(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、ワークコイル、保温ヒータ及び蓋ヒータ等の複数個の加熱手段を有し、これら加熱手段を駆使して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する器具として広く知られている。
【0003】
ところで、炊飯の各工程時に内鍋内を加圧状態にして炊飯を行うと、米内への熱伝導と吸水速度が早まり、その結果十分な吸水が行われ、炊きムラのないより美味しいご飯を短時間で炊き上げることができるようになる。そのような要望に応える圧力式炊飯器も既に知られている。
【0004】
圧力式炊飯器の形状は、基本的には通常の炊飯器と同じである。即ち、圧力式炊飯器は、炊飯器本体、及び炊飯器本体の上方開口を開閉する蓋体等からなり、前記炊飯器本体内の内ケースには、調理物を入れて調理する内鍋がセットされ、内ケースの底面及び底面から側面にかけての湾曲部に設けられるワークコイル等の加熱手段により内鍋内の調理物が加熱調理される。そして、蓋体内には、内鍋内の圧力を調圧するための圧力調整装置が設けられ、加圧調理時、圧力調整装置を作動させ内鍋内を加圧状態にして加圧調理が行われることになる。
【0005】
図9に従来の圧力調整装置の一例を示す。圧力調整装置1は、ソレノイド2、球状弁3、プランジャ4等からなる。ソレノイド2には、突起部6を有するプランジャ4が摺動自在に嵌合されており、ソレノイド2の非作動時には、ばね5により図の右方に付勢されており、作動時にはばね5の力に抗して左方に引き込まれる。
【0006】
また、蓋体の下部に取り付けられ、内鍋に対向する内蓋7には、内鍋内で発生する蒸気を排出するための通気孔8が設けられ、この通気孔8上には通気孔8を閉鎖する形態で球状弁3が設けられる。
【0007】
そして、ソレノイド2の非作動時には、プランジャ4は図(A)に示す位置にあり、プランジャ4の突起部6は、球状弁3を右方に押し、通気孔8を開放し、ソレノイド2の作動時には、図(B)に示すようにプランジャ4は左方に引き込まれ、球状弁3は自重で通気孔8上に移動して通気孔8を閉鎖する。
【0008】
通気孔8が閉鎖されると、加圧炊飯が行われ、内鍋内の圧力が球状弁3を押し上げることができる値になると、球状弁3は、押し上げられ通気孔8を開いて所定以上の圧力を開放する。この動作を繰り返すことにより内鍋内の圧力を所定値に調圧する。
【0009】
ところで、圧力式炊飯器を蓋体が半ロック状態で加圧炊飯を行うと、加圧炊飯中に突然蓋体が開いたり、或いは蓋体が開いて蒸気が噴出したりして、近くにいるユーザーに蓋体自体、或いは噴出蒸気が当たる等の危害を加える恐れが生じる。
【0010】
上記従来のものは、そのような弊害をなくすための手段を講じている。即ち、ユーザーが蓋体が半ロック状態のまま加圧炊飯を選択する(図(A)参照)と、上記したようにソレノイド2が作動してプランジャ4を左動させ、球状弁3を通気孔8上に移動させる(図(B)参照)。
【0011】
上記従来のものは、更に、蓋開閉部材であるロックレバー9方向に押圧部12aを有する摺動部材12を前記プランジャ4に取り付けている。そして、ロックレバー9は、図示しないばねにより軸10を中心に図で反時計方向に付勢されており、その下方には、炊飯器本体側に設けられる係止部11に係止する係止爪9aを有し、その上方には、前記押圧部12aが当接する突出片9bを有している。
【0012】
そして、図(A)に示すように、蓋体が半ロック状態のまま加圧炊飯を選択すると、摺動部材12はプランジャ4と共に左動し、その先端の押圧部12aが突出片9bを反時計方向に押し、図(B)に示すように、半ロック状態を強制的にロック状態にする(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
