(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シートベルト摺動面は、前記シートベルト挿通孔の長手方向に沿いかつ前記ラップベルト側に配設されたラップベルト側シートベルト摺動面を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載のタング。
前記凹部は、前記シートベルト挿通孔の長手方向と直交または略直交する方向の外周面の横断面形状が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1に記載のタング。
前記シートベルト摺動面は、前記シートベルト挿通孔の長手方向の両端部に設けられた第1および第2の端部シートベルト摺動面を少なくとも有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載のタング。
シートベルトと、このシートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、このタングが挿入係合されるバックルとを少なくとも備え、前記タングを前記バックルに挿入係合することで前記シートベルトが乗員に装着されるシートベルト装置において、
前記タングは請求項1ないし11のいずれか1つに記載のタングであることを特徴とするシートベルト装置。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルト装置の実施の形態の一例を模式的に示す図である。
【0039】
図1に示すように、この例のシートベルト装置は、基本的には従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。図中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍の車体に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ3に引き出し可能に巻き取られかつ先端のベルトアンカー5が車体の床あるいは車両シート2に固定されるシートベルト、6はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするベルトガイドアンカー、7はこのベルトガイドアンカー6からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング、8は車体の床あるいは車両シート2に固定されかつタング7が係脱可能に挿入係止されるバックルである。このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、従来公知のシートベルト装置と同じである。
【0040】
そして、シートベルト
4の非装着時では、タング7がバックル8に係合されず、シートベルト4はその全量(具体的には、シートベルトリトラクタ3がシートベルト4を何らの支障もなく巻取り可能な量)をシートベルトリトラクタ3に巻き取られている。また、シートベルト4の乗員への装着時では、
図1に示すようにシートベルト4はシートベルトリトラクタ3から所定量引き出される。そして、タング7がバックル8に係合されるとともにシートベルト4の弛みが除去されることで、シートベルト4が乗員に装着される。
【0041】
シートベルト4の乗員への装着状態において、車両の通常走行時に車両に加えられる減速度に比べてはるかに大きな減速度が車両に加えられない通常時は、シートベルト4は通常のベルト引出し速度で自由に引出し可能であるとともに、シートベルト4から手を放すと余分に引き出された分、シートベルトリトラクタ3に巻き取られる。その場合、ベルトガイドアンカー6とタング7との間のシートベルト4の部分が乗員の肩および胸を拘束するショルダーベルト9であり、ベルトアンカー5とタング7との間のシートベルト4の部分が乗員の腰および脚を拘束するラップベルト10である。
【0042】
シートベルト4の装着状態において、緊急時はシートベルトリトラクタ3がシートベルト4の引出しをロックし、シートベルト4は乗員を拘束する。なお、この例のシートベルトリトラクタ3は、一般のシートベルトリトラクタと同様に、シートベルト4が通常のベルト引出し速度よりかなり速いベルト引出し速度で引き出されたときも、シートベルト4の引出しをロックするようになっている。また、シートベルトリトラクタ3は、図示しないがプリテンショナーおよびエネルギ吸収(EA)機構を備えることもできるし、また、これらのプリテンショナーおよびEA機構は省略することもできる。
