特許第5809695号(P5809695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許5809695低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物
<>
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000011
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000012
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000013
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000014
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000015
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000016
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000017
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000018
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000019
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000020
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000021
  • 特許5809695-低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809695
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】低粘着性オレフィンブロックコポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20151022BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20151022BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L53/00
   C08L91/00
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-515424(P2013-515424)
(86)(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公表番号】特表2013-532214(P2013-532214A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】US2011040266
(87)【国際公開番号】WO2011159649
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/354,309
(32)【優先日】2010年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バトラ,アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブリード,ダナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン,プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】レゴ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワン,アリー
(72)【発明者】
【氏名】ムンロ,ジェフリー,シー.
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−302903(JP,A)
【文献】 特開平06−093143(JP,A)
【文献】 特開昭62−201951(JP,A)
【文献】 特表2008−545017(JP,A)
【文献】 特表2007−529617(JP,A)
【文献】 特表2008−543978(JP,A)
【文献】 特表2010−504407(JP,A)
【文献】 特表2008−540697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00− 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
5重量%〜30重量%のハードセグメントと95重量%〜70重量%のソフトセグメントを含むエチレン/オクテン・マルチブロックコポリマーである、2重量%〜40重量%のオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
芳香油、鉱油、ナフテン油、パラフィン油、ヒマシ油などのトリグリセリド系植物油、合成炭化水素油、シリコーン油、またはこれらの任意の組み合わせを含む、20重量%〜50重量%の油;
5重量%〜50重量%の1つまたはそれ以上のポリオレフィンであって、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、およびこれらの組み合わせから選択されるポリエチレンを含む1つまたはそれ以上のポリオレフィン
20重量%〜40重量%の充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
0.1N未満の粘着力;および
ASTM D2240に従って測定される50〜90のショアA硬度;
を有する、油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
【請求項2】
2重量%〜30重量%のオレフィンブロックコポリマーと、30重量%〜40重量%の油と、5重量%〜25重量%のポリエチレンと、25重量%〜30重量%の充填剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.020N未満の粘着力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらにエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成形油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
5重量%〜30重量%のハードセグメントと95重量%〜70重量%のソフトセグメントを含むエチレン/オクテン・マルチブロックコポリマーである、2重量%〜40重量%のオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
芳香油、鉱油、ナフテン油、パラフィン油、ヒマシ油などのトリグリセリド系植物油、合成炭化水素油、シリコーン油、またはこれらの任意の組み合わせを含む、20重量%〜50重量%の油;
5重量%〜50重量%の1つまたはそれ以上のポリオレフィンであって、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、およびこれらの組み合わせから選択されるポリエチレンを含む1つまたはそれ以上のポリオレフィン
20重量%〜40重量%の充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
0.1N未満の粘着力;および
ASTM D2240に従って測定される50〜90のショアA硬度
を有し、0.41μmの表面粗さの金型を使用して調製される、成形油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
【請求項6】
2重量%〜30重量%のオレフィンブロックコポリマーと、30重量%〜40重量%の油と、5重量%〜25重量%のポリエチレンと、25重量%〜30重量%の充填剤を含む、請求項5に記載の成形油展組成物。
【請求項7】
0.020N未満の粘着力を有する、請求項5に記載の成形油展組成物。
【請求項8】
エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムをさらに含む、請求項5に記載の成形油展組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第 号の優先権を主張する。
オレフィンブロックコポリマー(OBC)は、ソフトコンパウンド、例えば柔らかな手触りの物品を製造するのに有用である。OBCは、OBCのブロック構造が良好な引張強さ、圧縮永久歪および耐熱性をもたらすことから、ソフトコンパウンド、例えば外側被覆グリップに用途が見出される。軟質組成物(すなわち、低いジュロメーター値および/または低いショアA硬度値を有する組成物)を調製するために、OBCは、油と混合される。しかし、これらの油展組成物(oil-extended)は、高められた温度に暴露させると粘着性を示すことがある。粘着性は、これらのコンパウンドから製造される物品において望ましくない触感(粘着性)および/または望ましくない外観を生じるので問題となる。
