(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、発明者等が得た知見について説明する。
【0013】
発明者等は、シラザン結合(≡Si−N=結合、以下、−Si−N−結合とも表記する)を含有する膜が表面に形成された基板、例えば、ポリシラザン(SiH
2NH、以下、PHPSともいう)を表面に塗布してポリシラザン膜を形成した基板を処理液や処理ガスで処理すると、複数の異物(パーティクル)が発生し、処理後の基板上に付着することがあるという課題を見出した。また、異物の発生により、品質を保つことができず、微細化を阻害させることがあるという課題を見出した。さらに、これらに付随し、品質を確保した基板処理を継続し続けることができず、製造スループットが悪化することがあるという課題を見出した。
【0014】
発明者等は、これら課題の原因を以下の点であると推察した。
【0015】
まず、ポリシラザン膜は、ポリシラザン溶液の塗布と、プリベークと、により形成される。しかしながら、このプリベークでは、ポリシラザンの塗布膜中の溶剤や不純物を完全に除去させることは困難である。そのため、その後に行われる改質処理工程で、プリベーク後のポリシラザン膜中に残存している溶剤が膜中から離脱し、処理容器内にアウトガスとして放出され、基板に再付着して反応を起こしてしまうことがある。
【0016】
また、プリベークや改質処理工程において、分子量の低いポリシラザンが塗布膜中から離脱し、処理容器内にアウトガスとして放出され、基板に再付着して残存溶剤と反応することがある。その結果、基板表面に、SiOの異物もしくは不純物として付着してしまうことがある。
【0017】
また、改質処理工程において、処理液として用いられる過酸化水素(H
2O
2)水に含まれる不純物と、ポリシラザン膜中に残存している溶剤などと、が反応し、副生成物が生成されることがある。
【0018】
これらの原因を踏まえて鋭意研究した結果、発明者等は、ポリシラザン膜を改質した後の乾燥処理工程で、ポリシラザン塗布後のプリベーク時の温度以下の温度で基板を乾燥させること、または、処理液の純度を高めること、または、これらの手法を組み合わせること等で、上述の課題を解決できることを見出した。
【0019】
<本発明の第1の実施形態>
以下、本発明の好ましい実施の形態の一つである第1の実施形態について、図面を参照してより詳細に説明する。
【0020】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態に係る基板処理装置の構成について、主に
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る基板処理装置の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示している。
図2は、本実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉202の縦断面概略図である。
【0021】
(処理容器)
図1に示すように、処理炉202は処理容器(反応管)203を備えている。処理容器203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。処理容器(反応管)203の筒中空部には、処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0022】
処理容器203の下部には、処理容器203の下端開口(炉口)を気密に封止(閉塞)可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、処理容器203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は円板状に形成されている。基板の処理空間となる処理室201は、主に、処理容器203とシールキャップ219とで構成される。
【0023】
(基板支持部)
基板支持部(基板保持部)としてのボート217は、複数枚のウエハ200を多段に保持できるように構成されている。ボート217は、複数枚のウエハ200を保持する複数本の支柱217aを備えている。支柱217aは例えば3本備えられている。複数本の支柱217aは、それぞれ、底板217bと天板217cとの間に架設されている。複数枚のウエハ200は、支柱217aにより、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させられ、管軸方向に多段に保持されるように構成されている。天板217cの外径は、ボート217に保持されるウエハ200の最大外径よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
支柱217a、底板217b、天板217cの構成材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、炭化シリコン(SiC)、酸化アルミニウム(AlO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の熱伝導性の高い非金属材料が用いられる。特に、上述の構成材料として、熱伝導率が10W/mK以上である非金属材料を用いることが好ましい。熱伝導率が問題にならなければ、上述の構成材料として、石英(SiO)などを用いてもよい。また、金属によるウエハ200への汚染が問題にならなければ、支柱217a、天板217cを、例えばステンレス(SUS)等の金属材料で形成してもよい。支柱217a、天板217cの構成材料として金属を用いる場合、これらの金属部材に、セラミックやテフロン(登録商標)などの被膜を形成してもよい。
【0025】
ボート217の下部には、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱材料からなる断熱体218が設けられており、第1の加熱部207からの熱がシールキャップ219側へ伝わりにくくなるように構成されている。断熱体218は、断熱部材として機能すると共にボート217を保持する保持体としても機能する。断熱体218は、図示するように円板形状に形成された断熱板が水平姿勢で多段に複数枚設けられたものに限らず、例えば円筒形状に形成された石英キャップ等であってもよい。また、断熱体218は、ボート217の構成部材の1つとして考えてもよい。
【0026】
(昇降部)
処理容器203の下方には、ボート217を昇降させて処理容器203の内外へ搬送する昇降部としてのボートエレベータが設けられている。ボートエレベータには、ボートエレベータによりボート217が上昇された際に炉口を封止するシールキャップ219が設けられている。
【0027】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267の回転軸261は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。ボート回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。
【0028】
(第1の加熱部)
処理容器203の外側には、処理容器203の側壁面を囲う同心円状に、処理容器203内のウエハ200を加熱する第1の加熱部207が設けられている。第1の加熱部207は、ヒータベース206により支持されて設けられている。
図2に示すように、第1の加熱部207は、第1〜第4のヒータユニット207a〜207dを備えている。ヒータユニット207a〜207dはそれぞれ、処理容器203内におけるウエハ200の配列方向に沿って設けられている。
【0029】
処理容器203内には、加熱部としてのヒータユニット207a〜207d毎に、ウエハ200または周辺温度を検出する温度検出器として、例えば熱電対等の第1〜第4の温度センサ263a〜263dが設けられている。温度センサ263a〜263dは、それぞれ、処理容器203とボート217との間にそれぞれ設けられている。なお、温度センサ263a〜263dは、それぞれ、ヒータユニット207a〜207dによりそれぞれ加熱される複数枚のウエハ200のうち、その中央に位置するウエハ200の温度を検出するように設けられてもよい。
