特許第5809705号(P5809705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5809705ブロックポリイソシアネートの水分散体、繊維処理剤組成物、及び布帛
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809705
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネートの水分散体、繊維処理剤組成物、及び布帛
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20151022BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20151022BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20151022BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20151022BHJP
   C09D 127/12 20060101ALN20151022BHJP
   C09D 7/12 20060101ALN20151022BHJP
   C09D 175/04 20060101ALN20151022BHJP
   C09D 5/02 20060101ALN20151022BHJP
【FI】
   C08G18/80
   C08L75/04
   D06M15/564
   D06M15/277
   !C09D127/12
   !C09D7/12
   !C09D175/04
   !C09D5/02
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-540781(P2013-540781)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2012077333
(87)【国際公開番号】WO2013061954
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-233472(P2011-233472)
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祐一
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 芳幸
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−45072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/80
C08L 75/04
D06M 15/277
D06M 15/564
C09D 5/02
C09D 7/12
C09D 127/12
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記1)から3)成分単位を有するブロックポリイソシアネートと水とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが1〜80nmである、
ブロックポリイソシアネートの水分散体。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートモノマー単位を有するポリイソシアネート単位
2)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)ブロック剤単位
【請求項2】
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが下記式1を満足する、請求項1に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
〔式1〕1≦φ≦310−8×A
(Aは、前記ブロックポリイソシアネート中の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位の質量%)
【請求項3】
前記ブロックポリイソシアネートが、下記組成を有する、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
1)45〜65質量%のポリイソシアネート単位
2)15〜30質量%の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)15〜30質量%のブロック剤単位
【請求項4】
前記ポリイソシアネート単位のイソシアネート平均官能基数が4から20である、請求項1から3のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
【請求項5】
前記ブロック剤がピラゾール系化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
【請求項6】
前記ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種がヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項1から5のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
【請求項7】
炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂と、請求項1からのいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体とを含む、繊維処理剤組成物。
【請求項8】
請求項に記載の繊維処理剤組成物により処理された、布帛。
【請求項9】
炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂と、ブロックポリイソシアネートの水分散体とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの水分散体は、少なくとも下記1)から3)成分単位を有するブロックポリイソシアネートと水とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが1〜250nmである、維処理剤組成物。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートモノマー単位を有するポリイソシアネート単位
2)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)ブロック剤単位
【請求項10】
請求項9に記載の繊維処理剤組成物により処理された、布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ブロックポリイソシアネートの水分散体、それを含む繊維処理剤組成物、及び該繊維処理剤組成物により処理された布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維に各種機能を付与するために繊維処理剤が用いられている。その機能としては水、油の付着を防ぐ撥水撥油、着心地を快適にする風合い、縫製品の型崩れ防止等が挙げられる。
【0003】
このなかでも、撥水性を付与する繊維処理剤としては、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素樹脂を有する組成物が用いられてきた。しかし、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素樹脂は、環境中に排出された場合、分解して、蓄積性、有害性が懸念されているパーフルオロオクタン酸が発生する可能性のあることが指摘されている。そのため、パーフルオロアルキル基の炭素数を8から6以下にし、パーフルオロオクタン酸が発生しないフッ素樹脂に代替する検討が盛んに行なわれている。
