために、上に記載されたセルロースエーテルの1つ以上を使用するとき、活性成分の放出は、公知の比較可能なセルロースエーテルと比べて、延長され得る。あるいは、より小さくより経口摂取し易い錠剤などの制御放出剤形をもたらす低重量のポリマーマトリックスでは、公知の比較可能なセルロースエーテルと本質的に同じ活性成分の放出が達成され得る。
【0041】
上に記載されたセルロースエーテルの1つ以上および1タイプ以上の活性成分が、剤形を調製するために1つ以上の随意の佐剤と混和され得ることが理解されるべきである。好ましくは、混和プロセスは、ほぼ室温で行われる。好ましくは、1タイプ以上の上に記載されたセルロースエーテルは、ポリマーマトリックスの重量の50〜100パーセント、より好ましくは、75〜100パーセント、最も好ましくは、80〜100パーセントを形成する。1つ以上の上に記載されたセルロースエーテルの量は、通常、その剤形の総重量に基づいて、少なくとも5パーセント、好ましくは、少なくとも10パーセント、より好ましくは、少なくとも20パーセント、最も好ましくは、少なくとも25パーセント、および通常、その剤形の総重量に基づいて、最大70パーセント、好ましくは、最大60パーセント、より好ましくは、最大50パーセント、最も好ましくは、最大40パーセントである。
【0042】
剤形の意図される最終用途に応じて、多種多様の活性成分が有用である。活性成分は、当該分野で公知であり、それらとしては、とりわけ、ランドリーケア用途に対する洗浄剤もしくは界面活性剤;農業用途において長時間にわたって生物活性物質(bioactive agents)を放出するようにデザインされた製剤における、肥料、除草剤または殺虫剤が挙げられる。幅広い生物学的に活性な成分(例えば、ビタミン類、ハーブおよびミネラルサプリメントならびに薬物)が有用である。用語「薬物」は、動物、特に、ヒトに投与されたとき、有益な予防的および/または治療的特性を有する化合物を意味する従来のものである。活性成分の量は、通常、剤形の総重量に基づいて、少なくとも0.5パーセント、好ましくは、少なくとも1パーセント、より好ましくは、少なくとも5パーセント、最も好ましくは、少なくとも10パーセント、および通常、剤形の総重量に基づいて、最大75パーセント、好ましくは、最大65パーセント、より好ましくは、最大55パーセント、最も好ましくは、最大45パーセントである。本発明の1つの態様において、徐放剤形は、少なくとも1mg/ml、好ましくは、少なくとも5mg/ml、または10〜40mg/mlもの高さの水溶解性の薬物、例えば、パラセタモールを含む。本発明の別の態様において、徐放製剤は、水溶解性が低い薬物、すなわち、1mg/ml未満、典型的には、0.5mg/ml未満もの水溶解性しか有しない薬物を含む。溶解性の低い有用な薬物は、国際特許出願WO2005/115330の17〜22頁に列挙されている。水溶解性は、水において、または6〜7のpHに調整されたリン酸緩衝食塩水溶液として、25℃において測定される。有用な随意の佐剤は、当該分野で公知であり、通常、固体、例えば、1つ以上の充填剤、色素、着色料、香料、崩壊剤、結合剤、可塑剤、塩、酸性および塩基性pH改変剤、酸化防止剤、ならびに/または潤滑剤である。そのような佐剤の例は、アカシア、コーンスターチ、グアーゴム、ジャガイモデンプン、アルギン酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、糖類、ミネラル類、セルロース末またはセルロース繊維である。
【0043】
混和物は、必要に応じて、公知の乾式または湿式造粒プロセスによって造粒された後、徐放剤形(例えば、錠剤、ペレット剤またはカプレット剤)に圧縮される。徐放剤形を調製する圧縮プロセスは、当該分野で公知である。オープンエンドの(open−ended)用語「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含む(including)」、「有する」および「特徴とする」と同義である。エレメントまたは工程(例えば、成分)の前述のリストについて言及するとき、句「それらの組み合わせ」、「それらの混合物」などは、列挙されたエレメントまたは工程のすべてに至るまでおよびそれらのすべてを含むいずれか2つ以上(少なくとも2つ)を意味する。用語「必要に応じて」は、「有りまたは無しで」を意味する(例えば、「必要に応じて添加物」は、添加物有りまたは無しを意味する)。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、単に例証目的であって、本発明の範囲を限定すると意図されていない。すべてのパーセンテージは、別段特定されない限り、重量基準である。実施例1〜4および比較実施例A〜Cの徐放組成物中のセルロースエーテルの特性は、以下のとおり測定される:
【0045】
粘度
均一な(homogenous)溶液を得るために、3gのセルロースエーテル粉末(セルロースエーテルの含水量を考慮して)を、吊り下げ式の研究室用撹拌機を用いて700rpmで10分間、70℃の197gの水に懸濁する。次いで、これらの溶液を5時間にわたって2℃の温度に冷却して、溶解プロセスを完了させる。これらの5時間の間、溶液を500〜1000rpmで撹拌し、蒸発に起因して損失した水を戻す。次いで、これらの溶液を、冷蔵庫内で一晩保管する。解析の前に、この冷たい溶液を100rpmで15分間撹拌する。
【0046】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度は、コーン・プレートジオメトリー(CP−60/2°)を備えたHaake RS600レオメーターにおいて、20℃および2.55s−1の剪断速度において、20℃の1.5重量%水溶液として測定される。
【0047】
%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルの測定