【0043】
図2はこの例のシートベルト装置に用いられている本発明のタングの実施の形態の一例を示す斜視図、
図3(A)は
図2に示す例のタングの正面図、
図3(B)は
図3(A)におけるIIIB−IIIB線に断面図である。
【0044】
図2および
図3(A),(B)に示すように、この例のタング7は、乗員がタング7を
バックル8に係合するために把持する把持部11とバックル8に挿入係合される係合部12とを有する。また、タング7はT字状の金属プレート13を有する。この金属プレート13は、その一部が係合部12を形成するとともに他の一部が把持部11に対応する部分を形成する。そして、金属プレート13の把持部11に対応する部分の一部が樹脂で被覆した樹脂モールド部14からなっている。金属プレート13の係合部12にはバックル8に係合可能な矩形状の係合孔15が形成されている。
【0045】
また、把持部11には、シートベルト4が挿通されるシートベルト挿通孔16が形成されている。このシートベルト挿通孔16は係合部12と直交または略直交する方向に細長く形成されている。その場合、シートベルト挿通孔16の長手方向で係合部12側の側縁16aは樹脂で形成されているとともに、シートベルト挿通孔16の長手方向で係合部12側と反対側の側縁16bは、一部が樹脂で形成されかつ残部が金属プレート13で形成されている。そして、このシートベルト挿通孔16の側縁16bを形成する金属プレート13は、シートベルト4が摺動するシートベルト摺動部17となっている。
【0046】
図4(A)および(B)に示すように、シートベルト摺動部17はシートベルト摺動面18を有している。このシートベルト摺動面18は、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向の横断面が略半円の円弧状の滑らかな湾曲面に形成されている。また、このシートベルト摺動部17のシートベルト摺動面18には、2つの同じ大きさで同じ形状の第1および第2凹部19.20が形成されている。これらの第1および第2凹部19.20の外周面21(各凹部の底面)も、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向の横断面の形状がシートベルト摺動部17のシートベルト摺動面18の円弧と同心円の円弧状に形成されている。つまり、第1および第2凹部19.20は、シートベルト挿通孔
16と直交または略直交する方向の横断面形状が円弧状に形成されているとともに、シー
トベルト挿通孔16方向に矩形状に形成されている。そして、第1および第2凹部19.
20はシートベルト挿通孔16方向に整列されて配設されている。なお、第1および第2凹部19.20の大きさおよび形状はいずれも互いに異なるように形成することもできる
。
【0047】
そして、第1および第2凹部19.20により、シートベルト摺動面18は、シートベ
ルト挿通孔16の長手方向(
図4(A)、
図4(B)において左右方向)に沿いかつショルダーベルト9側に配設されたショルダーベルト側シートベルト摺動面42、シートベルト挿通孔16の長手方向に沿いかつラップベルト10側に配設されたラップベルト側シートベルト摺動面43、第1および第2凹部19.20間でかつショルダーベルト側シート
ベルト摺動面42とラップベルト側シートベルト摺動面43との間に、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向に沿って配設された中間シートベルト摺動面23、第1凹部19の中間シートベルト摺動面23と反対側でかつショルダーベルト側シートベルト摺動面42とラップベルト側シートベルト摺動面43との間に、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向に沿って配設された第1の端部シートベルト摺動面22、第2凹部20の中間シートベルト摺動面23と反対側でかつショルダーベルト側シートベルト摺動面42とラップベルト側シートベルト摺動面43との間に、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向に沿って配設された第2の端部シートベルト摺動面24を有する。
【0048】
第1および第2凹部19.20には、それぞれ、所定数の突部25が互いに独立して点
