特許第5809591号(P5809591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809591
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】インクジェット記録材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20151022BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20151022BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   B41M5/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-69115(P2012-69115)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199064(P2013-199064A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 和泉
(72)【発明者】
【氏名】能宗 浩司
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−022241(JP,A)
【文献】 特開2005−161830(JP,A)
【文献】 実用新案登録第3063499(JP,Y2)
【文献】 特開2004−284200(JP,A)
【文献】 特開2002−200845(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0076529(US,A1)
【文献】 特開平03−143618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を有し、シート面に直線状の折り曲げ指定部分を有するインクジェット記録材料の製造方法であって、刃先の断面形状が半円形の押刃を複数本並べてシート表面に圧接して、折り曲げた際に谷線となる折り曲げ指定部分に直線状で畝状の凸部を設ける、あるいは、折り曲げた際に稜線となる折り曲げ指定部分に直線状で溝状の凹部を設けるインクジェット記録材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げた際、折り曲げ部分の塗層の剥がれ落ちが改善されたインクジェット記録材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式は、記録ヘッドに設けられたノズルからインクの液滴を吐出させ、紙等の記録材料にインクを付着させて画像を記録する印刷方式である。近年では、インク滴の制御技術の進歩とインク及び記録材料の性能向上に伴い、簡単に銀塩写真並みの画像を得られるようになった。一方、商業印刷の分野においても紙等のメディアに直接印刷できるため、少部数の印刷や可変情報印刷(バリアブル印刷)に最適であるインクジェット記録方式が、オンデマンド印刷分野で導入され始めている。
【0003】
従来から、バースディーカード、クリスマスカード、ウエディングカード等の厚手のグリーティングカードでは、適当な画像を印刷し、例えば、二つ折りにして飾ったり、折り曲げて封筒等に入れて送ることが行われている。このグリーティングカードを作製する場合、従来は印刷業者に所定の図柄を指定して印刷していた。しかし、近年ではインクジェット記録方式によって、様々な画像を自在または平易に印刷できるため、インクジェット記録方式にてグリーティングカードが作られる。
【0004】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録材料が知られている。かかるインク受容層としては、水溶性ポリマーを主成分とするインク受容層と、無機微粒子と樹脂バインダーを主成分とする多孔質のインク受容層の2種に大別される。前者のインク受容層は水溶性ポリマーが膨潤することによってインクを吸収し、後者のインク受容層は無機微粒子によって形成された空隙にインクを吸収する。このようなインク吸収のメカニズムの違いから前者は膨潤型(あるいはポリマー型)、後者は空隙型(あるいはマイクロポーラス型)と呼ばれている。
【0005】
インクジェット記録材料の支持体としては、一般に上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の紙支持体や、これら紙支持体を基紙としてその少なくとも一方の面を樹脂で被覆した樹脂被覆紙等が知られている。中でも支持体として樹脂被覆紙を用いた場合、樹脂被覆紙は紙支持体よりも表面の平滑性が高く、インクジェット記録材料に銀塩写真並みの光沢感を付与することが可能となる。しかし樹脂被覆紙自身は紙支持体と異なりインク吸収性を有さない。このため樹脂被覆紙上に設けられるインク受容層には極めて高いインク吸収性が求められ、このようなインク受容層には前述した空隙型のインク受容層が好適に用いられる。
【0006】
空隙型のインク受容層を有するインクジェット記録材料としては、例えば特公平3−56552号公報、特開平10−119423号公報、同2000−211235号公報、同2000−309157号公報等に、気相法シリカとポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなるインク受容層を設けたインクジェット記録材料が開示されている。また特開平9−286165号公報、同平10−181190号公報等には粉砕した沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報には粉砕したゲル法シリカの使用例が開示され、特開昭62−174183号公報、同平2−276670号公報、同平5−32037号公報、同平6−199034号公報等にはアルミナやアルミナ水和物の使用例が開示されている。
【0007】
しかしながら上記した空隙型のインク受容層を有するインクジェット記録材料にも様々な問題があり、例えばインクジェット記録方式にてグリーティングカードを作製し、これを二つ折りにして飾った場合、折り曲げ部分の塗層が剥がれ落ちてその部分だけが白く見えてしまうという問題が生じ、改善が求められていた。
