特許第5809733号(P5809733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5809733
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】封止部材、封止構造及び遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   A63F5/04 512C
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-103959(P2014-103959)
(22)【出願日】2014年5月20日
【審査請求日】2014年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026620
【氏名又は名称】山佐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西原 八州夫
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−150856(JP,A)
【文献】 特開2005−114019(JP,A)
【文献】 特開2004−309981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 5/04
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止対象箇所が奥部に設けられた封止穴に嵌め込むことにより、封止対象箇所を封止する封止部材であって、
封止穴に対して下端側から挿入される接着用挿入部と、
接着用挿入部の上端側に配されて封止穴に蓋をするための蓋部と、
を備え、
封止穴に挿入された状態の接着用挿入部の外周面と封止穴の内周面との隙間に接着液を注入するための接着液注入孔が、蓋部を上下方向に貫通して設けられるとともに、
接着液注入孔から前記隙間に注入される接着液を一時的に溜めるための接着液溜め用凹部が、接着用挿入部の上端部の外周面における接着液注入孔の下端部の近傍に形成された
ことを特徴とする封止部材。
【請求項2】
接着液溜め用凹部の接着液受面が、前記隙間に向かって降り傾斜に形成された請求項1記載の封止部材。
【請求項3】
接着液溜め用凹部が、
接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分よりも接着用挿入部の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部の外方を向き、その上端縁で蓋部の下面と接続し、その一対の側端縁で接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分と接続する外向壁面と、
接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分よりも接着用挿入部の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部の上方を向き、前記外向壁面の下端縁と接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分とを接続する上向壁面と、
を有する形態からなり、
前記外向壁面の横方向中央部の近傍に接着液注入孔の下端部が配されて、前記外向壁面が前記接着液受面とされ、
当該接着液溜め用凹部が鉛直上側となるように接着用挿入部を水平方向に寝かせたときに、前記外向壁面の一対の側端縁が前記外向壁面の横方向中央部よりも低くなるように、前記外向面が、その横方向中央部からそれぞれの側端縁にかけて降り傾斜に形成された請求項2記載の封止部材。
【請求項4】
接着液溜め用凹部が、接着用挿入部の外周面を周方向に略等分する複数箇所に形成された請求項1〜3いずれか1つに記載の封止部材。
【請求項5】
接着液注入孔の下端側の開口面積が、接着液注入孔の上端側の開口面積よりも小さくされた請求項1〜4いずれか1つに記載の封止部材。
【請求項6】
蓋部が、接着用挿入部の外周面よりも外方に突出するフランジ部を有し、接着液注入孔が、蓋部のフランジ部を上下方向に貫通して設けられた請求項1〜5いずれか1つに記載の封止部材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1つに記載の封止部材によって封止対象箇所を封止する遊技機用の封止構造。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1つに記載の封止部材によって封止対象箇所が封止された遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止対象箇所を封止するための封止部材と、この封止部材を用いて封止対象箇所を封止する封止構造と、この封止部材を用いて封止対象箇所を封止した遊技機とに関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機は、様々な不正行為の対象となりうる。例えば、遊技機の筺体の内部には、基板ユニットが収容されており、この基板ユニットには、遊技機を制御するためのプログラムが記録された記憶装置(通常はROM)が装着されているが、この記憶装置を偽造されたもの(いわゆる偽造ROM)に差し替えるという不正行為が知られている。この種の不正行為を防止するため、遊技機の各メーカーは、基板ユニット等、不正行為の対象となる機器を、カバーで覆った構造とするとともに、そのカバーを閉じるためにネジ留めした箇所を封止部材で封止し、そのネジ留めした箇所にアクセスしにくくする対策を行っている。