このように、上記従来のものは、半ロック状態のままの加圧炊飯を防止するものであり、それなりの効果を奏する。しかしながら、半ロック状態を強制的にロック状態にするには、強力なソレノイドが必要になり、ソレノイドが大型化し、更にはソレノイドの大型化に伴いコストも高騰する。
【0014】
また、上記従来のもののように半ロック状態をロック状態にする手段を備えていないものでは、上記したように加圧炊飯中に突然蓋体が開き、ユーザーに危害を加える恐れが生じる。
【0015】
ところで、上記従来のものは、加圧炊飯中に蓋体を開放しようとしても摺動部材12がロックレバー9近傍に位置しているとともに、プランジャ4と摺動部材12とは一体であり左方に押圧されているため、蓋体を開放することができない。一般に加圧炊飯中に蓋体を開放し、出来具合を見てみたいとの要望があるが、上記従来のものは、そのような要望に応えることができない。
【0016】
また、上記従来のもののように半ロック状態をロック状態にする手段を備えていないものでは加圧炊飯中に蓋体を開放すると、内鍋内の蒸気がロックレバー側に噴出し、やはりユーザーに火傷等の危害を加える恐れが生じる。
【実施例】
【0026】
図1は蓋上部材を取り外した状態の
図2のA−A線縦断面図を示し、
図2は蓋上部材を取り外した状態の蓋体を斜め上方から見た斜視図を示し、
図3は圧力調整装置を含む各部品の分解斜視図を示し、
図4は蓋下部材を取り外した状態の圧力調整装置を含む各部品の組立斜視図を示す。なお、圧力式炊飯器20のヒンジ軸58側を後方側とし、ヒンジ軸58の反対側のロックレバー50側を前方側とし、前後方向に直交する側を左右方向側とする。
【0027】
圧力式炊飯器20の略全体を
図1に示す。圧力式炊飯器20は、炊飯器本体21及び蓋体40からなる。炊飯器本体21は、鋼板ケースまたは合成樹脂製の外ケース22を有し、この外ケース22の内部には、金属鍋或いは土鍋等の内鍋23が着脱自在にセットされ、この内鍋23の外側には内鍋23の形状に沿った保護枠である内ケース24が設けられる。この内ケース24は、例えばポリエチレンテレフタレート等の耐熱性の合成樹脂製のもので、その底部中央にはサーミスタからなる温度センサ25を臨ませるためのセンサ挿入孔が設けられる。
【0028】
内ケース24の上端は、外ケース22の上端と肩部材26を介して一体に結合される。内ケース24の底部外面及び底部から側部にかけての湾曲部外面には、内鍋23を誘導加熱する加熱手段である底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28が設けられる。これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は、内ケース24の底部及び湾曲部の各位置に、内ケース24の底部中央を中心として同心円状に設けられる。
【0029】
これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28の外側には合成樹脂製のコイル支持台29が設けられており、このコイル支持台29をネジ等で内ケース24に取り付けることにより、底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は図示する所定位置に位置決め固定される。
【0030】
前記外ケース22の下端部には、底部材31がビス等で取り付けられ、外ケース22と底部材31とで上方に開口を有する容器を形成する。外ケース22の後方の内部には、肩部材26から垂下する形態で、制御基板32が設けられる。
【0031】
この制御基板32には、底部ワークコイル27、側部ワークコイル28等の加熱手段を制御するためのマイコン及び電源回路等の電気部品が搭載される。それら電気部品のなかには発熱するものがあるため、制御基板32の近傍には発熱素子等を冷却するための冷却フィン33と、冷却フィン33の熱を放熱するための冷却ファン34が設けられる。なお、制御基板32の後方側にはコード巻取器35が設けられる。
