(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、第1実施の形態におけるタンク搭載車両1の概略構造について説明する。
図1はタンク搭載車両1の側面図である。タンク搭載車両1は、タンクセミトレーラ2と、そのタンクセミトレーラ2を牽引するトラクタ3とを備えている。タンクセミトレーラ2は、LNG等の燃料(可燃物)からなる低温液化ガスが収容されるタンク4と、タンク4に取り付けられる走行装置5とを備えている。
【0013】
なお、タンク4は走行装置5が直接取り付けられ、それらが一体の単体構造として構成されている。トラクタ3の駆動力によりタンクセミトレーラ2が従動されて、タンク4に収容された低温液化ガスが搬送される。また、タンク4の下部に取着されたフレーム6には、外部との熱交換により低温液化ガスを気化させる加圧蒸発器7が配設されている。
【0014】
次に
図2を参照して、タンク搭載車両1の配管系統について説明する。
図2はタンク搭載車両1(タンクセミトレーラ2)の配管系統図である。タンク搭載車両1は、低温液化ガスを収容するタンク4と、そのタンク4に下部連通管12及び上部連通管13を介して連通される連通管10と、タンク4の底部および天部に連通されると共に加圧蒸発器7が配設される加圧管20とを備えている。
【0015】
タンク4は、二重殻真空断熱式構造であり、低温液化ガスを収容する内槽4aと、その内槽4aの外周部に所定間隔をあけて配設される外槽4bとを備え、内槽4aと外槽4bとの間が真空排気されて内槽4aの外周部に真空断熱層が形成されている。これにより外部からの熱侵入を低減することができ、タンク4に収容された液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、LNG等の超(極)低温液化ガスの蒸発損失を少なくすることができる。
【0016】
連通管10は、タンク4に低温液化ガスを充填したりタンク4に収容された低温液化ガスを外部へ送出したりする際に使用される配管であり、一端に連結口11が形成されている。連結口11は、連通管10の一端に形成される継手であり、タンク4に低温液化ガスを供給する積込側施設(図示せず)の配管や、タンク4から低温液化ガスを送出する荷下ろし側施設(図示せず)の配管が連結される。また、他のタンク搭載車両201(
図3参照)に積載された低温液化ガスを回収するため、他のタンク搭載車両201の連通管10も連結口11に連結される。連通管10には遮断弁10a(連通管遮断弁)が配設されている。連通管10に遮断弁10aが配設されているので、異常な徴候を予知した場合などに閉止することで、事故を未然に防止できる。
【0017】
下部連通管12及び上部連通管13は、連通管10から2つに分岐される配管である。下部連通管12は、タンク4の底部から低温液化ガスを内槽4aに導入したり、タンク4に収容された低温液化ガスを外部へ送出したりする際に使用される配管であり、外槽4bを貫通し内槽4aの底部に連通されている。下部連通管12には、開度を調整可能に構成される下部弁12aが配設されている。下部弁12aを操作することにより、タンク4に充填される低温液化ガスの流量やタンク4から送出される低温液化ガスの流量を調整できる。
【0018】
上部連通管13は、低温液化ガスをタンク4の天部から内槽4aに導入するための配管であり、外槽4b及び内槽4aを貫通し、内槽4aの天部に配設される散布管14に接続されている。散布管14は、低温液化ガスを内槽4aに散布するための部材である。常温の内槽4aに低温液化ガスが急速に充填されると、内槽4aが急冷されて内槽4a内に温度分布が発生し、熱収縮差によりコーナー部等に応力が集中して破損のおそれがある。散布管14により低温液化ガスを散布することで、常温の内槽4aに低温液化ガスを充填するときに内槽4aを均一かつ徐々に冷却(クールダウン)し、内槽4aの破損を防止できる。上部連通管13には、開度を調整可能に構成される上部弁13aが配設されている。上部弁13aを操作することにより、散布管13から散布される低温液化ガスの流量を調整できる。