状に設けられている。そして、この例ではこれらの突部25は、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交する方向である第1の方向(
図4(B)において上下方向)に5列に、またシートベルト挿通孔16の長手方向である第2の方向(
図4(B)において左右方向)に4列に配設されている。その場合、第1凹部19に設けられた突部25の第2の方向の第1列(最もラップベルト10側の列)の第1の突部25aと第2凹部20に設けられた突部の第2の方向の第1列(最もラップベルト10側の列)の第1の突部25aは一直線上または略一直線上に整列されている。そして、第1および第2凹部19,20内の第1の突部25aは、すべて同一寸法の同一形状またはすべて略同一寸法の略
同一形状に形成されている。また、第1凹部19内の突部25で第1列に隣接する第2の方向の第2列の第2の突部25bと第2凹部20内の突部25で第2の方向の第2列の第2の突部25bは一直線上または略一直線上に整列されている。そして、第1および第2凹部19,20内の第2の突部25bは、すべて同一寸法の同一形状またはすべて略同一
寸法の略同一形状に形成されている。更に、第1凹部19内の突部25で第2列に隣接する第2の方向の第3列の第3の突部25cと第2凹部20内の突部25で第2の方向の第3列の第3の突部25cは一直線上または略一直線上に整列されている。そして、第1および第2凹部19,20内の第3の突部25cは、すべて同一寸法の同一形状またはすべ
て略同一寸法の略同一形状に形成されている。更に、第1凹部19内の突部25で第3列に隣接する第2の方向の第4列の第4の突部25dと第2凹部20内の突部25で第2の方向の第4列の第4の突部25dは一直線上または略一直線上に整列されている。そして、第1および第2凹部19,20内の第4の突部25dは、すべて同一寸法の同一形状ま
たはすべて略同一寸法の略同一形状に形成されている。なお、これらの第1および第2の方向の突部25の配列の数は図示例に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0049】
図5に示すように、第1の方向の同じ列に配置される第1ないし第4の突部25a,2
5b,25c,25dは、いずれも、それらの第1の方向に沿う横断面形状が三角形状または略三角形状に形成されている。
【0050】
その場合、第1の突部25aはショルダーベルト9側の端面25a
1とラップベルト1
0側の端面25a
2とを有する。これらの端面25a
1,25a
2はいずれも平面または略平面に形成されるとともにそれらの仮想延長面が互いに交差可能である。また、両端面25a
1,25a
2の交差部に対応する第1の突部25aの先端25a
3は、所定半径の円弧部(R部)とされている。なお、第1の突部25aの根元も所定半径の円弧部(R部)とされている。
【0051】
そして、
図5に二点鎖線で示すように先端25a
3を含む両端面25a
1,25a
2の少なくとも一部の領域にシートベルト4が摺接するようになる。第1および第2凹部19.2
0の外周面21の円弧の中心26と先端25a
3(具体的には最先端)とを結ぶ仮想直線
(法線)27と端面25a
1との成す角度(鋭角側)θ
1は、仮想直線27と端面25a
2
との成す角度(鋭角側)θ
2より小さい(θ
1<θ
2)。換言すると、外周面21の円弧の
円と同心でかつ同一半径の仮想円28と仮想直線27との交点29が第1の突部25aの根元の円弧(つまり、仮想円28と両端面25a
1,25a
2との交差部の間の仮想円28
の仮想円弧)の円周方向の中心30の位置よりショルダーベルト9側の端面25a
1側に
位置している。
【0052】
このように第1の突部25aが形成されることで、この第1の突部25aを摺接するシートベルト4に対して端面25a
1が成す角度が比較的大きく、またシートベルト4に対
して端面25a
2が成す角度が比較的小さくなる。したがって、シートベルト装着状態で
の緊急時に第1の突部25aに当接するシートベルト4がラップベルト10側に伸び出そうとする際、シートベルト4は第1の突部25aにおける先端25a
3のショルダーベル
ト9側の部分とこの部分に連続する端面25a
1の一部とに効果的に食い込む。これによ
