(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下に、本発明にかかる半導体装置をさらに詳しく説明する。
【0061】
本発明の半導体装置は、
III族窒化物半導体を利用する半導体装置であって、
該半導体装置は、
格子緩和したAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)からなるAl
xGa
1−xN下部障壁層、圧縮歪を有するIn
yGa
1−yN(0≦y≦1)からなるIn
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zN(0≦z≦1)からなるAl
zGa
1−zNコンタクト層が、順次積層されてなるダブルへテロ構造を具え、
In
yGa
1−yNチャネル層の、Al
zGa
1−zNコンタクト層との界面近傍には、2次元電子ガスが生成されており、
Al
zGa
1−zNコンタクト層上には、ソース電極とドレイン電極として、少なくとも、二つのオーミック電極が形成されており、
ソース電極とドレイン電極で挟まれた領域に、ゲート電極が設けられ、該ゲート電極と、ソース電極とドレイン電極により、電界効果トランジスタを構成可能な構造を備えており、
ソース電極とドレイン電極で挟まれた領域には、
前記Al
zGa
1−zNコンタクト層の一部を前記In
yGa
1−yNチャネル層が露出するまでエッチング除去して形成されるリセス部が設けられ、
該リセス部に、多結晶またはアモルファスからなる絶縁膜を介して、前記ゲート電極が埋め込まれるように形成されている
ことを特徴とする半導体装置である。
【0062】
その際、前記絶縁膜は、Si
3N
4、SiO
2、SiON、Al
2O
3、Ga
2O
3、ZnO、MgO、HfO
2からなる群より選択される、絶縁材料の多結晶またはアモルファスからなる単層膜、あるいは、前記単層膜の複数で構成される積層構造の多層膜であることが好ましい。
【0063】
本発明の半導体装置では、下記の三種の形態を採用することができる。
【0064】
第一の形態では、
前記Al
zGa
1−zNコンタクト層のAl組成zを、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xよりも大きく選択する。
【0065】
第二の形態では、
前記Al
xGa
1−xN下部障壁層には、浅いn型不純物が添加されており、
前記ゲート電極と、ソース電極とドレイン電極を、等しい電位とする際、
前記In
yGa
1−yNチャネル層の、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層との界面近傍には、2次元電子ガスが生成されている形態とする。
【0066】
第三の形態では、
前記Al
zGa
1−zNコンタクト層には、浅いn型不純物が添加されている形態とする。
【0067】
例えば、前記第一の形態と、第三の形態の何れかを採用する際には、
作製される電界効果トランジスタの閾値電圧V
Tが正である態様を達成することが可能である。
【0068】
本発明の半導体装置では、通常、下記の構造を選択することが好ましい。
【0069】
前記In
yGa
1−yNチャネル層は、アンドープ、または浅いn型不純物が添加されたIn
yGa
1−yN(0≦y≦1)からなる構造を選択することが好ましい。
【0070】
前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層は、いずれも、C軸成長エピタキシャル膜である構造を選択することが好ましい。
【0071】
前記Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層のヘテロ接合界面における、前記Al
zGa
1−zNとIn
yGa
1−yNとの伝導帯エネルギー差によるバンド不連続ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)は、50meV以上の範囲に選択されている構造を選択することが好ましい。
【0072】
前記Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層のヘテロ接合界面における、前記Al
xGa
1−xNとIn
yGa
1−yNとの伝導帯エネルギー差によるバンド不連続ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)は、50meV以上の範囲に選択されている構造を選択することが好ましい。
【0073】
基板上に形成されている、C軸成長のAl
uGa
1-uN(0≦u≦1)を含むバッファ層上に、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層が、形成されている構造を選択することが好ましい。例えば、基板上に形成されている、アンドープの傾斜組成AlGaNからなるバッファ層上に、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層は、形成されている構造を選択することが好ましい。バッファ層として、前記アンドープの傾斜組成AlGaNに代えて、下記の層を利用することもできる。例えば、バッファ層として、厚さ方向に階段状にAl組成を変化させたアンドープのAlGaN層を利用することができる。同様に、アンドープのAlGaN/GaN超格子層において、厚さ方向にAlGaN層とGaN層の膜厚比を変化させたものを、バッファ層に用いてもよい。あるいは、アンドープのAlN/GaN超格子層において、厚さ方向にAlN層とGaN層の膜厚比を変化させたものを、バッファ層に用いてもよい。
【0074】
前記絶縁膜の膜厚は、50nm〜500nmの範囲に選択されている構造を選択することが好ましい。
【0075】
上述の本発明にかかる半導体装置における、好ましい形態について、さらに説明する。
【0076】
まず、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層は、順次積層されたエピタキシャル膜が利用される。
【0077】
本発明にかかる半導体装置では、基板上に、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層を、順次エピタキシャル成長して、積層構造を作製する。その際、基板上に、まず、エピタキシャル成長により、バッファ層を形成した後、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層を順次積層する。
【0078】
基板上にエピタキシャル成長により、バッファ層を形成する工程では、まず、下地層として、ノンドープのAlN薄膜を成長させ、核生成層として利用することが好ましい。ノンドープのAlN薄膜自体は、絶縁性の薄膜となる。次いで、核生成層を、下地層として、III族窒化物系半導体からなるバッファ層をエピタキシャル成長により形成する。
【0079】
核生成層として利用する、ノンドープのAlN薄膜の膜厚:t
nuclearは、10nm〜500nmの範囲に選択する。バッファ層として、Al
UGa
1−UN(0<u≦1)を利用する。Al
UGa
1−UNバッファ層の膜厚:t
bufferは、0.5〜3μmの範囲に選択する。このAl
UGa
1−UNバッファ層は、Al
xGa
1−xN下部障壁層との界面では、そのAl組成uは、Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xと一致させる。
【0080】
従って、Al
UGa
1−UNバッファ層中において、核生成層として利用するAlNの格子定数a(AlN)から、Al
xGa
1−xN下部障壁層に用いるAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)の格子定数a(Al
xGa
1−xN)へと、膜厚方向に格子定数が変化する構成を選択することが好ましい。
【0081】
核生成層として利用するAlNの格子定数a(AlN)と、Al
xGa
1−xN下部障壁層に用いるAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)の格子定数a(Al
xGa
1−xN)とは相違している。そのため、III族窒化物系半導体からなるバッファ層として、基板側から表面側に向かって、アンドープの傾斜組成AlGaNからなるバッファ層を採用することが好ましい。この傾斜組成AlGaNからなるバッファ層では、基板側のAl組成(xb):Al
xbGa
1−xbNと、表面側のAl組成(xt):Al
xtGa
1−xtNを、xb>xtとしている。特には、表面側のAl組成(xt):Al
xtGa
1−xtNを、Al
xGa
1−xN下部障壁層に用いるAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)のAl組成(x)と等しくする。核生成層として利用するAlNの格子定数a(AlN)より、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層の表面側のAl
xtGa
1−xtNの格子定数a(Al
xtGa
1−xtN)は大きいが、Al組成に傾斜を設けることで、格子緩和を行っている。すなわち、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層の表面では、その格子定数は、Al
xtGa
1−xtNの格子定数a(Al
xtGa
1−xtN)となっている。従って、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層の表面にエピタキシャル成長される、Al
xGa
1−xN(0≦x≦1)は、格子緩和された状態となる。
【0082】
核生成層として利用する、ノンドープのAlN薄膜とAl
UGa
1−UNバッファ層を一体化し、Al組成uが、1からxへと徐々に減少する構成を採用することもできる。
【0083】
Al
UGa
1−UNバッファ層中に含まれる残留不純物濃度(N
SD−buffer)は、1×10
17cm
−3程度以下とする。ただし、残留不純物の影響が分極電荷のそれに対して小さくなるためには、残留不純物濃度(N
SD−buffer)は、1×10
16cm
−3以下であることが望ましい。例えば、積(t
buffer・N
SD−buffer)が、1×10
12cm
−3以下の範囲であることが望ましい。
【0084】
Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xは、通常、0.05≦x≦0.5の範囲に選択する。ただし、In
yGa
1−yNチャネル層中に供給されるキャリア濃度増加、転位発生抑制の観点から、Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xは、0.1≦x≦0.35の範囲に選択することが望ましい。このAl
xGa
1−xN下部障壁層自体の膜厚:t
barrierは、通常、t
barrier≦100nmの範囲とする。
【0085】
Al
xGa
1−xN下部障壁層は、アンドープであっても、N型ドーピングであっても構わない。Al
xGa
1−xN下部障壁層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度:N
SD−barrierが、N
SD−barrier≦1×10
17cm
−3の範囲である際、積(t
barrier・N
SD−barrier)≦1×10
12cm
−3となる。従って、Al
xGa
1−xN下部障壁層中の浅いn型不純物(ドナー)に起因する、In
yGa
1−yNチャネル層中へのキャリア供給は、十分でない。その際、Al
zGa
1−zコンタクト層にN型不純物をドーピングし、In
yGa
1−yNチャネル層中へキャリアを供給する。あるいは、Al
zGa
1−zコンタクト層のAl組成zを、Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xより0.05以上高くする(z>x+0.05)ことで、分極電荷を発生させ、In
yGa
1−yNチャネル層中へキャリアを供給する。
【0086】
Al
xGa
1−xN下部障壁層自体にN型不純物をドーピングし、In
yGa
1−yNチャネル層中へキャリアを供給することもできる。その場合、Al
xGa
1−xN下部障壁層中のN型不純物のドーピング濃度は、積(t
barrier・N
SD−barrier)が、1×10
14cm
−3≧(t
barrier・N
SD−barrier≧1×10
12cm
−3の範囲となるように選択する。
【0087】
In
yGa
1−yNチャネル層のIn組成yは、0.01≦y≦1の範囲に選択する。ただし、キャリア濃度増加、転位発生抑制の観点から、In
yGa
1−yNチャネル層のIn組成yは、0.01≦y≦0.05の範囲に選択することが望ましい。In
yGa
1−yNチャネル層の膜厚:t
channelは、Al
xGa
1−xN下部障壁層上にエピタキシャル成長する場合における、転移発生の臨界膜厚以下とする。ただし、キャリア濃度増加、転位発生抑制の観点から、In
yGa
1−yNチャネル層の膜厚:t
channelは、5nm≦t
channel≦20nmの範囲に選択することが望ましい。
【0088】
In
yGa
1−yNチャネル層は、アンドープであっても、N型ドーピングであっても構わない。アンドープの場合、In
yGa
1−yNチャネル層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度:N
SD−channelを、N
SD−channel≦1×10
17cm
−3の範囲とする。その場合、5nm≦t
channel≦20nmの範囲では、積(t
channel・N
SD−channelr)≦1×10
12cm
−3となる。ただし、In
yGa
1−yNチャネル層中の残留不純物に起因するキャリア発生の影響が分極電荷のそれに対して小さくなるためには、N
SD−channel≦1×10
16cm
−3の範囲とする。その場合、5nm≦t
channel≦20nmの範囲では、積(t
channel・N
SD−channelr)<1×10
11cm
−3となる。
【0089】
Al
zGa
1−zNコンタクト層のAl組成zは、通常、0.05≦z≦0.5の範囲に選択する。ただし、キャリア濃度増加、転位抑制の観点から、Al
zGa
1−zNコンタクト層のAl組成zは、0.05≦z≦0.35の範囲に選択することが望ましい。Al
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚:t
contactは、Al
xGa
1−xN下部障壁層上にエピタキシャル成長する場合における、転移発生の臨界膜厚以下とする。ただし、キャリア濃度増加、転位発生抑制の観点から、Al
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚:t
contactは、5nm≦t
contact≦100nmの範囲に選択することが望ましい。
【0090】
Al
zGa
1−zNコンタクト層は、アンドープであっても、N型ドーピングであっても構わない。アンドープ、あるいは、N型ドーピングしたAl
zGa
1−zNコンタクト層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度:N
SD−contactが、N
SD−channel≦1×10
17cm
−3の範囲である際には、Al
zGa
1−zコンタクト層のAl組成zを、Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成xより0.05以上高くする(z>x+0.05)。この組成を選択することで、分極電荷を発生させ、In
yGa
1−yNチャネル層中へキャリアを供給し、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面に2次元電子ガスを発生させる。
【0091】
高濃度にN型ドーピングする場合、Al
zGa
1−zNコンタクト層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度:N
SD−contactを、積(t
contact・N
SD−contact)が、1×10
14cm
−3≧(t
contact・N
SD−contact≧1×10
12cm
−3の範囲となるように選択する。
【0092】
前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層、ならびに、Al
UGa
1−UNバッファ層、AlN核生成層は、六方晶の結晶系(ウルツ鉱型構造)を有するエピタキシャル膜で形成する。表2に、六方晶の結晶系を有する、III族窒化物系半導体;AlN、GaN、InNの構造定数、物性定数の一部を示す。
【0093】
【表2】
一般に、III族窒化物系半導体のエピタキシャル成長に利用可能な基板としては、下記表3−1に示すものが知られている。その基板材料の熱・電気的特性を表3−2に示す。
【0094】
【表3-1】
【0095】
【表3-2】
なお、各種基板表面に、核生成層用のAlN層を成長させた際、両者の結晶方位の関係は、下記表3−3に示すものとなることが報告されている。
【0096】
【表3-3】
本発明にかかる半導体装置においては、前記Al
xGa
1−xN下部障壁層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
zGa
1−zNコンタクト層、ならびに、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層は、いずれも、C軸成長エピタキシャル膜であることが好ましい。そのため、基板上に形成される、AlN核生成層が、C面成長可能な基板を利用することが好ましい。従って、基板として、SiCのC面((0001)面)基板、サファイア(α−Al
2O
3)のC面((0001)面)基板、Siの(111)面基板、AlN,GaNのC面((0001)面)基板を利用することが好ましい。SiC基板は、高温成長用の下地基板として適しており、また、大口径の基板が容易に入手可能であり、上記の多層エピタキシャル膜を作製する上では、最も好適な基板の一つである。
【0097】
本発明の半導体装置では、
Al
zGa
1−zNコンタクト層上には、ソース電極とドレイン電極として、少なくとも、二つのオーミック電極を形成する。このオーミック電極の形成は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の表面に、例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)などの金属を蒸着し、パターニングを行う。次いで、例えば、窒素ガス雰囲気中、温度850℃、30秒間、アロイ処理することにより、オーム性接触を形成する。
【0098】
Al
zGa
1−zNコンタクト層上に形成されるオーミック電極の作製条件として、例えば、Ti(15nm)/Al(60nm)/Nb(35nm)/Au(50nm)、シンター温度:850℃;Ti(25nm)/Al(200nm)/Ni(40nm)/Au(15nm)、シンター温度:900℃;Ti(15nm)/Al(60nm)/Mo(35nm)/Au(59nm)、シンター温度:850℃;Ti(20nm)/Al(120nm)/Ti(40nm)/Au(10nm)、シンター温度:900℃を採用することができる。
【0099】
このソース電極とドレイン電極で挟まれた領域に、ゲート電極を設けている。ゲート電極と、ソース電極とドレイン電極により、電界効果トランジスタを構成可能な構造を備えている。
【0100】
本発明の半導体装置では、ゲート電極直下のチャネル領域では、ゲート電極/絶縁膜/In
yGa
1−yNチャネル層のMIS構造が構成される。具体的には、Al
zGa
1−zNコンタクト層の一部をIn
yGa
1−yNチャネル層が露出するまでエッチング除去して、リセス部を形成する。このリセス部に、多結晶またはアモルファスからなる絶縁膜を介して、ゲート電極が埋め込まれるように形成する。
【0101】
リセス部を形成する際、Al
zGa
1−zNコンタクト層の一部を選択的にエッチング除去して、In
yGa
1−yNチャネル層の表面を露出させる。このAl
zGa
1−zNコンタクト層を選択的にエッチング除去する際、例えば、選択的なエッチングガスとして、Cl
2系ガスを用いるリアクティブ・イオンエッチング法などが利用可能である。
【0102】
Al
zGa
1−zN層のリセス・エッチング工程では、誘導性結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)エッチング法、反応性イオンエッチング(Reactively Ion Etching:RIE)法を採用することができる。その際、反応性ガスとして、BCl
3、Cl
2、CCl
4などが採用できる。
【0103】
前記の気相エッチング法を適用する際、エッチング速度の結晶方位異方性を利用することで、リセス部の側壁面に傾斜を設けることができる。なお、バイアス電力を所定値より小さく設定すると、エッチング速度の結晶方位異方性を抑制することが可能であり、傾斜角を緩やかにすることも可能である。すなわち、リセス部の側壁面に傾斜角を90度以下に設定する構造を採用することも可能である。
【0104】
形成されるリセス部の深さd
recessは、Al
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚t
contactを基準として、d
recess≧t
contactとする。なお、リセス部の深さd
recessとAl
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚t
contactの差(d
recess−t
contact)は、面内均一性確保の観点から数nm以上とすることが好ましい。
【0105】
勿論、(d
recess−t
contact)は、In
yGa
1−yNチャネル層の膜厚t
channelを基準として、(d
recess−t
contact)<t
channelの範囲に選択する。
【0106】
前記の必須条件を満たす範囲で、例えば、(d
recess−t
contact)は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚t
contactを基準として、2・t
contact≧(d
recess−t
contact)≧1/10・t
contactの範囲に選択することができる。例えば、(d
recess−t
contact)≒1/2・t
contactに選択すると、エッチング速度の面内のバラツキがある場合でも、リセス部の底面の平坦化を行うことができる。
【0107】
一方、リセス部の形成に用いるマスク開口部の幅W
openingと、実際に形成されるリセス部の幅W
recessとの差(W
recess−W
opening)は、サイドエッチンク量δW
side−etchに起因する。すなわち、(W
recess−W
opening)=2×δW
side−etchとなる。一般に、深さ方向のエッチンク量、すなわち、リセス部の深さd
recessが増すとともに、サイドエッチンク量δW
side−etchも増す。
【0108】
従って、チャネル長短縮の観点からは、オーバーエッチング量(d
recess−t
contact)は、リセス部の幅W
recessと比べて十分小さくすることが好ましい。
【0109】
例えば、リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorよりも、オーバーエッチング量(d
recess−t
contact)が大きい((d
recess−t
contact)>t
insulator)場合には、ゲート電極の下端は、Al
zGa
1−zNコンタクト層/In
yGa
1−yNチャネル層の界面よりも、低い位置となる。その場合、リセス部の側壁面では、Al
zGa
1−zNコンタクト層/In
yGa
1−yNチャネル層の界面に、絶縁膜を介して、ゲート電極が近接する状態となる。すなわち、リセス部の側壁面を形成される絶縁膜を介して、ゲート電極/絶縁膜/(Al
zGa
1−zNコンタクト層/In
yGa
1−yNチャネル層の界面)のMIS構造が構成される状態となる。特に、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に、浅いn型不純物が添加されている形態を選択する際でも、リセス部の側壁面に形成される絶縁膜の膜厚t
insulator−wellの如何を問わず、前記MIS構造部分におけるリーク電流は、問題となる水準ではない。
【0110】
なお、光露光を用いるフォトリソグラフ法を利用して、エッチング・マスクを作製する際に、その開口部の幅W
openingは、W
opening≧500nmの範囲に選択する。一方、電子線露光法を利用して、エッチング・マスクを作製する際に、その開口部の幅W
openingは、500nm以下とすることもできる。
【0111】
実際に形成されるリセス部の幅W
recessは、ソース・ドレイン間におけるチャンル領域の長さL
channelを規定する。すなわち、L
channel≒W
recessとなる。チャンル領域の長さL
channelは、デバイスの応用形態(動作電圧V
SD、動作周波数f
T)に依存して、選択される。例えば、RFフロントエンド用途(V