【0030】
第1の加熱部207、温度センサ263a〜263dには、
図3に示す温度制御コントローラ400を介して後述するコントローラ121が電気的に接続されている。コントローラ121は、処理容器203内のウエハ200の温度が所定の温度になるように、温度センサ263a〜263dによりそれぞれ検出された温度情報に基づいて、ヒータユニット207a〜207dへの供給電力を所定のタイミングにてそれぞれ制御するように構成されている。また、コントローラ121は、ヒータユニット207a〜207d毎に個別に温度設定や温度調整を行うことができるように構成されている。
【0031】
(ガス供給部)
図1,
図2に示すように、処理容器203と第1の加熱部207との間には、処理液供給ノズル501が設けられている。処理液供給ノズル501は、例えば熱伝導率の低い石英等により形成されている。処理液供給ノズル501は二重管構造を有していてもよい。処理液供給ノズル501は、処理容器203の外壁の側部に沿って配設されている。処理液供給ノズル501の先端(下流端)は、処理容器203の頂部(上端開口)に気密に接続されている。処理容器203の上端開口に接続された処理液供給ノズル501の先端には、供給孔502が設けられている。供給孔502は、処理液供給ノズル501内を流れる処理液を、処理容器203内に収容されたボート217の上部に設けられた気化器217dに向かって供給するように構成されている。後述の例では、供給孔502は、気化器217dに向けて処理液を滴下するように構成されている。ただし、供給孔502の構成はこのような態様に限定されず、例えば、供給孔502から気化器201dに向けて処理液を噴射するように構成してもよい。ガス供給部は、主に、気化部としての気化器217d、処理液供給ノズル501、および、処理液供給部としての供給孔502で構成されている。
【0032】
また、上述のガス供給部には、酸素含有ガス供給部602を含めるように構成してもよい。酸素含有ガス供給部602は、酸素含有ガスを供給するガス供給管602cを備えている。ガス供給管602cには、上流側から順に、バルブ602a、ガス流量制御部(マスフローコントローラ)602b、バルブ601dが設けられている。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)ガス、亜酸化窒素(NO)ガスの少なくとも1つ以上を含むガスが用いられる。また、ガス供給管602cには、酸素含有ガスを加熱するガス加熱部602eが設けられている。ガス加熱部602eは、ガス供給管602c内を流れる酸素含有ガスを、例えば80〜150℃程度、好ましくは100℃〜120℃程度の温度に加熱するように構成されている。酸素含有ガスを加熱することで、気化器217dに供給された処理液の気化を補助することができる。また、処理容器203内に供給された処理ガスの液化を抑制することができる。なお、酸素含有ガスの加熱は、上述の第1の加熱部で行われるように構成してもよい。
【0033】
処理液供給ノズル501の上流端には、処理液を供給する処理液供給管289aの下流端が接続されている。処理液供給管289aには、上流方向から順に、液体流量制御ユニット300と、パージガス供給部601と、が設けられている。
【0034】
(液体流量制御ユニット)
液体流量制御ユニット300は、処理液を供給する流体管310aを備えている。液体管310aの下流端は、処理液供給管289aの上流端に接続されている。流体管310aには、上流側から順に、リザーブタンク301、オートバルブ302a、ハンドバルブ303a、フィルタ304、オートバルブ302b、液体流量コントローラ(LMFC)305、バルブ302c,302dが設けられている。液体管310aの上流端は、リザーブタンク301内に貯留された処理液の液面以下に位置するように設けられている。リザーブタンク301には、圧送ガス供給部、ガス排出部、処理液排出部が接続されている。リザーブタンク301の容量は1〜5リットルとするのが好ましく、例えば2リットルとすることができる。リザーブタンク301の容量は、後述の基板処理工程が2回以上連続で実行できる容量とするのが好ましい。
【0035】
圧送ガス供給部は、圧送ガスを供給するガス管310bを備えている。ガス管310bには、上流側から順に、オートバルブ302e、気体流量コントローラ(MFC)309、オートバルブ302f,302g、ハンドバルブ303bが設けられている。ガス管310bの下流端は、リザーブタンク301内に貯留された処理液の液面上方に位置するように設けられている。少なくとも、ガス管310b、オートバルブ302g、MFC309により圧送ガス供給部が構成されている。オートバルブ302e,302f、ハンドバルブ303bを圧送ガス供給部に含めて考えてもよい。圧送ガス供給部からリザーブタンク301内に圧送ガスとして例えば窒素(N
2)ガスを供給することによって、リザーブタンク301内からフィルタ304に向けて処理液が圧送される。
【0036】
ガス排出部は、ガス管310cを備えている。ガス管310cには、上流側から順に、ハンドバルブ303c、オートバルブ302hが設けられている。ガス管310cの上流端は、リザーブタンク301内に貯留された処理液の液面上方に位置するように設けられている。少なくとも、ガス管310c、オートバルブ302hにより、ガス排出部が構成されている。ハンドバルブ303cをガス排出部に含めて考えてもよい。
【0037】
流体管310aにおけるオートバルブ302cと302dの間には、ドレイン管310eが接続されている。ドレイン管310eには、オートバルブ302iが設けられている。また、フィルタ304には、ガス管310dが接続されている。ガス管310dの下流端は、ドレイン管310eにおけるオートバルブ302iの下流側に接続されている。ガス管310dには、オートバルブ302jが設けられている。フィルタ304は、リザーブタンク301から供給された処理液中に含まれる気体を取り出し、液体だけを流体管310aを介してLMFC305に送り出すように構成されている。処理液中に含まれていた気体は、ガス管310d、ドレイン管310eを介して排出される。フィルタ304から送り出された処理液は、LMFC305により流量制御され、処理液供給管289a内に供給される。
【0038】
パージガス供給部601は、パージガスを供給するパージガス供給管601cを備えている。パージガス供給管601cには、上流側から順に、オートバルブ601a、MFC601b、オートバルブ601dが設けられている。パージガス供給管601cの下流端は、処理液供給管289aに接続されている。パージガスとしては、ウエハ200やウエハ200に形成された膜に対して反応性の低い不活性ガスを用いることが好ましく、例えば、窒素(N
2)ガスや、Ar(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、Ne(ネオン)ガスなどの希ガスが用いられる。
【0039】
(排気部)
処理容器203の下方には、処理室201内のガスを排気する第1の排気管231の上流端が接続されている。第1の排気管231には、上流側から順に、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ255、真空ポンプ(排気装置)246aが設けられている。第1の排気管231におけるAPCバルブ255の上流側には、第2の排気管243が接続されている。第2の排気管243には、上流側から順に、APCバルブ240、分離器244、真空ポンプ(排気装置)246bが設けられている。分離器244には、液体回収タンク247が接続されている。
【0040】
処理室201内は、真空ポンプ246a,246bで発生する負圧によって排気される。なお、APCバルブ255,240は、弁の開閉により処理室201内の排気および排気停止を行うことができる開閉弁であり、また、弁開度の調整により処理室201内の圧力を調整することができる圧力調整弁でもある。第1の排気管231におけるAPCバルブ255の上流側には、圧力検出器としての圧力センサ223が設けられている。圧力センサ223には、後述するコントローラ121(
