特許第5809495号(P5809495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809495
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】相対角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   G01L3/10 305
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-200399(P2011-200399)
(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-61267(P2013-61267A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】濱口 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】濱 洋平
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−13133(JP,A)
【文献】 特開2010−14688(JP,A)
【文献】 特開2007−187457(JP,A)
【文献】 特開2011−99831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00− 5/28
G01B 7/00− 7/34
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01P 3/00− 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸と第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出装置であって、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか一方の回転軸に固定されて当該一方の回転軸とともに回転する回転部材と、
磁界を発生させるとともに接着剤を介して前記回転部材に支持される支持部材と、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか他方の回転軸に設けられ、前記支持部材が発生した磁界に応じた値を出力するセンサと、
を備え、
前記支持部材は、筒状の部材であり、前記一方の回転軸の軸方向の一方の端面から当該軸方向に凹んだ溝部と、当該一方の端面から当該軸方向に突出した凸部とを有し、
前記回転部材は、前記軸方向に切り欠かれた凹部が設けられた筒状の筒状部を有し、
前記支持部材は、前記溝部に前記回転部材の前記筒状部が挿入されるとともに前記凸部と当該回転部材の前記凹部とが嵌め合わされた状態で接着剤を介して当該回転部材に支持されている
ことを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記接着剤が剥離した場合には前記凸部と前記回転部材の前記凹部とが直接接触することにより前記一方の回転軸の回転力が伝達される
ことを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記支持部材に設けられた前記凸部の前記一方の回転軸の軸方向の長さは、当該一方の回転軸の回転力を当該支持部材に伝達するのに十分な当該凸部と前記凹部との接触長さに、当該支持部材が前記接着剤を介して前記回転部材に支持された状態における、当該支持部材の前記他方の回転軸側の端部と当該接着剤が剥離した場合に当該支持部材が落下して載る当該他方の回転軸および/または当該他方の回転軸と連動して回転する部材との間の長さを加算して得られた長さ以上であることを特徴とする請求項2に記載の相対角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置は、電動パワーステアリング装置に適用され、入力軸と、出力軸との間のトルクを検出する装置である。入力軸と、出力軸とはトーションバーを介して連結されている。入力軸には、磁気発生部が設けられている。磁気発生部は、環状の磁性体で形成されたバックヨークに環状の磁石部が設けられた構成になっている。出力軸には、第1磁気ヨーク及び第2磁気ヨークで構成される磁気ヨーク部が設けられている。第1磁気ヨークの他端部同士は、第1磁気リングによって連結され、第2磁気ヨークの他端部同士は、第2磁気リングによって連結されている。第1磁気リングに対面して、ハウジングに第1集磁リングが設けられている。第2磁気リングに対面して、ハウジングに第2集磁リングが設けられている。第1集磁リングには第1集磁ヨークが設けられ、第2集磁リングには第2集磁ヨークが設けられている。第1集磁ヨークと第2集磁ヨークには、互いに対面するように二対の凸部が設けられている。各一対の凸部の間が、磁気ギャップに成って、磁気ギャップ内に磁気センサが配置されている。
【0003】
そして、磁気発生部を形成する手法として、未着磁の磁性体の裏面に接着剤を塗布し、接着剤によって未着磁の磁性体をバックヨークに接着し、その後、バックヨークを入力軸に圧入した後に、磁性体を着磁する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−292550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気発生部を構成する、磁石部(着磁された磁性体)とバックヨークとの接着剤が剥離した場合、磁石部が2つの回転軸の内の一の回転軸(例えば入力軸)とともに回転せず、2つの回転軸の相対回転角度を検出することができないおそれがある。
本発明は、接着剤が剥離した場合においても2つの回転軸の相対回転角度を検出できる装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、第1の回転軸と第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出装置であって、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか一方の回転軸に固定されて当該一方の回転軸とともに回転する回転部材と、磁界を発生させるとともに接着剤を介して前記回転部材に支持される支持部材と、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか他方の回転軸に設けられ、前記支持部材が発生した磁界に応じた値を出力するセンサと、を備え、前記支持部材は、筒状の部材であり、前記一方の回転軸の軸方向の一方の端面から当該軸方向に凹んだ溝部と、当該一方の端面から当該軸方向に突出した凸部とを有し、前記回転部材は、前記軸方向に切り欠かれた凹部が設けられた筒状の筒状部を有し、前記支持部材は、前記溝部に前記回転部材の前記筒状部が挿入されるとともに前記凸部と当該回転部材の前記凹部とが嵌め合わされた状態で接着剤を介して当該回転部材に支持されていることを特徴とする相対角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記支持部材は、前記接着剤が剥離した場合には前記凸部と前記回転部材の前記凹部とが直接接触することにより前記一方の回転軸の回転力が伝達されるとよい。
