【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による圧電型振動センサーは、台座、圧電素子、電極および錘を備えた圧電型振動センサーであって、
前記圧電素子は単一のフィルム状の高分子圧電材料より構成され、前記圧電素子が複数の区画に分けられて、各区画に、電極および錘がそれぞれ設置されており、
前記電極は前記圧電素子の表裏に対となるようにして設けられており、前記錘は各区画の上下面に圧縮力が加わるように配置されており、各区画の共振周波数が異なる値とされていることを特徴とするものである。
【0008】
各区画の共振周波数を異なる値とするには、圧電素子自体を複数の部分に分割してそれぞれを異なる圧電材料で形成することで可能であるが、圧電素子は単一の構成として、複数の区画に分割された単一の圧電素子の各部に設置される錘および/または電極を変更することによっても可能である。
【0009】
例えば、圧電素子の複数の区画のいくつかは、弾性定数の異なる圧電材料によって形成されていることがある。この場合、圧電材料として、少なくとも1つの高分子圧電材料を含んでいることが好ましい。
【0010】
また、複数の錘のいくつかは、重量が異なることがあり、また、複数の電極のいくつかは、大きさが異なることがある。
【0011】
各区画の共振周波数が異なる値とされていることにより、圧電型振動センサーは、複数の周波数帯域で共振し、これにより、幅広い範囲で良好な感度が得られる。
【0012】
複数の周波数帯域で共振させるためには、例えば性状の異なる複数個の圧電素子に対して少なくとも一つの錘を積載してやればよい。それぞれの圧電素子に設けた電極から電圧信号を取得することによって幅広い周波数帯での信号を得ることができる。
【0013】
また、それぞれの圧電素子から得られた信号を単一の波形に合成することもできる。単一の波形に合成し、水道管路網の複数箇所に設置した振動センサーで得られた波形の相関をとることによって、各々のセンサーへの漏水振動の到達時間差から位置を特定することができる。
【0014】
圧電素子の性状は弾性定数によって変化させることができる。弾性定数は基本的には圧電材料の種類によって変化する材料定数である。この材料定数の異なる圧電材料を用いることで共振周波数を変化させることができる。
【0015】
圧電素子に錘を積載した系の共振周波数について説明する。
【0016】
バネ定数k(N/m)のバネの片端を固定し、片端に質量M(kg)の錘をつけたときの共振周波数foはfo=√(k/M)/2πで表せる。
【0017】
ここで、圧電素子をバネと見なすことができる。バネ定数のkは圧電素子の弾性定数をEとすると、k=E・A/tで表すことができる(Aは圧電素子の断面積(m
2)、tは圧電素子の厚み(m)を表す。)。ポリフッ化ビニリデン(高分子圧電材料)の弾性定数Eは2〜5×10
9(N/m
2)である。それに対し、ジルコン酸チタン酸鉛(セラミック圧電材料)の弾性定数は、2〜10×10
10(N/m
2)であり、一桁大きい。
【0018】
また、異なる素材と組み合わせて弾性定数を変化させることもできる。例えば、高分子系の圧電素子と金属材料を組み合わせると弾性定数を大きくし、共振周波数を大きくすることが可能になる。
【0019】
それとは別に、圧電素子は各方向への振動が相互に干渉しあうことによって寸法の影響を受ける二つの共振周波数をもつことがある。例えば、矩形圧電素子は、直交する各2辺が逆位相で伸縮する振動モードと、2辺が同位相で振動する振動モードとの二つの振動モードを示す。前者の振動モードの共振周波数は、相対的に低く、後者の振動モードの共振周波数は、相対的に高くなる。このように、形状と振動モードとによって共振周波数を設定することもできる。
【0020】
また、形状の影響と同様に、電極の配置によって共振周波数を制御することもできる。圧電素子の表面に銀やニッケル銅の金属薄膜を形成して電極とすることができる。例えば、高分子フィルムの圧電素子においては、フィルムの表裏の両面に電極が配置されるが、電極の形状によって圧電素子の実効部分が異なり、共振周波数も変化する。
【0021】
一般に、高分子系の圧電フィルムは内部損失が大きい。そのため、一つの圧電素子であっても表裏で対となる電極を複数設けるだけで他の電極へのクロストークが小さく、複数の共振周波数を得ることが可能になる。
【0022】
また、圧電素子の形状が同じであっても、振動を与える方向を変えることで共振周波数を変化させることができる。例えば、圧電素子の上下面に圧縮力を加える方法以外に、フィルムや板状の圧電素子の片端ないしは両端を固定し、曲げ変形を加えることによって電位差を発生させることもできる。
【0023】
さらに、圧電素子の性状が同じであっても、積載する錘の重量を変化させることで共振周波数を制御することが可能である。
【0024】
本発明における圧電素子を形成する圧電材料の種類は特に限定されない。例えば、水晶やニオブ酸リチウムなどの単結晶、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛、ニオブ酸鉛などのセラミック、ポリフッ化ビニリデンの延伸フィルムや多孔性のポリプロピレン延伸フィルムなどの高分子フィルムが挙げられる。中でも電極の形状等で共振周波数をコントロールしやすい高分子系の圧電フィルムが望ましく、ポリフッ化ビニリデンの延伸フィルムは耐久性が高いために特に好適である。