特許第5809579号(P5809579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809579ディスクストッパー前駆体およびディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809579
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】ディスクストッパー前駆体およびディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 17/028 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   G11B17/028 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-25650(P2012-25650)
(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公開番号】特開2013-161513(P2013-161513A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓悟
【審査官】 深沢 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−028753(JP,A)
【文献】 特開2008−112491(JP,A)
【文献】 特開2010−108577(JP,A)
【文献】 特開2003−082136(JP,A)
【文献】 特開2005−239913(JP,A)
【文献】 特開平11−025555(JP,A)
【文献】 特開2001−067780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 17/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクドライブ装置のターンテーブルに粘着一体化するための粘着層と、ディスクに密着対向してディスクのすべりを防止するグリップ層とを少なくとも備える積層構造のディスクストッパーを形成するためのディスクストッパー前駆体の製造方法であって、
ディスクストッパー前駆体は、グリップ層よりも硬質な材料で形成された硬質層を有し、
硬質層が、グリップ層に対して、粘着層とは反対側に積層一体化されるように、硬質層とグリップ層を架橋接着する、ディスクストッパー前駆体の製造方法
【請求項2】
ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルを製造する方法であって、
請求項1に記載のディスクストッパー前駆体の製造方法によって、ディスクストッパー前駆体を準備する第1工程と、
ディスクストッパー前駆体の粘着層により、ターンテーブルにディスクストッパー前駆体を一体化する第2工程と、
第2工程に引き続き、ターンテーブルを回転させながら、硬質層を切削加工によって除去し、グリップ層を露出させる第3工程と、
を含むディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法。
【請求項3】
グリップ層を有するディスクストッパーが一体化されたディスクドライブ装置のターンテーブルを製造する方法であって、
グリップ層よりも硬質な材料で形成された硬質層とグリップ層とを有する積層構造とされたディスクストッパー前駆体を、グリップ層の側が硬質層に比べてターンテーブルに近い層となるように、ターンテーブルに一体化する第1工程と、
第1工程に引き続き、ターンテーブルを回転させながら、硬質層を切削加工によって除去し、グリップ層を露出させる第2工程と、
を含むディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクドライブ装置のターンテーブルに設けられるディスクストッパーに関する。特にディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法や、その製造に好適に使用されうるディスクストッパー前駆体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータや家電製品などに使用され、ディスクメディアが交換可能なディスクドライブ装置(以下単に「ディスク装置」と記載する)としては、CDやDVD,ブルーレイディスクなどのディスクメディアを読み書き可能なディスク装置が知られている。これらディスク装置においては、ディスクメディアは、ディスク装置のターンテーブルに把持されて、高速回転して使用に供される。そして、ターンテーブルとディスクメディアとの相対回転(スリップ)を防止するために、ターンテーブルには、ディスクストッパーと呼ばれる摩擦部材が設けられる。ディスクストッパーは、ターンテーブルとディスクメディアの間に挟まれるような位置に設けられる。
