特許第5809587号(P5809587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809587
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】エンジンのカムチェーン室注油構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/08 20060101AFI20151022BHJP
   F01M 9/10 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   F01M1/08 A
   F01M9/10 M
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-57679(P2012-57679)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189935(P2013-189935A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】柏原 浩
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−266207(JP,A)
【文献】 特開平7−63025(JP,A)
【文献】 実開昭62−69010(JP,U)
【文献】 実開昭56−39807(JP,U)
【文献】 実開昭60−143994(JP,U)
【文献】 特開2010−43571(JP,A)
【文献】 実開昭59−96313(JP,U)
【文献】 特開平9−25810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/08
F01M 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を収納するエンジン本体のクランク軸方向端壁に、チェーンケースを設け、
該チェーンケースの周壁部に形成したカバー取付部にチェーンケースカバーを取り付けることにより、前記チェーンケースと前記チェーンケースカバーとで、カムチェーンを収納するカムチェーン室を形成しているエンジンのカムチェーン室注油構造において、
前記チェーンケースカバーの壁内には、オイル供給源に連通すると共に前記カムチェーン室内の注油箇所に向かって開口する注油部を有するオイル通路が形成されており、
前記オイル通路の周壁を形成する通路形成壁部は、前記カムチェーン室の外方に突出するリブを構成し
前記リブから延長されて且つ中実のリブ延長部が前記チェーンケースカバーに設けられ
前記リブ及び前記リブ延長部は、前記チェーンケースカバーのクランク軸方向と直交する方向の一端から他端に亘り、直線状にチェーンケースカバーを横切っている、ことを特徴とするエンジンのカムチェーン室注油構造。
【請求項2】
前記オイル通路の前記リブ及び前記リブ延長部は、前記チェーンケースカバーのシリンダヘッド側の上端からオイルパン側の下端に亘っている、請求項1に記載のエンジンのカムチェーン室注油構造。
【請求項3】
前記注油部には、ねじ式のノズルが螺着されている、請求項1又は2に記載のエンジンのカムチェーン室注油構造。
【請求項4】
前記注油部は、前記カムチェーンとスプロケットとの噛み合い部分に向かってオイルを注油するように形成されている、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のエンジンのカムチェーン室注油構造。
【請求項5】
前記注油部は、前記カムチェーンが巻き掛けられたスプロケットの軸受け部に向かってオイルを注油するように形成されている、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のエンジンのカムチェーン室注油構造。
【請求項6】
前記注油部は、前記カムチェーン室に配置されたカムチェーン駆動用ギヤの噛み合い部に向かってオイルを注油するように形成されている、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のエンジンのカムチェーン室注油構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのカムチェーン室注油構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンのカムチェーン室として、特許文献1では、シリンダブロック等のエンジン本体のクランク軸方向端部に、チェーンケース部をエンジン本体と一体成形し、該チェーンケース部に、エンジン本体とは別体のカバー部材を取り付け、チェーンケース部とカバー部材とでカムチェーン室を画定している。なお、特許文献1では、シリンダブロックと別体のカバー部材を、「チェーンケース」と称している。また、別のカムチェーン室として、特許文献2では、シリンダブロック等のエンジン本体とは別体に形成された一対のケース部材により、カムチェーン室を画定している。
【0003】
