特許第5809441号(P5809441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809441
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20151021BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20151021BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   H05B6/10 311
   F22B1/28 A
   F24C1/00 320E
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-108321(P2011-108321)
(22)【出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-238549(P2012-238549A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直志
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英二
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255871(JP,A)
【文献】 特開平09−196302(JP,A)
【文献】 特開平10−169901(JP,A)
【文献】 特開2005−226928(JP,A)
【文献】 特開2007−333287(JP,A)
【文献】 特開2005−287890(JP,A)
【文献】 特開2000−287840(JP,A)
【文献】 特開2010−054171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
F22B 1/28
H05B 6/10
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、
前記蒸気発生容器内の水位を検出するための水位センサと、
前記蒸気発生容器内に水を供給する給水手段と、
前記蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、
前記蒸気発生容器内の上部に支持されたホルダと、このホルダに上端部が固定されて前記蒸気発生容器内に吊設された加熱棒とからなる加熱体とを備え、
前記加熱棒は前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側で発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部を前記ホルダに固定させるようにし、
前記水位センサの検出水位に基づいて前記蒸気発生容器内の水位を前記発熱部の上端部の位置の水位となるように前記給水手段の作動を制御した蒸気発生装置において、
前記加熱棒の非発熱部に水分保持手段として細孔を形成したことを特徴とする蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームコンベクションオーブン等に用いる蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理するスチームコンベクションオーブンが開示されており、このスチームコンベクションオーブンは、ハウジング内に設けられた調理庫内にヒータと送風ファンを備え、ハウジング内の調理庫の側方に蒸気を供給するための誘導加熱式の蒸気発生装置を備えている。このスチームコンベクションオーブンで蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理をするときには、蒸気発生装置から調理庫内に蒸気を供給させるとともに、調理庫内の蒸気を含んだ空気をヒータにより加熱しながら送風ファンにより対流させている。
【0003】
このスチームコンベクションオーブンに用いた蒸気発生装置は、所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、蒸気発生容器内の上部に支持された樹脂製のホルダとこれに上端部が固定されて蒸気発生容器内に吊設された複数の加熱棒とからなる加熱体とを備えている。加熱棒は誘導加熱コイルにより発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側に連続して発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部がホルダに固定されている。この蒸気発生装置においては、誘導加熱コイルに高周波電流を供給すると、加熱棒の発熱部が発熱して蒸気発生容器内の水を加熱し、蒸気発生容器内の水は蒸気となって吐出される。