SD=1V〜100V、f
T=1GHz〜100GHz)では、L
channel≒W
recess=0.05〜1μmの範囲に、電力制御用途(V
SD=10V〜1000V、f
T=100Hz〜1MHz)では、L
channel≒W
recess=1〜100μmの範囲に選択する。
【0112】
ゲート電極の作製に利用される、リセス部の底面と、その側壁面を被覆するように、絶縁膜を形成する。また、ソース電極とドレイン電極で挟まれた領域において、リセス部を除く、平坦な領域に存在するAl
zGa
1−zNコンタクト層の表面も、絶縁膜で被覆する。
【0113】
リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorを、リセス部の深さd
recessに対して、t
insulator<d
recessとなる範囲に選択する際には、ゲート電極の下端は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面より低い位置となる。従って、ゲート電極は、絶縁膜を介して、リセス部の中に完全に埋め込まれる形態に形成される。
【0114】
リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorを、リセス部の深さd
recessに対して、t
insulator>d
recessとなる範囲に選択する際には、ゲート電極の下端は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面より高い位置となる。その際にも、ゲート電極は、リセス部において、そのリセス形状に対応する、絶縁膜表面の凹部中に埋め込まれた形態に形成される。
【0115】
この絶縁膜を介して、リセス部の中に埋め込まれる形態に形成されるゲート電極は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面をも被覆する絶縁膜上に作製される、所謂、フィールドプレート電極と一体化され形状に構成することが好ましい。該フィールドプレート電極として機能する部分は、リセス部の側壁部から、少なくとも、ドレイン側に0.2μm以上の張出した形状とされる。例えば、リセス部の側壁部から張出す形状は、ドレイン側に加えて、ソース側にも設ける構成を選択することができる。
【0116】
フィールドプレート電極として機能する部分は、絶縁膜を介して、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面にオーバーラップしており、MIS構造を構成している。このフィールドプレート電極部分は、ゲート電極と同じ電位となっており、電界集中の緩和効果を有する。Al
zGa
1−zNコンタクト層と、フィールドプレート電極部分のオーバーラップ長L
FP−D、L
FP−Sは、例えば、ドレイン側、ソース側ともに、L
FP−D=L
FP−S≧0.2μmとされる。従って、フィールドプレート電極部分とゲート電極とを一体化する、ゲート電極の上面側の長さL
G−TOPは、L
G−TOP=L
channel+(L
FP−D+L
FP−S)≧L
channel+0.4μmの範囲に選択する。
【0117】
勿論、ゲート電極の上面のドレイン側と、ドレイン電極との間隔:ΔL
GD、ゲート電極の上面のソース側と、ソース電極との間隔:ΔL
GSは、絶縁破壊を回避するため、ΔL
GD、ΔL
GS≧0.5μmとされる。その際、ドレイン電極とソース電極の間隔:W
S−Dは、W
S−D=L
G−TOP+(ΔL
GD+ΔL
GS)=L
channel+(L
FP−D+L
FP−S)+(ΔL
GD+ΔL
GS)である。従って、ゲート電極の上面側の長さL
G−TOPは、W
S−D−1.0μm≧L
G−TOP≧L
channel+0.4μmの範囲に選択される。
【0118】
リセス部の幅をW
recess、リセス部の側壁面を形成される絶縁膜の膜厚をt
insulator−wellとすると、リセス部に、絶縁膜を介して、埋め込まれるように形成されるゲート電極の実効的なゲート長L
G-effectは、L
G-effect≒W
recess−2×t
insulator-wellとなる。
【0119】
従って、ゲート電極の実効的なゲート長L
G-effectと、リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorの比率:L
G-effect/t
insulatorは、L
G-effect/t
insulator≒(W
recess−2×t
insulator-well)/t
insulatorとなる。この比率L
G-effect/t
insulatorは、一般に、(L
G-effect/t
insulator)≧3の範囲、望ましくは、(L
G-effect/t
insulator)≧10の範囲に選択することが好ましい。
【0120】
一方、リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorを、リセス部の深さd
recessに対して、t
insulator≧d
recessとなる範囲に選択する際には、ゲート電極の下端は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面より高い位置となる。その際、リセス部の底面における絶縁膜の上面と、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面(平坦部)における絶縁膜の上面との間に、高低さが存在している。従って、リセス部を覆う絶縁膜の上面には、凹部が存在している。従って、ゲート電極は、絶縁膜を介して、リセス部に存在する、絶縁膜上面の凹部中に埋め込まれる形態に形成される。
【0121】
その際、リセス部に存在する、絶縁膜上面の凹部の幅W
dentは、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面(平坦部)における絶縁膜の膜厚をt
insulator−flatとする際、近似的に、W
dent≒W
recess−2×t
insulator−flatとなる。絶縁膜上面の凹部に埋め込まれるように形成されるゲート電極の実効的なゲート長L
G-effectは、L
G-effect≒W
dent≒W
recess−2×t
insulator−flatとなる。
【0122】
従って、ゲート電極の実効的なゲート長L
G-effectと、リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorの比率:L
G-effect/t
insulatorは、L
G-effect/t
insulator≒(W
recess−2×t
insulator−flat)/t
insulatorとなる。リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorを、リセス部の深さd
recessに対して、t
insulator≧d
recessとなる範囲に選択する際も、比率L
G-effect/t
insulatorは、一般に、(L
G-effect/t
insulator)≧3の範囲、望ましくは、(L
G-effect/t
insulator)≧10の範囲に選択することが好ましい。
【0123】
リセス部の底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorを、リセス部の深さd
recessに対して、t
insulator≧d
recessとなる範囲に選択する際にも、比率L
G-effect/d
recessは、少なくとも、(L
G-effect/d
recess)≧3の範囲、望ましくは、(L
G-effect/d
recess)>10の範囲に選択することが好ましい。
【0124】
その際、絶縁膜の膜厚t
insulatorは、デバイスの応用形態(動作電圧V
SD、ゲート電圧V
G、ゲート耐圧V
G−breakdown)に依存して、選択される。絶縁膜の膜厚t
insulatorは、例えば、RFフロントエンド用途では、t
insulator=5〜50nmの範囲に、電力制御用途では、t
insulator=50〜500nmの範囲に選択することが好ましい。
【0125】
例えば、t
insulator≪d
recessとなる範囲に選択する際に、一般に、リセス部の側壁面に形成される絶縁膜の膜厚t
insulator−wellは、底面における絶縁膜の膜厚t
insulatorと異なる。例えば、絶縁膜の形成工程で、気相成長法、例えば、スパッター法、PE−CVD(Plasma-enhanced Chemical Vapor Phase Deposition)法などを用いる場合、膜厚の異方性が存在する場合がある。膜厚の異方性が生じる際には、t
insulatorとt
insulator−wellの比率は、t
insulator−well/t
insulator<1となる。その際、ゲート耐圧確保の観点から、RFフロントエンド用途においても、t
insulator−wellは、2nm以上とする。
【0126】
t
insulator<d
recessとなる範囲に選択する際には、例えば、ゲート電極の下端は、Al
zGa
1−zNコンタクト層の上面より低く、下面よりも高い位置となる場合もある。その際、リセス部の側壁面では、ゲート電極/絶縁膜/Al
zGa
1−zNコンタクト層のMIS構造が構成される。特に、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に、浅いn型不純物が添加されている形態を選択する際でも、側壁面に形成される絶縁膜の膜厚t
insulator−well≧2nmの条件を満足すれば、前記MIS構造部分におけるリーク電流は、問題となる水準ではない。
【0127】
ゲート電極の実効的なゲート長L
G-effectは、L
G-effect≒(W
recess−2×t
insulator)に相当している。(L
G-effect/t
insulator)≧3の範囲とする際、例えば、RFフロントエンド用途(V
SD=1V〜100V、f
T=1GHz〜100GHz)では、L
channel≒W
recess=0.05〜1μmの範囲に選択すると、L
G-effectは、0.03〜1μmの範囲となる。電力制御用途(V
SD=10V〜1000V、f
T=100Hz〜1MHz)では、L
channel≒W
recess=1〜100μmの範囲に選択すると、L
G-effectは、1〜100μmの範囲となる。
【0128】
この絶縁膜は、ゲート電極直下のチャネル領域では、ゲート電極/絶縁膜/In
yGa
1−yNチャネル層のMIS構造の構成に利用される。ゲート電極/絶縁膜の界面では、ゲート電極のうち、絶縁膜の表面に接する金属材料M
gateの仕事関数eψ(M
gate)eVと、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontの電子親和力eχ(I
front)eVとの差、(eχ(I
front)−eψ(M
gate))eVに相当する、障壁Φ
M/I(接触電位差)が生成する。絶縁膜/In
yGa
1−yNチャネル層の界面では、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearの電子親和力eχ(I
rear)eVと、In
yGa
1−yNチャネル層の電子親和力eχ(In
yGa
1−yN)eVとの差、(eχ(I
rear)−eχ(In
yGa
1−yN))eVに相当する、障壁Φ
I/S(接触電位差)が生成する。
【0129】
本発明の半導体装置では、絶縁膜を構成する絶縁材料として、分極効果を示さない絶縁材料を利用する。分極効果を示さない絶縁材料として、Si
3N
4、SiO
2、Si
1−x−yO
xN
y、Ga
2O
3、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO
2)が利用できる。
【0130】
さらに、本発明の半導体装置では、この障壁Φ
M/Iを、Φ
M/I≧1eVの範囲に設定する。この要件を満たすように、絶縁膜の表面に接する金属材料M
gateと、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontの組み合わせを選択する。例えば、絶縁膜の表面に接する金属材料M
gateとして、Tiを選択する場合、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontとして、Si
3N
4、SiO
2、Si
1−x−yO
xN
y、Ga
2O
3、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO
2)が利用できる。
【0131】
また、障壁Φ
I/Sを、Φ
I/S≧1eVの範囲に設定する。この要件を満たすように、In
yGa
1−yNチャネル層の圧縮歪を有するIn
yGa
1−yN(0≦y≦1)に対して、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearを選択する。例えば、圧縮歪を有するGaNに対して、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearとして、Si
3N
4、SiO
2、Si
1−x−yO
xN
y、Ga
2O
3、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO
2)が利用できる。
【0132】
絶縁膜として、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontと、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearを同一に選択する際には、一つの絶縁材料からなる単層膜を利用する。絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontと、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearを異なる絶縁材料に選択する際には、異なる絶縁材料からなる膜を積層して、積層膜構造とする。
【0133】
絶縁膜として、一つの絶縁材料からなる単層膜を利用する場合、Si
3N
4、SiO
2、Al
2O
3を選択することが好ましい。
【0134】
絶縁膜は、リセス部の側壁面を含め、均一な膜厚で形成することが好ましい。その成膜方法は、目的とする絶縁膜の膜厚t
insulatorと、許容される膜厚の制御性に応じて選択される。例えば、プラズマ励起(PE−)CVD法、熱CVD法、高周波(RF−)CVD法、原子層(AL−)CVD法、DCスパッタ法、RFスパッタ法、電子サイクロトロン共鳴(ECR−)スパッタ法から、絶縁膜の形成に利用する絶縁材料、膜厚t
insulatorに応じて、成膜方法を選択することができる。
【0135】
絶縁膜の形成に利用する絶縁材料、すなわち、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontと、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearは、その電子親和力eχ(I
front)eV、あるいは、eχ(I
rear)eVが、上記の条件を満たす限り、多結晶形状、またはアモルファス形状のいずれの膜も利用できる。
【0136】
絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearは、In
yGa
1−yNチャネル層の表面と接触する。絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearは、多結晶形状、またはアモルファス形状で、In
yGa
1−yNチャネル層の表面上に形成するため、圧縮歪を有するIn
yGa
1−yN(0≦y≦1)に対して、エピタキシャル成長しない条件で形成する。その結果、In
yGa
1−yNチャネル層と絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearとの界面には、界面準位(電子トラップ準位)が生成されている。
【0137】
この界面準位(電子トラップ準位)は、In
yGa
1−yNチャネル層表面の(ピエゾ、自発性)分極に起因した負電荷の全部または一部を補償するために利用される。この状況を実現するためには、In
yGa
1−yNチャネル層と絶縁膜界面に、電子を放出した状態で正に帯電する、所謂、ドナー型の界面準位が、1×10
12cm
−2程度の面密度で存在する必要がある。例えば、次の文献(大野 他、アプライド フィジクス レター、第84巻、頁2184、2004年(Y. Ohno et al. Appl. Phys. Lett., Vol.84, p.2184 (2004)))によれば、GaN系半導体とSiO
2、Si
3N
4などの絶縁膜との界面には、面密度σ
ssが1×10
12cm
−2程度のドナー型の界面準位が存在することが報告されている。その結果、該ドナー型の界面準位によって、分極に起因した負電荷の全部または一部が補償されることが知られている。
【0138】
In
yGa
1−yNチャネル層の表面に、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearからなる膜を形成する際、この絶縁材料I
rearを構成する元素に由来する深いn型不純物(深いドナー)準位がIn
yGa
1−yNチャネル層の表面近傍に導入される状態は、本発明の半導体装置では好ましくない。その観点では、Si
3N
4を絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearとして利用することは好ましい。In
yGa
1−yNチャネル層の表面に、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearからなる膜として、Si
3N
4からなる絶縁体膜を形成し、同時に、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontとして、Si
3N
4を選択する場合、絶縁膜全体を、Si
3N
4からなる単層膜とする。In
yGa
1−yNチャネル層の表面に、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
rearからなる膜として、Si
3N
4からなる絶縁体膜を形成し、一方、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontとして、Si
3N
4と異なる絶縁材料を選択する場合、Si
3N
4からなる膜上に、他の絶縁材料からなる膜を積層する多層膜とする。
【0139】
ゲート電極のうち、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontに接する金属材料M
gateとしては、上記の障壁Φ
M/Iの範囲を達成できる金属材料のうち、絶縁材料I
frontに対する高密着性を有する金属を採用することが好ましい。例えば、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontに接する金属材料M
gateとしては、Ti、Cr、Ni、Pt、Pdなどの、絶縁材料I
frontに対する高密着性金属を用いることが好ましい。
【0140】
ゲート電極は、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontに接する金属材料M
gateと、その上に他の金属材料の層を積層する構造とすることができる。この上層の金属材料の層は、ゲート電極全体にゲート電圧を均一に印加する目的に利用され、主伝導金属層として機能する。この主伝導金属層(上層)に利用される金属材料M
topは、高い電気伝導性を有する金属材料であることが好ましい。金属材料M
topとして、Au、Pt、Cuなどの低抵抗金属を用いることが好ましい。
【0141】
通常、金属材料M
gateからなる下層の膜厚は、金属材料M
topからなる上層の膜厚と比較して、薄くされている。そのため、両層間で金属原子の拡散が生じると、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontに、両者の合金が接する状態となる。この拡散を防止する目的で、両層間に拡散防止金属層を設けることが好ましい。この拡散防止金属層に用いられる金属材料M
middleは、その内部で金属原子の拡散が抑制されている性質を有するものである。従って、拡散防止金属層に用いられる金属材料M
middleとして、一般に、Pt、Mo、Nb、Wなどの高融点金属を利用することが好ましい。
【0142】
例えば、絶縁膜の表面の絶縁材料I
frontと裏面の絶縁材料I
rearが同じであり、ゲート電極と、ソース電極とドレイン電極を、等しい電位とする際、絶縁膜の膜厚t
insulatorを極端に薄くした場合を考える。その際、絶縁膜の裏面の絶縁材料I
reasとの界面における、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端E
c−frontとフェルミ準位E
fとのエネルギー差(E
c−front−E
f)は、絶縁膜の表面に接する金属材料M
gateの仕事関数eψ(M
gate)eVと、In
yGa
1−yNチャネル層の電子親和力eχ(In
yGa
1−yN)eVとの差、(eχ(In
yGa
1−yN)−eψ(M
gate))eVを用いて、(E
c−front−E
f)≒(eχ(In
yGa
1−yN)−eψ(M
gate))eVと近似できる。その際、(eχ(In
yGa
1−yN)−eψ(M
gate))eV
≧1eVの条件を満たすことがより好ましい。
【0143】
傾斜組成AlGaNからなるバッファ層は、ノンドープの層とする。その際、ノンドープの傾斜組成AlGaNからなるバッファ層中に存在する、浅いn型不純物(ドナー)濃度:N
SD−bufferは、N
SD−buffer≦1×10
16 cm
−3の範囲であることがより好ましい。
【0144】
傾斜組成AlGaNからなるバッファ層の表面側のAl組成(xt)は、Al
xGa
1−xN下部障壁層に用いる、格子緩和したAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)のAl組成(x)と一致させる。
【0145】
C軸成長のAl
uGa
1−uN(0≦u≦1)を含むバッファ層として、前記アンドープの傾斜組成AlGaNからなるバッファ層に代えて、下記の層を利用することもできる。例えば、バッファ層として、厚さ方向に階段状にAl組成を変化させたアンドープのAlGaN層を利用することができる。
【0146】
同様に、アンドープのAlGaN/GaN超格子層において、厚さ方向にAlGaN層とGaN層の膜厚比を変化させたものを、バッファ層に用いてもよい。あるいは、アンドープのAlN/GaN超格子層において、厚さ方向にAlN層とGaN層の膜厚比を変化させたものを、バッファ層に用いてもよい。
【0147】
例えば、AlGaN/GaNの組み合わせからなる超格子構造を利用して、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層と同等の格子定数変化を達成する場合、各AlN/GaNの膜厚比率を膜厚方向に変化させる。その際、各AlN/GaNの膜厚和(超格子の繰り返し周期)d
latticeを、1nm≦d
lattice≦10nmの範囲に選択することが好ましい。
【0148】
例えば、AlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造を利用して、傾斜組成AlGaNからなるバッファ層と同等の格子定数変化を達成する場合、各AlN/GaNの膜厚比率、u:(1−u)を膜厚方向に変化させる。その際、各AlN/GaNの膜厚和(超格子の繰り返し周期)d
latticeを、1nm≦d
lattice≦10nmの範囲に選択することが好ましい。
【0149】
階段状にAl組成を変化させたアンドープのAlGaN層、あるいは、アンドープのAlGaN/GaN超格子層、アンドープのAlN/GaN超格子層を利用する際には、バッファ層の表面側の実効的な格子定数a
effectは、Al
xGa
1−xN下部障壁層に用いる、格子緩和したAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)の格子定数a(Al
xGa
1−xN)と一致させる。
【0150】
Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面は、ヘテロ接合界面を形成している。本発明にかかる半導体装置では、電界効果トランジスタを構成する際、ゲート電極直下のチャネル領域においては、「ON状態」の時、In
yGa
1−yNチャネル層内にキャリア(電子)を蓄積し、2次元電子ガスを形成する。一方、Al
xGa
1−xN下部障壁層中には、キャリア(電子)が存在しない状態とする。「OFF状態」の時、In
yGa
1−yNチャネル層内にキャリア(電子)が存在しない状態とする。
【0151】
そのため、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層とのヘテロ接合界面を、障壁として利用する。この障壁は、Al
xGa
1−xNとIn
