(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を、図面に基づき説明する。
図1は、作業機の作動システムの全体図を示している。
作業機の作動システム1は、作業機2を管理する管理サーバ3と、作業機2及び管理サーバ3と無線通信可能な携帯端末4と、作業機2に設けられた制御装置5とを備えている。
【0011】
作業機の作動システム1は、作業機2を使用するユーザ等がユーザ登録を行った際に管理サーバ3からネットワークを介して携帯用IDコードを携帯端末4に送信し、この携帯端末4に送信された携帯用IDコードを用いて、作業機2の作動を許可したり、作業機2の作動を不許可にするものである。
携帯端末4は、持ち運びが容易で無線通信が可能なPDA(Personal Data Assistance)、タブレットPC(TablePC)等であって、電話機能を有するスマートフォン(smartphone)や携帯電話を含むものである。
【0012】
携帯端末4は、管理サーバ3から送信された携帯用IDコード等を保存するためのデータ記憶手段7と、このデータ記憶手段7に記憶された携帯用IDコードを作業機2に送信するデータ送信手段8とを備えている。データ記憶手段7は不揮発性メモリ等から構成され、データ送信手段8はプログラム等から構成されている。
次に、トラクタを例にとり作業機について詳しく説明する。
【0013】
図9に示すように、トラクタ2は、前後に車輪を有する走行車体10に、エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)11、変速装置12、制御装置5等が搭載されて構成されている。この走行車体10の後部には、3点リンク機構14が昇降可能に設けられている。この3点リンク機構14には、各種の作業装置(図例は耕耘装置)15が着脱自在となっている。この作業装置15には、PTO軸を介してエンジン11からの動力が伝達されるようになっている。また、エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン16が設けられており、キャビン16内に運転席17が設けられている。運転席17の周囲にはトラクタ2の様々な情報を表示するための表示装置18が設けられている。この表示装置18は、携帯端末4とは異なり、トラクタ2の運転席17の周囲に固定されていてオペレータが運転席17に座ると、運転席17から表示装置18に表示された内容を視認できる。このようなトラクタ2は、走行や作業装置15による作業が行えるようになっている。
【0014】
図2に示すように、制御装置5は、トラクタ2において走行系の制御や作業系の制御を行うものであって、CPU等から構成されている。トラクタ2において走行系の制御や作業系の制御は、複数(例えば、2つ)の制御装置5A、5Bによって行うものとなっている。なお、この実施形態では、複数の制御装置5A、5Bによってトラクタ2の制御を行うものとなっているが、制御装置5は1台でも複数台でもよい。
【0015】
第1制御装置5Aはトラクタ2の全体を制御するものであって、CAN(Controller Area Network)、やフレックスレイ(FlexRay)等の車載用通信ネットワークによって、他
の制御装置5B、即ち、第2制御装置5Bと相互通信が行えるようになっている。また、第1制御装置5Aは、持ち運びが容易で無線通信が可能なPDA(Personal Data Assistance)等の携帯端末4と無線通信するための通信部(送受信部)30が設けられ、この通信部によって携帯端末4と無線通信が可能となっている。
【0016】
さらに、第1制御装置5Aには、アクセルペダルを操作したときのアクセルペダルの操作量、変速用のシフトレバーを操作したときのシフトレバー位置などが入力されるようになっている。この第1制御装置5Aは、アクセルペダルの操作量に基づいてエンジン11が所定の回転数になるように第2制御装置5Bに制御指令を出力すると共に、シフトレバー位置に基づいて変速装置12を制御(変速制御)することができるようになっている。
【0017】
その他、第1制御装置5Aには、エンジン回転上限値、アクセルレバー量、エンジン回転数などが入力されるようになっている。エンジン回転上限値は、運転席17の近傍に設けられたボリュームにより設定できるようになっており、アクセルレバー量は運転席17の近傍に設けられたアクセルレバーにより設定できるようになっている。