このとき、蒸気発生容器内の水位は蒸気の発生により減少するので、加熱棒の発熱部を超える上限水位を検出したときに給水手段による給水を停止し、発熱部の上端より少し下側となる下限水位を検出したときに給水手段により給水するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−255871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気発生容器内で蒸気を発生させているときには、加熱棒の発熱部は蒸気発生容器内の水と熱交換されて過熱状態とならないが、加熱棒の発熱部の表面に気泡が多く付着すると、加熱棒の発熱部が蒸気発生容器内の水と熱交換されにくくなって過熱状態となることがあった。さらに、加熱棒の状態によっては、加熱棒の発熱部が蒸気膜に覆われて、蒸気膜と液体との接触面から直接沸騰を始める膜沸騰となり、加熱棒の発熱部は水と直接熱交換されずに過熱状態となることがあった。
【0006】
また、蒸気発生容器内で蒸気を発生させているときには、蒸気発生容器内の水位は加熱棒の発熱部を超える上限水位となるように制御されているので、加熱棒の発熱部の熱の大部分は水と熱交換されるが、一部が非発熱部に伝達されている。加熱棒の非発熱部は沸騰したときに跳ね上がる湯によって熱交換されて過熱状態となりにくくなっているが、この湯が各加熱棒に均一にかかるわけでないので、一部の加熱棒の非発熱部が過熱状態となることがあった。このように、加熱棒が過熱状態となると、加熱棒を固定するホルダが溶け、加熱棒が蒸気発生容器内に脱落したり、ホルダを支持する蒸気発生容器が溶けるおそれがあった。本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、蒸気発生容器内の水位を検出するための水位センサと、蒸気発生容器内に水を供給する給水手段と、蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、蒸気発生容器内の上部に支持されたホルダと、このホルダに上端部が固定されて蒸気発生容器内に吊設された加熱棒とからなる加熱体とを備え、加熱棒は誘導加熱コイルに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側で発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部をホルダに固定させるようにし、水位センサの検出水位に基づいて蒸気発生容器内の水位を発熱部の上端部の位置の水位となるように給水手段の作動を制御した蒸気発生装置において、加熱棒の非発熱部に水分保持手段として細孔を形成したことを特徴とする蒸気発生装置を提供するものである。
【0008】
上記のように構成した蒸気発生装置においては、加熱棒の非発熱部に水分保持手段として細孔を形成したので、蒸気発生容器内で沸騰したときに跳ね上がる湯が非発熱部に形成された細孔に毛細管現象により流入し、加熱棒の非発熱部はこの細孔内に流入した湯と熱交換されるようになり、加熱棒が過熱状態となりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の蒸気発生装置を内蔵したスチームコンベクションオーブンの第1の実施形態の正面図である。
図2図1のA−A線における縦断面図である。
図3図1のB−B線における縦断面図である。
図4】蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
図5】スチームコンベクションオーブンの制御装置のブロック図である。
図6】第2の実施形態の蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
図7】第3の実施形態の蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
図8】第3の実施形態の加熱体の斜視図である。
図9】第4の実施形態の蒸気発生装置の蒸気導出筒を取り外した状態の平面図である。
図10】第4の実施形態の蒸気発生容器と加熱体の斜視図である。
図11】第5の実施形態の蒸気発生装置(水位検知容器の記載を省略した)の斜視図である。
図12】第5の実施形態の蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の蒸気発生装置をスチームコンベクションオーブンに適用した第1の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1図3に示すように、スチームコンベクションオーブン10は、ハウジング11の内部に配置した食材の調理庫12と、この調理庫12の内部を加熱するために調理庫12内に設けたヒータ13と、調理庫12内の空気を対流させるために調理庫12内に設けた送風ファン14と、調理庫12内の温度を検出する庫内温度センサ15と、ハウジング11の内部にて調理庫12の側方に形成した機械室16に設けられて調理庫12内に蒸気を供給する蒸気発生装置20と、ハウジング11のフロントパネルに操作パネル17を備えている。
