(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809581
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
E04F13/08 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-32024(P2012-32024)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-167123(P2013-167123A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義孝
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−231586(JP,A)
【文献】
特開2007−000705(JP,A)
【文献】
特開2001−173201(JP,A)
【文献】
実開平02−018838(JP,U)
【文献】
特開2004−270435(JP,A)
【文献】
特開2003−001786(JP,A)
【文献】
特開2007−204989(JP,A)
【文献】
特開2003−013580(JP,A)
【文献】
特開2008−144356(JP,A)
【文献】
実開昭58−017412(JP,U)
【文献】
特開2000−071695(JP,A)
【文献】
特開2011−056362(JP,A)
【文献】
特開昭58−120955(JP,A)
【文献】
特開2000−038000(JP,A)
【文献】
特開2001−323628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦目地及び横目地を介して複数のタイル状凸部を千鳥状に配置して形成された建築板であって、
前記各タイル状凸部の中央部に凹曲面が形成され、
前記各タイル状凸部の左端部及び右端部に平坦面が形成され、
前記中央部が暗色で塗装され、
前記左端部及び前記右端部が明色で塗装され、
前記縦目地及び前記横目地が前記暗色と前記明色との間の中間色で塗装されていることを特徴とする
建築板。
【請求項2】
前記中央部の前記暗色が、前記左端部及び前記右端部の前記明色に近付くほど濃くなっていることを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材等の建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築板として、長手方向に亘り複数の通し目地を有する外装材が知られている(例えば、特許文献1参照)。そしてこの外装材は、両端の目地が長手方向に亘る一つの直線状端部を有し、かつ不規則に拡縮した目地幅を有することにより、施工時の手間や目地ずれによる違和感を低減することができるようにしたものである。
【0003】
また、建築板として、セメント系の無機質基材の表面にインク受理層を設け、このインク受理層の表面にインクジェット塗装を施して形成されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。そしてこの建築板は、インク受理層として、インク浸透性が異なる第一のインク受理層と第二のインク受理層とを積層して設け、かつ第二のインク受理層は第一のインク受理層の外面に部分的に設けて成ることにより、多様な意匠模様を形成することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184262号公報
【特許文献2】特開2007−170014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の外装材では、施工時の手間や目地ずれによる違和感を低減することができても、目地幅が不規則に拡縮しているため、意匠性の向上には限界がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の建築板では、インクジェット塗装を施すので意匠性には優れているが、隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくするための工夫は特に凝らされていない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、上下左右に突き合わせて設置する場合に隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができると共に意匠性も高めることができる建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建築板は、縦目地及び横目地を介して複数のタイル状凸部を千鳥状に配置して形成された建築板であって、前記各タイル状凸部の中央部に凹曲面が形成され、前記各タイル状凸部の左端部及び右端部に平坦面が形成され、前記中央部が暗色で塗装され、前記左端部及び前記右端部が明色で塗装され
、前記縦目地及び前記横目地が前記暗色と前記明色との間の中間色で塗装されていることを特徴とするものである。
【0011】
前記建築板において、前記中央部の前記暗色が、前記左端部及び前記右端部の前記明色に近付くほど濃くなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の建築板を上下左右に突き合わせて設置する場合に隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができると共に意匠性も高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る建築板の塗装後の一例を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る建築板の塗装前の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明に係る建築板1は、
図1や
図2に示すように縦目地2及び横目地3を介して複数のタイル状凸部4を千鳥状に配置して形成されている。各タイル状凸部4は通常四辺形であり、左右のタイル状凸部4が縦目地2を介して配置され、この縦目地2が上下のタイル状凸部4の略中央に位置するように、上下のタイル状凸部4が横目地3を介して配置される。このような建築板1は、所定の金型を用いてセメント系成形材料をプレス成形した後に養生硬化させることによって製造することができる。建築板1は通常四辺形であり、この建築板1の四辺には、図示省略しているが、合決(あいじゃくり)加工や実加工等が施され、複数の建築板1を上下左右に突き合わせて設置することができるようにしてある。