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおける%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルの測定は、米国薬局方(USP32)に従って行われる。得られる値は、%メトキシルおよび%ヒドロキシプロポキシルである。これらは、引き続いて、メチル置換基への置換の程度(DS)およびヒドロキシプロピル置換基へのモル置換度(MS)に変換される。この変換では、塩の残留量が考慮されている。
【0048】
s23/s26の測定
セルロースエーテルにおけるエーテル置換基の測定は、広く知られており、例えば、Bengt Lindberg、Ulf LindquistおよびOlle StenbergによるCarbohydrate Research,176(1988)137−144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O−ETHYL−O−(2−HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載されている。
【0049】
具体的には、s23/s26の測定は、以下のとおり行われる:
10〜12mgのセルロースエーテルを、4.0mLの分析グレードの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck,Darmstadt,Germany,0.3nmモレキュラーシーブビーズの上に保管されている)に約90℃において撹拌しながら溶解し、次いで、再度、室温まで冷却する。その溶液を、室温において一晩撹拌したまま放置することにより、完全な可溶化を確実にする。セルロースエーテルの可溶化を含む全反応を、4mLのスクリューキャップバイアル内で乾燥窒素雰囲気を使用して行う。可溶化の後、溶解されたセルロースエーテルを、22mLのスクリューキャップバイアルに移す。無水グルコース単位のヒドロキシル基1つあたり30倍モル過剰の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルで粉末状の水酸化ナトリウム(乳棒ですりつぶされたばかりの、分析グレード、Merck,Darmstadt,Germany)およびヨウ化エチル(合成用、銀で安定化されている、Merck−Schuchardt,Hohenbrunn,Germany)を加え、その溶液を窒素下、暗所において、外界温度で3日間激しく撹拌する。第1の試薬の添加と比べて3倍量の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルを加え、さらに、室温においてさらに2日間撹拌することによって、過剰エチル化(perethylation)を繰り返す。必要に応じて、その反応混合物は、その反応の経過中の良好な混合を確実にするために、最大1.5mLのDMSOで希釈され得る。その反応混合物に5mLの5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を注ぎ込み、次いで、得られた溶液を、4mLのジクロロメタンで3回抽出する。合わせた抽出物を2mLの水で3回洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウム(約1g)で乾燥させる。濾過の後、静かな窒素流中で溶媒を除去し、さらなるサンプル調製までサンプルを4℃で保管する。
【0050】
約5mgの過剰エチル化サンプルの加水分解を、1mLの90%ギ酸水溶液が入った2mLのスクリューキャップバイアル内の窒素下において、撹拌しながら100℃で1時間行う。その酸を35〜40℃の窒素流中で除去し、撹拌しながら不活性な窒素雰囲気において120℃で3時間、1mLの2Mトリフルオロ酢酸水溶液による加水分解を繰り返す。完了した後、共蒸留用の約1mLのトルエンを使用して、外界温度における窒素流中で乾燥するまで酸を除去する。
【0051】
加水分解の残渣を、室温において3時間、撹拌しながら、2Nアンモニア水溶液(調製されたばかりの)中の0.5mLの0.5M重水素化ホウ素ナトリウムで還元する。約200μLの濃酢酸を滴下することによって、過剰な試薬を消失させる。得られた溶液を、約35〜40℃の窒素流中で蒸発乾固し、続いて、室温において15分間、真空中で乾燥させる。粘稠性の残渣を、メタノール中の0.5mLの15%酢酸に溶解し、室温において蒸発乾固する。これを5回行い、純粋なメタノールを用いて4回繰り返す。最後の蒸発の後、サンプルを室温において一晩、真空中で乾燥させる。
【0052】
還元の残渣を、90℃で3時間、600μLの無水酢酸および150μLのピリジンでアセチル化する。冷却した後、そのサンプルバイアルをトルエンで満たし、室温の窒素流中で蒸発乾固する。その残渣を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLの水に注ぎ込み、2mLのジクロロメタンで抽出する。この抽出を3回繰り返す。合わせた抽出物を4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。続いて、乾燥したジクロロメタン抽出物をGC解析にかける。そのGCシステムの感度に応じて、抽出物のさらなる希釈が必要であり得る。
【0053】
ガス液体(GLC)クロマトグラフィー解析を、1.5バールのヘリウムキャリアガスを用いて運転される、J&WキャピラリーカラムDB5,30m,0.25mm ID,0.25μm相層厚(phase layer thickness)を備えたHewlett Packard 5890Aおよび5890A Series IIタイプのガスクロマトグラフを用いて行う。このガスクロマトグラフは、60℃で1分間一定に保持し、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、4℃/分の速度で250℃までさらに加熱し、20℃/分の速度で310℃までさらに加熱し、その温度でさらに10分間一定に保持する温度プロファイルでプログラムされている。インジェクターの温度を、280℃に設定し、水素炎イオン化検出器(FID)の温度を、300℃に設定する。1μLのサンプルを、0.5分のバルブタイム(valve time)において、スプリットレスモードで注入する。LabSystems Atlasワークステーションを用いて、データを取得し、処理する。