【背景技術】
【0002】
低粘着性または不粘着性の油展OBC組成物の必要性が存在する。また、高められた温度に長期間暴露させた場合に低粘着性または不粘着性の油展OBC組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、低粘着性または不粘着性の油展OBC組成物に関する。OBCのソフトセグメントの独特なコモノマー量は、ポリオレフィンおよび充填剤の存在と共に、低粘着性または不粘着性の本油展OBC組成物を提供する。
【0004】
一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマー組成物が提供され、油展オレフィンブロックコポリマー組成物は、オレフィンブロックコポリマーを含有する。オレフィンブロックコポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。また、前記組成物は、油と、1つまたはそれ以上のポリオレフィンと、充填剤も含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:(i)0.1N未満の粘着力、および(ii)約40〜約90のショアA硬度を有する。
【0005】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマー組成物が提供され、油展オレフィンブロックコポリマー組成物は、オレフィンブロックコポリマーを含有する。オレフィンブロックコポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。前記組成物はまた、油と、1つまたはそれ以上のポリオレフィンと、充填剤も含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:(i)50未満の正規化オイルブリードインデックス、および(ii)約40〜約90のショアA硬度を有する。
【0006】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマーが提供され、油展オレフィンブロックコポリマーは、オレフィンブロックコポリマーを含有する。オレフィンブロックコポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。前記組成物はまた、油と、ポリオレフィンと、充填剤も含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:(i)0.013N未満の粘着力、および(ii)約40〜約90のショアA硬度を有する。
【0007】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマーが提供され、油展オレフィンブロックコポリマーは、オレフィンブロックコポリマーを含有する。オレフィンブロックコポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。前記組成物はまた、油と、ポリオレフィンと、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)と、充填剤も含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:(i)0.10N未満の粘着力、および(ii)約40〜約90のショアA硬度を有する。
【0008】
本開示の利点は、低粘着性または不粘着性の油展OBC組成物の提供にある。
【0009】
本開示の利点は、オイルブリードが軽減されているかまたはない油展OBC組成物の提供にある。
【0010】
本開示の利点は、柔軟性、および/または低粘着性(または不粘着性)および/または低(または無)オイルブリードの油展OBC組成物の提供にある。
【0011】
本開示の利点は、ハロゲンを含有していない油展ポリオレフィンの提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】正規化オイルブリードインデックス(NOBI)について使用した種々のグレースケールの例を表す。
図2】種々の比較および発明の油展組成物の粘着力とショアA硬度の値を表すグラフである。
図3】種々の比較および発明の油展組成物のNOBIとショアA硬度の値を表すグラフである。
図4】種々の比較および発明の油展組成物のNOBIとショアA硬度の値を表すグラフである。
図5】種々の比較および発明の油展組成物の圧縮永久歪とショアA硬度の値を表すグラフである。
図6】実施例4〜11と比較例A〜Eの粘着力データを表す。
図7】実施例4〜11と比較例A〜Eのレオロジー比(100s−1で190℃においてDMSで測定した粘度と、0.1s−1で190℃においてDMSで測定した粘度との比)を表す。
図8】実施例4〜11と比較例A〜Eの極限引張強さを表す。
図9】実施例4〜11と比較例A〜Eの70℃での圧縮永久歪を表す。
図10】実施例12〜15と比較例F〜Kの粘着力データを表す。
図11】実施例12〜15と比較例F〜Kの70℃での圧縮永久歪を表す。
図12】実施例12〜15と比較例F〜Kの極限引張強さを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、油展オレフィンブロックコポリマー(OBC)組成物を提供する。本明細書で使用する「油展OBC組成物」とは、(i)OBCと、(ii)前記組成物の全重量に基づいて少なくとも20重量%の油とを含有するOBC組成物である。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマー組成物が提供され、油展オレフィンブロックコポリマー組成物は、オレフィンブロックコポリマーと、油と、1つまたはそれ以上のポリオレフィンと、充填剤を含有する。
【0014】
1.オレフィンブロックコポリマー
【0015】
用語「オレフィンブロックコポリマー」または「OBC」は、エチレン/α−オレフィン・マルチブロックコポリマーであり、エチレンと、1つまたはそれ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーとを重合した形態で含有し、化学的性質または物理的性質において異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマー単位のマルチブロックまたはセグメントを特徴とする。用語「インターポリマー」と「コポリマー」は、本明細書では同じ意味で使用する。幾つかの実施形態において、マルチブロックコポリマーは、次式:
(AB)
(式中、nは、少なくとも1であり、好ましくは1よりも大きい整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上の整数であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、および「B」は、ソフトブロックまたはセグメントを表す)
で表すことができる。AとBは、実質的に分岐した様式または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状様式で連結されることが好ましい。他の実施形態において、AブロックとBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布する。言い換えると、前記ブロックコポリマーは、通常は次のような構造を有していない。
AAA−AA−BBB−BB
【0016】
さらに別の実施形態において、前記ブロックコポリマーは、通常は、異なるコモノマー(1つまたは複数)を含む第三のタイプのブロックを含有していない。さらに別の実施形態において、AブロックとBブロックのそれぞれは、そのブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えると、ブロックAもブロックBも、そのブロックの残部と実質的に異なる組成を有する異なる組成の2つまたはそれ以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばチップセグメントを含んでいない。
【0017】
オレフィンブロックコポリマーは、種々の量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含有する。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて約95重量%を超える量、または約98重量%を超える量で存在する重合単位のブロックである。言い換えると、ハードセグメントのコモノマー量(エチレン以外のモノマーの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて約5重量%未満であるか、または約2重量%未満である。幾つかの実施形態において、ハードセグメントは、エチレンから誘導された全ての(または実質的に全ての)単位を含有する。「ソフト」セグメントは、コモノマー量(エチレン以外のモノマーの含有量)が、ポリマーの重量に基づいて約5重量%を超えるか、または約8重量%を超えるか、または約10重量%を超えるか、あるいは約15重量%を超える重合単位のブロックである。幾つかの実施形態において、ソフトセグメントのコモノマー量は、約20重量%を超えることができる、約25重量%を超えることができる、約30重量%を超えることができる、約35重量%を超えることができる、約40重量%を超えることができる、約45重量%を超えることができる、約50重量%を超えることができる、または約60重量%を超えることができる。