この対策に用いられる封止部材としては、これまでにいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の図6には、工具差込筒部21(封止穴)に嵌入することにより、工具差込筒部21を塞ぐことができるようにした封止栓25(封止部材)が記載されている。特許文献1の段落0014には、封止栓25の外周面に接着剤(接着液)を塗布することにより、封止栓25を工具差込筒部21から抜くことができないようにすることについても記載されている。また、特許文献1の段落0016には、封止栓25を抜くことができない状態で工具差込筒部21に嵌入することにより、不正行為を防止することが可能になる旨も記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された封止栓25は、その外周面に接着剤を予め塗布してから工具差込筒部21に嵌入するものとなっていた(同文献の段落0014を参照)。このため、この封止栓25を用いて封止作業を行う際には、封止栓25を工具差込筒部21に嵌入するよりも前に接着剤が乾かないように急ぐ必要や、封止栓25における接着剤が塗布された箇所に触れないように注意を払う必要や、封止栓25に塗布された接着剤が垂れ落ちないように注意を払う必要があった。したがって、引用文献1に記載された封止栓25は、必ずしもその封止作業を円滑に行うことができるものとはいえなかった。加えて、この封止栓25で工具差込筒部21を封止すると、工具差込筒部21の入口側に接着剤がはみ出すおそれや、接着剤の塗布状態にムラが生じるおそれもあった。このため、引用文献1に記載された封止栓25では、所望の封止効果が奏されなくなるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−276516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、遊技機等の封止対象箇所(ネジ留めした箇所等)の封止作業を円滑に行うことができるだけでなく、その封止対象箇所を高い封止力で封止することもできる封止部材を提供するものである。また、この封止部材によって封止対象箇所を封止する封止構造を提供することも本発明の目的である。さらに、この封止部材によって封止対象箇所が封止された遊技機を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、封止対象箇所が奥部に設けられた封止穴に嵌め込むことにより、封止対象箇所を封止する封止部材であって、封止穴に対して下端側から挿入される接着用挿入部と、接着用挿入部の上端側に配されて封止穴に蓋をするための蓋部とを備え、封止穴に挿入された状態の接着用挿入部の外周面と封止穴の内周面との隙間に接着液を注入するための接着液注入孔が、蓋部を上下方向に貫通して設けられたことを特徴とする封止部材を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、「封止対象箇所」とは、それに対するアクセスを制限するために封止を行う必要がある箇所のことを云う。具体的には、上述した遊技機を例に挙げれば、遊技機を制御するためのプログラムが記録された記憶装置等、不正行為の対象となる機器を覆うカバーを閉じるためにネジ留めした箇所等が例示される。遊技機以外の例を挙げれば、車のナンバープレートを車体に取り付けるためにネジ留めした箇所等が例示される。また、「封止穴」とは、その入口となる開口部分を有し、その奥部に封止対象箇所が設けられた穴状の部分のことを云う。封止穴の内周面は、必ずしも、封止穴の入口から奥部にかけて連続して形成されている必要はない。
【0009】
さらに、「下端側から挿入される接着用挿入部」、「接着用挿入部の上端側」又は「蓋部を上下方向に貫通」における「上」又は「下」という語は、封止穴に対して封止部材を挿入する向き(封止穴の入口から奥部に向かう向き。図6におけるy軸方向正の向き。)を「下向き」とし、封止穴に対して封止部材を挿入する向き(封止穴の奥部から入口に向かう向き。図6におけるy軸方向負の向き。)を「上向き」とした場合において、封止部材の各部の位置関係を相対的に表現するために便宜的に用いたものであり、封止部材を使用する向きを限定するものではない。「上」又は「下」という語が、封止部材を挿入する向きとの関係で各部の位置関係を相対的に表現するものであることについては、「鉛直上側」や「鉛直下側」等の断りのない限り、以下においても同様である。
【0010】
本発明の封止部材は、その蓋部に接着液注入孔が設けられているため、封止穴に対して封止部材を嵌め込んだ後に、接着領域の隙間に接着液を注入することが可能なものとなっている。このため、封止対象箇所の封止作業を行う際には、接着液が乾かないように急ぐ必要や、接着液が塗布された箇所に触れないように注意を払う必要や、接着液が垂れ落ちないように注意を払う必要がない。このため、本発明の封止部材は、封止対象箇所の封止作業を円滑に行うことができるものとなっている。加えて、本発明の封止部材を用いて封止対象箇所を封止すると、接着領域の隙間に注入された接着液は、毛細管現象によって接着領域の隙間の奥深くまで自然と入り込んでいき、接着領域の隙間で均一に広がるようになる。このため、本発明の封止部材は、封止対象箇所を高い封止力で封止することも可能なものとなっている。
【0011】