【0054】
定量的なモノマー組成データを、FID検出によるGLCによって測定されたピーク面積から得る。モノマーのモルレスポンス(Molar responses)は、有効炭素数(ECN)の概念に従って計算されるが、下記の表に記載されるように改変される。有効炭素数(ECN)の概念は、Ackman(R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,2(1964)173−179およびR.F.Addison,R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,6(1968)135−138)によって説明されており、Sweetら(D.P.Sweet,R.H.Shapiro,P.Albersheim,Carbohyd.Res.,40(1975)217−225)によって、部分的にアルキル化されたアルジトールアセテートの定量的解析に適用されている。
【0055】
ECN計算のために使用されたECN増分:
[表]
異なるモノマーのモルレスポンスに対して補正するために、ピーク面積を、2,3,6−Meモノマーに対するレスポンスとして定義されるモルレスポンスファクター(molar response factors)MRFモノマーに乗算する。その2,3,6−Meモノマーは、s23/s26の決定において解析されるすべてのサンプル中に存在するので、基準として選択されている。
MRFモノマー=ECN2,3,6−Me/ECNモノマー
【0056】
それらのモノマーモル分率は、以下の式に従って、補正されたピーク面積を、補正された全ピーク面積で除算することによって計算され、
s23=[(23−Me+23−Me−6−HAMe+23−Me−6−HA+23−Me−6−HAHAMe+23−Me−6−HAHA];および
s26=[(26−Me+26−Me−3−HAMe+26−Me−3−HA+26−Me−3−HAHAMe+26−Me−3−HAHA]、式中、
s23は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の合計である:
a)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されているが、6位は置換されていない(=23−Me);
b)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、6位は、メチル化されたヒドロキシアルキルで置換されている(=23−Me−6−HAMe)か、または2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(=23−Me−6−HAHAMe);および
c)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、6位は、ヒドロキシアルキルで置換されている(=23−Me−6−HA)かまたは2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=23−Me−6−HAHA)。
s26は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の合計である:
a)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されているが、3位は置換されていない(=26−Me);
b)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、3位は、メチル化されたヒドロキシアルキルで置換されている(=26−Me−3−HAMe)かまたは2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(=26−Me−3−HAHAMe);および
c)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基はメチル基で置換されており、3位は、ヒドロキシアルキルで置換されている(=26−Me−3−HA)か、または2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=26−Me−3−HAHA)。
【0057】
HAMCにおける置換基の測定の結果を、下記の表1および2に列挙する。HPMCの場合、ヒドロキシアルキル(HA)は、ヒドロキシプロピル(HP)であり、メチル化されたヒドロキシアルキル(HAMe)は、メチル化されたヒドロキシプロピル(HPMe)である。
【0058】
溶解開始温度の測定
溶解開始温度は、水においてセルロースエーテルのトルク増大を測定することによって、その温度に応じてセルロースエーテルの溶解を測定するためのレオロジー特性化技術である。これらの測定は、Haake RS1 Rheometer(Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe)を用いて行う。羽式(wing)撹拌機(撹拌機プレートの直径および高さは、各々30mmであり;羽のプレートは、直径5mmの穿孔を4つ有する)を備えたCup(Couette)Z−34ジオメトリー。水およびセルロースエーテルの量は、2%という最終濃度を達成するように選択される。58.8gの水を、そのカップに加え、70℃まで加熱する。この温度において1.2gのセルロースエーテルをゆっくり加える。この温度において、セルロースエーテルは、不溶性であり、懸濁液を500rpmで60秒間撹拌する。良好な懸濁液が得られたら、388rpmで撹拌しつつ、その温度を1℃/分の固定された冷却速度で低下させる。トルクを、4データポイント/分で記録して(70℃から開始し、推定される溶解開始温度より少なくとも20℃低い温度において終了する)、トルク増大曲線を温度の関数として得る。溶解開始温度のさらなる解析のために、データを以下の等式に従って正規化する:
【数1】
式中、Mは、特定の温度において測定されたトルクを表し、Mは、最高温度(すなわち、70℃)における300rpmでのトルクの初期値を表し、Mmaxは、最低温度(すなわち、2℃)における最終的なトルクを表す。溶解開始温度の解析のために、トルクの値(y軸)を、温度(x軸)に対してプロットする。複数の温度上昇(各上昇は、2.5℃をカバーする)に対して得られたトルク値に対して線形回帰を行う。上昇は、0.1℃毎に開始される。最大傾斜および十分な相関係数(少なくとも98.0%)を有する線形回帰と温度の軸との交点を、「溶解開始温度」と呼ぶ。図1は、セルロースエーテルの溶解開始温度を決定する方法のグラフ表示である。
【0059】
薬物放出測定
マトリックス錠剤を、活性成分として50wt.%の薬物パラセタモール、30wt.%の実施例1〜4および比較実施例A〜Cのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、18%ラクトース、1%タルカム、ならびに1%ステアリン酸マグネシウムを含む混和物から作製した。マトリックス錠剤を、HPMCをパラセタモールおよびラクトースと1分間混和することによって生成した。次いで、その混和物にタルカムを加え、1分間混和した。最後に、ステアリン酸マグネシウムを、打錠する直前に加え、2分間混和した。直径10.8mmで厚さ3.9mmのサイズの錠剤を、約50kNの圧縮力で圧縮した。この打錠条件は、約80Nの錠剤硬度および約400mgの錠剤重量を達成するように選択した。
【0060】
錠剤溶解試験を、50rpmの速度で回転する標準的なUSP IIパドルを備えたUSP溶解装置(例えば、Erweka Dissolution Tester 626,Erweka GmbH)を用いて、37℃で22時間、900mLのpH5.7リン酸緩衝液中、シンカー(sinkers)を用いて行った。各サンプル時間におけるパラセタモールの吸光度を、10mm光路キュベット(例えば、Hellma Prazisions Kuvette 176.700−QS,Hellma Analytics,Mullheim,Germany)とともにUV−Vis分光光度計(例えば、Shimadzu UV−1700,Shimadzu Deutschland GmbH,Duisburg,Germany)を使用して測定した。パラセタモールの濃度を、243nmの波長における標準的な検量線(0;0.001442;0.004326;0.007210;0.014420;0.028840グラムのパラセタモール/100mL緩衝液)を使用して計算した。34.03gのKH2PO4および0.72gのNaOHをフラスコ内で計量し、5Lまで脱イオン(DI)水で満たし、十分に撹拌して、確実に塩を溶解させ、溶液を均一にすることによって、新鮮緩衝液を調製した。
【0061】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、以下の手順に従って生成した。細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。反応を2段階で行った。第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり2.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、2.5モルの塩化メチルおよび1.4モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を60分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、第1段階の反応を15分間進めた。
【0062】
無水グルコース単位1モルあたり2.8モル当量の塩化メチルの量で塩化メチルを加えることによって、反応の第2段階を開始した。塩化メチルに対する添加時間は、10分間だった。次いで、無水グルコース単位1モルあたり2.3モルの水酸化ナトリウムの量における水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を90分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.026モルの水酸化ナトリウムだった。第2段階の添加が完了したら、反応容器の内容物を80℃の温度で120分間維持した。
【0063】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、熱水が入ったタンクに移した。次いで、その粗HPMCを、ギ酸で中和し、遊離塩化物(chloride free)を熱水で洗浄し(AgNOフロキュレーション試験によって評価)、室温に冷却し、エアスウェプト式ドライヤーにおいて55℃で乾燥させた。次いで、その材料を、0.5mm篩を使用するAlpine UPZミルを用いて粉砕した。粉砕されたHPMCの粒径を、ふるい分け(sieving)によって測定した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:56%<63μm、80%<100μm、97%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0064】
実施例2