【0018】
ソフトセグメントは、OBC中に、OBCの全重量の約1重量%〜約99重量%を存在させることができるし、あるいはOBCの全重量の約5重量%〜約95重量%、約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20重量%〜約80重量%、約25重量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%、約35重量%〜約65重量%、約40重量%〜約60重量%、または約45重量%〜約55重量%を存在させることができる。逆に言えば、ハードセグメントは、同様の範囲で存在させることができる。ソフトセグメントの重量%およびハードセグメントの重量%は、DSCまたはNMRから得られるデータに基づいて算出することができる。このような方法および算出は、例えば、Colin L.P.Shan,Lonnie Hazlitらの名義で、2006年3月15日付けで出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された「エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー」という名称の米国特許第7,608,668号明細書に開示されている。その開示は、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。特に、ハードおよびソフトセグメントの重量%ならびにコモノマー量は、米国特許第7,608,668号明細書の第57欄〜第63欄に記載のようにして決定し得る。
【0019】
用語「結晶質」は、用いる場合には、示差走査熱量測定(DSC)または同等の方法によって決定されるような一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、用語「半結晶質」と同じ意味で使用し得る。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の方法によって決定されるような結晶融点のないポリマーを指す。
【0020】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、好ましくは線状様式で結合された2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」という)を含むポリマー、すなわちペンダントまたはグラフト化様式よりもむしろ重合したエチレン官能基に関して末端−末端結合されている化学的に区別される単位を含むポリマーを指す。一実施形態において、前記ブロックは、組み込まれているコモノマーの量または種類、密度、結晶化度の量、このような組成のポリマーに起因する微結晶サイズ、立体規則性(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)の種類または程度、位置規則性または位置不規則性、分岐(長鎖分岐または超分岐を含む)の量、均一性、あるいはその他の化学的または物理的性質において異なる。遂次モノマー付加、流動性触媒、または陰イオン重合法で製造されるインターポリマーを含め、従来技術のブロックインターポリマーと比較して、本OBCは、一実施形態において、その製造に使用される多数の触媒と組み合わせた可逆的移動剤(1つまたは複数)の効果に起因して、両方のポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)の独特な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布によって特徴付けられる。
【0021】
一実施形態において、前記OBCは、連続法で製造され、約1.7〜約3.5、または約1.8〜約3、または約1.8〜約2.5、あるいは約1.8〜約2.2の多分散性指数(PDI)を有する。回分法または半回分法で製造された場合には、OBCは、約1.0〜約3.5、または約1.3〜約3、または約1.4〜約2.5、あるいは約1.4〜約2のPDIを有する。
【0022】
また、オレフィンブロックコポリマーは、ポアソン分布よりもむしろシュルツ−フロリー分布に適合するPDIを有する。本OBCは、多分散ブロック分布と、ブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これは、改善されおよび区別できる物理的性質を有するポリマー製品の形成をもたらす。多分散ブロック分布の理論的利点は、Potemkin, Physical Review E (1998) 57 (6), pp. 6902-6912およびDobrynin, J. Chem. Phvs. (1997) 107 (21), pp 9234-9238で既にモデル化され、考察されている。
【0023】
一実施形態において、本オレフィンブロックコポリマーは、ブロック長の最も可能性の高い分布を有する。一実施形態において、本オレフィンブロックコポリマーは、以下を有すると定義される:すなわち、
【0024】
(A)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点(Tm)(℃)、および密度(d)(g/cm)を有すると定義される〔この場合、Tmとdの数値は、次の関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
に対応する〕、および/または
【0025】
(B)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有すると定義され、ならびに融解熱(ΔH)(J/g)、および最大DSCピークと最大結晶化分析分別(「CRYSTAF」)ピークの間の温度差として定義されるデルタ量(ΔT)(℃)によって特徴付けられる〔この場合、ΔTとΔHの数値は、次の関係:
0よりも大きく最大130J/gまでのΔHについては、ΔT>−0.1299ΔH+62.81
130J/gよりも大きいΔHについては、ΔT≧48℃
を有し、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して決定され、累積ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合には、そのCRYSTAF温度は、30℃である〕;および/または
【0026】
(C)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定される300%歪および1サイクルでの弾性回復率(Re)(%)を有すると定義され、ならびに密度(d)(g/cm)を有する〔この場合、Reとdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、架橋相を実質的に含んでいない場合には、次の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす〕;および/または
【0027】
(D)TREFを使用して分別した場合に40℃〜130℃の間で溶出する分子量画分であって、上記と同じ温度の間で溶出する比較可能ランダムエチレンインターポリマー画分のモルコモノマー量よりも少なくとも5%高いモルコモノマー量を有することを特徴とする分子量画分を有すると定義される〔この場合、前記比較可能ランダムエチレンインターポリマーは、本オレフィンブロックコポリマーと同じコモノマー(1つまたは複数)を有し、メルトインデックス、密度および前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのモルコモノマー量の10%以内のモルコモノマー量(全ポリマーに基づく)を有する〕;および/または
【0028】
(E)25℃での貯蔵弾性率〔G’(25℃)〕、および100℃での貯蔵弾性率〔G’(100℃)〕を有すると定義される〔この場合、G’(25℃)とG’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内にある〕。
【0029】
また、オレフィンブロックコポリマーは、以下を有していてもよい:すなわち、
【0030】
(F)TREFを使用して分別した場合に40℃〜130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5、最大約1までのブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)を有することを特徴とする分子画分;および/または
