特許第5810579号(P5810579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5810579
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】ガスバリア積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-71060(P2011-71060)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201104(P2012-201104A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田上 英恵
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−220530(JP,A)
【文献】 特開2004−130812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0086734(US,A1)
【文献】 特開2011−057859(JP,A)
【文献】 特開2003−062921(JP,A)
【文献】 特開平09−123333(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の少なくとも片面に、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜50モル%、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜30モル%構成要素に含有するアクリル樹脂及びアミン系硬化剤との熱硬化反応複合物からなるプライマー層と、無機酸化物からなる蒸着膜層とが、この順に順次積層した積層フィルムが形成され、
前記プライマー層が、前記熱硬化反応複合物に加え、一般式SiRn(OR
nY(但し、n=0〜2で、Rはアルキル基、RはCH又はC又はCH
C、Yはエポキシ基を有する官能基を表す。)で表されるシランカップリング剤の加水分解生成物を含有し、
前記積層フィルムの水蒸気透過度が1g/m/day以下であることを特徴とするガスバリア積層フィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂が、スチレンが5〜40モル%共重合されたスチレンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層フィルム。
【請求項3】
前記加水分解生成物の含有量が、前記アクリル樹脂に対して100重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア積層フィルム。
【請求項4】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量が4000以上50000以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。
【請求項5】
前記蒸着膜層は、透明性を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。
【請求項6】
前記蒸着膜層の上に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物をガスから守るガスバリア積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスバリアフィルムは、空気中の湿気、酸素、炭酸ガスなどのガスから対象物を守り、品質・性能の劣化を抑制する役割を有しており、食品・医薬品などの包装材料をはじめ、太陽電池バックシートや電子ペーパー、有機ELなどのエレクトロニクス分野でのガラスやアルミ箔などの代替としての採用も検討されている。
【0003】
現在、バリアフィルムの主な種類は、エチレンビニルアルコール共重合樹脂などの単体フィルム、共押出多層ナイロン(Ny)フィルム、塩化ビニリデン(PVDC)コートやポリビニルアルコール(PVA)コートのウェットコートフィルムなどがある。
しかしながら、これらの種類のフィルムは、ガスバリア性が高いものでも水蒸気透過度3g/m/day程度であり、より高度なガスバリア性を要求される包装材や電子部材としての利用は難しい。従って、より高度なバリア性を要求される場合は、アルミニウムなどの金属箔を積層せざるを得なかった。
【0004】
しかしながら、金属箔を積層したフィルムを用いた包装材では、内容物が見えない、内容物検査に金属探知機を使用できない、などの問題があった。
【0005】
これらの問題を克服するために、特許文献1では、高分子樹脂基材上に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などの無機化合物を蒸着したガスバリア性フィルムについて提案がなされている。
【0006】
さらに、蒸着層の樹脂基材への密着性を向上させるために、樹脂基材と蒸着層の間に、プライマー層を設けた構造のものが多く提案がなされている。これらのプライマー層の材料には、アクリル樹脂を用いることが多く、特に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応複合物あるいはそれにシランカップリング剤が添加されたものをプライマー層として用いることにより高いガスバリア性を実現している(特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−28017号公報
【特許文献2】特開2004−106443号公報
【特許文献3】特開2007−69456号公報
【特許文献4】特開2002−36419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、イソシアネート化合物モノマーは、大気への蒸発性が強く、人体に対して非常に強い毒性を有するという問題がある。従って、塗工材料として用いる場合はこれらのプレポリマーを用いることが一般的となっている。しかし、このようなプレポリマー中にも少量のモノマーが存在するため、人体への影響を考慮しながら、慎重に使用する必要があった。
【0009】
