(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809586
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】ケーブル芯線接続チェック用簡易コネクタおよびこれを備えるアダプタケーブル
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
H01R43/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-55258(P2012-55258)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-191334(P2013-191334A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2013年10月16日
【審判番号】不服2015-700(P2015-700/J1)
【審判請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176682
【氏名又は名称】三波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 和文
(72)【発明者】
【氏名】菅 健太郎
【合議体】
【審判長】
森川 元嗣
【審判官】
内田 博之
【審判官】
中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−290915号公報
【文献】
実開昭61−193382号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の芯線を有する多芯ケーブルの各芯線の端部に、相手側コネクタに挿入可能な導電性のピンを接続し、これら複数本の導電性のピンを、布や樹脂等よりなる折り曲げ自在の軟らかい絶縁性の帯状体に、この帯状体の長さと直角方向に向けて略一定間隔で係止して、前記ピンの各々は、隣接するピン同士の間隔および前記コネクタへの挿入方向での相対位置を変更可能に前記帯状体によって連結され、前記ピンを挿入するべきピン孔の位置、間隔、個数の異なるさまざまなコネクタに接続可能としたことを特徴とするケーブル芯線接続チェック用簡易コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易コネクタを少なくともその一端に備えたことを特徴とするケーブル芯線接続チェック用アダプタケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯の中間ケーブルに対して、両端のプラグとケーブルの各芯線とが正しく接続されているかどうかをチェックする場合に好適なケーブル芯線接続チェック用簡易コネクタおよびこれをその一端に備えるアダプタケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
大型電気機器は、一般に機器本来の機能を有する本体部分と、これを操作する操作部分とで構成される。例えば船舶における照明や通信機器、空調機器等は船舶内のさまざまな場所に分散して配置され、これを中央操作室で集中して制御することなどが一般的に行われる。このような場合に、操作部分と本体部分との間に壁があったり、距離があったりするので、距離に応じた長さの多芯の中間ケーブルで両者を接続するのが普通である。中間ケーブルは両端に芯線の数に対応する多芯のプラグを備え、一端を操作側のコンセントに、他の一端を本体部分のコンセントに挿入することにより、操作部分と本体部分を接続する。新規に配線する場合も、また補修で配線を更新する場合も、所定のルートにケーブルを引き通し、両端のプラグは後から取り付けることになる。
【0003】
多芯ケーブルは、通常数十本、多い場合は100本程度の芯線で構成される。プラグは、金属製のケーシング内に設けられた円形、あるいは長方形状の絶縁材よりなる植え付け面に所定の順序でこれらの芯線を配置し、周囲のケーシングは嵌合部分にキー等を設けて、相手のコンセントに所定の向きでしか挿入できないように設計される。
【0004】
配線のつなぎ目であるジョイントは、ピンを植え付けたオス側のプラグと、ピン孔を設けたメス側のコンセントの一対で構成される。
図3はコンセントの一例を示す正面図である。以下に述べる説明では、プラグおよびコンセントを特に区別しない場合、総称してコネクタという。
【0005】
