(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ周方向にジグザグ状で連続してのびる主溝と、その両側に設けられた陸部とを有し、前記両側の陸部が、複数の横溝によって複数個のブロックに区分されている重荷重用タイヤであって、
前記主溝の両側の横溝は、タイヤ周方向にずれて配置され、
前記主溝は、長辺部と、前記長辺部とは逆向きに傾斜しかつタイヤ周方向の長さが前記長辺部よりも小さい短辺部とが交互に設けられ、
前記横溝は、前記短辺部を含む領域で前記主溝に連通し、
前記横溝の一方の溝縁を前記主溝側に延長した第1延長線は、該主溝の前記長辺部の溝縁と第1交点で交わり、前記横溝の他方の溝縁を前記主溝側に延長した第2延長線は、該主溝の前記長辺部の溝縁と第2交点で交わり、
前記第1交点と前記第2交点とのタイヤ周方向の距離L1と、前記短辺部のタイヤ周方向の長さL2との比L2/L1が0.08〜0.25であることを特徴とする重荷重用タイヤ。
前記主溝と前記横溝との溝交差部には、第1ブロックのコーナーがなす第1ブロック頂点と、前記第1ブロックとタイヤ周方向で隣り合う第2ブロックのコーナーがなす第2ブロック頂点と、前記第1ブロック及び前記第2ブロックに前記主溝を介して隣り合う第3ブロックの前記主溝の溝縁において最も前記主溝の溝中心線側に突出する第3頂点とが設けられ、
前記第2ブロック頂点は、前記第1ブロック頂点と前記第3頂点とを通り前記溝交差部内に収まる最大円の外側に設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
【0017】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0018】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0019】
図1に示されるように、本発明の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7等を具える。本実施形態では、重荷重用タイヤ1が、15°テーパリムRMに装着されるチューブレスタイヤである場合が示されている。
【0020】
カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して例えば80〜90°の角度で配列したカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、ビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されたプライ折返し部6bを一連に具えている。このプライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびる断面三角形状のビードエーペックスゴム8が配されている。
【0021】
ベルト層7は、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配される。ベルト層7は、スチール製のベルトコードを用いた複数枚のベルトプライにより構成される。本実施形態のベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば60±10°程度の角度で配列した最も内側のベルトプライ7Aと、その外側に順次配されかつベルトコードをタイヤ赤道Cに対して15〜35°程度の小角度で配列したベルトプライ7B、7C及び7Dとの4層を含んでいる。ベルト層7は、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所が1箇所以上設けられることにより、ベルト剛性を高め、トレッド部2のほぼ全幅を強固に補強する。
【0022】
ビードコア5は、偏平横長の断面六角形状をなし、又そのタイヤ半径方向内面を、タイヤ軸方向に対して12〜18°の角度で傾斜させることにより、リムRMとの間の嵌合力を広範囲に亘って高めている。
【0023】
図2は、本実施形態の重荷重用タイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図2に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、そのトレッド部2に、タイヤの回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。トレッド部2には、タイヤ赤道C上をタイヤ周方向に連続してのびるセンター主溝10と、タイヤ赤道Cの両側に配されかつタイヤ周方向にジグザグ状で連続してのびる一対のミドル主溝11と、このミドル主溝11のタイヤ軸方向外側かつトレッド接地端Teの内側をタイヤ周方向にジグザグ状で連続してのびる一対のショルダー主溝12とが形成されている。
【0024】