図3参照)が電気的に接続されている。コントローラ121は、圧力センサ223により検出された圧力情報に基づいて、APCバルブ255,240の弁開度を制御し、処理室201内の圧力が所望の圧力となるよう、所望のタイミングで制御するように構成されている。
【0041】
主に、第1の排気管231、APCバルブ255、圧力センサ223により第1の排気部が構成されている。真空ポンプ246aを第1の排気部に含めて考えてもよい。また、第2の排気管243、APCバルブ240により第2の排気部が構成されている。第1の排気管231における第2の排気管243との接続部よりも上流側、圧力センサ223、分離器244、真空ポンプ246bを第2の排気部に含めて考えてもよい。本明細書では、第1の排気部および第2の排気部のうちいずれか、或いは、両方を、単に排気部とも称する。
【0042】
(第2の加熱部)
後述する基板処理工程において、反応物として例えば過酸化水素を用い、処理ガスとして例えば過酸化水素ガスを用いる場合、過酸化水素ガスが、処理容器203内で過酸化水素の気化点よりも低い温度に冷却され、再液化してしまう可能性がある。なお、過酸化水素ガスとは、例えば、液体状態の過酸化水素である過酸化水素水を、気化またはミスト化させたものをいう。
【0043】
過酸化水素ガスの再液化は、処理容器203内における第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域で発生してしまう場合が多い。第1の加熱部207は、上述したように処理容器203内のウエハ200を加熱するように設けられている。そのため、処理容器203内のウエハ200が収容された領域は、第1の加熱部207により適正に加熱されることとなる。しかしながら、処理容器203内におけるウエハ200の収容領域以外の領域は、第1の加熱部207では加熱されにくい。その結果、処理容器203内における第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域は比較的低温となりやすく、過酸化水素ガスが、この低温の領域を通過する際に冷却され、再液化してしまう場合がある。
【0044】
過酸化水素ガスが再液化して生じてしまった液体(以下、単に「液体」ともいう)は、処理容器203内の底部、例えば、シールキャップ219の上面等に溜まる場合がある。このため、再液化された過酸化水素とシールキャップ219とが反応し、シールキャップ219が損傷を受けてしまう場合がある。
【0045】
また、液体がシールキャップ219上に溜まっていると、シールキャップ219を下降させて炉口(処理容器203の下端開口)を開放した際、シールキャップ219上の液体が炉口から処理容器203の外部へ落ちる場合がある。このため、処理炉202の炉口周辺の部材が損傷を受ける場合があるとともに、作業員等が安全に処理炉202付近に立ち入ることができない場合がある。
【0046】
過酸化水素水は、例えば常温で固体または液体である原料(反応物)として過酸化水素(H
2O
2)を用い、溶媒として水(H
2O)を用い、過酸化水素を水に溶解させることで製造されている。過酸化水素の沸点(気化点)は、水の沸点よりも高いことが知られている。このため、過酸化水素ガスが再液化して生じた液体は、処理容器203内に供給される際の過酸化水素水と比べ、過酸化水素の含有濃度が高くなる場合がある。
【0047】
そして、過酸化水素ガスが再液化することで生じた液体が処理容器203内で再び気化され、気化ガスが再び発生する場合がある(以下、このガスを「再気化ガス」ともいう)。上述したように、過酸化水素と水とは気化点が異なり、先に水が蒸発して排気される。そのため、再気化ガスは、ウエハ200に供給された直後の過酸化水素ガスと比べ、過酸化水素の濃度が高くなる場合がある。
【0048】
従って、再気化ガスが発生した処理容器203内では、過酸化水素ガスの濃度が不均一になる場合がある。例えば、高濃度の過酸化水素水が溜まりやすい処理容器203内の底部では、それ以外の場所に比べ、過酸化水素ガスの濃度が高くなる傾向がある。その結果、処理容器203内の複数枚のウエハ200間での基板処理が不均一になり、基板処理の特性にバラツキが生じる場合がある。また、ロット間での基板処理が不均一になる場合もある。
【0049】
また、過酸化水素の再液化と再気化とが繰り返されることで、過酸化水素の濃度が高まっていく場合がある。その結果、過酸化水素水の高濃度化による爆発や燃焼が発生するおそれもある。
【0050】
これらの課題を解決するため、本実施形態では、
図1および
図2に示すように、第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域を加熱するように、第2の加熱部280を設けることとしている。第2の加熱部280は、例えば、処理容器203の下部の外側(外周)に、処理容器203の側壁面を同心円状に囲うように設けることが好ましい。
【0051】
第2の加熱部280は、第1の排気管231へ向かって処理容器203の上側(上流側)から下側(下流側)へ流れる過酸化水素ガスを、処理容器203内の下流側(すなわち処理容器203内の断熱体218が収容される領域)で加熱するように構成されている。また、第2の加熱部280は、処理容器203の炉口部周辺の部材、すなわち、処理容器203の下端開口を封止するシールキャップ219、処理容器203の下部、処理容器203内の底部に配設される断熱体218等の、処理容器203の下部を構成する部材を加熱するように構成されている。言い換えれば、第2の加熱部280は、ボート217が処理室201内に搬入された際における底板217bの位置よりも下方の領域を構成する部材を加熱するように構成されている。
【0052】
第2の加熱部280には、後述するコントローラ121が電気的に接続されている。コントローラ121は、処理容器203内の温度を、処理容器203内の下流側において処理ガス(過酸化水素ガス)の液化を抑制できるような温度(例えば100℃から300℃)とするように、第2の加熱部280への供給電力を所定のタイミングにて制御するように構成されている。第2の加熱部280による処理容器203の炉口部の加熱は、少なくとも、処理容器203内に処理液が供給されている間は継続して行われる。好ましくは、ウエハ200が処理容器203内に搬入された後から搬出される前まで継続して行われる。第2の加熱部280を用いた加熱を行うことによって、炉口部での処理ガスの液化や、パーティクルや不純物などの炉口部への付着を防止することができる。また、第2の加熱部280を用いた加熱をウエハ200の搬入直後から開始することによって、処理ガス供給前の環境を整える時間を短縮することができる。
【0053】
(制御部)
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0054】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0055】
I/Oポート121dは、上述のLMFC305、MFC309,601b,602b、オートバルブ302a〜302j,601a,601d,602a,602d、シャッタ252、254、256、APCバルブ255,240、真空ポンプ246a,246b、圧力センサ223、第1の加熱部207(207a,207b,207c,207d)、第2の加熱部280、温度センサ263a〜263d、ボート回転機構267、ブロア回転機構259等に接続されている。
【0056】
CPU121aは、記憶装置121cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、LMFC305による処理液の流量調整動作、MFC309,601b,602bによるガスの流量調整動作、オートバルブ302a〜302j,601a,601d,602a,602dの開閉動作、シャッタ252,254,256の遮断動作、APCバルブ255,240の開閉調整動作、温度センサ263a〜263dに基づく第1の加熱部207の温度調整動作、第2の加熱部280の温度調整動作、真空ポンプ246a,246bの起動及び停止、ブロア回転機構259の回転速度調節動作、ボート回転機構267の回転速度調節動作、等を制御するように構成されている。