カムチェーン室内には、クランク軸の回転力をカム軸に伝達するためのカムチェーン、スプロケット、ギヤ及び各種回転軸の端部が収納されているが、潤滑が必要な箇所に注油するために、特許文献1では、シリンダブロックの壁内に形成されたオイル通路を、カムチェーン室に開口し、該開口にオリフィス等を設けてカムチェーン室内にオイルを噴射するように構成してある。また、特許文献2では、カムチェーン室を構成する一対のケース部材のうち、シリンダブロックに結合された一方のケース部材に、オイル通路及びオイルジェットを設け、該オイルジェットからカムチェーン等にオイルを噴射するように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−025810号公報
【特許文献2】特開平07−63025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の従来例では、シリンダブロック等でできたエンジン本体に、カムチェーン室注油用の複雑なオイル通路をきり孔加工する必要があるが、孔開け加工に手間がかかる。すなわち、シリンダブロックには冷却水ギャラリや燃料噴射ポンプ取付孔等、オイル通路の形成に障害になる箇所が多くあり、これらの障害を避けてオイル通路を形成する場合、オイル通路のレイアウト設計に対し、制約が非常に多くなるのである。
【0006】
後者の従来例では、シリンダブロックとは別部材の一方のケース部材に、オイル通路を形成しているが、オイル通路の周壁部はカムチェーン室内に突出するように形成されている。したがって、設計時、カムチェーン等とオイル通路の周壁部との干渉を避けるように、オイル通路のレイアウトを考えなければならず、オイル通路のレイアウトに関する設計上の制約が多くなる。
【0007】
本発明は、オイル通路の配置の障害となる冷却水ギャラリ等が形成されているシリンダブロック等に、カムチェーン室注油用のオイル通路等を形成する構造に比べ、スペース的な制限が少なく、かつ、容易にきり孔加工が行えるエンジンのカムチェーン室注油構造を提供することを目的としている。さらに、オイル通路の周壁を補強用のリブの一部として利用することにより、チェーンケースカバーの剛性を向上させることができると共に、振動騒音も低減できるカムチェーン室注油構造を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、クランク軸を収納するエンジン本体のクランク軸方向端壁に、チェーンケースを設け、該チェーンケースの周壁部に形成したカバー取付部にチェーンケースカバーを取り付けることにより、前記チェーンケースと前記チェーンケースカバーとで、カムチェーンを収納するカムチェーン室を形成しているエンジンのカムチェーン室注油構造において、前記チェーンケースカバーの壁内には、オイル供給源に連通すると共に前記カムチェーン室内の注油箇所に向かって開口する注油部を有するオイル通路が形成されており、前記オイル通路の周壁を形成する通路形成壁部は、前記カムチェーン室の外方に突出するリブを構成し、前記リブから延長されて且つ中実のリブ延長部が前記チェーンケースカバーに設けられ、前記リブ及び前記リブ延長部は、前記チェーンケースカバーのクランク軸方向と直交する方向の一端から他端に亘り、直線状にチェーンケースカバーを横切っている。
【0009】
本発明は、上記エンジンのカムチェーン室注油構造において、好ましくは、次の構成を備える。
【0010】
(a)前記オイル通路の前記リブ及び前記リブ延長部は、前記チェーンケースカバーのシリンダヘッド側の上端からオイルパン側の下端に亘っている。
【0011】
(b)前記注油部には、ねじ式のノズルが螺着されている。
【0012】
(c)前記注油部は、前記カムチェーンとスプロケットとの噛み合い部分に向かってオイルを注油するように形成されている。
【0013】
(d)前記注油部は、前記カムチェーンが巻き掛けられたスプロケットの軸受け部に向かってオイルを注油するように形成されている。
【0014】
(e)前記注油部は、前記カムチェーン室に配置されたカムチェーン駆動用ギヤの噛み合い部に向かってオイルを注油するように形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、
(1)シリンダブロック等とは別体に形成されたチェーンケースカバーの壁内に、カムチェーン室注油用のオイル通路及び注油部を形成しているので、シリンダブロック等にオイル通路を形成する構造と比べ、オイル通路の設計上、スペース的な制限が少なく、所望のレイアウトに容易にきり孔加工できる。特に細くて長いオイル通路用の孔でも容易に加工することができる。
【0016】
(2)重量及び容積の大きいシリンダブロック等に比べ、重量及び容積の小さいチェーンケースカバーにオイル通路を形成するので、色々な方向に向く各種きり孔を、容易に加工することができる。
【0017】
(3)オイル通路の通路形成壁部がカムチェーン室外方に突出するリブを構成し、かつ、前記リブ及び該リブから延長されるリブ延長部が、チェーンケースカバーのクランク軸方向と直交する方向の一端から他端に亘り、直線状にチェーンケースカバーを横切っているので、カムチェーンカバー自体の剛性を向上させ、振動騒音を低減することができる。