【0008】
折り曲げ性に優れたインクジェット記録材料の製造方法として、例えば特開平09−295454号公報(特許文献1)、特開平10−6638号公報(特許文献2)には、線状の加圧治具を有する加圧機によって、少なくとも一方の面、特にインク受理層面と支持体面の双方から対向した形で加圧することにより区切られた領域を設ける方法、あるいはミシン目加工機によって、ミシン目が貫通することなく、少なくとも一方の面を加圧することにより区切られた領域を設ける方法が開示されている。また特開2005−161830号公報(特許文献3)には、合成樹脂フィルム層または熱可塑性樹脂ラミネート層を設けた面から断面V字状に形成した少なくともインクジェット記録材料の厚さの2/3以上の深さの溝を形成する方法が開示され、特開平11−61699号公報(特許文献4)には、基材上に画像形成層を有する記録媒体において、少なくとも画像形成層が、線状に連続して他の部分よりも薄肉に形成されて、折り曲げやすくなされた易折り曲げ部を設ける方法が開示されている。しかしながら何れも十分満足できるものではなく、更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−295454号公報
【特許文献2】特開平10−6638号公報
【特許文献3】特開2005−161830号公報
【特許文献4】特開平11−61699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、折り曲げた際、折り曲げ部分の塗層の剥がれ落ちが改善されたインクジェット記録材料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
シート状支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を有し、シート面に直線状の折り曲げ指定部分を有するインクジェット記録材料の製造方法であって、刃先の断面形状が半円形の押刃を複数本並べてシート表面に圧接して、折り曲げた際に谷線となる折り曲げ指定部分に直線状で畝状の凸部を設ける、あるいは、折り曲げた際に稜線となる折り曲げ指定部分に直線状で溝状の凹部を設けるインクジェット記録材料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、折り曲げた際、折り曲げ部分の塗層の剥がれ落ちが改善されたインクジェット記録材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるインクジェット記録材料は、グリーティングカード、自立式カレンダー、冊子や綴じ込みファイルの背表紙、ペーパークラフト等に用いる、インクジェット記録後に折り曲げ加工を予定したインクジェット記録材料であって、予めシート面に直線状の折り曲げ指定部分を有する。本発明のインクジェット記録材料の製造方法は、具体的にはこの直線状の折り曲げ指定部分の形成方法に関するものであって、刃先の断面形状が半円形の押刃を複数本重ねてシート表面に圧接して、折り曲げた際に谷線となる折り曲げ指定部分に直線状で畝状の凸部を設ける、あるいは、折り曲げた際に稜線となる折り曲げ指定部分に直線状で溝状の凹部を設ける。凸部と見るか凹部と見るかはシートのどちらの面から見るかによるので、本発明においては、谷折りとする面から見て凸部を設け、山折りとする面から見て凹部を設ける。
【0015】
本発明において、折り曲げ指定部分である直線状で畝状の凸部あるいは直線状で溝状の凹部は、ブレード状の押刃をシート表面に圧接して形成する。凸部あるいは凹部は、シート表面の凹部を形成する部位に押刃を当て、シートの裏面側の凸部を形成する部位に受型を置き、押刃と受型間に一定の圧力をかけることで形成することができる。圧力をかける装置は特に限定されないが、例えば一般的な自動平盤打抜機等を用いることができる。
【0016】
本発明で使用される押刃の刃先の断面形状は半円形である。ここでいう刃先とは、加工シート面に接するブレード端部のことであり、断面形状においてブレード両側面から繋がって半円形を形成している。半円形は、真円や楕円等の略1/2円弧状であることをいう。半円形の直径は0.3〜1.0mmであることが好ましい。刃先は一直線状でも湾曲していても良いが、圧接の効率化の観点から一直線状であることが好ましい。ブレードは一定の厚さの平板状でも、刃先に向かってテーパー状となっていても良いが、本発明においては後述するように押刃を複数本並べて使用することから、一定の厚さの平板状であることが好ましい。
【0017】
本発明では前記の押刃を2本あるいは3本等、複数本並べて使用する。2本が好ましい。並べる際に押刃と押刃の間に隙間があると、折り曲げ部分の塗層が剥がれやすくなる場合があるので、押刃間は隙間を開けないことが好ましい。
【0018】
本発明において凸部の高さあるいは凹部の深さは0.10〜2.0mmであることが好ましい。2.0mmを超えるとインクジェットプリンターでの印刷時にプリンターヘッドが当たりやすくなり、汚れの発生や搬送不良の原因となる場合がある。また、0.10mm未満では、折り曲げ部分の塗層が剥がれやすくなる場合がある。凸部あるいは凹部の幅は0.5〜5mmであることが好ましい。受型は、並べた押刃の幅と加工するシートの厚さ、凸部の高さ、あるいは、凹部の深さ等を考慮した上で、凸部の輪郭を形成する形状として溝状に設計すれば良い。受型の断面形状において、凸部の角部を形成する部分は、押刃刃先の形状に応じた1/4円弧状であることが好ましく、凸部の頂部を形成する部分は、平坦状であっても、並べた押刃間に刃先円弧により形成される微小V字溝状空隙に応じた微小な畝状を有していても良い。また圧接時の圧力も、凸部あるいは凹部が折り曲げ加工時まで形状を保つように適宜調整すれば良い。更に、予め受型の深さを大きく設計しておき、圧接時の圧力を調整することにより凸部の高さ、あるいは、凹部の深さを設定しても良い。
【0019】