【0057】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0058】
(2)事前処理工程
ここで、基板としてのウエハ200に対して後述の基板処理工程を施す前に行われる事前処理工程について、
図4を用いて説明する。
【0059】
図4に示すように、ウエハ200には、ポリシラザン(PHPS)塗布工程(T20)と、プリベーク工程(T30)と、が順に施される。PHPS塗布工程(T20)では、塗布装置(不図示)を用いてウエハ200の表面にポリシラザンを塗布する。塗布されたポリシラザンの厚さは、ポリシラザンの分子量、ポリシラザン溶液の粘度、コータの回転数によって調整される。プリベーク工程(T30)では、ウエハ200の表面に塗布されたポリシラザンから溶剤が除去される。具体的には、ポリシラザンを塗布したウエハ200を70℃〜250℃程度の温度に加熱することで、ポリシラザンの塗布膜中から溶剤を揮発させる。この加熱処理は、好ましくは150℃程度で行われる。
【0060】
ウエハ200としては、表面に微細構造である凹凸構造を有するシリコン基板等を好適に用いることができる。ウエハ200の表面に供給されたポリシラザンは、少なくとも凹部(溝)内に充填され、溝内には、シラザン結合を有するシリコン(Si)含有膜が形成されることとなる。後述の基板処理工程では、このシラザン結合を有するSi含有膜が形成され、この膜にプリベークが施されているウエハ200に対し、処理ガスとして過酸化水素水の気化ガスを供給して改質処理を行う例について説明する。なお、Si含有膜には、Siや窒素(N)、水素(H)が含まれており、場合によっては、炭素(C)や他の不純物が混ざっている可能性がある。なお、微細構造を有する基板とは、基板の表面に対して垂直方向に深い溝(凹部)が形成された基板や、基板の表面に対して平行方向に例えば10nm〜30nm程度の幅の狭い溝(凹部)が形成された基板などをいう。すなわち、微細構造を有する基板とは、その表面にアスペクト比の高い凹凸構造が形成された基板をいう。
【0061】
(3)基板処理工程
続いて、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程について、
図5、
図6を用いて説明する。この工程は、上述の基板処理装置により実施される。本実施形態では、この基板処理工程の一例として、処理ガスとして過酸化水素ガスを用い、基板としてのウエハ200上に形成されたシリコン含有膜をシリコン酸化膜(SiO膜)に改質(酸化)する工程(改質処理工程)を行う場合について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0062】
過酸化水素水は、水蒸気(水、H
2O)と比較すると、活性化エネルギーが高く、1分子中に含まれる酸素原子の数が多いため、酸化力が強い。そのため、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いることで、ウエハ200表面の溝内に形成された膜の深部(溝の底部)まで酸素原子(O)を到達させることができる。従って、ウエハ200上の膜の表面部と深部との間で改質処理の度合いをより均一にすることができる。すなわち、ウエハ200に形成された膜の表面部と深部との間で、より均一な基板処理を行うことができ、改質処理後の膜の誘電率等を厚さ方向で均一化させることができる。また、、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いることで、改質処理工程を低温で行うことができ、ウエハ200上に形成された回路素子の性能劣化等を抑制することができる。なお、本実施形態においては、反応物としての過酸化水素を気化もしくはミスト化したもの(すなわち気体状態の過酸化水素)を過酸化水素ガスと呼び、液体状態の過酸化水素を処理液(過酸化水素水)と呼んでいる。
【0063】
(基板搬入工程(S10))
まず、予め指定された枚数のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータによって持ち上げて処理容器203内(処理室201内)に搬入(ボートロード)する。この状態で、処理炉202の開口部である炉口は、シールキャップ219によりシールされた状態となる。
【0064】
(圧力・温度調整工程(S20))
処理容器203内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246a,246bの少なくともいずれかによって真空排気する。また、バルブ602a,601dを開き、酸素含有ガス供給部602から処理容器203内へ酸素含有ガスを供給する。好ましくは、酸素含有ガスを、ガス加熱部602eで例えば100℃〜120℃に加熱した後に供給する。この際、処理容器203内の圧力は、圧力センサ223で測定し、この測定した圧力に基づきAPCバルブ255,240の開閉をフィードバック制御する(圧力調整)。処理容器203内の圧力は、微減圧状態、例えば700hPa〜1000hPaに調整する。
【0065】
処理容器203内に収容されたウエハ200が所定の第1温度、例えば40℃〜300℃、好ましくは70℃〜130℃となるように、第1の加熱部207によって加熱する。この際、処理容器203内のウエハ200が第1温度となるように、温度センサ263a〜263dが検出した温度情報に基づき、ヒータユニット207a〜207dへの供給電力をフィードバック制御する(温度調整)。このとき、ヒータユニット207a〜207dの設定温度は、全て同じ温度となるように制御する。さらに、処理容器203内、特に、処理容器(反応管)203の下方で、過酸化水素ガスが再液化されない温度となるように、第2の加熱部280によって加熱する。第2の加熱部280の設定温度は、例えば100℃〜200℃とする。
【0066】
また、ウエハ200を加熱しつつ、ボート回転機構267を作動して、ボート217の回転を開始する。この際、ボート217の回転速度をコントローラ121によって制御する。なお、ボート217は、少なくとも後述する改質処理工程(S30)が終了するまでの間は、常に回転させた状態を維持する。
【0067】
(改質処理工程(S30))
ウエハ200が所定の第1温度に到達し、ボート217が所望の回転速度に到達したら、処理液供給管289a、処理液供給ノズル501を介した処理容器203内への過酸化水素水の供給を開始する。
図6に、改質処理工程(S30)を80℃で開始する例、すなわち、第1温度を80℃としたときの例を示す。
【0068】
以下、改質処理工程(S30)の手順について詳しく説明する。まず、バルブ302h,302j,302iを閉じた状態で、バルブ303a,302a〜302dを開ける。次に、バルブ303b,302e〜302gを開き、圧送ガス供給源(図示せず)からリザーブタンク301内に、MFC309により流量制御しながら圧送ガスを供給する。そして、リザーブタンク301内に貯留されている過酸化水素水を、LMFC305により流量制御しながら、処理液供給管289a、処理液供給ノズル501、供給孔502を介して処理容器203内に供給する。過酸化水素水の流量は、例えば、1cc/min〜30cc/min、好ましくは5cc/min〜20cc/min、さらに好ましくは10cc/minとする。圧送ガスとしては、例えば窒素(N
2)ガス等の不活性ガスや、Heガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることができる。
【0069】
ここで、処理液供給ノズル501内には、過酸化水素ガスではなく、過酸化水素水を流すのが好ましい。というのも、処理液供給ノズル501内に過酸化水素ガスを流すと、処理液供給ノズル501の熱条件によっては、処理容器203内に供給される過酸化水素ガスの濃度にばらつきが出てしまう場合がある。この場合、処理容器203内における過酸化水素の濃度分布が不安定となり、再現性良く基板処理を行うことが難しくなる場合がある。更に、処理液供給ノズル501内における過酸化水素の濃度が高濃度となると、処理液供給ノズル501の内部が腐食してしまうこともある。そして、腐食により発生した異物が、例えば膜処理等の基板処理に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態においては、処理液供給ノズル501内に、過酸化水素ガスではなく、過酸化水素水を流すようにしている。