【0019】
加圧管20は、タンク4の底部から低温液化ガスを抜き出すと共に、蒸発気化した加圧用の低温液化ガス(気化ガス)をタンク4に還流するための低温液化ガスの流路となる配管である。低温液化ガスの流路の上流となる加圧管上流部20aが内槽4aの底部に連通され、低温液化ガスの流路の下流となる加圧管下流部20bが内槽4aの天部に連通されている。加圧管20は、低温液化ガスを気化する加圧蒸発器7が配設されているので、タンク4(内槽4a)の底部に連通する加圧管上流部20aからタンク4(内槽4a)の天部に連通する加圧管下流部20bに向かって(
図2反時計回り)、低温液化ガス及び気化ガスの流れが形成される。なお、
図2では、加圧管20における低温液化ガスの流れを実線矢印で図示し、気化ガスの流れを破線矢印で図示している(
図3及び
図4において同じ)。また、加圧管20は、加圧蒸発器7より上流側に入口弁20cが、加圧蒸発器7より下流側に出口弁20dがそれぞれ配設されている。
【0020】
加圧蒸発器7は、低温液化ガスと気体等の流体との熱交換により低温液化ガスを蒸発気化させる装置である。入口弁20cを通過して加圧管20から導入された低温液化ガスを蒸発気化し、蒸発気化した低温液化ガス(気化ガス)を、出口弁20dを通過させ加圧管20から内槽4aに再導入することで内槽4a内が加圧される。
【0021】
入口弁20cは、低温液化ガスが加圧蒸発器7に導入される加圧管20の流路を開閉するためのバルブであり、出口弁20dは、気化ガスが内槽4aに導入される加圧管20の流路を開閉するためのバルブである。遮断弁20e(加圧管遮断弁)は、異常が発生した場合などに加圧管20の流路を遮断するためのバルブであり、入口弁20cより下流側であって加圧蒸発器7より上流側の加圧管20に配設されている。加圧蒸発器7より上流側の加圧管20に遮断弁20eが配設されているので、加圧蒸発器7等に異常な徴候を予知した場合などに閉止することで、事故を未然に防止できる。また、遮断弁20eより上流側の加圧管20に導入管30が連通しているので、遮断弁20eを閉止することで、タンク搭載車両1のタンク4からの低温液化ガスの流入およびタンク搭載車両201のタンク4からの低温液化ガスの流入を遮断できる。これにより部品点数(バルブの数)を削減できる。
【0022】
バイパス管21は、加圧蒸発器7より下流側であって出口弁20dより上流側の加圧管20と、出口弁20dより下流側の加圧管20とに連通する配管である。バイパス管21はバイパス弁21a及び逆止弁21bが配設されている。バイパス弁21aは、バイパス管21の流路を開閉するためのバルブであり、逆止弁21bは、出口弁20dの上流から下流へ気化ガスを通過させる一方、出口弁20dの下流から上流への気化ガスの逆流を阻止するためのバルブである。
【0023】
バイパス管21に逆止弁21bが配設されているので、タンク4(内槽4a)の圧力が加圧蒸発器7の下流の加圧管20の圧力より高い場合でも、バイパス弁21aが開弁されているときに加圧蒸発器7へ気化ガスが逆流することを阻止できる。これにより、タンク4の内圧によって加圧蒸発器7が昇圧されることを防ぎ、加圧蒸発器7の負荷を抑制できる。
【0024】
通気管22は、低温液化ガスの気化により発生したガス(ボイルオフガス)が流通する配管であり、一端が出口弁20dより下流側の加圧管20に連通され、他端にガス回収口23が形成されている。ガス回収口23は、積込側施設や荷下ろし側施設(いずれも図示せず)の配管が連結される継手である。通気管22には開度を調整可能に構成される通気弁22aが配設されている。
【0025】
ガス放出弁24は、低温液化ガスの荷下ろし後にタンク4の内圧を規定圧力まで下げるためのバルブであり、出口弁20dより下流側の加圧管20に連通されている。ガス放出弁24を通過した気化ガスは、逆火防止器25を通して大気放出される。安全弁26は、タンク4の内圧を所定圧力以下にするためのバルブであり、出口弁20dより下流側の加圧管20に連通されている。安全弁26を通過した気化ガスも逆火防止器25を通して大気放出される。