【0004】
しかしながら、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素樹脂は、炭素数が8以上のものに比べ、洗濯繰返し後の撥水性等の性能が低下する場合があり、その性能維持が切望されている。ひとつの方法として性能維持のために、繊維処理剤にブロックポリイソシアネートを添加することが検討されている(特許文献1〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−511507号公報
【特許文献2】特表2006−506226号公報
【特許文献3】特表11−512772号公報
【特許文献4】国際公開第 00/58416号パンフレット
【特許文献5】国際公開第 2012/014850号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/037076号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2012/0238697号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜7に記載のブロックポリイソシアネートは水分散性が不安定な上、塗膜強度が不十分である。また、フッ素樹脂と混合したこれら繊維処理剤組成物は、高いせん断圧力にさらされた際に、凝集物が発生するという問題がある。さらには、特許文献1〜7の繊維処理剤組成物で処理した布帛は高い洗濯耐久性を維持するのが困難である。
【0007】
本発明の目的は、水分散安定性が良好で、かつ高い塗膜強度を得ることができるブロックポリイソシアネートの水分散体、さらに、フッ素繊維処理剤としての機械的安定性に優れた繊維処理剤組成物、及び高い洗濯耐久性を持つ布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイソシアネート及び特定化合物の成分単位を有するブロックポリイソシアネートの水分散体が前記課題を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
〔1〕
少なくとも下記1)から3)成分単位を有するブロックポリイソシアネートと水とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが1〜80nmである、
ブロックポリイソシアネートの水分散体。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートモノマー単位を有するポリイソシアネート単位
2)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)ブロック剤単位
〔2〕
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが下記式1を満足する、前項〔1〕に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
〔式1〕1≦φ≦310−8×A
(Aは、前記ブロックポリイソシアネート中の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位の質量%)
〔3〕
前記ブロックポリイソシアネートが、下記組成を有する、前項〔1〕又は〔2〕に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
1)45〜65質量%のポリイソシアネート単位
2)15〜30質量%の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)15〜30質量%のブロック剤単位
〔4〕
前記ポリイソシアネート単位のイソシアネート平均官能基数が4から20である、前項〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
〔5〕
前記ブロック剤がピラゾール系化合物である、前項〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
〔6〕
前記ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種がヘキサメチレンジイソシアネートである、前項〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体。
〔7〕
炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂と、前項〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネートの水分散体とを含む、繊維処理剤組成物。
〔8〕
前項〔7〕に記載の繊維処理剤組成物により処理された、布帛。
〔9〕
炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂と、ブロックポリイソシアネートの水分散体とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの水分散体は、少なくとも下記1)から3)成分単位を有するブロックポリイソシアネートと水とを含み、
前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが1〜250nmである、維処理剤組成物。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートモノマー単位を有するポリイソシアネート単位
2)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)ブロック剤単位
〔10〕
前項〔9〕に記載の繊維処理剤組成物により処理された、布帛。

【発明の効果】
【0010】
本発明のブロックポリイソシアネートの水分散体は、ブロックポリイソシアネートの水分散安定性が良好であり、かつ、高い塗膜強度を持つ塗膜を得ることができる。さらに、前記水分散体を含む繊維処理剤組成物は、機械的安定性に優れ、該繊維処理剤組成物で処理された布帛は、高い洗濯耐久性を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に述べるが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
〔ブロックポリイソシアネートの水分散体〕
本発明のブロックポリイソシアネートの水分散体は、
少なくとも下記1)から3)成分単位を有するブロックポリイソシアネートと水とを含み、前記ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φが、1〜250nmである。平均分散粒子径は1〜180nmが好ましく、1〜80nmがより好ましい。上記範囲であることにより、水分散安定性と機械的安定性により優れる傾向にある。ここで言う、平均分散粒子径とは、体積平均分散粒子径であり、詳細には実施例に記載の方法により測定することができる。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートモノマー単位を有するポリイソシアネート単位
2)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位
3)ブロック剤単位
【0013】
本発明のブロックポリイソシアネートは、親水基である片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドを単位として含み、従来より少ない親水基量で平均分散粒子径を小さくすることができる。具体的には、ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径は、下記式1を満たすことが好ましい。上記範囲であることにより、より高い水分散安定性とより高い塗膜強度が両立できる傾向にある。