そこで、本発明は、このようなイソシアネート化合物の毒性の問題を解決するためになされたものであり、アクリル樹脂中のヒドロキシル基量とエポキシ基量のバランスを最適化することにより、イソシアネート化合物よりも毒性の小さなアミン系化合物を硬化剤として使用し、高いバリア性及び密着性を有するガスバリア積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明は、樹脂基材の少なくとも片面に、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜50モル%、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜30モル%構成要素に含有するアクリル樹脂及びアミン系硬化剤との熱硬化反応複合物からなるプライマー層と、無機酸化物からなる蒸着膜層とが、この順に順次積層した積層フィルムが形成され、前記プライマー層が、前記熱硬化反応複合物に加え、一般式SiRn(OR−nY(但し、n=0〜2で、Rはアルキル基、RはCH又はC又はCHOC、Yはエポキシ基を有する官能基を表す。)で表されるシランカップリング剤の加水分解生成物を含有し、前記積層フィルムの水蒸気透過度が1g/m/day以下であることを特徴とするガスバリア積層フィルムである。
前記アクリル樹脂は、スチレンが5〜40モル%共重合されたスチレンとの共重合体であってもよい。
【0011】
前記加水分解生成物の含有量が、アクリル樹脂に対して100重量%以下であってもよい。
【0012】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量が4000以上50000以下であってもよい。
【0013】
前記蒸着膜層は、透明性を有していてもよい。
【0014】
前記蒸着膜層の上に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜50モル%、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を5〜30モル%構成要素に含有するアクリル樹脂及びアミン系硬化剤との熱硬化反応複合物をプライマーとして用いることにより、毒性の強いイソシアネート化合物を使用することなく、無機酸化物蒸着層の基材への密着性を高め、高い水蒸気バリア性を有するガスバリア積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のガスバリア積層フィルムの一実施形態の断面図である。
図2】本発明のガスバリア積層フィルムの両面ラミネート構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のガスバリア積層フィルムを実施するための最良の形態を、図面に沿って説明する。
【0018】
図1は、樹脂基材11の片面に、プライマー層13、蒸着膜層15、ガスバリア性被覆層17が順次積層した構成のガスバリア積層フィルムとなっている。図2は、そのガスバリア積層フィルムの両面に接着剤層19を介してラミネート樹脂層21を形成した両面ラミネート構成のガスバリア積層フィルムのものである。
【0019】
樹脂基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムなどがある。樹脂基材11の厚みは、特に制限を設けないが、実用上6〜200μm程度がよく、好ましくは12〜125μm、さらに好ましくは12〜25μmがよい。
【0020】
また、樹脂基材11の他の層を積層する側の表面には、密着性を高めるために、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理や、薬液処理などの化学的処理を施してもよい。
【0021】
プライマー層13は、樹脂基材11上に設けられ、樹脂基材11と無機酸化物蒸着層15との密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌などの各種殺菌処理や、長期屋外設置による蒸着層の剥離発生を防止するために設けられる。
【0022】
プライマー層13の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
プライマー層13の膜厚は、0.1〜0.5μmが望ましいが、好ましくは0.1〜0.3μmである。0.1〜0.5μmよりも厚みが薄いと、樹脂基材11と無機酸化物蒸着層15との密着性が不十分となり、0.5μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、無機酸化物蒸着層15がきれいに積層されず、バリア性の発現が不十分となる問題がある。
【0024】
プライマー層13には、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を構成要素に含有するアクリル樹脂とアミン系化合物との熱硬化反応複合物を用いる。
【0025】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を共に構成要素に有するアクリル樹脂をプライマー層13の材料に用いることにより、良好な密着性を実現することが可能となる。
【0026】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがあり、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートなどがある。
【0027】
アミン系化合物は、アクリル樹脂中のエポキシ基と反応し、隣接する層である樹脂基材11や無機酸化物蒸着層15との密着性を向上させる効果を目的として添加される。特に、アミン系化合物は、ウレタン形成に用いられるイソシアネート化合物よりも毒性が少ないため、医薬品や食品の包装用途用に適しているといえる。
【0028】
これを達成するためのアミン系化合物としては、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)などの鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)などの環状脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン(m−XDA)などの脂肪芳香族アミン、メタフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)などの芳香族アミンなどを単独、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0029】