【0032】
蓋体40は、図示しない外周面を形成する樹脂製の蓋上部材と、蓋下部材42を有する。蓋下部材42は、蓋上部材と同様に樹脂製の部材であり、その後方部には、ヒンジ軸58及びヒンジばね59が配置される平面視コ字状の切欠43が設けられる。
【0033】
また、蓋下部材42の中央且つ後方よりには円形の蒸気排出筒44が設けられており、内鍋23内の蒸気は、この蒸気排出筒44より蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0034】
蓋下部材42上には、
図2に示すように蓋体40の強度を高めるための金属製の補強部材46が設けられる。この補強部材46は、前方側に位置する第1補強部材46aと、後方側に位置する第2補強部材46bからなり、前後方向に延伸する形態で蓋下部材42にビス止めされる。なお、第1補強部材46aと第2補強部材46bとの分割位置は後方側であり、補強部材46が一体のものに比べて全体の耐久性を下げてあり、圧力調整装置及び安全弁が故障する等の異常時に分割位置近傍での変形を容易にし、異常時に変形箇所から蒸気を逃がすことにより蓋体40が急激に開放したり、或いは蒸気が前方側から急激に噴出する等の弊害を防止している。
【0035】
第1補強部材46aの前方端には、ロックレバー50のレバー軸57を軸支するための軸受孔47が設けられ、第2補強部材46bの後方端には、ヒンジ軸58を軸支するための軸受孔48が設けられる。
【0036】
蓋下部材42の前方側には、蓋開閉部材である金属製のロックレバー50が設けられる。
図3及び
図4に示すようにロックレバー50は、水平部51及び垂直部52からなる断面L字状の金属製の部材である。
【0037】
水平部51は、第1水平部51a、第2水平部51b及び第3水平部51cを有し、第1水平部51aには、後記第1摺動部材70が当接する上方に略直角に折れ曲がった折曲部53が形成され、第2水平部51bには、後記第2摺動部材75が当接する第1水平部51a方向に水平に突き出る突出リブ54及び後記押圧部材55(
図1、2参照)を挿入する円形の挿通口55aが形成され、第3水平部51cには、ロックレバー50を回動するためのレバーばね57a(
図5参照)の一端を係止する円形の係止口56が形成されている。
【0038】
押圧部材55は、水平円板及び棒状部からなる断面T字状の部材であり、コイルばね55b(
図1参照)を棒状部に挿入した状態で第2水平部51bの円形の挿通口55aに挿入し、その下端部にナットを螺合して固定しており、斜め上方から力が加わったとしてもロックレバー50を適正に回動する。
【0039】
前記垂直部52は、中央が下方から略トンネル状に切り掛かれており、残りの左右の垂直部分の下端には、後方側に直角に折り曲げられた平面視略矩形状の係止部52aが形成される。この係止部52aは肩部材26に形成される係止片26a(
図5参照)に係止されることにより、蓋体40を閉蓋する。
【0040】
ロックレバー50には、コイル状のレバーばね57a(
図5参照)が挿着される1本で棒状のレバー軸57が嵌合されており、そのレバー軸57の両端は、第1補強部材46aの左右の軸受孔47、47に挿入され軸支される。レバー軸57を軸受孔47、47に挿入後、レバーばね57aの一端を第3水平部51cの係止口56に係止し、他端を蓋下部材42側に係止する。その結果、ロックレバー50は反時計方向のばね力を付与された状態で
図2、
図4の状態で取付けられる。
【0041】
そして、蓋上部材の上面に設けられる図示しない押圧ボタンを上方から押したり、或いはスライドレバー等によって押されるとその力は押圧部材55に伝わり、押圧部材55が下動されるとロックレバー50は時計方向に回動され、その結果蓋体40はヒンジばね59のばね力により開蓋する。
【0042】