本発明において凸部が設けられる面はインク受容層を有する側の面であっても良いし、裏塗り層が設けられた側の面であっても良い。また本発明において凹部が設けられる面はインク受容層を有する側の面であっても良いし、裏塗り層が設けられた側の面であっても良い。このように本発明では、インク受容層が凸部あるいは凹部の何れの側に位置しても、折り曲げ部分の塗層の剥がれ落ちが改善されるという秀逸な効果が得られるため、支持体の両面にインク受容層を有するインクジェット記録材料にとりわけ有効である。また、支持体に予め凸部あるいは凹部を設けておき、その後インク受容層等の塗層を設けても良いが、本発明の秀逸な効果を奏するためには、インク受容層塗設後に凸部あるいは凹部を形成することが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法により製造されるインクジェット記録材料の支持体としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の紙支持体や、これら紙支持体を基紙としてその少なくとも一方の面を樹脂で被覆した樹脂被覆紙等が挙げられる。中でも基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。これらの支持体の厚みは140〜300μmのものが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する基紙としては、天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤を配合しても良い。もしくは、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていても良い。基紙の坪量は120〜270g/mであることが好ましい。また紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましい。
【0022】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0023】
また、支持体の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)から市販されているイルガノックス1010、イルガノックス1076等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0024】
ポリオレフィン樹脂は、走行する基紙上に加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。ポリオレフィン樹脂被覆紙は、その用途に応じて光沢面、マット面等に加工される。また、ポリオレフィン樹脂層の厚みは、片面で5〜30μmが好ましい。
【0025】
支持体上には、下塗り層を設けても良い。この下塗り層は、インク受容層が塗設される前に、予め支持体の表面に塗布乾燥されたものである。下塗り層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。更に、下塗り層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有することができる。支持体に下塗り層を設けることによって、インク受容層塗設時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
【0026】
本発明の製造方法により製造されるインクジェット記録材料は、後述するインク受容層上にコロイダルシリカを主体に含有する最上層を設けても良い。ここで主体とは最表層の全固形分量に対するコロイダルシリカの割合が50質量%以上であることを意味し、コロイダルシリカの割合が80質量%以上、更には90質量%以上であることがより好ましい。コロイダルシリカとしては、例えばスノーテックスXS、スノーテックスOXS、スノーテックスS、スノーテックスST、スノーテックスOS、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスAK、スノーテックス50、スノーテックスO−40、スノーテックスCM、スノーテックス20L、スノーテックスOL、スノーテックスXL、MP−2040、MP4540M、スノーテックスUP、スノーテックスOUP、スノーテックスPS−S、スノーテックスPS−M(以上、日産化学工業(株)製)、PL−1、PL−3L、PL−5、PL−7(以上、扶桑化学工業(株)製)、カタロイドS−20L、カタロイドS−20H、カタロイドS−30L、カタロイドS−30H、カタロイドSI−30、カタロイドSI−40、カタロイドSI−50、カタロイドSI−350、カタロイドSI−45P、カタロイドSI−80P、カタロイドSN、カタロイドSA、カタロイドSB、カタロイドC−125(以上、日揮触媒化成(株)製)等を挙げることができる。
【0027】
最表層が含有するコロイダルシリカとしては非球状コロイダルシリカを用いることが好ましい。非球状コロイダルシリカとは、一般的なコロイダルシリカが球状または球状に近い粒子が連結せずに独立して存在しているのに対して、小さいシリカ粒子が細長く連結した鎖状粒子、またそれらが三次元網目構造を有しているもの、球状の一次粒子が複数個連結した粒子等の形状で存在するコロイダルシリカである。
【0028】
また最表層が含有するコロイダルシリカとしては、平均一次粒子径が30〜60nm、かつ平均一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.4〜3.1であり、かつカチオン性のコロイダルシリカであることが好ましい。なお、平均一次粒径は一次粒径が判別できるまで分散された粒子の電子顕微鏡写真より一定面積内に存在する100個の粒子各々の平均粒径のことであり、平均一次粒径に対する平均二次粒径の比は、上記で求めた平均一次粒径に対する連なったコロイダルシリカの直径を求め、比を算出した値である。
【0029】
コロイダルシリカのカチオン化は、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、カチオン性シランカップリング剤等により、コロイダルシリカの表面を修飾することで、あるいはコロイダルシリカの製造過程で粒子表面にカチオン性基を導入することでカチオン化することができる。表面の装飾にあたってはカチオン性シランカップリング剤及び水溶性多価金属化合物によるカチオン化が好ましく、水溶性多価金属化合物がより好ましい。その際のゼータ電位の測定値は+5〜+70mVであることが好ましい。
