(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、棒状ヒータを長くすることなく、簡単な構成で加熱室内への輻射効率および熱媒体との熱交換効率を向上できる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、
被加熱物を加熱するための加熱室と、
上記加熱室の上部または側部の少なくとも一方に配置されたヒータ収納部と、
上記加熱室内の熱媒体が上記ヒータ収納部を介して循環する循環経路と、
上記ヒータ収納部と上記加熱室との間を仕切り、上記加熱室内に輻射熱を放射するための熱輻射板と、
上記ヒータ収納部内に配置され、外周面のうちの1つの平面が上記熱輻射板の面に対向する断面略矩形の棒状ヒータと
を備え
、
上記断面略矩形の棒状ヒータは、上記熱輻射板に接する接触部分と上記熱輻射板に接しない非接触部分とが交互に繰り返し配列され、
上記棒状ヒータの上記熱輻射板に接する接触部分では、熱伝導により上記熱輻射板を加熱すると共に、
上記棒状ヒータの上記熱輻射板に接しない非接触部分では、上記ヒータ収納部を介して循環する上記熱媒体を、上記棒状ヒータの上記熱輻射板に接する接触部分よりも効率よく加熱することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、加熱室内の熱媒体が循環する循環経路のうちのヒータ収納部内に、断面円形の棒状ヒータよりも表面積の大きい断面略矩形の棒状ヒータを配置することによって、棒状ヒータを長くすることなく、熱媒体との熱交換効率を向上できる。さらに、ヒータ収納部内に配置された断面略矩形の棒状ヒータの外周面のうちの1つの平面が熱輻射板の面に対向することによって、断面円形の棒状ヒータよりも断面略矩形の棒状ヒータの平面から熱輻射板への輻射熱が多くなって、熱輻射板から被加熱物への輻射熱量を多くできる。これによって、調理時間を短縮することができる。また、断面略矩形の棒状ヒータの外周面のうちの1つの平面を熱輻射板に面接触させることによって、棒状ヒータから熱輻射板への熱伝導率がよくなり、熱輻射板から被加熱物への輻射熱量をさらに多くすることが可能になる。
また、熱輻射板に接する接触部分と熱輻射板に接しない非接触部分とが交互に繰り返し配列された断面略矩形の棒状ヒータを用いることによって、熱輻射板に接する接触部分では、棒状ヒータから熱輻射板への熱伝導率が高くなり、上記接触部分に対する熱輻射板の領域の温度が上がって輻射熱が増える。一方、熱輻射板に接しない非接触部分では、対応する熱輻射板の領域の温度が下がって輻射熱が減って、熱媒体との熱交換効率が高くなる。したがって、効率よく加熱された熱媒体と熱輻射板の輻射熱により被加熱物を加熱できる。
【0009】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記ヒータ収納部は、上記加熱室の上部に配置されている。
【0010】
上記実施形態によれば、ヒータ収納部が加熱室の上部に配置されていることによって、加熱室の上方の熱輻射板から下方の被加熱物に向かって効率よく輻射熱を放射して、良好な加熱調理ができる。
【0011】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記断面略矩形の棒状ヒータの上記外周面のうちの1つの平面が、上記熱輻射板に面接触している。
【0012】
上記実施形態によれば、断面略矩形の棒状ヒータの外周面のうちの1つの平面が熱輻射板に面接触していることによって、棒状ヒータから熱輻射板への熱伝導率がよくなり、熱輻射板から被加熱物への輻射熱量がさらに多くなる。また、熱輻射板に対して間隔をあけて棒状ヒータを配置するものに比べてヒータ収納部を薄型にできるので、循環効率も向上できる。
【0013】
【0014】
【0015】
なお、熱輻射板からの輻射熱の放射ムラが生じないように、熱輻射板に接する接触部分と熱輻射板に接しない非接触部を配置することによって、棒状ヒータと熱媒体との熱交換効率を向上しつつ、熱輻射板から被加熱物への輻射熱による加熱ムラを抑制することが可能になる。