トレッド接地端Teとは、正規状態のタイヤに、正規荷重を付加しかつキャンバー角0゜で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地端を意味している。「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0025】
ミドル主溝11は、タイヤ周方向に対して傾斜する長辺部11aと、長辺部11aとは逆向きに傾斜しかつタイヤ周方向の長さが長辺部11aよりも小さい短辺部11bとを有する。長辺部11a及び短辺部11bは、タイヤ周方向に交互に設けられ、ジグザグ状のミドル主溝11を構成する。
【0026】
ショルダー主溝12は、タイヤ周方向に対して傾斜する長辺部12aと、長辺部12aとは逆向きに傾斜しかつタイヤ周方向の長さが長辺部12aよりも小さい短辺部12bとを有する。長辺部12a及び短辺部12bは、タイヤ周方向に交互に設けられ、ジグザグ状のショルダー主溝12を構成する。ミドル主溝11のジグザグピッチは、ショルダー主溝12のジグザグピッチと同等である。
【0027】
センター主溝10、ミドル主溝11及びショルダー主溝12によってトレッド部2が複数の領域に区分される。トレッド部2は、センター主溝10とミドル主溝11との間の一対のセンター陸部13、ミドル主溝11とショルダー主溝12との間の一対のミドル陸部14、及び、ショルダー主溝12のタイヤ軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部15を有している。すなわち、ミドル主溝11の両側には、センター陸部13及びミドル陸部14が設けられ、ショルダー主溝12の両側には、ミドル陸部14及びショルダー陸部15が設けられている。
【0028】
図3には、センター陸部13の拡大図が示される。センター陸部13には、複数本のセンター横溝21が設けられている。センター横溝21は、タイヤ軸方向にのびており、センター陸部13の両側のセンター主溝10とミドル主溝11とを連通している。これにより、センター陸部13は、複数個のセンターブロック22が並ぶブロック列である。センター横溝21は、タイヤ軸方向に対して傾斜しているので、本実施形態のセンターブロック22の踏面22sは、略平行四辺形状である。
【0029】
ミドル主溝11は、センター陸部13側の溝縁11dと、ミドル陸部14側の溝縁11eとを有している。ミドル主溝11において、溝縁11dの最も溝中心線11c側の頂点11fは、溝縁11eの最も溝中心線11c側の頂点11gよりもセンター陸部13側にある。これにより、ジグザク状のミドル主溝11において、周方向に直線的に連通する領域が形成されるので、トレッド部2の排水性能が向上する。
【0030】
ミドル主溝11とセンター陸部13との関係において、溝縁11dの最も溝中心線11c側の頂点11fと溝縁11eの最も溝中心線11c側の頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmは、センターブロック22のタイヤ軸方向の最大幅WDcの0.07〜0.13倍である。頂点11fと頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmがセンターブロック22のタイヤ軸方向の最大幅WDcの0.07倍未満の場合、排水性が十分に向上しないおそれがある。頂点11fと頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmがセンターブロック22のタイヤ軸方向の最大幅WDcの0.13倍を超える場合、センター陸部13の耐摩耗性能が低下するおそれがある。
【0031】
図3に示されるように、センター横溝21は、ミドル主溝11の短辺部11bに連通されている。ここで、「センター横溝21は、ミドル主溝11の短辺部11bに連通されている」とは、センター横溝21の溝中心線21cが、ミドル主溝11の短辺部11bに連通されていることを意味している(以下、ミドル横溝31及びショルダー横溝41においても同様である)。
【0032】
センター横溝21は、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分21aと、第1部分21aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分21aと平行にのびる第2部分21bと、第1部分21aと第2部分21bとを繋ぐ第3部分21cとを有するジグザク状の溝である。センター横溝21の深さは、例えば、ミドル主溝11の深さ以下が望ましい。
【0033】
センター横溝21のピッチは、ミドル主溝11のジグザグピッチの2倍である。換言すると、ミドル主溝11のジグザグピッチは、センター横溝21のピッチの1/2倍である。従って、センターブロック22は、その踏面部22sのタイヤ周方向の中央部に、ミドル主溝11に面してタイヤ軸方向の外側に突出するジグザク頂点22aを有する。
【0034】
