(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面は従来のフィルムに変わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
【0003】
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
【0004】
図17は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
【0005】
撮像レンズ装置1においては、
図17に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図18(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
【0006】
また、位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
また、伝達関数を用いたフィルタ処理を行うデジタルカメラの自動露出制御システムが提案されている(たとえば特許文献6参照)。
【0007】
また、CCD、CMOSなどの画像入力機能を持った装置においては、たとえば風景など、所望の映像とともに、バーコード等の近接静止画像を読み取ることが、極めて有用であることが多い。
バーコードの読み取りは、たとえば第一の例としてレンズを繰り出すオートフォーカスでピントを合わせる技術や、第二の例として深度拡張技術としては、たとえばカメラにおいてF値を絞ることで被写界深度を広げて固定ピントとしているものがある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器としての情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
図2(A)〜(C)は、情報コードの例を示す図である。
図3は、
図1の情報コード読取装置に適用可能な撮像装置の構成例を示すブロック図である。
なおここでは、本実施形態の撮像装置が適用可能な装置として、情報コード読取装置を例示している。
【0027】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、
図1に示すように、本体110がケーブル111を介して図示しない電子レジスタ等の処理装置と接続され、たとえば読み取り対象物120に印刷された反射率の異なるシンボル、コード等の情報コード121を読み取り可能な装置である。
読み取り対象の情報コードとしては、たとえば
図2(A)に示すような、JANコードのような1次元のバーコード122と、
図2(B)および(C)に示すようなスタック式のCODE49、あるいはマトリックス方式のQRコードのような2次元のバーコード123が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、本体110内に、図示しない照明光源と、
図3に示すような撮像装置200とが配置されている。
撮像装置200は、後で詳述するように、光学系に収差制御部(収差制御面、または収差制御素子)を適用し、収差制御部により収差(本実施形態においては球面収差)を意図的に発生させ、深度拡張機能を有し、かつ、可変絞りの口径を変化させても深度拡張機能を持続する収差制御光学系システムというシステムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
また、撮像装置200は、上記構成に加えて、ディフォーカスに対する変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)において、任意の周波数の主像面シフト領域で1つではなく、2つ以上のピークを持たせることで、MTFピーク値の低下を抑えつつ深度拡張を可能にする収差制御光学系システムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
【0029】
情報コード読取装置100の撮像装置200は、
図3に示すように、収差制御光学系210、撮像素子220、アナログフロントエンド部(AFE)230、画像処理装置240、カメラ信号処理部250、画像表示メモリ260、画像モニタリング装置270、操作部280、および制御装置290を有している。
【0030】
図4は、本実施形態に係る収差制御光学系を形成する撮像レンズユニットの基本構成を示す図である。
収差制御光学系210Aは、被写体物体OBJを撮影した像を撮像素子220に供給する。また、収差制御光学系210Aは、物体側から順に、第1レンズ211、第2レンズ212、第3レンズ213、可変絞り214、第4レンズ215、第5レンズ216が配置されている。
本実施形態の収差制御光学系210Aは、第4レンズ215と第5レンズ216が接続されている。すなわち、本実施形態の収差制御光学系210Aのレンズユニットは、接合レンズを含んで構成されている。
【0031】
そして、本実施形態の収差制御光学系210Aは、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御面を適用した光学系として構成されている。
本実施形態においては、球面収差のみを発生させるために、収差制御面を挿入する必要がある。なお、収差制御効果は別素子の収差制御素子を挿入しても良い。
その例を示すと
図4のようになり、通常の光学系に収差制御面(第3レンズR2面)を含んだ形となっている。
ここでいう収差制御面とは、収差制御素子の持つ収差制御効果をレンズ面に内包したものをいう。好適には収差制御面213aは可変絞り214に隣接していることが好ましい。
【0032】
そして、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の口径が変化しても深度拡張効果(機能)を有する。
ここで、収差制御光学系210Aは、可変絞り214の口径を変化させることで複数のF値が選択可能であり、選択可能なF値のいずれにおいても、収差制御素子または収差制御面の効果により深度拡張を行うことが可能である。
本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の有効径内に複数(2つ以上)の変曲点を有する。
さらに、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214が開放の口径の場合に光線が通過する領域から収差制御機能による深度拡張効果を有する最小の絞り径の場合に光線が通過する領域を除く領域で一つ以上の変曲点を有する。
換言すると、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、一つ以上の変曲点を有する。
【0033】
