(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809571
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】グロメット及び車両用ドアの止水構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20151022BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20151022BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
H01B17/58 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-12769(P2012-12769)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-153584(P2013-153584A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
(72)【発明者】
【氏名】義村 克也
(72)【発明者】
【氏名】角田 充規
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 英雄
(72)【発明者】
【氏名】畑中 洋一
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−73349(JP,A)
【文献】
実開昭61−113530(JP,U)
【文献】
特開2000−247152(JP,A)
【文献】
特開2011−61930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアパネルに装着されるグロメットであって、
弾性体のアウターと、
前記アウターに内装される樹脂製のインナーと、
前記インナーと一体に形成され、装着される前記車両用ドアパネルと反対側に前記アウターから突出し、前記アウターの外縁の位置まで延出するクランプ部と、
前記クランプ部に設けられ、前記アウターの前記外縁に沿って配置される押圧部と、
を有することを特徴とするグロメット。
【請求項2】
車両用ドアパネルに装着されたグロメットと、前記グロメットをまたいで前記車両用ドアパネルに装着されるウェザーストリップとを有する止水構造であって、
前記グロメットは、
弾性体のアウターと、
前記アウターに内装される樹脂製のインナーと、
前記インナーと一体に形成され、装着される前記車両用ドアパネルと反対側に前記アウターから突出し、前記アウターの外縁の位置まで延出するとともに、ウェザーストリップに挿入されるクランプ部と、
前記クランプ部に設けられ、前記アウターの前記外縁に沿って配置され、ウェザーストリップの内部に挿入されたときに前記ウェザーストリップを前記車両用ドアパネルに押しつける押圧部と、
を有することを特徴とする車両用ドアの止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット及び車両用ドアにグロメットが装着された止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のドアに配索されるドアハーネスの止水(防水)構造については、車体とヒンジ結合されるドアフレームの端面(側板)に貫通孔やグロメット用の凹部が設けられ、ドアハーネスに取り付けたグロメットを貫通孔に装着してドアから車体へとドアハーネスが配索されている。そして、防水構造の向上及び作業性向上のため各種の技術が提案されている。
【0003】
例えば、
図2(a)の断面構造に示すように、グロメット110(グロメットベース部120)の上を跨いでウェザーストリップ190を装着する自動車ドアに関して、ドアフレーム(ドアパネル)150とグロメット110との境界に段差部分ができ、比較的大きな隙間S1が発生することがある。この対策のために、
図1のグロメット装着構造101及び
図2(b)の断面構造に示すように、ウェザーストリップ190の下側のグロメット110の厚さを簿肉化した箔肉部(簿肉リップ)128を設ける構造が採用されていた。箔肉部128の肉厚tとして、例えば、t=0.3mm程度まで薄くする必要があった。
【0004】
しかしながら、簿肉化された簿肉部128は、強度が非常に低く、グロメット110の輸送時に他の部品や電線と接触し亀裂等が発生する懸念があった。その対策のため、製品の損傷防止等の観点から保護カバーを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、グロメット周囲を取り囲む形状の保護カバーを取り付けることで、簿肉部の損傷を防止していた。
【0005】
また、ウェザーストリップを装着した際に生じる隙間をシール材で埋めるようにした技術や(例えば、特許文献2参照。)、ウェザーストリップをグロメットの配置用凹部に沿って装着し、その上からウェザーストリップを押しつぶすようにしてグロメットを配置用凹部に装着する技術もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−168130号公報
