【実施例】
【0039】
(実施例1および比較例1):本実施例では、グルテンとして、スプレードライ方式で生成されたグルテンを採用し、処理水として、食塩の希釈水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成された強酸性の電解生成酸性水、および、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水(第1の処理水)を採用して、
図1に示す処理態様によって、低アレルゲングルテンの製造方法を実施するとともに、比較例として、当該実施例とは異なる処理水を使用した処理態様を実施した。
【0040】
本実施例および比較例では、当該グルテン0.5gを5mlの供試水(処理水)に添加して1分間撹拌した後、室温で1時間放置し、その後、遠心分離(10,000rpm、20分)して、上澄み液と沈殿物に分離した。当該上澄み液については、SDS−PAGEにて当該上澄み液中のω5−グリアジンの存在の有無を確認した。SDS−PAGEについては、そのバンドのパターンを
図2〜
図4に示す。
本実施例および比較例に供した処理水は、
図1の「供試水」の欄に示す通りのものである。当該欄には各処理水を簡略して表示しており、各供試水は以下に示す処理水を意味している。
【0041】
供試水1(HOX酸性電解水pH4.0)は、水を被電解水とする有隔膜電解にて生成された電解生成酸性水であって、pHが4.0のもの、供試水2(HOX酸性電解水pH5.0)は、当該電解生成酸性水であって、pHが5.0のものである。これらの供試水1,2は、比較例である。また、供試水3(原水)は、食塩の希釈水溶液を調製するために使用した水道水(比較例)である。
【0042】
供試水4(HOXアルカリ性電解水pH9.0)は、水を被電解水とする有隔膜電解にて生成された電解生成アルカリ性水であって、pHが9,0のもの、供試水5(HOXアルカリ性電解水pH10.0)は、当該電解生成アルカリ性水であって、pHが10.0のものである。これらの供試水4,5は、いずれも比較例である。
【0043】
供試水6(ROX強酸性電解水pH2.5)は、食塩の希釈水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成された強酸性の電解生成酸性水であって、pHが2.5のもの、供試水7(ROX強アルカリ性電解水pH12.2)は、食塩の希釈水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成された強アルカリ性の電解生成アルカリ性水であって、pHが12.2のものである。これらの供試水6,7は、いずれも実施例である。
【0044】
アレルゲンであるω5−グリアジンの分子量は53kDaであり、SDS−PAGEのパターンでは、
図2〜4の矢印で示した領域にバンドが検出される。しかして、供試水1〜5(比較例)では当該領域にバンドが存在し(
図2,3を参照)、無処理の場合と比較しても、バンドのパターンにほとんど変化がみられない。これにより、処理水が水道水、中〜弱酸性の電解生成酸性水、中〜弱アルカリ性の電解生成アルカリ性水等は、タンパク質の溶解に対する選択性がほとんど無く、ω5−グリアジン以外の他のタンパク質(低アレルゲングルテン)の抽出には適さないことが確認される。
【0045】
一方、供試水6,7では、ω5−グリアジンの存在領域にはバンドは確認されない(
図4を参照)。無処理の場合と比較すると、処理水が強酸性の電解生成酸性水、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水の場合では、低分子領域のバンドが濃く、高分子領域のバンドはほとんど認められない。これにより、強酸性の電解生成酸性水や、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水は、分子量の小さいタンパク質(低アレルゲングルテン)を優先的に溶解することが確認される。このため、分子量が比較的大きいω5−グリアジン(アレルゲン)は抽出されなかったものと理解される。
【0046】
このように、強酸性の電解生成酸性水や、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水を処理水とする処理態様では、処理水はω5−グリアジン以外の低分子量のタンパク質(低アレルゲングルテン)を優先的に溶解することから、処理済みの処理水の上澄み液には、低アレルゲングルテンが抽出されている。このため、当該上澄み液からは、ω5−グリアジンを含有しない低アレルゲングルテンを回収することができる。
【0047】
(実施例2):本実施例は、実施例1で使用している処理水にエタノールを添加した処理水(第2の処理水)を使用することにより、グルテンからのタンパク質の抽出効率を向上させることを意図したものである。
【0048】
本実施例では、グルテンとして、スプレードライ方式で生成されたグルテンを採用し、処理水として、食塩の希釈水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成された強酸性の電解生成酸性水、および、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水で、エタノールを含有するもの、含有しないものを採用して、