本発明の封止部材において、接着用挿入部の外周面は、凹凸のない形態としてもよいが、接着液注入孔から接着領域の隙間に注入される接着液を一時的に溜めるための接着液溜め用凹部を、接着用挿入部の上端部の外周面における接着液注入孔の下端部の近傍に形成すると好ましい。このように、接着用挿入部の上端部の外周面に接着液溜め用凹部を設けることによって、ある程度の量の接着液を一度に接着液注入孔に注入することが可能になる。接着液溜め用凹部に一時的に溜められた接着液は、上述した毛細管現象により、接着領域の隙間に自然と入り込んでいくようになる。このため、接着液が接着領域の隙間に入り込んでいくのを待ちながら接着液注入孔に接着液を徐々に注入していく必要がなくなる。したがって、接着液注入孔への接着液の注入作業を効率的に行いながらも、所望の封止力を得ることが可能になる。
【0012】
本発明の封止部材で、接着用挿入部に接着液溜め用凹部を設ける場合において、接着液溜め用凹部の具体的な形態は、特に限定されないが、接着液溜め用凹部の接着液受面を、接着領域の隙間に向かって降り傾斜に形成すると好ましい。ここで、「(接着液溜め用凹部の)接着液受面」とは、接着液溜め用凹部を形成する各壁面のうち、接着液注入孔に接着液を注入する際に、接着液注入孔の下端部よりも鉛直下側に位置し、接着液注入孔を通じて接着液溜め用凹部に入れられた接着液が載る面のことを云う。また、「(接着液受面を)接着領域の隙間に向かって降り傾斜に形成する」とは、液体注入孔を通じて接着液溜め用凹部に入れられた接着液(接着液受面に載った接着液)が、接着領域の隙間に向かって重力で自然と流れ落ちるように、接着液受面が水平方向に対して傾斜した状態に設けられていることを云う。
【0013】
上述したように、接着液溜め用凹部に溜められた接着液は、毛細管現象により接着領域の隙間へ自然と入り込むようになるが、このように、接着液溜め用凹部の接着液受面を接着領域の隙間に向かって降り傾斜で形成することにより、接着液溜め用凹部に溜められた接着液がより速やかに且つより確実に接着領域の隙間に入り込むようにすることができる。このため、接着液が接着領域の隙間の広い範囲に行き渡るよりも前に硬化してしまい、接着用挿入部の外周面と封止穴の内周面とがごく狭い範囲でしか接着されない、といった不具合の発生を抑えることが可能になる。したがって、封止部材による封止力の低下を防ぐことが可能になる。
【0014】
本発明の封止部材で、接着液溜め用凹部の接着液受面を降り傾斜に形成する場合において、接着液受面をどのように構成するかについても特に限定されないが、例えば、以下のように構成すると好ましい。
すなわち、接着液溜め用凹部を、
接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分よりも接着用挿入部の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部の外方を向き、その上端縁で蓋部の下面と接続し、その一対の側端縁で接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分と接続する外向壁面と、
接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分よりも接着用挿入部の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部の上方を向き、前記外向壁面の下端縁と接着用挿入部の外周面における前記隙間を形成する部分とを接続する上向壁面と、
を有する形態からなるものとし、
前記外向壁面の横方向(外向壁面の一方の側端縁と他方の側端縁とを結ぶ方向。外向壁面について、以下同じ。)中央部の近傍に接着液注入孔の下端部を配して、前記外向壁面を前記接着液受面とし、
当該接着液溜め用凹部が鉛直上側となるように接着用挿入部を水平方向に寝かせたときに、前記外向壁面の一対の側端縁が前記外向壁面の横方向中央部よりも低くなるように、前記外向面を、その横方向中央部からそれぞれの側端縁にかけて降り傾斜に形成すると好ましい。
これにより、接着液溜め用凹部の一方の側端縁側と他方の側端縁側の両方に接着液が速やかに且つ確実に流れ落ちるようにすることが可能になり、接着領域の隙間におけるより広い範囲に接着液が行きわたりやすくすることができる。
【0015】
本発明の封止部材において、接着用挿入部に接着液溜め用凹部を設ける場合には、1つの接着用挿入部につき1箇所のみに接着液溜め用凹部を設けてもよいが、1つの接着用挿入部につき複数箇所に接着液溜め用凹部を設けることも好ましい。これにより、接着領域の隙間におけるより広い範囲に接着液が行きわたりやすくするだけでなく、封止部材の向きにかかわらず、接着領域の隙間の広い範囲に接着液が行きわたりやすくすることも可能になる。この場合、接着液注入孔は、通常、それぞれの接着液溜め用凹部に対応した複数箇所に設けられる。複数の接着液溜め用凹部は、接着用挿入部の外周面を周方向に略等分する箇所に形成すると好ましい。
【0016】
本発明の封止部材において、接着液注入孔の具体的な形態は、特に限定されないが、接着液注入孔の下端側の開口面積を、接着液注入孔の上端側の開口面積よりも小さくすると好ましい。ここで、「接着液注入孔の下端側の開口面積を、接着液注入孔の上端側の開口面積よりも小さくする」とは、接着液注入孔をテーパー状に形成する等して、接着液注入孔の上端部から下端部に向かって接着液注入孔の開口面積を徐々に小さくする場合だけでなく、接着液注入孔の下端部近傍に、内向フランジ等を設けることによって、接着液注入孔の下端側の開口面積を、接着液注入孔の上端側の開口面積よりも小さくした場合も含まれる。これにより、接着液注入孔に接着液を注入しやすくしながらも、接着液溜め用凹部に入れられた接着液が接着液注入孔を逆流しにくくすることが可能になる。