り、第1の突部25aによるシートベルト4に対するグリップ力(第1の突部25aとシートベルト4との間の摩擦力)が比較的大きくなり、シートベルト4のラップベルト10側への移動が効果的に抑制される。すなわち、ラップベルト10の伸び出しが効果的に抑制される。また、シートベルト装着状態で第1の突部25aに当接するシートベルト4がショルダーベルト9側に移動しようとする際、シートベルト4は第1の突部25aにほとんど食い込まない。これにより、第1の突部25aによるシートベルト4のグリップ力(摩擦力)が比較的小さくなり、シートベルト4のショルダーベルト9側への移動が比較的スムーズに行われる。更に、第1の突部25aの先端25a
3が所定半径のR部とされる
ことから、シートベルト4は、緊急時に第1の突部25aからシートベルト4に加えられる比較的大きな力を支持することが可能な強度に保持される。
【0053】
また、第2および第3の突部25b,25cも第1の突部25aと同様の形状に形成さ
れる。すなわち、第2の突部25bはショルダーベルト9側の端面25b
1とラップベル
ト10側の端面25b
2とを有する。これらの端面25b
1,25b
2もいずれも平面または略平面に形成されるとともに第2の突部25bの先端25b
3も、所定半径の円弧部(R
部)とされる。同様に、第3の突部25cはショルダーベルト9側の端面25c
1とラッ
プベルト10側の端面25c
2とを有する。これらの端面25c
1,25c
2もいずれも平面または略平面に形成されるとともに第3の突部25cの先端25c
3も、所定半径の円弧
部(R部)とされる。
【0054】
更に、第2の突部25bにおける仮想直線(法線)31と端面25b
1との成す角度(
鋭角側)θ
3は、仮想直線31と端面25b
2との成す角度(鋭角側)θ
4より小さい(θ
3<θ
4)。換言すると、仮想円28と仮想直線31との交点32が第2の突部25bの根
元の円弧(前述の第1の突部25aの根元の円弧と同様)の円周方向の中心33の位置よりショルダーベルト9側の端面25b
1側に位置している。同様に、第3の突部25cに
おける仮想直線(法線)34と端面25c
1との成す角度(鋭角側)θ
5は、仮想直線34と端面25c
2との成す角度(鋭角側)θ
6より小さい(θ
5<θ
6)。換言すると、仮想円28と仮想直線34との交点35が第3の突部25cの根元の円弧(前述の第1の突部2
5aの根元の円弧と同様)の円周方向の中心36の位置よりショルダーベルト9側の端面25c
1側に位置している。そして、この例のタング7では、角度θ
1,θ
3,θ
5は一定または略一定(つまり同じであるかまたは略同じ)に設定されている(θ
1=θ
3=θ
5または
θ
1≒θ
3≒θ
5)。これにより、緊急時にシートベルト4に対する第1ないし第3の突部
25a,25b,25cのグリップ力が略一定になる。もちろん、これに限定されることはなく、各角度θ
1,θ
3,θ
5は互いに異なるようにあるいは一部が異なるように設定するこ
ともできる。
【0055】
このように第2および第3の突部25b,25cがそれぞれ形成されることで、前述の
第1の突部25aの場合と同様に、第2および第3の突部25b,25cでも、ラップベ
ルト10側へ移動しようとするシートベルト4に対するグリップ力が大きくなるとともに、シートベルト4のショルダーベルト9側への移動が比較的スムーズに行われ、更にシートベルト4の強度が保持される。
【0056】
また、第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dは、いずれも、それらの先
端25a
3が第1および第2の凹部19,20からシートベルト摺動面18より突出しないように設けられる。
【0057】
このように第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dが形成されることによ
り、通常時にはシートベルト4に加えられる張力が小さいので、このときにはシートベルト4は第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dに接触しないか第1ないし第
4の突部25a,25b,25c,25dのいずれかに接触しても小さな力で接触するかし
て、実質的にシートベルト摺動面18を摺動する。したがって、通常時にはシートベルト4はタング7に対して滑らかに摺動する。
【0058】
また、緊急時にはシートベルト4に加えられる張力がかなり大きくなる。このときにはシートベルト4が第1および第2凹部19,20内に進入して第1ないし第4の突部25
a,25b,25c,25dの少なくとも一部がシートベルト4に食い込む。したがって、
