特許第5809747号(P5809747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特許5809747タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法
<>
  • 特許5809747-タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法 図000006
  • 特許5809747-タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809747
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20151022BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20151022BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   B60C5/14 A
   B60C5/14 Z
   B29D30/06
   B32B27/34
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-516925(P2014-516925)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公表番号】特表2014-523364(P2014-523364A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】KR2012005188
(87)【国際公開番号】WO2013002603
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0063956
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0064870
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0070633
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0070634
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キ−サン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギ−ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−モック
(72)【発明者】
【氏名】チョン,オク−ファ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,シ−ミン
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−165469(JP,A)
【文献】 特開2010−095604(JP,A)
【文献】 特開2009−233998(JP,A)
【文献】 特開2007−160833(JP,A)
【文献】 特開2011−063750(JP,A)
【文献】 特開平11−170339(JP,A)
【文献】 特開平10−036504(JP,A)
【文献】 特開2009−291962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
B29D 30/06
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;の混合物を230〜300℃で溶融する段階と、
前記溶融物を0.3〜1.5mmのダイギャップ(Die Gap)条件下で押出して基材フィルム層を形成する段階と、
前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含み、
前記基材フィルム層を形成する段階は、
前記押出物がダイ出口から水平距離10〜150mmに位置した冷却部に付着する段階を含み、
前記基材フィルム層の初期2%伸張時、横方向(TD;Transverse direction)の引張モジュラスに対する縦方向(MD;Machine direction)の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1であることを特徴とする、タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記共重合体に含まれているポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%である、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項3】
ダイ出口から水平距離10〜300mmに位置した、エアナイフ、エアノズルおよび静電気付与装置からなる群より選択された1種以上の装置を用いて、
前記押出物を前記冷却部に均一に密着させる段階をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を5〜40℃に維持される冷却部で固化させる段階をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体が6:4〜3:7の重量比で混合されることを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記共重合体は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを6:4〜3:7の重量比で含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記接着層を形成する段階は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜30重量%;およびラテックス68〜98重量%を含む接着剤を前記基材フィルム層の少なくとも一表面上に0.1〜20μmの厚さに塗布する段階を含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記製造される基材フィルム層の横方向(TD;Transverse direction)の降伏強度と縦方向(MD;Machine direction)の降伏強度との比が0.9〜1.1であることを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記製造される基材フィルム層の横方向(TD;Transverse direction)のフラット(Flat)伸度と縦方向(MD;Machine direction)のフラット(Flat)伸度がそれぞれ150%以上であり、
前記横方向(TD;Transverse direction)のフラット(Flat)伸度に対する縦方向(MD;Machine direction)のフラット(Flat)伸度の割合が0.9〜1.1であることを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記接着層上に、常温で初期モジュラスが1500Mpa以上の高分子フィルムを含む離型フィルム層を形成する段階;を含むことを特徴とする、請求項に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記離型フィルム層を形成する段階は、
ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択された1種以上の高分子を前記接着層上に塗布して、5μm〜50μmの厚さの離型フィルム層を形成する段階;または
ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択された1種以上の高分子を含むフィルムを前記接着層上に積層して、5μm〜50μmの厚さの離型フィルム層を形成する段階;を含むことを特徴とする、請求項10に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法に関するものである。より詳細には、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、フィルムの全方向に均一な物性を有して優れた成形性および向上した耐久性を有するタイヤインナーライナ用フィルムおよびタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、自動車の荷重を支え、路面から受ける衝撃を緩和し、自動車の駆動力または制動力を地面に伝達する役割を果たす。一般に、タイヤは、繊維/鋼鉄/ゴムの複合体であって、図2のような構造を有することが一般的である。
【0003】
トレッド(Tread)1:路面と接触する部分であり、制動、駆動に必要な摩擦力を与え、耐摩耗性が良好でなければならず、外部衝撃に耐えられなければならず、発熱が少なくなければならない。
【0004】
ボディプライ(Body Ply)(またはカーカス(Carcass))6:タイヤ内部のコード層であり、荷重を支持し、衝撃に耐え、走行中の屈伸運動に対する耐疲労性が強くなければならない。
【0005】
ベルト(Belt)5:ボディプライの間に位置しており、ほとんどの場合に鋼線(Steel Wire)で構成され、外部の衝撃を緩和させることはもちろん、トレッドの接地面を広く維持して走行安定性を優れるようにする。
【0006】