【0017】
本発明の封止部材において、蓋部の具体的な形態は、特に限定されないが、蓋部を、接着用挿入部の外周面よりも外方に突出するフランジ部を有する形態とすると好ましい。これにより、封止部材を封止穴に嵌め込んだ際に、封止穴の上端部の内周面に蓋部の外周面を密着させることが可能になり、接着領域に注入された接着液が蓋部の外周部の隙間から洩れ出ないようにすることが可能になる。この場合、接着液注入孔は、蓋部における前記フランジ部を上下方向に貫通して設けると好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、遊技機等の封止対象箇所(ネジ留めした箇所等)の封止作業を円滑に行うことができるだけでなく、その封止対象箇所を高い封止力で封止することもできる封止部材を提供することが可能になる。また、この封止部材によって封止対象箇所を封止する封止構造を提供することも可能になる。さらに、この封止部材によって封止対象箇所が封止された遊技機を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】回胴式遊技機の全体を示した斜視図である。
図2図1の回胴式遊技機における基板ユニットを拡大して示した斜視図である。
図3】第一実施態様の封止部材を封止穴に嵌め込む様子を示した斜視図である。
図4】第一実施態様の封止部材の全体を示した斜視図である。
図5】第一実施態様の封止部材をその蓋部を切除して示した斜視図である。
図6】第一実施態様の封止部材を、x−z平面に平行でかつ接着液溜め用凹部の接着液受面を通る平面で切断した状態を示した断面図である。
図7】第一実施態様の封止部材が嵌め込まれた封止穴の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴の中心線を含む平面で切断した状態を示した断面斜視図である。
図8】第一実施態様の封止部材が嵌め込まれた封止穴の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴の中心線を含む平面で切断した状態を示した断面図である。
図9】第二実施態様の封止部材の全体を示した斜視図である。
図10】第二実施態様の封止部材が嵌め込まれた封止穴の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴の中心線を含む平面で切断した状態を示した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
0.本発明の概要
本発明の封止部材、遊技機用封止構造及び遊技機の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の封止部材は、その用途を特に限定されるものではなく、その奥部に封止対象箇所が設けられた封止穴を有する各種のものに使用することができる。具体的には、遊技機における不正行為を防止するために封止する必要のある箇所や、改造が禁止された機器や装置の改造を防止するために封止する必要のある箇所や、車両のナンバープレートの付け替えを防止するために封止する必要のある箇所等が例示される。以下においては、説明の便宜上、本発明の封止部材を回胴式遊技機(スロットマシン)に使用する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図1は、回胴式遊技機5の全体を示した斜視図である。図2は、図1の回胴式遊技機5における基板ユニット55を拡大して示した斜視図である。図1及び図2においては、x−y平面が水平面となっており、z軸方向正側が鉛直方向上側となり、z軸方向負側が鉛直方向下側となるように描いている。この点については、後述する図3〜10においても同様である。
【0022】
回胴式遊技機5は、図1に示すように、本体51a及び前扉51bからなる筺体51の内部に、リール52や、ホッパー装置53や、電源ユニット54や、基板ユニット55や、液晶ユニット56や、コネクタユニット57等の各種機器が収容されたものとなっている。これらの機器のうち、基板ユニット55は、遊技機5を制御するためのプログラムが記録された記憶装置(ROM)が搭載された基板を有している。この記憶装置を偽造されたものに交換すると、特定の操作を行うと必ず大当たりになるようにする等、悪意のある遊技者に不正な遊技を許してしまう。このため、基板ユニット55は、その記憶装置の交換ができないように、封をする必要がある。したがって、基板ユニット55は、図2に示すように、記憶装置が搭載された基板が基板カバー55cを介して収容されたユニットホルダ55aを、ユニットカバー55bで覆った構造とすることが多い。このユニットカバー55bは、その所定箇所に設けたネジ穴55bにネジを螺合することにより、ユニットホルダ55aに対して固定することができるようになっている。
【0023】
本発明の封止部材1は、図2に示すように、上記のユニットカバー55bに設けられたネジ穴55bを封止するものとして好適に使用することができる。後述する図3,7,8,10も、ユニットカバー55b(カバー2)に設けたネジ穴55b(封止穴21)に封止部材1を嵌め込んだ場合(図2における破線部で囲まれたネジ穴55bに封止部材1を嵌め込んだ場合)を想定して図示したものとなっている。これにより、ユニットホルダ55aからユニットカバー55bを取り外すことができないようにすることが可能になる。ところで、図1に示す回胴式の遊技機5では、液晶ユニット56や、コネクタユニット57等も不正行為の対象となる。このため、これら液晶ユニット56や、コネクタユニット57等においても、基板ユニット55と同様の構成を採用することができる。