【0013】
図4に示すように、本発明の蒸気発生装置20は、所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器21と、蒸気発生容器21の外周に巻回された誘導加熱コイル27と、蒸気発生容器21内に収容されて誘導加熱コイル27に高周波電流を供給することで発熱する加熱体30とを備えている。
【0014】
蒸気発生容器21は上下が開口した樹脂製の円筒部材よりなり、機械室16の床面に設置されて調理庫12内の水を排出するのに用いる排水タンク18上に接続筒22を介して立設されている。蒸気発生容器21の上端開口は蒸気の吐出口21aとなっており、この吐出口21aには吐出される蒸気を調理庫12内に導出するための蒸気導出筒23が接続されている。また蒸気発生容器21の下端開口は排水口21bとなっており、この排水口21bに接続された接続筒22には排水弁24が設けられていて、排水弁24を開放させると蒸気発生容器21内の水が排水タンク18に排出される。蒸気発生容器21の上部には加熱体30を支持するために下側に向かって細く形成されたテーパ面21cが形成されている。蒸気発生容器21の上部には、テーパ面21cより下側に温度センサ33を取り付けるための温度センサ取付筒部21dが形成されている。
【0015】
蒸気発生容器21の上下方向の中間部外周には環状のブラケット25,26が上下に離間して設けられており、このブラケット25,26の間に誘導加熱コイル27が巻回されている。また、ブラケット25,26には、その円周方向に沿って誘導加熱コイル27から漏出する電磁波を防ぐために複数個の棒状のフェライト28が設けられている。
【0016】
図4に示すように、蒸気発生容器21内には誘導加熱コイル27に高周波電流を供給することにより発熱して蒸気発生容器21内の水を加熱する加熱体30が収容されている。加熱体30は、蒸気発生容器21の上部に支持されたホルダ31と、このホルダ31に上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された7本の加熱棒32とを有している。ホルダ31は中心部に蒸気の通路が形成された略環状の金属製プレートであり、外周部に等間隔に形成された6つの突起部31aを蒸気発生容器21の上部に形成されたテーパ面21cに係止させて支持されている。
【0017】
ホルダ31にはその周方向に沿って等間隔に7本の加熱棒32の上端部が固定されている。7本の加熱棒32は磁性体部材よりなる導電性の金属製棒状部材であり、蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32は、誘導加熱コイル27と同じ高さにあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32aとし、この発熱部32aより上側部分と下側部分で発熱しない部分を非発熱部32b,32cとしている。各加熱棒32は上側部分の非発熱部32bがホルダ31に固定されている。各加熱棒32の上側部分の非発熱部32bには、複数の貫通孔よりなる細孔32dが形成されている。また、7本の加熱棒のうちの1本には上側部分の非発熱部32bの温度を検出するための温度検出孔32eが穿設されており、この温度検出孔32eは蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dと同じ高さ位置となっている。
【0018】
蒸気発生容器21の上部の温度センサ取付筒部21dには温度センサ33が取り付けられている。温度センサ33は加熱棒32の非発熱部32bの温度を検出することにより、加熱体30の過熱状態を検知するためのものである。温度センサ33の感温部33aは加熱棒32の温度検出孔32eに面接触するように挿入されている。
【0019】
蒸気発生容器21の側方には蒸気発生容器21内の水位を検知するための略筒状の水位検知容器40が立設されており、水位検知容器40は蒸気発生容器21の下部に連通管41により連通接続されている。水位検知容器40内には蒸気発生容器21内の水位を検出するための水位センサ42が設けられている。水位センサ42はフロートスイッチよりなり、支持部材により上下動可能に支持されたフロートにより、蒸気発生容器21内で加熱棒32の発熱部32aを超える水位として上限水位L1とこの発熱部32aより少し下側の水位として下限水位L2とを検出する。水位検知容器40の上部に設けられた給水部43には給水手段44が接続されている。給水手段44は、水道等の給水源から導出される給水管45と、給水管45に介装された給水弁46とからなる。給水弁46を開放すれば水位検知容器40内に給水され、水位検知容器40内に給水された水は連通管41を通って蒸気発生容器21内に送られる。また、水位検知容器40には上限水位L1を少し超える水位の水を排水するオーバーフロー管47が設けられている。