センター主溝10とセンター横溝21とが交差するブロック頂点には、面取り部24a及び24bが形成されている。ミドル主溝11とセンター横溝21とが交差するブロック頂点には、面取り部25a及び25bが形成されている。このような面取り部24a、24b、25a及び25bは、ブロック頂点における応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部24a、24b、25a及び25bに替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0035】
センターブロック22には、複数本のセンター横浅溝23が設けられている。センター横浅溝23は、一端がセンター主溝10に、他端がミドル主溝11の短辺部11bにそれぞれ連通している。センター横浅溝23は、センター横溝21と同様に、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分23aと、第1部分23aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分23aと平行にのびる第2部分23bと、第1部分23aと第2部分23bとを繋ぐ第3部分23cとを有するジグザク状の溝である。センター横浅溝23の深さは、センター横溝21の深さよりも小さく、センター横浅溝23の幅は、センター横溝21の幅よりも小さい。センター横浅溝23によって、センター陸部13の排水性が高められると共に、センターブロック22の剛性分布が適正化される。
【0036】
図4には、ミドル陸部14の拡大図が示される。ミドル陸部14には、複数本のミドル横溝31が設けられている。ミドル横溝31は、タイヤ軸方向にのび、一端がミドル主溝11に、他端がショルダー主溝12にそれぞれ連通している。これにより、ミドル陸部14は、複数個のミドルブロック32が並ぶブロック列である。
図2に示されるように、ミドル主溝11の両側に位置するセンター横溝21とミドル横溝31とは、タイヤ周方向に1/2ピッチずれて配置されている。これに伴い、ミドル主溝11の両側に位置するセンターブロック22とミドルブロック32とは、タイヤ周方向に1/2ピッチずれて配置されている。ミドル横溝31は、タイヤ軸方向に対して傾斜しているので、本実施形態のミドルブロック32の踏面32sは、略平行四辺形状である。
【0037】
図4に示されるように、ショルダー主溝12は、ミドル陸部14側の溝縁12dと、ショルダー陸部15側の溝縁12eとを有している。ショルダー主溝12において、溝縁12dの最も溝中心線12c側の頂点12fは、溝縁12eの最も溝中心線12c側の頂点12gよりもミドル陸部14側にある。これにより、ジグザク状のミドル主溝12において、周方向に直線的に連通する領域が形成されるので、トレッド部2の排水性能が向上する。
【0038】
ミドル主溝11とミドル陸部14との関係において、溝縁11dの最も溝中心線11c側の頂点11fと溝縁11eの最も溝中心線11c側の頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmは、ミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.07〜0.13倍である。頂点11fと頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmがミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.07倍未満の場合、排水性が十分に向上しないおそれがある。頂点11fと頂点11gとの間のタイヤ軸方向距離WCmがミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.13倍を超える場合、ミドル陸部14の耐摩耗性能が低下するおそれがある。
【0039】
ショルダー主溝12とミドル陸部14との関係において、溝縁12dの最も溝中心線12c側の頂点12fと溝縁12eの最も溝中心線12c側の頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsは、ミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.07〜0.13倍である。頂点12fと頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsがミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.07倍未満の場合、排水性が十分に向上しないおそれがある。頂点12fと頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsがミドルブロック32のタイヤ軸方向の最大幅WDmの0.13倍を超える場合、ミドル陸部14の耐摩耗性能が低下するおそれがある。