【0024】
以下においては、2つの実施態様(第一実施態様及び第二実施態様)を例に挙げて本発明の封止部材1等を説明するが、本発明の技術的範囲は、これらに実施態様に限定されるものではなく、適宜変更を施すことができる。
【0025】
1. 第一実施態様の封止部材
まず、第一実施態様の封止部材について説明する。図3は、第一実施態様の封止部材1を封止穴21に嵌め込む様子を示した斜視図である。図4は、第一実施態様の封止部材1の全体を示した斜視図である。図5は、第一実施態様の封止部材1をその蓋部12を切除して示した斜視図である。図6は、第一実施態様の封止部材1を、x−z平面に平行でかつ接着液溜め用凹部11bの接着液受面αを通る平面で切断した状態を示した断面図である。図7は、第一実施態様の封止部材1が嵌め込まれた封止穴21の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴21の中心線Lを含む平面で切断した状態を示した断面斜視図である。図8は、第一実施態様の封止部材1が嵌め込まれた封止穴21の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴21の中心線Lを含む平面で切断した状態を示した断面図である。
【0026】
第一実施態様の封止部材1は、図4に示すように、接着用挿入部11と蓋部12とで構成されたものとなっており、図3及び図7に示すように、カバー2における封止対象箇所Aが奥部に設けられた封止穴21に対して嵌め込むことにより、封止対象箇所A(図7及び図8を参照)を封止するものとなっている。具体的には、第一実施態様の封止部材1は、[1]接着用挿入部11を下端側から封止穴21に挿入することにより、封止部材1を封止穴21に嵌め込む、[2] 蓋部12に設けられた接着液注入孔12bを通じて蓋部12の上面側から下面側に接着液を注入する、という2つのステップを経ることによって、封止対象箇所Aを封止するものとなっている。上記ステップ[2]において、蓋部12の下面側に注入された接着液は、接着用挿入部11の上端部の外周面に設けられた接着液溜め用凹部11bに一時的に溜められた後、毛細管現象又は重力によって、接着領域の隙間β(接着用挿入部材11の外周面と封止穴21の内周面との隙間。図7及び図8を参照。)に入り込み、その隙間β内を自然と広がっていく。ここで、接着領域の隙間βとは、図5において薄い網掛ハッチングで示した領域(接着液溜め用凹部11bが形成されていない領域)における接着用挿入部11の外周面と、封止穴21の内周面とによって形成される隙間を意味している。接着領域の隙間βで広がった接着液は、時間経過とともに硬化し、接着用挿入部11の外周面と封止穴21の内周面とが一体的に接着された状態となる。このとき、接着液は、接着領域の隙間βの広い範囲に広がった状態で硬化されるため、接着用挿入部11の外周面は、封止穴21の内周面に対して略均一に接着された状態となる。このため、封止部材1を封止穴21から取り外そうとしても、容易には取り外すことができない状態となっている。また仮に、この状態において、蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間にマイナスドライバ等の工具を挿入する等して、封止部材1を封止穴21から無理矢理取り外そうとすると、封止部材1か、封止穴21が設けられた部材(カバー2)のいずれか一方又は双方が破損し、封止部材1を封止穴21から取り外そうとした痕跡が残るため、封止対象箇所Aに不正アクセスが試みられたことを容易に発見することができるようになっている。
【0027】
接着液注入孔12bに注入する接着液の種類は、封止部材1やカバー2を形成する材料等に応じて適宜決定されるが、接着領域の隙間βに入り込んだ接着液が上述した毛細管現象によってより広範囲に広がるようにするためには、流動性が高く、かつ、速乾性がそれ程高くない接着液を使用すると好ましい。また、毛細管現象は、一般的に、接着液の密度が小さければ小さいほど生じやすくなり、接着液が表面張力の大きなものであればあるほど生じやすくなる。加えて、毛細管現象は、一般的に、接着液と封止部材1を形成する材料との接触角、及び、接着液とカバー2を形成する材料との接触角が、小さくなればなるほど生じやすくなる。このため、接着液は、封止部材1及びカバー2を形成する材料との相性が良いもののうち、できるだけ密度が小さく、当該材料との接触角ができるだけ小さいものを採用すると好ましい。第一実施態様においては、接着液として、シアノアクリレート系接着剤を使用している。シアノアクリレート系接着剤は、後述するように、ABS樹脂で形成された封止部材1と、ポリカーボネートで形成されたカバー2とのいずれに対しても相性がよい。
【0028】
