(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809648
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】電気通信システム及び電気通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/04 20090101AFI20151022BHJP
H04W 60/00 20090101ALI20151022BHJP
H04W 80/04 20090101ALI20151022BHJP
【FI】
H04W8/04
H04W60/00
H04W80/04
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-3813(P2013-3813)
(22)【出願日】2013年1月11日
(62)【分割の表示】特願2009-502176(P2009-502176)の分割
【原出願日】2007年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-123242(P2013-123242A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2013年2月12日
(31)【優先権主張番号】06290517.9
(32)【優先日】2006年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504179613
【氏名又は名称】オランジュ エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャオバオ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス、フィリップ
【審査官】
青木 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−152277(JP,A)
【文献】
特開平09−074584(JP,A)
【文献】
Xiaoming Fu,他6名,QoS-Conditionalized Binding Update in Mobile IPv6,NSIS Working Group ,Internet-Draft,2002年 1月15日,URL,http://tools.ietf.org/html/draft-tkn-nsis-qosbinding-mipv6-00
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 7/24 − 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットプロトコルをそれぞれ用いる複数の移動ノードに、複数の通信セッションの機能を提供する電気通信システムにおいて、
上記移動ノードが、当該第1のパケットデータネットワークに加入するときに、上記通信セッションを提供するためのインターネットパケットを、該移動ノードに/から通信する第1のパケットデータネットワークと、
上記移動ノードが、当該第2のパケットデータネットワークに加入するときに、上記通信セッションを提供するためのインターネットパケットを、該移動ノードに/から通信する第2のパケットデータネットワークとを備え、
上記移動ノードは、
上記第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、該第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、他の移動ノードに/から通信される他のインターネットパケットに対する優先度であって、当該移動ノードに/から通信するインターネットパケットに与える要求優先度を表すサービスレベル識別子を生成し、
上記第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、該第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、当該移動ノードの気付アドレスを提供する対応付け更新インターネットパケットを生成し、
上記サービスレベル識別子の指示を、上記対応付け更新インターネットパケットに含ませ、
上記対応付け更新インターネットパケットを、当該移動ノードのホームエージェントに通信し、
上記ホームエージェントは、上記複数の移動ノードによってそれぞれ通信される複数の対応付け更新に応じて、
各対応付け更新の上記サービスレベル識別子を識別し、
上記識別されたサービスレベル識別子によって表される要求優先度に基づいて、上記通信されてきた対応付け更新毎の優先度を差別化し、
上記差別化優先度に基づいて対応付け更新を処理することを特徴とする電気通信システム。
【請求項2】
上記ホームエージェントは、1つの通信ノードによって通信されてきた1つの対応付け更新に応じて、該移動ノードのホームアドレスに関連した上記サービスレベル識別子を設定することを特徴とする請求項1記載の電気通信システム。
【請求項3】