【0016】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記断面略矩形の棒状ヒータの断面形状は長方形であり、
上記断面略長方形の棒状ヒータの外周面のうちの長辺側の平面が、上記熱輻射板の面に対向している。
【0017】
上記実施形態によれば、断面略長方形の棒状ヒータの外周面のうちの長辺側の平面が、熱輻射板の面に対向していることによって、対向する棒状ヒータの平面の面積が、同一断面積の断面略正方形の棒状ヒータよりも大きくなるので、断面略長方形の棒状ヒータの平面からの輻射熱が多くなり、熱輻射板から被加熱物への輻射熱量をさらに多くできる。
【0018】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記断面略長方形の棒状ヒータの外周面のうちの長辺側の平面が、上記熱輻射板に面接触している。
【0019】
上記実施形態によれば、断面略長方形の棒状ヒータの外周面のうちの長辺側の平面が、熱輻射板に面接触していることによって、棒状ヒータから熱輻射板への熱伝導率がよくなり、断面略正方形の棒状ヒータよりも熱輻射板から被加熱物への輻射熱量をさらに多くできる。
【発明の効果】
【0020】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器によれば、簡単な構成で棒状ヒータを長くすることなく、加熱室内への輻射効率および熱媒体との熱交換効率を向上できる加熱調理器を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の加熱調理器の正面斜視図を示している。
【0024】
この第1実施形態の加熱調理器は、
図1に示すように、直方体形状のケーシング1の正面に、下端側の辺を略中心に回動する扉2が取り付けられている。この扉2の上部にハンドル3を取り付けると共に、扉2の略中央に耐熱ガラス4を取り付けている。また、扉2の右側に操作パネル5を設けている。この操作パネル5は、カラー液晶表示部6とボタン群7を有している。また、ケーシング1の上側かつ右側後方に排気ダクト8を設けている。さらに、ケーシング1の扉2の下方に、露受容器9を着脱自在に取り付けている。
【0025】
図2は上記加熱調理器の縦断面の模式図を示している。
図2に示すように、水タンク11から供給された水を蒸気発生装置12で加熱して飽和水蒸気を生成する。蒸気発生装置12で生成された飽和水蒸気は、蒸気供給通路(図示せず)を介して、加熱室13の右側面に取り付けられた循環ユニット14の蒸気吸込口15の加熱室13側に供給される。
【0026】
上記蒸気供給通路に接続された蒸気供給管34を、加熱室13の右側面と平行になるように、循環ユニット14の蒸気吸込口15の近傍に取り付けている。また、循環ユニット14内には、蒸気吸込口15に対向するように循環ファン18を配置している。循環ファン18は、ファンモータ19によって回転駆動される。
【0027】
上記加熱室13の上面および左側面を覆うように、L字状に屈曲した蒸気ダクト90を取り付けている。この蒸気ダクト90は、加熱室13の上面側に固定されたヒータ収納部の一例としての第1ダクト部91と、第1ダクト部91の左側方から下側に屈曲する屈曲部92と、加熱室13の左側面側に固定され、屈曲部92を介して第1ダクト部91に連なる第2ダクト部93とを有している。加熱室13の天井側に、加熱室13と第1ダクト部91との間を仕切る熱輻射板50を取り付けている。
【0028】
この蒸気ダクト90の第1ダクト部91に、断面略正方形の棒状ヒータ20を収納している。蒸気ダクト90の第1ダクト部91と、断面略正方形の棒状ヒータ20で過熱水蒸気生成装置21を構成している。
【0029】
そして、蒸気ダクト90の第1ダクト部91の右側は、循環ユニット14の上部に設けられた蒸気供給口22に連通している。加熱室13の天面には、複数の第1蒸気吹出口24が設けられており、蒸気ダクト90の第1ダクト部91は、第1蒸気吹出口24を介して加熱室13内に連通している。一方、蒸気ダクト90の第2ダクト部93は、加熱室13の左側面に設けられた複数の第2蒸気吹出口25a,25b,25c,25dを介して加熱室13内に連通している。