封止部材1を形成する材料の種類は、特に限定されないが、樹脂を採用すると好ましい。これにより、射出成形等によって、接着用挿入部11と蓋部12とを一体的に成形することが可能になり、封止部材1の成形性を高めることができる。加えて、樹脂は、折曲げや破断等の塑性変形が生じた場合には、その塑性変形が生じた部分が白くなる、いわゆる「白化」という現象が生じる。このため、例えば、蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間にマイナスドライバ等の工具を挿し込むこと等により、封止穴21から封止部材1を無理矢理取り外して、封止対象箇所Aに不正アクセスを試みる者があった場合には、その不正アクセスの痕跡(白化)が封止部材1に残るようにして、不正アクセスが試みられたことの発見が容易になるという利点もある。白化を目立ちやすくして、不正アクセスの痕跡をより発見しやすくするためには、封止部材1は、透光性(透明を含む。)を有する合成樹脂で成形するとより好ましい。透光性を有する合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートや、ポリスチレンや、ABS樹脂や、アクリル等が例示される。
【0029】
一方、封止穴21が形成された側の部材(カバー2)を形成する材料の種類も、特に限定されないが、封止部材1よりも強度の高い材料によって形成すると好ましい。これにより、例えば、上述したように、蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間にマイナスドライバ等の工具を挿し込むこと等により、封止穴21から封止部材1を無理矢理取り外して、封止対象箇所Aに不正アクセスを試みる者があった場合には、封止穴21が形成された部材(カバー2)よりも先に封止部材1が破損するようにすることが可能になる。したがって、不正アクセスの痕跡が封止部材1のみに残るようにして、封止穴21が形成された部材(カバー2)に被害が及ぶのを防ぐことが可能になる。封止穴21が形成された部材(カバー2)を形成する材料としては、各種の合成樹脂や金属等が例示される。第一実施態様において、封止部材1は、その全体を透明なABS樹脂によって一体成形(射出成形)しているのに対し、カバー2は、ABS樹脂よりも機械的強度に優れているポリカーボネートによって一体成形(射出成形)したものとなっている。
【0030】
以下、第一実施態様の封止部材1について、より詳しく説明する。
【0031】
1.1 接着用挿入部
接着用挿入部11は、図7及び図8に示すように、封止穴21に対して下端側から挿入した後、封止穴21の内周面に接着される部分となっている。接着用挿入部11の具体的な形態は、封止穴21の形態等に応じて適宜決定される。すなわち、接着領域の隙間βを略均一に形成することができるように、接着用挿入部11の外周部形状は、封止穴21の内周部形状をやや小さくした形状とされる。接着用挿入部11は、その内側に中空部を有する形態(例えば筒状)であってもよいし、その内側に中空部を有さない形態であってもよい。また、接着用挿入部11は、その太さ(外径)が一定のものに限られず、封止穴21の形状によっては、テーパー状等、その上下位置によって太さが異なってもよい。接着用挿入部11の断面形状(接着用挿入部11における接着液溜め用凹部11aが設けられていない部分の挿入方向に垂直な断面の外周部の概略形状。接着用挿入部11について、以下同じ。)は、円形や楕円形等のほか、四角形や六角形等の多角形や、曲線と直線とが混在する各種の形状が例示される。
【0032】
第一実施態様においては、図3に示すように、封止穴21を略円筒状に形成しているため、図4に示すように、接着用挿入部11も、概略円筒状に形成している。接着用挿入部11の外周部には、封止穴21に対して接着用挿入部11を位置決めするための位置決め用凸部11aを設けている。この位置決め用凸部11aは、封止部材1を封止穴21に嵌め込んだ際に、封止穴21の内周面に上下方向(y軸方向)に設けられた位置決め用凹部21aと嵌合するようになっており、嵌込穴21に嵌め込まれた封止部材1がその中心軸回りに回動して位置ずれしないようにするための部分となっている。第一実施態様の封止部材1は、その位置決め用凸部11aが鉛直上側(z軸方向正側)となる向きにすると、正しい向きで封止穴21に嵌め込むことができるようになっている。また、接着用挿入部11の外周部には、図6〜8に示すように、鉤状の係合部11cを設けている。この係合部11cは、封止穴21の内周部に設けられた被係合部21b(図3)に係合させるための部分となっている。
【0033】
接着用挿入部11の寸法は、封止穴21の寸法と接着領域の隙間βの幅W(図8を参照)とを考慮して適宜決定される。接着領域の隙間βの幅Wの具体的な値は、接着液注入孔12bに注入する接着液の種類等によっても異なり、特に限定されない。しかし、接着領域の隙間βの幅Wが狭くなりすぎると、接着用挿入部11と封止穴21とに、高い寸法精度が要求されるようになり、封止部材1やカバー2の製造コストが高くなるおそれや、接着液の種類(粘度等)によっては、接着領域の隙間βに接着液が入り込みにくくなるおそれがある。このため、接着液として、例えば、上述したシアノアクリレート系接着剤を使用する場合には、接着領域の隙間βの幅W(場所によって値が異なる場合には、その平均値。以下同じ。)は、通常、10μm以上とされる。接着領域の隙間βの幅Wは、30μm以上であると好ましく、50μm以上であるとより好ましい。一方、接着領域の隙間βの幅Wが広くなりすぎると、上述した毛細管現象が生じにくくなるため、接着領域の隙間βにおける限られた範囲でしか接着液が広がらないようになる。特に、鉛直上方には接着液が広がりにくくなる。加えて、接着領域の隙間βにおける接着用挿入部11の外周面を流れる接着液が封止穴21の内周面に接触しない部分が生じやすくなる。このため、封止部材1による所望の封止効果が奏されなくなるおそれがある。したがって、接着液として、例えば、上述したシアノアクリレート系接着剤を使用する場合には、接着領域の隙間βの幅Wは、通常、500μm以下とされる。接着領域の隙間βの幅Wは、400μm以下であると好ましく、300μm以下であるとより好ましい。第一実施態様の封止部材1において、接着領域の隙間βの幅Wは、100〜200μm程度となっている。
