(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明による接点機構を適用した電磁接触器を示す断面図である。
図1において、1は例えば合成樹脂製の本体ケースである。この本体ケース1は、上部ケース1aと下部ケース1bの2分割構造を有する。上部ケース1aには、接点機構CMが内装されている。この接点機構CMは、上部ケース1aに固定配置された固定接触子2と、この固定接触子2に接離自在に配設された可動接触子3とを備えている。
【0018】
また、下部ケース1bには、可動接触子3を駆動する操作用電磁石4が配設されている。この操作用電磁石4は、E字脚型の積層鋼板で形成された固定鉄心5と、同様にE字脚型の積層鋼板で形成された可動鉄心6とが対向して配置されている。
固定鉄心5の中央脚部5aにはコイルホルダ7に巻装された単相交流が供給される電磁コイル8が固定されている。また、コイルホルダ7の上面と可動鉄心6の中央脚6aの付け根との間に可動鉄心6を固定鉄心5から離れる方向に付勢する復帰スプリング9が配設されている。
【0019】
さらに、固定鉄心5の外側脚部の上端面にはシェーディングコイル10が埋め込まれている。このシェーディングコイル10によって、単相交流電磁石において交番磁束の変化による電磁吸引力の変動、騒音及び振動を抑制することができる。
そして、可動鉄心6の上端に接触子ホルダ11が連結されている。この接触子ホルダ11にはその上端側に軸直角方向に形成された挿通孔11aに、可動接触子3が接触スプリング12によって固定接触子2に対して所定の接触圧を得るように下方に押圧されて保持されている。
【0020】
この可動接触子3は、
図2に拡大図示するように、中央部が接触スプリング12によって押圧された細長い棒状の導電板3aで構成され、この導電板3aの両端側の下面に可動接点部3b,3cがそれぞれ形成されている。
一方、固定接触子2は、
図2に拡大図示するように、可動接触子3の可動接点部3b,3cに下側から対向する一対の固定接点部2a,2bを支持して導電板3aと平行に外側に向かう第1の導電板部2c,2dと、この第1の導電板部2c,2dの導電板3aより外側となる外側端部から導電板3aの端部の外側を通って上方に延長する第2の導電板部2e,2fとで形成されたL字状導電板部2g,2hを備えている。そして、これらL字状導電板部2g,2hの上端に、
図1に示すように、上部ケース1aの外側に延長して固定された外部接続端子2i,2jに連結されている。
【0021】
そして、L字状導電板部2g,2hの第2の導電板部2e,2fに磁性体板14a,14bが固定配置されている。これら磁性体板14a,14bのそれぞれは、接点機構CMが開極状態にあるときに固定接点部2a,2bと可動接点部3b,3cとの間と対向する内側面を覆う内面板部14cと、この内面板部14cの前後両端から第2の導電板部2e,2fの側面を通って外面側に向かう側板部14d,14eとで構成されている。
【0022】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、操作用電磁石4の電磁コイル8が非励磁状態である状態では、固定鉄心5及び可動鉄心6間に電磁吸引力が生じることはなく、復帰スプリング9によって、可動鉄心6が固定鉄心5から上方に離れる方向に付勢され、この可動鉄心6の上端がストッパ13に当接することにより電流遮断位置に保持される。
【0023】
この可動鉄心6が電流遮断位置にある状態では、可動接触子3が、
図2(a)に示すように、接触子ホルダ11の挿通孔11aの底部に接触スプリング12によって接触されている。この状態で、可動接触子3の導電板3aの両端側に形成された可動接点部3b,3cが固定接触子2の固定接点部2a,2bから上方に離間しており、接点機構CMが開極状態となっている。
【0024】
この接点機構CMの開極状態から、操作用電磁石4の電磁コイル8に単相交流を供給すると、固定鉄心5と可動鉄心6との間で吸引力が発生し、可動鉄心6が復帰スプリング9に抗して下方に吸引される。これにより、接触子ホルダ11に支持されている可動接触子3が下降して、可動接点部3b,3cが固定接触子2の固定接点部2a,2bに接触スプリング12の接触圧で接触し、閉極状態となる。
【0025】
この閉極状態となると、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第2導電板部2e、第1導電板部2c、固定接点部2aを通じて可動接触子3の可動接点部3bに供給される。この可動接点部3bに供給された大電流は導電板3a、可動接点部3cを通じて固定接点部2bに供給される。この固定接点部2bに供給された大電流は、第1導電板部2d、第2導電板部2f、外部接続端子2jに供給されて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