エンジン回転上限値が入力されている場合、第1制御装置5Aは、エンジン11の回転数がエンジン回転上限値を超えないように第2制御装置5Bに制御指令を出力する。また、アクセルレバー量が入力されている場合、第1制御装置5Aは、アクセルペダルの操作量がアクセルレバー量以上となれば、アクセルペダルの操作量に応じた制御指令を第2制御装置5Bに出力するものの、アクセルペダルの操作量がアクセルレバー量未満であるときにはアクセルペダルの操作量に応じた制御指令を行わず、アクセルペダルの操作量に応じたエンジン11の回転数の制御は行わないようになっている。
【0018】
第1制御装置5Aは、エンジン回転数、変速段、油温など、トラクタ2の様々な情報を表示する表示装置18を制御すると共に操作部材からの入力に基づいて3点リンク機構14の昇降を制御する(3P昇降制御)。
第2制御装置5B(エンジンコンピュータユニット)は、主にエンジン11を制御するものであって、第1制御装置5Aを介して出力されたアクセルペダルの操作量、クランク位置、カム位置等の入力に基づいて、インジェクタ27、コモンレール28、サプライポンプ29等を制御するものである。なお、第2制御装置5Bにおけるエンジン制御は、一般的なディーゼルエンジン制御と同じものであり、例えば、インジェクタ27の制御では燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が設定され、サプライポンプ29やコモンレール28の制御では燃料噴射圧が設定される。
【0019】
第1制御装置5A、第2制御装置5Bによって、トラクタ2の走行系及び作業系の制御を行うことができる。なお、トラクタ2の走行系及び作業系の制御は、上述したものに限定されない。
このようなトラクタ2では、携帯端末4から送信された携帯用IDコードと、予め記憶された作業機用IDコードとの照合が成立したときに制御装置5による制御を許可して当該トラクタ2が作動するようにし、一方で、照合が不成立のときには制御を許可せずトラクタ2の作動を制限することとしている。IDコードの照合は、第1制御装置5Aや第2制御装置5Bによって行う。
【0020】
以下、
図2を参照しながら第1制御装置5Aを例にとり説明する。
第1制御装置5Aは、IDコード取得手段40と、IDコード照合手段41と、制御制限手段42とを備えている。IDコード取得手段40、IDコード照合手段41及び制御制限手段42は、第1制御装置5に格納されたプログラム等から構成されている。
IDコード取得手段40は、携帯用IDコードを携帯端末4から無線通信により取得するものである。IDコード照合手段41は、携帯端末4から送信された携帯用IDコードと、トラクタ2側に保存された作業機用IDコードとの照合を行うものである。
【0021】
作業機用IDコードは、トラクタ2(作業機)毎に割り当てられたトラクタの固有のもので、例えば、第1制御装置5Aの記憶部43に記憶(保存)されたものである。この記憶部43は、例えば、不揮発性メモリで構成されている。この作業機用IDコードは、トラクタ2を製造する製造会社によってトラクタ2の製造時に予め記憶部43に書き込まれている。
【0022】
携帯用IDコードは、携帯端末4の記憶部(データ記憶手段7)に記憶されたもので、例えば、管理サーバ3(IDコード送信手段51)から送信されて記憶部7に書き込まれるものである。
例えば、トラクタ2のエンジン11の始動時などに、第1制御装置5A等に電源が投入され、送受信部30と外部との通信(無線通信)が可能になると、IDコード取得手段40が起動して、携帯端末4からの携帯用IDコードの送信を待つ。このような状態において、携帯端末4を操作することによって携帯端末4を、携帯用IDコードを送信するIDコード送信モードとし、携帯端末4から携帯用IDコードの送信を行うと、IDコード取得手段40は、携帯端末4から送信された携帯用IDコードを取得する。
【0023】
次に、IDコード照合手段41は、IDコード取得手段40によって携帯用IDコードを取得後に、第1制御装置5Aの記憶部43に保存された作業機用IDコードを呼び出して、呼び出した作業機用IDコードと取得した携帯用IDコードとの照合を行う。
例えば、携帯用IDコードが「M13510006」であり、作業機用IDコードも「M13510006」であるとすると、IDコード照合手段41は、携帯用IDコードと作業機用IDコードとが一致しているため、IDコードの照合が成立したと判断する。携帯用IDコードと作業機用IDコードとが一致しない場合は、IDコード照合手段41はIDコードの照合は不成立と判断する。
【0024】