上記サービスレベル識別子の指示は、上記インターネットパケットのヘッダ内のデータフィールドの値によって提供されることを特徴とする請求項1又は2記載の電気通信システム。
【請求項4】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン4インターネットパケットのサービスタイプフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項1又は2記載の電気通信システム。
【請求項5】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン4インターネットパケットのDiffservフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項1又は2記載の電気通信システム。
【請求項6】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン6インターネットパケットのトラヒックオブジェクトクラスフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項1又は2記載の電気通信システム。
【請求項7】
上記ホームエージェントは、上記移動ノードのホームアドレスに関連した上記サービスレベル識別子を保存するプロファイルキャッシュを維持することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の電気通信システム。
【請求項8】
上記ホームエージェントは、上記サービスレベル識別子によって表される要求優先度を、上記ホームアドレスに関連して予め設定されたプリセット優先度と比較して、該要求優先度が該プリセット優先度を超えていない場合、該要求優先度に基づいて、上記インターネットパケットを処理することを特徴とする請求項7記載の電気通信システム。
【請求項9】
上記サービスレベル識別子は、UDPインターネットプロトコル及びTCPインターネットプロトコルのうちの少なくとも1つの表現を含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の電気通信システム。
【請求項10】
インターネットプロトコルをそれぞれ用いる複数の移動ノードに、複数の通信セッションを提供する電気通信方法において、
上記移動ノードが第1のパケットデータネットワークに加入するときに、該第1のパケットデータネットワークによって、該移動ノードに/からインターネットパケットを通信するステップと、
上記移動ノードが第2のパケットデータネットワークに加入するときに、該第2のパケットデータネットワークによって、該移動ノードに/からインターネットパケットを通信するステップと、
上記移動ノードが、上記第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、該第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、他の移動ノードに/から通信される他のインターネットパケットに対する優先度であって、当該移動ノードに/から通信するインターネットパケットに与える要求優先度を表すサービスレベル識別子を生成するステップと、
上記移動ノードが、上記第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、該第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、当該移動ノードの気付アドレスを提供する対応付け更新インターネットパケットを生成するステップと、
上記移動ノードが、上記サービスレベル識別子の指示を、上記対応付け更新インターネットパケットに含ませるステップと、
上記移動ノードが、上記対応付け更新インターネットパケットを、上記移動ノードのホームエージェントに通信するステップと、
上記ホームエージェントが、上記対応付け更新に応じて、上記サービスレベル識別子を識別するステップと、
上記ホームエージェントが、上記識別されたサービスレベル識別子によって表される要求優先度に基づいて、上記通信されてきた対応付け更新毎の優先度を差別化するステップと、
上記ホームエージェントが、上記差別化優先度を処理するステップとを有する電気通信方法。
【請求項11】
上記ホームエージェントが、上記移動ノードのホームアドレスに関連した上記サービスレベル識別子を設定するステップを更に有する請求項10記載の電気通信方法。
【請求項12】
上記サービスレベル識別子の指示は、上記インターネットパケットのヘッダ内のデータフィールドの値によって提供されることを特徴とする請求項10又は11記載の電気通信方法。
【請求項13】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン4インターネットパケットのサービスタイプフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項10又は11記載の電気通信方法。