図5に示す処理態様によって、低アレルゲングルテンの製造方法を実施した。
【0049】
本実施例では、当該グルテン0.5gを20ml(60℃)の供試水(処理水)に添加して1分間撹拌した後、室温で1時間放置し、その後、遠心分離(10,000rpm、10分)して、上澄み液と沈殿物に分離した。当該上澄み液については、タンパク定量(タンパク質濃度:)を行なった。得られた結果を表1に示す。なお、SDS−PAGEのパターンにて、当該上澄み液中のω5−グリアジンの存在の有無の確認を行ったが、SDS−PAGEの結果については、実施例3におけるSDS−PAGEの結果の内に示している。
【0050】
【表1】
【0051】
本実施例に供した処理水は、
図5の「供試水」の欄に示す通りである。当該欄には各処理水を簡略して表示しており、各供試水は以下に示す処理水を意味している。
【0052】
供試水1(stAEWEtOH40%)は、pH2.5の強酸性の電解生成酸性水(stAEW)にエタノール(EtOH)を加えた、エタノール濃度が40%のもの、供試水2(stAEWEtOH0%)は、pH2.5の強酸性の電解生成酸性水(stAEW)であって、エタノール(EtOH)を含有しないもの、供試水3(stBEWEtOH40%)は、pH12.2の強アルカリ性の電解生成アルカリ性水(stBEW)にエタノール(EtOH)を加えた、エタノール濃度40%のもの、供試水4(stBEWEtOH0%)は、pH12.2の強アルカリ性の電解生成アルカリ性水(stBEW)であって、エタノール(EtOH)を含有しないものである。
【0053】
本実施例は、エタノールを含有する処理水を使用することにより、グルテンからの低分子量のタンパク質(低アレルゲングルテン)の抽出効率を向上させることを意図したもので、SDS−PAGEのパターンから、実施例1と同様に、上澄み水には、ω5−グリアジンをほとんど含有しない低アレルゲングルテンが抽出していることが確認される。
【0054】
一方、表1に示す「タンパク質濃度:低アレルゲングルテン濃度」の結果から、強酸性の電解生成酸性水、および、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水からなる処理水であっても、エタノールを含有している処理水の方がエタノールを含有しない処理水に比較してタンパク質の高濃度の上澄みを得ることができる。かかる結果から、本発明が規定する処理水であっても、エタノールを含有する処理水の方が、低分子量のタンパク質(低アレルゲングルテン)の抽出効率が高いことを確認することができる。
【0055】
なお、本実施例においては、エタノール濃度40%の処理水の場合には、ω5−グリアジンの存在領域に、わずかではあるがバンドを認められるため、エタノールの処理水に対する含有量は40%以下とすることが好ましい。
【0056】
(実施例3):本実施例は、実施例2で使用した処理水(エタノール40%含有)を使用することにより、グルテンからの低アレルゲングルテンの抽出効率を向上させ、かつ、沈殿物が包含している低アレルゲングルテンを回収して、グルテンからの低アレルゲングルテンの抽出効率を一層向上させることを意図したものである。
図6には、本実施例の処理態様を示している。
【0057】
本実施例では、実施例2と全く同様の処理態様(処理態様1)を実施するとともに、当該処理態様1で得た沈殿物1からこれに包含されている低アレルゲングルテンを回収すべく、当該処理態様1で使用した処理水を使用して、当該沈殿物1を処理した。当該沈殿物1の処理(処理態様2)では、当該沈殿物を5mLの供試水に添加して1分間撹拌した後、室温で1時間放置し、その後、遠心分離(10,000rpm、10分)して、上澄み液2と沈殿物2に分離した。
【0058】
処理態様1と処理態様2で生成される上澄み液1,2については、タンパク定量(タンパク質濃度:低アレルゲングルテン濃度)を行なった。得られた結果を表2に示す。また、SDS−PAGEのバンドのパターンにて、各上澄み液1,2中のω5−グリアジンの存在の有無の確認を行い、かつ、ウェスタンブロット法にて、タンパク質の抗体反応の発生の有無を確認した。SDS−PAGEのパターンの結果については
図7に示すとともに、ウェスタンブロット法の結果については
図8に示している。
【0059】
但し、
図7および
図8に示す供試水Exp2(2)の結果は、実施例2における供試水2(stAEWEtOH0%)を使用した結果であり、同様に、
図7および
図8に示す供試水Exp2(4)の結果は、実施例2における供試水4(stBEWEtOH0%)を使用した結果である。
【0060】
【表2】
【0061】
本実施例に供した処理水は、
図6の「供試水」の欄に示す通りである。当該欄には各処理水を簡略して表示しており、各供試水は以下に示す処理水を意味している。
【0062】