アミン系化合物の配合量については、特に限定しないが、アクリル樹脂中のエポキシ基の量と当量であることが望ましい。
【0030】
アクリル樹脂が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体をある一定の割合で構成要素として含む場合において、ガスバリア積層フィルムは、特に良好なガスバリア性及び密着性を発現する。
【0031】
アクリル樹脂中のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の割合は、5〜50モル%が望ましい。5モル%より少ないと、アミン系化合物との反応点が少なくなってしまい、樹脂基材11や無機酸化物蒸着層15との密着性が不十分となる。また、50モル%よりも多くなると、アミン化合物との反応点が過剰となり、硬化収縮によりフィルムにしわが生じ、無機酸化物蒸着層15が綺麗に積層されず、バリア性が発現しなくなる問題がある。
【0032】
アクリル樹脂中のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の割合は、5〜30モル%が望ましい。5モル%よりも少ないと、樹脂基材11や無機酸化物蒸着層15との密着性が不十分となる。また、30モル%よりも多くなると、バリア性が悪くなってしまうという問題がある。
【0033】
また、プライマー層13には、エポキシ基を含有するアクリル樹脂とアミン系化合物に加え、一般式SiR(OR3−nY(但し、n=0〜2で、Rはアルキル基、RはCH又はC又はCHOC、Yはエポキシ基を有する官能基を表す。)で表されるシランカップリング剤の加水分解生成物を含有してもよい。
【0034】
この場合は、エポキシ基を有するアクリル樹脂及び上記シランカップリング剤の加水分解生成物が共存する溶液中に、アミン系化合物を添加してプライマー溶液として使用する。エポキシ基を有するシランカップリング剤の加水分解生成物は、アミン系化合物と反応し、硬化収縮が生じることなく樹脂基材11や無機酸化物蒸着層15との密着性をさらに向上させる効果を有する。このシランカップリング剤の加水分解生成物を添加する場合は、配合するアミン系化合物の量をそれに応じて増やす必要がある。
【0035】
シランカップリング剤の加水分解生成物の含有量は、エポキシ基を含有するアクリル樹脂に対して100重量%以下であることが望ましく、好ましくは5〜50重量%である。
【0036】
100重量%よりも多く添加すると、成膜性が悪くなりプライマー層13の表面が荒くなってしまうため、無機酸化物蒸着層15が綺麗に形成されず、バリア性が発現しなくなるという問題がある。
【0037】
このようなシランカップリング剤の例としては、β-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0038】
また、アクリル樹脂は、スチレンとの共重合体でもよい。スチレンを共重合させることによりプライマー層13に硬度を付与することができると共に、疎水性が付与され、ガスバリア積層フィルム17全体の水蒸気バリア性を高めることができる。
【0039】
スチレンは任意成分であるが、スチレンを共重合する割合は、0〜40モル%が望ましい。40モル%より多く共重合させると、樹脂基材11や無機酸化物蒸着層15との密着性がなくなるという問題が生じる。なお、さらに好ましくは5〜40%の範囲内でスチレンを共重合することが好ましい。スチレンが5モル%以上とすることで、スチレン添加の効果を発現させることができる。
【0040】
プライマー層13を形成するアクリル樹脂の重量平均分子量は4000以上50000以下が望ましい。50000よりも大きいと、溶剤への溶解性が悪くなるとともに、塗工液の粘度が高くなり、扱いづらくなる。また、4000よりも小さいと、プライマー層13の耐久性や耐候性が悪くなってしまう。
【0041】
無機酸化物蒸着層15は、プライマー層13上に設けられ、フィルム全体にガスバリア性を付与するために設けられる。
【0042】
無機酸化物蒸着層15の材料としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、マグネシウムなどの酸化物が上げられる。
【0043】
特に、包装材料として使用し、内容物が見える必要がある場合は、無機酸化物蒸着層15が透明性を有している必要がある。この場合、酸化アルミニウムは、無色透明であり、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌にも優れ、広範囲の用途に使用することができる。特に、過酷な高温多湿条件下での耐水性を考慮すると酸化ケイ素からなる蒸着層が最も好ましい。
【0044】
形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法などの公知の方法を適宜用いてよい。
【0045】
無機酸化物蒸着層15の膜厚は、0.005〜0.3μmが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.05μmである。0.005μm以下では十分なバリア性が発現せず、また0.3μmを超えると脆く、クラックが発生しやすくなり、バリア性が発現しない問題が生じる。
【0046】
無機酸化物蒸着層15の上に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層17が設けられていてもよい。
【0047】
ガスバリア性被覆層17は、硬く脆い無機酸化物蒸着層15を保護し、擦れや屈曲によるクラックの発生を防止するために設けられ、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有した成分からなる。
【0048】
ガスバリア性被覆層17の形成方法としては、プライマー層13と同様に通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリビニルピロリドン樹脂(PVP)などを用いることができ、これらを単独あるいは複数組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどを用いることができる。