【0070】
処理液供給ノズル501から処理容器203内に供給された過酸化水素水は、加熱された気化部としての気化器217dに接触し、気化される。これにより、処理ガスとしての過酸化水素ガス(即ち過酸化水素水ガス)が生成されることとなる。なお、過酸化水素水の気化を促進させるため、気化器217dの上部や周囲に第3の加熱部(不図示)を設け、気化器217dを加熱するように構成してもよい。
【0071】
処理室201内で生成された過酸化水素水ガスは、第1の排気管231に向かって流れ、この過程で、ウエハ200の表面に供給されることとなる。その結果、ウエハ200の表面で酸化反応が生じ、ウエハ200上に形成されていたポリシラザン膜は、SiO膜に改質されることとなる。
【0072】
なお、処理容器203内に過酸化水素水を供給する際、上述の第2の排気系を用いて処理室201内の排気を行うことで、排気ガス中に含まれる過酸化水素を回収するようにしてもよい。この場合、APCバルブ255を閉じ、APCバルブ240を開き、処理容器203内の雰囲気を、第2の排気管243を介して排気するようにすればよい。第2の排気管243内を流れた排気ガスは、分離器244により、過酸化水素を含む液体と、過酸化水素を含まない気体と、に分離される。過酸化水素を含む液体は液体回収タンク247内に回収され、過酸化水素を含まない気体は真空ポンプ246bから排気されることとなる。
【0073】
また、処理容器203内に過酸化水素水を供給する際、APCバルブ255,240を閉じるか、その開度を小さくすることで、処理容器203内に過酸化水素ガスを封じ込め、処理容器203内を加圧するようにしてもよい。これにより、処理容器203内における過酸化水素ガスの濃度分布を均一化させることができ、ウエハ200の面内における改質処理の均一性、および、ウエハ200間における改質処理の均一性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、処理容器203内を加圧することで、上述の酸化反応を促進させ、SiO膜の膜質を向上させることも可能となる。また、酸化処理に要する時間を短縮させ、生産性を向上させることも可能となる。
【0074】
また、処理容器203内への過酸化水素水の供給を開始する前に、酸素含有ガス供給部602からの酸素含有ガスの供給を先に開始し、処理容器203内を微減圧状態に保持しておくことが好ましい。酸素含有ガスの流量(第1流量)は、例えば、1slm〜30slm、好ましくは5slm〜20slm、より好ましくは10〜20slmとすることができる。過酸化水素ガスを処理容器203に供給する際に、酸素含有ガスを供給することによって、上述の改質速度を向上させることができ、改質処理に要する時間を短縮することが可能となる。また、処理容器203内における異物の発生を抑制することも可能となる。更に、処理容器203内への過酸化水素水の供給を開始する前、すなわち、過酸化水素ガスの生成を開始する前に、処理容器203内への酸素含有ガスの供給を開始することにより、ウエハ200の面内における改質処理の均一性、ウエハ200間における改質処理の均一性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、改質処理の品質を向上させることが可能となる。というのも、酸素含有ガスを予め供給してない状態で過酸化水素ガスを発生させた場合、処理容器203の上部に設けられたウエハ200への処理と、処理容器203の下部に設けられたウエハ200への処理と、が異なるタイミングで始まり、ウエハ200間での改質処理の均一性が低下する可能性がある。また、ウエハ200面内の周縁部への処理と、ウエハ200面内の中央部への処理と、が異なるタイミングで始まり、ウエハ200面内での改質処理の均一性が低下する可能性もある。また、処理容器203内での異物の発生量が増加し、膜質の制御が困難となる可能性もある。これに対し、処理容器203内に予め酸素含有ガスを供給し、微減圧状態に保持しておくことにより、これらの課題を回避することが可能となる。
【0075】
所定時間が経過し、ポリシラザン膜の改質が終了した後、バルブ302dを閉じ、処理容器203内への過酸化水素水の供給を停止する。また、バルブ602a,601dを閉じ、処理容器203内への酸素含有ガスの供給も停止する。
【0076】
ここで、市販されている過酸化水素水には、安定剤としての酸や塩化物が含まれている場合がある。また、市販されている過酸化水素水には、不純物が混入している場合もある。不純物としては、例えば、Ag,Al,As,Au,B,Ba,Bi,Ca,Cd,Co,Cr,Cu,Fe,Ga,Ge,K,Li,Mg,Mn,Mi,Na,Ni,Pb,Sb,Si,Sn,Sr,Ta,Ti,V,Zn,Zr等の少なくとも何れかの元素が例示される。不純物は、例えば、過酸化水素水が入った容器の搬送時、保管中、基板処理装置への取り付ける際などに混入し得る。混入する不純物の量は、外部からの不純物混入を防ぐ機構が容器に備えられているか否か等により変化すると考えられるが、例えば、0.1ppm〜10ppm程度の量が例示される。発明者等は、これら安定剤や不純物と、ポリシラザン膜に残留している溶剤や不純物、または、ポリシラザンとが反応し、異物(パーティクル)が発生している可能性があることを見出した。そこで、発明者等は、高純度の過酸化水素水と、標準の過酸化水素水と、について、安定剤や不純物の含有量を調査した。その結果、高純度の過酸化水素水に含まれる安定剤や不純物の量は、標準の過酸化水素水に含まれる安定剤や不純物の量に比べて約2分の1以下となっていることが分かった。例えば、標準の過酸化水素水には酸が10ppm以下、塩化物が0.3ppm以下含まれており、高純度の過酸化水素水には酸が5ppm以下、塩化物が0.02ppm以下含まれていることが分かった。標準品を用いたときのパーティクルの数と、高純度品を用いたときのパーティクルの数と、の比較結果については後述する。
【0077】
(乾燥処理工程(S40))
改質処理工程(S30)が終了した後、ウエハ200を、上述のプリベーク工程(T30)での処理温度以下の所定の第2温度に昇温させる。第2温度は、上述の第1温度よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度に設定する。第2温度は、例えば150℃とすることができる。昇温後、温度を保持して、ウエハ200と処理容器203内とを緩やかに乾燥させる。このように乾燥させることにより、ポリシラザン膜から離脱した副生成物であるアンモニア、塩化アンモニウム、炭素、水素の他、溶媒に起因するアウトガス等の不純物、過酸化水素に起因する不純物等を、ウエハ200から、すなわち、SiO膜中やSiO膜の表面から除去することができる。また、これらの物質のウエハ200への再付着を抑制することもできる。
【0078】
なお、ウエハ200を第2温度に昇温させる前、もしくは、昇温と同時に、酸素含有ガスの流量を、上述の第1流量よりも多い第2流量にすることが好ましい。第2流量は、例えば、10slm〜40slmとすることができる。ウエハ200を第2温度に昇温させる前に酸素含有ガスの流量を多くすることで、不純物の除去効率を向上させることができる。
【0079】
(ポストベーク工程(S50))
乾燥処理工程(S40)が終了した後、ウエハ200を乾燥処理工程(S40)の第2温度よりも高温に昇温させ、窒素、酸素、又はアルゴンの少なくとも1つ以上を含む雰囲気下で熱処理する。このポストベーク処理により、SiO膜中に残存している水素を除去することができ、SiO膜を、水素の含有量の少ない良質な膜に改質することができる。すなわち、ポストベーク処理を行うことで、SiO膜の品質を向上させることができる。但し、高品質の酸化膜質が要求されるデバイス工程(例えばSTI等)以外では、製造スループットを優先させる場合がある。この場合には、ポストベーク処理を行わなくてもよい。