【0034】
接着用挿入部11の上端部の外周面には、図4及び図5に示すように、接着液溜め用凹部11bが設けられている。より具体的には、接着用挿入部11の外周面における位置決め用凸部11aに重なる周回区間(接着用挿入部11の外周部を周回する方向の区間。接着用挿入部11の外周面について、以下同じ。)に、接着液溜め用凹部11bが設けられている。このため、上述したように、位置決め用凸部11aが鉛直上側となる向きで封止部材1を封止穴21に嵌め込むと、接着液溜め用凹部11bも鉛直上側を向くようになっている。この接着液溜め用凹部11bは、接着液注入孔12bから接着領域の隙間βに注入される接着液を一時的に溜めるための部分となっている。このため、接着液溜め用凹部11bは、接着用挿入部11の上端部の外周面における接着液注入孔12bの下端部近傍となる箇所に形成される。接着液溜め用凹部11bの具体的な形態は、既に述べた通り、特に限定されないが、第一実施態様の封止部材1においては、その接着液受面α(図5及び図6を参照)を接着領域の隙間βに向かって降り傾斜に形成している。
【0035】
具体的には、図5及び図6に示すように、接着用挿入部11の外周面に、外向壁面11bと上向壁面11bとを形成することにより、接着液溜め用凹部11bを設けており、その外向壁面11bが接着液受面αとなるようにしている。外向壁面11bは、接着用挿入部11の外周面における接着領域の隙間βを形成する部分よりも接着用挿入部11の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部11の外方を向く面となっており、封止部材1を封止穴21に嵌め込んだ状態にあっては、略鉛直上側(z軸方向正側)を向くようになっている。一方、上向壁面11bは、接着用挿入部11の外周面における接着領域の隙間βを形成する部分よりも接着用挿入部11の中心側に凹んだ位置で接着用挿入部11の上方を向く面となっており、封止部材1を封止穴21に嵌め込んだ状態にあっては、略水平方向(y軸方向負側)を向くようになっている。外向壁面11bの上端縁は、蓋部12の下面と接続し、外向壁面11bの側端縁は、接着用挿入部11の外周面における接着領域の隙間βを形成する部分と接続し、外向壁面11bの下端縁は、上向壁面11bの上端縁(内端縁)と接続している。
【0036】
外向壁面11bは、図6に示すように、接着液溜め用凹部11bが鉛直上側となるように封止部材1を封止穴21に嵌め込んだ際に、その外向壁面11bの一対の側端縁が横方向中央部よりも低くなるように、その横方向中央部からそれぞれの側端縁にかけて降り傾斜に形成されている。加えて、接着液注入孔12b(図4を参照)の下端部は、外向壁面11bの横方向中央部に重なる位置に設けられている。このため、外後壁面11bは、接着液注入孔12bから接着液溜め用凹部11bに注入された接着液が載る面(接着液受面α)となっている。接着液注入孔12bから接着液溜め用凹部11bに注入された接着液は、重力によって、外向壁面11bの横方向中央部から一対の側端縁へと自然と流れ落ち、接着領域の隙間βに速やかに入り込むことが可能となっている。
【0037】
接着液受面αの傾斜角度θ(図6を参照)は、特に限定されない。しかし、接着液受面αの傾斜角度θを小さくしすぎると、接着液受面αに載せられた接着液が接着領域の隙間βに速やかに流れ落ちにくくなるおそれがある。このため、接着液受面αの傾斜角度θは、通常、1°以上とされる。接着液受面αの傾斜角度θは、2°以上であると好ましく、3°以上であるとより好ましい。一方、接着液受面αの傾斜角度θを大きくしすぎると、接着液注入孔12bから接着液溜め用凹部11bに注入された接着液が、外向壁面11bの一対の側端縁のうち、いずれか一方のみに局所的に集まりやすくなり、接着領域の隙間βの広い範囲に接着液を行きわたらせるという観点からは、必ずしも好ましくない状況が発生しやすくなるおそれがある。このため、接着液受面αの傾斜角度θは、通常、30°以下とされる。接着液受面αの傾斜角度θは、20°以下であると好ましく、10°以下であるとより好ましい。第一実施態様において、接着液受面αの傾斜角度θは、約5°となっている。
【0038】
1.2 蓋部
蓋部12は、図7に示すように、接着用挿入部11の上端側に配されて封止穴21に蓋をするための部分となっている。蓋部12の具体的な形態は、封止穴21の形態等に応じて適宜決定される。第一実施態様において、蓋部12は、円盤状となっている。蓋部12の上面周縁部には、上向きに突出する環状凸部12aが設けられている。この環状凸部12aは、蓋部12の強度を増大する補強リブとしての機能や、封止部材1を封止穴21に嵌め込む際に指等でつまむ部分としての機能を発揮するだけでなく、蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間からマイナスドライバ等の工具を挿し込みにくくする機能をも有している。蓋部12における環状凸部12aには、蓋部12を上下方向に貫通する接着液注入孔12bが設けられている。この接着液注入孔12bは、上述したように、その下側に位置する接着液溜め用凹部11bに接着液を注入するためのものとなっており、蓋部12における接着液溜め用凹部11bに重なる箇所に設けられる。蓋部12は、封止穴21を塞ぐ機能を有するため、蓋部12における接着液注入孔12bが設けられた箇所を除いた部分は、通常、貫通孔等の開口部がない連続面状とされる。