【0030】
インク受容層上に積層される最表層に含有されるコロイダルシリカの固形分塗布量は、0.05〜0.5g/mが好ましく、0.08〜0.2g/mの範囲がより好ましい。
【0031】
また最表層は樹脂バインダーを含有することもできる。かかる樹脂バインダーとしては後述するインク受容層で使用する樹脂バインダーと同義である。
【0032】
本発明の製造方法により製造されるインクジェット記録材料は支持体上に少なくとも1層のインク受容層を有するが、かかるインク受容層は空隙型のインク受容層であることが好ましく、平均二次粒径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有するインク受容層であることがより好ましい。ここで主体に含有するとは、インク受容層の固形分塗布量に対して、無機微粒子を50質量%以上含有することであり、より好ましくは60質量%以上含有することである。
【0033】
インク受容層が含有する平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等が挙げられ、またこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、合成シリカ、アルミナあるいはアルミナ水和物が好ましく、これらの無機微粒子は高い印字濃度及び鮮明な画像が得られ、かつコスト面で有利である。本発明で更に好ましい無機微粒子は、非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物である。
【0034】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカに大別することができる。気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化珪素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0035】
湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕しやすい粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件化で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。
【0036】
本発明で使用することができる気相法シリカについて説明する。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nmでかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250〜500m/g)のものを用いることである。なお、ここでいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0037】
インク受容層には、気相法シリカをカチオン性ポリマーの存在下で、該気相法シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nmに分散したものが使用できる。該気相法シリカの平均二次粒子径を500nm以下とするには、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。なお、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた記録材料のインク受容層を電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的には分散液についてレーザー散乱式の粒度分布計(例えば(株)堀場製作所製LA920)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0038】
上記気相法シリカの分散に使用するカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。カチオン性ポリマーの使用量は気相法シリカに対して1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0039】
次に湿式法シリカについて説明する。本発明で用いられる湿式法シリカは、沈降法シリカあるいはゲル法シリカである。これらの粉砕前のシリカ粉末は、その平均一次粒子径が50nm以下、より好ましくは3〜40nmでかつ平均凝集粒子径(二次粒子径)が5〜50μmであるのが好ましい。本発明では、これらの湿式法シリカを、例えばボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用することで、水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nmに粉砕したものを使用することができる。上記の粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行われるのが好ましい。
【0040】
通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均凝集粒子径を有するため、これを粉砕して使用する。該湿式法シリカの平均二次粒子径を500nm以下とするには、粉砕方法として、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。この際、分散液の初期粘度上昇が抑制され、高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集粒子径5μm以上の沈降法シリカを使用することが好ましい。高濃度分散液を使用することによって、記録材料の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づき測定される。
【0041】
本発明に用いられる湿式法シリカの粉砕方法は、前記の気相法シリカの分散と同様の方法が使用できる。また、分散剤として前記の気相法シリカをカチオン化するのに使用されるものと同様のものが使用できる。