【0026】
このとき、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b、3c間に可動接点部3b,3cを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
しかしながら、固定接触子2は、
図2に示すように、第1の導電板部2c,2d及び第2の導電板部2e,2fによってL字状導電板部2g,2hが形成されているので、上述した電流路が形成されることにより、可動接触子3を流れる電流に対し、
図2(c)に示す磁界を形成する。このため、フレミングの左手の法則により、可動接触子3の導電板3aに可動接点部3b,3cを固定接点部2a,2b側に押し付ける開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を作用させることができる。
【0027】
したがって、可動接触子3を開極させる方向の電磁反発力が発生しても、これに抗するローレンツ力を発生させることができるので、可動接触子3が開極することを確実に抑制することができる。このため、可動接触子3を支持する接触スプリング12の押圧力を小さくすることができ、これに応じて操作用電磁石4で発生する推力も小さくすることができ、全体の構成を小型化することができる。
【0028】
しかも、この場合、固定接触子2にL字状導電板部2g,2hを形成するだけで良く、固定接触子2の加工を容易に行うことができるとともに、別途開極方向の電磁反発力に抗する電磁力又は機械力を発生する部材を必要としないので、部品点数が増加することはなく、全体の構成が大型化することを抑制することができる。
この接点機構CMの閉極状態から操作用電磁石4の励磁を停止して、電流遮断状態とすると、
図2(d)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの固定接点部2a,2bから可動接触子3の可動接点部3b,3cが上方に離間する。このとき、固定接点部2a,2b及び可動接点部3b,3c間にアーク15a,15bが発生する。このアーク15aの電流方向は開極方向となり、アーク15bの電流方向は開極方向と逆方向となる。
【0029】
このとき、外部接続端子2iが正極(+)端子に接続され、外部接続端子2jが負極(−)端子に接続されているものとすると、固定接触子2のL字状導電板部2gは+極性を有し、L字状導電板部2hは−極性を有する。この結果、L字状導電板部2gの固定接点部2aと可動接触子3の可動接点部3bとの間に発生するアーク15aの電流方向は、
図2(e)に示すように、固定接点部2aから可動接点部3bに向かう方向となる。また、このアーク15aに隣接する第2の導電板部2e内を流れる電流の向きは逆向きとなっている。
【0030】
このため、アーク15aと第2の導電板部2eとで発生する磁場は、互いに反発する方向に発生するため、
図3(a)に示すように、磁性体板14a,14bが省略されているものとすると、電磁反発力の影響を受けてアーク15aのアーク端が第2の導電板部2f側となる内側へ移動することになり、アークの遮断に十分な空間が取れず、アークを十分に引き伸ばして遮断することが困難となる。
【0031】
しかしながら、本実施形態では、
図2(e)に示すように、アーク15aが発生する固定接点部2a及び可動接点部3b間に対向するL字状導電板部2gの第2の導電板部2eの内側面を覆うように磁性体板14aが配置されている。このため、磁性体板14aによって、第2の導電板部2eで発生する磁場をシールドすることができ、アーク15aに第2の導電板部2eで発生する磁場が影響しないようにすることができる。
同様に、固定接点部2bと可動接点部3cとの間に発生するアーク15bに隣接するL字状導電板部2hの第2の導電板部2fにも内側面を覆う磁性体板14bを配置しているので、この磁性体板14bによって第2の導電板部2eが発生する磁場をシールドし、アーク15bに影響しないようにすることができる。
【0032】
したがって、アーク15a,15bに隣接するL字状導電板部2g,2hの第2の導電板部2e,2fをアーク15a,15bから遠ざけることなく、第2の導電板部2e,2fから発生する磁場の影響を少なくすることができるため、装置を大型化することなく、アーク15a,15bを安定的に狙った方向に伸長させて遮断することができる。
すなわち、アーク15a,15bを可動接触子3の導電板部3a上の電流方向に対して垂直方向へ移動するように外部磁界を与えて、この垂直方向にアーク15a,15bの遮断に十分な遮断空間を与えることにより、アーク15a,15bを確実に遮断することができる。
【0033】
因みに、