【0008】
また、前記支持部材に設けられた前記凸部の前記一方の回転軸の軸方向の長さは、当該一方の回転軸の回転力を当該支持部材に伝達するのに十分な当該凸部と前記凹部との接触長さに、当該支持部材が前記接着剤を介して前記回転部材に支持された状態における、当該支持部材の前記他方の回転軸側の端部と当該接着剤が剥離した場合に当該支持部材が落下して載る当該他方の回転軸および/または当該他方の回転軸と連動して回転する部材との間の長さを加算して得られた長さ以上であるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着剤が剥離した場合においても2つの回転軸の相対回転角度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る検出装置を適用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
図2】実施の形態に係る検出装置の斜視図である。
図3】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
図4図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
図6】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図7】(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。(b)は、(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図8】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図9】MRセンサの他の例を示す図である。
図10】磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
図11】MRセンサの配置の例を示す図である。
図12】MRセンサの他の例を示す図である。
図13】本実施の形態に係るハーネスコンプの外観図である。
図14】グロメットおよびソケットの概略構成図である。
図15】(a)は、第2ハウジングの概略構成図である。(b)は、(a)におけるB−B断面図である。(c)は、ハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
図16】回転部材および磁石の斜視図である。
図17図1のXVII部の拡大図である。
図18】接着剤が剥離して磁石がベースの上に載った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る検出装置10を適用した電動パワーステアリング装置100の断面図である。図2は、実施の形態に係る検出装置10の斜視図である。なお、図2においては、構成を分かり易くするために後述するベース50およびフラットケーブルカバー60の一部は省略して示している。
【0014】
電動パワーステアリング装置100は、同軸的に回転する第1の回転軸110と第2の回転軸120とを備えている。第1の回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、第2の回転軸120は、トーションバー130を介して第1の回転軸110に同軸的に結合されている。そして、第2の回転軸120に形成されたピニオン121が、車輪に連結されるラック軸(不図示)のラック(不図示)と噛み合っており、第2の回転軸120の回転運動がピニオン121,ラックを介してラック軸の直線運動に変換され、車輪が操舵される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110および第2の回転軸120を回転可能に支持するハウジング140を備えている。ハウジング140は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング150、第2ハウジング160および第3ハウジング170から構成される。
第1ハウジング150は、第2の回転軸120を回転可能に支持する軸受け151を、第2の回転軸120の回転軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)の一方の端部側(図1においては下側)に有し、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)が開口した部材である。
【0016】
第2ハウジング160は、軸方向の両端部が開口した部材であり、その軸方向の一方の端部側の開口部が第1ハウジング150における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置される。そして、第2ハウジング160は、例えばボルトなどにより第1ハウジング150に固定される。第2ハウジング160の側面には、内外を連通する連通孔161が形成されている。連通孔161は、後述するハーネスコンプ300のグロメット320が嵌合される略楕円柱状の内側連通孔161aと、ハーネスコンプ300のソケット330が嵌合される略楕円柱状の外側連通孔161bと、を含んで構成されている。外側連通孔161bは、内側連通孔161aに対して、楕円の短辺方向は同じであるが長辺方向には大きく形成されている。また、第2ハウジング160には、連通孔161における楕円柱の柱方向(連通孔方向)の途中に、連通孔161の外側連通孔161bを形成する面から凹んだ凹部162(図15参照)が楕円における長辺方向の両側に形成されている。凹部162は、半月柱状であり、柱方向に垂直な面である2つの垂直面162aを有する。
【0017】
第3ハウジング170は、第1の回転軸110を回転可能に支持する軸受け171を、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)に有し、軸方向の一方の端部側(図1においては下側)が開口した部材である。そして、軸方向の一方の端部側の開口部が第2ハウジング160における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置されるとともに、例えばボルトなどにより第2ハウジング160に固定される。
【0018】