【0080】
(降温・大気圧復帰工程(S60))
乾燥処理工程(S40)またはポストベーク工程(S50)が終了した後、APCバルブ255,240の少なくともいずれかを開き、処理容器(反応管)203内を真空排気する。これにより、処理容器203内に残存するパーティクルや不純物を除去することができる。真空排気後、APCバルブ255,240の少なくともいずれかを閉じ、パージガス供給部601から処理容器203内にN
2ガス等の不活性ガスを供給し、処理容器203内の圧力を大気圧に復帰させる。大気圧に復帰させることで、処理容器203内の熱容量を増加させることができ、ウエハ200と処理容器203とを均一に加熱することができる。ウエハ200と処理容器203とを均一に加熱することで、真空排気で除去できなかったパーティクル、不純物、ウエハ200からのアウトガスおよび過酸化水素水に含まれていた残留不純物を、処理容器203内から除去することができる。処理容器203内の圧力が大気圧になり、所定時間経過した後、所定の温度(例えばウエハ200の挿入温度程度)に降温させる。
【0081】
また、ウエハ200を降温させつつ、第2の加熱部280への電力供給を停止して第2の加熱部280を降温させる。第2の加熱部280の降温を、上述のウエハ200の降温開始以降に開始することで、ウエハ200面内における膜質の不均一化や、ウエハ200間における膜質の不均一化を防ぐことができる。さらに、処理容器203内に生じたパーティクル、不純物、ウエハ200からのアウトガスおよび過酸化水素水に含まれていた残留不純物等が、炉口部に吸着することを抑制することができる。
【0082】
ウエハ200を降温させつつ、ブロア257を作動させた状態で、シャッタ252,254,256を開けてもよい。そして、冷却ガス供給管249から、冷却ガスを、マスフローコントローラ251により流量制御しながら処理容器203と断熱部材210との間の空間260内に供給し、冷却ガス排気管253から排気してもよい。冷却ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Heガス、Neガス、Arガス等の希ガスや、空気等を単独であるいは混合して用いることができる。これにより、空間260内を急冷させ、空間260内に設けられている処理容器203や第1の加熱部207を短時間で冷却することができる。また、処理容器203内のウエハ200をより短時間で降温させることができる。
【0083】
なお、シャッタ254,256を閉じた状態で、冷却ガス供給管249から冷却ガスを空間260内に供給し、空間260内を冷却ガスで充満させることで上述の冷却処理を行ってもよい。その後、ブロア257を作動させた状態でシャッタ254,256を開け、空間260内の冷却ガスを、冷却ガス排気管253から排気してもよい。
【0084】
(基板搬出工程(S70))
その後、ボートエレベータによりシールキャップ219を下降させて処理容器203の下端を開口するとともに、処理済みウエハ200をボート217に保持した状態で処理容器203の下端から処理容器203(処理室201)の外部へ搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済みウエハ200をボート217より取り出し(ウエハディスチャージ)、本実施形態の基板処理工程を終了する。
【0085】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0086】
(a)改質処理工程(S30)が終了した後で、ウエハ200を改質処理温度以上、プリベーク工程(T30)の温度以下で乾燥処理工程(S40)を行うことにより、ウエハ200上に発生するパーティクルの数を抑制することができる。
【0087】
図7に、従来技術によるプロセスシーケンス例を示す。また、
図8に、
図6と
図7の条件でそれぞれ処理されたウエハ200上のパーティクルの数を測定した結果を示す。なお、
図6,
図7の実線はウエハ200の温度を、二点鎖線は処理室201内の圧力を示している。
図6は、改質処理工程(S30)を80℃で行い、乾燥処理工程(S40)を150℃で行う例を示している。
図7は、改質処理工程(S30)および乾燥処理工程(S40)をそれぞれ80℃で行う例を示している。
【0088】
図8の縦軸は、ウエハ200上のパーティクルの数を示している。
図8のTOP,CNT,BTMは、ウエハ200の処理位置、すなわち、ウエハ200がボート217の上部、中央部、下部に載置されていたことを示している。
図8に示す温度(80℃、150℃)は、乾燥処理工程(S40)におけるウエハ200の温度を示している。
図8によれば、乾燥処理工程(S40)の温度を150℃とした場合、乾燥処理工程(S40)の温度を80℃とした場合に比べ、パーティクルの数が4分の1以下に低減できていることが分る。
【0089】
(b)乾燥処理工程(S40)を行うことで、副生成物であるアンモニア、塩化アンモニウム、炭素、水素、他、溶媒に起因するアウトガス等の不純物を、ウエハ200から離脱させることができる。
【0090】
(c)乾燥処理工程(S40)を行うことで、ウエハ200から離脱させた不純物のウエハ200への再付着を抑制することができる。
【0091】
(d)乾燥処理工程(S40)では、ウエハ200への不純物の再付着を抑制させながらウエハ200の乾燥を行うことができる。
【0092】
(e)乾燥処理工程(S40)を、改質処理工程(S30)の温度(第1温度)よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度で行うことにより、熱ダメージやサーマルバジェット(熱履歴)によるSiO膜への影響を低減させることができる。
【0093】
(f)乾燥処理工程(S40)を、改質処理工程(S30)の温度(第1温度)よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度で行うことにより、SiO膜の誘電率の変化を低減することができる。すなわち、所望の誘電率を保つことができる。
【0094】
(g)乾燥処理工程(S40)を、改質処理工程(S30)の温度(第1温度)よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度で行うことにより、SiO膜の誘電率の再現性を向上させることができる。
【0095】
(h)乾燥処理工程(S40)を、改質処理工程(S30)の温度(第1温度)よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度で行うことにより、SiO膜の膜密度を所望の密度に保つことができる。
【0096】
(i)乾燥処理工程(S40)を、改質処理工程(S30)の温度(第1温度)よりも高い温度であって、プリベーク工程(T30)の処理温度以下の温度で行うことにより、SiO酸化膜の膜密度の再現性を向上させることができる。
【0097】
(j)乾燥処理工程(S40)で、ウエハ200を緩やかに乾燥させることで、処理容器203内に収容された複数枚のウエハ200のそれぞれに対し、均一な乾燥処理を施すことができる。
【0098】
(k)乾燥処理工程(S40)の後に、処理容器203内の温度を維持した状態で処理容器203内を真空排気することで、処理容器203内に残留するパーティクルや不純物を除去することができる。
【0099】
(l)真空排気後に処理容器203内の温度を維持したまま大気圧に戻し、処理容器203内の熱容量を増加させることで、ウエハ200の温度を上げることができ、真空排気で除去できなかったパーティクルや、ウエハ200からのアウトガス等をさらに除去することができる。
【0100】
(m)改質処理工程(S30)で用いる処理液としての過酸化水素水の濃度を高めることでパーティクルの数を更に抑制することができる。
図8に示す「標準品」とは、酸が10ppm以下、塩化物が0.3ppm以下含まれている標準の過酸化水素水を用いたことを示しており、「高純度品」とは、酸が5ppm以下、塩化物が0.02ppm以下含まれている高純度の過酸化水素水を用いたことを示している。