【0031】
(G)0よりも大きく、最大約1.0までの平均ブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)
を有していてもよい。オレフィンブロックコポリマーは、特性(A)〜(G)の1つ、幾つか、全部、または任意の組み合わせを有していてもよいことが理解される。
【0032】
本OBCを調製するのに適したモノマーとしては、エチレン、およびエチレン以外の1つまたはそれ以上の付加重合性モノマーが挙げられる。適当なコモノマーの例としては、3〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐α−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン;3〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子を有するシクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジオレフィンおよびポリオレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、および5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;ならびに3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが挙げられる。
【0033】
一実施形態において、オレフィンブロックコポリマーは、約0.85g/cc〜約0.89g/cc、または約0.86g/cc〜約0.88g/ccあるいは約0.870g/cc〜約0.879g/ccの密度を有する。
【0034】
一実施形態において、オレフィンブロックコポリマーは、ASTM D1238(190℃/2.16kg)で測定される約0.1g/10分〜約30g/10分、または約0.1g/10分〜約10g/10分、または約0.1g/10分〜約1.0g/10分、または約0.1g/10分〜約0.5g/10分、あるいは約0.3g/10分〜約0.6g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0035】
オレフィンブロックコポリマーは、ASTM D882−02の手順で測定される0よりも大きく約150よりも小さい、または約140よりも小さい、または約120よりも小さい、あるいは約100よりも小さい2%割線モジュラス(MPa)を有する。
【0036】
本OBCは、約125℃よりも低い融点を有する。融点は、国際公開第2005/090427号(米国特許第2006/0199930号)(その全内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載の示差走査熱量測定(DSC)法で測定する。
【0037】
一実施形態において、オレフィンブロックコポリマーは、約5重量%〜約30重量%、または約10重量%〜約25重量%、または約11重量%〜約20重量%のハードセグメントを含有する。ハードセグメントは、コモノマーから誘導される単位を約0.0モル%から0.9モル%未満まで含有する。オレフィンブロックコポリマーはまた、約70重量%〜約95重量%、または約75重量%〜約90重量%、あるいは約80重量%〜約89重量%のソフトセグメントも含有する。ソフトセグメントは、コモノマーから誘導される単位を15モル%未満、または約9モル%〜約14.9モル%含有する。一実施形態において、コモノマーは、ブテンまたはオクテンである。
【0038】
出願人は、意外にも、15モル%未満、または約9モル%〜約14.9モル%の範囲内のソフトセグメントコモノマー量の提供が、粘着性(tackiness)または他着性(stickness)がないかまたは実質的にないポリマー組成物を予想外に生成することを発見した。例えば、ソフトセグメント中に18モル%またはそれよりも多いコモノマー量を有するオレフィンブロックコポリマーが、50℃またはそれ以上で老化させた後に粘着性を発現することが見出された。出願人は、意外にも、ソフトセグメントコモノマー量を15モル%未満に、または約9モル%〜約14.9モル%に下げると、ソフトセグメントの結晶化度が増大し、二次加工品の粘着性または他着性が予想外に低下することを発見した。
【0039】
一実施形態において、油展OBC組成物は、油展組成物の全重量に基づいて、約20重量%〜約40重量%のOBCを含有するか、または約25重量%〜約30重量%のOBCを含有する。別の実施形態において、OBCは、コポリマーの全重量に基づいて、約5重量%〜約30重量%のハードセグメントと、約95重量%〜約70重量%のソフトセグメントを有するエチレン/オクテン・マルチブロックコポリマーである。ソフトセグメントは、オクテンから誘導される9モル%〜14.9モル%の単位を含有する。OBCは、6.0モル%〜14.2モル%の全オクテン含有量を有する。
【0040】
幾つかの実施形態において、OBCは、100phr(油展組成物の全重量に基づいて20重量%〜約40重量%)である全エラストマーに基づいて、10phr〜90phr(油展組成物の全重量に基づいて2重量%〜約36重量%)の量で存在させるか、または30phr〜70phr(油展組成物の全重量に基づいて6重量%〜約28重量%)の量で存在させるか、あるいは40phr〜60phr(油展組成物の全重量に基づいて8重量%〜約24重量%)の量で存在させる。
【0041】
2.油
【0042】
油展OBC組成物は、油を含有する。油は、芳香油、鉱油、ナフテン油、パラフィン油、トリグリセリド系植物油、例えばヒマシ油、合成炭化水素油、例えばポリプロピレン油、シリコーン油、またはこれらの任意の組み合わせであることができる。適当な油の非限定的な例は、商品名HYDROBRITE(登録商標)550として販売されている白色鉱油である。
【0043】
一実施形態において、油展OBC組成物は、約20重量%〜約60重量%の油を含有するか、または約30重量%〜約50重量%の油を含有する。重量%は、油展OBC組成物の全重量に基づく。
【0044】
3.ポリオレフィン
【0045】
油展OBC組成物は、1つまたはそれ以上のポリオレフィンを含有する。ポリオレフィンは、種々のOBC、ポリエチレン(またはエチレン系ポリマー)、ポリプロピレン(またはプロピレン系ポリマー)、EPDM、およびこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0046】
一実施形態において、ポリオレフィンは、ポリエチレンである。ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、およびこれらの組み合わせから選択される。別の実施形態において、ポリエチレンは、0.950g/ccよりも大きい密度を有する(すなわち、HDPE)。
【0047】
一実施形態において、ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。ポリプロピレンは、ランダムコポリマーポリプロピレン(rcPP)、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(hPP+少なくとも1つのエラストマー耐衝撃性改良剤)(ICPP)または高耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、またはシンジオタクチックポリプロピレン(sPP)、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0048】
一実施形態において、ポリオレフィンは、エチレン−プロピレン−ジエン・モノマーゴム(EPDM)である。EPDM材は、エチレンと、プロピレンと、非共役ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、またはエチリデンノルボルネンとの線状インターポリマーである。本明細書に開示された特性を有するインターポリマーの好ましい種類は、EPDMエラストマーを調製するためにエチレンと、プロピレンと、非共役ジエンとの重合から得られる。適当な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素ジエンであることができる。適当な非共役ジエンの例としては、以下に限定されないが、直鎖非環式ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分岐鎖非環式ジエン、例えば5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンおよびジヒドロミリセンとジヒドロオシネンの混合異性体、単環脂環式ジエン、例えば1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えばテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、およびノルボルナジエンが挙げられる。EPDMを調製するのに典型的に使用されるジエンの中で、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0049】