【0003】
ディスクストッパーは、ゴムなどの摩擦材料によりリング状に形成されて、ターンテーブルに貼着一体化されることが多い。そのようなディスクストッパーとしては、例えば、特許文献1に開示されたようなものが知られている。
特許文献1には、片面にプライマー層および粘着層を順次有する熱可塑性エラストマーシートをディスクストッパー用シートとすることが開示されており、当該ディスクストッパー用シートを打ち抜き加工してディスクストッパーを製造することが開示されている。このディスクストッパーは粘着層によりターンテーブルに一体化される。
【0004】
また、特許文献2には、ターンテーブルに摩擦材を一体化する第1工程の後に、ターンテーブルを回転駆動させた状態で摩擦材を切削加工する第2工程を行い、ディスクを支持するディスク支持面を形成する方法が開示されている。この方法によれば、ターンテーブルの回転時におけるディスクの面振れを少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−082136号公報
【特許文献2】特開平11−025555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスク装置には小型化、特に薄型化の要求がある。そのため、ターンテーブルやその構成部品にも薄型化が求められ、ディスクストッパーも極力薄くすることが要求されている。しかしながら、特許文献1に開示されたような従来技術のディスクストッパーでは、薄肉化の要求に十分に応えることができない。すなわち、ディスクストッパーがディスクメディアと当接するグリップ層は、摩擦力を十分に得るために比較的低硬度のゴムやエラストマーで形成されるが、ディスクストッパーを薄肉化しすぎると、ディスクストッパー単品での剛性や形状保持性が低下してしまい、ターンテーブルへの貼付作業が困難となって、ディスクストッパーの取付け精度が低下してしまうという問題があることが判明した。
【0007】
一方、ディスクストッパーに比較的剛性の高い補強層を設けたのでは、補強層の厚み分だけ薄肉化できないことになる。補強層があると、ディスクストッパーの総厚み中でグリップ層に利用できる厚みが薄くなり、グリップ層の弾力性や緩衝性が十分に得られにくくなる。
【0008】
本発明の目的は、ディスクストッパーをターンテーブルに取付ける作業の作業性を維持しながら、グリップ層の所定厚みを確保しつつディスクストッパーの薄肉化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、ディスクストッパーの構成に硬質層が追加されたディスクストッパー前駆体を製造し、ディスクストッパー前駆体をターンテーブルに取付けた後に、ターンテーブルを回転させながら硬質層を切削加工により除去してグリップ層を露出させると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、ディスクドライブ装置のターンテーブルに粘着一体化するための粘着層と、ディスクに密着対向してディスクのすべりを防止するグリップ層とを少なくとも備える積層構造のディスクストッパーを形成するためのディスクストッパー前駆体の製造方法であって、ディスクストッパー前駆体は、グリップ層よりも硬質な材料で形成された硬質層を有し、硬質層が、グリップ層に対して、粘着層とは反対側に積層一体化されるように、硬質層とグリップ層を架橋接着する、ディスクストッパー前駆体の製造方法である(第1発明)。
【0012】
また、本発明は、ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルを製造する方法であって、第1発明のディスクストッパー前駆体の製造方法によって、ディスクストッパー前駆体を準備する第1工程と、ディスクストッパー前駆体の粘着層により、ターンテーブルにディスクストッパー前駆体を一体化する第2工程と、第2工程に引き続き、ターンテーブルを回転させながら、硬質層を切削加工によって除去し、グリップ層を露出させる第3工程と、を含むディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法である(第2発明)。
【0013】