供試水1(stAEWEtOH40%)は、pH2.5の強酸性の電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度40%のもの、実施例2の供試水1と同じものである、また、供試水2(stBEWEtOH40%)は、pH12.2の強アルカリ性の電解生成アルカリ性水にエタノールを加えた、エタノール濃度40%のものであり、実施例2の供試水3と同じものである。
【0063】
本実施例は、エタノールを含有する処理水を使用することにより、グルテンと沈殿物から、低アレルゲングルテンを抽出して、その抽出効率を向上させることを意図したものである。SDS−PAGEのパターンから、実施例1と同様に、各上澄み水には、ω5−グリアジンを含有しない低アレルゲングルテンが抽出されていることが確認される。
【0064】
ウェスタンブロットはタンパク質の抗体反応を取ったもので、当該抗体反応小さくなれば、アレルゲンとしての能力を低下したことになる。ウェスタンブロットの結果から、アレルゲンであるω5−グリアジンの反応は、上済みでは弱く、沈殿物では強いことが確認される(
図8を参照)。この結果から、ω5−グリアジンの多くは処理水によっては抽出されず、沈殿物に留まっているが確認される。
【0065】
一方、表2に示す「タンパク質の回収」の結果から、エタノールを含有する強酸性の電解生成酸性水、および、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水からなる処理水(供試水1,2)では、実施例2と同様、採用したグルテンから低アレルゲングルテンを効率よく抽出することができるとともに、沈殿物からも低アレルゲングルテンを抽出することができることが確認される。このため、本実施例では、低アレルゲングルテンの回収効率を一段と向上させることができる。
【0066】
(実施例4):本実施例は、グルテンとしてスプレードライ方式にて生成されたグルテン(スプレードライグルテンという)を採用している実施例1,2,3とは異なり、フラッシュドライ方式にて生成されたグルテン(フラッシュドライグルテンという)を採用して、フラッシュドライグルテンから低アレルゲングルテンを効率よく抽出することを意図している。
【0067】
フラッシュドライグルテンは、スプレードライグルテンに比較して、エタノールを含有する各電解生成水に対する溶解性が高いため、当該電解生成水を処理水として使用することは好ましくはない。このため、本実施例では、電解生成酸性水を水道水で希釈してなる処理水にて、フラッシュドライグルテンを処理している。
図9には、当該処理態様を示している。
【0068】
本実施例では、フラッシュドライグルテンを、
図9に示すように、2つの処理態様にて処理する態様を採っている。処理態様(1)は、当該グルテン1.0gを50mlの供試水(処理水)に添加して1分間撹拌した後、遠心分離(10,000rpm、10分)して、上澄み液と沈殿物に分離するものである。
【0069】
また、処理態様(2)は、当該グルテン10gを500mlの供試水(処理水)に添加して1分間撹拌した後、遠心分離(10,000rpm、10分)して、上澄み液と沈殿物に分離するものである。
【0070】
処理態様(1)で得られた上澄み液については、SDS−PAGEのパターンにて当該上澄み液中のω5−グリアジンの存在の有無を確認した。SDS−PAGEのパターンについては、
図10および
図11に示す。また、処理態様(2)で得られた上澄み液、および、沈殿物については、SDS−PAGEのパターンにてω5−グリアジンの存在の有無を確認した。当該SDS−PAGEのパターンについては、
図12に示す。また、処理態様(2)で得られた上澄み液については、タンパク定量を行った。得られた結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
本実施例および比較例に供した処理水は、
図9の「供試水」の欄に示す通りである。当該欄には各処理水を簡略して表示しており、各供試水は以下に示す処理水を意味している。各供試水の調製に使用した電解生成水は、pH2.5の強酸性の電解生成酸性水であって、各供試水は当該電解生成酸性水をベースとする、エタノールの含有の有無、水道水による希釈の有無に区別されている。
【0073】
供試水1(stAEWEtOH0%)は当該電解生成酸性水であって、エタノールを含有しないもの、供試水2(stAEWEtOH10%)は当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度10%のもの、供試水3(stAEWEtOH15%)は当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度15%のもの、供試水4(stAEWEtOH20%)は当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度20%のものである。
【0074】
一方、供試水5(stAEW100%)は当該電解生成酸性水であって、水で希釈されていないもの、供試水6(stAEW50%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度50%のもの、供試水7(stAEW10%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度10%のもの、供試水8(stAEW1%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度1%のものである。以上の各供試水1〜8は、処理態様(1)で使用されているものである。