yGa
1−yNとの伝導帯エネルギー差によるバンド不連続ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)に起因している。室温(T=300K)において、この障壁が有効に機能するためには、バンド不連続ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)は、少なくとも、2kT(kは、ボルツマン定数、Tは、温度を示す)以上である必要がある。
【0152】
一方、リセス部が形成される領域以外であり、Al
zGa
1−zNコンタクト層が存在する領域では、「ON状態」、「OFF状態」のいずれでも、In
yGa
1−yNチャネル層内にキャリア(電子)が蓄積され、2次元電子ガスが形成されている状態とする。このAl
zGa
1−zNコンタクト層が存在する領域でも、Al
xGa
1−xN下部障壁層中には、キャリア(電子)が存在しない状態とする。勿論、バッファ層中にも、キャリア(電子)が存在しない状態とする。
【0153】
一方、In
yGa
1−yNチャネル層を構成するIn
yGa
1−yNの格子定数は、圧縮歪みが無い場合は、a(In
yGa
1−yN)であるが、Al
xGa
1−xN下部障壁層上にエピタキシャル成長される際、このAl
xGa
1−xNの格子定数a(Al
xGa
1−xN)と一致している。この圧縮歪みe
zz(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)は、{(a(In
yGa
1−yN)−a(Al
xGa
1−xN))/a(Al
xGa
1−xN)}となっている。
【0154】
このIn
yGa
1−yNチャネル層の膜厚t
channelは、格子不整合(a(In
yGa
1−yN)−a(Al
xGa
1−xN))における、臨界膜厚t
critical(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)以下に選択される。In
yGa
1−yNチャネル層の膜厚t
channelは、20nm≧t
channel≧5nmの範囲に選択することが好ましい。従って、臨界膜厚t
critical(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)は、t
critical(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)>t
channel≧5nmとなるように、圧縮歪みe
zz(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)の範囲を選択する。
【0155】
例えば、Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成(x)を、x=0.1とする場合、In
yGa
1−yNチャネル層のIn組成(y)は、0.2≧y≧0の範囲、特には、0.05≧y≧0.01の範囲に選択することが好ましい。このIn
yGa
1−yNチャネル層のIn組成(y)の範囲、0.2≧y≧0では、臨界膜厚t
critical(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)は、5nm〜100nmの範囲となる。従って、In
yGa
1−yNチャネル層の膜厚t
channelは、100nm≧t
channel≧5nmの範囲に選択することができる。また、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層間のバンド不連続ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)は、200meV〜550meVの範囲となる。
【0156】
本発明にかかる半導体装置では、電界効果トランジスタを構成する際、「ON状態」では、In
yGa
1−yNチャネル層中に蓄積されるキャリア(電子)は、2次元電子ガスを形成する。この生成する2次元電子ガスの移動度を高くするため、In
yGa
1−yNチャネル層中に存在する、イオン化した、浅いn型不純物(ドナー)の濃度を抑制することが好ましい。従って、In
yGa
1−yNチャネル層中に存在する、浅いn型不純物(ドナー)の濃度N
SD−channelは、1×10
17 cm
−3≧N
SD−channel≧0、好ましくは、1×10
16 cm
−3≧N
SD−channel≧0とする。
【0157】
「OFF状態」では、In
yGa
1−yNチャネル層中に存在する、浅いn型不純物(ドナー)も、イオン化しており、In
yGa
1−yNチャネル層は、空乏化している。このIn
yGa
1−yNチャネル層中に含まれる、イオン化した浅いn型不純物(ドナー)に起因する空間電荷の面密度、Q
SC−channelは、Q
SC−channel=q・t
channel・N
SD−channelである。
【0158】
一方、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)が生成している。「OFF状態」では、ゲート電極の直下のチャネル領域では、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層は、ともに、空乏化している。従って、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)と、Al
xGa
1−xN下部障壁層中の正の空間電荷の面密度、Q
SC−barrierと、In
yGa
1−yNチャネル層中の正の空間電荷の面密度、Q
SC−channelの和は、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+(Q
SC−barrier+Q
SC−channel)≦0となっている。
【0159】
換言すると、本発明にかかる半導体装置において、電界効果トランジスタを構成する際、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+(Q
SC−barrier+Q
SC−channel)≦0の条件が達成されると、V
G=0Vの状態でも、「OFF状態」となる。すなわち、「ノーマリー・OFF」の状態となり、V
T≧0Vのエンハンスメント型の電界効果トランジスタとなる。
【0160】
一方、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+(Q
SC−barrier+Q
SC−channel)>0の場合は、V
G=0Vの状態では、Al
xGa
1−xN下部障壁層あるいは、In
yGa
1−yNチャネル層のいずれかは、空乏化していない状態となっている。その際、V
G=0Vの熱平衡状態において、少なくとも、絶縁膜とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面における、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端のエネルギー、Ec(In
yGa
1−yN)
frontと、フェルミ・レベルE
fとのエネルギー差(Ec(In
yGa
1−yN)
front−E
f)は、(Ec(In
yGa
1−yN)
front−E
f)<0となる。すなわち、V
G=0Vの熱平衡状態においても、絶縁膜とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面に、キャリア(電子)が存在する状態となり、「ノーマリー・ON」の状態となり、V
T<0Vのディプレッション型の電界効果トランジスタとなる。
【0161】
なお、後述する第三の実施形態に示す例のように、In
yGa
1−yNチャネル層が、(eχ(In
yGa
1−yN)−eψ(M
gate))eV≧50meVの条件を満足し、その浅いn型不純物(ドナー)の濃度N
SD−channelが、N
SD−channel=0 cm
−3であり、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+(Q
SC−barrier)>0である場合、絶縁膜の膜厚が増すと、V
G=0Vの熱平衡状態において、ゲート電極直下のチャネル領域の伝導帯バンド図は、
図8に例示する形状に類するものとなる。すなわち、絶縁膜の膜厚が増すと、絶縁膜とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面における、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端のエネルギー、Ec(In
yGa
1−yN)
frontと、フェルミ・レベルE
fとのエネルギー差(Ec(In
yGa
1−yN)
front−E
f)は、(Ec(In
yGa
1−yN)
front−E
f)>0となる。一方、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面における、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端のエネルギー、Ec(In
yGa
1−yN)
rearと、フェルミ・レベルE
fとのエネルギー差(Ec(In
yGa
1−yN)
rear−E
f)は、(Ec(In
yGa
1−yN)
rear−E
f)>0となる。
【0162】
本発明にかかる半導体装置においては、リセス部が形成される領域以外であり、Al
zGa
1−zNコンタクト層が存在する領域では、「ON状態」、「OFF状態」のいずれでも、In
yGa
1−yNチャネル層内にキャリア(電子)が蓄積され、2次元電子ガスが形成されている状態とする。このAl
zGa
1−zNコンタクト層が存在する領域でも、Al
xGa
1−xN下部障壁層中には、キャリア(電子)が存在しない状態とする。
【0163】
In
yGa
1−yNチャネル層と同様に、Al
zGa
1−zNコンタクト層を構成するAl
zGa
1−zN(0≦z≦1)は、Al
xGa
1−xN下部障壁層の格子定数a(Al
xGa
1−xN)と同じ格子定数を有するように、エピタキシャル成長により形成されている。従って、Al
zGa
1−zNコンタクト層を構成するAl
zGa
1−zN(0≦z≦1)は、歪み有する状態となっている。Al
zGa
1−zNコンタクト層を構成するAl
zGa
1−zNの格子定数は、歪みが無い場合は、a(Al
zGa
1−zN)とすると、その歪みe
zz(Al
zGa
1−zN/Al
xGa
1−xN)は、{(a(Al
zGa
1−zN)−a(Al
xGa
1−xN))/a(Al
xGa
1−xN)}となっている。
【0164】
このAl
zGa
1−zNコンタクト層の膜厚t
contactは、格子不整合(a(Al
zGa
1−zN)−a(Al
xGa
1−xN))における、臨界膜厚t
critical(Al
zGa
1−zN/Al
xGa
1−xN)以下に選択される。
【0165】
Al
xGa
1−xN下部障壁層のAl組成x、Al
zGa
1−zNコンタクト層のAl組成zの任意の組み合わせに対し、臨界膜厚t
critical(Al
zGa
1−zN/Al
xGa
1−xN)は5nm以上となる。また、0.2≧|z−x|≧0をみたす場合には、臨界膜厚t
critical(Al
zGa
1−zN/Al
xGa
1−xN)は50nm以上となる。
【0166】
Al
zGa
1−zNコンタクト層が存在する領域において、In
yGa
1−yNチャネル層内にキャリア(電子)が蓄積され、2次元電子ガスが形成されている状態では、少なくとも、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面にキャリア(電子)が蓄積された状態とする。その際、キャリア(電子)を蓄積するための障壁として、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層とのヘテロ接合界面を利用する。この障壁は、Al
zGa
1−zNとIn
yGa
1−yNとの伝導帯エネルギー差によるバンド不連続ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)に起因している。室温(T=300K)において、この障壁が有効に機能するためには、バンド不連続ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)は、少なくとも、2kT(kは、ボルツマン定数、Tは、温度を示す)以上である必要がある。
【0167】
一方、In
yGa
1−yNチャネル層とAl
xGa
1−xN下部障壁層とのヘテロ接合界面には、Al
zGa
1−zNとIn
yGa
1−yNとの伝導帯エネルギー差によるバンド不連続ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)が存在している。このバンド不連続ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)も、少なくとも、2kT以上としている。
【0168】
ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)>ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)≧2kTとする場合には、Al
zGa
1−zNのAl組成(z)を、Al
xGa
1−xNのAl組成(x)よりも大きくする。その際、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)が生成している。また、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、正の界面電荷σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)が生成している。
【0169】
Al
zGa
1−zNのAl組成(z)が、Al
xGa
1−xNのAl組成(x)よりも大きい場合(z≧x)、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)と正の界面電荷σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)との和は、{σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)}≧0となる。その際、In
yGa
1−yNチャネル層に対して、分極効果に起因するキャリア(電子)が供給される。この分極効果に起因するキャリア(電子)の量を、面密度N
Pとすると、(−q・N
P)+{σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)}=0の条件を満たしている。
【0170】
その際、Al
zGa
1−zNコンタクト層、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
xGa
1−xN下部障壁層が、いずれもアンドープである場合であっても、In
yGa
1−yNチャネル層中には、少なくとも、この分極効果に起因するキャリア(電子)が蓄積される。ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)>ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)≧2kTであるため、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面に、キャリア(電子)は蓄積され、2次元電子ガスを形成することが可能である。
【0171】
ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)=ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)≧2kTとする場合には、Al
zGa
1−zNのAl組成(z)は、Al
xGa
1−xNのAl組成(x)と等しくする。その際も、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)が生成している。また、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、正の界面電荷σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)が生成している。
【0172】
Al
zGa
1−zNのAl組成(z)が、Al
xGa
1−xNのAl組成(x)と等しい場合(z=x)、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)と正の界面電荷σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)との和は、{σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)+σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)}=0となる。従って、In
yGa
1−yNチャネル層に対して、分極効果に起因するキャリア(電子)の供給はなされない。
【0173】
その際、In
yGa
1−yNチャネル層、Al
xGa
1−xN下部障壁層は、いずれもアンドープであるが、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする。その場合、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に存在する浅いn型不純物(ドナー)のイオン化により生成するキャリア(電子)の一部は、In
yGa
1−yNチャネル層へと供給され、蓄積される。Al
zGa
1−zNコンタクト層には浅いn型不純物(ドナー)がドーピングされ、一方、Al
xGa
1−xN下部障壁層はアンドープであるため、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面に、キャリア(電子)は蓄積され、2次元電子ガスを形成することが可能である。
【0174】
あるいは、In
yGa
1−yNチャネル層はアンドープであるが、Al
zGa
1−zNコンタクト層中と、Al
xGa
1−xN下部障壁層中に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする。その場合、その場合、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に存在する浅いn型不純物(ドナー)のイオン化により生成するキャリア(電子)の一部と、Al
xGa
1−xN下部障壁層中に存在する浅いn型不純物(ドナー)のイオン化により生成するキャリア(電子)は、In
yGa
1−yNチャネル層へと供給され、蓄積される。従って、Al
xGa
1−xN下部障壁層中には、キャリア(電子)は存在してなく、空乏化しているが、Al
zGa
1−zNコンタクト層では、In
yGa
1−yNチャネル層との界面近傍は、空乏化している。そのため、ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)=ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)である場合には、In
yGa
1−yNチャネル層に供給されているキャリア(電子)の大半は、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面に蓄積され、2次元電子ガスを形成する。
【0175】
さらに、In
yGa
1−yNチャネル層へと供給されるキャリア(電子)の総量が多い場合には、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面への蓄積に加えて、場合によっては、In
yGa
1−yNチャネル層とAl
xGa
1−xN下部障壁層の界面にも、一部キャリア(電子)の蓄積が起こる。
【0176】
本発明にかかる半導体装置においては、In
yGa
1−yNチャネル層中を走行するキャリア(電子)は、2次元電子ガスとして、高い移動度を示す状態としている。そのため、In
yGa
1−yNチャネル層は、アンドープとして、イオン化した浅いn型不純物(ドナー)の濃度を低減し、イオン化不純物散乱の影響を低減することが好ましい。
【0177】
例えば、本発明にかかる半導体装置を、「ノーマリー・ON」の状態とし、V
T<0Vのディプレッション型の電界効果トランジスタに構成する際、ゲート電極直下のチャネル領域では、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面に、キャリア(電子)が存在する状態とする。その際、Al
xGa
1−xN下部障壁層中にドーピングする浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD−barrierを抑えて、代わりに、In
yGa
1−yNチャネル層の一部または全体に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする形態を選択することも可能である。
【0178】
なお、Al
xGa
1−xN下部障壁層中に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする際には、Al
xGa
1−xN下部障壁層全体に、浅いn型不純物(ドナー)を濃度N
SD−barrierで均一にドーピングする形態に代えて、アンドープスペーサ層を挿入することもできる。例えば、Al
xGa
1−xN下部障壁層を、アンドープAl
xGa
1−xN/N型Al
xGa
1−xN/アンドープAl
xGa
1−xNの形態とし、Al
xGa
1−xN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面、ならびに、Al
xGa
1−xN下部障壁層とバッファ層の界面には、アンドープAl
xGa
1−xNが存在する状態とする。その際、N型Al
xGa
1−xN部分の膜厚t
barrier−Modと、浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD−barrier−Modを、{t
barrier−Mod・N
SD−barrier−Mod}≒{t
barrier・N
SD−barrier}とすると、同等の効果が達成される。
【0179】
また、Al
zGa
1−zNコンタクト層中に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする際には、Al
zGa
1−zNコンタクト層全体に、浅いn型不純物(ドナー)を濃度N
SD−contactで均一にドーピングする形態に代えて、アンドープスペーサ層を挿入することもできる。例えば、Al
zGa
1−zNコンタクト層を、アンドープAl
zGa
1−zN/N型Al
zGa
1−zNの形態とし、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層の界面には、アンドープAl
zGa
1−zNが存在する状態とする。その際、アンドープAl
zGa
1−zN部分の膜厚t
contact−undopedは、10nm≧t
contact−undopedの範囲に選択する。一方、N型Al
zGa
1−zN部分の膜厚t
contact−Modと、浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD−contact−Modを、{t
contact−Mod・N
SD−contact−Mod}≒{t
contact・N
SD−contact}とすると、同等の効果が達成される。
【0180】
さらに、リセス部が形成される領域以外であり、コンタクト層が存在する領域では、「ON状態」、「OFF状態」のいずれでも、チャネル層内にキャリア(電子)が蓄積され、コンタクト層とチャネル層とのヘテロ接合界面に2次元電子ガスが形成されている状態とすると、本発明と同等の効果が発揮される。
【0181】
例えば、Al
zGa
1−zNコンタクト層に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングし、In
yGa
1−yNチャネル層へキャリア(電子)を供給する形態に代えて、下記の形態を用いても、同等の効果が発揮される。
【0182】
例えば、InAlGaNからなるコンタクト層を採用し、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端のエネルギーと、InAlGaNコンタクト層の伝導帯端のエネルギーとの差、バンド不連続ΔEc(InAlGaN/In
yGa
1−yN)を、ΔEc(InAlGaN/In
yGa
1−yN)=ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)とする。さらに、InAlGaNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、正の界面電荷σ(InGaAlN/In
yGa
1−yN)が生成している状態とする。その際、InAlGaNコンタクト層に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングし、In
yGa