図8によれば、改質処理工程(S30)において高純度品を用いた場合、標準品を用いた場合に比べ、同じ温度条件であってもパーティクルの数を約2分の1以下に低減できていることが分かる。
【0101】
(n)
図8によれば、処理容器203の上部(TOP)と中部(CNT)と下部(BTM)を比較すると、高純度品を用いた場合には、TOPのパーティクルの数を低減でき、ウエハ200間の処理の均一性も向上させることができることが分かる。
【0102】
(o)改質処理工程(S30)では、処理容器203内に供給する過酸化水素と酸素含有ガスとの供給比率を調整することによって、膜密度を制御することができる。
【0103】
(p)改質処理工程(S30)では、処理容器203内に供給する過酸化水素と酸素含有ガスとの供給比率を調整することによって、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0104】
(q)降温・大気圧復帰工程(S60)では、真空排気の際に、処理容器203内を中真空で一時的にパージすることで、不純物を効率的に除去することができる。
【0105】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0106】
上述の実施形態では、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、処理ガスとして、常温で固体または液体である原料(反応物)を溶媒に溶解させた溶液(液体状態の反応物)を気化させたガスを用いる場合であれば、過酸化水素ガスを用いる場合に限らず、本発明は好適に適用可能である。また、原料(反応物)の気化点が溶媒の気化点と異なると、上述の実施形態の効果が得られやすくなる。また、処理ガスである気化ガスは、再液化すると原料の濃度が高くなるものに限らず、再液化すると原料の濃度が低くなるものであってもよい。このような処理ガスであっても、上述の基板処理装置を用い、上述の実施形態と同様の処理手順で処理を行えば、処理容器内での処理ガスの濃度を均一化させ、改質処理の基板面内における均一性、および、基板間における均一性をそれぞれ向上させることが可能である。
【0107】
また、処理ガスとしては、過酸化水素ガスの他、例えば水素(H
2)ガス等の水素元素(H)を含むガス(水素含有ガス)と、例えば酸素(O
2)ガス等の酸素元素(O)を含むガス(酸素含有ガス)と、を反応させて得られた水蒸気(H
2O)ガス等を用いてもよい。また、処理ガスとしては、水(H
2O)を加熱して発生させた水蒸気を用いることもできる。酸素含有ガスとしては、O
2ガスの他、例えばオゾン(O
3)ガスや水蒸気(H
2O)等を用いてもよい。ただし、過酸化水素は、水蒸気(水、H
2O)と比較すると、活性化エネルギーが高く、1分子中に含まれる酸素原子の数が多いため、酸化力が強いという特徴がある。そのため、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いた場合、基板表面の溝内に形成された膜の深部(溝の底部)まで酸化処理を行うことができる点で有利である。また、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いた場合、改質処理工程を40℃から150℃の低温で行うことができ、基板上に形成された回路素子、特に高温処理に弱い材質(例えばアルミニウム)を用いた回路素子の性能劣化等を抑制することができる点で有利である。
【0108】
なお、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いる場合には、処理ガス中に、H
2O
2分子単体の状態や、いくつかの分子が結合したクラスタ状態が含まれてもよい。また、過酸化水素水を気化させて過酸化水素ガスを生成する際に、H
2O
2分子単体まで分解させるようにしてもよいし、いくつかの分子が結合したまま維持されているクラスタ状態にまで分解させるようにしてもよい。また、上述のクラスタが幾つか集まってできた霧(ミスト)状態のものを処理ガスとして用いてもよい。
【0109】
また、処理ガスとして水(H
2O)を気化させたガス(水蒸気化したガス)を用いる場合、処理ガス中に、H
2O分子単体の状態や、いくつかの分子が結合したクラスタ状態が含まれてもよい。また、水(H
2O)を液体状態から気体状態に気化させる際、H
2O分子単体まで分解させるようにしてもよいし、いくつかの分子が結合したまま維持されているクラスタ状態まで分解させるようにしてもよい。また、上述のクラスタが幾つか集まってできた霧(ミスト)状態のものを処理ガスとして用いてもよい。
【0110】
また、上述の実施形態では、ポリシラザン膜が形成された基板を処理する例を示したが、これに限るものでは無い。すなわち、シラザン結合(−Si−N−)を有する膜が形成された基板を処理する場合には、その膜がポリシラザン膜でなくとも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
また、上述の実施形態では、PHPS塗布工程とプリベーク工程とを施すことで形成されたポリシラザン膜を処理する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、CVD法で形成され、プリベークされてないSi含有膜を処理する場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0112】
また、上述の処理炉202において、処理容器203外に、第1の加熱部207が備えるヒータユニット207a〜207dのそれぞれの温度を検出する温度検出器として、例えば熱電対等の外部温度センサ264a〜264d(
図2参照)が設置されていてもよい。
【0113】
また、乾燥処理工程(S40)と降温・大気圧復帰工程(S60)との間に、例えばウエハ200を800℃から1000℃の高温に加熱するアニール工程(熱処理工程)を行ってもよい。この場合、上述したように、降温・大気圧復帰工程(S60)において、空間260内に冷却ガスを供給するとよい。これにより、処理容器203及び第1の加熱部207をより短時間で冷却させることができ、次の改質処理工程(S30)の開始時間を早め、製造スループットを向上させることができる。
【0114】
上述の実施形態では、縦型処理炉を備える基板処理装置について説明したがこれに限らず、例えば、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置や、処理ガスを励起させてウエハ200を処理する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0115】
また、上述の実施形態では、処理ガスとしての過酸化水素ガスを、処理容器203内で生成させる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、処理容器203の外で予め気化させた過酸化水素ガスを処理容器203内に供給してもよい。
【0116】
図9は、上述の他の実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
図9に示す基板処理装置では、処理容器203外で処理ガスである過酸化水素ガスを生成し、処理容器203内に供給する。
図9では、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号で示されている。
【0117】
図9に示すように、処理容器203内には、ウエハ200の配列方向に沿うようにガス供給ノズル701が配設されている。ガス供給ノズル701の側部には、ガス供給孔702が、例えばウエハ200のそれぞれに対応するように複数設けられている。ガス供給ノズル701の上流端には、過酸化水素ガスを供給するガス供給管933が接続されている。ガス供給管933には、上流側から順に、過酸化水素ガス発生装置707、オートバルブ909が設けられている。過酸化水素ガス発生装置707には、過酸化水素水供給管932dが接続されている。過酸化水素水供給管932dには、上流側から順に、過酸化水素水源940d、液体流量コントローラ(LMFC)941d、オートバルブ942dが設けられている。また、ガス供給管933には、N
2ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給管932cが接続されている。不活性ガス供給管932cには、上流側から順に、不活性ガス供給源940c、MFC941c、バルブ942cが設けられている。
【0118】
主に、ガス供給管933、過酸化水素ガス発生装置707、過酸化水素水供給管932d、オートバルブ933,942d、LMFC941dにより、過酸化水素ガス供給系90が構成される。ガス供給ノズル701、過酸化水素水源940dを過酸化水素ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、不活性ガス供給管932c、MFC941c、バルブ942cにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給源940cを不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。また、不活性ガス供給系を過酸化水素ガス供給系90に含めて考えてもよい。
【0119】
図9に示す基板処理装置を用いる場合、改質処理工程(S30)では、オートバルブ942dを開き、LMFC941dにより流量調整された過酸化水素水を過酸化水素ガス発生装置707に供給する。そして、過酸化水素ガス発生装置707で過酸化水素水を気化させることにより過酸化水素ガスを発生させる。この状態で、オートバルブ909を開くことで、ガス供給ノズル701を介して処理容器203内、すなわち、ウエハ200に対して過酸化水素ガスを供給することができる。
【0120】
ただし、
図9に示す基板処理装置を用いた場合、過酸化水素ガスがガス供給管933内やガス供給ノズル701内を通過する際、再液化してしまうことがある。特に、ガス供給管933やガス供給ノズル701のカーブした(曲がった)箇所や接合箇所等で、過酸化水素ガスが滞留して再液化してしまうことが多い。その結果、ガス供給管933内やガス供給ノズル701内で再液化して生じてしまった液体により、ガス供給管933内やガス供給ノズル701内が損傷を受けることがある。そのため、ガス供給管933やガス供給ノズル701にヒータを設けて加熱する必要が有る。これに対し、上述した第1の実施形態では、処理容器203内へ過酸化水素を液体状態で供給するので、ヒータが不要となる点で好ましい。
【0121】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0122】
<付記1>
一態様によれば、
シラザン結合を有する膜が形成され、当該膜にプリベークが施されている基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記基板を第1温度に加熱して当該基板に処理ガスを供給する改質処理工程と、
前記基板を前記第1温度より高く、前記プリベーク時の温度以下の第2温度で加熱する乾燥処理工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
【0123】
<付記2>
付記1に記載の基板処理方法であって好ましくは、
前記処理容器内に処理液を供給する工程と、
前記処理容器内の気化器で前記処理液を気化させて前記処理ガスを発生させる工程と、を更に有する。
【0124】
<付記3>
付記1又は付記2に記載の基板処理方法であって好ましくは、
前記改質処理工程において前記基板に酸素含有ガスを第1流量で供給し、
前記乾燥処理工程の前に、前記酸素含有ガスを前記第1流量よりも多い第2流量にする。
【0125】
<付記4>
付記1乃至付記3のいずれかに記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記乾燥処理工程の後に、前記処理容器内を前記第2温度で真空排気する工程を有する。
【0126】
<付記5>
付記4に記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記真空排気の後に前記処理容器内を大気圧で排気する工程を有する。
【0127】
<付記6>
付記1乃至付記5のいずれかに記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記処理ガスは、過酸化水素ガスである。
【0128】
<付記7>
付記1乃至付記6のいずれかに記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記処理液は、過酸化水素を含む。
【0129】
<付記8>
付記1乃至付記5のいずれかに記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記第1温度は、70℃〜130℃である。
【0130】
<付記9>
付記1乃至付記6のいずれかに記載の基板処理方法であって、好ましくは、
前記第2温度は80℃〜150℃である。
【0131】
<付記10>
他の態様によれば、
シラザン結合を有する膜が形成され、当該膜にプリベークが施されている基板を収容する処理容器と、
前記基板に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記基板を第1温度に加熱するとともに前記処理ガスを前記基板に供給して、前記シラザン結合を有する膜を改質処理した後に、当該第1温度よりも高く、前記プリベーク時の温度以下の第2温度に前記基板を加熱する様に、前記処理ガス供給部と前記加熱部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0132】
<付記11>
付記10に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記処理ガス供給部は、
前記処理容器内に処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理容器内で前記処理液を気化させて処理ガスを発生させる気化部と、を有する。
【0133】
<付記12>
付記10又は付記11に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記基板を前記改質処理するときに前記酸素含有ガスを第1流量で供給し、
前記乾燥処理する前に前記第1流量よりも多い第2流量に増加させるよう前記ガス供給部を制御する。
【0134】
<付記13>
他の態様によれば、
シラザン結合を有する膜が形成され、当該膜にプリベークが施されている基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記基板を第1温度に加熱して当該基板に処理ガスを供給する改質処理工程と、
前記基板を前記第1温度より高く、前記プリベーク時の温度以下の第2温度で加熱する乾燥処理工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0135】
<付記14>
付記13に記載の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記処理容器内に処理液を供給する工程と、
前記処理容器内の気化器で前記処理液を気化させて前記処理ガスを発生させる工程と、を更に有する。
【0136】
<付記15>
更に他の態様によれば、
シラザン結合を有する膜が形成され、当該膜にプリベークが施されている基板を処理容器内に搬入する手順と、
前記基板を第1温度に加熱して当該基板に処理ガスを供給する改質処理手順と、
前記基板を前記第1温度より高く、前記プリベーク時の温度以下の第2温度で加熱する乾燥処理手順と、をコンピュータに実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0137】
<付記16>
付記15に記載のプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、好ましくは、
前記処理容器内に処理液を供給する手順と、
前記処理容器内の気化器で前記処理液を気化させて前記処理ガスを発生させる手順と、をコンピュータに実行させる。