本実施形態の収差制御光学系210Aにおいては、収差制御機能を有する収差制御面を内包する収差制御光学系を用いてPSFを2画素以上にまたがるようにし、所定の周波数において偽解像しない主像面シフト領域でディフォーカスに対するMTF特性が2つ以上のピークを持つ深度拡張光学系として構成される。
一般的な光波面変調機能を用いた深度拡張光学系ではMTF特性において1つのピークの裾野を広げて深度を拡張するが、これではそれと引き換えにMTF特性のピーク値が下がってしまう。
本実施形態においては、収差制御機能を用いてピークを複数持つようにすることで、ピーク値の低下を抑えつつ深度拡張を実現できる。
球面収差を適切に制御することで画像復元処理を施さなくても深度拡張することができる。
具体的には、本実施形態の収差制御光学系210Aは、主に球面収差を発生させる収差制御素子、または収差制御面によりディフォーカスに対するMTFのピークを複数に分ける(ここでは2分する)ことでアウトフォーカスにおけるOTFの変化を制御でき、深度を拡張することができる。そして、ピークを分割させるために、球面収差に変曲点を持たせる。
上述したように、球面収差に2つ以上の変曲点を適切に持たせることで複数の絞り口径の選択に対し、深度拡張を実現することができる。
そして、上述したように、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、ひとつ以上の変曲点を有することが望ましい。
この構成を採用することにより、F値を変化させた場合でも効率よく深度拡張作用を得られる。
【0034】
以下、この収差制御光学系210Aの特徴的な構成、機能についてさらに詳述する。
【0035】
図5(A)、(B)および
図6(A),(B)は、本実施形態に係る収差制御光学系の球面収差発生量について説明するための図である。
図5は撮像素子(センサ)を固定したときのセンサとPSFとの関係を示し、
図6は収差制御光学系を固定したときのセンサとPSFとの関係を示している。
【0036】
たとえば、撮像素子220はある画素ピッチを有するセンサであるとする。その場合に、本実施形態では、球面収差を発生させてPSFを1画素PXLより大きくする必要がある。
図5(A)および
図6(A)に示すように、1画素PXLの中にPSFが納まってしまうサイズで球面収差を発生させてもそれは通常の光学系と同じである。通常光学系では一般的にピント位置の中心PSFのサイズが最小となる。
これに対して、本実施形態に係る収差制御光学系210Aでは、
図5(B)に示すように、PSFはアウトフォーカスに限らずピント位置までも1画素PXLに収まらないサイズに制御される。
換言すれば、本実施形態に係る収差制御光学系210Aは、ディフォーカスに対するMTF特性において2つ以上のピークを持つことで被写界深度を拡張する。
【0037】
次に、収差制御光学系に適した撮像素子(センサ)選定について説明する。
たとえばあるPSFサイズを持った収差制御光学系があるとすると、
図6(B)に示すように、センサの画素ピッチがPSFのサイズより小さいものを選ぶことが好ましい。
仮に画素ピッチがPSFより大きいものを選んだとすると通常光学系と同じとなってしまい、そこがピントとなってしまう。よって、その場合、収差制御光学系の球面収差の効果を有効に得ることができない。
【0038】
図7(A)〜(C)は、通常光学系および本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示す図である。
図7(A)は通常光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示し、
図7(B)は本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示し、
図7(C)は1つのピークを拡大したディフォーカスに対するMTFの状態を示している。
【0039】
通常の光学系では、
図7(A)に示すように、ピント位置が一つで中心にある。両サイドにある二つ目の山は落ちきって反転しているため、偽解像となる。
そのため、解像する領域は網掛けで示す主像面シフト領域MSARとなる。通常光学系の1つのピークを深度拡張すると、
図7(C)に示すように、MTFは大きく劣化してしまう。
【0040】
そこで、本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFでは、
図7(B)に示すように、通常光学系において一つのピークPK1であったのを2つのピークPK11、PK12に分割させている。
MTFは若干劣化するが、深度は2つに分割したことによって2倍程度に伸びていて、さらにひとつのピークを深度拡張するより劣化を抑えていることがわかる。
【0041】
図8(A)〜(C)および
図9(A)〜(C)は、本実施形態の収差制御光学系において、球面収差曲線(カーブ)によって任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを説明する。
【0042】
図8(A)〜(C)は、高周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示しており、
図8(A)が球面収差カーブを示し、
図8(B)が低周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示し、
図8(C)が高周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示している。
【0043】
図9(A)〜(C)は、低周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示しており、
図9(A)が球面収差カーブを示し、
図9(B)が低周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示し、
図9(C)が高周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示している。
【0044】
図9(A)〜(C)からわかるように、低周波の深度を伸ばすためには、球面収差の振幅を大きくすれば良い。
振幅の大きさをコントロールすることによって任意の周波数のディフォーカスMTFを2分割することができる。つまり任意の周波数の深度を拡張することができる。
【0045】
なお、本実施形態において、ディフォーカスに対する低周波および高周波とは次のように定義する。
使用する固体撮像素子(撮像素子220)の画素ピッチから決まるナイキスト周波数の半分以上の周波数を高周波、半分より低い周波数を低周波とする。
ただし、ナイキスト周波数は下記の通りに定義する。
ナイキスト周波数=1/(固体撮像素子の画素ピッチ×2)
【0046】
図10(A)〜(C)は、絞り径の違いによる球面収差とディフォーカスMTF、および本光学系と通常光学系と深度を比較して示す図である。
図10(A)は絞りを開放した状態を示し、
図10(B)は絞りを中間に絞った状態を示し、
図10(C)は絞りを絞った状態を示している。
【0047】