【0040】
ミドル横溝31は、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分31aと、第1部分31aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分31aと平行にのびる第2部分31bと、第1部分31aと第2部分31bとを繋ぐ第3部分31cとを有するジグザク状の溝である。ミドル横溝31の深さは、例えば、ミドル主溝11及びショルダー主溝12の深さ以下が望ましい。
【0041】
ミドル横溝31のピッチは、ミドル主溝11及びショルダー主溝12のジグザグピッチの2倍である。換言すると、ミドル主溝11及びショルダー主溝12のジグザグピッチは、ミドル横溝31のピッチの1/2倍である。従って、ミドルブロック32は、その踏面部32sのタイヤ周方向の中央部に、ミドル主溝11に面してタイヤ軸方向の内側に突出するジグザク頂点32aと、ショルダー主溝12に面してタイヤ軸方向の外側に突出するジグザク頂点32bとを有する。
【0042】
ミドル主溝11とミドル横溝31とが交差するブロック頂点には、面取り部34a及び34bが形成されている。ショルダー主溝12とミドル横溝31とが交差するブロック頂点には、面取り部35a及び35bが形成されている。このような面取り部34a、34b、35a及び35bは、ブロック頂点における応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部34a、34b、35a及び35bに替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0043】
ミドルブロック32には、複数本のミドル横浅溝33が設けられている。ミドル横浅溝33は、一端がミドル主溝11の短辺部11bに、他端がショルダー主溝12の短辺部12bにそれぞれ連通している。ミドル横浅溝33は、ミドル横溝31と同様に、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分33aと、第1部分33aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分33aと平行にのびる第2部分33bと、第1部分33aと第2部分33bとを繋ぐ第3部分33cとを有するジグザク状の溝である。ミドル横浅溝33の深さは、ミドル横溝31の深さよりも小さく、ミドル横浅溝33の幅は、ミドル横溝31の幅よりも小さい。ミドル横浅溝33によって、ミドル陸部14の排水性が高められると共に、ミドルブロック32の剛性分布が適正化される。
【0044】
図5には、ショルダー陸部15の拡大図が示される。ショルダー陸部15には、複数本のショルダー横溝41が設けられている。ショルダー横溝41は、タイヤ軸方向にのび一端がショルダー主溝12に、他端がトレッド接地端Teにそれぞれ連通している。これにより、ショルダー陸部15は、複数個のショルダーブロック42が並ぶブロック列である。
図2に示されるように、ショルダー主溝12の両側に位置するミドル横溝31とショルダー横溝41とは、タイヤ周方向に1/2ピッチずれて配置されている。これに伴い、ショルダー主溝12の両側に位置するミドルブロック32とショルダーブロック42とは、タイヤ周方向に1/2ピッチずれて配置されている。
【0045】
ショルダー主溝12とショルダー陸部15との関係において、溝縁12dの最も溝中心線12c側の頂点12fと溝縁12eの最も溝中心線12c側の頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsは、ショルダーブロック42のタイヤ軸方向の最大幅WDsの0.07〜0.13倍である。頂点12fと頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsがショルダーブロック42のタイヤ軸方向の最大幅WDsの0.07倍未満の場合、排水性が十分に向上しないおそれがある。頂点12fと頂点12gとの間のタイヤ軸方向距離WCsがショルダーブロック42のタイヤ軸方向の最大幅WDsの0.13倍を超える場合、ショルダー陸部15の耐摩耗性能が低下するおそれがある。
【0046】
図5に示されるように、ショルダー横溝41は、ショルダー主溝12の短辺部12bに連通されている。ショルダー横溝41は、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分41aと、第1部分41aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分41aと平行にのびる第2部分41bと、第1部分41aと第2部分41bとを繋ぐ第3部分41cとを有するジグザク状の溝である。ショルダー横溝41の深さは、例えば、ショルダー主溝12の深さ以下が望ましい。
【0047】