コンセント2の周囲のケーシング23の内面には3本のキー溝24が切ってあり、相手のプラグの向きが正しくないと挿入できないようになっている。ケーシング23の内側の絶縁台22には所定数のピン孔21が設けてあり、それぞれ中間ケーブルの芯線に接続されている。プラグについても同様である。コンセントのピン孔の位置とプラグのピンの位置とは、それぞれを正面から見た場合、上下方向は同一で左右が対称な、いわゆる鏡像の関係にある。
【0006】
新規に機器を製造し、設置した場合や、あるいは芯線交換等の補修を行った時点で、機器の電源を入れる前に、中間ケーブルの1本毎の各芯線が、両側のプラグの植え付けられている所定のピンに正しく接続されていることを確認することが必要である。
【0007】
この確認は、すべての芯線毎に、両側の同じ位置のピンの間に導通があるかどうか、そしてチェックする芯線と他の芯線、あるいは周囲の接地部分に対して導通がないかどうかの二通りについて行う必要がある。以下これを「導通チェック」、「絶縁チェック」と呼ぶ。
【0008】
この作業を
図4で説明する。説明の便宜のため、ここでは芯線はC1,C2,C3,C4の4本とする。
【0009】
(a)に示すように、まず芯線C1について両側のプラグの対応するピン同士を回線で結び、テスタTにより導通をチェックする。仮に確認が得られなければ芯線を選び変え、確認できた芯線を以後の基準とする。
(b)つぎに別の芯線C2を選び、これの導通をチェックする。ジョイントJ1側で基準の芯線C1とチェックする芯線C2に接続し、反対側のジョイントJ2側でこれらの2本の芯線のピン間を短絡する。芯線C1の導通は確認済みであるから、これで導通が得られれば芯線C2の導通が確認できたことになる。
つづいて基準の芯線C1とつぎの芯線C3との間で同様なチェックを行う。さらに芯線C1と芯線C4との間でチェックを行い、導通が得られれば4本すべての芯線の導通チェックが完了する。
(c)続いて絶縁チェックを行う。芯線C1と芯線C2との間が絶縁されているかどうかをチェックするため、ジョイントJ2側のプラグのピンは一切短絡せず、開放のままでジョイントJ1側で芯線C1と芯線C2との間の電流を測定し、電流値が「0」、すなわち導通がないことを確認する。4本の芯線すべての組み合わせで同様のテストを行い、絶縁を確認する。
以上で4本の芯線すべての導通チェックおよび絶縁チェックが完了する。
【0010】
このような作業を実際の機器を使用して行うわけには行かないから、接続チェックの際には回線の接続や導通チェックを行うテスタ機能等を備えた試験装置を操作室側、機器本体側のそれぞれに配置し、中間ケーブルを接続して、無線電話等で連絡をとりながら作業を行っている。
【0011】
ところで実際の中間ケーブルは、芯線の本数、太さ等が対象機器によってまちまちである。したがって試験装置のコンセントに直接中間ケーブルを接続することはできないので、中間ケーブルの両側に、片側のプラグをケーブル仕様に合わせたアダプタケーブルが必要となる。
【0012】
この状況を
図5で説明する。操作室側の試験装置Mとチェックを行う中間ケーブルCCとの間にはアダプタケーブルA1が挿入され、反対側ではアダプタケーブルA2を介して機器本体側の試験装置Sに接続される。試験装置Mは
図4で説明したように回線の接続切替ならびに導通チェックの機能を有し、試験装置Sは回線の接続、切替の機能を有する。
【0013】
図6に示すように、アダプタケーブルA1の両側のコネクタのうち、試験装置M側のコネクタJ3は試験装置Mの出力側に合わせた構成であり、反対側の中間ケーブル側のコネクタJ4は芯線の本数、ピンの径、オス・メスの区別などを中間ケーブルCCの仕様に合わせたものにしてある。反対側のアダプタケーブルA2についても同様である。
【0014】
したがって従来のチェック方法では、チェックする機器毎にその仕様に合わせた専用のアダプタケーブルを用意しなければならないという問題点があった。
【0015】
特許文献1には、複数の異なるインターフェイス規格に対応できるアダプタケーブルが記載されているが、製作段階で想定した何種類かのインターフェイス規格に限定される上製作コストも高く、多種類の大型電気機器に適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−257569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、チェックするケーブルの仕様に合わせてフレキシブルに対応できる簡易コネクタを実現させることにより、アダプタケーブルの種類を減らしてチェック作業を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の本発明は、複数本の芯線を有する多芯ケーブルの各芯線の端部に、相手側コネクタに挿入可能な導電性のピンを接続し、これら複数本の導電性のピンを、布や樹脂等よりなる折り曲げ自在の軟らかい絶縁性の帯状体に、この帯状体の長さと直角方向に向けて略一定間隔で係止して、前