図3(a)及び(b)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの第2の導電板部2e,2fに磁性体板14a,14bを設けない場合には、
図3(a)に示す接点機構CMの閉極時には、前述した第1の実施形態と同様に開極方向の電磁反発力を抑制するローレンツ力を発生することはできるが、電流遮断時に、
図3(b)に示すように、アーク15a,15bが発生したときに、L字状導電板部2gとアーク15aとには、
図3(c)に示すように、L字状導電板部2gの第2の導電板部2eを流れる電流によって時計方向の磁束Bbを有する磁場が形成され、一方、アーク15aでは、電流方向が逆方向となるので、反時計方向の磁束Baを有する磁場が形成されることになる。
【0034】
このため、第2の導電板部2eを流れる電流によって形成される磁場とアーク15aを流れる電流によって形成される磁場とが互いに反発することになり、この電磁反発力によって、アーク端を
図3(c)で右方向すなわち、反対側のL字状導電板部2h側に移動させる力Fが発生する。この電磁接触器では、アークを可動接触子の駆動方向及び、可動接触子の導電板状の電流方向に垂直方向へ駆動するように外部磁界を与えており、前記の垂直方向にアークの遮断に十分な空間がとれず、アークを十分に引き伸ばして遮断することが困難となる。
特に、大電流時には、アークが受ける電磁反発力が大きくなり、この傾向が顕著となる。固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの第2の導電板部2e,2fとアークの発生箇所との距離を引き離すことでアークへの影響は低減されるが、固定接触子が可動接触子の外側に大きく形成されることとなり、装置が大型化してしまう。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態を
図4について説明する。
この第2の実施形態では、可動接触子の背面側に固定接触子及び可動接触子に対して発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、
図4に示すように、前述した第1の実施形態における
図2の構成において、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hにおける第2の導電板部2e,2fを可動接触子3の導電板3aの端部の上端側を覆うように折り曲げて、導電板3aと平行な第3の導電板部2m,2nを形成してC字状導電部2o,2pを形成したことを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0036】
この第2の実施形態によると、操作用電磁石4の電磁コイル8が非励磁状態では、固定鉄心5と可動鉄心6との間に吸引力が作用しないので、前述した第1の実施形態と同様に、可動鉄心6及び接触子ホルダ11が復帰スプリング9のバネ力によって上方に付勢され、
図4(a)に示すように、接点機構CMが開極状態となっている。
この接点機構CMの開極状態から操作用電磁石4の電磁コイル8を励磁することにより、固定鉄心5で吸引力が発生されて可動鉄心6が復帰スプリング9に抗して下方に吸引される。これによって、接点機構CMが、
図4(b)に示すように、接触子ホルダ11が下降して可動接触子3の可動接点部3b,3cが固定接触子2の固定接点部2a,2bに接触スプリング12の接触圧で接触し閉極状態となる。
【0037】
このように接点機構CMが閉極状態となると、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第3の導電板部2m、第2の導電板部2e、第1の導電板部2c、固定接点部2aを通じて可動接触子3の可動接点部3bに供給される。この可動接点部3bに供給された大電流は導電板3a、可動接点部3cを通じて固定接点部2bに供給される。この固定接点部2bに供給された大電流は、第1の導電板部2d、第2の導電板部2f、第3の導電板部2n、外部接続端子2jに供給されて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
このとき、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b、3c間に可動接点部3b,3cを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
【0038】
しかしながら、固定接触子2は、第1の導電板部2c,2d、第2の導電板部2e,2f及び第3の導電板部2m,2nによってC字状導電板部2o,2pが形成されているので、