ショルダー横溝41のピッチは、ショルダー主溝12のジグザグピッチの2倍である。換言すると、ショルダー主溝12のジグザグピッチは、ショルダー横溝41のピッチの1/2倍である。従って、ショルダーブロック42は、その踏面部42sのタイヤ周方向の中央部に、ショルダー主溝12に面してタイヤ軸方向の内側に突出するジグザク頂点42aを有する。
【0048】
ショルダー主溝12とショルダー横溝41とが交差するブロック頂点には、面取り部44a及び44bが形成されている。このような面取り部44a及び44bは、ブロック頂点における応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部44a及び44bに替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0049】
ショルダーブロック42には、複数本のショルダー横浅溝43が設けられている。ショルダー横浅溝43は、一端がショルダー主溝12の短辺部12bに、他端がトレッド接地端Teにそれぞれ連通している。ショルダー横浅溝43は、ショルダー横溝41と同様に、タイヤ軸方向に傾斜してのびる第1部分43aと、第1部分43aとタイヤ周方向に位置ずれしかつ第1部分43aと平行にのびる第2部分43bと、第1部分43aと第2部分43bとを繋ぐ第3部分43cとを有するジグザク状の溝である。ショルダー横浅溝43の深さは、ショルダー横溝41の深さよりも小さく、ショルダー横浅溝43の幅は、ショルダー横溝41の幅よりも小さい。ショルダー横浅溝43によって、ショルダー陸部15の排水性が高められると共に、ショルダーブロック42の剛性分布が適正化される。
【0050】
図6は、ショルダー主溝12とショルダー横溝41との溝交差部50を拡大して示している。ショルダー横溝41は、短辺部12bを
含む領域でショルダー主溝12に連通している。このような短辺部12bとショルダー横溝41との関係を有する本実施形態にあっては、ウェット路面の走行時にショルダー主溝12内の水が短辺部12bによってショルダー横溝41に誘導されるので、排水性能が高められる。
【0051】
ショルダー横溝41の第1ブロック頂点P1を通る溝縁をショルダー主溝12側に延長した第1延長線41eは、ショルダー主溝12の長辺部12aの溝縁12dと第1交点CP1で交わる。同様に、ショルダー横溝41の第2ブロック頂点P2を通る溝縁をショルダー主溝12側に延長した第2延長線41fは、ショルダー主溝12の長辺部12aの溝縁12dと第2交点CP2で交わる。上述したように、ショルダー横溝41は、短辺部12bを
含む領域でショルダー主溝12に連通しているので、第1延長線41eと第2延長線41fと間に短辺部12bが位置されている。
【0052】
第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1と、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2との比L2/L1は、0.08〜0.25が望ましい。
【0053】
第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1と、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2との比L2/L1が0.08未満の場合、不整地及びウエット路面等におけるトラクション性能が十分に確保できないおそれがある。
【0054】
一方、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1と、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2との比L2/L1が0.25を超える場合、ショルダー横溝41によって区分される第1ブロック頂点P1,第2ブロック頂点P2と対面する短辺部12bが長くなり、溝交差部50に噛み込まれた石は、短辺部12bの側壁と面によって支持されやすくなる。従って、ブロックによる石の保持力が高くなり、石が排出されにくくなり、耐石噛み性が低下するおそれがある。
【0055】
第2交点CP2と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L3と、第1交点CP1と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L4とは、以下の関係を満たすことが望ましい。ここでは、(i)第2交点CP2と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L3と、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1との比L3/L1が0.25を超えるとき、又は(ii)上記比L3/L1が0.25以上であるときに、場合を分けて説明する。
【0056】