蓋下部材42の後方側の切欠43には、ヒンジ部であるヒンジ軸58及びヒンジばね59が設けられる。このヒンジ軸58の両端は、第2補強部材46bの後方端の軸受孔48、48に挿入され軸支される。また、ヒンジ軸58にはコイル状のヒンジばね59が挿着されるとともに、ヒンジばね59の一端部59aは第1補強部材46aに係止され(
図2参照)、他端部59bは肩部材26に係止されており、蓋体40に常時開方向のばね力を付与している。
【0043】
蓋下部材42の中央部には、下方が開口し、上方に突き出た平面視矩形状の弁カバー60が設けられるとともに、この弁カバー60の前方側には圧力調整装置の一部品である後記ソレノイド68が水平且つ前後方向に配置される。
【0044】
図2〜
図4で示すように蓋下部材42の弁カバー60より前方側の上面には、平面視略矩形状で樹脂製の支持部材63が配設される。この支持部材63は、その上面に圧力調整装置等を載置する底浅の皿状の部材で、その側壁上端には、左右方向に張り出し、それぞれ1個のビス穴63a1を有するフランジ63aが設けられるとともに、その前方端には、ロックレバー50のレバー軸57が挿通される軸貫通口63bが設けられる。そして、支持部材63は、その軸貫通口63bにレバー軸57を挿通し、ビスをビス穴63a1から蓋下部材42に螺合することにより第1補強部材46aの上面に取付けられる。
【0045】
支持部材63の上面には、後記ソレノイド68を収納するための平面視矩形状のソレノイド収納室64、後記第1摺動部材70の一部を収納するための平面視細長矩形状の摺動部材収納室65及び後記第2摺動部材75を軸支するための円柱状の円柱軸受66が設けられる。
【0046】
前記支持部材63上のソレノイド収納室64には、ソレノイド68が水平且つ前後方向に収納される。ソレノイド68の側壁面の上端及び下端には、それぞれ左右方向に張り出した平面視矩形状で、その中央部にビス穴68bを有する取付フランジ68aが設けられており、このビス穴68bからビスを螺合することによりソレノイド68を蓋下部材42に固定する。
【0047】
また、ソレノイド68には、ソレノイド68のオン、オフにより進退するプランジャ69が設けられる。
【0048】
このプランジャ69の先端は、弁カバー60に対向するような形態で前後方向に設けられるとともに、その先端には、正面視C字状のばね支持具69aが取り付けられ、更にプランジャ69の外周に挿入される形態でソレノイド68とばね支持具69aとの間にコイルばね69bが挿設されており、プランジャ69は、ソレノイド68のオフ時にはソレノイド68から後方側に引き出されている。
【0049】
図3に示すように摺動部である第1摺動部材70は、前後方向長伸部71、左右方向短伸部73及び前後方向短伸部72を有する平面視略釣り針状で一体形成される樹脂製部材であり、前後方向に移動可能に配設される。
【0050】
前後方向長伸部71は、前後方向に長く延伸する平面視細長矩形状の部分で、その前方端の上面には、上方に突き出るとともに、前方から後方に向かって上方に傾斜する正面視矩形状の傾斜突部71aが一体に設けられるとともに、その下面には、前方側垂下部71b及び後方側垂下部71cが間を空けて平行に設けられている。
【0051】
前後方向長伸部71の前方側垂下部71bより後方側は、支持部材63上の摺動部材収納室65に収納されるとともに、後方側垂下部71cの後方壁面と、摺動部材収納室65の内端壁面65a(
図3、5参照)との間には、コイルばね74が介在され、第1摺動部材70を常時前方側に付勢する。
【0052】
前後方向短伸部72は、前後方向に短く延伸する平面視矩形状の部分で、ソレノイド収納室64の外壁部に沿う形態で前後方向に移動する。
【0053】
左右方向短伸部73は、前後方向長伸部71と前後方向短伸部72を連結する部分で、その略中央部には、前方と上方が開口した半円弧状の半円弧空間73a(
図3参照)が一体に形成され、その後方側の側壁面には、後方側に突き出た棒状の弁押圧突起73bが一体に形成される。