図4(b)に示すように、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nとこれに対向する可動接触子3の導電板3aとで逆方向の電流が流れることになる。このため、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nと可動接触子3の導電板部3aとの間の空間部Aa及びAbに電磁反発力を発生させることができる。この電磁反発力によって可動接触子3の導電板3aを固定接触子2の固定接点部2a,2bに押し付けるローレンツ力を発生することができる。このローレンツ力によって、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b,3c間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、可動接触子3の可動接点部3b,3cが開極することを防止することができる。
【0039】
この接点機構CMの閉極状態から操作用電磁石4の励磁を停止して、電流遮断状態とすると、
図4(c)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの固定接点部2a,2bから可動接触子3の可動接点部3b,3cが上方に離間する。このとき、固定接点部2a,2b及び可動接点部3b,3c間にアーク15a,15bが発生する。このアーク15aの電流方向は開極方向となり、アーク15bの電流方向は開極方向と逆方向となる。
【0040】
このため、前述した第1の実施形態と同様に、固定接触子2の固定接点部2aと可動接触子3の可動接点部3b間に発生するアーク15aに流れる電流の向きは、隣接する固定接触子2の第2の導電板部2e内を流れる電流の向きと逆方向となっている。
このため、アーク15aで発生する磁場と、第2の導電板部2eで発生する磁場とは互いに反発する方向に発生するため、その反発力を弱めるために、固定接触子2の第2の導電板部2eの内側面を覆うように磁性体板14aを配置することにより、第2の導電板部2eが発生する磁場をシールドし、アーク15aに影響しないようすることができる。また、同様にして、固定接点部2bと可動接点部3c間に発生するアーク15bに隣接する固定接触子2の第2の導電板部2fからの磁場を磁性体板14bでシールドし、アーク15bに影響しないようにすることができる。
【0041】
この第2の実施形態でも、固定接触子2にC字状導電板部2o,2pを形成するだけの簡易な構成で、固定接触子2及び可動接触子3間に生じる開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生することができ、且つ、アーク15a,15bに隣接する導体板部をアークから遠ざけることなく導体板部から発生する磁場の影響を抑制することができるため、前述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、磁性体板14a,14bが導電板部の内側面を覆う内面板部14cと、この内面板部14cの前後両端部から外側に延長する側板部14d,14eとで構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、磁性体板14a,14bを導電板部の周囲を全て覆うように形成してもよい。
また、上記第2の実施形態においては、前述した第1の実施形態の電磁接触器1に新たな接点機構CMを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0043】
すなわち、
図5に示す電磁接触器20にC字状導電板部2o,2pを有する接点機構CMを適用するようにしてもよい。この
図5においては、電磁接触器20は、接点機構CMを収納する桶状の接点収納ケース21を備えている。この接点収納ケース21は、固定接触子2を支持する天面板となる固定接点支持絶縁基板22と、この固定接点支持絶縁基板22の下面側にろう付けされた導電性を有する金属角筒体23と、この金属角筒体23の内周面側に配設された有底角筒状の絶縁角筒体24とを有して、下面を開放した桶状に構成されている。
【0044】
そして、固定接触子2は、
図5に示すように、C字状導電板部2o,2pの第3の導電板部2m,2nに挿通孔25が形成され、この挿通孔25に支持導電部26に形成されたピン27が嵌挿されて例えばろう付けによって一体に固定されている。
一方、固定接点支持絶縁基板22には、長手方向(
図5における左右方向)に所定間隔を保って固定接触子2の支持導電部26を挿通する貫通孔22a及び22bが形成され、これら貫通孔22a及び22b内に上面側から固定接触子2の支持導電部26を挿通し、下面側でピン27をC字状導電部2o,2pの挿通孔25に嵌合させてろう付けすることにより、固定接触子2o,2pを固定接点支持絶縁基板22に支持する。
【0045】