【0026】
導入管30は、他のタンク搭載車両201(
図3参照)が積載する低温液化ガスを加圧蒸発器7の上流の加圧管20に導入するための配管であり、入口弁20cより下流側であって加圧蒸発器7より上流側の加圧管20に一端が連通し、他端に第1の継手31が形成されている。第1の継手31は、他のタンク搭載車両201(他車)のタンク4(他のタンク)の底部に連通する下部加圧管202に接続される部位である。
【0027】
また、導入管30は遮断弁30a(第1の遮断弁)が配設されている。加圧蒸発器7等の異常な徴候を予知した場合などに遮断弁30aを閉止することで、低温液化ガスが導入管30から加圧管20に導入されることを阻止できる。これにより事故を未然に防止できる。遮断弁30aは、タンク搭載車両1に搭載される空気タンク(図示せず)内の圧縮空気により駆動される。そのため、遮断弁30aが駆動されるときに電気火花等の点火エネルギーが発生することを防止できる。これによりLNG等の可燃物を低温液化ガスとして取り扱うことを可能にできる。
【0028】
導出管40は、加圧蒸発器7により発生した気化ガスを他のタンク搭載車両201(
図3参照)のタンク4に導入するための配管であり、出口弁20dより上流側であって加圧蒸発器7より下流側の加圧管20に一端が連通し、他端に第2の継手41が形成されている。第2の継手41は、他のタンク搭載車両201(
図3参照)のタンク4の天部に連通する上部加圧管203に接続される部位である。また、導出管40は安全弁42が連通されている。そのため、導出管40の内圧を所定圧力以下にすることができる。安全弁42を通過した気化ガスは逆火防止器25を通して大気放出される。
【0029】
次に
図2を参照して、タンク搭載車両1による荷下ろし作業について説明する。荷下ろし作業は、タンク4に充填された低温液化ガスを荷下ろし側施設の貯槽(図示せず)に移送する作業である。荷下ろし作業では、連結口11に荷下ろし側施設の配管(図示せず)を接続し、上部弁13a及び通気弁22aを閉止し下部弁12aを開弁する。なお、第1及び第2の継手31,41は荷下ろし側施設の配管(図示せず)に接続されず、第1及び第2の継手31,41は閉じた状態に維持される。
【0030】
入口弁20c及び出口弁20dを開弁すると、タンク4と加圧蒸発器7とのヘッド圧の差(液面の高低差)によりタンク4内の低温液化ガスが加圧管20を通って加圧蒸発器7に導かれる。加圧蒸発器7で低温液化ガスが蒸発気化され、気化ガスが加圧管20を通ってタンク4に還流される。還流された気化ガスによりタンク4内の気相が加圧されると、タンク4内の低温液化ガスは下部連通管12に送出される。タンク4から下部連通管12に送出された低温液化ガスは、連通管10及び連結口11から荷下ろし側施設の配管(図示せず)に供給される。荷下ろしが終わると、入口弁20c及び出口弁20dを閉止し、ガス放出弁24を開弁して、タンク4の圧力を低下させる。
【0031】
次に
図3を参照して、他のタンク搭載車両201(他車)から低温液体ガスを回収するときのタンク搭載車両1(自車)の使用方法について説明する。
図3は、他のタンク搭載車両201に積載された低温液化ガスをタンク搭載車両1に回収するときの配管系統図である。なお、他のタンク搭載車両201において、本発明のタンク搭載車両1と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0032】