【0018】
(4)構成(a)によると、リブ及びリブ延長部が、チェーンケースカバーのシリンダヘッド側の上端からオイルパン側の下端に亘っているので、チェーンケースカバー全体の剛性を、向上させることができる。
【0019】
(5)構成(b)によると、注油部に、ねじ式のノズルを螺着しているので、メンテナンスあるいは取り替えのために、簡単にノズルを着脱できる。
【0020】
(6)構成(c)によると、注油部を、カムチェーンとスプロケットとの噛み合い部分に向けているので、注油作用により、カムチェーン及びスプロケットの耐久性を向上させることが出来ると共に、噛み合い部での衝撃音も低減できる。
【0021】
(7)構成(d)によると、注油部を、カムチェーンが巻き掛けられたスプロケットの軸部の軸受けに向けているので、軸受け部の摩耗を低減し、耐久性を向上させることができると共に、スプロケットの滑らかな回転を維持できる。
【0022】
(8)構成(e)によると、注油部を、カムチェーン駆動用ギヤの噛み合い部に向けているので、各ギヤの摩耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るカムチェーン室注油構造を備えたエンジンの正面図である。
図2図1のエンジンの側面図である。
図3】チェーンケースカバーを取り除いた状態の図2と同様の側面図である。
図4】チェーンケースカバーの側面拡大図である。
図5図4のカムチェーンカバーの平面図である。
図6図4のカムチェーンカバーの正面拡大図である。
図7図4のカムチェーンカバーの上部の裏面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図7は、本発明に係るカムチェーン室注油構造を備えた直列複数気筒エンジンであり、これらの図に基づいて、本発明の一実施の形態を説明する。
【0025】
図1において、エンジン本体1は、下側から順に、下部クランクケース部材(主軸受ケース)2と、上部クランクケース部3aを一体に有するシリンダブロック3と、シリンダヘッド5と、を備えており、それらはボルトにより一体的に締着されている。さらに、シリンダヘッド5の上面にはシリンダヘッドカバー((弁腕カバー)6が締着され、下部クランクケース部材2の下面にはオイルパン7が締着されている。下部クランクケース部材2及び上部クランクケース部3aで構成されたクランク室には、クランク軸(軸芯線で示す)10が略水平に配置されている。
【0026】
エンジン本体1のクランク軸方向の一端側には、チェーンケース20が、エンジン本体1(シリンダブロック3並びに下部クランクケース部材2)と一体に成形されており、該チェーンケース20のクランク軸方向の端面に形成されたカバー取付面20aに、概ね平板状のチェーンケースカバー21が、複数のボルト23により締結されている。シリンダヘッド5の操作側(図面の手前側)には、吸気マニホールド11が取り付けられている。
【0027】
なお、説明の都合上、クランク軸方向をエンジンの「左右方向」と称し、クランク軸10と直交する水平方向をエンジンの「前後方向」と称し、かつ、吸気マニホールド25が配置された操作側を、エンジンの「前側」と称して、以下説明する。
【0028】
図2図1の右側面図、図3はチェーンケースカバー21を取り除いて示す右側面図である。図3において、チェーンケース20は、冷却水ポンプ22の配置スペースを除いてエンジン本体1のクランク軸方向端面の略全面に亘って形成されており、チェーンケース20で囲まれたカムチェーン室32には、クランク軸10の一端部に固着された動力取出ギヤ33と、該動力取出ギヤ33の上方に配置されて動力取出ギヤ33に噛み合う中間ギヤ34と、該中間ギヤ34の前上方に配置されて中間ギヤ34に噛み合うカム駆動ギヤ35と、前記動力取出ギヤ33の前下方に配置されて該動力取出ギヤ33に噛み合うポンプ駆動ギヤ36等が配置されている。カム駆動35ギヤの径及び歯数は、カム駆動力取出ギヤ33の2倍となっている。すなわち、クランク軸10の回転は1/2に減速されてカム駆動ギヤ35に伝達されるようになっている。なお、冷却水ポンプ22の吸込部は温度調節弁ケース24に連通している。
【0029】
前記カム駆動ギヤ35と同一軸芯上に、かつ、カム駆動ギヤ35と一体回転するようにカム駆動スプロケット37が配置されており、カム駆動ギヤ35及びカム駆動スプロケット37は、共通の軸受部(ボス部)41を介してカム駆動軸40に回転自在に支持されている。カム駆動スプロケット37にはカムチェーン44が巻き掛けられており、このカムチェーン44は、カム駆動スプロケット37から後上方に延び、シリンダヘッド5内に形成されたチェーントンネルを通り、吸排気弁駆動用のカム軸46のカム被駆動スプロケット47に巻き掛けられている。なお、カムチェーン44の移動経路にはチェーンテンショナ50及びチェーンガイド51等が配置されている。
【0030】