そして、固定接触子3のC字状導電板部2o,2pには、その第2の導電板部2e,2f及び第3の導電板部2m,2nの内周面及び両側面を覆うように絶縁カバー30が支持導電部26の小径部26aに嵌合されて装着されている。
一方、操作用電磁石4は、
図5に示すように、側面から見て扁平なU字状の磁気ヨーク31と、この磁気ヨーク31の開放端となる上端部間に固定された平板状の上部磁気ヨーク32とを備えている。
【0046】
磁気ヨーク31には、その底板部31aの中央部に比較的高さが低い円筒状補助ヨーク33が形成されている。この円筒状補助ヨーク33の外周面にスプール34が配置されている。
このスプール34は、円筒状補助ヨーク33を挿通する中央円筒部35と、この中央円筒部35の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部36と、中央円筒部35の上端より僅かに下側から半径方向外方に突出する上フランジ部37とで構成されている。そして、中央円筒部35、下フランジ部36及び上フランジ部37で構成される収納空間に電磁コイル38が巻装されている。
【0047】
また、上部磁気ヨーク32は、中央部にスプール34の中央円筒部35に対向する貫通孔32aが形成されている。
そして、円筒状補助ヨーク33及びスプール34の中央円筒部35の内周側に、非磁性体製で有底筒状に形成されたキャップ41が配置されている。このキャップ41は、開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部41aが上部磁気ヨーク32の下面にシール接合されている。これによって、接点収納ケース21及びキャップ41が上部磁気ヨーク32の貫通孔32aを介して連通される密封容器が形成されている。そして、接点収納ケース21及びキャップ41で形成される密封容器内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF
6等のガスが封入されている。
【0048】
また、キャップ41内には、キャップ41の底板部との間に復帰スプリング42を配設した可動プランジャ43が上下に摺動可能に配設されている。この可動プランジャ43には、上部磁気ヨーク32から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部43aが形成されている。
また、上部磁気ヨーク32の上面に、円環状に形成された永久磁石44が可動プランジャ43の周鍔部43aを囲むように固定されている。この永久磁石44は上下方向すなわち厚み方向に例えば上端側をN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。
【0049】
そして、永久磁石44の上端面に、永久磁石44と同一外形で可動プランジャ43の周鍔部43aの外径より小さい内径の中心開口を有する補助ヨーク45が固定されている。この補助ヨーク45の下面に可動プランジャ43の周鍔部43aが当接されている。
また、永久磁石44を環状に形成したので、例えば特開平2−91901号公報に記載されているように永久磁石を左右に分割して2つ配置する場合に比較して、部品点数が少なくなってコストダウンが図れる。また、永久磁石44の内周面近傍に可動プランジャ43の周鍔部43aが配置されるため、永久磁石44で生じる磁束を通す閉回路に無駄がなく、漏れ磁束が少なくなり、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0050】
なお、永久磁石44の形状は、上記に限定されるものではなく、外形を方形としたり、方形筒状に形成したりすることもでき、要は内面形状が可動プランジャ43の周鍔部43aの形状に合わせた形状であれば外形は任意の形状とすることができる。
また、可動プランジャ43の上端面には絶縁角筒体24の底面部に形成された貫通孔24aを通じて上方に突出して可動接触子3を支持する連結軸46が固定されている。
【0051】
この
図5の構成によると、釈放状態では、可動プランジャ43が復帰スプリング42によって上方に付勢されて、周鍔部43aの上面が補助ヨーク45の下面に当接する釈放位置となる。この状態では、可動接触子3の接点部3b及び3cが固定接触子2の接点部2a及び2bから上方に離間して、電流遮断状態となっている。
この釈放状態では、可動プランジャ43の周鍔部43aが永久磁石44の磁力によって補助ヨーク45に吸引されており、復帰スプリング42の付勢力と相まって可動プランジャ43が外部からの振動や衝撃等によって不用意に下方に移動することなく補助ヨーク45に当接された状態が確保される。
【0052】
また、釈放状態で、電磁コイル38を励磁したときに、電磁コイル38によって発生する磁束は、可動プランジャ43から周鍔部43aを通り、周鍔部43aと上部磁気ヨーク42との間のギャップを通って上部磁気ヨーク32に達する。この上部磁気ヨーク32からU字状の磁気ヨーク31を通って円筒状補助ヨーク33を通って可動プランジャ43に至る閉磁路が形成される。