幾つかの実施形態において、EPDMポリマーは、約50重量%〜約75重量%のエチレン含有量、約20重量%〜約49%のプロピレン含有量、および約1重量%〜約10重量%の非共役ジエン含有量を有し、重量は全て、ポリマーの全重量に基づく。使用のための代表的なEPDMポリマーの例としては、The Dow Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド所在)から入手できるNordel IP 4770R、Nordel 3722 IP、ExxonMobil(米国ルイジアナ州バトンルージュ所在)から入手できるVistalon 3666、およびDSM Elastomers Americas(米国ルイジアナ州アディス所在)から入手できるKeltan 5636Aが挙げられる。
【0050】
EPDMポリマー(エチレンと高級α−オレフィンとポリエンとの弾性コポリマーとしても公知である)は、約20,000〜約2,000,000ダルトンまたはそれ以上の分子量を有する。その物理形態は、ワックス様物質からゴム〜硬質プラスチック様ポリマーまで変化する。これらは、100ccのトルエン中にポリマーが0.1gの溶液について30℃で測定される約0.5〜約10dl/gの希薄溶液粘度(DSV)を有する。また、EPDMポリマーは、125℃において50ML(1+4)を超えるムーニー粘度;および0.870g/cc〜0.885g/ccまたは0.875g/cc〜0.885g/ccの密度も有する。
【0051】
幾つかの実施形態において、EPDMは、100phr(油展組成物の全重量に基づいて20重量%〜約40重量%)である全エラストマーに基づいて、10phr〜90phr(油展組成物の全重量に基づいて2重量%〜約36重量%)の量で存在させるか、または30phr〜70phr(油展組成物の全重量に基づいて6重量%〜約28重量%)の量で存在させるか、あるいは40phr〜60phr(油展組成物の全重量に基づいて8重量%〜約24重量%)の量で存在させる。
【0052】
一実施形態において、油展OBC組成物は、約5重量%〜約25重量%のポリオレフィンを含有するか、または約5重量%〜約15重量%のポリオレフィンを含有する。別の実施形態において、ポリオレフィンは、HDPEである。
【0053】
他の実施形態において、油展OBC組成物は、OBCと、ポリエチレンと、EPDMを含有する。
【0054】
4.充填剤
【0055】
油展OBC組成物は、充填剤を含有する。適当な充填剤の非限定的な例として、タルク、炭酸カルシウム、チョーク、硫酸カルシウム、クレー、カオリン、シリカ、ガラス、ヒュームドシリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、例えばアルミナ三水和物、ガラス微小球、セラミック微小球、熱可塑性樹脂微小球、重晶石、木粉、ガラス繊維、炭素繊維、大理石微粉、セメント微粉、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン、およびチタネートが挙げられる。
【0056】
一実施形態において、油展OBC組成物は、約10重量%〜約50重量%の充填剤を含有するか、または約20重量%〜約30重量%の充填剤を含有する。別の実施形態において、充填剤は、炭酸カルシウムである。
【0057】
OBC、油、ポリオレフィン、および充填剤は、例えば、溶融ブレンディングおよび/または押出ブレンディングによって油展OBC組成物を形成する。次いで、前記組成物は、所望の構造体、例えばプラック、フィルム、および/またはペレットに成形し得る。
【0058】
一実施形態において、油展OBC組成物は、ハロゲンを含有していない。
【0059】
一実施形態において、油展OBC組成物は、フタレートを含有していない。
【0060】
出願人は、意外にも、(i)15モル%未満、または約9モル%〜約14.9モル%の範囲内のソフトセグメントコモノマー量を有するOBC、および(ii)本油展組成物中のポリオレフィンならびに(iii)充填剤の提供は、粘着性または他着性がないかまたは実質的にない油展OBC組成物を予想外に生成することを発見した。本明細書で使用する用語「粘着性」は、ある物質が他の物質に付着する能力である。粘着性は、粘着力により定量化される。「粘着力」は、互いに接触している2つの物質を分離するのに必要な力(ニュートン)の尺度である。粘着力の測定は、以下の「試験法」の欄に詳細に記載する。本明細書で使用する用語「不粘着性」は、70℃に1週間暴露した後に0.013N未満の粘着力を有するポリマー組成物である。
【0061】
70℃に1週間暴露させた後に、本油展OBC組成物は、0.0Nから0.1N未満までの粘着力、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から約0.05Nまでの粘着力、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から約0.04Nまでの粘着力、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.03Nまでの粘着力、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.02Nまでの粘着力、あるいは約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.013Nまでの粘着力を有する。
【0062】
出願人はまた、意外にも、(i)2〜60重量%のOBC(すなわち、約9モル%から15モル%未満までのソフトセグメントコモノマー量を有するOBC)を、(ii)ポリオレフィンと配合した油展組成物が、油展OBC組成物の柔軟性を保持しながらオイルブリードを予想外に低下させることを発見した。用語「オイルブリードアウト」または「オイルブリード」は、油がポリマー成分の内部からポリマー成分の表面に移動する現象である。オイルブリードは、表面を粘着性にするおよび/または滑り易くする。オイルブリードは、典型的に、不快な「感触」(触感)および/または不快な「光学的性質」(外観)をもたらす。用語「油滲出」は、油がポリマー成分の内部からポリマー成分の表面に移動するプロセスである。油滲出は、オイルブリードを生じる。言い換えると、オイルブリードは、油滲出の最終結果である。オイルブリードは、高められた温度によって促進される。
【0063】
オイルブリードは、正規化オイルブリードインデックス(NOBI)によって評価する。NOBIは、油含有ポリマー組成物表面からシガレットペーパーに吸収される油の量の光学的測定値である。NOBIは、次式によって算出する:
正規化オイルブリードインデックス=100×(試料の%グレースケール−対照の%グレースケール)/(100−対照の%グレースケール)
【0064】
用語「試料の%グレースケール」は、老化した試料について測定した%グレースケールであり、「対照の%グレースケール」は、シガレットペーパーの非老化未処理シートの測定値である。NOBIは、0〜100の範囲を有する。NOBI=100である場合には、シガレットペーパーが飽和され、試験は、そのレベルを超えるオイルブリードを記録しない。
【0065】
一実施形態において、油展OBC組成物は、23℃で1週間後に、20未満、または10未満の正規化オイルブリードインデックス、あるいは0から20未満まで、または0から10未満まで、または0から5未満までの正規化オイルブリードインデックスを有する。
【0066】
一実施形態において、油展OBC組成物は、23℃で3週間後に、20未満のNOBI、または約5から20未満までのNOBIを有する。
【0067】
一実施形態において、本組成物は、70℃で3週間後に、50未満のNOBI、あるいは0から50未満まで、または0から10未満までのNOBIを有する。
【0068】
一実施形態において、本油展OBC組成物は、約40〜約90、または約50〜約90のショアA硬度を有する。
【0069】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマー組成物が提供され、油展オレフィンブロックコポリマー組成物は、OBCと、油と、ポリオレフィンと、充填剤を含有する。OBCは、ハードセグメントとソフトセグメントを有するエチレン/α−オレフィン・マルチブロックコポリマーである。ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後におよび/または70℃に3週間暴露させた後に、50未満のNOBI値、または10から50未満までのNOBI値を有する。また、前記組成物は、約50〜約90のショアA硬度を有する。
【0070】