また、本発明は、グリップ層を有するディスクストッパーが一体化されたディスクドライブ装置のターンテーブルを製造する方法であって、グリップ層よりも硬質な材料で形成された硬質層とグリップ層とを有する積層構造とされたディスクストッパー前駆体を、グリップ層の側が硬質層に比べてターンテーブルに近い層となるように、ターンテーブルに一体化する第1工程と、第1工程に引き続き、ターンテーブルを回転させながら、硬質層を切削加工によって除去し、グリップ層を露出させる第2工程と、を含むディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法である(第発明)。
【発明の効果】
【0014】
第1発明のディスクストッパー前駆体製造方法により得られるディスクストッパー前駆体によれば、硬質層が一体化されているため、ターンテーブルへの貼着作業が行いやすい。そして、第1発明の製造方法により得られるディスクストッパー前駆体を用いて、第発明の製造方法を行えば、薄肉のディスクストッパーが一体化されたターンテーブルが得られる。
【0015】
そして、硬質層がグリップ層に対し架橋接着により一体化されているので、グリップ層が軟質であっても切削加工が行いやすくなるという効果も得られる。
【0016】
また、第発明の製造方法によっても、ディスクストッパーとなる部材のターンテーブルへの貼着作業が行いやすく、かつ、薄肉のディスクストッパーが一体化されたターンテーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用されたディスク装置の使用形態を示す模式図である。
図2】本発明のディスクストッパー前駆体の第1実施形態の正面図及び断面図である。
図3】本発明のディスクストッパー前駆体を用いて、ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルを製造する製造工程を段階的に示す模式断面図である。
図4】本発明のディスクストッパー前駆体の第2実施形態の正面図及び断面図である。
図5】ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルを製造する他の製造方法について、その製造工程を段階的に示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0019】
図1には、本発明が適用されたディスク装置の使用形態を示す模式図である。図1に示すように、ディスクストッパー1は、ディスク装置(CD、DVD、ブルーレイなどの交換可能なディスクメディアDに対し電子情報の読み書きを行う装置)のターンテーブルTに貼り付けられて使用される。ディスクメディアDは、ターンテーブルTに対して脱着可能に取付けられる。ディスクストッパー1はディスクメディアDとターンテーブルTの間に挟持されるように、ターンテーブルTに貼着一体化されている。なお、図1では、ターンテーブルTが有する保持機構などの詳細な構造は省略している。
【0020】
ディスクストッパー1は、平板状のリング形状に形成された部材である。本実施形態では、ディスクストッパー1は、粘着層11とグリップ層12とを有する積層構造のリング状部材である。粘着層11は、ディスク装置のターンテーブルTに貼り付けるための層であり、粘着剤によってリング状に設けられている。グリップ層12は、ディスクメディアDがターンテーブルTに取り付けられる際に、ディスクメディアDと直接対向し、密着する層であり、グリップ層12とディスクメディアDとの間の摩擦によって、ディスクメディアDがターンテーブルTに対しスリップすることが防止される。グリップ層12もまた、リング状に形成されている。本実施形態においては、粘着層11とグリップ層12とによってディスクストッパー1が構成されている。
【0021】
上記のような、ディスクストッパー1が一体化されたターンテーブルを製造するために、本発明の第1実施形態のディスクストッパー前駆体2が使用される。図2は、本発明のディスクストッパー前駆体の第1実施形態の正面図及び断面図である。ディスクストッパー前駆体2は、ディスクストッパー1とほぼ同一の平面形状を有するリング状部材であり、粘着層21、グリップ層22、硬質層23を有する。ディスクストッパー前駆体2の粘着層21は、ディスクストッパー1の粘着層11となる層である。また、ディスクストッパー前駆体2のグリップ層22は、ディスクストッパー1のグリップ層11となる層である。
【0022】
ディスクストッパー前駆体2の硬質層23は、グリップ層22よりも硬質な材料で形成された層であって、ディスクストッパー前駆体2の平面形状と合致するようなリング状に設けられている。硬質層23が存在することで、ディスクストッパー前駆体2全体の剛性が高められ、貼付作業時に平板状のリング状形状が維持されやすくなる。