まず、(i)第2交点CP2と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L3と、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1との比L3/L1が0.25を超えるときについて説明する。この場合、第1交点CP1と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L4と、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1との比L4/L1は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.33以上であり、好ましくは0.50以下である。
【0057】
上記比L4/L1が0.25未満である場合、第2交点CP2と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L3及び短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2が、L4と比べて相対的に長くなる。このため、第2交点CP2から第3ブロック頂点P3までの長さ、すなわちショルダー主溝12の側壁のうち第1ブロック頂点P1,第2ブロック頂点P2に対して凹んでいる領域が長くなり、この領域で石噛みが発生しやすくなる。かかる領域において噛み込まれた石は、面によって支持される。その結果、ブロックによる石の保持力が高くなって、石が排出されにくくなり、耐石噛み性が低下するおそれがある。
【0058】
一方、上記比L4/L1が0.50を超える場合、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2が過度に小さくなり、不整地やウェット路面におけるトラクション性能が十分に確保できないおそれがある。
【0059】
次に、(ii)第2交点CP2と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L3と、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1との比L3/L1が0.25以下であるときについて説明する。この場合、第1交点CP1と短辺部12bとのタイヤ周方向の距離L4と、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1との比L4/L1は、好ましくは0.50以上であり、好ましくは0.75以下より好ましくは0.66以下である。
【0060】
上記比L4/L1が0.50未満である場合、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2が、L4と比べて相対的に長くなり、短辺部12bの領域で石噛みが発生しやすくなる。かかる短辺部12bの領域において噛み込まれた石は、短辺部12bの側壁の面によって支持される。その結果、ブロックによる石の保持力が高くなって、石が排出されにくくなり、耐石噛み性が低下するおそれがある。
【0061】
一方、上記比L4/L1が0.75を超える場合、第1交点CP1から第3ブロック頂点P3までの長さ、すなわちショルダー主溝12の側壁のうち第1ブロック頂点P1,第2ブロック頂点P2に対して突出している領域が長くなり、この領域で石噛みが発生しやすくなる。かかる領域において噛み込まれた石は、面によって支持される。その結果、ブロックによる石の保持力が高くなって、石が排出されにくくなり、耐石噛み性が低下するおそれがある。さらに、この場合、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2が過度に小さくなり、不整地やウェット路面におけるトラクション性能が十分に確保できないおそれがある。
【0062】
本実施形態の重荷重用タイヤ1にあっては、第1交点CP1と第2交点CP2とのタイヤ周方向の距離L1と、短辺部12bのタイヤ周方向の長さL2との比L2/L1が0.08以上であるので、不整地におけるトラクション性能が十分に確保される。一方、上記比L2/L1が0.25以下であるので、ショルダー横溝41によって区分される一対のブロック頂点P1,P2と対面する短辺部12bが小さくなる。これにより、ショルダー主溝12とショルダー横溝41の溝交差部50に噛み込まれた石が短辺部12bの側壁によって面で支持されることが抑制され、ブロックの側壁による石の保持力は低下する。従って、一旦噛み込まれた石が路面と接触する際に排出されやすくなり、耐石噛み性能が向上する。さらに、ショルダー横溝41は、短辺部12bを
含む領域でショルダー主溝12に連通するので、ウェット路面の走行時にショルダー主溝12内の水が短辺部12bによってショルダー横溝41に誘導され、排水性能が高められる。
【0063】