【0020】
スチームコンベクションオーブン10は制御装置50を備えており、図5に示すように、制御装置50はヒータ13と、送風ファン14と、庫内温度センサ15と、操作パネル17と、蒸気発生装置20の各機器として排水弁24、誘導加熱コイル27、温度センサ33、水位センサ42、給水弁46に接続されている。制御装置50は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(何れも図示省略)を備えている。CPUは、操作パネル17からの入力、庫内温度センサ15、蒸気発生装置20の温度センサ33、水位センサ42の各検出に基づき、ヒータ13、送風ファン14、排水弁24、誘導加熱コイル27及び給水弁46の作動を制御するプログラムを実行する。
【0021】
このスチームコンベクションオーブン10においては、例えばコンビモードによる調理プログラムを実行するときには、制御装置50は、調理に適した温度及び蒸気量となるように、ヒータ13と蒸気発生装置20と送風ファン14との作動を制御している。このスチームコンベクションオーブン10でコンビモードの調理プログラムを実行して蒸気発生装置20を作動させると、誘導加熱コイル27に高周波電流が供給され、加熱棒32の発熱部32aが発熱する。蒸気発生容器21内の水は発熱する加熱棒32により加熱されて湯となってから蒸気となり、この蒸気は蒸気導出筒23から調理庫12内に送出される。蒸気発生容器21内の水位は蒸気の発生により低下するため、制御装置50は蒸気発生容器21内の水位が上限水位L1と下限水位L2との間の水位となるように制御している。具体的には、制御装置50は水位センサ42により下限水位L2が検出されると給水弁46を開放させて給水させ、水位センサ42により上限水位L1が検出されると給水弁46を閉止させて給水を停止させるよう制御している。また、このように蒸気発生装置20を作動させているときには、制御装置50は加熱体30が過熱状態になると誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止するように制御している。具体的には、制御装置50は温度センサ33により過熱状態として規定した110℃以上を検出すると、誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止している。
【0022】
上記のように構成した蒸気発生装置20においては、誘導加熱コイル27に高周波電流を供給して加熱棒32の発熱部32aを発熱させているときに、加熱棒32の発熱部32aの大部分の熱は蒸気発生容器21内の湯と熱交換されているが、一部の熱が非発熱部32bに伝達されている。加熱棒32の非発熱部32bは沸騰したときに跳ね上がる湯によって熱交換されて過熱状態となりにくくなっているが、この湯が各加熱棒32に均一にかかるわけでないので、一部の加熱棒32の非発熱部32bは過熱状態となるおそれがある。この実施形態の加熱棒32の上側部分の非発熱部32bには、水分保持手段として、複数の細孔32dが穿設されているので、沸騰したときに跳ね上がる湯はこの細孔32dに毛細管現象により流入して留まるようになる。これにより、加熱棒32の非発熱部32bは、蒸気発生容器21内で跳ね上がる湯に一時的にかからなくても、細孔32d内に保持されている湯と熱交換されるので、過熱状態となりにくくなる。また、非発熱部32bは多数の細孔32dにより熱伝導率が低下するので、発熱部32aから伝わる熱は非発熱部32bに伝わりにくくなる。このように、加熱棒32の非発熱部32bが過熱状態になりにくくなるので、誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を一時的に停止させる事態が減少し、効率よく蒸気を発生させることができる。また、加熱棒32の非発熱部32bが過熱状態となりにくくなるので、加熱棒32はこれを固定したホルダ31を溶かして蒸気発生容器21内に脱落したり、ホルダ31を介して蒸気発生容器21を溶かすおそれが減少する。
【0023】