【0053】
このため、可動プランジャ43の周鍔部43aの下面と上部磁気ヨーク32の上面との間のギャップの磁束密度を高めることができ、より大きな吸引力を発生して、可動プランジャ43を復帰スプリング43の付勢力及び永久磁石44の吸引力に抗して下降させる。したがって、この可動プランジャ43に連結軸46を介して連結されている可動接触子3の接点部3aを一対の固定接触子2の接点部2a及び2bに接触されて固定接触子2の接点部2aから可動接触子3を通じて固定接触子2の接点部2bに向かう電流路が形成されて投入状態となる。
【0054】
この投入状態となると、可動プランジャ43の下端面がU字状の磁気ヨーク31の底板部31aに近づくので、電磁コイル38によって発生される磁束が、可動プランジャ43から周鍔部43aを通って直接上部磁気ヨーク32に入り、この上部磁気ヨーク32からU字状の磁気ヨーク31を通り、その底板部31aから直接可動プランジャ43に戻る閉磁路が形成される。
【0055】
このため、可動プランジャ43の周鍔部43a及び上部磁気ヨーク32間のギャップと可動プランジャ43の底面及び磁気ヨーク31の底板部31a間のギャップとで大きな吸引力が作用して可動プランジャ43が下降位置に保持される。このため、可動プランジャ43に連結軸46を介して連結された可動接触子3の接点部3b及び3cが固定接触子2の接点部2a及び2bへの接触状態が継続される。
【0056】
この投入状態において、固定接触子2は、第1の導電板部2c,2d、第2の導電板部2e,2f及び第3の導電板部2m,2nによってC字状導電板部2o,2pが形成されているので、前述した
図4(b)に示すように、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nとこれに対向する可動接触子3の導電板3aとで逆方向の電流が流れることになる。このため、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nと可動接触子3の導電板部3aとの間の空間部Aa及びAbに電磁反発力を発生させることができる。この電磁反発力によって可動接触子3の導電板3aを固定接触子2の固定接点部2a,2bに押し付けるローレンツ力を発生することができる。このローレンツ力によって、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b,3c間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、可動接触子3の可動接点部3b,3cが開極することを防止することができる。
【0057】
この接点機構CMの閉極状態から電磁コイル38の励磁を停止して、電流遮断状態とすると、前述した
図4(c)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの固定接点部2a,2bから可動接触子3の可動接点部3b,3cが上方に離間する。このとき、固定接点部2a,2b及び可動接点部3b,3c間にアーク15a,15bが発生する。このアーク15aの電流方向は開極方向となり、アーク15bの電流方向は開極方向と逆方向となる。
【0058】
このため、前述した第1の実施形態と同様に、固定接触子2の固定接点部2aと可動接触子3の可動接点部3b間に発生するアーク15aに流れる電流の向きは、隣接する固定接触子2の第2の導電板部2e内を流れる電流の向きと逆方向となっている。
このため、アーク15aで発生する磁場と、第2の導電板部2eで発生する磁場とは互いに反発する方向に発生するため、その反発力を弱めるために、固定接触子2の第2の導電板部2eの内側面を覆うように磁性体板14aを配置することにより、第2の導電板部2eが発生する磁場をシールドし、アーク15aに影響しないようすることができる。また、同様にして、固定接点部2bと可動接点部3c間に発生するアーク15bに隣接する固定接触子2の第2の導電板部2fからの磁場を磁性体板14bでシールドし、アーク15bに影響しないようにすることができる。
【0059】
しかも、この
図5の構成では、固定接触子2のC字状導電板部2o及び2pの内周面側に絶縁カバー30が装着されているので、可動接触子3の両端部とC字状導電板部2o及び2pの第3の導電板部2m及び2nとの間に絶縁カバー121によって絶縁距離を確保することができ、C字状導電板部2o及び2pにおける可動接触子3の可動方向の高さを短縮することができる。したがって、接点機構CMを小形化することができる。
【0060】