【特許文献2】特開2002−154334号公報
【特許文献3】特開2002−178853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、保護カバーを用いると、グロメット取り付け後には、保護カバーが不要となり、保護カバーを廃止可能な技術が求められていた。また、
図2のように、簿肉部128が0.3mm程度まで薄くなると、グロメット成型時に発生するバリの厚さと簿肉部128の厚さが同程度になり、バリ取り作業に相当な慎重さが求められていた。このため、作業効率を向上させることが難しく、改善が求められていた。シール材の充填についても、シール材の取り扱いや充填作業の効率の観点から別の技術が用いられていた。
【0008】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、車両用ドアパネルに装着されるグロメットであって、弾性体のアウターと、前記アウターに内装される樹脂製のインナーと、前記インナーと一体に形成され、装着される前記車両用ドアパネルと反対側に前記アウターから突出し、前記アウターの外縁の位置まで延出するクランプ部と、前記クランプ部に設けられ、前記アウターの前記外縁に沿って配置される押圧部とを有する。
本発明の別の態様は、車両用ドアパネルに装着されたグロメットと、前記グロメットを跨いで前記車両用ドアパネルに装着されるウェザーストリップとを有する止水構造であって、前記グロメットは、弾性体のアウターと、前記アウターに内装される樹脂製のインナーと、前記インナーと一体に形成され、装着される前記車両用ドアパネルと反対側に前記アウターから突出し、前記アウターの外縁の位置まで延出するとともに、ウェザーストリップに挿入されるクランプ部と、前記クランプ部に設けられ、前記アウターの前記外縁に沿って配置され、ウェザーストリップの内部に挿入されたときに前記ウェザーストリップを前記車両用ドアパネルに押しつける押圧部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グロメットをドアパネルに装着した際に、グロメット、ウェザーストリップ及びドアパネルの間に生じる隙間の発生を防止しつつ、グロメットの外縁部分を簿肉不要とする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来技術に係る、車両用ドアへのグロメット装着構造を模式的に示した斜視図である。
【
図2】従来技術に係る、グロメットが装着された部分の断面構造を模式的に示した図である。
【
図3】実施形態に係る、車両用ドアへのグロメット装着構造を模式的に示した斜視図である。
【
図4】実施形態に係る、グロメットが装着された部分の断面構造を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図3は本実施形態に係る車両用ドアへのグロメット装着構造1を模式的に示した斜視図であり、ウェザーストリップ90は破線で示している。また、
図4はグロメット10がグロメット用凹部52に装着された部分の断面図(
図3のA−A断面)を模式的に示した図である。
【0014】
図示のように、本実施形態のグロメット装着構造1では、ドアパネル50の側板部分A2にグロメット10が装着されている。具体的には、ドアパネル50の側板部分A2にグロメット用凹部52が形成されており、そのグロメット用凹部52に非貫通タイプのグロメット10が挿入され固定されている。
【0015】
グロメット10は、ワイヤーハーネスをドアパネル表面部から車体側へ導出する機能を有し、グロメットベース部20と、ジャバラ部40とを備えて構成されている。このグロメット10は、内板部分A1と側板部分A2に亘って形成されるグロメット用凹部52に装着される非貫通タイプである。
【0016】
ジャバラ部40はグロメットベース部20の外面部22に取り付けられた蛇腹状の筒状体であって、グロメットベース部20に設けられた貫通孔に連通している。ワイヤーハーネスがジャバラ部40を介してドアパネル表面部から車体側へと導出する。
【0017】
また、グロメットベース部20の外観形状は、略矩形形状(台形を倒した形状)となっており、図示左側の上下のコーナーはラウンドしている。図示の右側側面部分29は、ちょうど車両パネルの内板部分A1に勘合して略同一平面になるように形成されている。
【0018】
さらに、グロメットベース部20の内面部24には、止水リップ23が内板部分A1側を除く三方の外縁に沿って形成されている。
【0019】
グロメットベース部20は、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)等の弾性体からなるアウター26と、アウター26に内装された樹脂等のインナー60とを備えている。アウター26の外縁部分であってウェザーストリップ90が跨いで装着される領域であるリップ部28は、グロメット10がグロメット用凹部52に装着されるときに、ドアパネル50の凹状になっていない側板部分A2に当接して配置される。また、後述するウェザーストリップ・クランプ部70が設けられることで、リップ部28の厚さは、0.8mmとなっており、従来と比較して肉厚になっている。その結果、グロメット10の輸送時等において保護カバーが不要となったり、アウター26のバリ取り作業が簡素化できたりする。