【0030】
上記加熱室13と蒸気ダクト90との隙間は、耐熱樹脂などによりシールされている。また、加熱室13と蒸気ダクト90は、加熱室13の前面開口を除いて断熱材(図示せず)により覆われている。
【0031】
上記循環ユニット14と過熱水蒸気生成装置21と加熱室13とそれらを接続する接続部材とによって、加熱室13内の熱媒体をヒータ収納部(第1ダクト部91)を介して循環させる循環経路を形成している。そして、この循環経路における循環ユニット14の加熱室13との境界部に、蒸気発生装置12で生成された飽和水蒸気が供給される。
【0032】
また、加熱室13の下部にはマグネトロン80(
図3に示す)が配置されている。このマグネトロン80で発生したマイクロ波は、導波管(図示せず)によって加熱室13の下部中央に導かれ、モータ37によって駆動される回転アンテナ38によって攪拌されながら加熱室13内の上方に向かって放射されて被加熱物27を加熱する。
【0033】
また、ケーシング1内の下側には、冷却ファン部(図示せず)と電装品部17を配置している。電装品部17は、加熱調理器の各部を駆動する駆動回路やこの駆動回路を制御する制御回路等を有している。また、
図2において、30はトレイ、40はトレイ30上に載置された網である。
【0034】
図3は上記加熱調理器の制御ブロック図を示している。この加熱調理器は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなる制御装置100を電装品部17(
図2に示す)内に備えている。制御装置100は、棒状ヒータ20,循環ファン用モータ19,冷却ファン用モータ16,操作パネル5,庫内温度センサ29,給水ポンプ70,蒸気発生装置12およびマグネトロン80が接続されている。操作パネル5からの信号および庫内温度センサ29からの検出信号に基づいて、制御装置100は、断面略正方形の棒状ヒータ20,循環ファン用モータ19,冷却ファン用モータ16,操作パネル5,給水ポンプ70,蒸気発生装置12およびマグネトロン80などを制御する。
【0035】
上記構成の加熱調理器において、過熱水蒸気によって加熱調理を行う場合には、断面略正方形の棒状ヒータ20(
図2に示す)をオンすると共に、循環ファン18(
図2に示す)を回転駆動する。そうして、蒸気発生装置12から循環ユニット14の蒸気吸込口15の近傍上流側に供給された飽和水蒸気は、循環ファン18の回転によって負圧になっている循環ユニット14内に蒸気吸込口15を介して吸い込まれて、蒸気供給口22から過熱水蒸気生成装置21内に吹き出される。そして、過熱水蒸気生成装置21の断面略正方形の棒状ヒータ20によって加熱されて過熱水蒸気となる。この過熱水蒸気の一部は、下側の加熱室13の天面に設けられた複数の第1蒸気吹出口24から、加熱室13内に下方に向かって吹き出す。また、過熱水蒸気の他の一部は、蒸気ダクト90を介して加熱室13の第2蒸気吹出口25a,25b,25c,25dから加熱室13内に吹き出す。
【0036】
そして、加熱室13内に供給された過熱水蒸気は、トレイ30上に載置された被加熱物27を加熱した後、加熱室13の右壁面に循環ユニット14の蒸気吸込口15に対向して形成された吸込口28から循環ユニット14内に吸い込まれる。そうして、再び循環経路を通って加熱室13内に戻るという循環を繰り返す。
【0037】
ここで、加熱室13内の左壁面および右壁面には、
図2に示すように、トレイ30の両端部を係止する上段トレイ受部39a,中段トレイ受部39b,下段トレイ受部39cが上下方向に3段に設けられている。そして、蒸気供給管34は、上段トレイ受部39aよりもやや上側に位置するように配置されている。
【0038】
図4は上記加熱調理器の断面略正方形の棒状ヒータ20と熱輻射板50の要部の断面図を示している。