まず、他のタンク搭載車両201について説明する。他のタンク搭載車両201は、荷下ろし装置が搭載されていない点で、荷下ろし装置(加圧蒸発器7)が搭載されるタンク搭載車両1と相違する。タンク搭載車両201は、タンク4と、タンク4の底部および天部に一端が連通する下部連通管12及び上部連通管13と、それら下部連通管12及び上部連通管13と連通する連通管10とを備えている。また、タンク4の底部に一端が連通する下部加圧管202と、タンク4の天部に一端が連通する上部加圧管203とを備えている。下部加圧管202及び上部加圧管203は、地上設備(基地)に設置された加圧蒸発器(図示せず)に接続される配管である。また、下部加圧管202及び上部加圧管203は、それぞれの流路を開閉する下部加圧弁202a及び上部加圧弁203aが配設されている。
【0033】
タンク搭載車両201(他車)が地上設備(基地等)に荷下ろしをするときには、地上設備の貯槽(図示せず)にタンク搭載車両201の連結口11を接続し、下部加圧管202及び上部加圧管203を地上設備の加圧蒸発器(図示せず)に接続する。下部加圧弁202a、上部加圧弁203a及び下部弁12aを開弁し、上部弁13aを閉止する。そうするとタンク4と加圧蒸発器(図示せず)とのヘッド圧の差によりタンク4内の低温液化ガスが下部加圧管202を通って加圧蒸発器に導かれる。加圧蒸発器で低温液化ガスが蒸発気化され、気化ガスが上部加圧管203を通ってタンク4に還流される。還流された気化ガスによりタンク4内の気相が加圧されると、タンク4内の低温液化ガスは下部連通管12に送出され、連通管10及び連結口11から地上設備の貯槽(図示せず)に荷下ろしされる。
【0034】
しかしながら、タンク搭載車両201が低温液化ガスの配送や運搬を行う途中に、荷下ろし装置が設置された地上設備(基地等)以外で、故障や事故により自力走行ができなくなって立ち往生した場合に問題が生じていた。タンク搭載車両201が低温液化ガスを積載している場合には、タンク搭載車両201の重量(積荷を合わせた重量)が大きいため、レッカー車によって牽引して移動させることが困難だからである。
【0035】
タンク搭載車両201の重量を小さくするには、荷下ろし装置を用いてタンク4から別のタンクに低温液化ガスを移送し、積荷の低温液化ガスを減らすのが良い。しかし、タンク搭載車両201は荷下ろし装置を非搭載なので、それができない。そのため、レッカー車による牽引の前に、他車のガス放出弁24を開弁し逆火防止器25を通じてタンク4内の低温液化ガスを大気放出し、タンク4内の積荷を減らしていた。低温液化ガスが可燃物であると、逆火防止器25を通じて大気放出する必要があるからである。この低温液化ガスを大気放出する作業に長時間を要するため、立ち往生したタンク搭載車両201を速やかにレッカー車で移動させることができなかった。また、大気放出された低温液化ガスは回収できないので、タンク搭載車両201の積荷の低温液化ガスが浪費されていた。
【0036】
これを防止するため、自力走行ができずに立ち往生したタンク搭載車両201(他車)のところまでタンク搭載車両1(自車)を走行させる。なお、タンク搭載車両1は、立ち往生したタンク搭載車両201の積荷を収容できるように、予めタンク4を空にしておくか積荷を減らしておく。そのタンク搭載車両1をタンク搭載車両201に近づけたら、
図3に示すように、タンク搭載車両1の連結口11、導入管30の第1の継手31、導出管40の第2の継手41と、タンク搭載車両201の連通管10、下部加圧管202及び上部加圧管203とを可撓性ホース204,205,206により接続し連通させる。
【0037】
次いで、タンク搭載車両1の入口弁20c、出口弁20d、バイパス弁21a、通気弁22a及び上部弁13aを閉止し、下部弁12a及びガス放出弁24を開弁する。また、タンク搭載車両201の下部加圧弁202a、下部弁12a及び上部加圧弁203aを開弁し、上部弁13a及びガス放出弁24を閉止すると、タンク搭載車両201(他車)のタンク4とタンク搭載車両1(自車)の加圧蒸発器7とのヘッド圧の差により、タンク搭載車両201のタンク4内の低温液化ガスが下部加圧管202、導入管30、可撓性ホース205、加圧管20を通って加圧蒸発器7に導かれる。なお、
図3では開弁されたバルブを白抜きで、閉止されたバルブを黒塗りで図示している。
【0038】