記ピンの各々は、隣接するピン同士の間隔および前記コネクタへの挿入方向での相対位置を変更可能に前記帯状体によって連結され、前記ピン
を挿入するべきピン孔の位置、間隔、個数の異なるさまざまなコネクタに接続可能としたことを特徴とするケーブル芯線接続チェック用簡易コネクタである。
【0019】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の簡易コネクタを少なくともその一端に備えたことを特徴とするケーブル芯線接続チェック用アダプタケーブルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、その都度ケーブルの仕様に合わせてアダプタケーブルを用意しなくてもよいので芯線接続チェックが効率化されるとともに、少数本だけの芯線を簡単にチェックすることも容易になるので、ケーブル芯線接続作業の信頼性が向上するというすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】実施例の簡易コネクタを
図3のコンセントに挿入する状態を示す説明図である。
【
図3】本発明に係わるコンセントの一例を示す正面図である。
【
図4】本発明に係わる導通チェックを説明する説明図である。
【
図5】本発明に係わる導通チェックを説明する機器の構成図である。
【
図6】
図5におけるアダプタケーブルのみを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の望ましい実施例について図面により詳細に説明する。
【0023】
図1は実施例の簡易コネクタ1を示す平面図である。先に
図6で説明したアダプタケーブルの中間ケーブル側のコネクタJ4について、通常のコネクタに代えて本発明の簡易コネクタを使用する。アダプタケーブル14には複数本の芯線13が内蔵されている。その1本毎の端末部分に導電性のピン11が接続され、そのピン11が絶縁ベルト(絶縁性の帯状体
)12に、ベル
ト12の長さと直角方向に向けて略一定間隔で
係止されている。
【0024】
図2は
図3に示すコンセントに
図1に示した簡易コネクタを挿入する状況を示す説明図である。コンセント2に100箇所近く縦横に配置されたピン孔21のうち、例えば上段左端のものを1番と定め、このピン孔21aに簡易コネクタ1の先端のピン11aを挿入する。そしてその隣のピン孔21bには2番目のピン11bを挿入する。各ピンは折り曲げ自在な絶縁ベルト12に略一定間隔で固定されているので、隣接するピン孔に順序よく挿入することはきわめて容易であり、また誤ってピン孔を飛び越えて挿入することもない。列の端まで挿入したら、その次のピンは次の段の最寄りのピン孔に挿入する。このようにしてS字状に順番をたどり、プラグのすべての所用のピン孔にピンを挿入したなら、仮に簡易コネクタ1のピンが余っても、そのまま放置すればよい。
【0025】
以上、中間ケーブルの両端のプラグがピン孔を設けたメスのプラグで、これに挿入されるアダプタケーブル側のプラグがピンである場合の例で説明したが、オス・メスは逆の場合もある。相手側のプラグがオスの場合は簡易コネクタのピンを筒状のメスのピンとする。また芯線を流れる電流の種類や電流値等によってピンの径が異なる場合もある。
【0026】
しかし、いずれにせよ、本発明の簡易コネクタは、ピンの本数が中間ケーブルと一致しなくてもよく、またピン孔の間隔や配置にも拘束されずにプラグへの接続が可能であるから、ピンの径やオス・メスの区別などで2、3種類のものを用意しておけば、さまざまな機器に対する中間ケーブルの接続チェックに対応でき、試験の都度機器に合わせてアダプタケーブルを用意する必要はない。
【符号の説明】
【0027】
1…簡易コネクタ、 2…コンセント、 11…ピン、 12…絶縁ベルト、 13,C1,C2,C3,C4…芯線、 14…(アダプタ)ケーブル、 21…ピン孔、 22…絶縁台、 23…ケーシング、 24…キー溝、 A…アダプタケーブル、 CC…中間ケーブル、 J…ジョイント、 M,S…試験装置。