このようなショルダー主溝12とショルダー横溝41との関係は、ショルダー主溝12とミドル横溝31との関係にも適用可能であり、ミドル主溝11とセンター横溝21との関係及びミドル主溝11とミドル横溝31との関係にも適用可能である。
【0064】
図7は、ミドル主溝11とセンター横溝21との溝交差部51を拡大して示している。溝交差部51では、センター横溝21を介してセンターブロック22(第1ブロックB1)とセンターブロック22(第2ブロックB2)とが隣り合い、ミドル主溝11を介して第1ブロックB1及び第2ブロックB2とミドルブロック32(第3ブロックB3)とが隣り合っている。
【0065】
第1ブロックB1の踏面B1sは、第1ブロックB1sのコーナーをなす第1ブロック頂点P1を有する。第2ブロックB2の踏面B2sは、第2ブロックB2のコーナーをなす第2ブロック頂点P2を有する。第1ブロック頂点P1と第2ブロック頂点P2とは、センター横溝21を介して隣り合う。第3ブロックB3の踏面B3sは、ミドル主溝11の溝縁11eにおいて最も溝中心線11c側に突出する第3ブロック頂点P3を有する。第3ブロック頂点P3は、第3ブロックB3の踏面B3sにおいてミドル主溝11の長辺部11aと短辺部11bとが交差するジグザク頂点11gであり、ミドル主溝11を介して第1ブロック頂点P1及び第2ブロック頂点P2と隣り合う。
【0066】
本実施形態の重荷重用タイヤ1にあっては、溝交差部51において、センター横溝21がミドル主溝11の短辺部11bに連通されている。従って、第1ブロック頂点P1と第2ブロック頂点P2と第3ブロック頂点P3とによって構成される三角形53(
図7中、ハッチングにて示される)は、正三角形から外れる傾向、換言すると三角形53の対称性は、乱される傾向にある。従って、溝交差部51に石が噛み込まれたとき、第1ブロックB1、第2ブロックB2及び第3ブロックB3の各側壁から石に作用する力は、石の中心部から外れて分散し、各ブロックによる石の保持力は低下する。これにより、一旦噛み込まれた石が路面と接触する際に排出されやすくなり、耐石噛み性能が向上する。
【0067】
本実施形態にあっては、ミドル横溝31が、ミドル主溝11の短辺部11b及びショルダー主溝12の短辺部12bに連通されているので、ミドル主溝11とミドル横溝31との溝交差部及びショルダー主溝12とミドル横溝31との溝交差部においても、上記作用効果は同様に得られる。さらに、ショルダー横溝41が、ショルダー主溝12の短辺部12bに連通されているので、ショルダー主溝12とショルダー横溝41との溝交差部においても、上記作用効果は同様に得られる。
【0068】
本実施形態の重荷重用タイヤ1にあっては、ミドル主溝11の長辺部11aのタイヤ周方向に対する角度α1は、2〜10゜が望ましい。角度α1が2゜未満の場合、頂点P1、頂点P2及び頂点P3によって構成される三角形53が正三角形に近くなるため、ブロックによる石の保持力が高まり、噛み込まれた石が排出され難くなる。角度α1が10゜を超える場合、タイヤの排水性能が十分に高められないおそれがある。ショルダー主溝12の長辺部12aのタイヤ周方向に対する角度α2(
図4参照)についても、上記と同様である。
【0069】
図8は、溝交差部51の詳細及び溝交差部51と溝交差部51に噛み込まれた石61との関係を拡大して示している。
図8(a)に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ1にあっては、第2ブロックB2の第2ブロック頂点P2は、第1ブロックB1の第1ブロック頂点P1と第3ブロックB3の第3ブロック頂点P3とを通り、溝交差部51内に収まる最大円Cmaxの外側に設けられている。すなわち、第2ブロック頂点P2は、第1ブロック頂点P1及び第3ブロック頂点P3に対して相対的に後退する位置に設けられていることになる。
【0070】
従って、
図8(b)に示されるように、溝交差部51に噛み込まれた石61と第2ブロック頂点P2との間に隙間Gが生じやすくなり、このとき、石61は、第1ブロック頂点P1及び第3ブロック頂点P3の2点で支持されることとなる。これにより、各ブロックによる石61の保持力は低下し、一旦噛み込まれた石61が路面と接触する際に排出されやすくなり、耐石噛み性能が向上する。
【0071】
本実施形態において、
図3乃至5に示されるセンター横溝21のタイヤ周方向に対する角度θ1(゜)、ミドル横溝31のタイヤ周方向に対する角度θ2(゜)及びショルダー横溝41のタイヤ周方向に対する角度θ3(゜)は、それぞれ以下の関係を満たしているのが望ましい。
θ1<θ2<θ3 (1)
60≦θ1<80 (2)
80<θ3≦90 (3)
【0072】
センター横溝21の角度θ1は、
図3において、センターブロック22の頂点26におけるセンター横溝21の溝縁のタイヤ周方向に対する角度である。ミドル横溝31の角度θ2は、
図4において、ミドルブロック32の頂点36におけるミドル横溝31の溝縁のタイヤ周方向に対する角度である。ショルダー横溝の角度θ3は、