【0039】
接着液注入孔12bの具体的な形態は、既に述べた通り、特に限定されない。接着液注入孔12bの断面形状(接着液が注入される方向に垂直な断面の形状。接着液注入孔12bについて、以下同じ。)は、閉環状(例えば「O」字状)のものに限定されず、開環状(例えば「C」字状)であってもよい。第一実施態様において、接着液注入孔12bは、図4に示すように、蓋部12の外周部を内側に切り欠いた形態を為しており、その断面形状は、略「C」字状となっている。また、接着液注入孔12bの上端部(蓋部12の上面側の端部)の内周面は、下端側に向かって内径の小さくなるテーパー状に形成されており、接着液注入孔12bの下端側の開口面積が、接着液注入孔12bの上端側の開口面積よりも小さくなっている。このため、蓋部12の上面側から接着液注入孔12bに接着液を注入しやすくしながらも、接着液注入孔12bから接着液溜め用凹部11bに入れられた接着液が接着液注入孔12b側へ逆流しにくくなっている。接着液注入孔12bにおける最も細くなった部分の内径は、特に限定されないが、小さくしすぎると、接着液を注入しにくくなり、大きくしすぎると、接着液が逆流しやすくなる。このため、接着液注入孔12bの最も細くなった部分の内径(当該部分の断面の形状が非円形である場合には、当該断面と同じ面積を有する円の内径)は、通常、0.5〜5mmとされ、好ましくは、1〜3mmとされる。
【0040】
2. 第二実施態様の封止部材
続いて、第二実施態様の封止部材について説明する。図9は、第二実施態様の封止部材1の全体を示した斜視図である。図10は、第二実施態様の封止部材1が嵌め込まれた封止穴21の周辺を、y−z面に平行でかつ封止穴21の中心線Lを含む平面で切断した状態を示した断面斜視図である。
【0041】
第一実施態様の封止部材1では、図4に示すように、接着液注入孔12b及び接着液溜め用凹部11bが1つずつのみ設けられていたが、第二実施態様の封止部材1では、図9及び図10に示すように、接着液注入孔12b及び接着液溜め用凹部11bが2つずつ設けられている。このように、接着液注入孔12bや接着液溜め用凹部11bは、複数箇所に設けることも可能である。これにより、接着領域の隙間βにおけるより広い範囲に接着液が行きわたりやすくすることができる。接着液注入孔12bや接着液溜め用凹部11bを複数箇所に設ける場合には、接着用挿入部11の外周面を周方向に等分する箇所に接着液溜め用凹部11bを設け、蓋部12におけるそれぞれの接着液溜め用凹部11bの近傍に接着液注入孔12bを設けると好ましい。第二実施態様の封止部材1においても、接着用挿入部11の外周面を周方向に二等分する箇所に接着液溜め用凹部11bを設け、蓋部12におけるそれぞれの接着液溜め用凹部11bの近傍に接着液注入孔12bを設けている。
【0042】
また、第一実施態様の封止部材1では、図4に示すように、蓋部12を、接着用挿入部11から外方へ大きく突出しない状態に設けており、接着液注入孔12bを、切欠状に設けていたが、第二実施態様の封止部材2では、図9に示すように、蓋部12を、接着用挿入部11の外周面よりも外方に大きく突出した状態(フランジ状)に設けており、接着液注入孔12bを、蓋部12におけるフランジ状の部分を上下方向(y軸方向)に貫通して設けている。これにより、図10に示すように、封止部材1を封止穴21に嵌め込んだ際に、接着液溜め用凹部11bに注入された接着液が蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間から上側に漏れ出ないようにすることが可能になる。また、蓋部12の外周面と封止穴21の内周面との隙間からマイナスドライバ等の工具を挿入しにくくして、不正行為をより行いにくくすることも可能になる。さらに、第一実施態様の封止部材1と比較して、接着液溜め用凹部11bの容積を大きく確保しやすくなるという利点もある。
【0043】
その他、第二実施態様の封止部材1で特に言及していない構成については、第一実施態様の封止部材1で述べた内容と略同様であるために、詳しい説明は割愛する。
【符号の説明】
【0044】
1 封止部材
11 接着用挿入部
11a 位置決め用凸部
11b 接着液溜め用凹部
11b 外向壁面
11b 上向壁面
11c 係合部
12 蓋部
12a 環状凸部
12b 接着液注入孔
12c 被係合部
2 カバー
21 封止穴
21a 位置決め用凹部
5 遊技機
51 筺体
51a 本体
51b 前扉
52 リール
53 ホッパー装置
54 電源ユニット
55 基板ユニット
55a ユニットホルダ
55b ユニットカバー
55b ネジ穴
55c 基板カバー
56 液晶ユニット
57 コネクタユニット
A 封止対象箇所
L 封止穴の中心線
W 接着領域の隙間の幅
α 接着液受面
β 接着領域の隙間
【要約】
【課題】
封止作業を円滑に行うことができるだけでなく、封止対象箇所を高い封止力で封止することもできる封止部材を提供する。
【解決手段】
封止対象箇所Aが奥部に設けられた封止穴21に嵌め込むことにより、封止対象箇所Aを封止する封止部材1を、封止穴21に対して下端側から挿入される接着用挿入部11と、接着用挿入部11の上端側に配されて封止穴21に蓋をするための蓋部12とを備えたものとし、封止穴21に挿入された状態の接着用挿入部11の外周面と封止穴21の内周面との隙間に接着液を注入するための接着液注入孔12bを、蓋部12を上下方向に貫通して設けた。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10