下部クランクケース部材2内にはオイルポンプ25が配置されており、該オイルポンプ25のポンプ駆動軸25aには前記ポンプ駆動ギヤ25aが固着されている。オイルポンプ25の吐出部は、シリンダブロック3(含下部クランクケース部3a)の壁内に形成されたオイル通路26及び潤滑油メインギャラリ26a、26b等を介して、エンジン本体1内の各注油必要箇所に連通すると共に、シリンダブロック3の上端部に形成されたオイル通路27を介して、チェーンケース20の前上端部に形成されたカバー給油用の給油口30に連通している。
【0031】
チェーンケース20のカバー取付面(カバー取付部)20aは同一垂直面内に形成されると共に、複数の締結用めねじ孔20bが相互に間隔をおいて形成されており、該カバー取付面20aに、図2に示すように、ボルト23により、チェーンケースカバー21が締結されている。
【0032】
図4はチェーンケースカバー21の側面拡大図であり、該チェーンケースカバー21の壁内には、チェーンケースカバー21の前上端部から後下方に直線状に延びる第1のオイル通路61と、チェーンケースカバー21の上端部から略垂直下方に直線状に延びる前後の第2及び第3のオイル通路62,63と、が形成されており、縦向きの第2及び第3のオイル通路62,63は前後方向に間隔をおいて配置され、横向きの第1のオイル通路61は、途中で第2及び第3のオイル通路62,63と交差し、第2及び第3のオイル通路62,63に連通している。
【0033】
横向きの第1のオイル通路61は、チェーンケースカバー21の前上端からきり孔加工されたものであり、第1のオイル通路61の前端開口部はねじ式の栓64により閉塞されている。縦向きの第2及び第3のオイル通路62,63は、チェーンケースカバー21の上端からきり孔加工されたものであり、第2及び第3のオイル通路62,63の上端開口部は、ねじ式の栓65、66によりそれぞれ閉塞されている。
【0034】
第1のオイル通路61の前端部近傍には、シリンダブロック側に向いて開口するオイル入口67が形成され、第1のオイル通路61の後部には、カムチェーン室32内に向かって開口する第1の注油部71が形成されている。縦向きの第2及び第3のオイル通路62,63の下端部には、カムチェーン室32内に向かって開口する第2及び第3の注油部72、73が形成されている。
【0035】
図5はチェーンケースカバー21の平面拡大図であり、この図5において、第1、第2及び第3のオイル通路61,62,63の通路外周壁を形成する通路形成壁部61a、62a、63aは、チェーンケース20側とは反対側の外側面から、カムチェーン室32の外方に突出するように形成されている。すなわち、前記各通路形成壁部61a、62a、63aは、チェーンケースカバー21の外側面に形成されたリブとしての役目を果たしており、以下、前記各通路形成壁部61a、62a、63aを第1,第2及び第3のリブと称する。
【0036】
図4において、縦向きの第2及び第3のオイル通路62,63の外周壁を構成する第2及び第3のリブ62a,63aの下方延長線上には、各リブ62a,63aの下端から直線状に下方に延びるリブ延長部62c、63cが形成されている。後側の第3のリブ延長部63cはチェーンケースカバー21の最下端縁まで至り、前側の第2のリブ延長部62cは、チェーンケースカバー21の前上端部から下端部まで延びる傾斜状側端縁の途中箇所まで至っている。すなわち、第3のリブ63a及び第3のリブ延長部63cは、チェーンケースカバー21を、その最上端から最下端まで直線状に縦断しており、第2のリブ62a及び第2のリブ延長部62cはチェーンケースカバー21を、その最上端から下部のチェーンケースカバー21の周端まで直線状に縦断している。また、第1のリブ61aの後方延長線上には、第1のリブ61aの端から直線状に後方に延びる短い第1のリブ延長部61cが形成されており、前記第1のリブ61a及び第1のリブ延長部61cは、チェーンケースカバー21の上端部近傍を、略前端から後端近くまで横断している。
【0037】
図6はチェーンケースカバー21の上部の正面拡大図であり、この図6において、第1の注油部71と第2の注油部72には、六角柱状のねじ式の第1及び第2の注油ノズル81,82がそれぞれ螺着されており、第1の注油部71に螺着された第1の注油ノズル81には、ノズル長さ方向に延びるオイル通路81aと、該オイル通路81aの先端部から径方向外方に延びて外方端部で開口する細い噴口81b形成されている。一方、第2の注油部72に螺着された第2の注油ノズル82には、ノズル長さ方向に延びるオイル通路82aと、該オイル通路82aの先端部に形成されてノズル長さ方向に開口する細い噴口82bが形成されている。
【0038】
図7はチェーンケースカバー21の上部の裏面図であり、第1及び第2の注油部71,72に螺着された第1及び第2の注油ノズル81,82が六角形状であることと、第1の注油ノズル81の噴口81bが3本形成されている構造を明確にしている。
【0039】
第1の注油ノズル81の位置は、図3の位置A1であり、カムチェーン44とカム駆動スプロケット37との噛み合い始端部近傍にオイルを噴射することができ、図7の第2の注油ノズル82の位置は、図3のカム駆動軸40に軸方向に略対応する位置A2であり、カム駆動軸40の軸受41に給油する。
【0040】