シートベルト4がラップベルト側に伸び出そうとする際、シートベルト4に食い込んだ第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dによるシートベルト4に対するグリッ
プ力(摩擦力)で、シートベルト4のラップベルト側への移動が抑制される。
【0059】
なお、この例のタング7においては、第4の突部25dの形状は、第1ないし第3の突部25a,25b,25cの形状と異なる。すなわち、第4の突部25dにおける仮想直線(法線)37と端面25d
2との成す角度(鋭角側)θ
7と仮想直線37と端面25d
3と
の成す角度(鋭角側)θ
8の関係および仮想円弧28と仮想直線37との交点38の位置
と第4の突部25dの根元の円弧(前述の第1の突部25aの根元の円弧と同様)の円周方向の中心39の位置との関係は、いずれも第1ないし第3の突部25a,25b,25cの場合と異なる。
【0060】
また、この例のタング7では、シートベルト摺動部17の第1方向の中心40より、ショルダーベルト9側の第3および第4の突部25c,25dの端面25c
1,25d
1は、いずれも中心26と中心40とを結ぶ直線41と平行または略平行にされている。これに対して、中心40より、ラップベルト10側の第1および第2の突部25a,25bの端面
25a
1,25b
1は、いずれも中心26と中心40とを結ぶ直線41に対して傾斜してい
る。
【0061】
この例のタング7によれば、第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dが、
いずれもシートベルト摺動面18の第1および第2の凹部19,20内にそれらの先端2
5a
3が第1および第2の凹部19,20からシートベルト摺動面18より突出しないよう
に設けられる。これにより、シートベルト4に加えられる張力が比較的小さい通常時には前述のように実質的にシートベルト摺動面18を摺動する。したがって、通常時にはタング7に対するシートベルト4の摺動を更に効果的に滑らかにすることが可能となる。その結果、通常時のシートベルト4の操作性を効果的に良好にすることができる。
【0062】
また、緊急時にはシートベルト4に加えられる張力がかなり大きくなるので、このときにはシートベルト4が第1および第2凹部19,20内に進入して第1ないし第4の突部
25a,25b,25c,25dの少なくとも一部がシートベルト4に食い込む。したがっ
て、シートベルト4がラップベルト側に伸び出そうとする際、シートベルト4に食い込んだ第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dによるシートベルト4に対するグ
リップ力(摩擦力)で、シートベルト4のラップベルト側への移動を効果的に抑制することができる。その結果、緊急時においてラップベルト10の伸び出しを効果的に抑制して、ラップベルト10による乗員の拘束をより効果的に行うことが可能となる。
【0063】
特に、シートベルト摺動面18に設けられる第1および第2凹部19,20におけるシ
ートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交する方向の外周面の横断面形状が円弧状に形成されることで、通常時にはタング7に対するシートベルト4の摺動を更に効果的に滑らかにすることができ、また、緊急時にはラップベルト10による乗員の拘束を更に一層効果的に行うことが可能となる。
【0064】
更に、金属プレート13のシートベルト摺動部17に所定数の突部25が設けられる。そして、これらの突部25のうち、少なくとも一部の第1ないし第3の突部25a,25b,25cの各最先端とこれら第1ないし第3の突部25a,25b,25cが形成される
第1および第2凹部19.20の外周面21の円弧の中心26とを結ぶ仮想直線(法線)27,31,34と、第1ないし第3の突部25a,25b,25cのショルダーベルト9側の各端面25a
1,25b
1,25c
1との成す角度(鋭角側)θ
1,θ
3,θ
5が、それぞれ、仮想直線(法線)27,31,34と、第1ないし第3の突部25a,25b,25cのラップベルト10側の各端面25a
2,25b
2,25c
2との成す角度(鋭角側)θ
2,θ
4,θ
6より小さく設定されている(すなわち、θ
1<θ
2,θ
3<θ
4,θ
5<θ
6)。これにより、これらの第1ないし第3の突部25a,25b,25cを摺接するシートベルト4に対してショルダーベルト9側の各端面25a