1−yNチャネル層へキャリア(電子)を供給する形態とする。
【0183】
その結果、In
yGa
1−yNチャネル層中に供給されるキャリア(電子)は、InAlGaNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面に蓄積され、2次元電子ガスを生成する。また、InAlGaNコンタクト層中に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングしており、ソース電極、ドレイン電極に利用するオーミック電極のコンタクト抵抗は、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングしたAl
zGa
1−zNコンタクト層を用いた場合と、同様に低くすることが可能である。
【0184】
上記のように、
・コンタクト層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(contact/channel)が、ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)と同様に、このコンタクト層とチャネル層の界面にキャリア(電子)を蓄積し、2次元電子ガスを生成することができる;
・コンタクト層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、正の界面電荷σ(contact/channel)が生成している状態である;
・コンタクト層を構成するエピタキシャル成長層の格子定数は、Al
xGa
1−xN下部障壁層の格子定数a(Al
xGa
1−xN)となっている;
以上の3つの条件を満たす範囲では、
Al
zGa
1−zNに代えて、他のIII族窒化物半導体からなるコンタクト層を採用しても、同等の効果を達成することができる。例えば、GaN、InGaN、InAlN、InAlGaN中から、上記の条件を満足するIII族窒化物半導体を選択して、コンタクト層に用いることもできる。
【0185】
さらには、
・実効的な格子定数が、Al
zGa
1−zNの格子定数a(Al
zGa
1−zN)と等しい;
・実効的な伝導帯端のエネルギーEcは、コンタクト層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(contact/channel)を、ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)と同程度とする;
・コンタクト層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、正の界面電荷σ(contact/channel)が生成し、σ(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)と同等である;
以上の3つの条件を満たす範囲では、
Al
zGa
1−zNに代えて、AlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0186】
例えば、上記の要件を満足するAlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造は、各AlN/GaNの膜厚比率を、z:(1−z)程度に選択し、各AlN/GaNの膜厚和(超格子の繰り返し周期)d
latticeを、1nm≦d
lattice≦10nmの範囲に選択することで達成できる。さらに、上記の要件を満足するAlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造に対して、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする場合、例えば、AlN膜に選択的にドーピングを行うこともできる。
【0187】
Al
zGa
1−zNコンタクト層に代えて、他のIII族窒化物半導体からなるコンタクト層を採用する際にも、例えば、InGaN、InAlN、InAlGaNに関して、上記の要件に対応する要件を満足する、InN/GaN、InN/AlN、InN/AlGaNなどの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0188】
Al
xGa
1−xN下部障壁層に関しても、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングして、In
yGa
1−yNチャネル層へキャリア(電子)を供給する形態に代えて、下記の形態を用いても、同等の効果が発揮される。
【0189】
例えば、Al
xGa
1−xNと同じ格子定数を有する、InAlGaNからなる下部障壁層を採用し、In
yGa
1−yNチャネル層の伝導帯端のエネルギーと、InAlGaN下部障壁層の伝導帯端のエネルギーとの差、バンド不連続ΔEc(InAlGaN/In
yGa
1−yN)を、ΔEc(InAlGaN/In
yGa
1−yN)=ΔEc(Al
zGa
1−zN/In
yGa
1−yN)とする。さらに、InAlGaN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(In
yGa
1−yN/InAlGaN)が生成している状態とする。その際、InAlGaN下部障壁層に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングし、In
yGa
1−yNチャネル層へキャリア(電子)を供給する形態としてもよい。
【0190】
その結果、In
yGa
1−yNチャネル層中に供給されるキャリア(電子)は、Al
zGa
1−zNコンタクト層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面に蓄積され、2次元電子ガスを生成する。また、ゲート電極直下のチャネル領域においては、「ON状態」では、InAlGaN下部障壁層とIn
yGa
1−yNチャネル層との界面にキャリア(電子)が蓄積され、2次元電子ガスを生成する状態とできる。
【0191】
上記のように、
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(barrier/channel)が、ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)と同様に、この下部障壁層とチャネル層の界面にキャリア(電子)を蓄積した際、2次元電子ガスを生成することができる;
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(channel/barrier)が生成している状態である;
・下部障壁層を構成するエピタキシャル成長層の格子定数は、Al
xGa
1−xNの格子定数a(Al
xGa
1−xN)となっている;
以上の3つの条件を満たす範囲では、
Al
xGa
1−xNに代えて、他のIII族窒化物半導体からなる下部障壁層を採用しても、同等の効果を達成することができる。例えば、GaN、InGaN、InAlN、InAlGaN中から、上記の条件を満足するIII族窒化物半導体を選択して、下部障壁層に用いることもできる。
【0192】
さらには、
・実効的な格子定数が、Al
xGa
1−xNの格子定数a(Al
xGa
1−xN)と等しい;
・実効的な伝導帯端のエネルギーEcは、下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(barrier/channel)を、ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)と同程度とする;
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(channel/barrier)が生成し、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)と同等である;
以上の3つの条件を満たす範囲では、
Al
xGa
1−xNに代えて、AlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0193】
例えば、上記の要件を満足するAlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造は、各AlN/GaNの膜厚比率を、x:(1−x)程度に選択し、各AlN/GaNの膜厚和(超格子の繰り返し周期)d
latticeを、1nm≦d
lattice≦10nmの範囲に選択することで達成できる。さらに、上記の要件を満足するAlN/GaNの組み合わせからなる超格子構造に対して、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする場合、例えば、AlN膜に選択的にドーピングを行うこともできる。
【0194】
Al
xGa
1−xN下部障壁層に代えて、他のIII族窒化物半導体からなる下部障壁層を採用する際にも、例えば、InGaN、InAlN、InAlGaNに関して、上記の要件に対応する要件を満足する、InN/GaN、InN/AlN、InN/AlGaNなどの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0195】
In
yGa
1−yNチャネル層に関しても、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングして、In
yGa
1−yNチャネル層中にキャリア(電子)を蓄積する形態に代えて、下記の形態を用いても、同等の効果が発揮される。
【0196】
例えば、In
yGa
1−yNと同じ格子定数を有する、InAlGaNからなるチャネル層を採用し、InAlGaNチャネル層の伝導帯端のエネルギーと、Al
xGa
1−xN下部障壁層の伝導帯端のエネルギーとの差、バンド不連続ΔEc(InAlGaN/Al
xGa
1−xN)を、ΔEc(InAlGaN/Al
xGa
1−xN)=ΔEc(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)とする。さらに、InAlGaNチャネル層とAl
xGa
1−xN下部障壁層との界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(InAlGaN/Al
xGa
1−xN)が生成している状態とする。その際、InAlGaNチャネル層に浅いn型不純物(ドナー)をドーピングし、InAlGaNチャネル層中にキャリア(電子)を蓄積する形態とする。
【0197】
その結果、InAlGaNチャネル層中に蓄積されるキャリア(電子)は、Al
zGa
1−zNコンタクト層とInAlGaNチャネル層との界面に蓄積され、2次元電子ガスを生成する。また、ゲート電極直下のチャネル領域においては、「ON状態」では、InAlGaNチャネル層とAl
xGa
1−xN下部障壁層との界面にキャリア(電子)が蓄積され、2次元電子ガスを生成する状態とできる。
【0198】
上記のように、
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(barrier/channel)が、ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)と同様に、この下部障壁層とチャネル層の界面にキャリア(電子)を蓄積した際、2次元電子ガスを生成することができる;
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(channel/barrier)が生成している状態である;
・チャネル層を構成するエピタキシャル成長層の格子定数は、Al
xGa
1−xNの格子定数a(Al
xGa
1−xN)となっている;
・チャネル層中に、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングしており、チャネル層中にキャリア(電子)を蓄積する形態である;
以上の4つの条件を満たす範囲では、
In
yGa
1−yNに代えて、他のIII族窒化物半導体からなるチャネル層を採用しても、同等の効果を達成することができる。例えば、InN、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaN中から、上記の条件を満足するIII族窒化物半導体を選択して、チャネル層に用いることもできる。
【0199】
さらには、
・実効的な格子定数が、In
yGa
1−yNの格子定数a(In
yGa
1−yN)と等しい;
・実効的な伝導帯端のエネルギーEcは、下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面におけるバンド不連続ΔEc(barrier/channel)を、ΔEc(Al
xGa
1−xN/In
yGa
1−yN)と同程度とする;
・下部障壁層とチャネル層とのヘテロ接合界面には、分極効果により、負の界面電荷σ(channel/barrier)が生成し、σ(In
yGa
1−yN/Al
xGa
1−xN)と同等である;
以上の3つの条件を満たす範囲では、
In
yGa
1−yNに代えて、InN/GaNの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0200】
例えば、上記の要件を満足するInN/GaNの組み合わせからなる超格子構造は、各InN/GaNの膜厚比率を、y:(1−y)程度に選択し、各InN/GaNの膜厚和(超格子の繰り返し周期)d
latticeを、1nm≦d
lattice≦10nmの範囲に選択することで達成できる。さらに、上記の要件を満足するInN/GaNの組み合わせからなる超格子構造に対して、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングする場合、例えば、GaN膜に選択的にドーピングを行うこともできる。
【0201】
In
yGa
1−yNチャネル層に代えて、他のIII族窒化物半導体からなるチャネル層を採用する際にも、例えば、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNに関して、上記の要件に対応する要件を満足する、InN/GaN、AlN/GaN、InN/AlN、InN/AlGaNなどの組み合わせからなる超格子構造を用いてもよい。
【0202】
以下に、具体例を挙げて、本発明の半導体装置をより詳しく説明する。ここに示す具体例は、本発明の最良の実施形態の一例であるが、本発明は、これら具体例に例示される形態に限定されるものではない。
【0203】
以下に例示する具体例は、本発明の半導体装置を電界効果トランジスタの形態に構成する事例である。
【0204】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる半導体装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【0205】
図1に例示する半導体装置において、基板40は(0001)面の炭化珪素(SiC)基板、バッファ層41は膜厚t
buffer4の傾斜組成AlGaN層、下部障壁層42は膜厚t
barrier4のアンドープAl
x4Ga
1−x4N層、チャネル層43は膜厚t
channel4のアンドープGaN層、コンタクト層44は膜厚t
contact4のAl
z4Ga
1−z4N層である。ここで、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44のAl組成z
4は、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42のAl組成x
4より大きく設定する、すなわち、x
4<z
4とする。GaNチャネル層43とAl
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
z4Ga
1−z4Nの伝導帯エネルギーEc(Al
z4Ga
1−z4N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
z4Ga
1−z4N/GaN)=Ec(Al
z4Ga
1−z4N)−Ec(GaN)が存在する。その結果、GaNチャネル層43とAl
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とのヘテロ界面の近傍に、電子が蓄積され、2次元電子ガス47が生成されている。
【0206】
一方、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
x4Ga
1−x4Nの伝導帯エネルギーEc(Al
x4Ga
1−x4N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
x4Ga
1−x4N/GaN)=Ec(Al
x4Ga
1−x4N)−Ec(GaN)が存在する。このバンド不連続ΔEc(Al
x4Ga
1−x4N/GaN)が、GaNチャネル層43中に存在する電子に対する下部障壁として機能する。
【0207】
Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44上に、ソース電極4S、ドレイン電極4Dが形成されている。ソース電極4Sとドレイン電極4Dは、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44と、オーム性接触をとっている。ソース電極4Sとドレイン電極4Dで挟まれた部位に、ゲート電極4Gが設けられ、電界効果トランジスタが構成されている。ソース電極4Sとドレイン電極4Dで挟まれた部位では、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44の一部をエッチング除去して、リセス部が形成されている。このリセス部には、露出したGaNチャネル層43の表面を覆うように、SiNからなる絶縁膜45が積層されている。このリセス部には、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44の上面に、該SiNからなる絶縁膜45を介して、ゲート電極4Gが埋め込まれるように形成されている。該ゲート電極4Gの下面では、該SiNからなる絶縁膜45を介して、GaNチャネル層43の上面に対して、ショットキー性接触(MIS接合)がとられている。
【0208】
図1に例示する構成の半導体装置は、以下の手順に従って作製される。(0001)面SiC基板40上に、例えば、有機金属気相成長(Metalorganic Chemical Vapor Deposition:MOCVDと略する)法により、上述の各III族窒化物半導体層を、下記表4に示す膜厚で順次成長させる。なお、各III族窒化物半導体層を、(0001)面SiC基板40上に、C軸成長させている。
【0209】
【表4】
その際、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42のAl組成x
4を、例えば、x
4=0.1とする場合、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44のAl組成z
4を、例えば、z
4=0.25とすることで、上記条件:x
4<z
4を満たす構造とできる。一方、傾斜組成AlGaNバッファ層41のAl組成x
4B(t
4B)は、基板40(t
4B=0)から、バッファ層41の表面(t
4B=1μm)に向かうに従って、徐々に減少させている。例えば、傾斜組成AlGaNバッファ層41のAl組成x
4B(t
4B)を、x
4B(t
4B=0)=1からx
4B(t
4B=1μm)=0.1まで、dx
4B(t
4B)/dt
4B=−0.9 μm
−1の比率で減少させる。
【0210】
x
4=0.1、z
4=0.25の場合、GaNチャネル層43とAl
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とのヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス47の移動度は、1500 cm
2/Vs(20℃)程度となっている。この2次元電子ガス47の移動度は、良好な値である。また、蓄積される2次元電子ガス47の密度N
2d-gas4-1は、N
2d-gas4-1=0.9×10
13cm
−2(20℃)となっている。
【0211】
GaNチャネル層43は、アンドープであり、イオン化不純物の濃度が低いため、イオン化不純物散乱が抑制されている。また、GaNチャネル層43とAl
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とのヘテロ界面は、原子レベルで平坦であるので、界面散乱も抑制されている。このイオン化不純物散乱と界面散乱が抑制されていることに起因して、ヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス47の移動度は、上記の良好な値を示している。
【0212】
ソース電極4S、ドレイン電極4Dの形成工程では、まず、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44上には、例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)などの金属を蒸着し、パターニングを行う。次いで、例えば、窒素ガス雰囲気中、温度850℃、30秒間、アロイ処理することにより、オーム性接触を形成する。
【0213】
次に、Cl
2系ガスを用いて、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44の一部をエッチング除去することにより、リセス部を形成する。このリセス部では、GaNチャネル層43の表面が露呈している。このリセス・エッチング工程後、リセス部における、GaNチャネル層43の膜厚t
channel4−Gは、25nmとなっている。ソース電極4Sとドレイン電極4Dで挟まれる領域の幅:W
S-D4を、例えば、W
S-D4=5μmとする際、このリセス部の幅:W
recess4を、例えば、W
recess4=2μmとする。その際、リセス部の深さd
recess4は、d
recess4=45nmとしている。
【0214】
その後、例えば、プラズマ気相成長(Plasma−Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVDと略する)法を用いて、SiNからなる絶縁膜45を成膜する。その際、形成されるSiNの膜厚は、平坦な領域上では、t
SiN4=5nm〜200nmの範囲に選択する。一方、リセス部の側壁面に形成されるSiNの膜厚t
SiN4-wellは、通常、t
SiN4と同じかそれ以下になる。
【0215】
図1に例示する半導体装置は、リセス部の側壁面の傾斜角が90度である事例であるが、リセス部の側壁面の被覆性を改善するため、傾斜角を90度より小さくしてもよい。
【0216】
SiNからなる絶縁膜45を成膜した後、Ti/白金(Pt)/Auなどの金属を蒸着し、リフトオフによりゲート電極4Gを形成する。このリフトオフにより形成される、ゲート電極4Gは、絶縁膜45で被覆されている、リセス部を埋め込むように形成されている。そのリセス部の底部における、ゲート電極4Gの実効的なゲート長L
4G-effectは、L
4G-effect≒W
recess4−2×t
SiN4-wellとなる。このリセス部の底部において、ゲート電極4Gは、SiNからなる絶縁膜45を介して、GaNチャネル層43の上に形成され、ショットキー接触(MIS接合)を構成している。ゲート電極4Gの実効的なゲート長L
4G-effectと、このゲート電極4G直下の絶縁膜の膜厚t
SiN4の比L
4G-effect/t
SiN4は、t
SiN4=5nm〜200nmの範囲に選択する際、400〜8の範囲となる。
【0217】
例えば、t
SiN4≧45nmの場合、d
recess4=45nmであり、リセス部は、SiNからなる絶縁膜45で埋め込まれた状態となる。その際、SiNからなる絶縁膜45の上面には、(W
recess4−2×t
SiN4)に相当する幅の凹部が形成され、ゲート電極4Gは、この凹部を埋め込むように形成される。その際、ゲート電極4Gの実効的なゲート長L
4G-effectは、(W
recess4−2×t
SiN4)に相当する。
【0218】
一方、t
SiN4=5nmの場合、d
recess4=45nmであり、オーバーエッチング量(d
recess4−t
contact4)=5nmとなり、オーバーエッチング量(d
recess4−t
contact4)と絶縁膜の膜厚t
SiN4は等しくなっている。なお、絶縁膜の膜厚t
SiN4を、オーバーエッチング量(d
recess4−t
contact4)よりも小さくしても、別段、問題はない。
【0219】
絶縁膜45に用いるSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eV、Tiの仕事関数eψ(Ti)eV、チャネル層43のGaNの電子親和力eχ(GaN)eVは、それぞれ、eχ(SiN)eV=1.4eV、eψ(Ti)eV=4.3eV、eχ(GaN)eV=3.9eVと見積もられる。従って、仕事関数の差異に起因して、SiN絶縁膜45とゲート電極4GのTiの界面には、{eχ(SiN)−eψ(Ti)}eV≒2.9eVの障壁が、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43の界面には、{eχ(SiN)−eχ(GaN)}≒2.5eVの障壁(接触電位差)が、それぞれ形成されている。なお、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x4Ga