制御制限手段42は、IDコードの照合が成立した場合には、制御装置5による制御を許可し、制御の制限をせずに通常行う制御(通常制御)を行う。
具体的には、制御制限手段42は、IDコードの照合が成立後、全ての制御装置5に対して制御を許可する許可信号を送信し、各制御装置5は、例えば、エンジン11、変速装置12、3点リンク機構16などの駆動部に対する通常の制御をトラクタ2の操作に応じて行う。
【0025】
一方、制御制限手段42は、IDコードの照合が不成立の場合には、制御装置5による制御を許可せず(制御不許可ということがある)、制御に対して制限を加える。具体的には、制御制限手段42は、IDコードの照合が不成立になると、一部又は全ての制御装置5に対して通常制御を許可しない不許可信号を送信する(制御不許可を示す信号を送信する)。不許可信号を受信した制御装置5は、一部又は全部の制御を、停止したり制限をする。
【0026】
例えば、第1制御装置5Aを介して第2制御装置5Bにアクセルペダルの操作量が入力されても、不許可信号を受信した第2制御装置5Bは、アクセルペダルの操作量を零(操作していない)とする。つまり、制御制限手段42によって制御不許可になると、第2制御装置5Bはアクセルペダルに対応した通常制御を行わず、エンジンの動作に制限が掛かりトラクタ2が走行できないようになる。なお、当然の如く、各制御装置5による動作部の通常制御の停止や制限は、上述したものに限定されない。
【0027】
例えば、第1制御装置5Aは、シフトレバー位置に基づいて変速装置(動作部)を制御するようになっているが、当該第1制御装置5Aは、制御不許可となったときにシフトレバー位置に基づく変速装置12の通常制御を行わないようにしたり、3点リンク機構(動作部)16の通常制御を行わないようにしてもよい。通常制御の停止や制限を行うにあたっては、特に、エンジンに対する制御の一部又は全部を停止して、トラクタ2が走行できないようにするのが好ましい。
【0028】
以上のようなトラクタ2においては、例えば、トラクタ2のエンジンを始動させる際に、携帯端末4からトラクタ2に携帯用IDコードをトラクタ2に送信し、IDコードの照合を行い、照合が成立すれば、トラクタ2を動かすことができる。ここで、IDコードの照合が成立しない場合は、トラクタ2のエンジンの動作等を規制することができる。
次に、作業機の作動システム1について、上述したトラクタ2の動作と共に詳しく説明する。
【0029】
作業機の作動システム1では、上述した携帯用IDコードを取得するためにユーザ登録を必要としたうえで、ユーザ登録の完了後に管理サーバ3から所望の携帯端末4にIDコードを送信するようにしたものである。ここで、ユーザ登録とは、トラクタ2を使用する
ユーザやトラクタ2を購入したユーザの情報を、管理サーバ3に登録(保存)することである。
【0030】
管理サーバ3は、トラクタ2を製造する製造メーカ、トラクタ2の販売を行う販売会社、トラクタ2のレンタルを行うレンタル会社、トラクタ2の代金をユーザの代わりに支払う金融会社などに設置されている。即ち、管理サーバ3は、ユーザ登録が必要な会社に設置されている。
図1に示すように、この実施形態では、管理サーバ3は、製造メーカに設置されたとして詳しく説明する。
【0031】
管理サーバ3は、ユーザ登録に関する様々な情報が保存されたユーザ情報記憶手段50と、ユーザ登録が完了後に携帯用IDコードを携帯端末4に送信するIDコード送信手段51とを備えている。ユーザ情報記憶手段50はデータベース等から構成され、IDコード送信手段51は管理サーバ3に格納されたプログラム等から構成されている。
データベース50には、主に、トラクタ2に関する情報(トラクタ情報)とユーザに関する情報(ユーザ情報)が関連付けられて保存されている。
図3に示すように、データベース50には、トラクタ情報として、トラクタ2を特定するための作業機用IDコードとが保存されている。また、データベース50には、ユーザ情報として、携帯用IDコードと、ユーザの氏名、住所、携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号)などが保存されている。ユーザ登録によって、トラクタ情報とユーザ情報とが関連付けられるようになっている。
【0032】
ユーザ登録を行うには、トラクタ2を購入後にユーザが携帯端末4を用いて、管理サーバ3にアクセスする。製造会社の管理サーバ3側では、予め登録用フォーマットRを用意しておき、この登録用フォーマットRに必要な情報を入力できるように、携帯端末4の表示画面に登録用フォーマットRを表示させる。