一実施形態において、前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に、0.1N未満の粘着力、あるいは約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から約0.05Nまで、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から約0.04Nまで、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.03Nまで、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.02Nまで、または約0.0N(または0.0Nよりも大きい)から0.013Nまでの粘着力を示す。
【0071】
一実施形態において、ポリオレフィンは、0.950g/ccよりも大きい密度を有するポリエチレン(高密度ポリエチレン)である。
【0072】
一実施形態において、前記組成物は、約20重量%〜約30重量%のOBCと、約30重量%〜約40重量%の油と、約5重量%〜約15重量%のポリエチレンと、約25重量%〜約30重量%の充填剤を含有する。別の実施形態において、OBCは、エチレン/オクテン・マルチブロックコポリマーである。
【0073】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、油展オレフィンブロックコポリマーが提供され、油展オレフィンブロックコポリマーは、OBCと、ポリエチレンと、充填剤を含有する。OBCは、ハードセグメントとソフトセグメントを有するエチレン/α−オレフィン・マルチブロックインターポリマーであり、ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含有する。前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に、次の特性:(i)0.013N未満の粘着力、または0.0Nから0.013N未満までの粘着力;および(ii)約40〜約90、または約50〜約70のショアA硬度を有する。
【0074】
一実施形態において、前記組成物は、70℃に1週間暴露させた後に、50未満のNOBI、または0から50未満までのNOBIを有する。別の実施形態において、前記組成物は、70℃に3週間暴露させた後に、50未満のNOBI、あるいは0から50未満まで、または0から10未満までのNOBIを有する。
【0075】
一実施形態において、ポリエチレンは、0.95g/ccよりも大きい密度を有する。
【0076】
一実施形態において、前記組成物は、約40%〜約70%、または約45%〜約65%、あるいは約50%〜約60%の圧縮永久歪値を有する。圧縮永久歪は、ASTM D395に従って測定する。
【0077】
前記の油展オレフィンブロックコポリマー組成物のいずれも、本明細書に開示される2つまたはそれ以上の実施形態を構成し得る。
【0078】
OBCは、前記ポリマーのレオロジーを変化させるためにe−ビームまたは過酸化物処理のような方法で改質することができる。e−ビームおよび過酸化物は、単なる例として提供され、限定されることを意味しない。これらの処理は、鎖切断および架橋の両方の事象をもたらす。これらの事象が、例えばe−ビーム線量を調節することによって適切に釣り合わされた場合には、OBCのレオロジー比は、ポリマーの分子量を著しく低下させずに増大させることができる。
【0079】
前記の油展オレフィンブロックコポリマー組成物はいずれも、物品にすることができるし、または物品の部品にすることができる。適当な物品の非限定的な例として、自動車、建造物、医療、食品および飲料、電気器具、事務機器、ならびに民生用途の耐久品が挙げられる。幾つかの実施形態において、前記組成物は、玩具、グリップ、ソフトタッチハンドル、バンパーラブストリップ、床材、自動車用フロアーマット、ホイール、キャスター、家具および電気器具の脚、タグ、シール、ガスケット、例えば静的および動的ガスケット、自動車用ドア、バンパーフェイシア、グリル部品、ロッカーパネル、ホース、ライニング、事務用品、シール、ライナー、ダイアフラム、チューブ、蓋、栓、プランジャーチップ、デリバリーシステム、台所用品、靴、靴袋および靴底から選択される可撓性耐久部品または物品を製造するのに使用される。幾つかの実施形態において、前記組成物は、高い引張強さおよび低い圧縮永久歪を必要とする耐久部品または物品を製造するのに使用される。別の実施形態において、前記組成物は、高い上限使用温度および低い弾性率を必要とする耐久部品または物品を製造するのに使用される。
【0080】
定義
【0081】
本明細書の元素の周期律表に対する全ての言及は、CRC Press、Inc.によって2003年に刊行され、著作権保護されている元素の周期律表(the Periodic Table of the Elements)を指す。また、1つまたは複数の族に対するいずれの言及も、族に番号付与するためのIUPACシステムを使用してこの元素の周期律表に示されている1つまたは複数の族に対するものである。特にそれと反対に、文脈からの暗示について、または当分野での慣習について明記しない限りは、全ての部および%は、重量に基づく。米国特許実務のために、本明細書において参照する特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に合成法、定義(本明細書において提供される定義と矛盾しない範囲で)および当分野での一般知識の開示に関して、これらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる(またはこれらの相当するUSバージョンが、参照することによりそのように組み込まれる)。
【0082】
本明細書に列挙する数値範囲は、低い値と高い値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件として、1単位ずつの増加で低い値から高い値までの全ての値を含む。例として、成分の量、または組成的もしくは物理的特性の値、例えば、配合成分の量、軟化温度、メルトインデックスなどが、1〜100の間にあると記載される場合には、全ての個々の値(例えば、1、2、3など)、および全ての部分範囲(例えば、1〜20、55〜70、97〜100など)が、本明細書に明確に列挙されていることを意図する。1未満の値について、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されることについての単なる例であり、列挙される最小値と最大値の間の数値の全ての可能な組み合わせが、本明細書に明確に記載されているとみなされるべきである。言い換えると、本明細書に列挙された数値範囲は、記載された範囲内の任意の値または下位範囲を含む。数値範囲、すなわち参照メルトインデックス、メルトフローレート、およびその他の特性が、本明細書において論じたように列挙されている。
【0083】
本明細書で使用する用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種またはそれ以上のポリマーのブレンド(配合物)である。このようなブレンドは、混和性であってもよいしまたは混和性でなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。このようなブレンドは、相分離していてもよいしまたは相分離していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子顕微鏡、光散乱、X線散乱、および当分野で公知のその他の方法で測定されるような1つまたはそれ以上のドメイン配置を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0084】
本明細書で使用する用語「組成物」は、組成物を構成する材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を包含する。
【0085】
用語「含む(comprising)」およびその派生語は、任意の追加成分、工程または手順の存在を、これらが本明細書に開示されているか否かに関わらず、除外することを意図するものではない。誤解を避けるために、用語「含む」の使用による本明細書において請求される全ての組成物は、特にそれと反対に明記しない限りは、高分子物質であるか否かに関わらず、任意の追加の添加剤、補助剤、または化合物を含有していてもよい。これに比べて、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、その後に続く列挙の範囲から、実施可能性に不可欠でないもの以外は、任意のその他の成分、工程または手順を除外する。用語「からなる(consisting of)」は、具体的に記述または列記されていない任意の成分、工程または手順を除外する。用語「または(もしくは)」は、特に明記しない限りは、列記した構成要素を個々におよび任意の組み合わせで指す。
【0086】
正規化オイルブリードインデックス(NOBI)は、油含有ポリマー組成物からシガレットペーパーに吸収された油の量の光学的測定値である。
【0087】