1−x4/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。また、(eχ(GaN)−eψ(Ti))eV≒0.4eVとなっている。
【0220】
図2は、
図1に例示する、本発明の第一の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部に形成されているゲート電極4Gの直下の伝導帯バンド図を模式的に示す。
図2の伝導帯バンド図には、ゲート電極4Gに印加される、ゲート・バイアス:V
G4を、V
G4=0Vと設定する状態を示す。従って、ゲート電極4GのTiの電位は、フェルミ・レベルE
fと一致している。
【0221】
(0001)面成長のAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42は、その下層に、傾斜組成AlGaNバッファ層41を設けることで、格子緩和している状態となっている。この下部障壁層42のAl
x4Ga
1−x4Nの格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)は、AlNの格子定数a(AlN)とGaNの格子定数a(GaN)を用いて、近似的に、a(Al
x4Ga
1−x4N)≒x
4・a(AlN)+(1−x
4)・a(GaN)と表される。
【0222】
一方、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42上に形成されている、GaNチャネル層43、ならびに、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44は、ともに、その膜厚は薄いため、下部障壁層42のAl
x4Ga
1−x4Nの格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)と、格子定数aが実質的に一致する状態となっている。すなわち、GaNチャネル層43では、本来の格子定数a(GaN)から、格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)へと圧縮歪が生じている。また、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44では、本来の格子定数a(Al
z4Ga
1−z4N)から、格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)へと引っ張り歪が生じている。
【0223】
Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中には、格子歪みに起因する歪みe
zzは、実質的に存在していないため、ピエゾ分極:P
pe(Al
x4Ga
1−x4N)は生じない。しかし、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中には、自発性分極:P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)が存在している。C軸成長している場合、この自発性分極:P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。従って、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中に存在する分極P
42は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(Al
x4Ga
1−x4N)と自発性分極:P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)の和、すなわち、P
42=P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)+P
pe(Al
x4Ga
1−x4N)となる。この場合、P
pe(Al
x4Ga
1−x4N)≒0であるため、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中に存在する分極P
42は、P
42≒P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)と近似される。
【0224】
一方、GaNチャネル層43中には、格子歪みに起因する圧縮歪e
zz(GaN)≒{a(Al
x4Ga
1−x4N)−a(GaN)}/a(GaN)が存在しており、ピエゾ分極:P
pe(GaN)が発生する。このピエゾ分極:P
pe(GaN)は、GaNの圧電定数e
31(GaN)、e
33(GaN)、弾性定数C
13(GaN)、C
33(GaN)を用いて、P
pe(GaN)≒2e
ZZ(GaN)[e
31(GaN)−e
33(GaN)・{C
31(GaN)/C
33(GaN)}]と近似的に表される。また、自発性分極:P
sp(GaN)も存在している。C軸成長している場合、自発性分極:P
sp(GaN)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。圧縮歪e
zzに起因する、ピエゾ分極:P
pe(GaN)は、自発性分極:P
sp(GaN)を相殺する方向を有している。従って、GaNチャネル層43中に存在する分極P
43は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(GaN)と自発性分極:P
sp(GaN)の和、すなわち、P
43=P
sp(GaN)+P
pe(GaN)<P
sp(GaN)となる。
【0225】
SiN絶縁膜45は、多結晶膜またはアモルファス状の膜となっている。そのため、SiN絶縁膜45全体としては、異方性を示さず、分極は発生しない。すなわち、SiN絶縁膜45中の分極P
45は、P
45=0となっている。
【0226】
一般に、分極Pに分布がある場合、分極Pの分布に起因して発生する分極電荷σ(P)は、下記のように示される。
【0227】
σ(P)=−▽・P (▽:ナブラ演算子)
GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面においては、分極Pは、P
43からP
42へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
43が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
43/q(但し、qは、電子の電荷量(単位電荷)を表す)は、σ
43/q=(P
43−P
42)/qとなる。
【0228】
また、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面においても、分極Pは、P
45からP
43へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
45が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
45/qは、σ
45/q=(P
45−P
43)/qとなる。一方、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面では、相当の面密度で界面準位が生成している。従って、この界面で発生する界面電荷は、かかる界面準位によって、補償された状態となり、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面では、実効的には、発生した界面電荷の蓄積は観測されない。
【0229】
Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中に存在する分極P
42、GaNチャネル層43中に存在する分極P
43は、下部障壁層42を構成するAl
x4Ga
1−x4NのAl組成(x
4)に依存している。例えば、x
4=0.1の場合、P
42/q=2.13×10
13 cm
−2、P
43/q=1.61×10
13 cm
−2と計算される。その際、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面で発生する界面電荷密度σ
43/qは、σ
43/q=(P
43−P
42)/q=−5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。
【0230】
V
G4=0Vと設定する状態では、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42、GaNチャネル層43がともにアンドープである際には、n型不純物のイオン化に起因する電子の供給が無く、従って、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面で発生する界面電荷σ
43に起因する電界のみが存在する。その結果、
図2に示すように、GaNチャネル層43における、伝導帯端Ec(43)は、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に高い位置となる。換言すると、GaNチャネル層43中には、キャリア(電子)が存在していない状態となっている。そのため、このMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタは、「ノーマリー・OFF状態」となっている。ゲート電極4Gに正電圧(V
G4>0)を印加すると、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面に電子が蓄積され、2次元電子ガスが生成され、「ON状態」となる。「OFF状態」から「ON状態」となる、ゲート・バイアス:V
G4の閾値電圧V
Tは、正電圧となっており、エンハンスメント型の電界効果トランジスタとして機能する。
【0231】
「ON状態」では、ゲート電極4Gの直下では、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面近傍に蓄積される電子が走行する。この電子の移動度は、GaNチャネル層43中に存在するイオン化不純物によるイオン化不純物散乱、ならびに、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面の乱れに起因する界面散乱の影響を受ける。GaNチャネル層43はアンドープであるため、SiN絶縁膜45とGaNチャネル層43との界面近傍に生成する2次元電子ガスの移動度に対する、イオン化不純物散乱の影響は抑制されており、電子移動度が改善されている。
【0232】
図3に、
図1に例示する、MIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタについて、ポアッソン方程式を解くことによって、推定される閾値電圧V
TのSiN絶縁膜45の膜厚依存性を示す。
【0233】
本実施の形態において、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42として、アンドープのAl
x4Ga
1−x4Nを採用し、GaNチャネル層43として、アンドープのGaNを採用する際、それらのn型不純物(ドナー)濃度N
SD42と、N
SD43は、理想的には、ともに、0 cm
−3である。N
SD42=0 cm
−3、N
SD43=0 cm
−3である場合、
図3より、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4に依らず、閾値電圧V
Tは正電圧となり、エンハンスメント型のトランジスタとして動作する。実際には、アンドープAlGaN、アンドープのGaN中には、若干量の残留n型不純物が存在する。その場合でも、N
SD43=0 cm
−3であり、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD42が1×10
18 cm
−3以下の範囲では、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4に依らず、閾値電圧V
Tは正電圧となっている。しかしながら、n型不純物(ドナー)濃度N
SD42が1×10
18 cm
−3を超えると、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4によっては、閾値電圧V
Tが負電圧となる場合がある。
【0234】
上述したように、本実施の形態では、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42とのヘテロ界面には、負の分極界面電荷σ
43が発生する。そのため、N
SD43=0 cm
−3であり、n型不純物の面密度(N
SD42・t
barrier4)が、分極電荷面密度|σ
43|/qより小さい場合には、V
G=0Vの熱平衡状態では、GaNチャネル層43は空乏化し、V
T>0Vとなる。一方、n型不純物の面密度(N
SD42・t
barrier4)が、分極電荷の面密度|σ
43|/qより大きい場合には、V
G=0Vにおいて、GaNチャネル層43中に、2次元電子が生成され、V
T<0Vとなる。
図3に示す計算では、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42の厚さt
barrier4を50nmと仮定したので、N
SD42=1×10
18 cm
−3の条件は、N
SD42・t
barrier4=5×10
12 cm
−2となって、N
SD42・t
barrier4と|σ
43|/q(=5.28×10
12 cm
−2)とが等しく条件とまさに一致している。
【0235】
したがって、本実施の形態では、N
SD43=0 cm
−3であり、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中の浅いn型不純物(ドナー)濃度の面密度N
SD42・t
barrier4が、分極電荷の面密度|σ
43|/qより十分小さくなる範囲に設定することにより、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4に依らず、閾値電圧V
Tを正電圧にできることが分かった。N
SD43=0 cm
−3である場合、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42のAl組成x
4、膜厚t
barrier4、残留不純物濃度N
SD42などが若干変動しても、閾値電圧V
T>0Vの範囲に維持でき、エンハンスメント型の電界効果トランジスタを安定に作製することが可能となる。
【0236】
例えば、N
SD42=0 cm
−3、N
SD43=0 cm
−3である場合、
図2に示す、V
G=0Vの熱平衡状態におけるゲート電極4Gの直下の伝導帯バンド図において、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42とのヘテロ界面での、GaNチャネル層43の伝導帯エネルギーEc(43)は、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に高い位置となる。このヘテロ界面における、GaNチャネル層43の伝導帯エネルギーEc(43)とフェルミ・レベルE
fの差{Ec(43)−E
f}は、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4に依存している。
【0237】
図3に示すように、GaNチャネル層43として、アンドープのGaNを採用し、N
SD43=0 cm
−3である際、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD42に依存して、閾値電圧V
TのSiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4に対する依存性が変化する。例えば、N
SD42=0 cm
−3の場合でも、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4が1nm変化した際の、閾値電圧V
Tの変移量ΔV
Tは、約0.14 Vと比較的小さい。従って、SiN絶縁膜45の膜厚t
SiN4の変動に対する、閾値電圧V
Tの均一性、再現性は良好である。
【0238】
絶縁膜45を構成するSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eVと、このSiN膜と接するゲート電極4GのTiの仕事関数eψ(Ti)eVの差違に起因する、接触電位差{eχ(SiN)−eψ(Ti)}eVは、約2.9eVと大きい。従って、Ti/SiN/GaNのMIS構造を有するゲートを採用すると、ショットキー接合(MIS接合)の障壁高さΦ
barrierは、通常のMES型のショットキー接合の障壁高さより増加する。従って、
図1に例示する、MIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を順方向にバイアスした際、順方向ゲート耐圧も良好である。
【0239】
GaNチャネル層43として、アンドープのGaNを採用し、N
SD43=0 cm
−3である際、
図3に示す、閾値電圧V
Tの絶縁膜厚依存性が小さいことは、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を逆方向にバイアスした際に、絶縁膜45に加わる内部電界が小さいことを意味している。従って、逆バイアス時のトンネル電流成分は抑制されて、逆方向リーク電流も低減されている。
【0240】
図4は、
図1に例示する、本発明の第一の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部以外の、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44が存在する領域の伝導帯バンド図を模式的に示す。
【0241】
(0001)面成長のAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42は、その下層に、傾斜組成AlGaNバッファ層41を設けることで、格子緩和している状態となっている。この下部障壁層42のAl
x4Ga
1−x4Nの格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)は、AlNの格子定数a(AlN)とGaNの格子定数a(GaN)を用いて、近似的に、a(Al
x4Ga
1−x4N)≒x
4・a(AlN)+(1−x
4)・a(GaN)と表される。
【0242】
一方、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42上に形成されている、GaNチャネル層43、ならびに、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44は、ともに、その膜厚は薄いため、下部障壁層42のAl
x4Ga
1−x4Nの格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)と、格子定数aが実質的に一致する状態となっている。すなわち、GaNチャネル層43では、本来の格子定数a(GaN)から、格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)へと圧縮歪が生じている。また、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44では、本来の格子定数a(Al
z4Ga
1−z4N)から、格子定数a(Al
x4Ga
1−x4N)へと引っ張り歪が生じている。
【0243】
この場合も、P
pe(Al
x4Ga
1−x4N)≒0であるため、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中に存在する分極P
42は、P
42≒P
sp(Al
x4Ga
1−x4N)と近似される。
【0244】
一方、GaNチャネル層43中には、格子歪みに起因する圧縮歪e
zz(GaN)≒{a(Al
x4Ga
1−x4N)−a(GaN)}/a(GaN)が存在しており、ピエゾ分極:P
pe(GaN)が発生する。このピエゾ分極:P
pe(GaN)は、GaNの圧電定数e
31(GaN)、e
33(GaN)、弾性定数C
13(GaN)、C
33(GaN)を用いて、P
pe(GaN)≒2e
ZZ(GaN)[e
31(GaN)−e
33(GaN)・{C
31(GaN)/C
33(GaN)}]と近似的に表される。また、自発性分極:P
sp(GaN)も存在している。C軸成長している場合、自発性分極:P
sp(GaN)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。圧縮歪e
zzに起因する、ピエゾ分極:P
pe(GaN)は、自発性分極:P
sp(GaN)を相殺する方向を有している。従って、GaNチャネル層43中に存在する分極P
43は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(GaN)と自発性分極:P
sp(GaN)の和、すなわち、P
43=P
sp(GaN)+P
pe(GaN)<P
sp(GaN)となる。
【0245】
また、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44中には、格子歪みに起因する引っ張り歪e
zz(Al
z4Ga
1−z4N)≒{a(Al
x4Ga
1−x4N)−a(Al
z4Ga
1−z4N)}/a(Al
z4Ga
1−z4N)が存在しており、ピエゾ分極:P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)が発生する。このピエゾ分極:P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)は、Al
z4Ga
1−z4Nの圧電定数e
31(Al
z4Ga
1−z4N)、e
33(Al
z4Ga
1−z4N)、弾性定数C
13(Al
z4Ga
1−z4N)、C
33(Al
z4Ga
1−z4N)を用いて、P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)≒2e
ZZ(Al
z4Ga
1−z4N)[e
31(Al
z4Ga
1−z4N)−e
33(Al
z4Ga
1−z4N)・{C
31(Al
z4Ga
1−z4N)/C
33(Al
z4Ga
1−z4N)}]と近似的に表される。また、自発性分極:P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)も存在している。C軸成長している場合、自発性分極:P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。引っ張り歪e
zzに起因する、ピエゾ分極:P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)は、自発性分極:P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)と同じ方向を有している。従って、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44中に存在する分極P
44は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)と自発性分極:P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)の和、すなわち、P
44=P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)+P
pe(Al
z4Ga
1−z4N)>P
sp(Al
z4Ga
1−z4N)となる。
【0246】
GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面においては、分極Pは、P
43からP
42へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
43が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
43/q(但し、qは、電子の電荷量(単位電荷)を表す)は、σ
43/q=(P
43−P
42)/qとなる。また、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43との界面においても、分極Pは、P
44からP
43へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
44が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
44/qは、σ
44/q=(P
44−P
43)/qとなる。
【0247】
Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42中に存在する分極P
42、GaNチャネル層43中に存在する分極P