【0075】
これに対して、供試水9〜12は、いずれも処理態様(2)で使用されているもので、供試水9(stAEW0%)は当該電解生成酸性水を含有しない水道水のみのもの、供試水10(stAEW10%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度10%のもの、供試水11(stAEW20%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度20%のもの、供試水12(stAEW30%)は水道水に当該電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度30%のものである。
【0076】
エタノール含有の電解生成酸性水を処理水とする処理態様(1)においては、ω5−グリアジンが存在する領域でバンドが存在する(
図10を参照)。これに対して、水道水で希釈の電解生成酸性水を処理水とする処理態様(1)においては、水を10%以下含有する電解生成酸性水では、ω5−グリアジンが存在する領域ではバンドが存在しないことが確認された(
図11を参照)。
【0077】
一方、水道水で希釈の電解生成酸性水を処理水とする処理態様(2)における上澄みにおいては、ω5−グリアジンが存在する領域でのバンドの存在は、水で20%まで希釈された電解生成酸性水では確認されず、水で30%に希釈された電解生成酸性水でわずかに確認された。但し、無処理に比較すると薄かった(
図12を参照)。上澄みにおけるタンパク質濃度については、電解生成酸性水の濃度が高いほど高いことが確認される(表3を参照)。
【0078】
(実施例5):本実施例は、実施例4に示す処理態様と同様の処理態様を採って得られる沈殿物を供試水にて再処理して、当該沈殿物から低アレルゲングルテンを回収しようとするもので、沈殿物から直接抽出する処理態様と、沈殿物を凍結乾燥して乾燥粉末グルテンに調製して、処理水を使用して当該乾燥粉末グルテンから抽出する処理態様を採っている。
【0079】
本実施例では、フラッシュドライグルテンに対して、
図13に示す処理態様を採って、上澄み1および沈殿物1を得るとともに、沈殿物1を、各供試水を使用して再処理(直接抽出)して、上澄み2〜5および沈殿物を得、さらには、沈殿物1を凍結乾燥して乾燥粉末グルテンに調製し、当該グルテンを、各供試水を使用して再処理(乾燥・粉末抽出)して、上澄み6,7および沈殿物を得た。
【0080】
なお、使用した各供試水は、
図13の供試水の欄に記載した供試水を使用している。各供試水のうち、供試水1(stAEW30%)は、水道水に強酸性の電解生成酸性水を加えた、当該電解生成酸性水濃度30%のもの、供試水2(stAEWEtOH30%30℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度30%のもの、供試水3(stAEWEtOH40%30℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度40%のもの、供試水4(stAEWEtOH30%60℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度30%のもの、供試水5(stAEWEtOH40%60℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度40%のものである。
【0081】
また、供試水6(stAEWEtOH40%60℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度40%のもの、供試水7(stAEWEtOH35%30℃)は、当該電解生成酸性水にエタノールを加えた、エタノール濃度35%のものである。
【0082】
得られた各上澄み1〜5のSDS−PAGEのパターンを
図14に示し、また、各上澄み1.6.7、および、沈殿物1のSDS−PAGEのパターンを
図15に示す。沈殿物1から直接抽出して得られた上澄み2〜5のSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)には、濃いバンドが検出された(
図14を参照)。これに対して、沈殿物1から調製した乾燥粉末グルテンから抽出(乾燥・粉末抽出)して得られた上澄み6,7のSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)には、バンドはほとんど検出されないことが確認される(
図15を参照)。この結果は、フラッシュドライグルテンの処理態様にて得られる沈殿物から、低アレルゲングルテンを回収するには、沈殿物を一旦乾燥粉末グルテンに調製した乾燥・粉末抽出を採ることが好ましい。
【0083】