【請求項14】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン4インターネットパケットのDiffservフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項10又は11記載の電気通信方法。
【請求項15】
上記サービスレベル識別子は、インターネットプロトコルバージョン6インターネットパケットのトラヒックオブジェクトクラスフィールド内の未割当ビットによって提供されることを特徴とする請求項10又は11記載の電気通信方法。
【請求項16】
上記ホームエージェントが、上記移動ノードのホームアドレスに関連した上記サービスレベル識別子を保存するプロファイルキャッシュを維持するステップを更に有する請求項10乃至15いずれか1項記載の電気通信方法。
【請求項17】
上記ホームエージェントが、上記サービスレベル識別子によって表される要求優先度を、上記ホームアドレスに関連して予め設定されたプリセット優先度と比較するステップと、
上記要求優先度が上記プリセット優先度を超えていない場合、上記ホームエージェントが、該要求優先度に基づいて、上記インターネットパケットを処理するステップを更に有する請求項16記載の電気通信方法。
【請求項18】
上記サービスレベル識別子を生成するステップは、UDPインターネットプロトコル及びTCPインターネットプロトコルのうちの少なくとも1つの表現を生成するステップを含むことを特徴とする請求項10乃至17いずれか1項記載の電気通信方法。
【請求項19】
電気通信システムの一部を構成し、複数の移動ノードからの、要求優先度を表すサービスレベル識別子をそれぞれ含む複数の対応付け更新の受信に応じて動作するホームエージェントにおいて、
上記サービスレベル識別子を識別し、
上記識別されたサービスレベル識別子によって表される要求優先度に基づいて、上記通信されてきた対応付け更新毎の優先度を差別化し、
上記差別化優先度に基づいて対応付け更新を処理するホームエージェント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のネットワーク及び第2のネットワークを含むパケット通信網を用いて、移動ノードに移動通信機能を提供し、移動ノードへの/からのパケットの通信を容易にするために、移動ノードから移動ノードのホームエージェントに対応付け更新メッセージを送信する電気通信システム及び電気通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルインターネットプロトコル(Mobile Internet Protocol:モバイルIP)は、
移動通信ネットワークにおいてIPベースの通信をサポートするために、インターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)パケットを用いて通信する手順を提供する。モバイルIPの1つの特徴は、移動ノードがそのホームネットワークに接続されているときにIPパケットを配信する及びIPパケットを受信するIPアドレスと同じIPアドレスを用いて、この移動ノード宛のIPパケットをこの移動ノードに送信できることを保証しながら、移動ノードが1つのネットワークから他のネットワークに移動することができる方式を提供することである。
【0003】
モバイルIPの1つの特徴は、移動ノードがネットワーク間を移動する機構である。これは、移動ノードをホームネットワーク及びホームエージェントに関連付けることによって達成される。移動ノードに送信するIPパケットは、移動ノードのホームネットワーク内の移動ノードのホームアドレスに宛てられる。ホームエージェントは、移動ノードが他のネットワークに移動している場合、ホームネットワークに入ってくるパケットを監視して、この移動ノードのホームアドレスに宛てられたパケットを捕捉する。そして、ホームエージェントは、あらゆる捕捉したパケットを、移動ノードが現在接続されている移動アクセス網を介して移動ノードに転送する。この構成を実現するためには、ホームエージェントは、移動ノードの所在を知っている必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホームエージェントを機能させるこの構成の場合、ホームエージェントは、移動ノードの所在を知らねばならない。移動ノードは、ホームネットワークから訪問先ネットワークに移動したことを検出したとき、気付アドレス(care of address)について交渉する。気付アドレスは、訪問先ネットワークによって移動ノードに割り当てられる一時的なアドレスである。そして、移動ノードは、対応付け更新要求(binding update request)をホームエージェントに送信する。対応付け更新要求は、一時的気付アドレスを含んでいる。ホームエージェントは、移動ノードから対応付け更新要求を受信したとき、IPパケットを移動ノードに/から通信できるようにする対応付け更新手順を実行する。対応付け更新手順は、IP規格のどのバージョン(すなわち、IPv4又はIPv6)が用いられているかによって異なるが、通常、ホームエージェントと移動ノード間にトンネルを確立することが必要である。また、対応付け更新の前、最中又は後に、他の機能、例えば加入者の識別、認証及び課金を実行することができる。それは、モバイルIPにおけるモビリティサポートの目的であり、ネットワーク間のその移動は、ユーザに対してトランスペアレントである。したがって、データ通信セッション、例えば音声通話又はインターネットセッションに携わっている移動ノードでは、理想的には、データ伝送における顕著な中断や遅延が生じないようにするべきである。