〔式1〕1≦φ≦310−8×A
(Aは、前記ブロックポリイソシアネート中の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位の質量%)
【0014】
〔ポリイソシアネート単位〕
本発明のブロックポリイソシアネートはポリイソシアネート単位を有する。ポリイソシアネートの原料として用いることのできる脂肪族ジイソシアネートモノマー及び脂環族ジイソシアネートモノマーとは、その構造の中にベンゼン環を含まない。脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、特に限定されないが、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDIが好ましい。これらは2種以上併用することもできる。
【0015】
また、本発明に用いるポリイソシアネートの原料として、前記ジイソシアネートモノマー以外に1〜6価のアルコールを用いることができる。
【0016】
本発明のポリイソシアネートの原料として使用することのできる1〜6価のアルコール(ポリオール)としては、例えば、非重合ポリオールと重合ポリオールがある。非重合ポリオールとは重合を履歴しないポリオールであり、重合ポリオールはモノマーを重合して得られるポリオールである。
【0017】
非重合ポリオールとしてはモノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。モノアルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i―ブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。ジオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。トリオール類としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、テトラオール類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0018】
重合ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオールや、多価アルコールを用いてε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダムあるいはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類や、エチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類が挙げられる。これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等も挙げられる。
【0021】
本発明で用いるポリイソシアネートはイソシアヌレート基を含むことが好ましい。イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを用いて硬化した塗膜は、耐侯性が良好である。
【0022】
本発明で用いるポリイソシアネートは、イソシアヌレート基以外の官能基、例えば、ビウレット基、尿素基、ウレトジオン基、ウレタン基、アロファネート基、オキサジアジントリオン基等も同時に含むことができる。
【0023】
イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートは、例えば触媒等によりイソシアヌレート化反応を行い、所定の転化率になった時に反応を停止し、ジイソシアネートモノマーを除去して得られる。この際に使用するイソシアヌレート化反応触媒としては、一般に塩基性を有するものが好ましく、具体的には、(a)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや酢酸等の有機弱酸塩、(b)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや酢酸等の有機弱酸塩、(c)酢酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の、錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩、(d)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(e)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(f)マンニッヒ塩基類、(g)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(h)トリブチルホスフィン等の燐系化合物等が挙げられる。これら触媒の使用量は原料である、ジイソシアネート、ポリオールの合計質量に対して、10ppm〜1%の範囲から選択される。反応終了させるためにこれらイソシアヌレート化反応触媒は、触媒を中和するリン酸、酸性リン酸エステル等の酸性物質の添加、熱分解、化学分解により不活性化される。
【0024】
ポリイソシアネートの収率は10〜70質量%である。高い収率で得られるポリイソシアネートは粘度が高くなる傾向がある。
【0025】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、反応性を高くする観点から20℃以上が好ましく、製品の着色や副反応発生を抑える観点から200℃以下が好ましい。より好ましくは、50〜150℃である。
【0026】
反応終了後、ジイソシアネートモノマーは薄膜蒸発缶、抽出等により除去され、ポリイソシアネートは実質的にジイソシアネートモノマーを含まないものとなる。得られたポリイソシアネート中の残留未反応ジイソシアネート濃度は、硬化性を高くする観点から3質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
本発明に用いることのできるポリイソシアネートの粘度は25℃において、100〜30000mPa・sであり、好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは550〜4000mPa・sである。
【0028】
本発明に用いられるポリイソシアネートの数平均分子量は500〜2000が好ましく、さらに好ましくは550〜1000である。
【0029】
ポリイソシアネートの1分子が有する統計的な平均イソシアネート基数(イソシアネート平均官能基数)は、架橋性を高くする観点から4以上が好ましく、溶剤への溶解性や水への分散安定性を良好にする観点から20以下が好ましい。より好ましくは4〜15であり、さらに好ましくは4〜9である。
【0030】
ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基濃度は5〜25質量%が好ましく、より好ましくは10〜24質量%、さらに好ましくは15〜24質量%である。
【0031】
〔片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位〕
本発明のブロックポリイソシアネートは、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位を有する。片末端水酸基であるポリエチンオキサイドとは、ポリエチレンオキサイドの片方の末端に水酸基を有する化合物であり、開始モノアルコールにエチレンオキサイドを付加して得られる化合物である。この開始モノアルコールの炭素数は1〜10が好ましい。開始モノアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。このなかでも、好ましい開始モノアルコールはメタノールである。