細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。この反応を2段階で行った。第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり2.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、2.0モルの塩化メチルおよび0.8モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を60分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、第1段階の反応を25分間進めた。
【0065】
次いで、その反応物を20分以内に60℃に冷却した。塩化メチルを、無水グルコース単位1モルあたり2.00モル当量の塩化メチルの量で加えることによって、反応の第2段階を開始した。塩化メチルに対する添加時間は、10分間だった。次いで、無水グルコース単位1モルあたり2.00モルの水酸化ナトリウムの量における水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を60分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.033モルの水酸化ナトリウムだった。第2段階の添加が完了したら、反応容器の内容物を20分以内に80℃まで加熱し、次いで、80℃の温度で120分間維持した。
【0066】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、実施例1に記載されたようにさらに処理した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:81.4%<63μm、98.4%<100μm、99.6%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0067】
実施例3
実施例3のHPMCは、第1段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり3.0モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧したことを除いては、実施例2のHPMCのように生成した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、5.0モルの塩化メチルおよび1.7モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。反応の第2段階では、塩化メチルを加えなかったが、無水グルコース単位1モルあたり1.00モルの水酸化ナトリウムを60分間にわたって加えた。その添加速度は、1分あたり無水グルコース単位1モルあたり0.017モルの水酸化ナトリウムだった。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:66.3%<63μm、96.5%<100μm、99.9%<200μm、100%<315μmだった。
【0068】
実施例4
実施例4のHPMCは、反応混合物に加えられたプロピレンオキシドの量が、無水グルコース単位1モルあたり1.6モルのプロピレンオキシドだったことを除いては、実施例3のHPMCのように生成した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:68.8%<63μm、96.3%<100μm、99.8%<200μm、100%<315μmだった。
【0069】
比較実施例A
比較実施例AのHPMCは、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。その材料の粒径を、ふるい分けによって測定した。所与のメッシュサイズを通過する粒子のパーセンテージは:69.5%<63μm、99.6<150μm、100.0<420μmである。
【0070】
比較実施例B
細かく粉砕された木材セルロースパルプを、ジャケット付の撹拌反応容器に投入した。その反応容器を真空にし、酸素を除去するために窒素をパージして、次いで、再度真空にした。反応を1段階で行った。水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルあたり4.5モルの水酸化ナトリウムの量でセルロースの上に噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースとの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルあたり2.35モルのジメチルエーテル、5.00モルの塩化メチルおよび2.05モルのプロピレンオキシドをその反応容器に加えた。次いで、その反応容器の内容物を80分間で80℃に加熱した。80℃に達したら、その反応を60分間進めた。
【0071】
その反応の後、反応容器を脱気し、約50℃に冷却した。反応容器の内容物を取り出し、実施例1に記載されたようにさらに処理した。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:52.3%<63μm、83.6%<100μm、99.8%<200μm、100%<315μmだった。
【0072】
比較実施例C
比較実施例Cのヒドロキシプロピルメチルセルロースは、反応混合物に加えられたプロピレンオキシドの量が無水グルコース単位1モルあたり1.15モルのプロピレンオキシドだったことを除いては、実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースのように生成した。比較実施例Cは、従来技術ではない。所与のメッシュサイズを通過した粒子のパーセンテージは:55%<63μm、78%<100μm、97%<200μm、99.9%<315μmだった。
【0073】