【0005】
あるシナリオ、例えば、空港又は移動輸送システム、例えば電車内における「ホットスポット」では、多数の移動ノードがネットワーク間を移動する可能性がある。この結果、これに対応する多数の対応付け更新要求が起こり、対応付け更新手順を実行するネットワークの部分に対する要求も増える。このような要求が多すぎると、データ伝送の遅延及び中断が生じる虞がある。これらの遅延は、リアルタイム又はリアルタイムに近いデータ伝送を必要とするアプリケーション、例えば音声通話又はインスタントメッセージングに携わっているユーザに目立つ。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インターネットプロトコルをそれぞれ用いる複数の移動ノードに、複数の通信セッションの機能を移動ノードに提供する電気通信システムを提供する。電気通信システムは、移動ノードが、第1のパケットデータネットワークに加入するときに、通信セッションを提供するためのインターネットパケットを、移動ノードに/から通信する第1のパケットデータネットワークと、移動ノードが、第2のパケットデータネットワークに加入するときに、通信セッションを提供するためのインターネットパケットを、移動ノードに/から通信する第2のパケットデータネットワークとを備える。移動ノードは、第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、他の移動ノードに/から通信される他のインターネットパケットに対する優先度であって、当該移動ノードに/から通信するインターネットパケットに与える要求優先度を表すサービスレベル識別子を生成する。また、移動ノードは、第1及び第2のパケットデータネットワークの一方から、第1及び第2のパケットデータネットワークの他方に加入を変更するときに、当該移動ノードの気付アドレスを提供する対応付け更新インターネットパケットを生成し、サービスレベル識別子の指示を、対応付け更新インターネットパケットに含ませる。更に、移動ノードは、対応付け更新インターネットパケットを、当該移動ノードのホームエージェントに通信する。ホームエージェントは、複数の移動ノードによってそれぞれ通信される複数の対応付け更新に応じて、各対応付け更新のサービスレベル識別子を識別し、識別されたサービスレベル識別子によって表される要求優先度に基づいて、通信されてきた対応付け更新毎の優先度を差別化し、差別化優先度に基づいて対応付け更新を処理する。
【0007】
本発明の実施の形態は、移動ノードが1つのネットワークから他のネットワークに加入を切り換えたとき、移動ノードに/から送信するインターネットプロトコルパケットを、移動ノードによって要求される優先度に応じて差別化する機能を提供する。対応付け更新インターネットパケットによってサービスレベル識別子を提供することにより、ホームエージェントは、サービスの要求されるレベルに基づいて、移動ノードに/からのインターネットパケットの通信を優先させることができる。したがって、電気通信システムは、優先度が高いデータ伝送を必要とするアプリケーションを実行している移動ノードが、優先度が低いデータ伝送を必要とするアプリケーションを実行している移動ノードによるネットワークリソースの使用のために、データの通信における中断又は遅延を経験しないように、ネットワークリソースの使用効率を向上させることができる。
【0008】
電気通信システムの一実施の形態においては、一旦、対応付け更新インターネットパケットが移動ノードによって発行されると、ホームエージェントは、サービスレベル識別子によって表される要求優先度に基づいて、対応付け更新処理を実行する。要求優先度に基づいて対応付け更新処理を実行することによって、電気通信システムは、ホームエージェントによって実行される対応付け更新処理の順序が、サービスレベル識別子によって表される優先度に基づいて決定されるという趣旨において、ネットワークリソースを相対的優先度に基づいて使用することができる。優先度が高いデータ伝送を必要とするアプリケーション実行している移動ノードは、1つのネットワークから他のネットワークに移動したときに、ネットワークへの対応付け更新が優先されるので、データ通信の中断又は遅延が生じる可能性が低減され、一方、優先度が低いデータ伝送を必要とするアプリケーションを実行している移動ノードの対応付け更新は、より低い優先度に基づいて実行される。
【0009】
幾つかの具体例では、ホームエージェントは、対応付け更新に応じて、移動ノードのホームアドレスと1対1の関係でサービスレベル識別子を設定してもよい。そして、ホームエージェントは、サービスレベル識別子の指示及び/又は他のモバイル機能に基づいて、対応付け更新処理を差別化することができる。
【0010】