サイドウォール(Side Wall)3:ショルダー2の下部からビード9の間のゴム層をいい、内部のボディプライ6を保護する役割を果たす。
【0007】
インナーライナ(Inner Liner)7:チューブの代わりにタイヤの内側に位置しているものであり、空気漏れを防止して空気入りタイヤを可能にする。
【0008】
ビード(BEAD)9:鋼線にゴムを被覆した四角または六角形態のWire Bundleであり、タイヤをRimに載置し固定させる役割を果たす。
【0009】
キャッププライ(CAP PLY)4:一部の乗用車用ラジアルタイヤのベルト上に位置した特殊コード紙であり、走行時、ベルトの動きを最小化する。
【0010】
アペックス(APEX)8:ビードの分散を最少化し、外部の衝撃を緩和してビードを保護し、成形時、空気の流入を防止するために用いる三角形態のゴム充填材である。
【0011】
最近は、チューブを用いることなく、内部には30〜40psi程度の高圧空気が注入されたチューブレス(tube−less)タイヤが通常用いられるが、車両の運行過程で内側の空気が外部に流出するのを防止するために、カーカス内層に気密性の高いインナーライナが配置される。
【0012】
以前には、比較的空気透過性が低いブチルゴムまたはハロブチルゴムなどのゴム成分を主要成分とするタイヤインナーライナが用いられていたが、このようなインナーライナでは、十分な気密性を得るためにゴムの含有量またはインナーライナの厚さを増加させなければならなかった。前記ゴム成分の含有量および厚さが増加するにつれ、タイヤ総重量が増加して自動車の燃費が低下し、タイヤの加硫過程または自動車の運行過程でカーカス層の内面ゴムとインナーライナとの間に空気ポケットができたり、インナーライナの形態や物性が変化する現象も現れた。
【0013】
これにより、インナーライナの厚さおよび重量を減少させて燃費を節減させ、タイヤの加硫または運行過程などで発生するインナーライナの形態や物性の変化を低減させるために多様な方法が提案された。
【0014】
しかし、以前に知られているいかなる方法もインナーライナの厚さおよび重量を十分に減少させながら、優れた空気透過性およびタイヤの成形性を維持するのに限界があり、タイヤ内部のカーカス層に強固に結合するために、追加のタイガムゴムなどを用いて、タイヤの重量が増加して自動車の燃費が低下する問題があった。また、以前に知られている方法で得られたインナーライナは、タイヤの製造過程または運行過程などで繰り返し変形によって亀裂が発生するなど、十分な耐疲労性を有することができない場合も多かった。
【0015】
それだけでなく、以前のインナーライナフィルムは、製造工程の機械から放出される方向に沿った物性と、その他の方向に沿った物性との差が大きく、多様な変形工程または伸張工程の適用が容易でなかったし、タイヤ製造過程または自動車の運行過程でフィルムの方向に沿って不規則に変形してインナーライナの機械的物性または耐久性が低下する問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、フィルムの全方向に均一な物性を有して優れた成形性および向上した耐久性を有するタイヤインナーライナ用フィルムおよびタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;を含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%であり、前記基材フィルム層の初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1である、タイヤインナーライナ用フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;の混合物を230〜300℃で溶融する段階と、前記溶融物を0.3〜1.5mmのダイギャップ(Die Gap)条件下で押出して基材フィルム層を形成する段階と、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含み、前記共重合体に含まれているポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%であり、前記基材フィルム層の初期2%伸張時、横方向(TD;Transverse direction)の引張モジュラスに対する縦方向(MD;Machine direction)の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1である、タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【0020】
以下、発明の具体的な実施形態にかかるタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法に関してより詳細に説明する。
【0021】
発明の一実施形態によれば、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;を含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%であり、前記基材フィルム層の初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1である、タイヤインナーライナ用フィルムが提供できる。
【0022】
本発明者らの研究結果、ポリアミド系樹脂と、上述した特定の共重合体とを混合して製造される基材フィルムを使用すると、薄い厚さでも優れた気密性を実現し、タイヤを軽量化して自動車の燃費を向上させることができ、高い耐熱特性を有しながらも、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を示すタイヤインナーライナ用フィルムが提供できることが確認された。
【0023】
特に、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、フィルムの全方向に多様な変形工程または伸張工程に容易に適用可能な優れた成形性を有し、タイヤ製造過程または自動車の運行過程でフィルムの方向に沿って不規則に変形する現象を防止して、優れた機械的物性および向上した耐久性を実現することができる。
【0024】
具体的には、後述する製造方法に示されているように、前記ポリアミド系樹脂と前記特定の共重合体とを特定の含有量で混合して溶融し、特定のダイギャップ(Die Gap)条件下で前記溶融物を押出すると、フィルムの全方向に均一な物性を有する基材フィルムが提供できる。同時に、前記特定のダイギャップ条件で押出された溶融物をダイ出口から水平距離で10〜150mmに設けられた冷却ロールに付着接地させることにより、延伸による配向が実質的に現れない基材フィルムを得ることができる。
【0025】
これにより、前記基材フィルム層の初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。前記引張モジュラは、応力と変形との比を示す弾性係数を意味し、具体的には、常温条件および初期2%伸張地点で測定した応力−伸度グラフ(S−Sカーブ)の傾き値を意味する。
【0026】
一方、前記基材フィルム層の第1方向の降伏強度に対する前記第1方向に垂直な第2方向の降伏強度の比が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。前記降伏強度(Yield strength)は、弾性変形が生じる限界応力を意味し、具体的には、0〜50%の伸張区間で現れる応力の最大値を意味する。
【0027】
前記基材フィルムの1つの方向とこれに垂直な方向との間の降伏強度の差が大きくないことにより、タイヤ成形過程で両方向に均一な伸張および変形が可能でタイヤ成形の不良を防止することができ、自動車の走行中に一方向に応力集中してタイヤが破損する問題を防止することができる。
【0028】
また、前記基材フィルム層の第1方向のフラット(Flat)伸度と前記第1方向に垂直な第2方向のフラット(Flat)伸度がそれぞれ150%以上、好ましくは200%〜400%であり得る。そして、前記基材フィルム層の第1方向のフラット(Flat)伸度に対する第2方向のフラット(Flat)伸度の割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0029】
前記フラット伸度は、降伏強度引張変形の増加による配向効果で応力が急激に増加する時点の伸度を意味し、具体的には、降参点以後の伸張区間で、応力が降伏強度発現点と同一になる地点での伸び率(または降伏点以後の伸張区間で、S−Sカーブの傾きの変化が最も大きい地点での伸び率)であり得る。
【0030】
前記基材フィルムの第1方向のフラット(Flat)伸度とこれに垂直な第2方向のフラット(Flat)伸度がいずれも150%以上の値を示しながら、これらの間の差が大きくないため、前記タイヤインナーライナ用フィルムを適用すると、タイヤ成形過程で両方向に均一な伸張および変形が可能でタイヤ成形の不良を防止することができ、自動車の走行中に一方向に応力集中してタイヤが破損する問題を防止することができる。
【0031】
一方、上述した基材フィルムの第1方向は、基材フィルムの横方向(TD;Transverse direction)であり得、前記第1方向に垂直な第2方向は、基材フィルムの縦方向(MD;Machine direction)であり得る。
【0032】