1,25b
1,25c
1が成す角度を比較的大きくすることができるとともに、シートベルト4に対してラップベルト10側の各端面25a
2,25b
2,25c
2が成す角度を比較的小さくすることができる。したがって、シートベルト装着状態での緊急時に第1ないし第3の突部25a,25b,25cに当接するシートベルト4がラップベルト10側に移動しようとする際、第1ないし第3の突部25a,25b,25cによるシートベルト4のグリップ力を比較的大きくすることが可能となり、シートベルト4のラップベルト10側への移動を効果的に抑制することができる。すなわち、ラップベルト10の伸び出しを効果的に抑制することができる。また、シートベルト装着状態で第1ないし第3の突部25a,25b,25cに当接するシートベルト4がショルダーベルト9側に移動しようとする際、第1ないし第3の突部25a,25b,25cによるシートベルト4のグリップ力が比較的小さくなり、シートベルト4のショルダーベルト9側への移動を比較的スムーズに行うことが可能となる。更に、第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dの各先端25a
3,25b
3,25c
3,25d
3が、それぞれ、所定半径のR部とされることから、シートベルト4の強度を、緊急時に第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dからそれぞれシートベルト4に加えられる比較的大きな力を支持することが可能な強度に保持することが可能となる。
【0065】
また、シートベルト摺動面18として、シートベルト挿通孔16の長手方向の両端に位置する第1および第2の端部シートベルト摺動面22,24に加えて、第1および第2凹
部19,20との間に中間シートベルト摺動面23が設けられることで、緊急時にシート
ベルト4に加えられる力に対してシートベルト4の強度をより効果的に保持することが可能となる。
【0066】
前述のような作用効果が得られるタング7の突部25の具体例として、乗用車等の車両に一般に用いられるタングの場合、突部25の幅(シートベルト挿通孔16の長手方向の長さ)は0.5mm〜2mm(ベストは、1.0mm)、シートベルト挿通孔16の長手方向に隣接する突部25どうしの間隔は1mm〜3mm(ベストは、2.0mm)、突部2
5の先端のR部の半径は0.5mm〜1.5mm(ベストは、0.8mm)に設定する。な
お、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向の突部の両側縁もR部とすることが好ましく、これらの両側縁のR部の半径は0.2mm〜1mm(ベストは、0.5mm)に設定する。
【0067】
一方、この例のタング7を用いたこの例のシートベルト装置1によれば、通常時のタング7のシートベルト4に対する摺動を容易にかつ滑らかにできるとともに、緊急時のラップベルト10の伸び出しを効果的に抑制でき、しかもシートベルト4の強度を緊急時に各突部25から加えられる力を支持可能な強度に保持できるので、乗員によるシートベルト4の装着性およびシートベルト4による乗員の拘束性を、ともに、より一層向上することができる。
【0068】
図6は、本発明に係るタングの実施の形態の他の例を示す、
図5と同様の断面図である。
前述の
図5に示す例では、第4の突部25dの形状は、第1ないし第3の突部25a,
25b,25cの形状と異なるように形成されているが、
図6に示すようにこの例のタン
グ7では、第4の突部25dの形状も、第1ないし第3の突部25a,25b,25cと同様の形状に形成される。すなわち、第4の突部25dはショルダーベルト9側の端面25d
1とラップベルト10側の端面25d
2とを有する。これらの端面25d
1,25d
2もい
ずれも平面または略平面に形成されるとともに第4の突部25dの先端25d
3も、所定
半径の円弧部(R部)とされる。
【0069】
更に、第4の突部25dにおける仮想直線(法線)37と端面25d
1との成す角度(
鋭角側)θ
7は、仮想直線37と端面25d
2との成す角度(鋭角側)θ
8より小さい(θ
7<θ
8)。換言すると、仮想円28と仮想直線37との交点38が第4の突部25dの根
元の円弧(前述の第1の突部25aの根元の円弧と同様)の円周方向の中心39の位置よりショルダーベルト9側の端面25d
1側に位置している。そして、この例のタング7で
も、角度θ
1,θ
3,θ