絞りを最も開放した状態では、
図10(A)に示すように、複数の変曲点を持つ絞り近傍の収差制御面において光線が通過するために、球面収差カーブにおいても複数の変曲点を持つ。
そこから絞りを狭めても、
図10(B)および(C)に示すように、変曲点が少なくともひとつ以上残る状態まで深度拡張作用を持続できる。
【0048】
以上では、主として球面収差曲線(カーブ)に2つの変曲点を持つ場合について説明したが、球面収差カーブに3つ以上の変曲点を持たせることも可能であり、3つ以上の変曲点を持たせる場合、以下に示すような利点がある。
【0049】
2つ以下の変曲点では、像高に対する変曲点領域の割り振りが偏るために、深度拡張する際に周波数毎にピーク位置がずれる現象が生じてしまう。
こうしたケースの場合、物体距離ごとにPSFに含まれる周波数成分の割合が異なるため、物体距離に対応するレンズの特性と合わせた画像処理が必要になる可能性がある。
そこで、球面収差カーブの変曲点を3つ以上とすることにより、ディフォーカスMTFにおけるピークを複数持たせ、また、球面収差カーブの振幅量を中心部から周辺部にかけて徐々に大きくすることで、周波数制御のバランスをとった深度拡張を実現できる。
【0050】
図11(A)および(B)は、球面収差カーブにおける変曲点の数の違いによる球面収差とディフォーカスMTFを比較して示す図である。
図11(A)は変曲点の数が2つの場合を、
図11(B)は変曲点の数が4つの場合を示している。
図11(A)に示すように、変曲点2つでは、高周波と低周波でピーク位置が異なる。
これに対して、
図11(B)に示すように、変曲点4つを適切な振幅量で配置した場合、ピークの位置が周波数によらず同じ位置になる。
すなわち、変曲点が4つの場合、周波数制御のバランスをとった深度拡張を実現できる。
【0051】
以上、本実施形態に係る光学系の特徴的な構成、機能、効果について説明した。
以下に、撮像素子、画像処理部等の他の構成部分の構成、機能について説明する。
【0052】
撮像素子220は、たとえば
図4に示すように、第5レンズ216側から、ガラス製の平行平面板(カバーガラス)221と、CCDあるいはCMOSセンサ等からなる撮像素子の撮像面222が順に配置されている。
収差制御光学系210Aを介した被写体OBJからの光が、撮像素子220の撮像面222上に結像される。
なお、撮像素子220で撮像される被写体分散像は、収差制御面213aにより撮像素子220上ではピントが合わず、深度の深い光束とボケ部分が形成された像である。
【0053】
そして、
図3に示すように撮像素子220は、収差制御光学系210で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、アナログフロントエンド部230を介して画像処理装置240に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図3においては、撮像素子220を一例としてCCDとして記載している。
【0054】
アナログフロントエンド部230は、タイミングジェネレータ231
と、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ232と、を有する。
タイミングジェネレータ231では、撮像素子220のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ232は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像処理装置240に出力する。
【0055】
信号処理部の一部を構成する画像処理装置240は、前段のAFE230からくる撮像画像のデジタル信号を入力し、エッジ強調等の画像処理を施し、収差制御光学系201Aの収差により低下したコントラストを向上させ、後段のカメラ信号処理部(DSP)250に渡す。
【0056】
カメラ信号処理部(DSP)250は、カラー補間、ホワイトバランス、YCbCr変換処理、圧縮、ファイリング等の処理を行い、メモリ260への格納や画像モニタリング装置270への画像表示等を行う。
【0057】
制御装置290は、露出制御を行うとともに、操作部280などの操作入力を持ち、それらの入力に応じて、システム全体の動作を決定し、AFE230、画像処理装置240、DSP250、可変絞り214等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
【0058】
以下、本実施形態の光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的に説明する。
【0059】
本実施形態においては、収差制御光学系を採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
【0060】
画像処理装置240は、上述したように、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、エッジ強調等の画像処理を施し、収差制御光学系201Aの収差により低下したコントラストを向上させる処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
【0061】
画像処理装置240のMTF補正処理は、たとえば
図12の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、
図12中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図12中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、収差制御面または収差制御光学素子を用いずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
【0062】
本実施形態においては、
図12に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、
図13に示すようにエッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、
図12のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、
図13に示すようになる。
【0063】
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
【0064】
このように、実施形態に係る撮像装置200は、基本的に、1次画像を形成する収差制御光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置