前記縦方向(MD;Machine Direction)は、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造過程で基材フィルムが形成されて出る方向である縦方向(MD;Machine Direction)であり得、実際のタイヤ製造時には、タイヤまたは成形ドラムの円周方向(Circumferential Direction)を囲むように、または平衡に適用される方向を意味する。前記横方向(TD;Transverse Direction)は、前記縦方向に垂直な方向を意味し、タイヤまたはタイヤ成形ドラムの軸方向に水平な方向であり得る。
【0033】
一方、前記基材フィルムは、特徴的な化学的構造によって上述した接着層に対して高い反応性を示すことができ、前記接着層も、タイヤカーカス層に対して高くて均一な接着力を示すことができる。これにより、前記インナーライナ用フィルムは、追加の加硫工程を適用しなかったり、接着層の厚さを大きく増加させなくてもタイヤに強固に結合され得、高温の変形または伸張段階が適用されるタイヤ製造過程や長時間繰り返し物理的変形が加えられる自動車の運行過程でインナーライナフィルムとタイヤカーカス層との間の結合力が大きく低下したり、前記基材フィルムと接着層との間が破断する現象を防止することができる。
【0034】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、物性向上のための付加的な添加剤またはゴム成分を大きく必要としないため、製造工程を単純化させることができ、タイヤ製造原価を節減することができる。これにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、タイヤを軽量化させて自動車の燃費を向上させることができ、長期間使用後も適正な空気圧を維持して、低い空気圧によって誘発される転覆事故および燃費の低下を防止することができ、また、走行時、繰り返し疲労に耐える能力に優れて耐久性を保障し、簡単な製造工程でも優れた性能のタイヤを製造することができる。
【0035】
上述したタイヤインナーライナ用フィルムの特徴は、前記ポリアミド系樹脂と共に、特定含有量のポリエーテル系セグメントおよびポリアミド系セグメントを含む共重合体を用いて、絶対重量平均分子量を有する基材フィルム層を製造することによる。
【0036】
より詳細には、前記基材フィルム層は、エラストマー的性質を付与したポリエーテル系セグメントを特定の含有量で含む特定の共重合体と共に、ポリアミド系樹脂を用いて、優れた気密性と共に、相対的に低いモジュラスを有することができる。つまり、前記基材フィルム層に含まれるポリアミド系樹脂は、固有の分子鎖特性によって優れた気密性、例えば、同一厚さにおいて、タイヤに一般に用いられるブチルゴムなどに比べて10〜20倍程度の気密性を示し、他の樹脂に比べてさほど高くないモジュラスを示す。そして、前記共重合体に含まれるポリエーテル系セグメントは、ポリアミド系セグメントまたはポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。
【0037】
前記ポリアミド系樹脂は、大体優れた気密性を示すため、前記基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有するようにする役割を果たす。また、このようなポリアミド系樹脂は、他の樹脂に比べて相対的に高くないモジュラスを示すため、前記特定含有量のポリエーテル系セグメントを含む共重合体と共に適用されても相対的に低いモジュラス特性を示すインナーライナ用フィルムが得られ、これにより、タイヤの成形性を向上させることができる。また、前記ポリアミド系樹脂は、十分な耐熱性および化学的安定性を有するため、タイヤ製造過程で適用される高温条件または添加剤などの化学物質への露出時にインナーライナフィルムが変形または変成するのを防止することができる。
【0038】
そして、前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体と共に使用され、接着剤(例えば、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤)に対して相対的に高い反応性を示すことができる。これにより、前記インナーライナ用フィルムがカーカス部分に容易に接着可能であり、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形による界面の破断を防止して、前記インナーライナ用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0039】
前記ポリアミド系樹脂は3.0〜3.5、好ましくは3.2〜3.4の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。このようなポリアミド系樹脂の粘度が3.0未満であれば、靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されず、タイヤ製造時や自動車の運行時に破損が発生することがあり、基材フィルム層がタイヤインナーライナ用フイルムとして有するべき気密性または成形性などの物性を確保しにくことがある。また、前記かかるポリアミド系樹脂の粘度が3.5を超える場合、製造される基材フィルム層のモジュラスまたは粘度が不要に高くなり得、タイヤインナーライナが適切な成形性または弾性を有しにくいことがある。
【0040】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は、常温で硫酸96%溶液を用いて測定した相対粘度を意味する。具体的には、一定のポリアミド系樹脂の試片(例えば、0.025gの試片)を異なる濃度で硫酸96%溶液に溶かして2以上の測定用溶液を製造した後(例えば、ポリアミド系樹脂試片を、0.25g/dL、0.10g/dL、0.05g/dLの濃度となるように、96%硫酸に溶かして3つの測定用溶液を製作)、25℃で、粘度管を用いて前記測定用溶液の相対粘度(例えば、硫酸96%溶液の粘度管通過時間に対する前記測定用溶液の平均通過時間の割合)を求めることができる。
【0041】
前記基材フィルム層に使用可能なポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610またはナイロン612を使用することが好ましい。
【0042】
前記ポリアミド系樹脂は、樹脂自体を使用する方法だけでなく、前記ポリアミド系樹脂の単量体または前記ポリアミド系樹脂の前駆体を用いて基材フィルムを製造することにより、前記基材フィルム層に含まれてもよい。
【0043】
一方、上述のように、ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、ポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。このような特定の共重合体が前記基材フィルム層に含まれることにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、優れた耐久性、耐熱性および耐疲労性などの機械的物性を確保しながらも、高い弾性または弾性回復率を実現することができる。これにより、前記インナーライナ用フィルムが優れた成形性を示すことができ、これを適用したタイヤは、繰り返し変形および高い熱が継続して発生する自動車の走行過程においても、物理的に破損したり、自体の物性または性能が低下しなくて済む。
【0044】
一方、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、より好ましくは22〜40重量%の場合、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、より優れた物性および性能を発揮することができる。前記ポリエーテル系セグメントの含有量が基材フィルム層全体中の15重量%未満であれば、前記基材フィルム層またはタイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得る。前記ポリエーテル系セグメントの含有量がフィルム全体中の50重量%を超えると、タイヤインナーライナが要求される気密性(Gas Barrier)性が良くなくてタイヤの性能が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0045】
前記ポリエーテル系セグメントは、前記ポリアミド系セグメントと結合されたり、前記ポリアミド系樹脂の間に分散した状態で存在することができるが、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で基材フィルム層内に大きな結晶が成長するのを抑制したり、前記基材フィルム層が簡単に破れるのを防止することができる。
【0046】
このようなポリエーテル系セグメントは、前記タイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスをより低下させることができ、これにより、タイヤ成形時にさほど大きくない力が加えられてもタイヤの形態に合わせて伸張または変形できるようにして、タイヤを容易に成形できるようにする。そして、前記ポリエーテル系セグメントは、低温でフィルムの剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができ、繰り返し変形などによるインナーライナフィルムの損傷または破れを防止することができ、インナーライナの変形に対する回復力を向上させて永久変形によるフィルムのシワの発生を抑制して、タイヤまたはインナーライナの耐久性を向上させることができる。