図4に示すように、棒状ヒータ20は、ニクロム線などの発熱体からなる発熱部20aと、その発熱部20aの外周を囲む酸化マグネシウムなどの絶縁物からなる断面略正方形の絶縁部20bと、その絶縁部20bの外周面を覆うSUS(ステンレス鋼)またはインコロイ(Inco Alloys International,Inc.の商標)などからなる被覆部20cとを有している。このインコロイの基本成分は、Ni−Cr−Fe系である。
【0039】
一方、
図5は比較例の断面円形の棒状ヒータ60と熱輻射板50の要部の断面図を示している。
図5に示すように、棒状ヒータ60は、発熱部60aと、その発熱部60aの外周を囲む絶縁部60bと、その絶縁部60bの外周面を覆う断面略円形の被覆部20cとを有している。発熱部60aと絶縁部60bおよび被覆部60cの材料は、
図4に示す棒状ヒータ20と同じである。
【0040】
図4に示す棒状ヒータ20は、
図5に示す比較例の棒状ヒータ60と断面積は同一であるが、表面積は約1.128倍となる。
【0041】
上記構成の加熱調理器によれば、加熱室13内の熱媒体が循環する循環経路のうちの第1ダクト部91内に、断面円形の棒状ヒータ20よりも表面積の大きい断面略矩形の棒状ヒータ20を配置することによって、棒状ヒータ20を長くすることなく、熱媒体との熱交換効率を向上できる。さらに、第1ダクト部91内に配置された断面略矩形の棒状ヒータ20の外周面のうちの1つの平面が熱輻射板50の面に対向することによって、断面円形の棒状ヒータ20よりも断面略矩形の棒状ヒータ20の平面から熱輻射板50への輻射熱が多くなって、熱輻射板50から被加熱物27への輻射熱量を多くできる。これによって、調理時間を短縮することができる。
【0042】
また、第1ダクト部91が加熱室13の上部に配置されていることによって、加熱室13の上方の熱輻射板50から下方の被加熱物27に向かって効率よく輻射熱を放射して、側方から供給される過熱水蒸気により被加熱物27の下側を加熱することと相俟って、良好な加熱調理ができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
図6はこの発明の第2実施形態の加熱調理器の縦断面の模式図を示している。この第2実施形態の加熱調理器は、蒸気ダクト190と循環経路などを除いて第1実施形態の加熱調理器と同一の構成をしている。
【0044】
この第2実施形態の加熱調理器は、
図6に示すように、ケーシング101内の加熱室113の背面側に循環ファン118が配置されている。また、加熱室113の上部に、ヒータ収納部の一例として第1ダクト部191と、第1ダクト部191の左側方から下側に屈曲する屈曲部192Aと、第1ダクト部191の右側方から下側に屈曲する屈曲部192Bと、加熱室113の左側面側に固定され、屈曲部192Aを介して第1ダクト部191に連なる第2ダクト部193Aと、加熱室13の右側面側に固定され、屈曲部192Bを介して第1ダクト部191に連なる第3ダクト部193Bとを有している。この蒸気ダクト190の第1ダクト部191に、断面略正方形の棒状ヒータ120を収納している。加熱室113の天井側に、加熱室113と第1ダクト部191との間を仕切る熱輻射板150を取り付けている。
【0045】
そして、蒸気ダクト190の第2ダクト部193Aは、加熱室113の左側面に設けられた蒸気吹出口125aを介して加熱室113内に連通している。また、蒸気ダクト190の第2ダクト部193Bは、加熱室113の右側面に設けられた蒸気吹出口125bを介して加熱室113内に連通している。
【0046】
上記蒸気ダクト190と加熱室113とそれらを接続する接続部材とによって、加熱室113内の熱媒体をヒータ収納部(第1ダクト部191)を介して循環させる循環経路を形成している。
【0047】
なお、この加熱調理器では、蒸気発生装置(図示せず)で生成された飽和水蒸気は、蒸気供給通路(図示せず)を介して加熱室113内に供給される。
【0048】
また、
図6において、127は被加熱物、130は上側に凸形状のトレイ、140はトレイ130上に載置された網である。トレイ130の形状が加熱室113内の上側に向かって凸形状であるため、従来の平坦なトレイで仕切るよりもトレイ130の上部空間の容積が小さくなり、加熱される容積を小さくすることができる。