用語「ポリマー」は、同じ種類または異なる種類のモノマーを重合させることによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを包含する。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーとしては、以下に限定されないが、コポリマー(これは、通常、2つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、ターポリマー(これは、通常、3つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、テトラポリマー(これは、通常、4つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)などが挙げられる。
【0088】
試験方法
【0089】
圧縮永久歪は、ASTM D395に従って測定する。試料は、厚みが3.2mm、2.0mm、および0.25mmの直径25.4mmの円形ディスクを、全体の厚みが12.7mmに達するまで積み重ねることによって調製する。ディスクは、4”×6”×0.125”の射出成形プラックから切り出す。圧縮永久歪は、70℃また23℃において25%歪で24時間後に測定する。
【0090】
密度は、ASTM D792に従って測定する。
【0091】
示差走査熱量測定(DSC)は、圧縮成形試験片についてTA Instruments製Q100またはQ1000 DSCと、クリンプシールしたPerkin Elmer製のパン(pan)を使用して行う。試料を、−90℃で5分間平衡させ、次いで10℃/分で180℃まで加熱し(「1次加熱DSC曲線」をキャプチャーする)、5分間保ち、次いで10℃/分で−90℃まで冷却し(「結晶化曲線」をキャプチャーする)、5分間保ち、次いで10℃/分で180℃まで加熱する(「2次加熱DSC曲線」をキャプチャーする)。得られたデータを、操作完了後にTA製のUniversal Analysisソフトウエアを使用して解析する。
【0092】
メルトインデックス(MI)は、ASTM D1238、条件190℃./2.16kgに従って測定する。
【0093】
正規化オイルブリードインデックス(NOBI)は、オイルブリード特性を比較するための光学的測定値である。成形プラックを、ZigZag(商標)シガレットペーパー(ZigZag Corp.から入手できる)上に静置させながら24時間、1週間、および3週間(23℃および70℃で)老化させる。老化させた後に、シガレットペーパーを取り出し、黒色背景に対して光学的に走査してオイルブリードの程度を測定する。
【0094】
走査は、Xerox WorkCentre(登録商標) M118iコピー機/ファックス/スキャナーを使用して行う。画像を、「Text」モードで、200dpiで走査し、TIFFファイルとして保存する。このTIFFファイルを、MSペイントブラシで開き、両側を切り落とし、次いで保存する。次いで、この画像を、Photoshop(登録商標) CS2(v.9)で開き、他の両側を切り落とす。このTIFFファイルを、MSペイントブラシで開き、両側を切り落とし、次いで保存する。「テキストモード」画像は、二値画像である。画像のブラックピクセルの百分率が、所望の結果である。テキストモード画像は、このソフトウエアで、2つのレベルのグレースケール、0(ブラック)〜255(ホワイト)を用いてグレースケールヒストグラムを作製できるように、最初に画像を8ビットグレースケールに変換することによって得られる。ヒストグラムの0グレースケールレベルの百分率は、ブラックピクセルの百分率と同じである。(この値は、「%グレースケール」呼ぶが、さらに正確には二値画像において「%ブラックピクセル」と記載してもよい)。
【0095】
正規化オイルブリードインデックス(NOBI)は、次式:
正規化オイルブリードインデックス=100×(試料の%グレースケール−対照の%グレースケール)/(100−対照の%グレースケール)
によって算出する。
【0096】
用語「試料の%グレースケール」は、老化させた試料について測定した%グレースケールであり、「対照の%グレースケール」は、シガレットペーパーの老化させない未処理シートの測定値である。NOBIは、0〜100の範囲を有する。NOBI=100である場合には、シガレットペーパーが飽和され、試験は、そのレベルを超えるオイルブリードを記録しない。図1は、グレースケール4つの例:20.1%、34.6%、51.6%、および100%のグレースケールを表す。
【0097】
ショアA硬度は、成形プラックについてASTM D2240に従って測定する。この試験法は、最初の押込みまたは特定の時間後の押込みのいずれか、あるいは両方に基づく硬度測定を可能にする。この場合には、10秒の特定時間を使用する。
【0098】
小角度x線散乱(SAXS)データは、Cu放射および2D領域検出器を備えたRigaku Micro SourceX線発生装置を使用して採取する。試料を、Labview(登録商標)ソフトウエアを使用してPCで制御する精密ステップモーターを使用してビーム中に置く。データを、SCATTERを使用して解析し、エア(air)バックグラウンドについて較正する。
【0099】
粘着力は、以下の通りに測定する。試料を、0.125インチの厚みを有するプラックに圧縮成形または射出成形する。試料を、1”×6”の細片に切断し、1”の間隔で印を付ける。試料を、必要ならば高められた温度で老化させる。Mylar(登録商標)シートを、1”×6”の細片に切断し、1”×5”の寸法を有する輪を形成する。老化させた後に、試料を室温に冷却する。両面テープを使用して、試験片をプラットホームに取り付けてその表面から試験片が立ち上がるのを防止する。前記の輪を、Instron(商標)5564の空気圧グリップに入れ、前記プラックと平行に並べる。前記の輪を、プラックの1”×1”の表面を覆い300%/分の速度で下げる。新たな輪を、それぞれの測定値の採取に使用する。試験片当たり5回の読み取りの後に、平均粘着力(N)および標準偏差を報告する。試料のそれぞれの1”×1”部分につき1つの測定値を採取する。
【0100】
表面粗さ
表面粗さは、金型で、鏡面仕上げプレートをサンダー仕上げすることによって作製する。金型の表面粗さは、プロフィロメーター(Dektak 150触針式プロフィロメーター)を使用して、以下のパラメーターを使用して測定する。表面粗さは、サンダー仕上げ方向と平行な方向および垂直な方向の両方で測定する。報告する表面粗さの値は、垂直方向についてはRa、すなわち平均粗さである。Ra(平均粗さ)〔これまで、算術平均(Arithmetic Average)(AA)および中心線平均(Center Line Average)(CL)として公知である〕は、評価長さ内の平均線からの算術平均偏差である。
【0101】
試料当たり10ライン走査
【0102】
走査タイプ 標準走査
【0103】
触針半径:2.5μm
【0104】
走査長さ 15000.0μm
【0105】
時間 90秒
【0106】
解像度 0.556μm/試料
【0107】
力 1.00mg
【0108】
測定範囲 524μm
【0109】
分布 山および谷
【0110】
表示範囲 自動
【0111】
ショートパスフィルターカットオフ 100.0μm
【0112】
ロングパスフィルターカットオフ 1500.0μm
【0113】
R.カーソル位置:100.0μm 幅:40.0μm
【0114】
R.カーソル位置:14750.0μm 幅:40.0μm
【0115】
例としておよび限定されることなく、本開示の実施例をここで提供する。
【0116】
実施例
【0117】
1.材料
【0118】
A.オレフィンブロックコポリマー
【0119】
オレフィンブロックコポリマーは、The Dow Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド所在)から入手できる。
【0120】
(i)INFUSE(商標)9007−0.5g/10分のMI、0.866g/ccの密度のオレフィンブロックコポリマー(OBC)であって、重量%で11/89のハードセグメント/ソフトセグメントスプリット、ソフトセグメント中18モル%のオクテン、ならびに15.6モル%の全オクテンを有する。
【0121】
(ii)INFUSE(商標)9000−0.5g/10分のMI、0.877g/ccの密度のOBCであって、重量%で25/75のハードセグメント/ソフトセグメントスプリット、ソフトセグメント中18モル%のオクテン、および12.7モル%の全オクテンを有する。
【0122】
(iii)OBC3−0.5g/10分のMI、0.877g/ccの密度のOBCであって、130ppmのZn、重量%で11/89のハードセグメント/ソフトセグメントスプリット、ソフトセグメント中13モル%オクテン、11.2モル%の全オクテンを有する。3種類のOBCの特性を、以下の表1に示す。
【表1】
【0123】
B.油
【0124】
Hydrobrite 550(Sonneborn)−公称70%のパラフィン含有量および30%のナフテン含有量、ならびに平均541のMWを有する鉱油。
【0125】
C.ポリオレフィン
【0126】
Dow DMDA−8920 NT7(Dow HDPE 8920)は、The Dow Chemical Companyから入手できる高密度ポリエチレンである。Dow HDPE 8920は、0.954g/ccの密度、20g/10分のMI、および130℃の融点を有する。