【0054】
そして、半円弧空間73aには、プランジャ69のばね支持具69aが収納配置され、ソレノイド68のオフ時には、ばね支持具69aはコイルばね69bのばね力により第1摺動部材70全体を後方側に押している。
【0055】
なお、ソレノイド68のオン時には、プランジャ69は、ばね支持具69aとともに前方側に引き込まれるが、ばね支持具69aと半円弧空間73aとは連結されていないため、第1摺動部材70は前方側に移動しない。しかしこの場合、第1摺動部材70と支持部材63との間には前記コイルばね74が介在しているため、第1摺動部材70は、コイルばね74のばね力によりプランジャ69の前方側への移動と同時に前方側に移動される。なお、コイルばね74のばね力は、コイルばね69bのばね力より弱く設定されている。
【0056】
前記弁押圧突起73bは、後記の球状弁90に対向するように配置されており、ソレノイド68のオフ時にはその球状弁90を押して、後記通気孔86を開放し、ソレノイド68のオン時にはその球状弁90から離れる。その結果、球状弁90は自重で通気孔86の真上に移動して、その通気孔86を閉鎖する。
【0057】
前記第1摺動部材70の前方側には、摺動部の一部である第2摺動部材75が配設される。第2摺動部材75は、間に折曲部75aを有する平面視く字状で一体の樹脂製の部材であり、その根本には中空軸75bを有し、その先端には上方に立設する棒状の係合突起75cを有する。
【0058】
そして、中空軸75bは、前記支持部材63上の円柱軸受66に回動自在に嵌合され、取付時には、第1摺動部材70と略直交する形態で支持部材63上に載置される。第2摺動部材75の取り付け後では、折曲部75aの後方側の面に第1摺動部材70の前方側垂下部71bの前方側の面が当接される。
【0059】
また、前記支持部材63上の円柱軸受66には、円形に巻かれたばね76(
図3参照)が嵌入され、その一端部は第2摺動部材75に当接され、その他端部は支持部材63に当接されており、第2摺動部材75を中空軸75bを中心にして時計方向に回動するように付勢している。その結果、第2摺動部材75の折曲部75aの後方側側面は、第1摺動部材70の前方側垂下部71bの前方側の面に当接される。なお、ばね76のばね力は、コイルばね74のばね力より弱く設定されている。
【0060】
第2摺動部材75の折曲部75aは、第2摺動部材75の中間より根本の中空軸75b側寄りに設けられており、このような形態にすることにより、折曲部75aが第1摺動部材70の前方側垂下部71bで前方側に押されると、先端部の係合突起75cは折曲部75aより早く円弧上を前方側へ移動することができるようになる。その結果、蓋体40の半ロック時に係合突起75cは、ロックレバー50の突出リブ54に当接可能になる。
【0061】
蓋下部材42の中央部に設けられる弁カバー60の前方側には円形の図示しない開口が設けられるとともに、その開口には、周囲に嵌合溝を有し、その内部に円形状のシール膜を有する全体として円形状のパッキン77(
図3参照)が嵌合されており、弁カバー60の内外をシールしている。このパッキン77の円形状のシール膜の中心には、第1摺動部材70の弁押圧突起73bが嵌合しており、この円形状のシール膜は弁押圧突起73bとともに前後方向に移動可能にされている。
【0062】
前記蓋体40の下方には、内鍋23に対向して内蓋80が着脱自在に取付けられる。そして、この内蓋80の上面には、弁ユニット81が前記弁カバー60の下方に位置する形態で取付けられる。そして、内蓋80を蓋下部材42の下面に取り付けると、弁ユニット81の上面と弁カバー60の下面との間に蒸気室87(
図1参照)が形成される。
【0063】
弁ユニット81には、弁収納室83及び安全弁84が設けられる。弁収納室83は、前後方向に開口を有する断面逆U字状の部分で、その内部には、中央に通気孔86を有するすり鉢状の弁載置部85(