【0042】
本発明のインク受容層に用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカが好ましい。前述したように、沈降法シリカは、その二次粒子が緩やかな凝集粒子であるので、粉砕するのに好適である。
【0043】
またインク受容層が含有する平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としてアルミナまたはアルミナ水和物も好適に用いられる。アルミナまたはアルミナ水和物は、酸化アルミニウムやその含水物であり、結晶質でも非晶質でも良く、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものが使用される。両者の何れかを使用しても良いし、併用しても良い。
【0044】
本発明に用いることのできる酸化アルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは50〜300nm程度まで分散したものが使用できる。
【0045】
本発明に用いることのできるアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。酸化アルミニウム含水物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは10〜300nmである。
【0046】
本発明に用いられるアルミナ及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ギ酸、メタンスルホン酸、塩酸、硝酸等の公知の分散剤によって平均二次粒子径が500nm以下まで分散されたものが好ましく用いられる。
【0047】
インク受容層は、皮膜としての特性を維持するためと、透明性が高くインクのより高い浸透性を得るために親水性の樹脂バインダーが用いられる。樹脂バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル系やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい樹脂バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上のもの、または完全ケン化したものである。平均重合度は500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0048】
インク受容層において樹脂バインダーと無機微粒子の混合比は好ましい範囲があり、無機微粒子の種類によって好ましい範囲が適宜選択される。合成シリカに対しては、10〜30質量%の樹脂バインダーを用いるのが好ましく、特に12〜25質量%用いるのが好ましい。アルミナまたはアルミナ水和物に対しては、5〜25質量%の樹脂バインダーを用いるのが好ましく、特に7〜15質量%用いるのが好ましい。
【0049】
インク受容層は、単層であっても2層以上あっても良い。インク受容層の固形分塗布量は、塗布する無機微粒子によって異なる。気相法シリカ単層の場合の固形分塗布量は、5〜30g/mが好ましく、15〜30g/mの範囲がより好ましい。アルミナまたはアルミナ水和物単層の場合の固形分塗布量は、10〜40g/mが好ましく、15〜35g/mがより好ましい。気相法シリカと、アルミナ及びアルミナ水和物を重層する際の総固形分量は、10〜40g/mが好ましく、15〜35g/mがより好ましい。
【0050】
本発明のインク受容層は、樹脂バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号明細書記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号明細書記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号明細書記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号明細書記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号明細書記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号明細書記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号明細書記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する樹脂バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0051】
本発明において、インク受容層及び最上層には、皮膜の脆弱性を改良する各種油滴、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0052】
本発明において、インク受容層及び最上層を設ける際の塗布方法は特に限定されないが、スライドビードコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等の塗布装置を単独及び組み合わせて使用できる。インク受容層と最上層を同時塗布する場合は、スライドビードコーター、カーテンコーターの塗布装置が使用できる。インク受容層を塗布後、最上層を逐次塗布する場合は、上記塗布装置を適宜組み合わせて使用することができる。本発明で同時塗布とは各層をほぼ同時に塗布することである。逐次塗布とは、減率乾燥工程以降においてインク受容層の空隙が形成された後、最上層の塗布液を塗布することである。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【0054】
<実施例1>
〔支持体の作製〕