【0127】
Dow hPP 700−12は、The Dow Chemical Companyから入手できるポリプロピレンである。Dow hPP 700−12は、0.900g/ccの密度(ASTM D792)、および12のメルトフローレート(230℃/2.16kg、ASTM D1238)を有する。
【0128】
NORDEL IP 4770は、The Dow Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド所在)から入手できるエチレン−プロピレン−ジエン・モノマーゴム(EPDM)であり、次の特性:0.872g/ccの密度、70のムーニー粘度(ML 1+4、257F)、70重量%のエチレン含有量および5重量%のENB含有量を有する。
【0129】
Vistalon 3666は、ExxonMobil Chemical Company(米国テキサス州ヒューストン所在)から入手できるEPDMであり、次の特性:52のムーニー粘度、64重量%のエチレン含有量、および4.5重量%のENB含有量を有する。
【0130】
D.充填剤
【0131】
炭酸カルシウム−Atomite(IMERYS Performance Mineralsから入手できる)
【0132】
2.調製
【0133】
試料A’、B’、1、2および3の組成を、以下の表2に提供する。試料AおよびBは、比較である。量は、組成物の全重量に基づく重量%で示す。
【表2】
【0134】
表2の試料1〜3は、Werner&Pleiderer ZSK−30二軸スクリュー押出機、およびDayton DCモーターで駆動するZenithポンプで配合される。試料1〜3は、Gala LPU実験室用水中ペレット成形装置でペレット化する。プロセス条件を、以下の表3〜4に示す。
【表3】
【0135】
試料1〜3を、以下の表4に示す下記条件下で4”×6”×0.125”の鏡面磨きプラックに成形する。
【表4】
【0136】
図2は、70℃に1週間暴露させた後の試料1〜3の粘着力とショアA硬度の値を表す。また、図2に、0.013Nの粘着力を示すボックスの上部横線で示される粘着性がない帯域も表す。この線の下の試料は、粘着性がない。
【0137】
図3は、23℃に3週間暴露させた後の試料1〜3のNOBIとショアA硬度の値を表す。
【0138】
図4は、70℃に3週間暴露させた後の試料1〜3のNOBIとショアA硬度の値を表す。
【0139】
図5は、70℃に24時間暴露させた後の試料1〜3の圧縮永久歪(%)とショアA硬度の値を表す。
【0140】
図2〜5のデータは、低い粘着性(または無粘着性)を有し、低いオイルブリード(50未満のNOBI)、および柔軟性(ショアA50〜90)を有する試料1〜3を表す。
【0141】
表5は、試料A、Bおよび1〜3の特性を表す。
【表5】
【0142】
実施例セット2
次の試料のセットは、試料1〜3と同様に調製する。表6および7は、160phrの油および190phrの油それぞれを有する試料の配合物および特性を示す。
【表6】
【0143】
【表7】
【0144】
図6および図9に示すように、160phrの油を有する表5の発明実施例4〜11は、低い粘着性および低い圧縮永久歪を有する。前記発明実施例は、NORDEL 4770(EPDM)を用いて調製される配合物の利点、すなわち低い粘着性および高いレオロジー比と、OBCを用いて調製される配合物の利点、すなわち低いショアA範囲内での低い圧縮永久歪とを兼ね備える。一般に、OBCまたはOBC+EPDMを用いて調製される配合物は、調製されるショアA材料の範囲内で最も低い圧縮永久歪値を有する。一方、低い粘着性能は、下は約50のショアAに至るまでEPDM配合物およびOBC/EPDM配合物について達成される。190phrの油を有する実施例12〜15を、表6に示す。また、低い粘着性と低い圧縮永久歪の組み合わせは、OBC/EPDMブレンドを用いて配合される発明実施例を用いて達成される。表6の実施例の粘着性と圧縮永久歪データを、図10および図11に示す。
【0145】
低い粘着性と低い圧縮永久歪の本発明の兼備は、特に他の諸特性を考慮すると、予測されない。極限引張強さなどの特性については、一方の単一成分エラストマー事例または他方の単一成分エラストマー事例の値に近い値よりもむしろ、2つの単一成分エラストマー事例の間の平均値に近い特性値が得られる(図8参照)。
【0146】
表面組織の影響の実施例
2つの異なるコンパウンドについて粘着性に対する表面組織の影響の実施例を、以下の表8に示す。示すように、テクスチャード金型を使用すると、粘着力は、著しく低い。低い粘着性を達成するのに必要な表面粗さの度合いは、配合物と共に変化するが、例証するように、0.41μmの粗さを有する金型は、両方の配合物について低い粘着性をもたらす。これらの実施例で使用した成形条件は、以下に含まれる。これらの成形条件は他の実施例で使用した成形条件と異なることに留意されたい。
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例証に限定されないが、以下の特許請求の範囲内に入る実施形態の部分および異なる実施形態の要素の組み合わせを含め前記実施形態の改変された形態を含むことを明確に意図する。
本願発明には以下の態様が含まれる。
[1]
油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
ハードセグメントとソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
油;
1つまたはそれ以上のポリオレフィン;
充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
0.1N未満の粘着力;および
約50〜約90のショアA硬度;
を有する、油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
[2]
前記オレフィンブロックコポリマーが、約5重量%〜約30重量%のハードセグメントと、約95重量%〜約70重量%のソフトセグメントを含むエチレン/オクテン・マルチブロックコポリマーからなる、上記[1]に記載の組成物。
[3]
約2重量%〜約40重量%のオレフィンブロックコポリマーと、約20重量%〜約50重量%の油と、約5重量%〜約50重量%のポリオレフィンと、約20重量%〜約40重量%の充填剤を含む、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
ハードセグメントとソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
油;
1つまたはそれ以上のポリオレフィン;
充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
50未満の正規化オイルブリードインデックス;および
約50〜約90のショアA硬度;
を有する、油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
[6]
約2重量%〜約30重量%のオレフィンブロックコポリマーと、約30重量%〜約40重量%の油と、約5重量%〜約25重量%のポリエチレンと、約25重量%〜約30重量%の充填剤を含む、上記[5]に記載の組成物。
[7]
油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
ハードセグメントとソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
油;
ポリエチレン;
充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
0.020N未満の粘着力;および
約40〜約90のショアA硬度;
を有する油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
[8]
さらにエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムを含む、上記[7]に記載の組成物。
[9]
成形油展オレフィンブロックコポリマー組成物であって、
ハードセグメントとソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマー(前記ソフトセグメントは、約9モル%から15モル%未満までのコモノマー量を含む);
油;
1つまたはそれ以上のポリオレフィン;
充填剤;
を含み、70℃に1週間暴露させた後に次の特性:
0.1N未満の粘着力;および
約50〜約90のショアA硬度
を有し、0.41μmの表面粗さの金型を使用して調製される、成形油展オレフィンブロックコポリマー組成物。
[10]
エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムをさらに含む、上記[9]に記載の成形油展組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12