【0023】
ディスクストッパー前駆体2において、硬質層23は、グリップ層22に対して、粘着層21とは反対側に積層一体化されている。すなわち、粘着層21、グリップ層22、硬質層23の順に、これら層が積層一体化されている。
【0024】
粘着層21(11)を構成する粘着剤は、ディスクストッパー1をターンテーブルTに貼着一体化できる限りにおいて、多様な粘着剤が使用できる。特に好ましくは、天然ゴムやシリコーンゴムといった低硬度のゴム系の粘着剤や、アクリル系粘着剤やウレタン系粘着材などが使用できる。
【0025】
粘着剤は、グリップ層22と粘着層21とがと互いに接着一体化、より好ましくは架橋接着一体化するものを選択することが好ましい。粘着層21がグリップ層22からはがれにくくなり、取り扱い性がよくなるからである。
【0026】
グリップ層22(12)を構成する材料は、エチレンプロピレンジエンゴムやシリコーンゴムをはじめとする加硫ゴムが好ましく使用される。ゴムとしては、そのほか、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムおよびイソプレンゴム等の任意のゴムを使用することができ、複数種類のゴムを混合して使用することもできる。また、グリップ層22に熱可塑性エラストマーなどを使用することもできる。グリップ層を構成する材料の好ましい硬度は、20度〜70度程度である。
【0027】
硬質層23を構成する材料は、グリップ層22を構成する材料よりも硬質な樹脂材料である。例えば、ゴム材料や、熱可塑性エラストマー、軟質樹脂材料により硬質層23を構成できる。グリップ層の材料の硬度が55度程度である場合には、硬質層の硬度を70度以上、より好ましくは80度以上とすることが好ましい。硬質層をゴム材料で構成する場合の、材料の好ましい硬度は、50度〜90度程度である。また、硬質層23とグリップ層22を、互いに加硫(架橋)接着が可能な材料で構成し、両者を架橋接着一体化することが好ましい。硬質層23は、樹脂フィルム(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムや、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルムなど)で構成することもできる。また、硬質層23を、合成樹脂繊維製の不織布で構成しても良い。
【0028】
本実施形態においては、粘着剤層21はウレタン系粘着剤により、グリップ層22は硬度55程度のシリコーンゴムにより、硬質層23は硬度85度程度のシリコーンゴムにより形成され、三者は架橋一体化されている。
【0029】
上記ディスクストッパー前駆体2を形成する方法は、例えば、以下に示す打ち抜き加工を利用する方法によることができる。
まず、硬質層となるべき未架橋のシリコーンゴムシートを、所定の厚み及び大きさに準備する。このゴムシートには必要により予備架橋などを行っても良い。
【0030】
次に、硬質層となるべき上記未架橋シリコーンゴムシートに、グリップ層となるべき未架橋シリコーンゴムペースト(あるいは液状シリコーンゴム)を所定の厚みで塗布する。塗布はロールコータやナイフブレードなどの公知の手段により行うことができる。塗布後に、必要に応じ、予備架橋を行っても良い。
【0031】
次に、グリップ層となるべきシリコーンゴム層の上に、粘着層となるべき液状のウレタン系粘着剤を塗布する。塗布は、噴霧などの公知の手段により行うことができる。塗布後、必要に応じて溶剤等を揮発させる。
【0032】
その後、架橋処理を行い、硬質層、グリップ層、粘着層がこの順番に積層一体化されたゴムシートが得られる。粘着層の表面には、剥離紙などが積層される。そして、得られた積層ゴムシートを所定のリング状形状に打ち抜き加工すれば、上記実施形態のディスクストッパー前駆体2が得られる。
【0033】
ディスクストッパー前駆体2を形成する方法は上記方法に特に限定されない。例えば、離型性のフィルム上に、スクリーン印刷などを利用して、リング状の粘着層や、リング状のグリップ層、リング状の硬質層を順次積層して形成し、架橋一体化処理を行って、打ち抜き加工無しに、上記実施形態のディスクストッパー前駆体2を製造することもできる。スクリーン印刷を利用すると、打ち抜き加工を利用する方法に比べ、原材料の利用効率を大きく高めることができる。
【0034】
ディスクストッパー前駆体2を用いて、ディスクストッパー1が一体化されたターンテーブルを製造する方法を説明する。
【0035】