広葉樹クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアンスタンダードフリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して0.2%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量240g/mになるように抄造し、乾燥調湿して支持体の基紙とした。抄造した基紙の両面それぞれに、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂に対して、10%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ17μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0055】
上記支持体の両面それぞれに、下記組成のインク受容層塗布液を、各面の固形分量が25g/mになるようにスライドビード塗布装置で塗布し、5℃30秒間冷却後、40℃10%RHで乾燥終了点まで乾燥した。その後それぞれの面に、下記組成の最上層塗布液をコロイダルシリカ固形分量が0.1g/mになるようにグラビア塗布装置で逐次塗布し、50℃で乾燥した。
【0056】
〔気相法シリカ分散液〕
水にジメチルジアリルアルミニウムクロライドホモポリマー(分子量:9000)3部と気相法シリカ(平均一次粒径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20質量%の気相法シリカ分散液を作製した。なお、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置での測定による気相法シリカの平均二次粒径は80nmであった。
【0057】
〔インク受容層塗布液〕
気相法シリカ分散液 103部
ほう酸 5部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
固形分濃度が12質量%になるように水で調整した。
【0058】
〔最上層塗布液〕
水にクォートロンPL−3L(扶桑化学工業(株)製コロイダルシリカ)を100部加え、固形分濃度5質量%液を調製後、撹拌しながら、約10分間かけて10部のタキバイン#1500(多木化学(株)製ポリ塩化アルミニウム水溶液;固形分濃度23.5質量%)を添加し、カチオン性コロイダルシリカを得た。添加終了後、温度80℃で1時間撹拌した後、室温にまで冷却し、固形分濃度が0.6質量%になるよう水で調整した。作製した最上層塗布液1をゼータ電位測定装置(ベックマン・コールター社製DELSA 440SX)でゼータ電位を測定した結果、+45mVであった。また、電子顕微鏡観察によるカチオン性コロイダルシリカの平均一次粒径は35nm、平均一次粒径に対する平均二次粒径の比は1.5であった。
【0059】
上記のようにして得られたインクジェット記録材料を178mm×254mmのシートに裁断した。自動平盤打抜機に、一直線状で断面形状が直径0.45mmの半円形の刃先を有する厚さ0.45mmの押刃を2本、隙間を開けずに並べて装着し、相対する受型を装着した。受型は、並べた押刃の幅約0.9mmと加工するシートの厚さ、形成する凸部の高さ0.2mmに応じて溝状に設計した。受型の断面形状において、凸部の角部を形成する部分は、押刃刃先の形状に応じた1/4円弧状とし、凸部の頂部を形成する部分は平坦状とした。この自動平盤打抜機を用いて、上記のインクジェット記録材料の一方の長辺の中央部ともう一方の長辺の中央部を結ぶラインに渡って幅約1.5mm高さ約0.2mmの畝状凸部(反対の面から見て凹部)を設けた。
【0060】
<比較例1>
押刃を、一直線状で断面形状が直径0.45mmの半円形の刃先を有する厚さ0.45mmの押刃1本に変更し、それに応じて設計した1/2円弧状の受型を用いた以外は実施例1と同様にして、幅約1mm高さ約0.2mmの畝状凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けた。
【0061】
<比較例2>
押刃を、一直線状で断面形状が幅0.45mmで角部が直角である角形の刃先を有する厚さ0.45mmの押刃2本(隙間を開けずに並べて装着)に変更し、それに応じて設計した角部が直角の受型を用いた以外は実施例1と同様にして、幅約1.5mm高さ約0.2mmの畝状凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けた。
【0062】
<実施例2>
押刃を、一直線状で断面形状が直径0.75mmの半円形の刃先を有する厚さ0.75mmの押刃2本(隙間を開けずに並べて装着)に変更し、それに応じて設計した角部が1/4円弧状の受型を用いた以外は実施例1と同様にして、幅約2.1mm高さ約0.35mmの畝状凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けた。
【0063】
<実施例3>
凸部の高さが0.12mmとなるように受型を設計した以外は実施例1と同様にして、幅約1.3mm高さ約0.12mmの畝状凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けた。
【0064】
<実施例4>
押刃を、一直線状で断面形状が直径0.45mmの半円形の刃先を有する厚さ0.45mmの押刃3本(隙間を開けずに並べて装着)に変更し、それに応じて溝幅を変更した受型を用いた以外は実施例1と同様にして、幅約2mm高さ約0.2mmの畝状凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けた。
【0065】
上記のようにして、一方の面に凸部(反対の面から見て溝状凹部)を設けたインクジェット記録材料について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
<塗層剥がれ>
両面に写真画像をインクジェットプリンターで印字後、畝状凸部を谷線として(溝状凹部を稜線として)谷側の面が完全に接するまで記録材料を折り曲げ、折り曲げ箇所の塗層剥がれ(山側、谷側)を評価した。
◎:山側、谷側共に塗層剥がれなし。
○:山側にわずかに塗層剥がれがある。
△:山側に白線状の塗層剥がれがある。
×:山側、谷側共に塗層剥がれがある。
【0067】
【表1】
【0068】
上記の結果から明らかなように、本発明により、折り曲げた際の塗層の剥がれ落ちが改善された、インクジェット記録材料が得られることが判る。