43、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44中に存在する分極P
44は、下部障壁層42を構成するAl
x4Ga
1−x4NのAl組成(x
4)とコンタクト層44を構成するAl
z4Ga
1−z4NのAl組成(z
4)に依存している。例えば、x
4=0.1、z
4=0.25の場合、P
42/q=2.13×10
13 cm
−2、P
43/q=1.61×10
13 cm
−2、P
44=2.97×10
13 cm
−2と計算される。その際、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面で発生する界面電荷密度σ
43/qは、σ
43/q=(P
43−P
42)/q=−5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43との界面で発生する界面電荷密度σ
44/qは、σ
44/q=(P
44−P
43)/q=+1.36×10
13 cm
−2 と見積もられる。
【0248】
GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x4Ga
1−x4N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
z4Ga
1−z4N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。その際、下部障壁層42を構成するAl
x4Ga
1−x4NのAl組成(x
4)とコンタクト層44を構成するAl
z4Ga
1−z4NのAl組成(z
4)は、z
4>x
4としているため、ΔEc(Al
z4Ga
1−z4N/GaN)>ΔEc(Al
x4Ga
1−x4N/GaN)となっている。
【0249】
z
4=0.25、x
4=0.1の場合、GaNチャネル層43とAl
x4Ga
1−x4N下部障壁層42との界面には、負の界面電荷(σ
43)、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43との界面には、正の界面電荷(σ
44)が発生し、その総和(σ
44+σ
43)は、(σ
44+σ
43)>0となっている。
【0250】
その結果、GaNチャネル層43の伝導帯端Ec(43)は、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43との界面の近傍では、フェルミ・レベルE
fよりも、低くなる。すなわち、Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44とGaNチャネル層43との界面近傍に電子が蓄積され、2次元電子ガス47を形成する。Al
z4Ga
1−z4Nコンタクト層44、GaNチャネル層43、Al
x4Ga
1−x4N下部障壁層42が、いずれも、アンドープである場合、蓄積される2次元電子ガス47のシート・キャリア密度N
2d-gas4-1は、N
2d-gas4-1≒(σ
44+σ
43)/qと見積もられる。
【0251】
従来のエンハンスメント型の半導体装置では、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のキャリアが枯渇してアクセス抵抗が増加するという問題がある。それに対して、本発明の第一の実施形態にかかる半導体装置では、エンハンスメント型の電界効果トランジスタであるにもかかわらず、チャネル層43のコンタクト層44との界面に2次元電子ガス47が存在する。このため、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のチャネル抵抗が減少し、寄生抵抗が低減される。
【0252】
(第二の実施形態)
図5は、本発明の第二の実施形態にかかる半導体装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【0253】
図5に例示する半導体装置において、基板50は(0001)面の炭化珪素(SiC)基板、バッファ層51は膜厚t
buffer5の傾斜組成AlGaN層、下部障壁層52は膜厚t
barrier5のアンドープAl
x5Ga
1−x5N層、チャネル層53は膜厚t
channel5のアンドープGaN層、コンタクト層54は膜厚t
contact5のN型Al
z5Ga
1−z5N層である。ここで、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のAl組成z
5は、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成x
5と等しく設定する。例えば、x
5=z
5=0.1とする。コンタクト層54を構成するN型Al
z5Ga
1−z5N層中には、浅いドナー準位を形成するn型不純物をドーピングしている。この浅いドナー準位を形成するn型不純物として、例えば、珪素(Si)を利用する。コンタクト層54を構成するN型Al
z5Ga
1−z5N層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD54は、例えば、5×10
18 cm
−3とする。
【0254】
GaNチャネル層53とAl
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
z5Ga
1−z5Nの伝導帯エネルギーEc(Al
z5Ga
1−z5N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
z5Ga
1−z5N/GaN)=Ec(Al
z5Ga
1−z5N)−Ec(GaN)が存在する。その結果、GaNチャネル層53とAl
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とのヘテロ界面の近傍に、電子が蓄積され、2次元電子ガス57が生成されている。
【0255】
一方、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
x5Ga
1−x5の伝導帯エネルギーEc(Al
x5Ga
1−x5N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
x5Ga
1−x5N/GaN)=Ec(Al
x5Ga
1−x5N)−Ec(GaN)が存在する。このバンド不連続ΔEc(Al
x5Ga
1−x5N/GaN)が、GaNチャネル層53中に存在する電子に対する下部障壁として機能する。
【0256】
Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54上に、ソース電極5S、ドレイン電極5Dが形成されている。ソース電極5Sとドレイン電極5Dは、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54と、オーム性接触をとっている。ソース電極5Sとドレイン電極5Dで挟まれた部位に、ゲート電極5Gが設けられ、電界効果トランジスタが構成されている。ソース電極5Sとドレイン電極5Dで挟まれた部位では、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54の一部をエッチング除去して、リセス部が形成されている。このリセス部には、露出したGaNチャネル層53の表面を覆うように、SiNからなる絶縁膜55が積層されている。このリセス部には、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54の上面に、該SiNからなる絶縁膜55を介して、ゲート電極5Gが埋め込まれるように形成されている。該ゲート電極5Gの下面では、該SiNからなる絶縁膜55を介して、GaNチャネル層53の上面に対して、ショットキー性接触(MIS接合)がとられている。
【0257】
図5に例示する構成の半導体装置は、以下の手順に従って作製される。(0001)面SiC基板50上に、例えば、MOCVD法により、上述の各III族窒化物半導体層を、下記表5に示す膜厚で順次成長させる。なお、各III族窒化物半導体層を、(0001)面SiC基板50上に、C軸成長させている。
【0258】
【表5】
その際、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成x
5を、例えば、x
5=0.1とする場合、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のAl組成z
5を、例えば、z
5=0.1とすることで、上記条件:x
5=z
5を満たす構造とできる。一方、傾斜組成AlGaNバッファ層51のAl組成x
5B(t
5B)は、基板50(t
5B=0)から、バッファ層51の表面(t
5B=1μm)に向かうに従って、徐々に減少させている。例えば、傾斜組成AlGaNバッファ層51のAl組成x
5B(t
5B)を、x
5B(t
5B=0)=1からx
5B(t
5B=1μm)=0.1まで、dx
5B(t
5B)/dt
5B=−0.9 μm
−1の比率で減少させる。
【0259】
x
5=0.1、z
5=0.1の場合、GaNチャネル層53とAl
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とのヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス57の移動度は、1500 cm
2/Vs(20℃)程度となっている。この2次元電子ガス57の移動度は、良好な値である。また、蓄積される2次元電子ガス57の密度N
2d-gas5-1は、N
2d-gas5-1=0.9×10
13cm
−2(20℃)となっている。
【0260】
GaNチャネル層53は、アンドープであり、イオン化不純物の濃度が低いため、イオン化不純物散乱が抑制されている。また、GaNチャネル層53とAl
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とのヘテロ界面は、原子レベルで平坦であるので、界面散乱も抑制されている。このイオン化不純物散乱と界面散乱が抑制されていることに起因して、ヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス57の移動度は、上記の良好な値を示している。
【0261】
ソース電極5S、ドレイン電極5Dの形成工程では、まず、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54上には、例えば、Ti/Al/Ni/Auなどの金属を蒸着し、パターニングを行う。次いで、例えば、窒素ガス雰囲気中、温度850℃、30秒間、アロイ処理することにより、オーム性接触を形成する。
【0262】
次に、Cl
2系ガスを用いて、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54の一部をエッチング除去することにより、リセス部を形成する。このリセス部では、GaNチャネル層53の表面が露呈している。このリセス・エッチング工程後、リセス部における、GaNチャネル層53の膜厚t
channel5−Gは、25nmとなっている。ソース電極5Sとドレイン電極5Dで挟まれる領域の幅:W
S-D5を、例えば、W
S-D5=5μmとする際、このリセス部の幅:W
recess5を、例えば、W
recess5=2μmとする。その際、リセス部の深さd
recess5は、d
recess5=45nmとしている。
【0263】
その後、例えば、PECVD法を用いて、SiNからなる絶縁膜55を成膜する。その際、形成されるSiNの膜厚は、平坦な領域上では、t
SiN5=5nm〜200nmの範囲に選択する。一方、リセス部の側壁面に形成されるSiNの膜厚t
SiN5-wellは、通常、t
SiN5と同じかそれ以下になる。
【0264】
図5に例示する半導体装置は、リセス部の側壁面の傾斜角が90度である事例であるが、リセス部の側壁面の被覆性を改善するため、傾斜角を90度より小さくしてもよい。
【0265】
SiNからなる絶縁膜55を成膜した後、Ti/Pt/Auなどの金属を蒸着し、リフトオフによりゲート電極5Gを形成する。このリフトオフにより形成される、ゲート電極5Gは、絶縁膜55で被覆されている、リセス部を埋め込むように形成されている。そのリセス部の底部における、ゲート電極5Gの実効的なゲート長L
5G-effectは、L
5G-effect≒W
recess5−2×t
SiN5-wellとなる。このリセス部の底部において、ゲート電極5Gは、SiNからなる絶縁膜55を介して、GaNチャネル層53の上に形成され、ショットキー接触(MIS接合)を構成している。ゲート電極5Gの実効的なゲート長L
5G-effectと、このゲート電極5G直下の絶縁膜の膜厚t
SiN5の比L
5G-effect/t
SiN5は、t
SiN5=5nm〜200nmの範囲に選択する際、400〜8の範囲となる。
【0266】
例えば、t
SiN5≧45nmの場合、d
recess5=45nmであり、リセス部は、SiNからなる絶縁膜55で埋め込まれた状態となる。その際、SiNからなる絶縁膜55の上面には、(W
recess5−2×t
SiN5)に相当する幅の凹部が形成され、ゲート電極5Gは、この凹部を埋め込むように形成される。その際、ゲート電極5Gの実効的なゲート長L
5G-effectは、(W
recess5−2×t
SiN5)に相当する。
【0267】
一方、t
SiN5=5nmの場合、d
recess5=45nmであり、オーバーエッチング量(d
recess5−t
contact5)=5nmとなり、オーバーエッチング量(d
recess5−t
contact5)と絶縁膜の膜厚t
SiN5は等しくなっている。なお、絶縁膜の膜厚t
SiN5を、オーバーエッチング量(d
recess5−t
contact5)よりも小さくしても、別段、問題はない。
【0268】
絶縁膜55に用いるSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eV、Tiの仕事関数eψ(Ti)eV、チャネル層53のGaNの電子親和力eχ(GaN)eVは、それぞれ、eψ(SiN)eV=1.4eV、eψ(Ti)eV=4.3eV、eψ(GaN)eV=3.9eVと見積もられる。従って、仕事関数の差異に起因して、SiN絶縁膜55とゲート電極5GのTiの界面には、{eχ(SiN)−eψ(Ti)}eV≒2.9eVの障壁が、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53の界面には、{eχ(SiN)−eχ(GaN)}≒2.5eVの障壁(接触電位差)が、それぞれ形成されている。なお、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x5Ga
1−x5/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。また、(eχ(GaN)−eψ(Ti))eV≒0.4eVとなっている。
【0269】
従って、
図5に例示する、本発明の第二の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部に形成されているゲート電極5Gの直下の伝導帯バンド図は、
図2に模式的に示す伝導帯バンド図と同様である。
【0270】
(0001)面成長のAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52は、その下層に、傾斜組成AlGaNバッファ層51を設けることで、格子緩和している状態となっている。この下部障壁層52のAl
x5Ga
1−x5Nの格子定数a(Al
x5Ga
1−x5N)は、AlNの格子定数a(AlN)とGaNの格子定数a(GaN)を用いて、近似的に、a(Al
x5Ga
1−x5N)≒x
5・a(AlN)+(1−x
5)・a(GaN)と表される。
【0271】
一方、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52上に形成されている、GaNチャネル層53、ならびに、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54は、ともに、その膜厚は薄いため、下部障壁層52のAl
x5Ga
1−x5Nの格子定数a(Al
x5Ga
1−x5N)と、格子定数aが実質的に一致する状態となっている。すなわち、GaNチャネル層53では、本来の格子定数a(GaN)から、格子定数a(Al
x5Ga
1−x5N)へと圧縮歪が生じている。また、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のAl組成z
5と、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成x
5とは等しいので、格子歪みは生じていない。
【0272】
Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中には、格子歪みに起因する歪みe
zzは、実質的に存在していないため、ピエゾ分極:P
pe(Al
x5Ga
1−x5N)は生じない。しかし、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中には、自発性分極:P
sp(Al
x5Ga
1−x5N)が存在している。C軸成長している場合、この自発性分極:P
sp(Al
x5Ga
1−x5N)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。従って、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中に存在する分極P
52は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(Al
x5Ga
1−x5N)と自発性分極:P
sp(Al
x5Ga
1−x5N)の和、すなわち、P
52=P
sp(Al
x5Ga
1−x5N)+P
pe(Al
x5Ga
1−x5N)となる。この場合、P
pe(Al
x5Ga
1−x5N)≒0であるため、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中に存在する分極P
52は、P
52≒P
sp(Al
x5Ga
1−x5N)と近似される。
【0273】
同様に、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54中には、格子歪みに起因する歪みe
zzは、実質的に存在していないため、ピエゾ分極:P
pe(Al
z5Ga
1−z5N)は生じない。この場合、P
pe(Al
z5Ga
1−z5N)≒0であるため、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54中に存在する分極P
54は、P
54≒P
sp(Al
z5Ga
1−z5N)と近似される。
【0274】
一方、GaNチャネル層53中には、格子歪みに起因する圧縮歪e
zz(GaN)≒{a(Al
x5Ga
1−x5N)−a(GaN)}/a(GaN)が存在しており、ピエゾ分極:P
pe(GaN)が発生する。このピエゾ分極:P
pe(GaN)は、GaNの圧電定数e
31(GaN)、e
33(GaN)、弾性定数C
13(GaN)、C
33(GaN)を用いて、P
pe(GaN)≒2e
ZZ(GaN)[e
31(GaN)−e
33(GaN)・{C
31(GaN)/C
33(GaN)}]と近似的に表される。また、自発性分極:P
sp(GaN)も存在している。C軸成長している場合、自発性分極:P
sp(GaN)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。圧縮歪e
zzに起因する、ピエゾ分極:P
pe(GaN)は、自発性分極:P
sp(GaN)を相殺する方向を有している。従って、GaNチャネル層53中に存在する分極P
43は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(GaN)と自発性分極:P
sp(GaN)の和、すなわち、P
53=P
sp(GaN)+P
pe(GaN)<P
sp(GaN)となる。
【0275】
SiN絶縁膜55は、多結晶膜またはアモルファス状の膜となっている。そのため、SiN絶縁膜55全体としては、異方性を示さず、分極は発生しない。すなわち、SiN絶縁膜55中の分極P
55は、P
55=0となっている。
【0276】
GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面においては、分極Pは、P
53からP
52へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
53が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
53/q(但し、qは、電子の電荷量(単位電荷)を表す)は、σ
53/q=(P
53−P
52)/qとなる。
【0277】
また、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面においても、分極Pは、P
55からP
53へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
55が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
55/qは、σ
55/q=(P
55−P
53)/qとなる。一方、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面では、相当の面密度で界面準位が生成している。従って、この界面で発生する界面電荷は、かかる界面準位によって、補償された状態となり、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面では、実効的には、発生した界面電荷の蓄積は観測されない。
【0278】
Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中に存在する分極P
52、GaNチャネル層53中に存在する分極P
53は、下部障壁層52を構成するAl
x5Ga
1−x5NのAl組成(x
5)に依存している。例えば、x
5=0.1の場合、P
52/q=2.13×10
13 cm
−2、P
53/q=1.61×10
13 cm
−2と計算される。また、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のAl組成z
5と、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成x
5が等しく、z
5=x
5=0.1の場合、P
54/q=2.13×10
13 cm
−2と計算される。
【0279】
その際、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面で発生する界面電荷密度σ
53/qは、σ
53/q=(P
53−P
52)/q=−5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。また、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面で発生する界面電荷密度σ
54/qは、σ
54/q=(P
54−P
53)/q=+5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。
【0280】
本実施の形態においても、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52として、アンドープのAl
x5Ga
1−x5Nを採用し、GaNチャネル層53として、アンドープのGaNを採用する際、それらのn型不純物(ドナー)濃度N
SD52と、N
SD53は、理想的には、ともに、0 cm
−3である。
【0281】
リセス部に形成されているゲート電極5Gの直下では、V
G5=0Vと設定する状態では、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52、GaNチャネル層53がともにアンドープであり、N
SD52=0 cm
−3、N
SD53=0 cm
−3である際には、n型不純物のイオン化に起因する電子の供給が無く、従って、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面で発生する界面電荷σ
53に起因する電界のみが存在する。その結果、
図2に示すバンド図と同様に、GaNチャネル層53における、伝導帯端Ec(53)は、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に高い位置となる。換言すると、GaNチャネル層53中には、キャリア(電子)が存在していない状態となっている。そのため、このMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタは、「ノーマリー・OFF状態」となっている。ゲート電極5Gに正電圧(V
G5>0)を印加すると、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面に電子が蓄積され、2次元電子ガスが生成され、「ON状態」となる。「OFF状態」から「ON状態」となる、ゲート・バイアス:V