本発明の様々な更なる側面及び特徴は、特許請求の範囲に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ホームネットワークから訪問先ネットワークに移動する移動ノードを簡略化して示す図である。
【
図2】対応付け更新手順に関連するメッセージを示すタイミングチャートである。
【
図3】サービスレベル識別子を含むように適応化された対応付け更新IPパケットの送信を示す図である。
【
図4】サービスレベル識別子を含むように適応化された対応付け更新IPパケットの送信及びサービスレベル識別子キャッシュを示す図である。
【
図5】サービスレベル識別子を含むように適応化された対応付け更新IPパケットの送信、サービスレベル識別子キャッシュ及び認証サーバを示す図である。
【
図6】タイプ又はサービスフィールドの未使用ビットにサービスレベル識別子を含ませるIPv4ヘッダの適応化を説明する図である。
【
図7】Diffservフィールドの未使用ビットにサービスレベル識別子を含ませるIPv4ヘッダの適応化を説明する図である。
【
図8】トラヒッククラスオブジェクトフィールドの未使用ビットにサービスレベル識別子を含ませるIPv6ヘッダの適応化を説明する図である。
【
図9】TCPプロトコルを用いて伝送されたパケットを表すサービスレベル識別子ビットの構成及びUDPプロトコルを用いて伝送されたパケットを表すサービスレベル識別子ビットの構成を示す図である。
【
図10】移動ノードが対応付け更新を実行し、サービスレベル識別子を用いて優先度を要求する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を例示的に説明する。ここで、同様の部分には、対応する参照符号を付している。
【0013】
ここでは、モバイルインターネットプロトコル(モバイルIP)ベースのシステムに関連して、本発明の例示的な実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、モバイルIPパケットシステムの概略図を示している。移動ノード(mobile node:MN)2は、ホームネットワーク(home network:HN)5から訪問先ネットワーク(visited network:VN)1に移動している。IPパケットは、移動ノード2に/から、無線アクセスゲートウェイ(wireless access gateway:WAG)3を介して、ホームネットワーク5内のホームエージェント(home agent:HA)4に通信される。移動ノード2に/から通信されるIPパケットは、ホームエージェント4を介して、この先の外部IPネットワーク6に/から通信することができる。移動ノード2は、ホームネットワーク5内のホームアドレスを有し、外部IPネットワーク6から移動ノード2に送信される全てのパケットは、このホームアドレスに宛てられる。
【0015】
図2に示すように、移動ノード2が、自らがホームネットワーク5から訪問先ネットワーク1に移動したことを検出したとき、移動ノード2は、訪問先ネットワーク1に一時的「気付アドレス(care of address:CoA)」を要求する。訪問先ネットワーク1から移動ノード2に気付アドレスが割り当てられたとき、移動ノード2は、対応付け更新(binding update)IPパケット23をホームエージェント4に送信する。対応付け更新IPパケット23は、移動ノード2の一時的気付アドレスを含む対応付け更新メッセージ(binding update message)24を含んでいる。ホームエージェント4は、対応付け更新IPパケット23を受信すると、割り当てられた気付アドレスを移動ノード2のホームアドレスに関連付ける。ホームエージェント4は、ホームネットワーク5に入ってくるIPパケットを監視し、移動ノード2のホームアドレスに宛てられたIPパケットを捕捉する。そして、ホームエージェント4は、捕捉したIPパケットを移動ノード2の気付アドレスに転送する。
【0016】
[サービスレベル識別子]
一実施の形態においては、
図3に示すように、リアルタイム又はリアルタイムに近いデータ伝送を必要とする移動ノードのユーザが体験するデータ伝送の遅延及び中断に関連した問題を削減するために、移動ノード31は、サービスレベル識別子(SID)37を含むように対応付け更新IPパケット35を適応化する。サービスレベル識別子37は、モバイルIPシステム内で動作する他の移動ノードから受信されるIPパケットに対する優先度であって、移動ノード31に/から通信するIPパケットに与える優先度を表している。ホームエージェント32は、対応付け更新IPパケット35を受信すると、対応付け更新IPパケット35内に含まれているサービスレベル識別子37を検査し、このサービスレベル識別子37に基づいて、移動ノード31から送信及びに受信されるIPパケットに優先度を与える。
【0017】