(実施例6):上記に示した各実施例は、処理水(供試水)として、電解生成酸性水または電解生成アルカリ性水を基本とする処理水を採用した例であるが、本実施例では、処理水(供試水)として、酸水溶液、特にその代表例である塩酸水溶液(pH2.0〜3.0)を採用している。具体的には、エタノール濃度35%の塩酸水溶液(1〜5)、および、当該塩酸水溶液に塩、特に塩化ナトリウムを添加した処理水(7〜9)を採用している。
【0084】
本実施例では、採用する処理水(供試水)を除き、基本的には、実施例1と同様の処理態様を採るもので、グルテンとして、スプレードライグルテンを採用している。本実施例の処理態様を
図16に示し、得られた各上澄み(1〜5)および各上澄み(6〜9)のSDS−PAGEのパターンを
図17および
図18に示し、各上澄み(1〜5)および各上澄み(6〜9)のタンパク質濃度を表4および表5に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
上澄みのタンパク質濃度は、供試水のpHが2.5以下で高くなり、これらの供試水(1〜3)によって、効率的にタンパク質を抽出することができること確認される(表4を参照)。しかしながら、これらの供試水(1〜3)による上澄みのSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)にバンドが確認される(
図17を参照)。
【0088】
一方、塩化ナトリウムを添加した供試水(7〜9)を処理水とする上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムを含有しない供試水(1〜3,6)に比較して大幅に低い(表5を参照)が、塩化ナトリウムを添加してなる供試水(7〜9)による上澄みのSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)にはバンドが確認されなかった(
図18を参照)。
【0089】
また、塩化ナトリウムを添加してなる供試水(7:NaCLが10mM)による上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムを含有しない供試水(4,5)による上澄みのタンパク質濃度より高いことが確認される。以上のことから、塩化ナトリウムを含有する塩酸水溶液を処理水とすることにより、アレルゲンであるω5−グリアジンを大幅に低減することができる。
【0090】
(実施例7):実施例6は、塩酸水溶液を処理水とする例であるが、本実施例では、処理水(供試水)として、アルカリ水溶液、特にその代表例である水酸化ナトリウム水溶液(pH11.0〜12.0)を採用している。具体的には、エタノール濃度35%の水酸化ナトリウム水溶液(供試水1〜5)、および、当該水酸化ナトリウム水溶液に塩、特に塩化ナトリウムを添加した処理水(供試水7〜9)を採用している。本実施例で採用した供試水を下記に示す。
【0091】
供試水(含35%エタノール): (1):水酸化ナトリウム水溶液pH11.0、 (2):水酸化ナトリウム水溶液pH11.3、(3):水酸化ナトリウム水溶液pH11.5、(4):水酸化ナトリウム水溶液pH11.8、(5):水酸化ナトリウム水溶液pH12.0。
【0092】
供試水(水酸化ナトリウム水溶液pH11.8,含35%エタノール): (6):NaCL0mM、(7):NaCL5mM、(8):NaCL15mM、(9):NaCL25mM。
【0093】
本実施例では、採用する供試水を除き、基本的には、
図16に示す実施例6と同様の処理態様を採っている。供試水(1〜5)にて得られた各上澄み(1〜5)、および、供試水6〜9にて得られた各上澄み(1〜5)のSDS−PAGEのパターンを
図19および
図20に示すとともに、各上澄み(1〜5)および各上澄み(6〜9)のタンパク質濃度を表6および表7に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
上澄みのタンパク質濃度は、供試水のpHの上昇とともに濃くなり、特にpHの高い供試水(4,5)では、効率的にタンパク質を抽出することができること確認される(表6を参照)。しかしながら、これらの供試水(4,5)による上澄み(4,5)のSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)にバンドが確認される(
図19を参照)。
【0097】
一方、塩化ナトリウムを添加した供試水(7〜9)を処理水とする上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムの添加量を増加するに伴い低下する(表7を参照)が、塩化ナトリウムを添加してなる供試水(7〜9)による上澄み(7〜9)のSDS−PAGEでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)のバンドは大幅に減少し、供試水(8,9)による上澄み(8,9)では確認されなかった。(
図20を参照)。
【0098】