G5の閾値電圧V
Tは、正電圧となっており、エンハンスメント型の電界効果トランジスタとして機能する。
【0282】
「ON状態」では、ゲート電極5Gの直下では、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面近傍に蓄積される電子が走行する。この電子の移動度は、GaNチャネル層53中に存在するイオン化不純物によるイオン化不純物散乱、ならびに、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面の乱れに起因する界面散乱の影響を受ける。GaNチャネル層53はアンドープであるため、SiN絶縁膜55とGaNチャネル層53との界面近傍に生成する2次元電子ガスの移動度に対する、イオン化不純物散乱の影響は抑制されており、電子移動度が改善されている。
【0283】
図5のMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタおいて推定される、閾値電圧V
TのSiN絶縁膜55の膜厚依存性は、
図3に示す、
図1のMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタにおける、推定結果と同様である。N
SD53=0 cm
−3である場合、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が増加すると、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52における、伝導帯端Ec(52)とフェルミ・レベルE
fとの差{Ec(52)−E
f}が減少する。その結果、GaNチャネル層53における、伝導帯端Ec(53)も低下する。Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が、N
SD52・t
barrier5>|σ
53|/qの条件を満たす範囲に至ると、V
G5=0Vと設定する状態でも、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5が増すと、GaNチャネル層53中に、キャリア(電子)が存在する状態となる。
図3に示す推定計算の結果を参照すると、N
SD53=0 cm
−3であり、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が1×10
18 cm
−3以下の範囲では、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5に依らず、閾値電圧V
Tは、正電圧となっている。一方、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が2×10
18 cm
−3に至ると、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5が、3nmを超える範囲では、閾値電圧V
Tは、負電圧となっている。
【0284】
少なくとも、N
SD53=0 cm
−3であり、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が、N
SD52・t
barrier5≦|σ
53|/qの条件を満たす範囲では、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5に依らず、閾値電圧V
Tは、正電圧となっている。従って、この条件を満たすMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタは、「ノーマリー・OFF状態」となっている。N
SD53=0 cm
−3である場合、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52が、N
SD52・t
barrier5<|σ
53|/qの条件を満たす範囲に選択すると、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成(x
5)、膜厚t
barrier5が、若干変動しても、閾値電圧V
T>0Vの範囲に維持できる。従って、前記の条件を満たす範囲では、エンハンスメント型の電界効果トランジスタを安定に作製することが可能となる。
【0285】
例えば、N
SD52=0 cm
−3、N
SD53=0 cm
−3である場合、V
G=0Vの熱平衡状態におけるゲート電極5Gの直下の伝導帯バンド図において、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52とのヘテロ界面での、GaNチャネル層53の伝導帯エネルギーEc(53)は、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に高い位置となる。このヘテロ界面における、GaNチャネル層53の伝導帯エネルギーEc(53)とフェルミ・レベルE
fの差{Ec(53)−E
f}は、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5に依存している。
【0286】
図3の結果を参照すると、N
SD53=0 cm
−3である場合、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD52に依存して、閾値電圧V
TのSiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5に対する依存性が変化する。例えば、N
SD53=0 cm
−3、N
SD52=0 cm
−3の場合でも、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5が1nm変化した際の、閾値電圧V
Tの変移量ΔV
Tは、約0.14 Vと比較的小さい。従って、SiN絶縁膜55の膜厚t
SiN5の変動に対する、閾値電圧V
Tの均一性、再現性は良好である。
【0287】
絶縁膜55を構成するSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eVと、このSiN膜と接するゲート電極5GのTiの仕事関数eψ(Ti)eVの差違に起因する、接触電位差{
eχ(SiN)−eψ(Ti)}eVは、約2.9eVと大きい。従って、Ti/SiN/GaNのMIS構造を有するゲートを採用すると、ショットキー接合(MIS接合)の障壁高さΦ
barrierは、通常のMES型のショットキー接合の障壁高さより増加する。従って、
図5に例示する、MIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を順方向にバイアスした際、順方向ゲート耐圧も良好である。
【0288】
GaNチャネル層53として、アンドープのGaNを採用し、N
SD53=0 cm
−3である際、
図3に示す、閾値電圧V
Tの絶縁膜厚依存性が小さいことは、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を逆方向にバイアスした際に、絶縁膜55に加わる内部電界が小さいことを意味している。従って、逆バイアス時のトンネル電流成分は抑制されて、逆方向リーク電流も低減されている。
【0289】
図6は、
図5に例示する、本発明の第二の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部以外の、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54が存在する領域の伝導帯バンド図を模式的に示す。
【0290】
GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面においては、分極Pは、P
53からP
52へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
53が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
53/q(但し、qは、電子の電荷量(単位電荷)を表す)は、σ
53/q=(P
53−P
52)/qとなる。また、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面においても、分極Pは、P
54からP
53へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
54が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
54/qは、σ
54/q=(P
54−P
53)/qとなる。
【0291】
Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52中に存在する分極P
52、GaNチャネル層53中に存在する分極P
53、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54中に存在する分極P
54は、下部障壁層52を構成するAl
x5Ga
1−x5NのAl組成(x
5)とコンタクト層54を構成するAl
z5Ga
1−z5NのAl組成(z
5)に依存している。例えば、x
5=0.1、z
5=0.1の場合、P
52/q=2.13×10
13 cm
−2、P
53/q=1.61×10
13 cm
−2、P
54=2.13×10
13 cm
−2と計算される。その際、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面で発生する界面電荷密度σ
53/qは、σ
53/q=(P
53−P
52)/q=−5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面で発生する界面電荷密度σ
54/qは、σ
54/q=(P
54−P
53)/q=+5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。
【0292】
z
5=0.1、x
5=0.1の場合、GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52との界面には、負の界面電荷(σ
53)、Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面には、正の界面電荷(σ
54)が発生し、その総和(σ
54+σ
53)は、(σ
54+σ
53)=0となっている。
【0293】
GaNチャネル層53とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層52とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x5Ga
1−x5N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
z5Ga
1−z5N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。その際、下部障壁層52を構成するAl
x5Ga
1−x5NのAl組成(x
5)とコンタクト層54を構成するAl
z5Ga
1−z5NのAl組成(z
5)は、z
5=x
5としている場合、ΔEc(Al
z5Ga
1−z5N/GaN)=ΔEc(Al
x5Ga
1−x5N/GaN)となっている。
【0294】
(σ
54+σ
53)=0となっている場合には、分極効果によるキャリアの生成は起こらない。一方、
図6に示すように、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のうち、GaNチャネル層53との界面の近傍部分は、空乏化した領域を形成する。この空乏化した領域の形成に伴って、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54からGaNチャネル層53へと、キャリア(電子)の供給がなされ、2次元電子ガス57を形成している。従って、蓄積される2次元電子ガス57の密度N
2d-gas5-1は、N
2d-gas5-1<N
SD54・t
contact5の範囲となる。
【0295】
従来のエンハンスメント型の半導体装置では、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のキャリアが枯渇してアクセス抵抗が増加するという問題がある。それに対して、本発明の第二の実施形態にかかる半導体装置では、エンハンスメント型の電界効果トランジスタであるにもかかわらず、チャネル層53のコンタクト層54との界面に2次元電子ガス57が存在する。従って、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のアクセス抵抗が減少する。勿論、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54上にオーミック電極を形成するため、ドレイン電極5D、ソース電極5Sのコンタクト抵抗も低減される。すなわち、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のチャネル抵抗が減少する。これらの寄与によって、寄生抵抗が大幅に改善される。
【0296】
なお、本発明の第二の実施形態では、上記の具体例では、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54のAl組成(z
5)を、Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層52のAl組成(x
5)と等しくしている。勿論、z
5をx
5より大きく設定しても、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面近傍に電子が蓄積され、2次元電子ガス57が形成される。z
5>x
5の場合には、分極効果による界面電荷の和(σ
53+σ
54)が正になるため、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD54を下げても、2次元電子ガス57が形成される。その際、蓄積される2次元電子ガス57の密度N
2d-gas5-1は、(σ
53+σ
54)/q<N
2d-gas5-1<(N
SD54・t
contact5)+(σ
53+σ
54)/qの範囲となる。
【0297】
また、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面に、2次元電子ガスの蓄積に必要な障壁が形成される範囲で、z
5をx
5より小さく設定することも可能である。z
5<x
5に設定する場合には、分極効果による界面電荷の和(σ
53+σ
54)が負になるため、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54からGaNチャネル層53へと供給されるキャリア(電子)の量を|σ
53+σ
54|より大きくする必要がある。その際、蓄積される2次元電子ガス57の密度N
2d-gas5-1は、N
2d-gas5-1<(N
SD54・t
contact5)+(σ
53+σ
54)/q<(N
SD54・t
contact5)の範囲となる。
【0298】
(第三の実施形態)
上記の第一の実施形態、第二の実施形態にかかる半導体装置は、本発明をエンハンスメント動作可能な電界効果トランジスタへ適用する形態である。
【0299】
一方、以下に説明する、本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置は、本発明をディプレッション型電界効果トランジスタへ適用する形態である。具体的には、本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置は、ディプレッション型電界効果トランジスタにおいて、本発明を適用して、アクセス抵抗の低減を達成する素子構造の例である。
【0300】
図7は、本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置の構造を模式的に示す断面図である。
【0301】
図5に例示する半導体装置において、基板60は(0001)面の炭化珪素(SiC)基板、バッファ層61は膜厚t
buffer6の傾斜組成AlGaN層、下部障壁層62は膜厚t
barrier6のN型Al
x6Ga
1−x6N層、チャネル層63は膜厚t
channel6のアンドープGaN層、コンタクト層64は膜厚t
contact6のN型Al
z6Ga
1−z6N層である。ここで、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64のAl組成z
6は、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62のAl組成x
6と等しく設定する。例えば、x
6=z
6=0.1とする。下部障壁層62を構成するN型Al
x6Ga
1−x6N層と、コンタクト層64を構成するN型Al
z6Ga
1−z6N層中には、浅いドナー準位を形成するn型不純物をドーピングしている。この浅いドナー準位を形成するn型不純物として、例えば、珪素(Si)を利用する。下部障壁層62を構成するN型Al
x6Ga
1−x6N層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD62は、例えば、2×10
18 cm
−3とする。コンタクト層64を構成するN型Al
z6Ga
1−z6N層中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD64は、例えば、5×10
18 cm
−3とする。
【0302】
GaNチャネル層63とAl
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
z6Ga
1−z6Nの伝導帯エネルギーEc(Al
z6Ga
1−z6N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
z6Ga
1−z6N/GaN)=Ec(Al
z6Ga
1−z6N)−Ec(GaN)が存在する。その結果、GaNチャネル層63とAl
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とのヘテロ界面の近傍に、電子が蓄積され、2次元電子ガス67が生成されている。
【0303】
一方、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62とのヘテロ界面には、GaNの伝導帯エネルギーEc(GaN)とAl
x6Ga
1−x6の伝導帯エネルギーEc(Al
x6Ga
1−x6N)の差異に起因する、バンド不連続ΔEc(Al
x6Ga
1−x6N/GaN)=Ec(Al
x6Ga
1−x6N)−Ec(GaN)が存在する。このバンド不連続ΔEc(Al
x6Ga
1−x6N/GaN)が、GaNチャネル層63中に存在する電子に対する下部障壁として機能する。その結果、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62とのヘテロ界面に近傍にも、部分的な電子の蓄積が可能な構造となっている。
【0304】
Al
z6Ga
1−z6コンタクト層64上に、ソース電極6S、ドレイン電極6Dが形成されている。ソース電極6Sとドレイン電極6Dは、Al
z6Ga
1−z6コンタクト層54と、オーム性接触をとっている。ソース電極6Sとドレイン電極6Dで挟まれた部位に、ゲート電極6Gが設けられ、電界効果トランジスタが構成されている。ソース電極6Sとドレイン電極6Dで挟まれた部位では、Al
z6Ga
1−z6コンタクト層64の一部をエッチング除去して、リセス部が形成されている。このリセス部には、露出したGaNチャネル層63の表面を覆うように、SiNからなる絶縁膜65が積層されている。このリセス部には、Al
z6Ga
1−z6コンタクト層64の上面に、該SiNからなる絶縁膜65を介して、ゲート電極6Gが埋め込まれるように形成されている。該ゲート電極6Gの下面では、該SiNからなる絶縁膜65を介して、GaNチャネル層63の上面に対して、ショットキー性接触(MIS接合)がとられている。
【0305】
図7に例示する構成の半導体装置は、以下の手順に従って作製される。(0001)面SiC基板60上に、例えば、MOCVD法により、上述の各III族窒化物半導体層を、下記表6に示す膜厚で順次成長させる。なお、各III族窒化物半導体層を、(0001)面SiC基板60上に、C軸成長させている。
【0306】
【表6】
その際、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62のAl組成x
6を、例えば、x
5=0.1とする場合、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64のAl組成z
6を、例えば、z
5=0.1とすることで、上記条件:x
6=z
6を満たす構造とできる。一方、傾斜組成AlGaNバッファ層61のAl組成x
6B(t
6B)は、基板60(t
6B=0)から、バッファ層61の表面(t
5B=1μm)に向かうに従って、徐々に減少させている。例えば、傾斜組成AlGaNバッファ層61のAl組成x
6B(t
5B)を、x
5B(t
6B=0)=1からx
6B(t
6B=1μm)=0.1まで、直線的に減少させる。
【0307】
x
6=0.1、z
6=0.1の場合、GaNチャネル層63とAl
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とのヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス67の移動度は、1500 cm
2/Vs(20℃)程度となっている。この2次元電子ガス67の移動度は、良好な値である。また、蓄積される2次元電子ガス67の密度N
2d-gas6-1は、N
2d-gas6-1=1.2×10
13cm
−2(20℃)となっている。
【0308】
GaNチャネル層63は、アンドープであり、イオン化不純物の濃度が低いため、イオン化不純物散乱が抑制されている。また、GaNチャネル層63とAl
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とのヘテロ界面は、原子レベルで平坦であるので、界面散乱も抑制されている。このイオン化不純物散乱と界面散乱が抑制されていることに起因して、ヘテロ界面の近傍に生成する2次元電子ガス67の移動度は、上記の良好な値を示している。
【0309】
ソース電極6S、ドレイン電極6Dの形成工程では、まず、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64上には、例えば、Ti/Al/Ni/Auなどの金属を蒸着し、パターニングを行う。次いで、例えば、窒素ガス雰囲気中、温度850℃、30秒間、アロイ処理することにより、オーム性接触を形成する。
【0310】
次に、Cl
2系ガスを用いて、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64の一部をエッチング除去することにより、リセス部を形成する。このリセス部では、GaNチャネル層63の表面が露呈している。このリセス・エッチング工程後、リセス部における、GaNチャネル層63の膜厚t
channel6−Gは、25nmとなっている。ソース電極6Sとドレイン電極6Dで挟まれる領域の幅:W
S-D6を、例えば、W
S-D6=5μmとする際、このリセス部の幅:W
recess6を、例えば、W
recess6=2μmとする。その際、リセス部の深さd
recess6は、d
recess6=45nmとしている。
【0311】
その後、例えば、PECVD法を用いて、SiNからなる絶縁膜56を成膜する。その際、形成されるSiNの膜厚は、平坦な領域上では、t
SiN6=5nm〜200nmの範囲に選択する。一方、リセス部の側壁面に形成されるSiNの膜厚t
SiN6-wellは、通常、t
SiN6と同じかそれ以下になる。
【0312】
図7に例示する半導体装置は、リセス部の側壁面の傾斜角が90度である事例であるが、リセス部の側壁面の被覆性を改善するため、傾斜角を90度より小さくしてもよい。
【0313】
SiNからなる絶縁膜56を成膜した後、Ti/Pt/Auなどの金属を蒸着し、リフトオフによりゲート電極6Gを形成する。このリフトオフにより形成される、ゲート電極6Gは、絶縁膜65で被覆されている、リセス部を埋め込むように形成されている。そのリセス部の底部における、ゲート電極6Gの実効的なゲート長L
6G-effectは、L
6G-effect≒W
recess6−2×t
SiN6-wellとなる。このリセス部の底部において、ゲート電極6Gは、SiNからなる絶縁膜65を介して、GaNチャネル層63の上に形成され、ショットキー接触(MIS接合)を構成している。ゲート電極6Gの実効的なゲート長L
6G-effectと、このゲート電極6G直下の絶縁膜の膜厚t
SiN6の比L
5G-effect/t
SiN6は、t
SiN6=5nm〜200nmの範囲に選択する際、400〜8の範囲となる。
【0314】
例えば、t
SiN6≧45nmの場合、d
recess6=45nmであり、リセス部は、SiNからなる絶縁膜65で埋め込まれた状態となる。その際、SiNからなる絶縁膜65の上面には、(W