他の実施の形態では、リアルタイム又はリアルタイムに近いデータ伝送を必要とする移動ノードのユーザが体験するデータ伝送の遅延及び中断に関連した問題を削減するために、ホームネットワークのホームエージェントは、移動ノードから受信される対応付け更新IPパケットのサービスレベル識別子に基づく処理を優先させる。このような優先度付与によって、ホームエージェントは、優先度が高いデータ伝送を必要とする移動ノードからの対応付け更新を、優先度が低いデータ伝送を必要とする移動ノードの対応付け更新を処理する前に、処理することができる。
【0018】
[サービスレベル識別子キャッシュ]
図4に示すように、ホームエージェント32は、サービスレベル識別子キャッシュ34を維持している。ホームエージェント32は、対応付け更新IPパケット35を受信すると、サービスレベル識別子37を検査し、サービスレベル識別子37を、移動ノード31に関連したホームアドレスに関連付けて、サービスレベル識別子キャッシュ34に保存する。
図5に示すように、ホームエージェント32は、要求優先度を表すサービスレベル識別子37を、移動ノード31のホームアドレスに関連付けて保存されたプロファイルと比較することができる。この保存されたプロファイルは、認証サーバ33によって保存されており、移動ノード31に与えることが認証されているプリセット優先度を示している。認証されたプリセット優先度は、所定のサービスレベルに基づいて決定することができる。サービスレベル識別子37によって表される要求優先度が、認証サーバ33に保存されているプロファイルによって示されている優先度よりも低い場合、ホームエージェント32は、移動ノード31への/からのIPパケットの通信に、要求優先度を与える。この比較は、ホームエージェント32がサービスレベル識別子37の詳細を認証サーバ33に送信することによって行うことができる。そして、認証サーバ33は、移動ノードに与える優先度を確認する応答をホームエージェント32に返す。
【0019】
サービスレベル識別子のサービスタイプフィールド
図3において、対応付け更新IPパケット35は、IPv4パケットであり、対応付け更新メッセージは、対応付け更新IPパケット35内にカプセル化されている。サービスレベル識別子は、IPパケットのヘッダのサービスタイプ(type of service:TOS)フィールドの未使用ビットに格納される。これを
図6に示す。
【0020】
[サービスレベル識別子のDiffservマーキング]
図7は、IPv4パケットのヘッダの「Diffserv」フィールドの未使用ビットに格納されているサービスレベル識別子を示している。幾つかのIPシナリオでは、TOSフィールドは、Diffservフィールドとして再定義される。これは、例えば、モバイルIPシステム内のIPネットワークが、「差別化サービス(Differentiated Service)」プロトコル規約を用いるときに起こる。これは、Diffservフィールドの下位2ビット以外の全てビットの値によって示されるサービス品質に基づいてIPパケットを転送する規約である。この場合、Diffserv(TOS)フィールドの下位2ビットは、サービスレベル識別子を表すために用いられる。これを
図7に示す。
【0021】
[サービスレベル識別子のIPv6フローID]
図8に示すように、IPv6インターネットプロトコルを用いるモバイルIPベースシステムの一実施の形態では、サービスレベル識別子をIPv6パケットのヘッダのフローIDフィールドの未使用ビットに格納することができる。
【0022】
[TCP/UDP]
IPパケットのリアルタイム又はリアルタイムに近い通信を必要とするアプリケーションに携わっている移動ノードは、IPユーザデータグラムプロトコル(user datagram protocol:UDP)セッションを用いる可能性がある。UDPプロトコルは、あらゆるエラー訂正を含まないので、比較的簡単で高速である。したがって、UDPは、IPパケットが時々喪失し又は間違った順序で到着することが問題とならないインターネットパケットの高速通信を必要とするアプリケーションに適している。このようなアプリケーションには、データストリーミング及び音声サービス、例えばボイスオーバIP(VoIP)が含まれる。
【0023】
一方、IPパケットの非リアルタイム、すなわち「ベストエフォート型」通信を必要とするアプリケーションに携わっている移動ノードは、IP伝送制御プロトコル(transmission control protocol:TCP)セッションを用いる可能性がある。このプロトコルは、エラー訂正を含み、したがって、インターネットパケットのリアルタイム通信を必要としないが、IPパケットの喪失及びIPパケットが間違った順序で到着することを防ぐことが重要であるアプリケーションに適している。このようなアプリケーションには、ウェブブラウジング及び電子メールが含まれる。
【0024】
一実施の形態においては、
図9に示すように、移動ノードが実行しているアプリケーションが、TCP/IPプロトコルを用いるアプリケーションである場合、移動ノードによって対応付け更新メッセージに挿入されるサービスレベル識別子ビット51は、「10」に設定される。一方、移動ノードが実行しているアプリケーションが、UDP/IPプロトコルを用いるアプリケーションである場合、サービスレベル識別子ビット51は、「01」に設定される。
【0025】
[発明の要約]