なお、本実施形態においては、水分保持手段として加熱棒32の非発熱部32bに複数の細孔32dを穿設したが、本発明はこれに限られるものでなく、他の水分保持手段として以下の手段を採用することができる。他の水分保持手段として、加熱棒32の非発熱部32bには、その表面を粗面として沸騰により跳ね上がる湯をその表面に保持させるようにしてもよい。このようにしたときには、加熱棒32の非発熱部32bは、蒸気発生容器21内で跳ね上がる湯に一時的にかからなくても、粗面よりなる非発熱部32bの表面に保持された湯と熱交換され、過熱状態となりにくくなる。また、加熱棒32の非発熱部32bを粗面とすることにより、加熱棒32の非発熱部32bの表面を滑面とする表面仕上げ加工を省くことができ、コストダウンさせることができる。また、他の水分保持手段として、加熱棒32の非発熱部32bの表面にはカルシウム等からなるスケールを付着させておいたり、セラミックス等の吸水材を付着させておいても上述したのと同様の効果を得ることができる。また、他の水分保持手段として、加熱棒32の非発熱部32bの表面に親水性のコーティングを施してもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の効果を得ることができる。
【0024】
次に、本発明による蒸気発生装置の第2の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Aにおいては、上述した第1の実施形態の加熱体30を加熱体30Aに代えている。以下にこの加熱体30Aについて説明する。図6に示すように、加熱体30Aは、蒸気発生容器21の上部のテーパ面21cに当接して支持されるホルダ31と、このホルダ31に上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された7本の加熱棒32Aとを有している。ホルダ31にはその周方向に沿って等間隔に7本の加熱棒32Aの上端部が固定されている。7本の加熱棒32Aは磁性体部材よりなる導電性の金属製棒状部材であり、蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32Aは、誘導加熱コイル27と同じ高さにあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32Aaとし、この発熱部32Aaより上側部分と下側部分で発熱しない部分を非発熱部32Ab,32Acとしている。各加熱棒32Aは上側部分の非発熱部32Abがホルダ31に固定されている。各加熱棒32Aの発熱部32Aaと下側の非発熱部32Acとには、軸線方向に延びる縦溝32Adが周方向に複数形成されている。この縦溝32Adは、加熱棒32Aを発熱させて蒸気発生容器21内の水を加熱したときに、加熱棒32Aの表面に付着する気泡を離しやすくするものである。これら以外は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0025】
上記のように構成した蒸気発生装置20Aにおいては、誘導加熱コイル27に高周波電流を供給して加熱棒32Aの発熱部32Aaを発熱させると、蒸気発生容器21内の水は加熱棒32Aの発熱部32Aaから発熱する熱により加熱されて湯となってから蒸気となる。このとき、加熱棒32Aの発熱部32Aaの表面には気泡が付着し、発熱部32Aaはこの気泡によって湯と熱交換されにくくなって過熱状態となるおそれがあった。さらに、加熱棒32Aの発熱部32Aaの表面が蒸気の膜に覆われると、蒸気膜と液体との接触面から直接に沸騰を始める膜沸騰となり、加熱棒32Aの発熱部32Aaは湯と直接熱交換されずに過熱状態となるおそれがあった。この実施形態の加熱棒32Aの発熱部32Aaには、水分保持手段の気泡付着防止手段として、軸線方向に延びる縦溝32Adが周方向に複数形成されているので、加熱棒32Aの発熱部32Aaの表面に付着した気泡がこれらの縦溝32Adに沿って水面に移動しやすくなる。これにより、発熱部32Aaは気泡によって水との熱交換を阻害されにくくなり、加熱棒32Aが水と熱交換されにくくなることにより生じる過熱状態となりにくくなる。また、加熱棒32Aの発熱部32Aaに軸線方向に延びる縦溝32Adを周方向に複数形成したことにより、これら縦溝32Adにスケールが付着しても、付着したスケールはこれを基点にして割れて落ちやすくなるので、発熱部32Aaはスケールの付着によって生じる湯との熱交換の低下を抑えることができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、水分保持手段の気泡付着防止手段として加熱棒32Aの発熱部32Aaに軸線方向に延びる縦溝32Adを周方向に複数形成したが、本発明はこれに限られるものでなく、他の気泡付着防止手段として以下の手段を採用することができる。他の気泡付着防止手段として、加熱棒32Aの発熱部32Aaには、その表面を粗面として気泡の付着を抑えるようにしてもよい。このようにしたときには、上述した作用効果を得ることができるとともに、加熱棒32Aの発熱部32Aaの表面を滑面とする表面仕上げ加工を省くことができ、コストダウンさせることができる。また、他の水分保持手段として、加熱棒32Aの発熱部32Aaの表面に親水性のコーティングを施してもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の効果を得ることができる。