5,θ
7は一定つまり同じであるかまたは略同じに設定されている(θ
1=θ
3=θ
5=θ
7またはθ
1≒θ
3≒θ
5≒θ
7)。これにより、緊急時にシートベルト4に
対する第1ないし第4の突部25a,25b,25c,25dのグリップ力が略一定になる
。もちろん、これに限定されることはなく、各角度θ
1,θ
3,θ
5,θ
7は互いに異なるよう
にあるいは一部が異なるように設定することもできる。
【0070】
また、前述の例では第3および第4の突部25c,25dのショルダーベルト9側の各
端面25c
1,25d
1が直線41と平行または略平行にされているが、この例のタング7
では、中心26と中心40とを結ぶ直線41に対して傾斜して設けられている。これにより、緊急時に第3および第4の突部25c,25dによるシートベルト4のグリップ力が
比較的大きくなり、緊急時にラップベルト10の伸び出しがシートベルト4の強度を保持しつつ効果的に抑制可能となる。
この例のタング7およびこのタングを用いたシートベルト装置1の他の構成および他の作用効果は、前述の例と同じである。
【0071】
図7(A)はこの例のシートベルト装置に用いられている本発明のタングの実施の形態の
他の一例を示す正面図、
図7(B)は
図7(A)における
VIIB−
VIIB線に沿う断面図、
図7(C)は
図7(A)に示すタングの裏面図、
図8(A)は
図7(A)に示す例のタングのシートベルト摺動部の正面図、および
図8(B)は
図8(A)における下面図である。
【0072】
図7(A),(B)および
図8(A),(B)に示すように、この例のタング7においては、所定数の突部25は、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交する方向である第1の方向に5列に、またシートベルト挿通孔16の長手方向である第2の方向に3列に配設されている。
【0073】
図9に示すように、第1および第2凹部19,20内の各突部25は、すべて同じまた
は略同じ大きさの円錐または略円錐形状に形成されている。その場合、各突部25の頂点(先端)は略球面状(断面円弧状)とされている。
【0074】
ショルダーベルト側シートベルト摺動面42の幅(シートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向の長さ)は、ラップベルト10側のラップベルト側シートベルト摺動面43の幅よりかなり幅広に形成されている。また、ショルダーベルト側シートベルト摺動面42は、シートベルト挿通孔16の係合部12側の側縁16aと対向している。この側縁16aはシートベルト挿通孔16の長手方向と直交する方向の横断面が略半円の円弧状の滑らかな湾曲面に形成されている。そして、ショルダーベルト側シートベルト摺動面42は、このショルダーベルト側シートベルト摺動面42の円弧の中心C1(つまり、シートベルト摺動面18の円弧の中心)と側縁16aの円弧の中心C2とを結ぶ仮想直線(法線)αに関しショルダーベルト9側からこの仮想直線αを通ってラップベルト10側に延設されている。換言すると、ショルダーベルト側シートベルト摺動面42はショルダーベルト側シートベルト摺動面42と側縁16aとの間の距離(つまり、シートベルト挿通孔の長手方向と直交または略直交する方向の距離)が最小となる位置に関しショルダーベルト9側からラップベルト10側に延設されて、ショルダーベルト側シートベルト摺動面42の一部42aが前述の距離が最小となる位置よりラップベルト10側に位置している。
【0075】
したがって、シートベルト挿通孔16の最小幅の部分(仮想線α上の部分;シートベルト挿通孔16と直交する方向の長さの最短部分)には第1および第2凹部19,20が位
置しなく、このシートベルト挿通孔16の最小幅の部分では、滑らかな湾曲面のショルダーベルト側シートベルト摺動面42と滑らかな湾曲面の側縁16aとが対向する。
【0076】
このように構成されたこの例のタング7においては、シートベルト4の非装着状態ではシートベルト4はショルダーベルト9側の滑らかな湾曲面であるショルダーベルト側シートベルト摺動面42と同じく滑らかな湾曲面である側縁16aとにほとんど無圧状態で接触するようになるが、第1および第2凹部19,20の
外周面21と各突部25とにはほとんど接触しない。この状態では、シートベルト4が第1および第2凹部19,20が存在しない滑らかなシートベルト挿通孔16の最小幅の部分を通過するので、シートベルト4は反転し難く、シートベルト4は捩れない状態に保持されている。