また、電動パワーステアリング装置100は、例えば圧入などにより第2の回転軸120に固定されたウォームホイール180と、このウォームホイール180と噛み合うウォームギヤ191が出力軸に連結されるとともに第1ハウジング150に固定される電動モータ190とを備えている。
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する検出装置10と、この検出装置10からの出力値に基づいて電動モータ190の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0019】
ECU200は、各種演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を用いて、検出装置10からの出力値を基に第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を演算する相対角度演算部210を備えている。
検出装置10については、後で詳述する。
【0020】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度として現れることに鑑み、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。つまり、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出装置10にて検出し、検出装置10からの出力値に基づいてECU200が操舵トルクを把握し、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ190の駆動を制御する。そして、電動モータ190の発生トルクをウォームギヤ191、ウォームホイール180を介して第2の回転軸120に伝達する。これにより、電動モータ190の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0021】
以下に、検出装置10について詳述する。
検出装置10は、第1の回転軸110に固定されて、第1の回転軸110とともに回転する回転部材21と、磁界を発生させるとともに接着剤を介して回転部材21に支持される磁石22と、この磁石22から発生される磁界に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、この相対角度センサ30を実装するプリント基板40と、を備えている。また、検出装置10は、第2の回転軸120に取り付けられるとともにプリント基板40を支持するベース50と、後述するフラットケーブル70を収納する有底円筒状のフラットケーブルカバー60と、を備えている。また、検出装置10は、一方の端部がプリント基板40に設けられた端子に接続されるとともに、他方の端部がフラットケーブルカバー60に固定された端子に接続されるフラットケーブル70と、フラットケーブルカバー60に固定された端子とECU200とを接続するハーネスコンプ300と、を備えている。
【0022】
回転部材21および磁石22については後で詳述するが、磁石22は、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。
相対角度センサ30は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石22の外周面の外側であり、第1の回転軸110の軸方向には磁石22が設けられた領域内となるように配置されている。本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)である。そして、この相対角度センサ30が、磁石22から発生される磁界に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力することで、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する。この相対角度センサ30および相対回転角度の検出手法については後で詳述する。
【0023】
プリント基板40は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石22の外周面の外側に配置されるように、例えばボルトなどによりベース50に固定される。
ベース50は、円盤状の部材であり、第2の回転軸120に嵌合され、この第2の回転軸120と共に回転する。
フラットケーブルカバー60は、有底円筒状の部材であり、ハウジング140に固定される。フラットケーブルカバー60をハウジング140に固定する態様としては、以下の態様を例示することができる。すなわち、フラットケーブルカバー60の外周面に、円周方向に等間隔に複数個(本実施の形態においては90度間隔に4個)の凸部61を、外側に延出するように形成する。一方、ハウジング140の第1ハウジング150に、凸部61が嵌合される凹部151を、凸部61と同数個形成する。そして、フラットケーブルカバー60の凸部61を第1ハウジング150に形成した凹部151に嵌合することで、第2の回転軸120の回転方向の位置決めを行う。そして、第2ハウジング160でフラットケーブルカバー60の上面を押さえることで軸方向の位置決めを行う。あるいは、フラットケーブルカバー60を、例えばボルトなどにより第1ハウジング150または第2ハウジング160に固定してもよい。
【0024】
フラットケーブル70は、一方の端部がプリント基板40の端子41に接続されるとともに他方の端部がフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に接続されて、ベース50における軸方向の一方の端面とフラットケーブルカバー60の内側とで形成される空間内に、渦状に巻かれた状態で収納される。そして、フラットケーブル70は、軸方向の他方の端部側から見た場合に、図2に示すように、右方向に巻かれており、ステアリングホイール、言い換えれば第1の回転軸110および第2の回転軸120が右方向に回転された場合には、一方の端部が第2の回転軸120の回転に従って右方向に回転するので、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が増加する。他方、ステアリングホイールが左方向に回転された場合には、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が減少する。
ハーネスコンプ300は、相対角度センサ30からの出力信号をECU200に伝送する機能を有する。このハーネスコンプ300については後で詳述する。
【0025】
以下に、本実施の形態に係る相対角度センサ30について説明する。
本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁場(磁界)によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0026】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて抵抗値が変化する。