【0047】
前記ポリアミド系セグメントは、前記共重合体が一定水準以上の機械的物性を有することができるようにしながらも、モジュラス特性が大きく増加しないようにする役割を果たすことができる。同時に、前記ポリアミド系セグメントが適用されることにより、基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有することができ、十分な耐熱性および化学的安定性を確保することができる。
【0048】
前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記の化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
[化学式1]

【0049】
前記化学式1において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
[化学式2]

【0050】
前記化学式2において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0051】
また、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記の化学式3の繰り返し単位を含むことができる。
[化学式3]

【0052】
前記化学式3において、Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−である。
【0053】
前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の絶対重量平均分子量は50,000〜300,000、好ましくは70,000〜200,000であり得る。前記共重合体の絶対重量平均分子量が50,000未満であれば、製造される基材フィルム層がインナーライナ用フィルムに使用するのに十分な機械的物性を確保できないことがあり、前記タイヤインナーライナ用フィルムが十分な気密性(Gas barrier)を確保しにくいことがある。また、前記共重合体の絶対重量平均分子量が300,000超過であれば、高温での加熱時、基材フィルム層のモジュラスまたは結晶化度が過度に増加して、インナーライナ用フイルムとして有するべき弾性または弾性回復率を確保しにくいことがある。
【0054】
一方、前記共重合体は、前記ポリエーテル系セグメントがフィルムの全体重量に対して15〜50重量%の範囲内で、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含むことができる。
【0055】
上述のように、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が小さすぎると、基材フィルム層またはタイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得る。また、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が大きすぎると、前記タイヤインナーライナ用フィルムの気密性が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0056】
また、前記基材フィルム層において、ポリアミド系樹脂および上述した共重合体は6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含まれるとよい。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され得、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。
【0057】
一方、前記基材フィルム層は未延伸フィルムであり得る。前記基材フィルム層が未延伸フィルム形態の場合には、低いモジュラスおよび高い変形率を有して高い膨張が発生するタイヤ成形工程に適切に適用することができる。また、未延伸フィルムでは結晶化現象がほとんど発生しないため、繰り返される変形によってもクラックなどのような損傷を防止することができる。また、未延伸フィルムは、特定方向への配向および物性の偏差が大きくないため、均一な物性を有するインナーライナを得ることができる。
【0058】
後述するタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法に示されているように、前記基材フィルムの配向を最大限抑制する方法、例えば、溶融押出温度の最適化による粘度調整、口金ダイ規格の変更、冷却ローラの設置位置調節、エアナイフ(Air Knife)設置位置調節、Pinning装置(静電気付与装置)設置位置調節または巻取速度の調節などの方法により、前記基材フィルムを未配向または未延伸フイルムとして製造することができる。
【0059】
前記基材フィルムに未延伸フィルムを適用すると、タイヤ製造工程でインナーライナ用フィルムを円筒状またはシート状に容易に製造することができる。特に、前記基材フィルムに未延伸シート状フィルムを適用する場合、タイヤのサイズごとにフィルム製造設備を別途に構築する必要がなく、移送および保管過程でフィルムに加えられる衝撃およびシワなどを最小化することができて好ましい。また、前記基材フィルムをシート状に製造する場合、後述する接着層を追加する工程をより容易に行うことができ、成形ドラムと規格差によって製造工程中に発生する損傷または歪みなどを防止することができる。
【0060】
前記基材フィルム層は30〜300μm、好ましくは40〜250μm、より好ましくは40〜200μmの厚さを有することができる。これにより、発明の一実施形態のタイヤインナーライナ用フィルムは、以前に知られているものに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cc/(m・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0061】
前記基材フィルムは、耐熱酸化防止剤、熱安定剤、接着増進剤、またはこれらの混合物などの添加剤をさらに含むことができる。前記耐熱酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド(N,N’−Hexamethylene−bis−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxy−hydrocinnamamide、例えば、rganox1098などの市販製品)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(tetrakis[methylene(3,5−di−t−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)]methane、例えば、Irganox1010などの市販製品)または4,4’−ジクミルジフェニルアミン(4,4’−di−cumyl−di−phenyl−amine、例えば、Naugard445)などがある。前記熱安定剤の具体例としては、安息香酸(Bezoic acid)、トリアセトンジアミン(triacetonediamine)、またはN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(N,N’−Bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)−1,3−benzenedicarboxamide)などがある。ただし、前記添加剤は、前記例に限定されるものではなく、タイヤインナーライナ用フィルムに使用可能と知られているものは特別な制限なく使用することができる。
【0062】
一方、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、前記基材フィルム層およびタイヤカーカス層に対しても優れた接着力および接着維持性能を有し、これにより、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形によって発生するインナーライナフィルムとカーカス層との間の界面の破断を防止して、前記インナーライナ用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0063】
上述した接着層の主要特性は、特定の組成を有する特定のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことによると考えられる。以前のタイヤインナーライナ用接着剤としてはゴムタイプのタイガムなどが使用され、これにより、追加の加硫工程が必要であった。これに対し、前記接着層は、特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含み、前記基材フィルムに対して高い反応性および接着力を有するだけでなく、厚さをさほど増加させなくても高温加熱条件で圧着して前記基材フィルムとタイヤカーカス層とを強固に結合させることができる。これにより、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、タイヤ製造過程または自動車の運行過程での繰り返される変形などでもカーカス層とインナーライナ層または前記基材フィルムと接着層とが分離される現象を防止することができる。そして、前記接着層は、タイヤ製造過程や自動車の運行過程で加えられる物理/化学的変形に対しても高い耐疲労特性を示すことができるため、高温条件の製造過程や長期間機械的変形が加えられる自動車の運行過程中においても、接着力または他の物性の低下を最小化することができる。