【0032】
片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドの分子量は300〜2000が好ましく、より好ましくは300〜1500、さらに好ましくは500〜1000である。
【0033】
〔ブロック剤単位〕
本発明のブロックポリイソシアネートは、ブロック剤単位(ブロック剤由来の単位)を有する。ブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系化合物、アルキルフェノール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミド系化合物、ピラゾール系化合物等が挙げられる。より具体的なブロック化剤の例を下記に示す。
【0034】
(1)アルコール系化合物;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等、
(2)アルキルフェノール系化合物;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類や、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類等、
(3)フェノール系化合物;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系化合物;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系化合物;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(9)尿素系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系化合物;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系化合物;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、
(12)イミン系化合物;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、及び
(13)ピラゾール系化合物;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等が挙げられる。
【0035】
これらは2種以上を併用することができる。好ましいブロック剤はアミン系化合物(好ましくは脂肪族アミン系化合物)又はピラゾール系化合物であり、さらに好ましいブロック剤はピラゾール系化合物であり、3,5−ジメチルピラゾールが特に好ましい。ピラゾール系化合物、特に3,5−ジメチルピラゾールを用いることにより、低温または短時間の乾燥において硬化性がより優れる傾向にある。
【0036】
ブロックポリイソシアネートを得る際に、炭素数3以上のアルキレンオキサイドが重合したモノオールを用いることができる。
【0037】
炭素数3以上のアルキレンオキサイドが重合したモノオールは、開始モノアルコールと炭素数3以上のアルキレンオキサイドから誘導される。この開始モノアルコールの炭素数は1〜10であり、好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは4〜8である。これらの具体的なモノアルコールとしては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコールが挙げられる。
【0038】
前記の炭素数3以上のアルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられ、プロピレンオキサイドが好ましい。炭素数3以上のアルキレンオキサイドは、特に限定されないが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等の存在下で、これらのアルキレンオキサイドの単独又は混合物を前記の開始モノアルコールに付加して得られる。
【0039】
炭素数3以上のアルキレンオキサイドが重合したモノオール数平均分子量は、ブロックポリイソシアネートとポリオールの相溶性の向上の観点から、300以上が好ましい。また、得られる塗膜の硬度を高くする観点から、2000以下が好ましい。より好ましくは300〜1500であり、さらに好ましくは350〜1000である。
【0040】
本発明のブロックポリイソシアネート中の成分の質量濃度を説明する。本発明のブロックポリイソシアネートを100質量%としたときの、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位の成分濃度は、水への溶解性、分散性を良くする観点から、15質量%以上が好ましい。また、得られる塗膜の強度を高くする観点から、30質量%以下が好ましい。より好ましくは15〜25質量%である。
【0041】
本発明のブロックポリイソシアネートを100質量%としたときの、ポリイソシアネート単位の成分濃度は、硬化性を高くするために、イソシアネート基濃度を高くする観点から、45質量%以上が好ましく、65質量%以下が好ましい。より好ましくは50〜60質量%である。
【0042】
本発明のブロックポリイソシアネートを100質量%としたときの、ブロック剤単位の成分濃度は、硬化性を高くする観点から、15質量%以上が好ましい。ブロック剤の成分濃度が多くなることで、結果的に、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドの成分濃度が少なくなる。そこで、良好な水分散安定性を得るために、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドから誘導される構成単位の割合を高くする観点から30質量%以下が好ましい。より好ましくは20〜30質量%である。
【0043】
本発明のブロックポリイソシアネート中の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位、ポリイソシアネート単位、ブロック剤単位の成分濃度は、例えばH−NMR、13C−NMR等により特定することができ、また、仕込み量から特定することも可能である。
【0044】
本発明のブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート単位と片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位からなるもの、ポリイソシアネート単位とブロック剤単位からなるものも含まれる。
【0045】
本発明のブロックポリイソシアネートにおけるジイソシアネート3量体の成分濃度は、得られる塗膜の高硬度、高耐候性の観点から、5質量%以上が好ましい。また、得られる塗膜の伸度を高くする観点から、40質量%以下が好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。なお、ジイソシアネート3量体成分とは、ジイソシアネートモノマー3分子から得られる、1分子当たりのイソシアネート基数が3のポリイソシアネートとブロック剤3分子から誘導されたブロックポリイソシアネートである。
【0046】
本発明のブロックポリイソシアネートの数平均分子量は、硬化性を高くするために、イソシアネート基濃度を高くする観点から、1000以上が好ましい。また、ポリオールとの良好な相溶性の観点から、3000以下が好ましい。より好ましくは1000〜2500である。
【0047】
本発明のブロックポリイソシアネートのブロック剤で封鎖されたイソシアネート基濃度は、硬化性を高くする観点から、5質量%以上が好ましく。また、得られる塗膜を強靭にする観点から、15質量%以下が好ましい。
【0048】