図5において、ショルダーブロック42の頂点46におけるショルダー横溝41の溝縁のタイヤ周方向に対する角度である。各ブロックの角が面取り又は丸められている場合は、各主溝の溝縁の延長線と各横溝の溝縁の延長線との交点が頂点である。
【0073】
数式(1)の関係が満たされていることにより、センター横溝21、ミドル横溝31及びショルダー横溝41を介して、接地圧の高いセンター陸部13から接地圧の低いショルダー陸部12に円滑に水が排出され、タイヤの排水性能が高められる。
【0074】
センター横溝21の角度θ1が60゜未満の場合、センターブロック22のブロック頂点26が、過度に鋭角となり、偏摩耗の起点となるおそれがある。一方、センター横溝21の角度θ1が60゜以上の場合、センター陸部13における排水性能が悪化するおそれがある。
【0075】
ショルダー横溝41の角度θ3が80゜未満の場合、ショルダーブロック42のブロック頂点46が、過度に鋭角となり、偏摩耗の起点となるおそれがある。一方、ショルダー横溝41の角度θ3が90゜を超える場合、タイヤ軸方向に対するショルダー横溝41の傾きが逆になり、ショルダー陸部15における排水性能が悪化するおそれがある。
【0076】
本実施形態において、
図3乃至5に示されるセンター横溝21の溝幅WE、ミドル横溝31の溝幅WF及びショルダー横溝41の溝幅WGは、それぞれ以下の関係を満たしているのが望ましい。
WE≦WF<WG (4)
1.5≦WG/WE≦2.5 (5)
1.5≦WG/WF≦2.5 (6)
【0077】
数式(4)の関係が満たされていることにより、センター横溝21、ミドル横溝31及びショルダー横溝41を介して、接地圧の高いセンター陸部13から接地圧の低いショルダー陸部12に円滑に水が排出され、タイヤの排水性能が高められる。
【0078】
数式(5)の溝幅の比WG/WEが1.5未満の場合、センター横溝21の溝幅WEに対してショルダー横溝41の溝幅WGが相対的に不足するため、センター陸部13からショルダー陸部15に亘って円滑に水が排出されにくくなり、タイヤの排水性能が十分に高められないおそれがある。一方、上記比WG/WEが2.5を超える場合、ショルダー陸部15のランド比が低下し、ショルダー陸部15に偏摩耗が生ずるおそれがある。
【0079】
数式(6)の溝幅の比WG/WFが1.5未満の場合、ミドル横溝31の溝幅WFに対してショルダー横溝41の溝幅WGが相対的に不足するため、ミドル陸部14からショルダー陸部15に円滑に水が排出されにくくなり、タイヤの排水性能が十分に高められないおそれがある。一方、上記比WG/WFが2.5を超える場合、ショルダー陸部15のランド比が低下し、ショルダー陸部15に偏摩耗が生ずるおそれがある。
【0080】
以上、本発明の重荷重用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0081】
図1の基本構造をなすサイズ11.00R20の重荷重用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、耐石噛み性能、ウェット性能、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能がテストされた。テスト方法は、以下の通りである。
【0082】
<耐石噛み性能>
各試供タイヤが、リム20×8.00、内圧780kPaの条件にて、最大積載量10トン積みのトラック(2−D車)の後輪に装着された。一方の後輪には、実施例1の仕様のタイヤが、他方の後輪には、各仕様のタイヤがそれぞれ装着された。いずれかの後輪タイヤが50%摩耗するまで走行させ、走行終了時における各仕様のタイヤに噛み込まれた石の個数が測定された。結果は、実施例1のタイヤに噛み込まれた石の個数の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。評価は、数値が大きいほど耐石噛み性能が良好である。
【0083】
<トラクション性能>
75%摩耗させた各試供タイヤが、リム20×8.00、内圧780kPaの条件にて、最大積載量10トン積みのトラック(2−D車)の全輪に装着された。上記車両は、厚さ5mmの水膜を有するウェットアスファルト路面に持ち込まれ、変速ギアを2速、エンジン回転数を1500rpmにそれぞれ固定してクラッチを繋いだ瞬間からの10mの通過時間が測定された。結果は、各々の通過時間の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。評価は、数値が大きいほどウェット路面におけるトラクション性能が良好である。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から明らかなように、実施例の重荷重用タイヤは、比較例に比べて、耐石噛み性能及びトラクション性能が有意に向上していることが確認できた。