【0064】
それだけでなく、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、ラテックスとゴムとの間の架橋結合が可能で接着性能を発現し、物理的にラテックス重合物であるため、硬化度が低く、ゴムのように柔軟な特性を有することができ、レゾルシノール−ホルマリン重合物のメチロール末端基と基材フィルムとの間の化学結合が可能である。これにより、基材フィルムに前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を適用すると、十分な接着性能を実現することができる。
【0065】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、好ましくは10〜20重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0066】
前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:0.3〜1:3.0、好ましくは1:0.5〜1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応して得られたものであり得る。また、前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、優れた接着力のための化学反応の面で、全体接着層の総量に対して2重量%以上で含まれるとよく、適正な耐疲労特性を確保するために、32重量%以下で含まれるとよい。
【0067】
前記ラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムテックス、クロロプレンゴムテックスおよびスチレン/ブタジエン/ビニルピリジンゴムテックスからなる群より選択された1種または2種以上の混合物になるとよい。前記ラテックスは、素材の柔軟性とゴムとの効果的な架橋反応のために、全体接着層の総量に対して68重量%以上で含まれるとよく、基材フィルムとの化学反応と接着層の剛性のために、98重量%以下で含まれる。
【0068】
また、前記接着層は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物およびラテックスと共に、表面張力調整剤、耐熱剤、消泡剤、およびフィラーなどの添加剤1種以上を追加的に含むことができる。この時、前記添加剤のうち、表面張力調整剤は、接着層の均一な塗布のために適用するが、過剰投入時、接着力低下の問題を発生させることがあるため、全体接着層の総量に対して2重量%以下または0.0001〜2重量%、好ましくは1.0重量%以下または0.0001〜0.5重量%で含まれるとよい。この時、前記表面張力調整剤は、スルホン酸塩陰イオン性界面活性剤、硫酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩陰イオン性界面活性剤、リン酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤からなる群より選択された1種以上になるとよい。
【0069】
前記接着層は、0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜7μm、さらに好ましくは0.3〜5μmの厚さを有することができ、タイヤインナーライナ用フィルムの一表面または両表面上に形成されるとよい。前記接着層の厚さが薄すぎると、タイヤ膨張時に接着層自体がより薄くなり得、カーカス層および基材フィルムの間の架橋接着力が低くなり得、接着層の一部に応力が集中して疲労特性が低くなり得る。また、前記接着層が厚すぎると、接着層での界面分離が生じて疲労特性が低下することがある。そして、タイヤのカーカス層にインナーライナフィルムを接着させるために、基材フィルムの一面に接着層を形成することが一般的であるが、多層のインナーライナフィルムを適用する場合、あるいはインナーライナフィルムがビード部を囲むなどのタイヤ成形方法および構造設計により両面にゴムと接着が必要な場合、基材フィルムの両面に接着層を形成することが好ましい。
【0070】
一方、前記接着層が特定のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことにより、優れたモジュラス特性および高い弾性回復力などを有することができる。これにより、前記基材層上に前記接着層が形成されても、基材フィルムの伸張または変形特性には実質的に何ら影響も及ばないことがある。つまり、前記基材フィルム層と接着層とを含むタイヤインナーライナ用フィルムは、上述した基材フィルムの伸張特性、例えば、前記タイヤインナーライナ用フィルムの初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向の降伏強度に対する前記第1方向に垂直な第2方向の降伏強度の比が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0071】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向のフラット(Flat)伸度と前記第1方向に垂直な第2方向のフラット(Flat)伸度がそれぞれ150%以上、好ましくは200%〜400%であり得る。そして、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向のフラット(Flat)伸度に対する第2方向のフラット(Flat)伸度の割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0072】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、前記接着層上に形成され、常温で初期モジュラスが1500Mpa以上の高分子フィルムを含む離型フィルム層をさらに含むことができる。
【0073】
前記離型フィルムの初期モジュラは1500Mpa以上、好ましくは2000MPa以上であり得、または1500Mpa〜5000Mpaであり得る。前記離型フィルムが上述したモジュラス特性を有することにより、長時間繰り返される圧力または外部衝撃によって発生し得る亀裂またはクラックなどを最小化することができ、前記タイヤインナーライナフィルムの巻取時やタイヤ製造時の外部から加えられた張力によって伸張してモジュラスが増加する現象を防止することができ、前記タイヤインナーライナフィルムの作業性を向上させて工程に容易に適用できるようにする。前記初期モジュラスは、伸張されていない状態の離型フィルムのモジュラスを意味する。
【0074】
特に、前記タイヤインナーライナ用フィルムがタイヤビード部の内部に入るように設けられたり、インナーライナ用フィルムの重なり部の接着力発現のために、前記基材フィルムの両面に接着層が形成できるが、この時、前記離型フィルム層は、基材フィルムの両面に形成された接着層が互いに融着するのを防止することができる。
【0075】
前記離型フィルム層に含まれている高分子フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、これらの混合物またはこれらの共重合体を含むことができる。前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などを使用することができ、前記ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを使用することができる。
【0076】
前記離型フィルム層が上述した高分子樹脂を含むことにより、前記離型フィルム層が前記接着層と適切な結合力、例えば、製品の保管過程などでは強固に結合され得、実際の工程適用時には、接着層または基材フィルムに特別な影響を与えずに容易に分離できる程度の結合力を有することができ、長時間繰り返される圧力または外部衝撃によって製品が損傷する現象または互いに異なるフィルム層の間にくっつくブロッキング(blocking)現象を防止することができる。
【0077】
そして、前記離型フィルム層は5〜50um、好ましくは8〜35umの厚さを有することができる。前記離型フィルム層が薄すぎる場合、繰り返される圧力または外部衝撃を防止できないことがあり、軽すぎた特性上、タイヤ製造のために分離する場合、切断や破壊で作業が中断され得、外気によって簡単に飛ばされる現象が発生することがあり、低いモジュラスで他の物体にくっつく現象が発生することがある。そして、前記離型フィルム層が厚すぎる場合、製造費用が必要以上に増加することがあり、高いモジュラスによってタイヤ製造工程で除去が容易でないことがある。
【0078】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;の混合物を230〜300℃で溶融する段階と、前記溶融物を0.3〜1.5mmのダイギャップ(Die Gap)条件下で押出して基材フィルム層を形成する段階と、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含み、前記共重合体に含まれているポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%であり、前記基材フィルム層の初期2%伸張時、横方向(TD;Transverse direction)の引張モジュラスに対する縦方向(MD;Machine direction)の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1である、タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法が提供できる。