【0051】
また、無機酸化物蒸着層15との密着性を上げるために、シランカップリング剤を添加してもよい。
【0052】
本発明のガスバリア積層フィルムの片面または両面にラミネート樹脂層21を設けることで、より実用性の高い積層フィルムを提供できる。このラミネート樹脂基材層21はヒートシール性のあるシーラントフィルムを積層することで、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
【0053】
また、PETフィルムやPENフィルムを本発明のガスバリア積層フィルムの片面または両面に積層することで、液晶表示素子や、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネルで使用する透明伝導シートなどの封止材として用いることができる。
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
<プライマー層溶液の調液>
(1) 表1に示すように、グリシジルメタクリレート(GMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、スチレン(St)、メチルメタクリレート(MMA)をモノマーとして共重合されたアクリル樹脂(重量平均分子量は5500)の酢酸エチル20%溶液Aを調製した。
【0056】
(2) ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)の20%エタノール溶液Bを調製した。
【0057】
(3) γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランの加水分解生成物の10%エタノール溶液Cを調製した。
【0058】
(4) 上記A〜Cの溶液をアクリル樹脂に対して表1のような割合で混合したプライマー層溶液を調製した。溶液Bについては適宜の割合で混合した。
【0059】
<プライマー層溶液の塗工工程>
基材フィルムに、片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム(東レフィルム加工(株)、P60)を使用し、コロナ処理面にグラビアコート機を用い上記プライマー層溶液を塗工、乾燥後の厚みが0.17μmのプライマー層を積層した。
【0060】
<無機酸化物蒸着層を積層する工程>
真空蒸着機を使用し、プライマー層の上に厚さ0.05μmの酸化ケイ素からなる蒸着層を積層し、目的のガスバリア積層フィルムを作製した。
【0061】
<ガスバリア性被覆層溶液の調液>
(1) テトラエトキシシランを0.02mol/Lの塩酸で加水分解した。
【0062】
(2) けん化度99%、重合度2400のPVAの5%水溶液を調製した。
【0063】
(3) (2)の溶液に(1)の溶液をSiO/PVA=60/40となる割合で加え、ガスバリア性被覆層溶液とした。 <ガスバリア性被覆層溶液の塗工工程>
無機酸化物蒸着層の上に、グラビアコート機を用い、上記ガスバリア性被覆層溶液を塗工、乾燥後の厚みが0.40μmのガスバリア性皮膜層を積層した。
【0064】
<ガスバリア性積層フィルムへのラミネート樹脂層積層工程>
ガスバリア性被覆層が積層されたガスバリア性積層フィルムの両面に、5g/mのポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmの耐加水分解PET(東レ製、X10S)をドライラミネート法により積層した。
【表1】
【0065】
<ガスバリア積層フィルムの評価>
(1)水蒸気透過度の測定
実施例1〜4及び比較例1〜3のガスバリア積層フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m/day)を測定した。
【0066】
(2)密着強度の測定
ドライラミネートを行ったガスバリア性積層フィルムから15mm巾に切り出した試験片について、テンシロン型万能試験機を使用し、JIS K6854の試験方法であるT字剥離試験を行って、ラミネート強度(N/15mm巾)を測定した。また、105℃100%RH下に96時間置く耐久試験、プレッシャークッカーテスト(PCT)を行い、PCT後の密着強度も測定した。
【0067】
<評価結果>
評価結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0068】
(1) 実施例1〜5
実施例1〜5は、いずれも水蒸気透過度が1g/m/day以下であった。また、スチレンを構成モノマーとして加えることにより水蒸気透過度が小さくなり、バリア性が上がった(実施例2)。さらに、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランの加水分解生成物を添加することによりさらに水蒸気透過度が小さくなり、バリア性の向上が観察された。密着強度は、一般的に3N/15mm巾以上あればよいとされている。実施例1〜5では、初期もPCT後も3N/15mm巾以上の密着強度を保っていた。
【0069】
(2) 比較例1〜3
ヒドロキシル基を有するメタクリル酸誘導体であるHEMAの割合を多くすると、水蒸気透過度が大きくなり、またPCT後にも密着強度が悪くなった(比較例1)。また、スチレンの割合を40%よりも多くしたり、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランの加水分解生成物の添加量を100%よりも多くしたりすることにより、バリア性は向上したが、密着性が悪くなる結果となった(比較例2、3)。
【0070】
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、変形して具体化できる。また、明細書に示される事項の適宜の組み合わせによって種々の発明を想定できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の透明ガスバリアフィルム積層体は、食品、日用品、医薬品などの包装分野、及び電子機器関連部材などの分野において、高いガスバリア性が必要とされる場合に特に好適に利用が期待される。
【符号の説明】
【0072】
11……樹脂基材
13……プライマー層
15……無機酸化物蒸着層
17……ガスバリア性被覆層
19……接着剤層
21……ラミネート樹脂層
図1
図2