【0016】
各タイル状凸部4は、中央部5とその両側の左端部8及び右端部9とで構成されている。左端部8、中央部5、右端部9のそれぞれの横幅の比率は約1:2:1程度であるが、この比率に限定されるものではない。
【0017】
各建築板1の左右両辺は、
図1や
図2において破線Bで示すように、上下複数の縦目地2を通ることが好ましい。あるいは、各建築板1の左右両辺は、
図1や
図2において破線Cで示すように、タイル状凸部4の中央部5とその両側の左端部8及び右端部9との境界線を通ることも好ましい。いずれの場合も、左右に隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。また、各建築板1の上下両辺は、
図1や
図2において破線Dで示すように、横目地3を通ることが好ましい。この場合は、上下に隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。
【0018】
各タイル状凸部4の中央部5には、凹曲面6が形成され、各タイル状凸部4の左端部8及び右端部9には、平坦面10が形成されている。
図3に示すものでは、横方向(水平方向)の断面が下に凸の曲面となるような凹曲面6が形成されているが、凹曲面6はこれに限定されるものではない。凹曲面6の曲率半径(R)も特に限定されない。以下では各タイル状凸部4の中央部5に
図3に示すような凹曲面6が形成された建築板1について説明する。
【0019】
次に、養生硬化して得られた
図2に示すような建築板1の表面を塗装する。この塗装は、インクジェット印刷により行うことが好ましいが、その他の方法を使用して行ってもよい。インクジェット印刷により塗装を行う場合には、あらかじめ建築板1の表面にシーラー(プライマー)を塗布した後にインク受理層を形成する。そして、塗装するにあたっては、
図1に示すように各タイル状凸部4の中央部5を暗色で塗装し、左端部8及び右端部9を明色で塗装することによって、市松模様が形成される。このように、塗装する色の属性(色相・明度・彩度)のうち、明度については、中央部5が低く、左端部8及び右端部9が高いが、色相及び彩度については、特に限定されない。
【0020】
そして、
図1において破線Bで示すように、各建築板1の左右両辺が、上下複数の縦目地2を通る場合には、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、縦目地2と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。このとき縦目地2の上下に位置するタイル状凸部4の中央部5は略中央で分断されている。しかし、この中央部5は暗色で塗装されているので、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、中央部5が分断されていることが認識しにくくなり、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。このような効果は、中央部5に塗装された暗色と、左端部8及び右端部9に塗装された明色との明暗の差(コントラスト)が大きいほど高く得られる。
【0021】
また、
図1において破線Cで示すように、各建築板1の左右両辺が、タイル状凸部4の中央部5とその両側の左端部8及び右端部9との境界線の近傍を通る場合には、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、上記の境界線と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。
【0022】
また、
図1において破線Dで示すように、各建築板1の上下両辺が、横目地3を通る場合には、複数の建築板1を上下に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、横目地3と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。
【0023】
しかも、各タイル状凸部4の中央部5に形成された凹曲面6は三次元的であり、建築板1全体には二次元的な市松模様が形成されているので、形状と模様との調和がとれて新鮮な印象を与えるなど意匠性も高めることができる。
【0024】
また、縦目地2及び横目地3は、各タイル状凸部4の中央部5に塗装された暗色と、左端部8及び右端部9に塗装された明色との間の中間色で塗装することが好ましい。すなわち、縦目地2及び横目地3の明度は、中央部5よりも高く、左端部8及び右端部9よりも低いが、縦目地2及び横目地3の色相及び彩度は、特に限定されない。この場合には、3種類の明度の異なる色が相俟って、2種類の明度の異なる色からなる市松模様に比べて意匠性をさらに高めることができる。また、縦目地2及び横目地3が中間色で塗装されていると、各建築板1の左右両辺が上下複数の縦目地2を通り、かつ各建築板1の上下両辺が横目地3を通る場合(
図1の破線B及びD参照)には、複数の建築板1を上下左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分をさらに目立ちにくくすることができる。
【0025】
また、縦目地2及び横目地3は、各タイル状凸部4の中央部5に塗装された暗色、並びに左端部8及び右端部9に塗装された明色のいずれの色とも異なる色彩の色で塗装し、さらに縦目地2の一部に上記の明色を重ねて塗装することが好ましい。ここで、色彩とは色の属性を意味し、色相・明度・彩度の少なくともいずれかが異なっていればよい。また、縦目地2の一部としては、例えば、縦目地2の左右両側縁部を挙げることができる。上記のように縦目地2及び横目地3を塗装すると、縦目地2及び横目地3の鮮明さが若干失われることによって、複数の建築板1を上下左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分をさらに目立ちにくくすることができる。
【0026】
また、各タイル状凸部4の中央部5の暗色が、左端部8及び右端部9の明色に近付くほど濃くなっていることが好ましい。すなわち、中央部5の明度は、全体的に均一ではなく、左端部8及び右端部9に近付くほど低くなっていることが好ましい。これにより暗色と明色との境界が強調されて、中央部5と左端部8及び右端部9との段差も強調されることによって、実物よりも深い凹曲面6が中央部5に形成されているように見えるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 建築板
2 縦目地
3 横目地
4 タイル状凸部
5 中央部
6 凹曲面
8 左端部
9 右端部
10 平坦面