【0079】
前記製造方法により得られるタイヤインナーライナ用フィルムは、薄い厚さでも優れた気密性および高い空気圧維持性能を実現することができるだけでなく、フィルムの全方向に、特に縦方向および横方向の間に均一な物性を有することができて、多様な変形工程または伸張工程に容易に適用可能な優れた成形性を有し、タイヤ製造過程または自動車の運行過程でフィルムの方向に沿って不規則に変形する現象を防止することができ、前記基材フィルムが一定の接着剤に対して高い反応性を示して、薄くて軽量化された接着層でもタイヤの内部に強固かつ均一に結合できる。
【0080】
前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂との混合物を230〜300℃で溶融して得られる結果物を0.3〜1.5mm、好ましくは0.5〜1.2mmのダイギャップ(Die Gap)条件下で押出して基材フィルムを製造することにより、前記基材フィルムの全方向、例えば、縦方向および横方向間の物性が均一になり得る。これにより、前記タイヤインナーライナフィルムは、多様な変形工程または伸張工程に容易に適用可能な優れた成形性を有し、タイヤ製造過程または自動車の運行過程でフィルムの方向に沿って不規則に変形する現象を防止して、優れた機械的物性および向上した耐久性を実現することができる。
【0081】
前記基材フィルムを形成する段階において、前記ダイギャップ(Die Gap)が小さすぎると、溶融押出工程のダイ剪断圧力が過度に高くなって剪断応力が高くなり、押出されるフィルムの均一な形態の形成が難しく、生産性が低下する問題があり得、前記ダイギャップが大きすぎると、溶融押出されるフィルムの延伸が過度に高くなって配向が発生することがあり、製造される基材フィルムの縦方向および横方向間の物性の差が大きくなり得る。
【0082】
前記混合物を溶融する温度は230〜300℃、好ましくは240〜280℃であり得る。前記溶融温度は、ポリアミド系化合物の融点よりは高くなければならないが、高すぎると、炭化または分解が生じてフィルムの物性が阻害され得、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が生じたり、繊維配列方向に配向が発生して未延伸フィルムを製造するのに不利となり得る。
【0083】
前記押出ダイは、高分子樹脂の押出に使用可能と知られているものであれば特別な制限なく使用することができるが、前記基材フィルムの厚さをより均一にしたり、または基材フィルムに配向が発生しないようにするために、T型ダイを用いることが好ましい。
【0084】
一方、前記特定のダイギャップ条件で押出された溶融物をダイ出口から水平距離で10〜150mmに設けられた冷却部に付着接地させることにより、延伸による配向が実質的に現れない基材フィルムを得ることができる。
【0085】
前記溶融および押出して得られた結果物が冷却および固化する前に延伸されると、製造される基材フィルムに配向が発生する。これにより、延伸配向が最小化されるように溶融樹脂をフィルム状に最大限速やかに冷却ロールに密着させて高化することが必要である。
つまり、上述のように、前記特定のダイギャップ条件で押出された溶融物をダイ出口から水平距離で10〜150mm、好ましくは20〜120mmに設けられた冷却部に付着または接地させて延伸および配向を排除することができる。前記ダイ出口から冷却部までの水平距離は、ダイ出口と排出された溶融物が冷却部に接地する地点との間の距離であり得る。前記ダイの出口と溶融フィルムの冷却部付着地点との間の直線距離が小さすぎると、溶融押出樹脂の均一な流れを妨げてフィルム冷却の不均一を生じさせることがあり、前記距離が大きすぎると、フィルムの延伸効果の抑制を達成することができない。
【0086】
具体的には、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を、5〜40℃、好ましくは10〜30℃の温度に維持される冷却部で固化させる段階をさらに含むことができる。前記溶融および押出して形成された基材フィルム層が前記5〜40℃の温度に維持される冷却部で固化することによって、より均一な厚さを有するフィルム相として提供できる。溶融および押出して得られた基材フィルム層を前記適正温度に維持される冷却部に接地または密着させることにより、実質的に延伸が起こらないようにすることができ、前記基材フィルム層は未延伸フイルムとして提供できる。
【0087】
また、前記ダイ出口と冷却部までの水平距離を適切に調節すると同時に、エアナイフ、エアノズル、静電気付与装置(Pinning装置)またはこれらの組み合わせなどを追加的に用いて、前記ダイから排出された押出物が前記冷却部に迅速に密着して固化できるようにして、基材フィルムの延伸による配向が実質的に発生しないようにすることができる。具体的には、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、ダイ出口から水平距離10〜300mmに位置した、エアナイフ、エアノズルおよび静電気付与装置からなる群より選択された1種以上の装置を用いて、前記押出物を前記冷却部に均一に密着させる段階をさらに含むことができる。
【0088】
前記基材フィルムを形成する段階では、上述した特定の段階および条件を除いては、高分子フィルムの製造に通常使用されるフィルムの押出加工条件、例えば、スクリュー直径、スクリュー回転速度、またはライン速度などを適切に選択して使用することができる。
【0089】
一方、上述のように、前記方法によって得られる基材フィルム層の初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。また、前記製造される基材フィルム層の第1方向の降伏強度に対する前記第1方向に垂直な第2方向の降伏強度の比が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。また、前記基材フィルム層の第1方向のフラット(Flat)伸度と前記第1方向に垂直な第2方向のフラット(Flat)伸度がそれぞれ150%以上、好ましくは200%〜400%であり得、前記第1方向のフラット(Flat)伸度に対する第2方向のフラット(Flat)伸度の割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0090】
前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体に関する具体的な内容は、上述の通りである。
【0091】
一方、前記基材フィルム層を形成する段階では、より均一な厚さを有するフィルムを押出するために、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂が均一な大きさを有するように調節することができる。このように、前記共重合体およびポリアミド系樹脂の大きさを調節することにより、これらを混合する段階、一定の温度に維持される原料供給部に滞留する段階、または溶融および押出する段階などにおいて、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂とがより均一に混合され、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂それぞれがまたは互いにかたまって大きさが大きくなる現象を防止することができ、これによって、より均一な厚さを有する基材フィルム層が形成できる。
【0092】
前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂が類似の大きさを有すると、以後の混合、溶融または押出段階で原料チップが互いにかたまる現象または不均一な形状または領域が現れる現象を最小化することができ、これにより、フィルムの全体領域にわたって均一な厚さを有する基材フィルム層を形成することができる。前記製造方法で使用可能な前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂の大きさは大きく制限されるわけではない。
【0093】
一方、前記基材フィルムを製造する段階において、フィルムの巻取速度は、冷却不良および配向度増加の問題点を防止するために適切な速度を維持することが好ましく、例えば、巻取速度を最大限抑制して、100m/min以下、好ましくは50m/min以下の速度を適用することができる。
【0094】
一方、前記基材フィルムを形成する段階では、押出機の吐出量とダイの幅またはギャップ、そして、冷却ロールの巻取速度などを組み合わせて吐出される溶融樹脂シートの厚さを調節したり、Air KnifeとAir nozzle、静電気Edge Pinnig装置を用いて均一に密着させて冷却させることにより、基材フィルムの厚さを30〜300μmに調節することができる。
【0095】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体とを6:4〜3:7の重量比で混合する段階をさらに含むことができる。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され得、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。このような混合段階では、高分子樹脂の混合に使用可能と知られている装置または方法を特別な制限なく使用することができる。