【0027】
図3は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図4は、図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図3に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図4である。
【0028】
図4に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0029】
図5は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図6は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0030】
図6(a)に示すように、抵抗変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図6(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsinθ・・・(1)
ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握することで検出することができる。
【0031】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図7(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図7(a)に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0032】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsinθ・・・(2)
R2=R0−ΔRcosθ・・・(3)
【0033】
図7(a)に示すようなエレメント構成のMRセンサの等価回路は図7(b)に示すようになる。
図7に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0034】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)
ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0035】
図8は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図8(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図7に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0036】
そして、磁石を、図8(c)に示した、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λ分、図8(a)に示すように左方向に移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図8(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図8(d)に示すように1周期の波形となる。
【0037】
図9は、MRセンサの他の例を示す図である。
図7に示したエレメント構成の代わりに図9(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図9(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図9(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0038】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図6に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsinθ」からすると、図5で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0039】
図10は、磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図10のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検知が可能となる。これらの出力を得る為には、図8で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位相関係となるように、二つのMRセンサを配置すればよい。
図11は、MRセンサの配置の例を示す図である。図11に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度傾けて配置することも好適である。
【0040】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。図12(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図12(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図12(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図12に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0041】
上述したMRセンサの特性に鑑み、本実施の形態に係る検出装置10においては、相対角度センサ30として、図12に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。相対角度センサ30は、上述したように、磁石22の外周面に対して垂直に配置され、第2の回転軸120の軸方向の位置は、磁石22の領域内である。それゆえ、かかる場合には、第1の回転軸110と共に回転する磁石22の磁場により、相対角度センサ30では、磁石22の位置に応じて、図8(c)に示すような磁場方向の変化となる。
【0042】
その結果、磁石22が着磁ピッチλを移動(回転)したとき、相対角度センサ30の感磁面では磁場の方向が1/2回転すると共に、相対角度センサ30からの出力値VoutA,VoutBは、それぞれ図12(c)に示すような1/4周期の位相差となる余弦曲線(余弦波)および正弦曲線(正弦波)となる。