加圧蒸発器7に導かれた低温液化ガスは蒸発気化され、気化ガスが導出管40、可撓性ホース206を通ってタンク搭載車両201の上部加圧管203から他車のタンク4に還流される。還流された気化ガスにより他車のタンク4内の気相が加圧されると、他車のタンク4内の低温液化ガスは下部連通管12及び連通管10に送出される。送出された低温液化ガスは可撓性ホース204を通ってタンク搭載車両1の連通管10に送られ、下部連通管12から自車のタンク4に充填される一方、自車のタンク4内の気相はガス放出弁24から放出される。これによりタンク搭載車両201の低温液化ガスが短時間で自車のタンク4に回収される。
【0039】
また、タンク搭載車両201からタンク搭載車両1への低温液化ガスの送出を終了するときは、タンク搭載車両201の下部加圧弁202a及び上部加圧弁203aを閉止する一方、タンク搭載車両1のバイパス弁21aを開弁し、ガス放出弁24を閉止する。下部加圧弁202aを閉止しても、下部加圧弁202aより下流の可撓性ホース205、導入管30及び加圧蒸発器7に残留した低温液化ガスは、加圧蒸発器7で順に蒸発気化される。発生した気化ガスにより加圧蒸発器7より下流の加圧管20の圧力は上昇するが、バイパス弁21aは開弁されているので、気化ガスはバイパス管21を通過して加圧管20から自車のタンク4に充填される。
【0040】
ここで、タンク搭載車両201から低温液化ガスがタンク搭載車両1に送出されるときはタンク搭載車両1のガス放出弁24は開弁されているので、自車のタンク4内の気相の圧力は大気圧とほぼ等しい。一方、タンク搭載車両201からタンク搭載車両1への低温液化ガスの送出を終了し、バイパス弁21aを開弁しガス放出弁24を閉止した後は、自車のタンク4に気化ガスが充填されるため、自車のタンク4内の気相の圧力は上昇する。気化ガスは、自車のタンク4の圧力が、加圧蒸発器7より下流側の加圧管20の圧力と同一になるまで、バイパス管21を通って自車のタンク4に充填される。
【0041】
このように加圧蒸発器7の下流側の加圧管20にバイパス管21が連通されているので、可撓性ホース205、導入管30及び加圧蒸発器7に残留した多くの低温液化ガスを、出口弁20dを開弁することなく回収することができる。また、バイパス管21に逆止弁21bが配設されているので、タンク4内の気相の圧力が、加圧蒸発器7より下流側の加圧管20の圧力より大きくなっても、気化ガスが加圧蒸発器7に逆流することを防止できる。また、加圧蒸発器7より下流側であって出口弁20dより上流側の加圧管20にバイパス管21の一端が連通し、そこに安全弁42が連通されているので、バイパス管21の内圧を所定圧力以下にすることができる。
【0042】
以上説明したようにタンク搭載車両1によれば、タンク搭載車両1の加圧蒸発器7を用いて他のタンク搭載車両201に積載される低温液化ガスを気化させることで、他のタンク搭載車両201の低温液化ガスを短時間で回収できる。また、従来のように他のタンク搭載車両201の積荷(低温液化ガス)を大気放出する必要がなくなり、低温液化ガスの浪費を防止できる。
【0043】
次に
図4を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、遮断弁20eより上流側の加圧管20に導入管30が連通し、出口弁20dより上流側であってバイパス管21より下流側の加圧管20に導出管40が連通する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、遮断弁20eより下流側の加圧管20に導入管130が連通し、出口弁20d及びバイパス管21より上流側であって加圧蒸発器7より下流側の加圧管20に導出管140が連通する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第2実施の形態におけるタンク搭載車両101の配管系統図である。
【0044】