【0020】
さらに、グロメットベース部20は、インナー60と一体に成形されアウター26の外側に延出するボディー・クランプ部64とウェザーストリップ・クランプ部70とを備えている。
【0021】
ボディー・クランプ部64は、インナー60から延出して形成されており、アウター26の内面部24から、つまりグロメットベース部20の裏側から垂直に突出している。ボディー・クランプ部64は、グロメット10がグロメット用凹部52に装着・固定されるときに、グロメット用凹部52に形成された所定の係止用孔に挿入され装着される。
【0022】
ウェザーストリップ・クランプ部70は、インナー60から外面部22側にアウター26を突出して形成されている。このウェザーストリップ・クランプ部70は、ウェザーストリップ90の内面からドアパネル50に押し当てて、
図2(a)に示したような三角の隙間S1を押し潰すことで、そのような隙間発生を実質的に排除する。
【0023】
具体的には、ウェザーストリップ・クランプ部70は、垂直延出部72と、水平延出部74と、押圧部76とを備えている。
【0024】
垂直延出部72は、柱状でボディー・クランプ部64の延出位置と反対側から所定長だけ延出して、外面部22(アウター26)から垂直に突出している。
【0025】
水平延出部74は、垂直延出部72の延出方向端部(
図4では左側端部)で垂直上方向に折れ曲がって外面部22と略平行に形成されている。つまり、グロメットベース部20の外縁(リップ部28)に向かって延びて形成されており、外面部22と水平延出部74の間に、上下方向に延びて配置されるウェザーストリップ90の底面部92が挟まれる。
【0026】
押圧部76は、水平延出部74の延出方向端部(
図4では上側端部)に一体になって、リップ部28の縁の上側に沿って形成されている。より具体的には、上下方向に延びる水平延出部74の端部に、略左右方向に伸びる角柱体の押圧部76が、断面視でドアパネル50側に凸状に形成さている。押圧部76とドアパネル50(側板部分A2)との距離は、ウェザーストリップ90の底面部92の厚さと同程度または若干短く設定されている。また、水平延出部74の長さは、ウェザーストリップ90の内部96への挿入作業の効率と、ウェザーストリップ90を押しつける保持する力とのバランスを考慮して設定される。
【0027】
図3では、リップ部28が若干斜めに形成されていることから、押圧部76のその形状の合わせて若干斜めに形成されている。押圧部76の左右方向の長さは、ウェザーストリップ90の内部96に収まるように設定されている。
【0028】
ウェザーストリップ90の底面部92には、O形状等の切り欠き部94が形成され、ウェザーストリップ・クランプ部70をウェザーストリップ90の内部96に挿入可能になっている。なお、ウェザーストリップ・クランプ部70をウェザーストリップ90の内部96に挿入するための切り欠き等の形状は、ウェザーストリップ・クランプ部70の形状及び挿入作業等を考慮して適宜設定される。
【0029】
そして、ウェザーストリップ90がグロメット10を跨いで装着されるときに、ウェザーストリップ・クランプ部70がウェザーストリップ90の内部96に挿入される。そして、押圧部76は、ドアパネル50(側板部分A2)との間に挟まるウェザーストリップ90の底面部92をドアパネル50に押しつける。このとき、上述のように、押圧部76とドアパネル50(側板部分A2)の距離は、底面部92の厚さと同程度に設定されており、かつ、リップ部28の外縁部分の図示の上下方向の位置が、押圧部76の下側端部の位置になっているため、隙間は実質的に発生しない。つまり、押圧部76によって、三角隙間が生じそうな空間(
図4の領域C)が押し潰されている。
【0030】
以上、本実施形態では、ウェザーストリップ・クランプ部70を設けることで、グロメットベース部20の外縁部分(リップ部28)を肉厚にすることができ、保護カバーなしであっても輸送等における亀裂等の損傷を防止することができる。また、リップ部28に対してバリ厚みが相対的に薄くなることから、バリ取りの作業を簡素化、効率化することができる。
【0031】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0032】
1 グロメット装着構造
10 グロメット
20 グロメットベース部
22 外面部
24 内面部
26 アウター
28 リップ部
40 ジャバラ部
50 ドアパネル
52 グロメット用凹部
60 インナー
64 ボディー・クランプ部
70 ウェザーストリップ・クランプ部
72 垂直延出部
74 水平延出部
76 押圧部
90 ウェザーストリップ
92 底面部
94 切り欠き部
A1 内板部分
A2 側板部分