【0049】
上記構成の加熱調理器において、過熱水蒸気によって加熱調理を行う場合には、棒状ヒータ120をオンすると共に、循環ファン118を回転駆動する。そうして、蒸気発生装置から加熱室113内に供給された飽和水蒸気は、循環ファン118によって加熱室113の背面に設けられた蒸気吸込口(図示せず)を介して吸い込まれて、蒸気ダクト190の第1ダクト部191内に吹き出される。このとき、第1ダクト部191内の棒状ヒータ120によって加熱されて過熱水蒸気となる。この過熱水蒸気は、蒸気ダクト190を介して加熱室113の蒸気吹出口125a,125bから加熱室113内に吹き出す。そして、加熱室113内に供給された過熱水蒸気は、トレイ130上に載置された被加熱物127を加熱した後、加熱室113の背面側の蒸気吸込口から吸い込まれる。そうして、再び循環経路を通って加熱室13内に戻るという循環を繰り返す。このとき、棒状ヒータ220により加熱された熱輻射板250から放射された輻射熱により被加熱物227を上方から加熱する。
【0050】
図7は上記加熱調理器の断面略正方形の棒状ヒータ120が取り付けられた熱輻射板150の平面図を示している。
図7に示すように、断面略正方形の棒状ヒータ120の外周面のうちの1つの平面が熱輻射板150に面接触して、棒状ヒータ120が略長方形状の熱輻射板150の上面に固定されている。この熱輻射板150の断面は、略長方形状をしている。また、棒状ヒータ120は、互いに間隔をあけて略平行な複数の直線部120A,120C,120E,120G,120I,120Kと、互いに隣接する直線部120A,120C,120E,120G,120I,120Kの端部を交互に接続する半円弧状の複数の湾曲部120B,120D,120F,120H,120Jとを有する。
【0051】
図8は上記加熱調理器の断面略正方形の棒状ヒータ120と熱輻射板150の要部の断面図を示している。
図8に示すように、棒状ヒータ120は、ニクロム線などの発熱体からなる発熱部120aと、その発熱部120aの外周を囲む酸化マグネシウムなどの絶縁物からなる断面略正方形の絶縁部120bと、その絶縁部120bの外周面を覆うSUS(ステンレス鋼)またはインコロイ(Inco Alloys International,Inc.の商標)などからなる被覆部20cとを有している。このインコロイの基本成分は、Ni−Cr−Fe系である。
【0052】
一方、
図9は比較例の断面円形の棒状ヒータ160と熱輻射板150の要部の断面図を示している。
図9に示すように、棒状ヒータ160は、発熱部160aと、その発熱部160aの外周を囲む断面略円形の絶縁部160bと、その絶縁部160bの外周面を覆う被覆部120cとを有している。発熱部160aと絶縁部160bおよび被覆部160cの材料は、
図8に示す棒状ヒータ120と同じである。また、この断面円形の棒状ヒータ160の断面積は、
図8に示す断面略正方形の棒状ヒータ120の断面積と同じである。
【0053】
図9に示す比較例の断面円形の棒状ヒータ120は、断面円形の棒状ヒータ160の外周面の一部が熱輻射板150に線接触して、棒状ヒータ160が熱輻射板150の上面に固定されている。これに対して、この第2実施形態の加熱調理器では、
図8に示すように、断面略正方形の棒状ヒータ120の外周面のうちの1つの平面が熱輻射板150に面接触して、棒状ヒータ120が熱輻射板150の上面に固定されている。
【0054】
これにより、上記第2実施形態の加熱調理器では、断面略矩形の棒状ヒータ120から熱輻射板150への熱伝導率がよくなり、熱輻射板150から被加熱物への輻射熱量がさらに多くなり、加熱調理の性能が向上する。また、断面略正方形の棒状ヒータ120の外周面のうちの1つの平面が熱輻射板150に面接触することによって、熱輻射板に対して間隔をあけて棒状ヒータを配置するものに比べて第1ダクト部191を薄型にできるので、循環効率も向上できる。
【0055】
なお、断面略矩形の棒状ヒータ120に限らず、
図10に示すように、断面略長方形の棒状ヒータ121を用いてもよい。この棒状ヒータ121は、