図3参照)が設けられるとともに、その上方には弁体である球状弁90が配設される。
【0064】
前記通気孔86は、内鍋23内に連通しており、球状弁90が通気孔86を開放すると内鍋23内の蒸気は、蒸気室87に流入し、その後、蒸気排出筒44及び蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0065】
そして、内蓋80が蓋下部材42の下面に挿着されると、弁収納室83は蓋下部材42の下面から上方に突き出す形態で形成される弁カバー60内に進入するとともに、球状弁90は弁押圧突起73bに対向して位置する。
【0066】
圧力調整装置は、前記ソレノイド68、プランジャ69及び球状弁90を有し、加圧炊飯が選択されないソレノイド68の非作動(オフ)時には、プランジャ69は外方に押し出され、球状弁90を押して通気孔86を開放する。
【0067】
そして、加圧炊飯が選択されるソレノイド68の作動(オン)時には、プランジャ69は引き込まれ、弁押圧突起73bは球状弁90から離れるため、球状弁90は自重で通気孔86の直上に移動して通気孔86を閉鎖する。その結果、球状弁90の自重に相当する圧力での炊飯が行われ、内鍋23内がそれ以上の圧力になると余分な蒸気は球状弁90を押し上げて通気孔86より排出される。
【0068】
前記安全弁84は球状弁90の開放圧より高い圧力で開放するようにされるもので、球状弁90が開かない等の異常時に開放される。
【0069】
蓋体40の前方側には、図示しない液晶パネル及び各種スイッチボタンが設けられており、通常炊飯を選択すると、ソレノイド68がオフ(通気孔86が開)での炊飯が行われ、加圧炊飯を選択すると、ソレノイド68がオン(通気孔86が閉)での炊飯が行われる。その炊飯は、底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28により誘起される渦電流に起因したジュール熱により内鍋23が加熱されて行われる。
【0070】
蓋体40の半ロック時に加圧炊飯が行われない仕組みについて
図5〜
図7で説明する。なお、各図とも(A)は概略側面図で、(B)は概略平面図であり、
図5(A)に第1水平部51a及びその先端の折曲部53を破線で便宜的に示し、レバー軸57の回りに挿設されるレバーばね57aを示す。
【0071】
図5に加圧炊飯を行っていない蓋体40がロック状態時のロックレバー50と第1摺動部材70及び第2摺動部材75との関係を示す。図に示すように、ロックレバー50はロック状態位置にある。なお、第2摺動部材75は、図(B)で矢印で示す時計方向に付勢されている。
【0072】
また、第1摺動部材70及び第2摺動部材75は、ソレノイド68がオフでプランジャ69が後方側に押し出されているため、後方側に位置する。その結果、第1摺動部材70の弁押圧突起73bが球状弁90を押して通気孔86を開放する。
【0073】
図6に加圧炊飯中で蓋体40がロック状態時のロックレバー50と第1摺動部材70及び第2摺動部材75との関係を示す。図に示すように、ロックレバー50はロック状態位置にある。
【0074】
また、第1摺動部材70及び第2摺動部材75は、ソレノイド68がオンでプランジャ69が前方側に引き込まれているため、前方側に位置する。すると、第1摺動部材70は、図(A)、(B)で矢印で示すように前方側に移動し、その結果、第2摺動部材75は図(B)で矢印で示すように反時計方向に回動される。
【0075】
そして、その先端の係合突起75cは、ロックレバー50の突出リブ54に向かって移動するが、ロックレバー50はロック状態時の位置にあり、図(A)で示すように突出リブ54は、係合突起75cより上方位置になり、係合突起75cは、突出リブ54の下方を経て前方側に至る。そのため、第1摺動部材70は、コイルばね74のばね力により前方側に押され、第1摺動部材70の弁押圧突起73bが球状弁90から離れ、通気孔86は球状弁90により閉鎖される。