上記で詳述した原料を用いて、本発明のブロックポリイソシアネートの水分散体を得ることができる。その製造方法の一例を詳述する。
【0049】
まず、ポリイソシアネートと片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドを反応させる。反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、及び、3級アミン系化合物、ナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
【0050】
この際の反応温度は、反応性を高くする観点から−20℃以上が好ましい。また、副反応を抑える観点から150℃以下が好ましい。より好ましくは30〜100℃である。
【0051】
片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドが未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存した状態では、ブロックポリイソシアネートの水分散安定性や硬化性を低下させる場合がある。
【0052】
このようにして得られた片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドと反応したポリイソシアネートの残存イソシアネート基を、ブロック剤と反応させる。この反応の反応温度、触媒等の反応条件は前記反応と同様に行うことができる。反応後、イソシアネート基が残存する場合は、ブロック剤等を添加して、完全にイソシアネート基を消失させることが好ましい。これらの反応は、溶剤の存在下で行うことができる。この場合の溶剤は活性水素を含まないものが好ましい。
【0053】
その後、水を添加する。水は所定量を分割、又は、滴下して添加することが好ましい。分割する場合、所定量の4〜8分割とすることが好ましい。また、ブロックポリイソシアネート濃度が50質量%以上では50から80℃、10質量%以上50質量%未満では20から50℃未満の液温に保持することが好ましい。
【0054】
水を一括で添加した場合や、液温が前記範囲外の場合、ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径が、大きくなり、沈殿や分離する場合がある。
【0055】
このように水の添加方法、添加時の液温がブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径に大きな影響を与え、さらにこの影響がブロックポリイソシアネート濃度により異なることを本発明者らは見出した。従来は、ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径を小さくしたい場合は親水基の付加量を増加していた。しかしながら、このように、少ない親水基量で、即ち従来より少ない片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドで、平均分散粒子径を小さくすることが可能となったのは驚くべきことである。上記のようにして、本発明の水分散体のブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径は、1〜250nmに制御することができ、好ましくは1〜180nmに制御することができ、より好ましくは1〜80nmに制御することができる。
【0056】
また、上記のようにすることで、ブロックポリイソシアネートの平均分散粒子径:φは下記式1を満たすことが出来る。
〔式1〕1≦φ≦310−8×A
(Aは、前記ブロックポリイソシアネート中の片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位の質量%)
【0057】
本発明のブロックポリイソシアネートの水分散体は、水以外の溶剤を20質量%まで含むことができる。この場合の溶剤の例としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso−プロパノール、1−プロパノール、iso−ブタノール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0058】
このようにして得られた水分散体のブロックポリイソシアネート濃度は、10〜40%が好ましい。
【0059】
〔繊維処理剤組成物〕
本発明の繊維処理剤組成物は、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂と、前記ブロックポリイソシアネートの水分散体とを含む。
【0060】
本発明に用いるフッ素樹脂とは、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂であり、炭素数6のパーフルオロヘキシル基を含有してもよい。フッ素樹脂は、フッ素を含むアクリレート、メタアクリレートをモノマーとして重合されたものが挙げられる。フッ素を含むアクリレート、メタアクリレートとは、特に限定されないが、具体的には、パーフルオロアルキル基を含み、その炭素数は3〜6であるものが挙げられる。炭素数8のパーフルオロオクチル基は、環境や人体への蓄積性が懸念されるパーフルオロオクタン酸の生成が指摘されている。従って、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まず、低炭素数のパーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を用いることにより、パーフルオロオクタン酸が実質発生しない繊維処理剤組成物を得ることができる。
【0061】
パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下の場合は、その炭素数が8以上と比較し性能が低下する場合がある。本発明のブロックポリイソシアネートはこの炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂の機械的安定性を向上させる。
【0062】
前記フッ素モノマーに加えて、他のモノマーを併用できる。併用できるモノマーとして以下がある。パーフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと共重合可能な他の単量体としては、以下のものが挙げられる。
【0063】
アクリル酸又はメタクリル酸エステル類としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルアクリレー卜、グリシジルメタクリレート、アジリジエルアクリレート、アジリジエルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アルキレンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0064】
アクリルアミド又はメタクリルアミド類としては、特に限定されないが、例えば、アルキレンジオールジメタクリレート等のアクリルアミド、メタクリルアミド、N― メチルロールアクリルアミド、N― メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
マレイン酸アルキルエステル類としては、特に限定されないが、例えば、マレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0066】
オレフィン類としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロプレン等が挙げられる。
【0067】
カルボン酸ビニル類としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0068】
スチレン類としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α一メチルスチレン、β―メチルスチレン等が挙げられる。