【0077】
この状態で、シートベルト4を装着するために乗員がシートベルト4をシートベルトリトラクタ3から引き出すとともにタング7の把持部11を掴んでタング7をシートベルト4に対して摺動させた後、バックル8に係合する。その場合、シートベルト4が捩れない状態に保持されるので、タング7はシートベルト4に対してスムーズに摺動する。そして、余分に引き出されたシートベルト4がシートベルトリトラクタ3に巻き取られ、シートベルトが乗員に装着される。
【0078】
このシートベルトの装着状態では、シートベルト4はシートベルトリトラクタ3のリターンスプリング(不図示)の巻取力による軽い負荷を受けている。このとき、前述のよう
にシートベルト4が捩れない状態に保持される。したがって、シートベルト4の装着状態で乗員が何かを操作するために所定量移動するとき、シートベルト4がタング7を比較的スムーズに摺動するので、乗員はスムーズに移動可能となる。
【0079】
乗員のシートベルトの装着状態で緊急時が発生すると、前述と同様にシートベルトリトラクタ3がシートベルト4の引出しをロックする。そして、乗員の慣性力でシートベルト4が大きな負荷を受けるので、大きな張力がシートベルト4に加えられる。このため、前述の例と同様に
図9に二点鎖線で示すようにシートベルト4が第1および第2凹部19,
20内に進入するため、シートベルト4に対向する突部25がシートベルト4に食い込む。これにより、シートベルト4がラップベルト10側に伸び出そうとする際、突部25によるシートベルト4に対するグリップ力(摩擦力)で、シートベルト4のラップベルト10側への移動が効果的に抑制される。すなわち、ラップベルト10の伸び出しが効果的に抑制されて、緊急時においてラップベルト10による乗員の拘束がより効果的に行われる。
【0080】
この例のタング7によれば、シートベルト挿通孔16の長手方向に沿って配設されたショルダーベルト側シートベルト摺動面42が、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交する方向の距離が最小となる位置に関しショルダーベルト9側からラップベルト10側に延設され、ショルダーベルト側シートベルト摺動面42の一部が前述の距離が最小となる位置よりラップベルト10側に位置される。これにより、シートベルト摺動面18に第1および第2凹部19,20が設けられても、シートベルト4を第1および第
2凹部19,20が存在しない滑らかなシートベルト挿通孔16の最小幅の部分に通過さ
せることが可能となる。したがって、シートベルト4が反転し難くなり、シートベルト4を捩れない状態に保持することができる。これにより、通常時のシートベルト4のタング7に対する摺動を容易にかつ滑らかにでき、通常時のシートベルト4の操作性を更に一層良好にすることができる。
【0081】
また、シートベルト摺動面18が、シートベルト挿通孔16の長手方向の両端部にシートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交する方向に配設された第1および第2の端部シートベルト摺動面22,24を有する。更に、シートベルト摺動面18が第1お
よび第2凹部19,20間に、シートベルト挿通孔16の長手方向と直交または略直交す
る方向に配設された中間シートベルト摺動面23を有する。これにより、通常時のシートベルト4のタング7に対する摺動を更に容易にかつ滑らかにでき、通常時のシートベルトの操作性を更に良好にすることができる。
【0082】
更に、各突部25の各先端がそれぞれ球面状とされることで、シートベルト4の強度を、緊急時にシートベルト4が各突部25からそれぞれシートベルト4に加えられる比較的大きな力を支持することが可能な強度にすることができる。
この例のタング7の他の構成および作用効果は前述の各例と同じである。また、この例のタング7を備えたシートベルト装置1の構成および作用効果は前述の各例と同じである。
【0083】
なお、前述の各例では、シートベルト摺動部17のシートベルト摺動面18に2つの第1および第2凹部19,20を設けるものとしているが、凹部は1つ以上任意の所定数設
けることができる。また、前述の例では樹脂モールド部14を設けるものとしているが、本発明のタングでは、樹脂モールド部14を省略することもできる。要するに、本発明のタングは、特許請求の範囲に記載された範囲で、種々の設計変更が可能である。