本発明に基づき、移動ノードが対応付け更新を実行する処理の手順を
図10のフローチャートに示す。すなわち、
図10は、移動ノードに/から通信するホームエージェントによって受信されるインターネットプロトコルパケットを処理するサービスレベル識別子を、移動ノードがそのホームエージェントに提供する処理を要約している。以下、
図10について説明する。
【0026】
ステップS1において、移動ノードが1つの移動アクセス網から他の移動アクセス網に移動する。これは、例えば、そのホーム移動アクセス網から訪問先移動アクセス網への移動であるが、移動ノードは、既に訪問先移動アクセス網に移動しており、更なる移動アクセス網に移動できることはいうまでもない。いずれにせよ、本発明を等しく適用することができ、以下に例示する処理ステップを実行することができる。したがって、移動ノードは、新たな移動アクセス網に入ったこと、新たな移動アクセス網を介してインターネットプロトコルパケットを通信する気付アドレスを取得しなければならいことに気付く。
【0027】
ステップS2において、移動ノードは、気付アドレスを取得し、気付アドレスは、移動ノード自体が生成し、又は新たな移動アクセス網内のフォーリンエージェントによって提供される。例えば、インターネットプロトコルがバージョン4(IPv4)である場合、気付アドレスは、フォーリンエージェントが供給する方がより適切である。そして、移動ノードは、対応付け更新手順を開始し、新たな訪問先移動アクセス網に接続されている間にインターネットパケットをその移動ノードに通信するために用いられる気付アドレスを、そのホームネットワーク内のホームエージェントに通知する。更に、移動ノードは、サービスレベル識別子を含む対応付け更新パケットを生成する。サービスレベル識別子は、その移動ノードからのインターネットプロトコルパケットの処理に与えることができる相対的優先度によって、その移動ノードに与えるサービスレベルを識別する。
【0028】
そして、ステップS3において、移動ノードは、対応付け更新パケットを、そのホームネットワーク内のそのホームエージェントに通信する。
【0029】
ステップS4において、ホームエージェントは、対応付け更新パケットを受信し、対応付け更新パケット内のサービスレベル識別子を識別する。サービスレベル識別子は、対応付け更新パケット内の所定の位置に配置されているので、ホームエージェントは、あらゆる他の機能を実行する前に、受信されるそれぞれの対応付け更新パケット内のサービスレベル識別子を検出することができる。したがって、ホームエージェントが機能を果たしているある期間内に、全ての移動ノードから受信される対応付け更新パケットのサービスレベル識別子を検出することによって、サービスレベル識別子によって示される要求サービスレベルに基づいて、移動ノード毎の対応付け更新処理に相対的優先度を与えることができる。遅延に関する要求が厳しいサービス、例えばリアルタイム又はリアルタイムに近いサービス、例えば音声及びビデオ電話を、非リアルタイムサービス、例えば電子メールよりも優先させることができるという趣旨において、混雑時に、このような優先順位を用いて、対応付け更新処理の実行の相対的順序を提供することができる。
【0030】
そして、ステップS5において、ホームエージェントは、サービスレベル識別子によって識別されるサービスレベルに基づいて、移動ノードから受信されるインターネットパケットの処理に進むことができる。したがって、サービスレベル識別子によって識別される相対的優先度に基づいて、更なる補助的な処理、例えば気付アドレスへのパケットの転送、あるいは他の機能、例えば認証、課金、移動ノードに分散されているサービスを実行することができる。
【0031】
上述した概要からわかるように、ホームエージェントは、あらゆる他の処理、例えば対応付け更新パケットを送信した移動ノードを識別する前に、各対応付け更新パケット内のサービスレベル識別子を識別するので、対応付け更新処理の相対的順序付けによって、より遅延に関する要求が厳しいサービスにより高い優先度を付与するという効果を奏することができる。
【0032】
本発明の様々な更なる側面及び特徴は、特許請求の範囲において定義されている。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本明細書に記載された実施の形態を様々に変更することができる。例えば、モバイルIP、IPv4及びIPv6規格に準拠する実施の形態に関連して、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、他のパケット転送プロトコルを用いて実現してもよいことは明らかである。また、短距離無線規格、例えばブルートゥース、Zigbee、超広帯域(ultra wide band:UWB)又は無線USB(wireless USB:WUSB)において提供されているネットワーク層プロトコルに基づく構成を用いてもよい。更に、サービスレベル識別子は、幾つかのIPv4及びIPv6パケット内の予備ビットを用いて伝送しているが、他の具体例として、対応付け更新パケット内の他のフィールド又は他の形式でサービスレベル識別子を伝送してもよいことは明らかである。