【0096】
前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体は、混合された後に原料供給部(feeder)に注入されるとよく、原料供給部に順次的または同時に注入されて混合されてもよい。
【0097】
上述のように、前記共重合体は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを6:4〜3:7の重量比で含むことができる。
【0098】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階を含むことができる。
【0099】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記基材フィルム層の一表面に塗布することによって形成されるとよく、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着フィルムを前記基材フィルム層の一面にラミネートさせることによっても形成可能である。
【0100】
好ましくは、このような接着層の形成段階は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記形成された基材フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法で進行させることができる。前記形成される接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの厚さを有することができる。前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0101】
前記特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤に関するより具体的な内容は、上述の通りである。
【0102】
前記接着剤の塗布には、通常使用される塗布またはコーティング方法または装置を特別な制限なく使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法またはスプレー法や、または浸漬法を用いることができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法またはバー(Bar)コーティング法を用いることが、接着剤の均一な塗布およびコーティングの面で好ましい。
【0103】
前記基材フィルムの一表面または両表面上に前記接着層を形成した後には、乾燥および接着剤反応を同時に進行させることもできるが、接着剤の反応性の面を考慮して、乾燥段階を経た後、熱処理反応段階に分けて進行させることができ、接着層の厚さあるいは多段の接着剤を適用するために、前記接着層の形成および乾燥と反応段階を数回適用することができる。また、前記基材フィルムに接着剤を塗布した後、100〜150℃で略30秒〜3分間熱処理条件で固化および反応させる方法で熱処理反応を行うことができる。
【0104】
上述のように、前記基材フィルム層に上述した接着層が形成されても上述した基材フィルムの伸張特性が大きく変化しないため、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、上述した基材フィルムのような伸張特性を有することができる。例えば、前記タイヤインナーライナ用フィルムの初期2%伸張時、第1方向の引張モジュラスに対する前記第1方向に垂直な第2方向の引張モジュラスの割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向の降伏強度に対する前記第1方向に垂直な第2方向の降伏強度の比が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0105】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向のフラット(Flat)伸度と前記第1方向に垂直な第2方向のフラット(Flat)伸度がそれぞれ150%以上、好ましくは200%〜400%であり得る。そして、前記タイヤインナーライナ用フィルムの第1方向のフラット(Flat)伸度に対する第2方向のフラット(Flat)伸度の割合が0.9〜1.1、好ましくは0.92〜1.08であり得る。
【0106】
前記共重合体または混合物を形成する段階、または共重合体を溶融および押出する段階では、耐熱酸化防止剤または熱安定剤などの添加剤を追加的に添加することができる。前記添加剤に関する具体的な内容は、上述の通りである。
【0107】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記接着層上に常温で初期モジュラスが1500Mpa以上の高分子フィルムを含む離型フィルム層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0108】
このような離型フィルム層は、通常知られている高分子フィルムの積層方法または高分子樹脂の塗布またはコーティング方法などにより前記接着層上に形成できる。また、基材フィルムに接着剤を塗布した後に巻き取る段階において、前記離型フィルム層を共に巻取することにより、粘着層上に前記離型フィルム層を積層させることもできる。
【0109】
具体的には、前記離型フィルム層を形成する段階は、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択された1種以上の高分子を前記接着層上に塗布して、5um〜50umの厚さの離型フィルム層を形成する段階;またはポリオレフィン系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択された1種以上の高分子を含むフィルムを前記接着層上に積層して、5um〜50umの厚さの離型フィルム層を形成する段階;を含むことができる。
【0110】
上述のように、前記離型フィルム層は1500Mpa以上、好ましくは2000Mpa以上の初期モジュラスを有することができる。そして、前記離型フィルム層に含まれている高分子フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、これらの混合物またはこれらの共重合体を含むことができる。前記離型フィルム層は5〜50um、好ましくは8〜35umの厚さを有することができる。
【発明の効果】
【0111】
本発明によれば、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、フィルムの全方向に均一な物性を有して優れた成形性および向上した耐久性を有するタイヤインナーライナ用フィルムおよびタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】実施例および比較例によるフィルムの縦方向のStress−Strainグラフを示したものである。
図2】タイヤの構造を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0113】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0114】
<実施例:タイヤインナーライナ用フィルムの製造>
実施例1
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)40重量%と、絶対重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位それぞれ50重量%ずつ含む)60重量%とを混合し、260℃の温度で前記混合物をダイギャップ0.6mmの条件下でT−ダイに溶融押出した。この時得られる溶融フィルムをダイ出口から水平距離30mm以内に冷却ロール(15℃に維持、回転速度:15m/min)に固定、冷却および固化させて、押出機の吐出量をG/Pに調整して、70μmの厚さを有する未延伸基材フィルムを得た。前記基材フィルムの厚さはゲージテスタを用いて測定した。
【0115】
前記溶融フィルムを冷却ロールに接地させる段階では、接地位置から水平距離30mmの位置にAir Knifeをおいて接地されるシートの接地線両端5mm前後にEdge Pinningを設けて、空気圧および静電気で溶融フィルムを冷却ロールに密着させた。
【0116】
(2)接着剤の塗布
レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:2のモル比で混合した後、縮合反応させて、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物を得た。前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物12重量%と、スチレン/ブタジエン−1,3/ビニルピリジンラテックス88重量%とを混合して、濃度20%のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を得た。
【0117】
そして、このようなレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、グラビアコータを用いて1umの厚さに前記基材フィルム上にコーティングし、150℃で1分間乾燥および反応させて、接着層を形成した。
【0118】
実施例2