すなわち、運転者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って第1の回転軸110が回転し、トーションバー130が捩れる。そして、第2の回転軸120が第1の回転軸110より少し遅れて回転する。この遅れは、トーションバー130に連結された第1の回転軸110と第2の回転軸120との回転角度の差となって現れる。検出装置10は、この回転角度の差に応じた、1/4周期の位相差の、余弦曲線および正弦曲線となるVoutA,VoutBを出力する。
なお、相対角度センサ30の感磁面とは、相対角度センサ30において磁場を検出することができる面のことである。
【0043】
ECU200の相対角度演算部210は、相対角度センサ30の出力値VoutAおよびVoutBを基に、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度θtを以下の式(6)を用いて演算する。
θt=arctan(VoutB/VoutA)…(6)
このようにして、相対角度演算部210は、相対角度センサ30からの出力値に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度及び捩れ方向、つまりはステアリングホイールに加わるトルクの大きさ及び向きを把握することが可能となる。
【0044】
また、上述のように構成された検出装置10を組み付ける際には、フラットケーブルカバー60と、プリント基板40を取り付けたベース50と、フラットケーブルカバー60とベース50との間に収容するフラットケーブル70と、を予めユニット化しておく。そして、そのユニットを、第2の回転軸120が組み付けられた第1ハウジング150に、フラットケーブルカバー60の凸部61が第1ハウジング150の凹部151に嵌るように取り付ける。その際、ベース50を、第2の回転軸120に取り付ける。
このように、検出装置10を予めユニット化が可能な構造とすることで組み付け性を向上させることができる。
【0045】
次に、ハーネスコンプ300について説明する。
図13は、本実施の形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。
ハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持するグロメット320と、グロメット320の移動を抑制するソケット330と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、複数の電線310の一方の端部に連結される第1のコネクタ350と、複数の電線310の他方の端部に連結される第2のコネクタ360と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、グロメット320と第1のコネクタ350との間において複数の電線310を束ねる第1のカバー370と、グロメット320と第2のコネクタ360との間において複数の電線310を束ねる第2のカバー380と、を備えている。
【0046】
そして、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が、第1のコネクタ350などを介してプリント基板40に、4本の電線310の他方の端部が、第2のコネクタ360などを介してECU200に接続されている。そして、4本の電線310が、ECU200から相対角度センサ30への電源供給や、相対角度センサ30からECU200への出力値の伝送に用いられる。
【0047】
電線310は、線状に引き伸ばされた金属などの導体が絶縁体で覆われたものであり、電気を伝導する。本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が第1のコネクタ350に接続され、他方の端部が第2のコネクタ360に接続されるとともに、絶縁体の第1のカバー370および第2のカバー380にて束ねられている。
【0048】
図14は、グロメット320およびソケット330の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。(c)は、(a)におけるA−A断面図である。
図15(a)は、第2ハウジング160の概略構成図である。図15(b)は、(a)におけるB−B断面図である。図15(c)は、ハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
【0049】
グロメット320は、略楕円柱状の楕円柱部321と、円筒状の円筒部322とを備えている。そして、楕円柱部321には、電線310を通すために柱方向に形成された電線孔323が電線310の数と同数(本実施の形態においては4つ)形成されている。また、楕円柱部321の外周面には、周方向の全周に亘って外周面から外側に突出する突起324が、柱方向(電線孔323の孔方向(以下、「電線孔方向」と称する場合もある。))に複数(本実施の形態においては3つ)設けられている。突起324の最外周部の大きさは第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aの大きさよりも大きい。楕円柱部321の外周面は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じかやや小さく、第2ハウジング160に嵌合された状態では、その外周面から外側に突出する突起324が周囲の壁163に押されることにより全体的に内側に弾性変形する。これにより、グロメット320は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aをシールするとともに、電線孔323の周囲部分にて電線孔323に挿入された電線310を押圧し、電線310の移動を抑制する。なお、このグロメット320は、ゴムなどの弾性材料を加硫成形することで上記所定形状に成形されている。
【0050】
ソケット330は、第2ハウジング160の連通孔161の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有している。本実施の形態においては、軸方向に分割可能であり、図14では下側に配置される下側部材340と、上側に配置される上側部材331とを有している。また、ソケット330は、下側部材340と上側部材331との間に配置され、ソケット330が第2ハウジング160の連通孔161から抜けるのを防止する抜け止め部材336を、複数(本実施の形態においては2つ)有している。このソケット330は、樹脂をインジェクション成形することで下記所定形状に成形されている。
【0051】
下側部材340は、上側部材331を支持する支持部341と、中央部に第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を通す貫通孔342aが形成された楕円柱状の楕円柱部342と、を有している。また、下側部材340は、楕円柱部342における支持部341が配置された側とは反対側の端面から外側に三日月柱状に突出した三日月柱部343を楕円の長辺方向の両側に2つ備える。これら支持部341、楕円柱部342および三日月柱部343は、第2のコネクタ360側から順に電線孔方向に並んでいる。