【0069】
ビニルエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、例えばエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
パーフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との量比は、共重合に用いる全単量体の中で、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの合計が40質量%以上であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
【0071】
これら共重合体は、公知の重合方法である、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等で製造できるが、乳化重合により製造することが好ましい。
【0072】
このようにして得られたフッ素樹脂と、ブロックポリイソシアネートの水分散体は繊維処理剤組成物として、布帛の処理に好適に用いられる。
【0073】
前記のフッ素樹脂とブロックポリイソシアネートの水分散体の樹脂質量割合は50:50〜95:5であり、好ましくは70:30〜95:5であり、より好ましくは80:20〜90:10である。上記範囲とすることにより、撥水性がより優れる傾向にある。
【0074】
本発明の繊維処理剤組成物には、その他、難燃剤、染料安定剤、防撤剤、抗菌剤、抗かび剤、防虫剤、防汚剤、帯電防止剤、アミノプラスト樹脂、アクリルポリマー、グリオキザール樹脂、メラミン樹脂、天然ワックス、シリコーン樹脂、増粘剤、高分子化合物等を配合することができる。
【0075】
このように配合された本発明の繊維処理剤組成物は必要に応じて水で希釈され、使用される。希釈後の樹脂濃度は通常、0.5〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
【0076】
〔布帛〕
本発明の布帛は、前記繊維処理剤組成物で処理されたものである。フッ素樹脂は、布帛に撥水性を持たせる繊維処理剤として使用される。この撥水性の評価法として、JIS−L−1092のスプレー試験と、水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)の接触角測定が挙げられる。
【0077】
さらに、布帛の洗濯後の撥水性(洗濯耐久性)も非常に重要な性能である。洗濯法の一つとして、JIS−L−0217−103が挙げられる。撥水性の低下は、例えば、洗濯前と10回洗濯後を比較することで評価できる。
【0078】
前記のとおり、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂は、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂と比較し、洗濯耐久性が劣るのが一般的である。しかしながら、驚くべきことに、本発明の繊維処理剤組成物で処理された布帛は、非常に優れる洗濯耐久性を発現できる。
【0079】
本発明の布帛は、洗濯10回後の水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)の接触角が90度以上であり、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質有さないフッ素樹脂で被覆されたものであることが好ましい。洗濯10回後の接触角は、90度以上がより好ましく、92度以上がさらに好ましい。上記範囲であることにより、洗濯耐久性により優れる傾向にある。
【0080】
また、洗濯未実施時の水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)の接触角に対する、洗濯10回後の水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)の接触角の保持率(洗濯10回後接触角/洗濯前接触角:%)は94%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより洗濯耐久性により優れる傾向にある。
【0081】
布帛に被覆された、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂、は、燃焼イオンクロマトグラフ法及びTOF−SIMSで特定することができる。また、布帛に被覆された、ポリイソシアネートは、TOF−SIMSで特定することができる。ここで、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を「実質含まない」とは、下記装置を用いたTOF−SIMSでの測定により、m/z 377、m/z 427,m/z 461が未検出である場合をいう。
装置:TRIFT III(Physical Electronics製)
一次イオン:Ga+
加速電圧:15kV
電流:600pA
分析面積:200μm×200μm
検出イオン:正イオン
電子銃:有り
【0082】
本発明の繊維処理剤組成物を用いた繊維の処理は、繊維に樹脂を付着させ、その後の加熱することにより行うことができる。樹脂の付着方法としては、例えば、パッド法、浸漬法、スプレー法、コーティング法、プリント法等で行うことができる。
【0083】
その後、マングル等を用いて所定のピックアップ量(樹脂付着量)に調整したのち、100℃以上の温度で加熱する。好ましくは140〜180℃程度の温度で10秒〜10分間、好ましくは30秒〜3分間程度加熱する。
【0084】
本発明の処理液を適用できる布帛の種類としては、例えば、綿、カポック、亜麻、苧麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、羊毛、カシミヤ、モヘア、アルパカ、ラクダ毛、絹、羽毛等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセル等の再生繊維、酢酸セルロース繊維、プロミックス等の半合成繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ベンゾエード繊維、ポリパラフエニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維、石綿、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、チラノ繊維、無機ウィスカー、ロツクファイバー、スラグフアイバー等の無機繊維、これらの複合繊維、混紡繊維等が挙げられる。この形態としては、織物、編み物、不織布等がある。
【実施例】
【0085】
本発明について、以下の実施例等を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
(1)粘度測定:
粘度は下記の装置を用いて測定した。
装置:RE−80R(東機産業製)
ローター:コーンプレート 1°34’×R24
測定温度:25℃
【0087】
(2)数平均分子量の測定:
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ測定による、ポリスチレン基準の数平均分子量とした。
装置:HLC−802A(東ソー製)
カラム:G1000HXL×1本(東ソー製)
G2000HXL×1本(東ソー製)
G3000HXL×1本(東ソー製)
キャリアー:テトラハイドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:20μL
温度:40℃
検出方法:示差屈折計
【0088】
(3)ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量:
三角フラスコにポリイソシアネート1〜3gを精秤し(Wg)、その後トルエン20mlを添加し、ポリイソシアネートを溶解する。その後、2規定のジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液10mlを添加し、混合後、15分間室温放置する。イソプロピルアルコール70mlを加え、混合する。この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定する。この滴定値V2mlとし、同様の操作をポリイソシアネートなしで行い、この滴定値をV1mlとし、次式からポリイソシアネートのイソシアネート基含有量を算出した。
〔式2〕
イソシアネート基含有量(質量%)=(V1−V2)×F×42/(W×1000)×100
【0089】
(4)イソシアネート平均官能基数の測定方法:
下記式3によりイソシアネート平均官能基数を求めた。
〔式3〕
イソシアネート平均官能基数=ポリイソシアネート数平均分子量(Mn)×イソシアネート基含有量(質量%)×0.01)/42
【0090】
(5)平均分散粒子径(体積平均分散粒子径):
下記の装置を用い、体積平均粒子径を測定した。
装置:Nanotrac UPA−EX150(日機装製)
溶媒:水
温度:23℃
【0091】
(6)水分散安定性:
ブロックポリイソシアネートが30質量%の水分散組成物の目視で沈殿物の有無を観察し、沈殿物がない場合を○、少量の沈殿物がある場合を△、分離や多量の沈殿物がある場合を×として表わした。
【0092】
(7)塗膜強度:
TENSILON(テンシロン)RTE−1210(A&D(エー・アンド・デー)製)を用いて、下記条件で塗膜強度を測定した。塗膜の硬化は150℃、30分で行った。このときの塗膜の破断強度を記録した。数値が大きいほど、高強度であった。
引張スピード:20mm/min
試料寸法 :縦20mm×横10mm×厚さ20〜40μm
温度:23℃
湿度:50%
【0093】
(8)機械的安定性:
ブロックポリイソシアネートと繊維処理剤組成物の混合液を、水で20%に希釈した。50℃に加温し、ホモミキサーで5000回転/分、10分攪拌後、発生した凝集物を綿布でろ過、乾燥させ、凝集物の重量を測定した。下記式4で算出される数値を凝集物発生率とし、機械的安定性の指標とした。凝集物発生率が低いほど、機械安定性が良好であった。
〔式4〕 凝集物発生率(質量%)=100×(凝集物重量/混合液重量)
【0094】
(9)接触角:
接触角計(FIBRO system ab製)を使用し、液滴法で、布帛の接触角(水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)に対する接触角)を測定した。
保持率(%)=洗濯10回後の接触角/洗濯前の接触角
【0095】
(10)撥水性試験:
JIS−L−1092のスプレー試験を行い、表面の湿潤状態を観察し、評価した。評価は以下のとおりとした。数値が高いほど、良好な撥水性であった。
5:表面に湿潤及び水滴の付着がなかった。
4:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示した。
3:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示した。
2:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示した。
1:表面全体に湿潤を示した。
【0096】
(11)布帛に被覆された炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂の特定:
布帛に被覆された炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂は下記の2つの分析方法で特定した。
分析1:燃焼イオンクロマトグラフ法
下記装置を用いた燃焼イオンクロマトグラフ法により、フッ素の有無を確認した。
装置:AQF−100(三菱化学アナリテック製)
燃焼管:石英
燃焼温度:1000℃
カラム:SurperIC−AZ(東ソー製)
温度:40℃
流速:0.8mL/分
検出方法:電気伝導度
分析2:TOF−SIMS
炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂であるか否かは、下記装置を用いたTOF−SIMSでの測定により、m/z 377、m/z 427,m/z 461が未検出となるか否かで確認した。
装置:TRIFT III(Physical Electronics製)
一次イオン:Ga+
加速電圧:15kV
電流:600pA
分析面積:200μm×200μm
検出イオン:正イオン
電子銃:有り
【0097】
(製造例1:ポリイソシアネートの製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000質量部、3価アルコールであるトリメチロールプロパン(分子量134)22質量部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃で1時間保持しウレタン化を行った。その後反応液温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、転化率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去した。
【0098】
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は25,000mPa・s、イソシアネート基含有量は19.9質量%、数平均分子量は1080、イソシアネート平均官能基数は5.1であった。
【0099】
(製造例2:ポリイソシアネートの製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が40%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。
【0100】
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は2700mPa・s、イソシアネート含有量は21.7%、数平均分子量は660、イソシアネート平均官能基数は3.4であった。
【0101】
(実施例1)
製造例1と同様な反応器に製造例1で得られたポリイソシアネート100質量部、モノオール(旭硝子株式会社製、商品名「エクセノール908」)1.5質量部、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」)42.5質量部、ウレタン化触媒(日東化成工業株式会社製、商品名「ネオスタンU−810」)0.01質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃、2時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール39.4質量部を添加し、赤外スペクトル(日本分光社製:製品名FT/IR−4000)でイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。
【0102】
その後、水185質量部を、液温を80℃から50℃に保ちながら、毎分25質量部の速度で添加し、添加後10分保持した。その後、水242.9質量部を、液温を50℃から40℃に保ちながら、毎分25質量部の速度で添加し、30分攪拌混合し、水性ブロックポリイソシアネートの水分散体を得た。
【0103】
得られたブロックポリイソシアネートの水分散体のブロックポリイソシアネートの濃度は、30.0質量%、水の濃度は、70.0質量%、平均分散粒子径は25nmで、水分散安定性は良好であった。
【0104】
(実施例2〜5、7〜9)
表1に記載した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に記載した。