実施例1〜4および比較実施例A〜Cのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性を、下記の表1に列挙する。s23/s26測定についての詳細を、下記の表2に列挙する。本発明の徐放剤形(実施例1〜4)および比較剤形(比較実施例A〜C)からの薬物放出を図2に図示する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1および図2に示されている薬物放出の結果は、ポリマーマトリックスが、上でさらに記載されたようなセルロースエーテルによって形成されているとき、制御放出が達成されることを説明しており、ここで、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]は、0.31以下であり、そのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき少なくとも40℃の溶解開始温度を有する。比較実施例AおよびBにおけるように0.32以上の[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]を有するかまたは40℃未満の溶解開始温度を有する比較可能なセルロースエーテルを使用したとき、薬物の制御放出は、達成されなかった。実施例3および4は、比較実施例Aと非常によく似た粒子サイズ分布を有すること、および実施例1は、比較実施例BおよびCと非常によく似た粒子サイズ分布を有することに注意されたい。
本開示は以下も包含する。
[1] ポリマーマトリックスと混和された少なくとも1つの活性成分を含む徐放剤形であって、ここで、該ポリマーマトリックスの少なくとも一部は、少なくとも40℃の溶解開始温度を有し、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、少なくとも1つのセルロースエーテルが0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有するように置換基としてメチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基を有する、少なくとも1つのセルロースエーテルによって形成され、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有する、徐放剤形。
[2] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、少なくとも45℃の溶解開始温度を有する、上記態様1記載の徐放剤形。
[3] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、ヒドロキシアルキルメチルセルロースである、上記態様1または2に記載の徐放剤形。
[4] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記態様3記載の徐放剤形。
[5] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.2〜2.2のDS(メチル)を有する、上記態様1〜4のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[6] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、1.60〜2.05のDS(メチル)を有する、上記態様5記載の徐放剤形。
[7] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、0.20〜0.40のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、上記態様1〜6のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[8] 前記少なくとも1つのセルロースエーテルが、20℃および2.55s-1の剪断速度においてHaakeレオメーターで1.5重量%の水溶液として測定されたとき、少なくとも50mPa・sの粘度を有する、上記態様1〜7のいずれか一項に記載の徐放剤形。
[9] 徐放剤形を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
I.)1つ以上のセルロースエーテル、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤を混和する工程、および
II.)該混和物を剤形に圧縮する工程
を含み、ここで、少なくとも1つのセルロースエーテルは、1−4結合によって連結された無水グルコース単位を有し、
エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基および必要に応じてメチルとは異なるアルキル基であり、
該セルロースエーテルは、0.05〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、
無水グルコース単位のヒドロキシル基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.31以下であるようにメチル基で置換され、
式中、s23は、該無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、該無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されている無水グルコース単位のモル分率であり、
前記少なくとも1つのセルロースエーテルは、水において2重量パーセントの濃度で測定されたとき、少なくとも40℃の溶解開始温度を有する、
プロセス。
[10] 上記態様2〜7のいずれか一項に記載の1つ以上のセルロースエーテルセルロースエーテルが、1つ以上の活性成分および1つ以上の随意の佐剤と混和される、上記態様9記載のプロセス。
[11] 徐放剤形を調製するための、上記態様1〜8のいずれか一項に記載のセルロースエーテルの使用。
図1
図2