【0052】
支持部341は、上側部材331の後述する凸部332が嵌合される凹部341aと、上側部材331の後述する下面333を支持する支持面341bと、が形成されている。凹部341aおよび支持面341bは、楕円柱部342における楕円の長辺方向に2つ形成されている。
また、支持部341には、楕円柱部342における楕円の長辺方向の中央部に、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の通路である電線路344が形成されている。電線路344は、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の下部が載る載置面344aを有し、楕円柱部342における楕円の長辺方向への電線310の移動を規制する2つの規制壁344bにて区画されている。載置面344aの電線孔方向の形状は、図1に示すように、楕円柱部342側が電線孔方向に平行であり、第2のコネクタ360側の端部は軸方向の一方の端部方向(図1では下方向)に向かうように形成され、その間は、軸方向の他方の端部方向(図1では上方向)に凸となる山形状に形成されている。
【0053】
楕円柱部342は、基本的には楕円柱状の板状の部位であり、その支持部341側の端面から電線孔方向に支持部341側に突出し、長辺方向、言い換えれば下側部材340と上側部材331との分割方向と交差する方向に弾性変形するフック390を、楕円の長辺方向の両端部に備えている。フック390は、その外側の面が楕円柱部342の外周面に沿うように形成されている。そして、フック390は、楕円柱部342の楕円柱状の外周面から外側に突出するように電線孔方向に対して傾斜した傾斜面391と、傾斜面391の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば電線孔方向に垂直な面である垂直面392とを、電線孔方向の途中に備えている。そして、傾斜面391の始端と楕円柱部342の本体との間には、傾斜面391および垂直面392が長辺方向に弾性変形し易くなるように長孔393が形成されている。
そして、下側部材340の支持部341には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形しても干渉しないように凹んだフック用凹部345が形成されている。
【0054】
上側部材331は、下側部材340の支持部341に支持される被支持部334と、被支持部334よりも外側に配置されて第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、軸方向の一方の端部方向(図14では下方向)に向かうように案内する案内部335と、を有している。
上側部材331の被支持部334における軸方向の一方の端部側の面(図14では下側の面)である下面333には、この下面333から軸方向の一方の端部方向に突出する円柱状の凸部332が楕円柱部342における楕円の長辺方向に2つ設けられている。また、下面333の、楕円柱部342における楕円の長辺方向の中央部に、下側部材340の電線路344と協働して第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の通路を形成する電線路(不図示)が形成されている。この電線路は、上側部材331が下側部材340に取り付けられ、上側部材331の下面333と下側部材340の支持面341bとが接触した状態で、下側部材340の電線路344との間に、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が通る空間を形成するように形成されている。
【0055】
また、被支持部334には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形しても干渉しないように凹んだフック用凹部331aが形成されている。
上側部材331の凸部332が下側部材340の凹部341aに嵌合され、上側部材331の下面333と下側部材340の支持面341bとが接触した状態では、上側部材331の被支持部334および下側部材340の支持部341の外周面は、楕円柱部342の外周面と同じとなるように形成されている。
【0056】
案内部335は、被支持部334におけるグロメット320が配置された側とは反対側の端面から外側に突出し、この端面から軸方向の一方の端部方向(図14では下方向)に屈曲するとともに、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の周囲3方向を覆う。つまり、下側部材340の電線路344と協働して通路を形成するように、電線路344の載置面344aと対向する部位に壁が設けられておらず、また、軸方向の一方の端部(図14では最下端部)が開口している。
【0057】
抜け止め部材336は、ソケット330の楕円の長辺方向の両側に設けられたフック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に配置される。抜け止め部材336は、フック390が第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌り合っている状態のときにフック390の内側に配置されてフック390の弾性変形を抑制する変形抑制部材の一例である。抜け止め部材336は、電線孔方向に伸びる直方体状の基体336aと、基体336aの電線孔方向の外側の端部から電線路344の方へ向かう屈曲部336bと、を有している。
【0058】
基体336aは、軸方向の一方の端面(図14では下側の端面)から下側(下側部材340側)に突出する下側突起336cと、軸方向の他方の端面(図14では上側の端面)から上側(上側部材331側)に突出する上側突起336dと、楕円の長辺方向の電線路344側の端面から電線路344側に突出する内側突起336eと、を有している。これら下側突起336c、上側突起336dおよび内側突起336eは、それぞれ電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。
屈曲部336bは、ソケット330の楕円の長辺方向に対して傾斜した傾斜面を、その先端であって、電線孔方向の内側に有している。屈曲部336bには、屈曲部336bの軸方向の中央部には先端から凹んだ凹部336fが形成されている。
【0059】