図10に示すように、発熱部121aと、その発熱部121aの外周を囲む断面略長方形の絶縁部121bと、その絶縁部121bの外周面を覆う被覆部120cとを有している。発熱部121aと絶縁部121bおよび被覆部121cの材料は、
図8に示す棒状ヒータ120と同じである。
【0056】
この棒状ヒータ121の断面は、略長方形であり、棒状ヒータ120の外周面のうちの長辺側の平面が熱輻射板150に面接触して、棒状ヒータ120が熱輻射板150の上面に溶接により固定されている。
【0057】
このように、断面略長方形の棒状ヒータ121の外周面のうちの長辺側の平面が、熱輻射板150に面接触していることによって、棒状ヒータ121から熱輻射板150への熱伝導率がよくなり、断面略正方形の棒状ヒータ120よりも熱輻射板150から被加熱物への輻射熱量をさらに多くできる。
【0058】
なお、第1実施形態と同様に、断面略長方形の棒状ヒータ121と熱輻射板150とが離間して配置されている場合において、断面略長方形の棒状ヒータ121の外周面のうちの長辺側の平面が、熱輻射板150の面に対向していることによって、対向する棒状ヒータ121の平面の面積が、同一断面積の断面略正方形の棒状ヒータ120よりも大きくなるので、断面略長方形の棒状ヒータ121の平面からの輻射熱が多くなり、断面積が同じ断面円形の棒状ヒータに比べて熱輻射板150から被加熱物への輻射熱量をさらに多くできる。
【0059】
上記第2実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
【0060】
なお、上記第2実施形態の加熱調理器では、熱輻射板150に蒸気吹出口を設けていないが、加熱室とヒータ収納部(第1ダクト部)との間を仕切る熱輻射板に複数の蒸気吹出口を設けて、第1実施形態と同様に、加熱室の上方からの輻射熱と過熱水蒸気により被加熱物を加熱してもよい。
【0061】
〔第3実施形態〕
図11はこの発明の第3実施形態の加熱調理器の縦断面の模式図を示している。この第3実施形態の加熱調理器は、蒸気ダクト290と循環経路などを除いて第1実施形態の加熱調理器と同一の構成をしている。
【0062】
この第2実施形態の加熱調理器は、
図6に示すように、ケーシング201内の加熱室213の背面側に循環ファン218が配置されている。また、加熱室213の上部に、ヒータ収納部の一例として第1ダクト部291と、第1ダクト部291の左側方から下側に屈曲する屈曲部292Aと、第1ダクト部291の右側方から下側に屈曲する屈曲部292Bと、加熱室213の左側面側に固定され、屈曲部292Aを介して第1ダクト部291に連なる第2ダクト部293Aと、加熱室13の右側面側に固定され、屈曲部292Bを介して第1ダクト部291に連なる第3ダクト部293Bとを有している。この蒸気ダクト290の第1ダクト部291に、断面略正方形の棒状ヒータ220を収納している。加熱室213の天井側に、加熱室213と第1ダクト部291との間を仕切る熱輻射板250を取り付けている。
【0063】
そして、蒸気ダクト290の第2ダクト部293Aは、加熱室213の左側面に設けられた蒸気吹出口225aを介して加熱室213内に連通している。また、蒸気ダクト290の第3ダクト部293Bは、加熱室213の右側面に設けられた蒸気吹出口225bを介して加熱室213内に連通している。
【0064】
上記蒸気ダクト290と加熱室213とそれらを接続する接続部材とによって、加熱室213内の熱媒体をヒータ収納部(第1ダクト部291)を介して循環させる循環経路を形成している。
【0065】
なお、この加熱調理器では、蒸気発生装置(図示せず)で生成された飽和水蒸気は、蒸気供給通路(図示せず)を介して加熱室213内に供給される。
【0066】
上記断面略矩形の棒状ヒータ220は、熱輻射板250に接する接触部分220aと熱輻射板250に接しない非接触部分220bとが交互に繰り返し配列されている。
【0067】
例えば、
図7に示す棒状ヒータ120において、複数の直線部120A,120C,120E,120G,120I,120Kのうちの複数の直線部120A,120E,120Iを熱輻射板150に接する接触部分とし、直線部120C,120G,120Kを熱輻射板150に接しない非接触部分としてもよい。