また、塩化ナトリウムを添加してなる供試水(8,9:NaCLが15mM,25mM)による上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムを含有しない供試水(1〜3)による上澄みのタンパク質濃度より高いことが確認される。以上のことから、塩化ナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液を処理水とすることにより、アレルゲンであるω5−グリアジンを大幅に低減することができる。
【0099】
(実施例8):実施例6は、グルテンとしてスプレードライを採用しているが、本実施例ではフラッシュドライグルテンを採用して、実施例6と同様の処理態様を採っている。本実施例で採用している供試水を下記に示す。
【0100】
供試水: (1):塩酸水溶液pH3.0、(2):塩酸水溶液pH3.3、(3):塩酸水溶液3.5、(4):塩酸水溶液pH3.8、(5):塩酸水溶液pH4.0。
供試水(塩酸水溶液pH3.5): (6):NaCL0mM、(7):NaCL2mM、 (8):NaCL4mM、(9):NaCL6mM。
【0101】
本実施例では、採用する供試水を除き、基本的には、
図16に示す実施例6と同様の処理態様を採っている。供試水(1〜5)にて得られた各上澄み(1〜5)、および、供試水(6〜9)にて得られた各上澄み(6〜9)のSDS−PAGEのパンターンを
図21および
図22に示すとともに、各上澄み(1〜5)および各上澄み(6〜9)のタンパク質濃度を表8および表9に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
【表9】
【0104】
上澄みのタンパク質濃度は、供試水(1〜5)のpHが低いほど高くなる(表8を酸参照)が、これらの供試水(1〜5)による上澄み(1〜5)のSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)にバンドが確認される(
図21を参照)。
【0105】
一方、塩化ナトリウムを添加した供試水(7〜9)を処理水とする上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムの添加量を増加するに伴い低下する(表9を参照)が、塩化ナトリウムを添加してなる供試水(7〜9)による上澄み(7〜9)のSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)のバンドは大幅に減少していることが確認された(
図22を参照)。以上のことから、塩化ナトリウムを含有する塩酸水溶液を処理水とすることにより、アレルゲンであるω5−グリアジンを大幅に低減することができる。
【0106】
(実施例9):実施例7は、グルテンとしてスプレードライを採用しているが、本実施例ではフラッシュドライグルテンを採用して、実施例7と同様の処理態様を採っている。本実施例で採用している供試水を下記に示す。
【0107】
供試水: (1):水酸化ナトリウム水溶液pH11.0、(2):水酸化ナトリウム水溶液pH11.3、(3):水酸化ナトリウム水溶液pH11.5、(4):水酸化ナトリウム水溶液pH11.8、(5):水酸化ナトリウム水溶液pH12.0。
【0108】
供試水(水酸化ナトリウム水溶液pH11.5): (6):NaCL0mM、(7):NaCL5mM、(8):NaCL15mM、(9):NaCL25mM、(10):NaCL35mM、(11):NaCL45mM、(12):NaCL55mM、(13):NaCL65mM。
【0109】
本実施例では、採用する供試水を除き、基本的には、実施例8と同様の処理態様を採っている。供試水(1〜5)にて得られた各上澄み(1〜5)のSDS−PAGEのパターンを
図23に、供試水(6〜13)にて得られた各上澄み(6〜13)のSDS−PAGEのパターンを
図24および
図25に示すとともに、各上澄み(1〜5)および各上澄み(6〜13)のタンパク質濃度を表10および表11に示す。
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
上澄みのタンパク質濃度は、供試水(1〜5)のpHの上昇とともに濃くなり、効率的にタンパク質を抽出することができることが確認される(表10を参照)。しかしながら、これらの供試水(1〜5)による上澄みのSDS−PAGEのパターンでは、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)にバンドが確認される(
図23を参照)。
【0113】
一方、塩化ナトリウムを添加した供試水(7〜13)を処理水とする上澄みのタンパク質濃度は、塩化ナトリウムの添加量を増加するに伴い低下するが、供試水10(NaCL35mM)以上の濃度(供試水11〜13)になっても、タンパク質濃度はほとんど変化しなかった(表11を参照)。また、当該上澄み(10〜13)のSDS−PAGEのパターンでは、タンパク質濃度が高い供試水(6〜9)で、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)のバンドが検出されたが、タンパク質濃度が低い供試水(10〜13)では、アレルゲンであるω5−グリアジンの存在領域(53kDa)のバンドは大幅に減少していることが確認された。(
図24,
図25を参照)。