以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット330の下側部材340の楕円柱部342の貫通孔342aに通し、下側部材340の電線路344の載置面344aに載せる。その後、上側部材331を下側部材340に取り付ける。つまり、上側部材331の凸部332が下側部材340の凹部341aに嵌合し、上側部材331の下面333を下側部材340の支持面341bに接触させる。その結果、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310は、図13に示すように、上側部材331の案内部335により下方向に案内される。つまり、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、上側部材331と下側部材340とで押圧することで、グロメット320の電線孔323の孔方向(電線孔方向)と交差する方向であり、電線孔方向とは直交する方向の下方向へ屈曲させる。また、ソケット330の内部において、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310は、下側部材340の電線路344と上側部材331の被支持部334の電線路とで、図13で上方向に凸となる山形状に屈曲させられている。なお、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤が塗布されているので、ソケット330の上側部材331を下側部材340に嵌合する際に複数の電線310に力を加えたとしても電線310がずれることが抑制される。
そして、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0060】
また、このハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、検出装置10などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット330のフック390が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット330を押し込んでいく。ソケット330を連通孔161に差し込むと、フック390の傾斜面391が第2ハウジング160における連通孔161の周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面391が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット330の三日月柱部343に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着する。そして、抜け止め部材336を、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込む。また、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0061】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子から取り外した後、抜け止め部材336を引き抜くとともに、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。抜け止め部材336には凹部336fが形成されていることから、この凹部336fに例えばマイナスドライバの先端を差し込むことで、抜け止め部材336を容易に取り外すことが可能である。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0062】
次に、回転部材21および磁石22について説明する。
図16は、回転部材21および磁石22の斜視図である。図17は、図1のXVII部の拡大図である。
回転部材21は、第1の回転軸110の外周面に沿う薄肉円筒状の第1の円筒状部211と、第1の回転軸110の軸方向を中心線方向とするとともに第1の円筒状部211の内径よりも大きな内径の薄肉円筒状の第2の円筒状部212と、第1の円筒状部211と第2の円筒状部212とを接続する接続部213とを備えている。第2の円筒状部212には、第1の回転軸110の軸方向における第2の回転軸120側の端部から軸方向に切り欠かれた切り欠き部212aが周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては3個)形成されている。
【0063】
なお、回転部材21としては、板金を絞り加工にて成形した物であることを例示することができる。また、回転部材21を、第1の回転軸110に固定する方法としては、回転部材21の第1の円筒状部211を第1の回転軸110の外周面に圧入する方法、第1の回転軸110の外周面に凹部を設けるとともに、この凹部の形状に第1の円筒状部211が沿うように塑性変形させる(かしめる)ことで固定する方法を例示することができる。
【0064】
磁石22は、基本的には円筒状の部材であり、第1の回転軸110の軸方向の一方の端面22aから軸方向に凹んだ複数(本実施の形態においては3個)の溝部221と、この一方の端面22aから軸方向に突出した複数(本実施の形態においては3個)の突起222と、を備えている。突起222は、周方向においては、溝部221が設けられていない部位に設けられ、半径方向においては、溝部221が設けられている部位と同様な位置に設けられている。図16に示すように、溝部221における周方向の端面と、突起222における周方向の端面との境界はなく、これらは一体的に形成されている。周方向における溝部221と他の溝部221との間の部位である中間部223と、この中間部223の上に設けられた突起222とが、後述するように回転部材21の切り欠き部212aに嵌め合わされることから、中間部223と突起222とを合わせて嵌合部224と称す。
【0065】
磁石22は、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。極数としては、図16に示すように、N極およびS極がそれぞれ12個ある24であることを例示することができる。なお、磁石22は、相対角度センサ30と対向する部位に、N極およびS極がそれぞれ1極ずつ着磁されたものであってもよい。
【0066】
磁石22は、溝部221に回転部材21の第2の円筒状部212が挿入された状態で接着剤23にて接着される。これにより、磁石22は、回転部材21を介して第1の回転軸110に装着され、第1の回転軸110とともに回転する。