図3(a)に示すように、粘着層21によって、ディスクストッパー前駆体2をターンテーブルTに貼着一体化する。この際、ディスクストッパー前駆体2には、硬質層23が備えられているので、グリップ層22や粘着層21が、軟質で薄肉のものであっても、ディスクストッパー前駆体2には一定の剛性が保たれており、貼付作業で取り扱う際には平板状でリング状の形状が維持されやすい。従って、本発明のディスクストッパー前駆体2は、ターンテーブルTへの貼付作業の作業性が良い。
【0036】
後述する切削工程に先立って、ターンテーブルTはディスク装置の駆動機構に取付けられる。なお、ディスクストッパー前駆体2をターンテーブルTに貼着一体化する工程は、ターンテーブルTを駆動機構に取付ける工程の前に行っても良いし、後で行っても良い。
【0037】
次に、切削工程により、硬質層23を除去する。図3(b)に示すように、ターンテーブルTを駆動機構によって回転させながら、バイトやカッターなどの刃物Bを移動させて、硬質層23と、硬質層に隣接するグリップ層22の一部とを除去し、グリップ層22の残部を露出させる。
【0038】
ターンテーブルを回転させながら、刃物Bが移動することで、図3(b)に破線で示したような、回転軸に垂直にほぼ平面状の切削面PLが形成される。平面状の切削面PLが得られる限りにおいて、刃物Bの具体的形状や刃物を移動する方向は任意である。本実施形態では、バイト状の刃物をターンテーブルの半径方向に沿って、半径方向外側から内側に向けて移動させて切削を行っている。
【0039】
切削面PLは、グリップ層22内に形成されることになるが、硬質層23とグリップ層22の境界に近い位置に形成されることが好ましい。特に好ましくは、切削面PLは、ディスクストッパー前駆体のグリップ層22の厚み方向の中心面よりも、硬質層23に近い側に形成される。
【0040】
切削工程により、硬質層23が除去されると、図3(c)に示すように、ターンテーブルTには粘着層11とグリップ層12が残されて、ディスクストッパー1が一体化されたターンテーブルTが得られる。このディスクストッパー1には、硬質層がないので、グリップ層12を所定の厚さに確保しながらもディスクストッパー1を薄くすることができる。
【0041】
なお、切削工程では、硬質層が除去されてグリップ層が露出すれば良く、上記実施形態のように、グリップ層の一部を硬質層と共に切削除去することは必須ではない。グリップ層の一部を硬質層と共に切削除去すると、グリップ層の露出を確実なものとできて、より好ましい。
【0042】
本発明の作用及び効果について説明する。
本発明のディスクストッパー前駆体2は、硬質層23を備えるため、ターンテーブルTへの貼付作業時の取り扱い性が悪くならない。
【0043】
また、ディスクストッパー1がターンテーブルTに一体化された完成品の状態においては、グリップ層の所定厚みを確保しながら、ディスクストッパー1を薄型化できる。これは、一体化工程の作業性の要件が克服されたためである。
【0044】
従って、本発明のディスクストッパー前駆体2を用いて、上記方法によってディスクストッパー1が一体化されたターンテーブルを得るようにすると、ディスクストッパーをターンテーブルに取付ける作業の作業性を維持しながら、ディスクストッパーの薄肉化を図ることができる。
【0045】
また、ディスクストッパー前駆体において、硬質層23とグリップ層22とが架橋接着一体化されている場合には、両者がしっかりと一体化しているため、切削工程が正確に行いやすくなる。すなわち、グリップ層は比較的軟質な材料で構成されるため、刃物で切削加工する際にグリップ層が変形しやすく、切削加工の正確性が失われやすくなるが、硬質層23とグリップ層22がしっかりと一体化していれば、硬質層23によってグリップ層22が拘束されるようになり、切削加工時のグリップ層の変形が抑えられ、切削加工を正確に行うことが可能となる。
【0046】
切削加工の正確性を高める観点からは、さらに、硬質層とグリップ層が接合されている境界面の近く、すなわち、グリップ層の中心面と上記境界面の間に、切削面PLが来るように、切削加工を行うことが好ましい。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0048】
図4には、本発明のディスクストッパー前駆体の第2実施形態について、正面図及び断面図を示す。本実施形態のディスクストッパー前駆体3における、粘着層31、グリップ層32、硬質層33の構成材料等は第1実施形態と同様である。本実施形態のディスクストッパー前駆体3においては、リング状の粘着層31、グリップ層32、硬質層33がこの順番に積層され、かつ、粘着層31の内周縁と外周縁がグリップ層の構成材料により覆われ、グリップ層32の内周縁と外周縁が硬質層の構成材料により覆われるようにされた断面構造(積層構造)を有している。