【0068】
上記構成の加熱調理器は、第2実施形態の加熱調理器と同様に、過熱水蒸気によって加熱調理を行う場合には、棒状ヒータ220をオンすると共に、循環ファン218を回転駆動する。そうして、蒸気発生装置から加熱室213内に供給された飽和水蒸気は、循環ファン218によって加熱室213の背面に設けられた蒸気吸込口(図示せず)を介して吸い込まれて、蒸気ダクト290の第1ダクト部291内に吹き出される。このとき、第1ダクト部291内の棒状ヒータ220によって加熱されて過熱水蒸気となる。この過熱水蒸気は、蒸気ダクト290を介して加熱室213の蒸気吹出口225a,225bから加熱室213内に吹き出す。そして、加熱室213内に供給された過熱水蒸気は、トレイ230上に載置された被加熱物227を加熱した後、加熱室213の背面側の蒸気吸込口から吸い込まれる。そうして、再び循環経路を通って加熱室13内に戻るという循環を繰り返す。このとき、棒状ヒータ220により加熱された熱輻射板250から放射された輻射熱により被加熱物227を上方から加熱する。
【0069】
上記第3実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
【0070】
また、上記第3実施形態の加熱調理器によれば、熱輻射板250に接する接触部分220aと熱輻射板250に接しない非接触部分220bとが交互に繰り返し配列された断面略矩形の棒状ヒータ220を用いることによって、熱輻射板250に接する接触部分220aでは、棒状ヒータ220から熱輻射板250への熱伝導率が高くなり、接触部分220aに対応する熱輻射板250の領域の温度が上がって輻射熱が増える。一方、熱輻射板250に接しない非接触部分220bでは、対応する熱輻射板250の領域の温度が下がって輻射熱が減って、熱媒体との熱交換効率が高くなる。したがって、効率よく加熱された熱媒体と熱輻射板の輻射熱により被加熱物を加熱することができる。
【0071】
なお、上記熱輻射板250からの輻射熱の放射ムラが生じないように、熱輻射板250に接する接触部分220aと熱輻射板250に接しない非接触部分220bを配置することで、棒状ヒータ220と熱媒体との熱交換効率を向上しつつ、熱輻射板250から被加熱物227への輻射熱による加熱ムラを抑制することが可能になる。
【0072】
なお、上記第3実施形態の加熱調理器では、熱輻射板250に蒸気吹出口を設けていないが、加熱室とヒータ収納部(第1ダクト部)との間を仕切る熱輻射板に複数の蒸気吹出口を設けて、第1実施形態と同様に、加熱室の上方からの輻射熱と過熱水蒸気により被加熱物を加熱してもよい。
【0073】
この発明の加熱調理器としては、例えば、過熱水蒸気を使用するオーブンレンジのみならず、過熱水蒸気を使用するオーブン、過熱水蒸気を使用しないオーブンレンジ、過熱水蒸気を使用しないオーブンなどがある。
【0074】
この発明の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱水蒸気または飽和水蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、本発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱水蒸気または飽和水蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱水蒸気または飽和水蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱室内は過熱水蒸気または飽和水蒸気が充満して低酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。ここで、低酸素状態とは、加熱室内において酸素の体積%が10%以下(例えば0.5〜3%)である状態を指す。
【0075】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。