磁石22の溝部221に回転部材21の第2の円筒状部212が挿入される際には、磁石22の嵌合部224と、回転部材21の切り欠き部212aと、が嵌め合わされる。かかる構成により、磁石22は、接着剤23が剥離することにより回転部材21にて支持されなくなったとしても回転部材21と直接接触することにより回転部材21を介して第1の回転軸110の回転力が伝達される。つまり、接着剤23が剥離することにより磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合、回転部材21が第1の回転軸110の回転とともに回転すると、回転部材21の切り欠き部212aが、磁石22の嵌合部224と直接接触することで、第1の回転軸110の回転力が磁石22に伝達される。その結果、接着剤23が剥離することにより磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合でも、磁石22は、第1の回転軸110の回転とともに回転する。
【0067】
接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合においても、第1の回転軸110の回転角度と磁石22の回転角度との間に差が生じないようにするためには、磁石22の嵌合部224の周方向の幅と回転部材21の切り欠き部212aの周方向の幅との差は零であることが望ましい。ただ、磁石22の嵌合部224と回転部材21の切り欠き部212aとを作業者の手で嵌め合わすことができるのであれば、嵌合部224の周方向の幅が回転部材21の切り欠き部212aの周方向の幅よりも大きくてもよい。
【0068】
一方、組み付け易さの観点からは、磁石22の嵌合部224の周方向の幅が回転部材21の切り欠き部212aの周方向の幅よりも小さく、嵌合部224と切り欠き部212aとの間に隙間がある方が望ましい。かかる場合、接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合には第1の回転軸110の回転角度と磁石22の回転角度との間に差が生じるため、その隙間はできる限り小さい方が望ましい。ステアリングホイールが操作されても、磁石22が第1の回転軸110の回転とともに回転せずに電動モータ190によりアシストされない程、その隙間が大きくないことが重要である。
また、磁石22の嵌合部224の周方向の幅が回転部材21の切り欠き部212aの周方向の幅よりも小さく、嵌合部224と切り欠き部212aとの間に隙間がある場合には、高温時に、磁石22の方が回転部材21よりも膨張率が大きくても、磁石22が破損してしまうことを抑制することができる。
【0069】
磁石22の嵌合部224における第1の回転軸110の軸方向の長さは、接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなったとしても、磁石22が第1の回転軸110とともに回転するのに必要な力が、回転部材21の切り欠き部212aを介して磁石22に伝達されるのに十分な長さに設定される。
接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合、図1および図17に示した本実施の形態の構成では、磁石22は、磁石22における軸方向の第2の回転軸120側の端面と対向するベース50に落下し、ベース50の上へ載る。
【0070】
図18は、接着剤23が剥離して磁石22がベース50の上に載った状態を示す図である。
磁石22がベース50の上に載った状態で、少なくとも回転部材21の切り欠き部212aの端面と磁石22の嵌合部224とが接触する位置関係となることが必要であり、磁石22が第1の回転軸110とともに回転するのに必要な力が、回転部材21の切り欠き部212aの端面と磁石22の嵌合部224との接触により磁石22に伝達されるのに十分な長さの範囲に渡って両者が軸方向に重複している必要がある。その十分な長さをLr(図18参照)とした場合に、磁石22の嵌合部224の長さLkは、磁石22における軸方向の第2の回転軸120側の端面とベース50との間の間隙Ltに、Lrを加算することにより得られる値(Lt+Lr)以上に設定するとよい(Lk≧Lt+Lr)。
【0071】
以上のように検出装置10を構成することで、接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなったとしても、第1の回転軸110の回転力が、回転部材21の切り欠き部212aを介して磁石22に伝達されるので、磁石22は第1の回転軸110とともに回転する。それゆえ、接着剤23が剥離した場合においても、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出することが可能となる。
【0072】
なお、図1および図17に示した本実施の形態の構成では、磁石22における軸方向の第2の回転軸120側の端面と対向するのはベース50のみであるが、磁石22における軸方向の第2の回転軸120側の端面と対向するのが、第2の回転軸120および/または第2の回転軸120と連動して回転する部材(ベース50も含む)である場合には、以下の通りに構成することが好適である。すなわち、接着剤23が剥離して磁石22が回転部材21にて支持されなくなった場合に、磁石22が落下して載る部位と、磁石22が回転部材21にて支持された状態での磁石22における軸方向の第2の回転軸120側の端面との間の間隙をLtとして、磁石22の嵌合部224の長さLkは、第1の回転軸110の回転力を磁石22に伝達するのに十分な嵌合部224と切り欠き部212aとの接触長さLrにLtを加算して得られた長さ以上、つまりLk≧Lt+Lrを満足する長さに設定するとよい。
【0073】
なお、上述した実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100においては、電線310を保持するグロメット320の移動を抑制する部材としてソケット330を用いたハーネスコンプ300を備えているが、かかる態様に限定されない。例えば、グロメット320の移動を抑制する部材として、ハウジング140の外部に配置されるとともにこのハウジング140にネジ止されて、連通孔161の外側連通孔161bを覆う板金にて成形されたプレートを用いてもよい。かかる場合には、電線310を狭持する平板状の部位と、プレートに形成された貫通孔に差し込まれるフックとを有するクリップを、フックを介してプレートに装着するとともに、平板状の部位にて電線310を締め付けた状態で保持するとよい。これにより、ハウジング140の外側で電線310に外力が加わったとしても、グロメット320が電線310を保持している部位に力が伝わり難くすることができる。
【符号の説明】
【0074】
10…検出装置、21…回転部材、22…磁石、23…接着剤、30…相対角度センサ、40…プリント基板、50…ベース、60…フラットケーブルカバー、70…フラットケーブル、100…電動パワーステアリング装置、110…第1の回転軸、120…第2の回転軸、130…トーションバー、140…ハウジング、180…ウォームホイール、190…電動モータ、200…電子制御ユニット(ECU)、210…相対角度演算部、300…ハーネスコンプ
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