【0049】
このようなディスクストッパー前駆体3は、スクリーン印刷を利用して、粘着層31、グリップ層32、硬質層33を順次印刷によって積層形成することにより、製造することができる。各層を形成する際に使用するスクリーンマスクの透孔パターンを、順次大きな透孔パターンとしていけば、下側に形成された層の内周縁と外周縁を上側の層で覆うように、上側の層が形成できる。
【0050】
本実施形態のように、グリップ層32の内周縁と外周縁が硬質層33の構成材料により覆われるようにされていると、硬質層33による補強効果が更に高められて、ディスクストッパー前駆体3をターンテーブルに貼り付ける際の取り扱い性がより高められる。また、硬質層33によってグリップ層32がよりしっかりと拘束されるようになり、切削加工時のグリップ層32の変形が抑えられ、切削加工をより正確に行うことが可能となる。
【0051】
本発明のディスクストッパー前駆体には、粘着層、グリップ層、硬質層のほかに、緩衝層や中間層などの他の層を含ませることができる。ディスクストッパーに緩衝層が設けられていれば、グリップ力が安定して得られる。また、粘着層とグリップ層の間に中間層を設けると、粘着層やグリップ層の材料選択の幅を広げ、多彩な材料の粘着層やグリップ層を互いに一体化することができる。
【0052】
また、ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法として、上記説明においては、特に好ましい製造方法の形態例として、粘着層を有するディスクストッパー前駆体を利用して製造する方法を説明したが、利用するディスクストッパー前駆体は、粘着層を備えたものに限定されない。
【0053】
図5には、粘着層を有しないディスクストッパー前駆体を用いて、ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルを製造する方法を示す。
この製造方法においては、グリップ層42と硬質層43とを有する積層構造とされたディスクストッパー前駆体4が使用される。ディスクストッパー前駆体4は粘着層を有しない点を除けば、第1実施形態のディスクストッパー前駆体2と同様のものである。
【0054】
図5(a)に示すように、ディスクストッパー前駆体4は、グリップ層42の側が硬質層43に比べてターンテーブルTに近い層となるように、ターンテーブルに一体化される。一体化には、接着剤などが利用可能である。即ち、ターンテーブルTに接着剤Gを塗布し、ターンテーブルTとグリップ層42とを接着する。接着剤Gを硬化させると、ディスクストッパー前駆体4とターンテーブルTが一体化される。
【0055】
引き続き、ターンテーブルTを回転させながら、硬質層43を切削加工によって除去し、グリップ層42を露出させる切削工程を行う。そして、グリップ層12からなるディスクストッパーが一体化されたターンテーブルが得られる。
【0056】
このように、ディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法においては、ディスクストッパー前駆体が粘着層を備えるものであることは、必須ではなく、図5に示した実施形態のように、粘着層を備えないディスクストッパー前駆体を使用しても良い。一方で、図3に示した実施形態のように、ディスクストッパー前駆体に粘着層が備わっていると、ターンテーブルにディスクストッパー前駆体を貼り付ける際に接着剤の塗布が不要となり、作業の作業性や生産性が高められて好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
ディスクストッパーは、CDドライブ装置やDVDドライブ装置といった高速回転する高精度のディスク装置に使用されている。本発明のディスクストッパー前駆体やディスクストッパーが一体化されたターンテーブルの製造方法を利用すると、薄型のディスクストッパーをターンテーブルに一体化する作業が効率的に行われて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0058】
1 ディスクストッパー
11 粘着層
12 グリップ層
2 ディスクストッパー前駆体
21 粘着層
22 グリップ層
23 硬質層
3、4 ディスクストッパー前駆体
31 粘着層
32、42 グリップ層
33、43 硬質層
T ターンテーブル
D ディスクメディア
B 刃物
G 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5