【0027】
次に、本発明による蒸気発生装置の第3の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Bにおいては、上述した第1の実施形態の加熱体30を加熱体30Bに代えており、以下にこの加熱体30Bについて説明する。図7及び図8に示すように、加熱体30Bは、蒸気発生容器21の上部のテーパ面21cに当接して支持されるホルダ31Bと、このホルダ31Bに上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された7本の加熱棒32とを有している。ホルダ31Bは中心部に蒸気の通路が形成された略環状の樹脂部材よりなり、外周部に等間隔に形成された7つの突部31Baを蒸気発生容器21の上部に形成されたテーパ面21cに係止させて支持されている。ホルダ31Bは7本の加熱棒32の上端部をインサート成形により一体的に固着している。
【0028】
7本の加熱棒32は蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32は、誘導加熱コイル27と同じ高さ位置にあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32aとし、発熱部32aより上側及び下側で誘導加熱コイル27に高周波電流を供給しても発熱しない部分を非発熱部32b、32cとしている。また、7本の加熱棒32のうち1本には上側部分の非発熱部32bの温度を検出するための温度検出孔32eが穿設されており、この温度検出孔32eは蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dと同じ高さ位置となっている。
【0029】
ホルダ31Bの下端には7本の加熱棒32の外周側に環状の温度センサ誤挿入防止板34Bが固定されている。温度センサ誤挿入防止板34Bは加熱棒32の温度検出孔32eが蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dに対向する位置にないときに、温度センサ33を温度センサ取付筒部21dに挿入して取り付けることができないようにするためのものである。温度センサ誤挿入防止板34Bには加熱棒32の温度検出孔32eと対向する位置に温度センサ33の感温部33aが挿通可能な温度センサ挿通孔34Baが形成されている。なお、図7及び図8には細孔32dの記載を省略しているが、これら以外は上述した第1の実施形態と同様である。
【0030】
上記のように構成した蒸気発生装置20Bにおいては、加熱体30Bを蒸気発生容器21内に収容するときに、加熱棒32の温度検出孔32eが蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dと対向する位置にないと、温度センサ33の感温部33aを温度検出孔32eに挿通できなかった。温度センサ33の感温部33aが温度検出孔32eに挿通されないと、温度センサ33は加熱棒32の非発熱部32bの温度を検出できないことになる。この実施形態の蒸気発生装置20Bにおいては、加熱体30Bには温度センサ誤挿入防止板34Bが設けられている。加熱棒32の温度検出孔32eが蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dと対向する位置にあるときには、温度検出孔32eと温度センサ取付筒部21dとの間に温度センサ誤挿入防止板34Bの温度センサ挿通孔34Baが配置されるので、温度センサ33の感温部33aは温度センサ挿通孔34Baを通って温度検出孔32eに挿入される。これに対し、加熱棒32の温度検出孔32eが蒸気発生容器21の温度センサ取付筒部21dと対向する位置にないときには、温度センサ33は温度センサ誤挿入防止板34Bの外周面に当たって挿入できない。これにより、温度センサ33の感温部33aが温度検出孔32eに挿通されない状態で取り付けられるのを防ぐことができる。また、温度センサ誤挿入防止板34Bは蒸気発生容器21Bの内周面に隙間なく当接するので、加熱体30Bは蒸気発生容器21内で傾きにくくなった。
【0031】