さらに、操作用電磁石4を、磁気ヨーク31及び上部磁気ヨーク32と、電磁コイル38を巻装したスプール34と、可動プランジャ43と、この可動プランジャ43の上部磁気ヨーク32から突出するフランジ部43aを覆う環状永久磁石44と、補助ヨーク45とで構成することにより、有極電磁石構成として可動プランジャ43の可動方向の高さを短縮することができ、操作用電磁石4を小形化することができる。
【0061】
なお、
図5の構成においては、接点収納ケース21を固定接点支持絶縁基板22、金属角筒体23及び絶縁角筒体24で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セラミックス等の絶縁材料で下面を開放した桶状体を一体成形し、この桶状体の開放端面に金属角筒体をろう付け等で固定して接点収納ケース21を構成するようにしてもよい。
【0062】
次に、本発明の第3の実施形態を
図6について説明する。
この第3の実施形態では、前述した第2の実施形態とは逆に可動接触子にC字状折り返し部を形成するようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、可動接触子3の導電板3aの両端側から上方に延長する第1の導電板部3d,3eと、この第1の導電板部3d,3eの上端から内方に延長する第2の導電板部3f,3gとで、導電板3aの上方側に折り返すC字状折り返し部3h,3iが形成されている。これらC字状折り返し部3h,3iの第2の導電板部3f,3gにおける先端側の下面に可動接点部3j,3kが形成されている。
【0063】
また、固定接触子2は、接点機構CMの開極状態で、可動接触子3のC状折り返し部3h,3iを形成する導電板3aと第2の導電板部3f,3gとの間に対向し、内方に延長する第4の導電板部2q,2rと、これら第4の導電板部2q,2rの内方端から上方に可動接触子3のC字状折り返し部3h,3iの内側端部の内側を通って上方に延長する第5の導電板部2s,2tとでL字状導電板部2u,2vが形成されている。そして、第4の導電板部2q,2rの可動接触子3の可動接点部3j,3kに対向する位置に固定接点部2w,2xが形成されている。
【0064】
また、可動接触子3の第1の導電板部3d,3eの内側面を覆うように磁性体板14a,14bが固定配置されている。これら磁性体板14a,14bのそれぞれは、第1の導電板部3d,3eの上方側の閉極状態における固定接点部2w,2xと可動接点部3j,3kとの間と対向する位置に第1の導電板部3d,3eの周囲を覆うように配置されている。
【0065】
この第3の実施形態によると、操作用電磁石4の電磁コイル8が非励磁状態であるときには、可動鉄心6が復帰スプリング9によって上方に移動して接触子ホルダ11がストッパ13に当接した位置となる。このとき、接点機構CMは、
図6(c)に示すように、可動接触子3の導電板3aが接触スプリング12によって挿通孔11aの底部に当接している。そして、C状折り返し部3h,3iを構成する導電板3a及び第2の導電板部3f,3gの中間部に固定接触子2の第4の導電板部2q,2rが位置して固定接点部2w,2xが可動接点部3j,3kと下方に離間して、開極状態となっている。
【0066】
この接点機構CMの開極状態から、操作用電磁石4の電磁コイル8を励磁することにより、固定鉄心5で可動鉄心6を復帰スプリング9に抗して吸引すると、接触子ホルダ11が下降する。このため、接点機構CMでは、
図6(b)に示すように、可動接触子3の可動接点部3j,3kが固定接触子2の固定接点部2w,2xに接触する閉極状態となる。
【0067】
このように接点機構CMが閉極状態となると、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第5の導電板部2s、第4の導電板部2q、固定接点部2wを通じて可動接触子3の可動接点部3jに供給される。この可動接点部3jに供給された大電流は第2の導電板部3f、第1の導電板部3d、導電板3a、第1の導電板部3e、第2の導電板部3g、可動接点部3kを通じて固定接点部2xに供給される。この固定接点部2xに供給された大電流は、第4の導電板部2r、第5の導電板部2t、外部接続端子2jを通じて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
【0068】
このとき、固定接触子2の固定接点部2w,2x及び可動接触子3の可動接点部3j、3k間に可動接点部3j,3kを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
しかしながら、可動接触子3は、
図5に示すように、導電板3a、第1の導電板部3d,3e及び第2の導電板部3f,3gによってC字状折り返し部3h,3iが形成されているので、可動接触子3の導電板3aと固定接触子2の第4の導電板部2q,2rとに逆方向の電流が流れることになる。このため、