recess6−2×t
SiN6)に相当する幅の凹部が形成され、ゲート電極6Gは、この凹部を埋め込むように形成される。その際、ゲート電極6Gの実効的なゲート長L
6G-effectは、(W
recess6−2×t
SiN6)に相当する。
【0315】
一方、t
SiN6=5nmの場合、d
recess6=45nmであり、オーバーエッチング量(d
recess6−t
contact6)=5nmとなり、オーバーエッチング量(d
recess6−t
contact6)と絶縁膜の膜厚t
SiN6は等しくなっている。なお、絶縁膜の膜厚t
SiN6を、オーバーエッチング量(d
recess6−t
contact6)よりも小さくしても、別段、問題はない。
【0316】
絶縁膜65に用いるSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eV、Tiの仕事関数eψ(Ti)eV、チャネル層63のGaNの電子親和力eχ(GaN)eVは、それぞれ、eχ(SiN)eV=1.4eV、eψ(Ti)eV=4.3eV、eχ(GaN)eV=3.9eVと見積もられる。従って、仕事関数の差異に起因して、SiN絶縁膜65とゲート電極6GのTiの界面には、{eχ(SiN)−eψ(Ti)}eV≒2.9eVの障壁が、SiN絶縁膜65とGaNチャネル層63の界面には、{eχ(SiN)−eχ(GaN)}≒2.5eVの障壁(接触電位差)が、それぞれ形成されている。なお、GaNチャネル層63とAl
x5Ga
1−x5N下部障壁層62とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x6Ga
1−x6/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。また、(eχ(GaN)−eψ(Ti))eV≒0.4eVとなっている。
【0317】
図8は、
図7に例示する、本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部に形成されているゲート電極6Gの直下の伝導帯バンド図を模式的に示す。
図8の伝導帯バンド図には、ゲート電極6Gに印加される、ゲート・バイアス:V
G6を、V
G6=0Vと設定する状態を示す。従って、ゲート電極6GのTiの電位は、フェルミ・レベルE
fと一致している。
【0318】
また、
図9は、
図7に例示する、本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置の構造において、リセス部以外の、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層64が存在する領域の伝導帯バンド図を模式的に示す。
【0319】
(0001)面成長のAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62は、その下層に、傾斜組成AlGaNバッファ層61を設けることで、格子緩和している状態となっている。この下部障壁層62のAl
x6Ga
1−x6Nの格子定数a(Al
x6Ga
1−x6N)は、AlNの格子定数a(AlN)とGaNの格子定数a(GaN)を用いて、近似的に、a(Al
x6Ga
1−x6N)≒x
6・a(AlN)+(1−x
6)・a(GaN)と表される。
【0320】
一方、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62上に形成されている、GaNチャネル層63、ならびに、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64は、ともに、その膜厚は薄いため、下部障壁層62のAl
x6Ga
1−x6Nの格子定数a(Al
x6Ga
1−x6N)と、格子定数aが実質的に一致する状態となっている。すなわち、GaNチャネル層63では、本来の格子定数a(GaN)から、格子定数a(Al
x6Ga
1−x6N)へと圧縮歪が生じている。また、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64のAl組成z
6と、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62のAl組成x
6とは等しいので、格子歪みは生じていない。
【0321】
Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中には、格子歪みに起因する歪みe
zzは、実質的に存在していないため、ピエゾ分極:P
pe(Al
x6Ga
1−x6N)は生じない。しかし、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中には、自発性分極:P
sp(Al
x6Ga
1−x6N)が存在している。C軸成長している場合、この自発性分極:P
sp(Al
x6Ga
1−x6N)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。従って、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中に存在する分極P
62は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(Al
x6Ga
1−x6N)と自発性分極:P
sp(Al
x6Ga
1−x6N)の和、すなわち、P
62=P
sp(Al
x6Ga
1−x6N)+P
pe(Al
x6Ga
1−x6N)となる。この場合、P
pe(Al
x6Ga
1−x6N)≒0であるため、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中に存在する分極P
62は、P
62≒P
sp(Al
x6Ga
1−x6N)と近似される。
【0322】
同様に、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64中には、格子歪みに起因する歪みe
zzは、実質的に存在していないため、ピエゾ分極:P
pe(Al
z6Ga
1−z6N)は生じない。この場合、P
pe(Al
z6Ga
1−z6N)≒0であるため、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64中に存在する分極P
64は、P
64≒P
sp(Al
z6Ga
1−z6N)と近似される。
【0323】
一方、GaNチャネル層63中には、格子歪みに起因する圧縮歪e
zz(GaN)≒{a(Al
x6Ga
1−x6N)−a(GaN)}/a(GaN)が存在しており、ピエゾ分極:P
pe(GaN)が発生する。このピエゾ分極:P
pe(GaN)は、GaNの圧電定数e
31(GaN)、e
33(GaN)、弾性定数C
13(GaN)、C
33(GaN)を用いて、P
pe(GaN)≒2e
ZZ(GaN)[e
31(GaN)−e
33(GaN)・{C
31(GaN)/C
33(GaN)}]と近似的に表される。また、自発性分極:P
sp(GaN)も存在している。C軸成長している場合、自発性分極:P
sp(GaN)の方向は、表面から基板へ向かう方向となっている。圧縮歪e
zzに起因する、ピエゾ分極:P
pe(GaN)は、自発性分極:P
sp(GaN)を相殺する方向を有している。従って、GaNチャネル層53中に存在する分極P
43は、一般に、ピエゾ分極:P
pe(GaN)と自発性分極:P
sp(GaN)の和、すなわち、P
63=P
sp(GaN)+P
pe(GaN)<P
sp(GaN)となる。
【0324】
SiN絶縁膜65は、多結晶膜またはアモルファス状の膜となっている。そのため、SiN絶縁膜65全体としては、異方性を示さず、分極は発生しない。すなわち、SiN絶縁膜65中の分極P
65は、P
65=0となっている。
【0325】
GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62との界面においては、分極Pは、P
63からP
62へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
63が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
63/q(但し、qは、電子の電荷量(単位電荷)を表す)は、σ
63/q=(P
63−P
62)/qとなる。
【0326】
また、SiN絶縁膜65とGaNチャネル層63との界面においても、分極Pは、P
65からP
63へと不連続な変化を示す。そのため、この界面には、シート状の分極電荷σ
65が発生している。この界面で発生する界面電荷密度σ
65/qは、σ
65/q=(P
65−P
63)/qとなる。一方、SiN絶縁膜65とGaNチャネル層63との界面では、相当の面密度で界面準位が生成している。従って、この界面で発生する界面電荷は、かかる界面準位によって、補償された状態となり、SiN絶縁膜65とGaNチャネル層63との界面では、実効的には、発生した界面電荷の蓄積は観測されない。
【0327】
Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中に存在する分極P
62、GaNチャネル層63中に存在する分極P
63は、下部障壁層62を構成するAl
x6Ga
1−x6NのAl組成(x
6)に依存している。例えば、x
6=0.1の場合、P
62/q=2.13×10
13 cm
−2、P
63/q=1.61×10
13 cm
−2と計算される。また、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64のAl組成z
6と、Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62のAl組成x
6が等しく、z
6=x
6=0.1の場合、P
64/q=2.13×10
13 cm
−2と計算される。
【0328】
その際、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62との界面で発生する界面電荷密度σ
63/qは、σ
63/q=(P
63−P
62)/q=−5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。また、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面で発生する界面電荷密度σ
64/qは、σ
64/q=(P
64−P
63)/q=+5.28×10
12 cm
−2 と見積もられる。
【0329】
GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
x6Ga
1−x6N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とGaNチャネル層63とのヘテロ界面には、バンド不連続ΔEc(Al
z6Ga
1−z6N/GaN)に起因する障壁(接触電位差)が形成されている。その際、下部障壁層62を構成するAl
x6Ga
1−x6NのAl組成(x
6)とコンタクト層64を構成するAl
z6Ga
1−z6NのAl組成(z
6)は、z
6=x
6としている場合、ΔEc(Al
z6Ga
1−z6N/GaN)=ΔEc(Al
x6Ga
1−x6N/GaN)となっている。
【0330】
その際、
図9に示すように、z
6=x
6=0.1の場合、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層64が存在する領域では、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62との界面で発生する界面電荷σ
63と、Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層54とGaNチャネル層53との界面で発生する界面電荷密度σ
64の和(σ
63+σ
64)は、(σ
63+σ
64)=0となる。(σ
54+σ
53)=0となっている場合には、分極効果によるキャリアの生成は起こらない。
【0331】
一方、ΔEc(Al
x6Ga
1−x6N/GaN)>2kTとなっている場合、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中、GaNチャネル層63とのヘテロ界面の近傍部分には、空乏化した領域が形成される。また、ΔEc(Al
z6Ga
1−z6N/GaN)>2kTとなっている場合、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64中、GaNチャネル層63とのヘテロ界面の近傍部分には、空乏化した領域が形成される。この空乏化した領域の形成に伴って、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64からGaNチャネル層63へと、キャリア(電子)の供給がなされる。
【0332】
その際、GaNチャネル層63内に蓄積される2次元電子ガス67の密度N
2d-gas6-1は、N
2d-gas6-1<(N
SD64・t
contact6)+(N
SD62・t
barrier6)の範囲となる。
【0333】
本実施の形態においても、GaNチャネル層63として、アンドープのGaNを採用する際、そのn型不純物(ドナー)濃度N
SD63は、理想的には、0 cm
−3である。
【0334】
図3を参照すると、N
SD53=0 cm
−3であり、x
6=0.1の場合、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD62を、例えば、N
SD62=2×10
18 cm
−3、膜厚t
barrier6を50nmとする際、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が、3nmを超える範囲では、閾値電圧V
Tは、負電圧となっている。すなわち、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が、3nmを超える範囲では、V
G6=0Vと設定する状態では、GaNチャネル層63中に、キャリア(電子)が残留している。
【0335】
その状態では、V
G=0Vの熱平衡状態におけるゲート電極6Gの直下の伝導帯バンド図は、
図8に示すようになっている。すなわち、GaNチャネル層63中に残留しているキャリア(電子)は、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62との界面近傍に蓄積されている。
【0336】
例えば、N
SD52=2×10
18 cm
−3 cm
−3、N
SD63=0 cm
−3である場合、V
G=0Vの熱平衡状態におけるゲート電極6Gの直下の伝導帯バンド図を考慮すると、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が増加するとともに、下記のような変化をする。例えば、GaNチャネル層63とAl
x6Ga
1−x6N下部障壁層62とのヘテロ界面での、GaNチャネル層63の伝導帯エネルギーEc(63)は、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が、3nm以下の範囲では、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に高い位置となる。SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が、3nmを超える範囲では、このヘテロ界面での、GaNチャネル層63の伝導帯エネルギーEc(63)は、フェルミ・レベルE
fよりも、エネルギー的に低い位置となる。このように、このヘテロ界面における、GaNチャネル層63の伝導帯エネルギーEc(63)とフェルミ・レベルE
fの差{Ec(63)−E
f}は、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6に依存している。
【0337】
少なくとも、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD62が、N
SD62・t
barrier6>|σ
63|/qの条件を満たす範囲では、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6を厚くすると、閾値電圧V
Tは、負電圧とすることができる。従って、この条件を満たすMIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタは、「ノーマリー・ON状態」となっている。従って、前記の条件を満たす範囲では、ディプレッション型の電界効果トランジスタを作製することが可能となる。
【0338】
図3の結果を参照すると、例えば、N型Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層62中の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD62=2×10
18 cm
−3、膜厚t
barrier6を50nmとする場合、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6が1nm変化した際の、閾値電圧V
Tの変移量ΔV
Tは、約0.12 Vと比較的小さい。従って、SiN絶縁膜65の膜厚t
SiN6の変動に対する、閾値電圧V
Tの均一性、再現性は良好である。
【0339】
絶縁膜65を構成するSiN膜の電子親和力eχ(SiN)eVと、このSiN膜と接するゲート電極5GのTiの仕事関数eψ(Ti)eVの差違に起因する、接触電位差{eχ(SiN)−eψ(Ti)}eVは、約2.9eVと大きい。従って、Ti/SiN/GaNのMIS構造を有するゲートを採用すると、ショットキー接合(MIS接合)の障壁高さΦ
barrierは、通常のMES型のショットキー接合の障壁高さより増加する。従って、
図7に例示する、MIS型ゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を順方向にバイアスした際、順方向ゲート耐圧も良好である。
【0340】
GaNチャネル層53として、アンドープのGaNを採用し、N
SD53=0 cm
−3である際、
図3に示す、閾値電圧V
Tの絶縁膜厚依存性が小さいことは、ゲートのショットキー接合(MIS接合)を逆方向にバイアスした際に、絶縁膜55に加わる内部電界が小さいことを意味している。従って、逆バイアス時のトンネル電流成分は抑制されて、逆方向リーク電流も低減されている。
【0341】
本発明の第三の実施形態にかかる半導体装置では、ディプレッション型の電界効果トランジスタとする際、チャネル層63のコンタクト層64との界面、下部障壁層62との界面に電子が蓄積され、2次元電子ガス67が存在する。従って、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間のアクセス抵抗が減少する。勿論、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64上にオーミック電極を形成するため、ドレイン電極6D、ソース電極6Sのコンタクト抵抗も低減される。これらの寄与によって、寄生抵抗が大幅に改善される。
【0342】
なお、本発明の第三の実施形態では、上記の具体例では、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64のAl組成(z
6)を、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62のAl組成(x
6)と等しくしている。勿論、z
6をx
6より大きく設定しても、GaNチャネル層63中のN型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64との界面、N型Al
x5Ga
1−x5N下部障壁層62との界面の近傍に電子が蓄積され、2次元電子ガス67が形成される。z
6>x
6の場合には、分極効果による界面電荷の和(σ
63+σ
64)が正になるため、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64の浅いn型不純物(ドナー)濃度N
SD64を下げても、2次元電子ガス67が形成される。その際、蓄積される2次元電子ガス67の密度N
2d-gas6-1は、(σ
63+σ
64)/q<N
2d-gas6-1<(N
SD64・t
contact6)+(N
SD62・t
barrier6)+(σ
63+σ
64)/qの範囲となる。
【0343】
また、N型Al
z6Ga
1−z6Nコンタクト層64とGaNチャネル層63との界面に、2次元電子ガスの蓄積に必要な障壁が形成される範囲で、z
6をx
6より小さく設定することも可能である。z
6<x
6に設定する場合には、分極効果による界面電荷の和(σ
63+σ
64)が負になるため、N型Al
x6Ga
1−x6N下部障壁層62、N型Al
z5Ga
1−z5Nコンタクト層54からGaNチャネル層53へと供給されるキャリア(電子)の量を|σ
63+σ
64|より大きくする必要がある。その際、蓄積される2次元電子ガス57の密度N
2d-gas6-1は、N
2d-gas6-1<(N
SD64・t
contact6)+(N
SD62・t
barrier6)+(σ
63+σ
64)/q<(N
SD64・t
contact6)+(N
SD62・t
barrier6)の範囲となる。
【0344】
以上、本発明の原理を、代表的な実施の形態を例に挙げて説明したが、本発明は、上記の代表的な実施の形態にのみ限定されず、本発明の原理に準ずる各種の形態を含むことは勿論である。
【0345】
すなわち、上記の実施の形態では、Al
zGa
1−zNコンタクト層/In
yGa
1−yNチャネル層/Al
xGa
1−xN下部障壁層の積層構造を採用する典型的な例を用いて、本発明の原理を説明している。
【0346】
本発明に原理を利用する半導体装置を構成する際には、上記の実施の形態では、下部障壁層を形成する材料としてAl
xGa
1−xNを用いているが、他のIII族窒化物半導体を用いてもよい。下部障壁層を形成する材料として、例えば、GaN、InGaN、InAlN、InAlGaNを用いてもよい。また、平均組成が、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNに相当する超格子層としてもよい。
【0347】
本発明に原理を利用する半導体装置を構成する際には、上記の実施の形態では、チャネル層を形成する材料として、In
yGa
1−yN、特に、GaNを用いているが、下部障壁層よりバンドギャップの小さい他のIII族窒化物半導体を用いてもよい。チャネル層を形成する材料として、例えば、InN、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNを用いてもよい。また、平均組成が、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNに相当する超格子層としてもよい。チャネル層をアンドープとしたが、チャネル層の一部または全体にSi等のn型不純物をドーピングしてもよい。
【0348】
本発明に原理を利用する半導体装置を構成する際には、上記の実施の形態では、コンタクト層を形成する材料としてAl
zGa
1−zNを用いているが、チャネル層よりバンドギャップの大きい他のIII族窒化物半導体を用いてもよい。コンタクト層を形成する材料として、例えば、GaN、InGaN、InAlN、InAlGaNを用いてもよい。また、平均組成が、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNに相当する超格子層としてもよい。
【0349】
本発明に原理を利用する半導体装置を構成する際には、上記の実施の形態では、Al
zGa
1−zNコンタクト層、あるいは、Al
xGa
1−xN下部障壁層に、浅いn型不純物(ドナー)をドーピングして、N型AlGaNとする際、GaNチャネル層に接する形態を採用している。Al
zGa
1−zNコンタクト層、あるいは、Al
xGa
1−xN下部障壁層が、GaNチャネル層と接する界面では、GaNチャネル層とN型AlGaNとの間に、アンドープAlGaNスペーサ層を挿入する形態としてもよい。
【0350】
本発明に原理を利用する半導体装置を構成する際には、上記の実施の形態では、絶縁膜を形成する絶縁体材料としてSi
3N
4を用いているが、他の絶縁体材料を用いてもよい。絶縁膜を形成する絶縁体材料として、例えば、SiO
2、Si
1−x−yO
xN
y、Ga
2O
3、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO
2)を用いてもよい。また、Si
3N
4、SiO
2、SiON、Ga
2O
3、Al
2O
3、ZnO、MgO、HfO
2の内、いずれか複数の絶縁体からなる積層膜により構成してもよい。
【0351】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0352】
この出願は、2008年3月12日に出願された日本出願特願2008−62510を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。