次に、本発明による蒸気発生装置の第4の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Cにおいては、上述した第3の実施形態の蒸気発生容器21と加熱体30Bとを蒸気発生容器21Cと加熱体30Cとに代えており、以下にこれらについて説明する。図9及び図10に示すように、蒸気発生容器21Cの上端部の内周面には、加熱棒32の温度検出孔32eを温度センサ取付筒部21dに対向する位置に位置決めするための7つの凹溝21Ceが形成されている。これら凹溝21Ceは加熱体30Cのホルダ31Cの7つの突部31Caを嵌合させるものであり、7つの凹溝21Ceのうち温度センサ取付筒部21dの直上に配置された凹溝21Ce1は他の凹溝21Ceより幅が広く形成されている。
【0032】
加熱体30Cのホルダ31Cの外周部に形成された突部31Caのうち、温度検出孔32eの形成された加熱棒32の直上に配置された突部31Ca1は、蒸気発生容器21の上端部の内周面に幅が広く形成された凹溝21Ce1と嵌合可能となるように他の突部31Caより幅が広く形成されている。また、他の突部31Caは幅の広く形成された凹溝21Ce1以外の凹溝21Ceと嵌合可能な幅となっている。なお、この実施形態の蒸気発生装置20Cは第3の実施形態の温度センサ誤挿入防止板を廃したものであり、図10には細孔32dの記載を省略しているが、これら以外は上述した第3の実施形態と同様である。
【0033】
上記のように構成した蒸気発生装置20Cにおいては、加熱体30Cを蒸気発生容器21C内に収容するときに、加熱棒32の温度検出孔32eが蒸気発生容器21Cの温度センサ取付筒部21dと対向する位置にないと、温度センサ33の感温部33aを温度検出孔32eに挿通できなかった。温度センサ33の感温部33aが温度検出孔32eに挿通されないと、温度センサ33は加熱棒32の非発熱部32bの温度を検出できないことになる。この蒸気発生装置20Cにおいては、蒸気発生容器21Cの上端部の内周面に形成された7つの凹溝21Ceのうち、温度センサ取付筒部21dの直上に配置された凹溝21Ce1は他の凹溝21Ceより幅が広く形成されている。また、加熱体30Cのホルダ31Cの外周部に形成された7つの突部31Caのうち、温度検出孔32eの形成された加熱棒32の直上に配置された突部31Ca1は他の突部31Caより幅が広く形成されている。これらにより、ホルダ31Cの幅の広い突部31Ca1が蒸気発生容器21Cの幅の広い凹溝21Ce1と対向する位置にないと、加熱体30Cを蒸気発生容器21C内に収容できないので、加熱棒32の温度検出孔32eは必ず蒸気発生容器21Cの温度センサ取付筒部21dに対向する位置となる。これにより、温度センサ33の感温部33aが温度検出孔32eに挿通されない状態で取り付けられるのを防ぐことができる。
【0034】
次に、本発明による蒸気発生装置の第5の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Dにおいては、上述した第3の実施形態の蒸気発生容器21と加熱体30Bとを蒸気発生容器21Dと加熱体30Dに代えており、以下にこれらについて説明する。図11及び図12に示すように、蒸気発生容器21Dの上部には7つの温度センサ33Dを取り付けるための7つの温度センサ取付筒部21Ddが周方向に等間隔に形成されている。また、加熱体30Dの7本全ての加熱棒32Dの上部には温度検出孔32Deが穿設されている。7つの温度センサ33Dは蒸気発生容器21Dの各温度センサ取付筒部21Ddに取り付けられて、各温度センサ33Dの感温部33Daは各加熱棒32Dの温度検出孔32Deに挿通されている。なお、この実施形態の蒸気発生装置20Dは第3の実施形態の温度センサ誤挿入防止板を廃したものであり、図12には細孔32dの記載を省略しているが、これら以外は上述した第3の実施形態と同様である。
【0035】
上記のように構成した蒸気発生装置20Dにおいては、7本の加熱棒32Dの全てに温度検出孔32Deが穿設されており、7つの温度センサ33Dが各温度検出孔32Deに挿通されている。制御装置50には7つの温度センサ33Dの各検出温度が入力され、これら温度センサ33Dのうち一つでも過熱温度と規定した110℃を検出すると、制御装置50は誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止させる。これにより、7本の加熱棒32Dの一部が過熱状態となっても、加熱体30Dによる加熱を停止させることができるようになる。
【0036】
本発明は、上述した各実施形態の蒸気発生装置に限られるものでなく、上述した各実施形態の蒸気発生装置を各々適宜組み合わせて、加熱体が過熱状態となるのを防ぐようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
20…蒸気発生装置、21…蒸気発生容器、27…誘導加熱コイル、30…加熱体、31…ホルダ、32…加熱棒、32a…発熱部、32b…非発熱部、33d…細孔、33Ad…溝。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12