樹脂の押出温度を270℃、ダイギャップを0.8mmとし、10m/minで回転する冷却ロールを用いて100um厚さの未延伸フィルムを製造した点を除いて、実施例1と同様の方法でタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0119】
実施例3
樹脂の押出温度を280℃、ダイギャップを1.0mmとし、8m/minで回転する冷却ロールを用いて120um厚さの未延伸フィルムを製造した点を除いて、実施例1と同様の方法でタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0120】
実施例4
4200Mpaの初期モジュラスおよび12μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート延伸フィルムをロール形態に製作した。そして、前記実施例1の基材フィルムに接着剤を塗布した後の巻取段階において、前記ポリエチレンテレフタレート延伸フィルムを共に巻取って、前記接着層上に離型フィルムが積層されるようにした。
【0121】
<比較例:タイヤインナーライナ用フィルムの製造>
比較例1
ブチルゴムに離型剤および加工剤を投入して混合した後、精錬して、厚さ70μmのタイヤインナーライナフィルムを得て、1μm厚さの接着ゴム(タイガム)を前記インナーライナフィルム上に形成させた。
【0122】
比較例2
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.3のポリアミド系樹脂(ナイロン6)90重量%と、絶対重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位50重量%およびポリエーテル系繰り返し単位50重量%ずつ含む)10重量%とを混合した点を除いて、実施例1と同様の方法で基材フィルムを製造した。
【0123】
(2)接着剤の塗布
前記実施例1と同様にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を製造し、これを前記基材フィルム上に塗布および乾燥して、1um厚さの接着層を形成した。
【0124】
比較例3
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.3のポリアミド系樹脂(ナイロン6)20重量%と、絶対重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位20重量%およびポリエーテル系繰り返し単位80重量%ずつ含む)80重量%とを混合した点を除いて、実施例1と同様の方法で基材フィルムを製造した。
【0125】
(2)接着剤の塗布
前記実施例1と同様にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を製造し、これを前記基材フィルム上に塗布および乾燥して、1um厚さの接着層を形成した。
【0126】
比較例4
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)40重量%と、絶対重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位それぞれ50重量%ずつ含む)60重量%とを混合し、260℃の温度で前記混合物をダイギャップ2.0mmの条件下でT−ダイに溶融押出して得られる溶融フィルムを、ダイ出口から水平距離30mm以内に冷却ロール(15℃に維持、回転速度:15m/min)に固定、冷却および固化させて、70μmの厚さを有する未延伸基材フィルムを得た。前記基材フィルムの厚さはゲージテスタを用いて測定した。
【0127】
前記溶融フィルムを冷却ロールに接地する段階では、接地位置から水平距離30mmの位置にAir Knifeをおいて接地されるシートの接地線両端5mm前後にEdge Pinningを設けて、空気圧および静電気で溶融フィルムを冷却ロールに密着させた。
【0128】
(2)接着剤の塗布
前記得られた基材フィルムを使用した点を除いて、実施例1と同様の方法で接着層を形成した。
【0129】
<実験例:タイヤインナーライナ用フィルムの物性の測定>
実験例1.基材フィルムのモジュラス、降伏強度およびフラット(Flat)伸度の測定
前記実施例および比較例で得られたインナーライナ用フィルムの縦方向および横方向(MD、Machine Direction)を基準として、モジュラス、降伏強度およびフラット(Flat)伸度を測定した。具体的な測定方法は、次の通りである。
【0130】
(1)測定機器:万能材料試験機(Model4204、Instron社)
(2)測定条件:1)Head Speed300mm/min、2)Grip Distance100mm、3)Sample Width10mm、4)25℃および60RH%雰囲気
(3)各5回測定し、その平均値を求めた。
【0131】
そして、前記で測定したデータから得られる応力−変形曲線において、1)初期伸度2%で「応力−伸度グラフの傾き値」をモジュラスとし、2)降伏強度は、「応力−伸度グラフの0〜50%の伸張区間で現れる応力の最大値」とし、3)フラット伸度は、応力/伸度グラフの降伏点以上の伸張区間で、応力が降伏強度発現点と同一になる地点での伸び率(または降伏点以上の伸張区間で、S−Sカーブの傾きの変化が最も大きい地点での伸び率)とした。
【0132】
実験例2:酸素透過度実験
前記実施例および比較例で得られたタイヤインナーライナフィルムの酸素透過度を測定した。具体的な測定方法は、次の通りである。
【0133】
(1)酸素透過度:ASTM D3895の方法で、Oxygen Permeation Analyzer(Model8000、Illinois Instruments社製品)を用いて、25度、60RH%雰囲気下で測定した。
【0134】
実験例3:空気圧維持性能の測定
前記実施例および比較例のタイヤインナーライナフィルムを適用して、205R/65R16規格に適用してタイヤを製造した。そして、製造されたタイヤをASTM F1112−06法を用いて、21℃の温度、101.3kPaの圧力下で90日間の空気圧維持率(IPR Internal Pressure Retention)を測定して比較評価した。
【0135】
前記実験例1〜3の結果を、下記表1に示した。そして、実施例および比較例で得られた基材フィルムを縦方向にStrainした時に現れるStressに関するグラフを、図1に示した。
【0136】
[表1]実験例1〜3の結果
前記表1に示されているように、実施例のタイヤインナーライナ用フィルムは、200cc/m*24hr*atm以下の空気透過度を示して、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤ製造過程でさほど大きくない力を加えても容易に伸張または変形させることができ、グリーンタイヤまたは最終タイヤの成形性に優れていることが確認された。
【0137】
そして、前記実施例で得られた基材フィルムは、フィルムの全方向に均一な物性を有し、特にフィルムの縦方向および横方向間の物性の差がほとんどないことが確認された。具体的には、前記基材フィルムの伸張時、縦方向引張モジュラスと横方向引張モジュラスとの比、縦方向降伏強度と横方向降伏強度との比、および縦方向フラット(Flat)伸度と横方向フラット(Flat)伸度との比がいずれも0.9〜1.1の範囲内であることが確認された。また、前記タイヤインナーライナフィルムの縦方向フラット(Flat)伸度と横方向フラット(Flat)伸度はそれぞれ150%以上であることが確認された。
【0138】
そして、図1に示されているように、実施例1〜3のタイヤインナーライナ用フィルムは、Strain−Stressグラフにおいてフラット伸度が150%以上の水準であり、グラフの初期傾きも相対的に小さく、低いモジュラス特性および優れた成形特性を示すことができることが確認された。
【0139】
これに対し、比較例4のタイヤインナーライナ用フィルムは、フラット伸度区間が150%未満と小さく、グラフの初期傾きも高く、降伏点が相対的に高くなってタイヤの成形性またはその他の物性が実際のタイヤに適用するのに十分でないことが明らかになった。また、比較例2のタイヤインナーライナ用フィルムは、降伏点が過度に高く、フラット伸度区間を有することができず、一般的なタイヤ製造工程で成形するのが容易でないことが確認された。そして、比較例1および3のタイヤインナーライナ用フィルムの場合、モジュラスおよびフラット伸度は良好であるが、空気遮断性が不足して、実際のタイヤに適用するのに適しないことが確認された。
【0140】
実験例4.成形の容易性の測定
前記実施例4のタイヤインナーライナフィルムを適用して、205R/65R16規格に適用してタイヤを製造した。タイヤ製造工程中、グリーンタイヤの製造後に製造の容易性および外観を評価し、以降、加硫後のタイヤの最終外観を検査した。
【0141】
結果的に、実施例4のタイヤインナーライナ用フィルムは、適切なモジュラス特性および降伏強度特性を有してタイヤ製造過程で適切な成形性を示すことができるだけでなく、離型フィルムを含み、長期間保管時に発生する製品の損傷またはブロッキング現象を防止し、タイヤ製造工程での作業性を向上させることができる。
【0142】
具体的には、実施例4のタイヤインナーライナを使用する場合、タイヤを製造するために、ロールからフィルムを巻き戻す間に両面の接着液が互いにくっついて融着してフィルムの変形が誘発される現象を防止することができ、ロールから巻き戻したフィルムは、接着液が一方にくっついてゴムとの接着がきちんと発現しない現象を防止することができた。
図1
図2