図6(b)に示すように、可動接触子3の導電板3aと固定接触子2の第4の導電板部2q,2rとの間の空間Ac,Adに、電磁反発力を作用させて可動接触子3の可動接点部3j,3kを固定接触子2の固定接点部2w,2xに押し付けるローレンツ力を発生することができる。このローレンツ力によって、固定接触子2の固定接点部2w,2x及び可動接触子3の可動接点部3j,3k間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、大電流の通電時に可動接触子3の可動接点部3j,3kが開極することを防止することができる。
【0069】
さらに、第3の実施形態では、固定接触子2にL字状導電板部2u,2vが形成されているので、可動接触子3の第2の導電板部3f,3gの上側にL字状導電板部2u,2vの第5の導電板部2s,2tによる磁束強化部が形成されるので、前述した第1の実施形態と同様のローレンツ力も発生することができ、より強力に可動接触子3の開極を防止することができる。
【0070】
この接点機構CMの閉極状態から操作用電磁石4の励磁を停止して、電流遮断状態とすると、
図6(c)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2u,2vの固定接点部2w,2xから可動接触子3の可動接点部3j,3kが上方に離間する。このとき、固定接点部2w,2x及び可動接点部3j,3k間にアーク15a,15bが発生する。このアーク15aの電流方向は開極方向となり、アーク15bの電流方向は開極方向と逆方向となる。
【0071】
このとき、外部接続端子2iが正極(+)端子に接続され、外部接続端子2jが負極(−)端子に接続されているものとすると、固定接触子2のL字状導電板部2uは+極性を有し、L字状導電板部2vは−極性を有する。この結果、L字状導電板部2uの固定接点部2wと可動接触子3の可動接点部3jとの間に発生するアーク15aの電流方向は、
図6(c)に示すように、固定接点部2wから可動接点部3jに向かう方向となる。また、このアーク15aに隣接する可動接触子3の第1の導電板部3d内を流れる電流の向きは逆向きとなっている。
【0072】
このため、アーク15aと第1の導電板部3dとで発生する磁場は、互いに反発する方向に発生するため、その反発力を弱めるために可動接触子3の第1の導電板部3dの周囲を覆うように磁性体板14aを配置して、第1の導電板部3dが発生する磁場を確実にシールドし、アーク15aに第1の導電板部3dの磁場が影響しないようにしている。
同様にして、固定接触子2の固定接点部2xと可動接点部3k間に発生するアーク15bに隣接する可動接触子3の第1の導電板部3eからの磁場のアーク15bへの影響を低減するように第1の導電板部3eの周囲を覆う磁性体板14bを配置して、第1の導電板部3eが発生する磁場を確実にシールドし、この第1の導電板部3eで発生する磁場がアーク15bに影響しないようにしている。
【0073】
したがって、この第3の実施形態でも、前述した第1及び第2の実施形態と同様に、アークに隣接する導体板部をアークから遠ざけることなく導体板部から発生する磁場の影響を少なくすることができる。このため、装置を大型化することなく、アークを安定的に狙った方向に伸長させて遮断することができる。
この第3の実施形態でも、固定接触子2及び可動接触子3間に生じる開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生することができ、かつアークに隣接する導体板部をアークから遠ざけることなく導電板部から発生する磁場がアークに影響することを抑制できるため、前述した第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、上記第3の実施形態においては、磁性体板14a及び14bを第1の導電板部3d,3eの上方側の閉極状態における固定接点部2w,2xと可動接点部3j,3kとの間と対向する位置に第1の導電板部3d,3eの周囲を覆うように配置した場合について説明したが、前述した第1及び第2の実施形態と同様に第1の導電板部3d,3eの内側面、前側面及び後側面を覆うように配置するようにしてもよい。
上記第3の実施形態においては、アーク15a,15bに対して固定接触子2のL字状導電板部2u,2vの第2の導電板部2s,2tも可動接触子3の第1の導電板部3d,3eよりは距離が遠いがアーク15a,15bに近づいているので、これら第2の導電板部2s,2tにも磁性体板14a,14bを固定配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明の接点機構CMを電磁接触器に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉器等の任意の機器に適用することができる。