図4に示すように、タンク搭載車両101は、入口弁20c及び遮断弁20eの下流側であって加圧蒸発器7より上流側の加圧管20に流量調整弁20fが配設されている。また、遮断弁20eより下流側であって加圧蒸発器7及び流量調整弁20fより上流側の加圧管20に導入管130の一端が連通している。
【0045】
以上のように構成される第2実施の形態におけるタンク搭載車両101を用いて他のタンク搭載車両201(
図3参照)から低温液体ガスを回収するときのタンク搭載車両101の使用方法は、第1実施の形態におけるタンク搭載車両1と同様であるので、説明を省略する。なお、タンク搭載車両101は、加圧蒸発器7より上流側の加圧管20に流量調整弁20fが配設されているので、他のタンク搭載車両201から加圧蒸発器7に導入される低温液化ガスの流量を調整することができる。これにより、加圧蒸発器7で発生する気化ガス量を調整できる。
【0046】
また、出口弁20d及びバイパス管21より上流側であって加圧蒸発器7より下流側の加圧管20に導出管140の一端が連通し、その導出管140の一端と出口弁20dとの間の加圧管20に安全弁142が連通されている。これにより第1実施の形態と同様に、タンク搭載車両201からタンク搭載車両101への低温液化ガスの送出を終了した後、配管内の低温液化ガスを回収するときのバイパス管21の内圧を所定圧力以下にすることができる。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
上記各実施の形態では、タンクセミトレーラ2とトラクタ3とを備えるタンク搭載車両1,101について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、種々のタンク搭載車両を採用することは当然可能である。タンク搭載車両1,101としては、例えばタンクフルトレーラを備える車両、タンクローリ等が挙げられる。なお、タンクセミトレーラ2をトラクタ3で牽引するタンク搭載車両1,101は、タンクローリに比べて低温液化ガスの積載量を確保できると共に、タンクフルトレーラに比べて機動性を確保できるため好適である。
【0049】
上記各実施の形態では、タンク4を、タンク4の前端側および後端側にそれぞれ位置する略円筒形の小径部と、それら小径部の間に位置すると共に小径部よりも大径に構成される略円筒形の大径部とを備えるように構成したが、これに限られるものではない。タンク4を、長手方向に亘って略同一径の略円筒形に形成することは当然可能である。
【0050】
また、タンク4に走行装置5を直接取り付け、タンク4自体によってセミトレーラとしての強度を確保するモノコック構造であるタンクセミトレーラ2について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。タンク4を支持するフレームを備え、フレーム自体の強度またはフレームの強度とタンク4の強度とを組合せることによりトレーラとしての強度を確保するフレーム構造とすることは当然可能である。
【0051】
上記各実施の形態では、タンク4は、外槽4bが減圧密封されることで内槽4aと外槽4bとの間に断熱層(真空断熱層)が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の断熱層を採用することは当然可能である。他の断熱層としては、クリプトン、キセノン、アルゴンガス等の低熱伝導率のガスや空気を外槽4bに充填し密封した断熱層、パーライト等の固体断熱層が挙げられる。
【0052】
上記各実施の形態では、他のタンク搭載車両201から低温液化ガスを回収するときに、タンク搭載車両1の下部連通管12からタンク4に低温液化ガスを充填する場合について説明したが、これに限られるものではなく、上部連通管13を併用することは当然可能である。上部連通管13を併用する場合は、まず下部弁12aを閉止し上部弁13aを開弁する。これにより低温液化ガスを散布管14から散布し内槽4aのクールダウンを行うことができる。内槽4aが十分に冷却されたら、下部弁12aを開弁することにより、内槽4aへの低温液化ガスの充填速度を大きくすることができる。