具体的には、
図4に示すように、登録用フォーマットRに、ユーザが購入したトラクタ2の購入日、トラクタ2の型番、トラクタ2の作業機用IDコード、ユーザの氏名、住所、携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号を入力できるようにしておく。なお、トラクタ2の作業機用IDコードは、トラクタ2を購入後、即ち、トラクタ2の代金が支払われた時に製造メーカから通知することが好ましく、例えば、作業機用IDコードは、購入したトラクタ2の取り扱い説明書、保証書、ユーザ登録案内書に記入しておくことが好ましい。
【0033】
これらの情報を登録用フォーマットRに入力して登録が完了すると、管理サーバ3には、トラクタ2の購入日、トラクタ2の型番、トラクタ2の作業機用IDコード、ユーザの氏名、住所、携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号などが関連付けられて保存される。
また、管理サーバ3は、IDコード送信手段51によって、ユーザ登録完了後、作業機用IDコードに関連付けされた携帯端末4に携帯用IDコードを送信する。
【0034】
図5(a)に示すように、ユーザAさんが、作業機用IDコードが「M13510006」であるトラクタ2を製造メーカから購入した後、管理サーバ3にアクセスして、ユーザ登録を行ったとする。そうすると、
図5(b)に示すように、管理サーバ3のIDコード送信手段51は、ユーザAさんがユーザ登録にて登録した携帯端末4に対し、作業機用IDコードと同じIDコード(「M13510006」)を送信する。
図5(c)に示すように、携帯端末4は、管理サーバ3から送信されたIDコード(「M13510006」)を受信すると、このIDコードを携帯用IDコードとして取得し、取得した携帯用IDコードを記憶部(データ記憶手段7)に保存する。管理サーバ3からの携帯用IDコードの取得は、外部との通信を監視して自己に保存する携帯用IDコードが送られて来たときに自動的に行ってもよい。或いは、携帯端末4に予めIDコード取得モードを具備させておき、携帯端末4を操作することによってIDコード取得モードにして、携帯端末4をIDコード取得モードとしたときのみ、携帯用IDコードを取得してもよい。
【0035】
なお、携帯端末4は、ユーザ登録にて入力された携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号により特定することができる。ユーザ登録において、管理サーバ3には、
携帯端末4を特定する情報を保存する必要があるが、携帯端末4を特定する情報であれば、携帯端末4のメールアドレス、電話番号に限定されず、どのような情報であってもよい。
【0036】
本発明によれば、管理サーバ3に対してユーザ登録を行わなければ、携帯用IDコードを取得することができないため、作業機2を使用するユーザ以外の第三者は作業機2を作動させるためのIDコードの取得が難しくなり、作業機2を簡単に作動させることが難しくなる。例えば、上述したように製造会社から作業機2を購入後、携帯端末4等を用いて製造会社等の管理サーバ3にアクセスを行い、ユーザ登録を確実に行った後でなければ、作業機2を動かすことが不可能となるため、作業機2を購入する前に作業機2を作動させることは非常に難しく、販売前(購入前)による作業機2の盗難防止を確実に行うことができる。
【0037】
上述した実施形態では、製造会社の管理サーバ3にユーザ登録を行う例を示したが、作業機2のレンタルを行うレンタル会社の管理サーバ3にユーザ登録を行うようにしてもよい。
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、携帯用IDコードと作業機用IDコードとの照合が成立すれば、いつでも通常制御の許可がなされるようになっていたが、この第2実施形態では、制御(通常動作)の許可を行う作動許可時間を定めておき、IDコードの成立が作動許可時間内であれば、制御の許可を行うようにしている。作動許可時間が定められた場合について詳しく説明する。
【0038】
IDコード取得手段40は、携帯端末4から携帯用IDコードが送信されたときに作動許可時間も取得する。この作動許可時間は、管理サーバ3から送信されたものであって、特定のトラクタ2毎に定められたものである。