【0076】
図7に蓋体40が半ロック状態での加圧炊飯時のロックレバー50と第1摺動部材70及び第2摺動部材75との関係を示す。図に示すように、ロックレバー50は半ロック状態位置にある。なお、ロックレバー50が半ロック状態位置にあると、ロックレバー50の突出リブ54は、下方位置になり、第2摺動部材75の係合突起75cと同じ位置になる。
【0077】
また、例え蓋体40が半ロック状態にあっても加圧炊飯を選択することができるため、半ロック状態で加圧炊飯が選択されると、ソレノイド68がオンになりプランジャ69が前方側に引き込まれる。すると、第1摺動部材70及び第2摺動部材75は、コイルばね74のばね力により前方側に押されるが、第2摺動部材75の先端の係合突起75cは、ロックレバー50の突出リブ54に当接し、それ以上の前方側への移動が阻止される。
【0078】
その結果、第1摺動部材70は若干前方側へ移動するが、その弁押圧突起73bは球状弁90を押した状態を維持し、通気孔86は開放状態が維持される。このように、蓋体40の半ロック状態で加圧炊飯を行おうとしても、通気孔86が閉鎖されないため加圧炊飯を行うことができない。
【0079】
次いで、加圧炊飯中に蓋体40を開放すると蓋体40の開蓋前に蒸気が排出される仕組みについて
図8で説明する。なお、各図とも概略側面図であり、
図8(A)に第2水平部51bの突出リブ54、並びに第2摺動部材75を破線で便宜的に示す。
【0080】
図(A)の加圧炊飯を行っていないロック状態時は、
図5(A)と同じで、図(B)の加圧炊飯中のロック状態時は、
図6(A)と同じであるため説明は省略する。
【0081】
図(B)の加圧炊飯中のロック状態時に蓋体40を開蓋する状態を図(C)乃至図(E)に示す。図(C)は、開放途中の折曲部53が傾斜突部71aに当接した状態図で、図(D)は、ロック解除直前で、蒸気が排出される状態図で、図(E)は、ロック解除後の状態図である。
【0082】
図(C)に示すように、ロックレバー50が開放方向である時計方向に回動されていくと、ロックレバー50の折曲部53が傾斜突部71aに当接する。更にロックレバー50が開放方向に回動されるとロックレバー50の折曲部53が傾斜突部71aを後方側に押圧する。すると、第1摺動部材70はコイルばね74に抗して後方側に押され、第1摺動部材70の弁押圧突起73bは球状弁90を押して図(D)の状態になる。この場合、ソレノイド68はオン状態であるためプランジャ69は前方側に引き込まれたままである。
【0083】
図(D)の状態になると、内鍋23の蒸気は排出されることになる。そのため、図(E)の状態になり、蓋体40が開放されたとしても、内部の高圧の蒸気が噴き出すことがなくなる。
【0084】
このように、摺動部材をプランジャ69より独立して移動可能にし、また、摺動部材を第1摺動部材70及び第2摺動部材75の連動する2つから構成し、一方の摺動部材で半ロック状態による蒸気噴出等の弊害を防止し、他方の摺動部材で加圧炊飯中の開蓋による蒸気噴出等の弊害を防止することにより、各作用をより確実に行うことができるとともに、全体の構造を簡単にすることができる、また、蓋開放検知センサ等を設ける必要がないためそれだけ生産コストを低減できる。
【0085】
本発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、例えば、加熱手段はヒータでもよく、内鍋も金属製等、どのような材質のものでもよい。
【0086】
また、ソレノイド68は、作動初期時には連続的に電流を流して引き込み動作をさせるとともに、その後はパルス電流を流して引き込み状態を維持するように制御してもよい。更には、上記ではプランジャ69と摺動部材を別々のものとして説明したが、一体のものでもよい。その場合、摺動部材が後方側に押されるとプランジャ69も後方側に引き出されるようにソレノイド68の吸引力を弱める必要がある。