さらに、図7の第3のオイル注油部73は、チェーンケースカバー21に形成された絞りを介して直接カムチェーン室32にオイル供給する構造であり、図3の中間ギヤ34とカム駆動ギヤ35との噛み合い部に対応する位置A3である。
【0041】
(作用)
図3において、オイルポンプ25の回転により、オイルパン7内から吸引されたオイルは、オイル通路26,オイルメインギャラリ26a、26b等から各種オイル機器及びオイル通路を経て、エンジンの各注油箇所に送られる。一部のオイルは、シリンダブロック3の上端部に形成されたオイル通路27及びチェーンケース20の上端給油口30を経て、図4に示すチェーンケースカバー21のオイル入口67から、第1のオイル通路61の前端部に供給される。
【0042】
第1のオイル通路61を後方に圧送されるオイルは、途中、第2のオイル通路62に分岐し、第2のオイル通路62の下端まで至り、第2の注油部72を経て、図6の第2の注油ノズル82から、図3の駆動軸40及び軸受41(位置A2)に噴射される。
【0043】
図4の第1のオイル通路61の後部に流れたオイルの一部は、第1の注油部71を経て、図6の第1の注油ノズル81から、図3のカムチェーン44とカム駆動スプロケット37との噛み合い始端部(位置A1)に向けて噴射される。
【0044】
図4の第1のオイル通路61の後端部に至ったオイルは、第3のオイル通路63に流入し、第3のオイル通路63内を下端まで流れ、第3の注油部73を経て、図3のギヤ噛み合い部(位置A3)に向けて噴射される。
【0045】
[実施の形態による効果]
(1)エンジン本体1とは別体に形成されたチェーンケースカバー21の壁内に、カムチェーン室潤滑用のオイル通路61,62,63及び注油部71,72,73を形成しているので、エンジン本体側にカムチェーン室給油用のオイル通路を形成する構造と比べ、オイル通路61,62、63を設計する際に、レイアウトの自由度が増え、容易にきり孔加工が行える。特に細くて長いオイル通路用の孔でも容易に加工することができる。
【0046】
(2)重量及び容積の小さいチェーンケースカバー21にオイル通路61,62,63を形成するので、色々な方向へのきり孔加工も容易である。
【0047】
(3)オイル通路61、62,63の通路形成壁部が、カムチェーン室外方に突出するリブ61a、62a、63aを構成しているので、カムチェーンカバー21の剛性を向上させることができる。
【0048】
(4)第2及び第3のリブ62a、63aに関しては、該リブ62a、63a及び該リブ62a、63aから延長されるリブ延長部62c、63cが、チェーンケースカバー21の上端から下端に亘り、直線状にチェーンケースカバー21を縦断しているので、カムチェーンカバー21の剛性をさらに向上させ、これにより、振動騒音を低減することもできる。
【0049】
(5)第1及び第2の注油部71,72には、ねじ式の第1及び第2の注油ノズル81,82を螺着しているので、メンテナンスあるいは取り替えのために、簡単に注油ノズル81,82を着脱できる。
【0050】
(6)第1の注油部71の第1の注油ノズル81は、カムチェーン44とカム駆動スプロケット37との噛み合い始端部(位置A1)に注油するので、カムチェーン44及びカム駆動スプロケット37の耐久性を向上させることが出来ると共に、噛み合い部(位置A1)での衝撃音も低減できる。
【0051】
(7)第2の注油部72の第2の注油ノズル82は、カムチェーン44が巻き掛けられたカム駆動スプロケット37の駆動軸40及び軸受部41に注油するようにしているので、軸受部41の摩耗を低減し、耐久性を向上させることができると共に、カム駆動スプロケット37の滑らかな回転を維持できる。
【0052】
(8)第3の注油部73は、カムチェーン駆動用ギヤ33,34の噛み合い部(位置A3)に向いているので、各ギヤ33,34の摩耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0053】
[その他の実施の形態]
(1)前記実施の形態では、3箇所に注油部71,72,73を設けているが、注油部の数は必要に応じて適宜増減される。
【0054】
(2)前記実施の形態では、チェーンケースをシリンダブロック等のエンジン本体と一体成形してあるが、別体に形成されている構造も、本発明に含まれる。
【0055】
(3)特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン本体
2 下部クランクケース部材(主軸受けケース)
3 シリンダブロック
3a 上部クランクケース部
5 シリンダヘッド
10 クランク軸
20 チェーンケース
21 チェーンケースカバー
25 オイルポンプ
33 カム駆動用動力取出ギヤ
34 中間ギヤ
35 カム駆動ギヤ
37 カム駆動スプロケット
41 カム駆動軸
44 カムチェーン
46 カム軸
61,62,63 オイル通路
61a,62a、63a リブ
61c,62c、63c リブ延長部
67 オイル入口
71,72,73 注油部
81,82 ねじ式注油ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7