図6に示すように、第1制御装置5Aは、取得した作動許可時間が自己の作業機2(トラクタ2)のものであるとき、取得した作動許可時間を記憶部43に保存する。携帯端末4から取得した作動許可時間が別のトラクタ2のものであるときや既に作動許可時間を取得していて新たに作動許可時間を取得する必要がないときは、第1制御装置5Aは、作動許可時間を保存しない。なお、作動許可時間は、残り時間として表される場合と、期限や期限として設定される場合がある。
【0039】
ここで、作動許可時間が残り時間とされている場合は、第1制御装置5Aは、自己のトラクタ2に対応する作動許可時間を取得後は、エンジン11、変速装置12、3点リンク機構16などの駆動部が駆動する毎に、作動許可時間を減少させて、記憶部43に保存した作動許可時間の更新を行う。
例えば、最初に取得したときの作動許可時間が100時間であって、エンジン11を30時間作動させたときは、更新後の作動許可時間(残り作動許可時間)は70時間となる。
【0040】
制御制限手段42は、第1制御装置5Aに保存された作動許可時間(残り作動許可時間)が0時間になっていないとき(作動許可時間内であるとき)、IDコードの照合が成立すると、許可信号を出力して、各制御装置5による通常制御を行えるようにする。一方、制御制限手段42は、第1制御装置5Aに保存された作動許可時間(残り作動許可時間)が0時間であるとき(作動許可時間外)であるとき、IDコードの照合が成立したとしても、許可信号は出力せず、各制御装置5による通常制御を行えないようにする。
【0041】
また、作動許可時間が期限とされている場合は、自己のトラクタ2に対応する作動許可時間(期限)を取得後、作動許可時間(期限)が到来するまで制御制限手段42は、IDコードの照合成立による通常制御の許可を行う。また、作動許可時間が期間とされている場合は、期間が終了するまで制御制限手段42は、IDコードの照合成立による通常制御の許可を行う。
【0042】
例えば、作動許可時間が「2011年6月30日」までの期限とされている場合は、制御制限手段42は、「2011年6月30日」までIDコードの照合成立による通常制御の許可を行い、作動許可時間が「2011年6月1日〜7月7日」の間の期間とされてい
る場合は、期間の末日である「2011年7月7日」までIDコードの照合成立による通常制御の許可を行う。
【0043】
作動許可時間を用いてトラクタ2の作動を制限する場合は、管理サーバ3を、レンタル会社や金融会社などに設置することが好ましい。
レンタル会社に管理サーバ3を設置した場合、ユーザはレンタル会社の管理サーバ3にユーザ登録をすることになる。
図7に示すように、ユーザは、まず、携帯端末4を用いてレンタル会社の管理サーバ3にアクセスを行い、登録用フォーマットRに、レンタルの期間(レンタル期間)、トラクタ2の型番、トラクタ2を貸し出す店舗(貸出店舗)などトラクタ情報を入力する。また、ユーザは、ユーザの氏名、住所、携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号などのユーザ情報を入力する。
【0044】
トラクタ情報と、ユーザ情報との入力が終了すると、レンタル会社の管理サーバ3は、ユーザ登録時に入力された登録用フォーマットRの情報と、管理サーバ3に保存されているトラクタ2の情報とから、貸出可能なトラクタ2のレンタル情報(トラクタ2の型番、貸し出す作業機用IDコード、レンタル期間、貸出店舗等)を抽出する。即ち、管理サーバ3は、登録用フォーマットRに入力された条件を満たすトラクタ2が存在するか否かを検索し、登録用フォーマットRの条件にあうトラクタ2が存在したとすると、ユーザの携帯端末4等に対して、作業機用IDコードを除くレンタル情報(トラクタ2の型番、レンタル期間、貸出店舗等)を通知する。
【0045】
管理サーバ3から携帯端末4に通知されたレンタル情報をユーザが確認し、レンタルの承諾が携帯端末4を介して管理サーバ3に送信されると、ユーザとレンタル会社でのレンタル契約が成立する。レンタル契約が成立すると、管理サーバ3のIDコード送信手段51は、レンタル契約をしたトラクタ2に対応する作業機用IDコード(貸し出す作業機用IDコード)を携帯用IDコードとして、ユーザの携帯端末4に送信する。また、IDコード送信手段51は、携帯用IDコードと共にレンタル期間を作動許可時間として送信する。
【0046】
携帯端末4のデータ記憶手段7は、レンタル管理サーバ3のIDコード送信手段51から送信された作業機用IDコード(携帯用IDコード)と作動許可時間とを関連付けて保存する。