240からなり、光学系システムの中に、収差制御素子を新たに設けるか、またはガラス、プラスチックなどのような光学素子の面を収差制御用に成形したものを設けることにより、球面収差を意図的に発生させて結像の波面を変形(変調)し、そのような波面をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子220の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置240を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子220による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置240で行う。
【0065】
次に、本実施形態および通常光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
【0066】
図14は、通常の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図15は、収差制御素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、
図16は、本実施形態に係る撮像装置の画像処理後のMTFのレスポンスを示す図である。
【0067】
図からもわかるように、収差制御面または収差制御素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が収差制御面または収差制御素子を挿入してない光学系よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像を、後段の画像処理装置240によって画像処理することにより、MTFのレスポンスを向上させることができる。
ただし、画像処理を行うとノイズが増加してしまう場合には、好適にはMTFのレスポンスを向上させるような画像処理は行わないようにすることも可能である。
上述したように、目的に応じて意図的に収差を発生させる光学系を収差制御光学系という。
【0068】
図15に示した、収差制御光学系のOTFの絶対値(MTF)はナイキスト周波数において0.1以上であることが好ましい。
なぜなら、
図16に示した復元後のOTFを達成するためには画像処理でゲインを上げることになるが、センサのノイズも同時に上げることになる。そのため、ナイキスト周波数付近の高周波ではできるたけゲインを上げずに画像処理を行うことが好ましい。
通常の光学系の場合、ナイキスト周波数でのMTFが0.1以上あれば解像する。
したがって、画像処理前のMTFが0.1以上あれば、画像処理でナイキスト周波数でのゲインを上げずに済む。画像処理前のMTFが0.1未満であると、画像処理後の画像がノイズの影響を大きく受けた画像になるため好ましくない。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、可変絞り214、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御光学系210、撮像素子220、および1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240を含み、収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の口径が変化しても深度拡張効果(機能)を有する。
収差制御光学系210Aは、可変絞り214の口径を変化させることで複数のF値が選択可能である。
また、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の有効径内に複数(2つ以上)の変曲点を有する。
本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214が開放の口径の場合に光線が通過する領域から収差制御機能による深度拡張効果を有する最小の絞り径の場合に光線が通過する領域を除く領域で一つ以上の変曲点を有する。
すなわち、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、ひとつ以上の変曲点を有する。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、可変絞り214の口径を変化させることで複数のF値が選択可能であり、選択可能なF値のいずれにおいても、収差制御素子または収差制御面の効果により深度拡張を行うことが可能である。
また、球面収差に2つ以上の変曲点を適切に持たせることで複数の絞り口径の選択に対し、深度拡張を実現することができる。
また、F値を変化させた場合でも効率よく深度拡張作用を得ることが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、画像復元処理を施さなくても深度拡張することができ、絞り径を変化させても深度拡張機能の低下を防止することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、収差制御光学系210Aは、収差を意図的に発生させる収差制御機能を持つ収差制御素子を含む、もしくは収差制御機能を有する収差制御面を内包する収差制御光学系を用いてPSFを2画素以上にまたがるようにし、所定の周波数において偽解像しない主像面シフト領域でディフォーカスに対するMTF特性が2つ以上のピークを持つ深度拡張光学系として形成されていることから、以下の効果を得ることができる。
【0072】
本実施形態においては、収差制御機能を用いてディフォーカスに対するMTF特性において2つ以上のピークを複数持つようにすることで、ピーク値の低下を抑えつつ、収差制御素子を持たない一般的な光学系よりも深度を拡張できる。
すなわち、本実施形態によれば、球面収差を適切に制御することで、画像復元処理を施さなくても深度を拡張することができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さい良好な画像を得ることが可能となる。
また、本実施形態によれば、球面収差カーブの変曲点を3つ以上とすることにより、ディフォーカスMTFにおけるピークを複数持たせ、また、球面収差カーブの振幅量を中心部から周辺部にかけて徐々に大きくすることで、周波数制御のバランスをとった深度拡張を実現できる。
【0073】
また、難度が高く、高価でかつ大型化した光学レンズを必要とせずに、かつ、レンズを駆動させること無く、自然な画像を得ることができる利点がある。
そして、本実施形態に係る撮像装置200は、デジタルカメラやカムコーダー等の民生機器の小型、軽量、コストに考慮が必要な光学システムに使用することが可能である。
また、収差制御光学系210の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る撮像装置
200が適用可能な電子機器としては、情報読み取り装置の他に、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に適用可能である。