【0105】
(実施例6)
製造例1と同様な反応器に製造例1で得られたポリイソシアネート100質量部、モノオール(旭硝子株式会社製、商品名「エクセノール908」)1.5質量部、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」)42.5質量部、ウレタン化触媒(日東化成工業株式会社製、商品名「ネオスタンU−810」)0.01質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃、2時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール39.4質量部を添加し、赤外スペクトル(日本分光社製:製品名FT/IR−4000)でイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。
【0106】
その後、水427.9質量部を、液温を80℃に保ちながら、毎分25質量部の速度で添加し、30分攪拌混合し、水性ブロックポリイソシアネートの水分散体を得た。
【0107】
得られたブロックポリイソシアネートの水分散体のブロックポリイソシアネートの濃度は、30.0質量%、水の濃度は、70.0質量%、平均分散粒子径は100nmで、水分散安定性は良好であった。
【0108】
(比較例1)
製造例1と同様な反応器に製造例1で得られたポリイソシアネート109.7質量部、モノオール(旭硝子株式会社製、商品名「エクセノール908」)0.2質量部、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」)27.5質量部、ウレタン化触媒(日東化成工業株式会社製、商品名「ネオスタンU−810」)0.01質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃、2時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール46.0質量部を添加し、赤外スペクトル(日本分光社製:製品名FT/IR−4000)でイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。
【0109】
その後、15℃の水427.9質量部を添加し、30分攪拌混合し、水性ブロックポリイソシアネートの水分散体を得た。
【0110】
得られたブロックポリイソシアネートの水分散体のブロックポリイソシアネートの濃度は、30.0質量%、水の濃度は、70.0質量%、平均分散粒子径は、262nmで、水分散安定性は不良であった。
【0111】
(比較例2、3)
表1に記載した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に記載した。
【0112】
(比較例4)
製造例1と同様な反応器に製造例2で得られたポリイソシアネート100質量部、メチルイソブチルケトン150質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃に加温後、3,5−ジメチルピラゾール50質量部を添加し、赤外スペクトル(日本分光社製:製品名FT/IR−4000)でイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。
【0113】
その後、ジアルキル(硬化牛脂)ジメチルアンモニウムクロライド3部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー30部を加え、攪拌を開始する。そこへ水221質量部を徐々に添加し、添加終了後、ホモミキサーにかけ、さらに分散させる。その後、減圧でメチルイソブチルケトンを留去し、固形分45%、平均分散粒子径は170nmの乳化液を得た。
【0114】
【表1】
A−1:製造例1のポリイソシアネート
A−2:製造例2のポリイソシアネート
A−3:IPDIモノマーのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(エボニック・デグサ社の商品名「VESTANAT T1890/100」)
B :モノオール(旭硝子社の商品名、「エクセノール908」)
C :ポリエチレンオキサイド(日本乳化剤社の商品名、「MPG−081」)
D−1:3,5−ジメチルピラゾール
D−2:メチルエチルケトオキシム
E :ウレタン化触媒(日東化成社の商品名、「ネオスタンU−810」)
F :ジプロピレングリコールジメチルエーテル
【0115】
(実施例10)
水性ポリエステルポリオール「SETAL6306 SS−60(商品名)」(NUPLEX社製、水酸基濃度2.7質量%(樹脂基準)、酸価43mgKOH/g(樹脂基準)、樹脂固形分60%)のジメチルアミノエタノール中和物100質量部と実施例1で得られたブロックポリイソシアネートの水分散体133質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル52質量部を混合し、固形分35質量%の塗料を調製した。この塗料をポリプロピレン板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーター塗装した。室温で15分セッティングした後、150℃、30分で塗膜を硬化させた。塗膜強度は、22MPaであった。
【0116】
(実施例11〜18、比較例5〜8)
表2に記載したブロックポリイソシアネートの水分散体を使用した以外は、実施例10と同様に実施した。塗膜強度の結果を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
(実施例19)
フッ素系繊維処理剤「アサヒガードAG−E061(商品名)」(旭硝子株式会社製、固形分20%)90質量部と実施例1で得られたブロックポリイソシアネートの水分散体6.7質量部、水3.3質量部を混合し、固形分20質量%の混合液を調製した。この混合液の機械的安定性を測定した結果、凝集物発生率は、0.03質量%であった。
【0119】
また、前記混合液に水を追加し、樹脂分濃度1.0質量%まで希釈し、処理液とした。この処理液にナイロン布(日本規格協会のコード番号670108)を浸漬後、ウエットピックアップ50%になるようにローラーで絞った。これを120℃、60秒間乾燥後、さらに170℃、60秒間乾燥し、試験布帛とした。接触角は95度であり、撥水性試験は5であった。
【0120】
さらにこの試験布帛を、JIS−L−0217−103に準じて洗濯を行った。洗剤は花王株式会社の商品名アタックを使用した。洗濯回数10回で評価した。洗濯後の接触角は93度であり、撥水性試験は5であった。
【0121】
また、燃焼イオンクロマトグラフ法では、フッ素が検出されたが、TOF−SIMSによる布帛に被覆された炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を実質含まないフッ素樹脂の測定結果は、未検出であった。
【0122】
(実施例20〜27、比較例9〜12)
表2に記載したブロックポリイソシアネートの水分散体を使用した以外は、実施例19と同様に実施した。凝集物発生率、接触角、撥水性試験の結果を表3に示す。
【0123】
比較例9,10及び11は、ブロックポリイソシアネートの水分散体の安定性が不良であり、試験布帛表面に凝集物が付着したため、接触角と撥水性の評価は不可であった。
【0124】
【表3】
【0125】
本出願は、2011年10月25日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−233472)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のブロックポリイソシアネートの水分散体及びこれを含む繊維処理剤組成物は繊維用撥水剤等の分野で好適に利用できる。