例えば、作業機用IDコードが「M13510006」であり、レンタル期間が「2011年6月1日〜7月7日」であるトラクタ2をレンタルした場合、携帯端末4のデータ記憶手段7は、「M13510006」を携帯用IDコードとして保存すると共に、「2011年6月1日〜7月7日」を作動許可時間として保存する。携帯端末4のデータ送信手段8は、トラクタ2を始動する際、第1制御装置5Aに対して、携帯用IDコードとして「M13510006」を送信すると共に、作動許可時間として「2011年6月1日〜7月7日」を送信する。
【0047】
この実施形態によれば、例えば、2011年6月1日〜7月7日の期間内に、IDコードの照合が成立すれば、レンタル中のトラクタ2を作動させることができる。レンタルの期間が過ぎたりIDコードの照合が成立しなければ、トラクタ2の作動を確実に制限することができる。
[第3実施形態]
第2実施形態では、レンタル会社を例に取り説明したが、この第3実施形態では、ユーザに代わって一括してトラクタ2の購入代金を販売者に支払う金融会社を例にとり説明する。
【0048】
製造会社への金融会社による購入代金の一括払いに先立ち、
図8に示すように、ユーザが金融会社に対して分割払いを行うための支払い計画表が作成されることになる。この支払い計画表では、ユーザが金融会社に対して分割支払いを行う回数、支払い期限、支払い金額などの代金支払い情報が示されている。金融会社においては、ユーザ登録が行われる。
【0049】
例えば、金融会社、即ち、金融会社の管理サーバ3において、登録用フォーマットRには、ユーザがトラクタ2を購入したトラクタ2の購入日、トラクタ2の型番、トラクタ2
の作業機用IDコード、ユーザの氏名、住所、携帯端末4のメールアドレス、携帯端末4の電話番号に加え、支払い計画表で示した支払い情報が入力され、ユーザ登録が完了する。
【0050】
最初にユーザ登録が完了すると、金融会社の管理サーバ3のIDコード送信手段51は、1回目の支払い期限を作動許可時間として携帯端末4に送信すると共に、作業機用IDコードを携帯用IDコードとして送信する。携帯端末4は、上述したように携帯用IDコード及び作動許可時間を受信すると、携帯用IDコード及び作動許可時間を記憶部に記憶する。
【0051】
金融会社の管理サーバ3は、ユーザが支払い期限までに所定の代金を支払うと、再度ユーザ登録を行ったとみなし(実際には行われない)、作業機用IDコードを携帯用IDコードとして送信すると共に、新しい支払い期限を作動許可時間として携帯端末4に送信する。携帯端末4は新しい作動許可時間を受信すると、既に保存されている作動許可時間を更新する。
【0052】
この実施形態によれば、ユーザが支払いを繰り返し行っている期間中は、IDコードの照合が成立すれば、支払い続けているトラクタ2を作動させることができる。支払いが滞って支払い期間が過ぎたりIDコードの照合が成立しなければ、トラクタ2の作動を確実に制限することができる。なお、最後の支払いが完了したときには、金融会社の管理サーバ3は、作動許可時間を非常な大きな値(例えば、数百年以上)にすることによって、支払いに関係なくトラクタ2を長期間にわたって使用できるようにすることが好ましい。
【0053】
以上、本発明によれば、作業機を製造する製造会社、作業機をレンタルするレンタル会社、作業機の代金をユーザに代わって一括払いなどをする金融会社のいずれにおいても、ユーザ登録して、作業機を作動させるIDコードを取得しなければ、作業機を作動させることができないため、ユーザ以外の第三者による作業機の作動を防止することができる。特に、作業機を作動させるIDコードは、ユーザが所有する携帯端末に送られるため、第三者がIDコードを用いて作業機を作動させることを防止することができる。
【0054】
さらに、作業機を作動させる作動許可時間も付与している場合には、ユーザであっても許された時間だけ、作業機を作動させることができる。この場合、特に、レンタル会社がユーザに作業機をレンタルしたり、金融会社が作業機の代金の支払いをユーザに代わって支払っている状況下では、ユーザに対しても作動の条件を加えることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態では、トラクタを例にとり説明したが、作業機は、バックホー、コンバイン、移植機等であってもよい。IDコード照合手段41によるIDコードの照合を行うタイミングは、作業機2を使用する際、例えば、エンジン11の始動をするときに行うことが好ましいが、IDコードの照合は、ユーザ等が作業機2を使用するときに行えばよく、タイミングはエンジン11の始動時に限定されない。